接点開閉器
【課題】固定接点と可動接点との接触信頼性の向上を図ることができる接点開閉器を提供すること。
【解決手段】可動接点11は、固定接点と接触する先端部が、先端角θを構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層11aを有する接点本体と、硬質本体層11aの先端側の表面に、軟質材にて硬質本体層11aより薄く且つ接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層11bと、を備えている。
【解決手段】可動接点11は、固定接点と接触する先端部が、先端角θを構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層11aを有する接点本体と、硬質本体層11aの先端側の表面に、軟質材にて硬質本体層11aより薄く且つ接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層11bと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と負荷の間を閉路および開路することに使用される接点開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接点開閉器の接触信頼性を向上させる手段として、接点の先端に尖った凸部を設け、接触面積を小さくする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一定の接触力が加えられる場合において、接触面積が小さいほど接触圧力が大きくなるため接触時の信頼性が向上する。また、接触面積が小さいほど絶縁体で形成された異物を可動接点−固定接点間に噛み込む確率が低減するため、接触不良を起こし難くなる。
【0004】
図6は、従来の可動接点の横断面図である。図6に示す可動接点11Aの断面形状は、なるべく接触面積を小さくすべく略三角形の突起形状になっている。そして、三角形の突起形状の頂点は約2mmの曲率半径の湾曲面に形成されている。また、接点材質は純度99.9%以上のAgが用いられている。これは、低電圧低電流領域で使用する場合、接点開閉時に発生するアークエネルギーが弱く接点表面に発生する酸化皮膜を十分に破壊できない場合があり接触不良の原因となるため、これを抑制すべく、なるべくイオン化傾向が小さく錆び難いAgを採用していたためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−12219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の可動接点の断面形状における略三角形の突起の頂点が約2mmの曲率半径の湾曲面に形成されていたことから、突起先端が広くなだらかな形状となっており、接触面積を小さくするという目的を十分に果たせていないという課題があった。
【0007】
また、材質が純度99.9%以上のAgであり軟らかいため、接点の開閉回数が増えるにつれて頂点がつぶれ、さらに突起先端の平滑化が進み、接触面積が徐々に大となってしまうという課題があった。
【0008】
また、材質が軟らかいことから、硬い絶縁体で形成された異物を可動接点−固定接点間に噛み込んでしまうと、接点内に異物が埋まり込み外れず、その部分が接触点となることで接触不良を頻発させてしまうことがあるという課題があった。
【0009】
そこで、上記課題を解決すべく、可動接点の断面形状における略三角形の突起の頂点を鋭角化し接点材質を十分硬度の高い金属にすると、接触面積が小さくかつ小さな接触面積を維持することができるため、一般的には従来の可動接点よりも接触信頼性が向上する。しかしながら、所定以下の低い電圧・電流で使用する場合においては、逆に従来の可動接点よりも接触信頼性が低下する領域が存在するという問題があった。
【0010】
つまり、低電圧低電流領域での使用においては、図7に示すように、従来は硬い絶縁体の異物Zを噛み込んでも、軟らかい材質(Ag)で作成された可動接点11B凹むことで、可動接点11B−固定接点5間の空間距離D1が小さくなり、絶縁破壊が発生することにより導通を確保できる場合があった。しかし、単純に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った接点は、図8に示すように、突起頂点を鋭角化しているため接触点以外の可動接点11C−固定接点5間の空間距離D2が従来よりも大であり、なおかつ硬い絶縁体の異物Zを噛みこんでも接点の凹む量は少ないため、絶縁破壊による導通確保が得られ難い。そのため、従来の可動接点よりも接触信頼性が低下してしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、固定接点と可動接点との接触信頼性の向上を図ることができる接点開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる接点開閉器は、固定接点が設けられた固定接触子と、固定接点と対向し固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、可動接点は、固定接点と接触する先端部が、先端角を構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層を有する接点本体と、硬質本体層の先端側の表面に、軟質材にて硬質本体層より薄く且つ接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる接点開閉器は、固定接点が設けられた固定接触子と、固定接点と対向し固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、分割された可動端子板の先端部に各々搭載された可動接点とを有し、スリットは、第1の幅で可動端子板の基部を分割し、第1の幅より大きい第2の幅で可動端子板の先端部を分割することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定接点と可動接点との接触信頼性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明にかかる接点開閉器の基礎的な構造を示す横断面図である。
【図2】図2は、図1の接点開閉器の可動接触子及び固定接触子の斜視図である。
【図3】図3は、図2の可動接触子が固定接触子に接触する様子を示す側面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の可動接点の断面形状を示す図である。
【図5】図5は、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態2の可動接触子の構造を示す図である。
【図6】図6は、従来の可動接点の断面形状を示す図である。
【図7】図7は、従来の可動接点と固定接点との間に異物を噛み込んだ状態を示す図である。
【図8】図8は、単純に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った可動接点と固定接点との間に異物を噛み込んだ状態を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態1の可動接点に対して比較のために用意した軟質表面層を削除した可動接点の断面形状を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態2の可動接触子の構造と比較の為に示す従来の可動接触子の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる接点開閉器の基礎的な構造を示す横断面図である。図2は、図1の接点開閉器の可動接触子及び固定接触子の斜視図である。図3は、図2の可動接触子が固定接触子に接触する様子を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、接点開閉器100のケースは、固定鉄心1及び電磁コイル2などを設置する背面側ケース3と、接触子などを収容し背面側ケース3に被せる正面側ケース4とから成る。正面側ケース4の中段には、内側端に固定接点5、5が固着され、外側端に端子ねじ6、6を備えて外部接続端子となる一対の固定接触子7、7が、所定距離離間して固定されている。
【0019】
一対の固定接触子7、7の間、すなわち接点開閉器100の中央には、可動接触子支持体8が設置されている。可動接触子支持体8は、その外側端が正面側ケース4のガイド孔4aにガイドされ、図の上下方向に移動可能となっている。可動接触子支持体8の内側端には、可動鉄心9が取付けられている。
【0020】
また、電磁コイル2が巻かれた巻枠2aが中央磁極1aに嵌挿された固定鉄心1が、背面側ケース3内に設置されている。巻枠2aの正面側の鍔と可動鉄心9の凹部との間には、電磁コイル2の非通電時(固定鉄心1の非励磁時)に固定鉄心1と可動鉄心9とを離間させ、可動鉄心9を復帰させるための円錐状に巻かれた復帰ばね10が装着されている。
【0021】
可動接触子支持体8の図示左右方向を向く四角孔8aには、固定接点5、5のそれぞれに接触、離間する可動接点11、11を両端に設けた可動接触子20が、その中央部を四角孔8aに位置させるようにして挿入され支持されている。
【0022】
図2に示すように、可動接触子20は、細長板状の可動端子板12と、この可動端子板12の両端部に搭載された可動接点11、11とから構成され、所定の間隔だけ離れて配置された固定接点5、5に可動接点11、11を対向させるように配置されている。可動端子板12は、固定接点5、5間に凸を向けるように弓型に折り曲げられ、両端部の固定接点5、5側面に可動接点11、11を固定している。図3に示すように、可動接点11は、断面が偏平五角形の短尺柱状を成し断面三角形の先端部を固定接点5、5方向に向けて頂部稜線が可動端子板12の短手方向に延びるように配設されている。
【0023】
図1に戻り、可動接触子20の中央部正面側には、ばね受け20aが固定され、可動接触子20は、ばね受け20aを介して接点ばね13の一端に係合し接点ばね13に支持されている。接点ばね13は少し圧縮され、その他端が四角孔8aの正面側の面に支持されている。このようにして、接点ばね13の他端及び可動接触子20の中央部は、可動接触子支持体8に支持されている。
【0024】
固定鉄心1及び可動鉄心9は、三叉状に形成され、それぞれ対向する中央磁極1a、9a及び二つの側部磁極1b、1b、9b、9bを有している。固定鉄心1の側部磁極1b、1bの吸引面には、くま取りコイル1c、1cが装着されている。
【0025】
電磁コイル2が非通電の非励磁状態では、可動接触子20は、接点ばね13により四角孔8aの背面側の面に押付けられている。また、復帰ばね10の復帰力により、可動接触子支持体8の当接面8bが、正面側ケース4の当接面4bに当接している。
【0026】
また、電磁コイル2が通電されて固定鉄心1が励磁され、可動鉄心9が固定鉄心1に吸引されて可動接触子支持体8が駆動され、可動接点11、11が固定接点5、5に接触した後、可動鉄心9の対向面が固定鉄心1の吸引面に吸着される。
【0027】
図4は、実施の形態1の可動接点11の断面形状を示す図である。すなわち、図4は、可動接点11を、可動端子板12の長手方向に平行な面で切った断面形状を示したものである。上記のように、可動接点11は、断面が偏平五角形の短尺柱状を成し断面三角形の先端部を固定接点5、5方向に向けて頂部稜線が可動端子板12の短手方向に延びるように配設されており、固定接点5と接触する先端部形状が、断面において先端角度θが156°から166°の範囲で且つ頂部先端Tが曲率半径0.1mm以下の円弧となる三角形状を成している。
【0028】
可動接点11は、三層構造を成しており、硬い材質であるNi含有量約15%のAgNiで形成され、先端角度θが156°から166°の範囲の断面三角形状を成す硬質本体層(以降、AgNi層と言う)11aと、AgNi層11aとともにコンタクトメタル部を構成し、AgNi層11aの先端側を覆うように、軟らかい材質である純度99.9%以上のAgで皮膜状に形成された軟質表面層(以降、Ag層と言う)11bと、AgNi層11aと可動端子板12との間に設けられ、AgNi層11aとともに接点本体を構成し、AgNi層11aとAg層11bとから成るコンタクトメタル部を可動端子板12上に支持するベースメタル部11cとから構成されている。
【0029】
AgNi層11aとAg層11bとから成るコンタクトメタル部とベースメタル部11cを合わせた部分、すなわち、接点本体の厚さHが0.8mmであるのに対し、Ag層11bの厚さは0.075mmであり、Ag層11bの厚さは接点本体の厚さの約1割の厚さとなっている。同一形状の接点における材質ごとの硬さの参考比較を、下表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
接点は、接点を構成する粒子径の細かさ(密度の大小)によっても硬さが変化するため一概には言えないが、一般的にはNi含有量約15%のAgNiであれば、純度99.9%以上のAgよりも十分に硬い材質であると考えられる。
【0032】
このAg層11bによって、低電圧低電流領域での使用において硬い絶縁体で形成された異物が噛みこんでも、軟らかい材質のAgが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすくなる。またAg層11bは厚さが小さい(本実施の形態では厚さ0.075mm)ため、絶縁体で形成された異物は、Ag層11bが凹むだけで接点の内部へ完全に埋まり込んでしまうことも少なく、また仮に薄いAg層11b内部に異物が埋まったとしても、開閉衝撃により異物が取れ易い構造となっている。
【0033】
また、前記略三角形の突起の頂点が成す角度θは、156°〜166°程度かつ頂点は半径0.1mm以下で形成されており、突起が十分に鋭い形状であるため、接触面積が小さい。また、Ag層11bの下層には、Ag層11bに対し十分に硬くかつ厚いAgNi(Ni:15%)層であるコンタクトメタル部が存在しているため、接点開閉によって頂点がつぶれることによる突起先端の平滑化が起こり難く、小さな接触面積を維持しやすい。
【0034】
接触面積を小さくするためには前記略三角形の突起の頂点をなるべく鋭角にしたい。しかしながら、鋭角にしすぎると、接触点以外の可動接点−固定接点間の空間距離が大きいため、絶縁破壊による導通確保が難しくなる。この両者はトレードオフの関係にあるが、この両者をどちらも満足するべく適当な角度として、前記略三角形の突起の頂点が成す角度は156°〜166°に構成されている。
【0035】
ここで、本実施の形態の効果の一例として、図4に示す本実施の形態の可動接点11と、図6に示す従来の可動接点11Aと、図9に示す本実施の形態の可動接点からAg層11bを除いた可動接点11Dの3種の可動接点にて行った接触信頼性試験(ある検出抵抗値を上回ったら故障)の結果を示す。なお、可動接点の厚さHは、すべて0.8mmとして比較した。同一の接点開閉器10台に可動接点を各4接点ずつ(計40接点)備え付け、それを一定の開閉頻度により下記接点電圧・電流にて下記回数まで開閉した場合の、信頼水準60%における接触不良発生率(故障率)の比較を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表中(1)の条件では、上記3種の可動接点において、故障率に差は無い。ただし一般的には、開閉回数がより多くなると、従来の可動接点(図6)の故障率は、本実施の形態の可動接点(図4)および本実施の形態の可動接点と形状は等しいがAg層11bは無い可動接点(図9)よりも悪くなる傾向にある。
【0038】
一方、より低電圧低電流域での使用となる表中(2)の条件になると、5万回および125万回の開閉時でも上記3種の可動接点において故障率に差が生じ、本実施の形態の可動接点(図4)が最も故障率が低く、一方で、単に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った接点である本実施の形態の可動接点と形状は等しいがAg層11bは無い可動接点(図9)は、従来の可動接点(図6)よりも故障率が高くなってしまうことがわかる。
【0039】
低電圧低電流での使用の場合、可動接点−固定接点間に発生するアークエネルギーは極微量であるため、接点本体の厚さの約1割程度の厚さ(本実施の形態では厚さ0.075mm)のAg層11bがあれば、アークによってAg層11bがすべて消耗して無くなってしまうことも無く、絶縁体で形成された異物がかみ込んでも軟らかい材質のAg層11bが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすくなる。また接点表面がイオン化傾向の小さいAgであるため、接点表面に酸化被膜が発生し難く、接触信頼性の高い良好な状態を保ち易い。
【0040】
高電圧高電流での使用の場合は、接点本体の厚さの約1割程度の厚さしかないAg層11bは可動接点−固定接点間に発生するアークエネルギーによって消耗し無くなってしまうこともあるが、Ag層11bの下層であるAgNi層11aは十分に硬い金属であるため、鋭角な突起頂点形状を維持し易く開閉回数が増えても接触面積が小さいままであるから、高い接触信頼性を継続することができる。Ag層11bがすべて消耗して無くなってしまうとAg層11bが凹むことによる可動接点−固定接点間の空間距離縮小効果が得られなくなるが、そもそも高電圧高電流である場合は、低電圧低電流に比べて絶縁破壊しやすいため、従来の接点よりも突起頂点が鋭角化されて可動接点−固定接点間の空間距離が大きくなったとしても、接触面積を小さいまま維持できる効果の方が影響は大きく接触信頼性は向上する。
【0041】
本実施の形態においては、軟質表面層の材質としてAg、またその下層の硬質本体層の材質としてNi含有量15%のAgNiを用いているが、これに限らず、硬度に差があり、かつ接点の導通と回路の閉路および遮断の動作に問題の無い材質の組合せであれば、どのような材質を用いてもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、可動端子板12の長手方向と平行に切った可動接点11の断面形状を図4に示したが、接点の摺動方向によっては、可動接点11は、可動端子板12の短手方向の断面形状が図4の形状を成すものであってもよい。
【0043】
実施の形態2.
図5は、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態2の可動接触子の構造を示す図である。図5においては、可動接触子を上方から見た様子と側方から見た様子を関連づけて示している。本実施の形態の可動接触子においては、可動端子板22の両先端部が、先端側から形成されたスリットにより、それぞれ二叉状に分割されたいわゆるツイン構造の可動接触子とされている。可動端子板22を分割するスリットは、基部側22aで小さく先端側22bで大きい幅となっている。すなわち、スリットは、第1の幅W1で可動端子板22の基部を分割し、第1の幅W1より大きい第2の幅W2で可動端子板22の先端部を分割する。分割されたそれぞれの先端部には、各々可動接点11が搭載されている。
【0044】
図10は、実施の形態2の可動接触子の構造と比較の為に示す従来の可動接触子の構造を示す図である。従来のツイン構造の可動接触子においては、可動端子板22Aは、基部から先端部に均一な幅W1のスリット22Aaにより二叉状に分割されており、それぞれの先端部に各々可動接点11Aが搭載されていた。
【0045】
本実施の形態の可動接触子によれば、基部側で小さく先端側で大きい幅となったスリットにより分割されているので、可動接点11、11間の距離が従来のものより大きい。これは、長い繊維状の異物に対して接触信頼性を確保すべく、可動接点11、11間距離を従来よりも大きく確保しつつ、機械的開閉による可動端子板22の折損が従来よりも増加しないように、接点近辺以外のスリット幅は従来と等しく構成しているためである。そして、本実施の形態の可動端子板22に、図4に示す実施の形態1の可動接点11を搭載することで、さらに接触信頼性を向上させることができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態によれば、接触面積が小さくかつその接触面積を維持しやすく、さらに接点表面のAg層により、低電圧低電流領域での使用において硬い絶縁体で形成された異物が噛み込んでも、軟らかい材質のAgが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすいため、接触信頼性が向上する。
【0047】
また、ツイン構造の可動接触子において、隣り合う可動接点間距離は大きく確保されつつ、先端部以外のスリット幅は従来と同等であるため、従来の可動接触子構造よりも長い繊維状の異物に対する接触信頼性を向上させつつ可動端子板の折損は増加することがない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる接点開閉器は、例えば電源と負荷の間を閉路および開路することに使用される接点開閉器に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 固定鉄心
1a 中央磁極
1b 側部磁極
1c くま取りコイル
2 電磁コイル
2a 巻枠
3 背面側ケース
4 正面側ケース
4a ガイド孔
4b 当接面
5 固定接点
6 端子ねじ
7 固定接触子
8 可動接触子支持体
8a 四角孔
8b 当接面
9 可動鉄心
9a 中央磁極
9b 側部磁極
10 復帰ばね
11 可動接点
11a AgNi(Ni:15%)層(硬質本体層)
11b Ag層(軟質表面層)
11c ベースメタル部
12 可動端子板
13 接点ばね
20 可動接触子
20a ばね受け
100 接点開閉器
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源と負荷の間を閉路および開路することに使用される接点開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接点開閉器の接触信頼性を向上させる手段として、接点の先端に尖った凸部を設け、接触面積を小さくする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一定の接触力が加えられる場合において、接触面積が小さいほど接触圧力が大きくなるため接触時の信頼性が向上する。また、接触面積が小さいほど絶縁体で形成された異物を可動接点−固定接点間に噛み込む確率が低減するため、接触不良を起こし難くなる。
【0004】
図6は、従来の可動接点の横断面図である。図6に示す可動接点11Aの断面形状は、なるべく接触面積を小さくすべく略三角形の突起形状になっている。そして、三角形の突起形状の頂点は約2mmの曲率半径の湾曲面に形成されている。また、接点材質は純度99.9%以上のAgが用いられている。これは、低電圧低電流領域で使用する場合、接点開閉時に発生するアークエネルギーが弱く接点表面に発生する酸化皮膜を十分に破壊できない場合があり接触不良の原因となるため、これを抑制すべく、なるべくイオン化傾向が小さく錆び難いAgを採用していたためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−12219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の可動接点の断面形状における略三角形の突起の頂点が約2mmの曲率半径の湾曲面に形成されていたことから、突起先端が広くなだらかな形状となっており、接触面積を小さくするという目的を十分に果たせていないという課題があった。
【0007】
また、材質が純度99.9%以上のAgであり軟らかいため、接点の開閉回数が増えるにつれて頂点がつぶれ、さらに突起先端の平滑化が進み、接触面積が徐々に大となってしまうという課題があった。
【0008】
また、材質が軟らかいことから、硬い絶縁体で形成された異物を可動接点−固定接点間に噛み込んでしまうと、接点内に異物が埋まり込み外れず、その部分が接触点となることで接触不良を頻発させてしまうことがあるという課題があった。
【0009】
そこで、上記課題を解決すべく、可動接点の断面形状における略三角形の突起の頂点を鋭角化し接点材質を十分硬度の高い金属にすると、接触面積が小さくかつ小さな接触面積を維持することができるため、一般的には従来の可動接点よりも接触信頼性が向上する。しかしながら、所定以下の低い電圧・電流で使用する場合においては、逆に従来の可動接点よりも接触信頼性が低下する領域が存在するという問題があった。
【0010】
つまり、低電圧低電流領域での使用においては、図7に示すように、従来は硬い絶縁体の異物Zを噛み込んでも、軟らかい材質(Ag)で作成された可動接点11B凹むことで、可動接点11B−固定接点5間の空間距離D1が小さくなり、絶縁破壊が発生することにより導通を確保できる場合があった。しかし、単純に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った接点は、図8に示すように、突起頂点を鋭角化しているため接触点以外の可動接点11C−固定接点5間の空間距離D2が従来よりも大であり、なおかつ硬い絶縁体の異物Zを噛みこんでも接点の凹む量は少ないため、絶縁破壊による導通確保が得られ難い。そのため、従来の可動接点よりも接触信頼性が低下してしまうという課題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、固定接点と可動接点との接触信頼性の向上を図ることができる接点開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる接点開閉器は、固定接点が設けられた固定接触子と、固定接点と対向し固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、可動接点は、固定接点と接触する先端部が、先端角を構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層を有する接点本体と、硬質本体層の先端側の表面に、軟質材にて硬質本体層より薄く且つ接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる接点開閉器は、固定接点が設けられた固定接触子と、固定接点と対向し固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、分割された可動端子板の先端部に各々搭載された可動接点とを有し、スリットは、第1の幅で可動端子板の基部を分割し、第1の幅より大きい第2の幅で可動端子板の先端部を分割することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定接点と可動接点との接触信頼性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明にかかる接点開閉器の基礎的な構造を示す横断面図である。
【図2】図2は、図1の接点開閉器の可動接触子及び固定接触子の斜視図である。
【図3】図3は、図2の可動接触子が固定接触子に接触する様子を示す側面図である。
【図4】図4は、実施の形態1の可動接点の断面形状を示す図である。
【図5】図5は、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態2の可動接触子の構造を示す図である。
【図6】図6は、従来の可動接点の断面形状を示す図である。
【図7】図7は、従来の可動接点と固定接点との間に異物を噛み込んだ状態を示す図である。
【図8】図8は、単純に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った可動接点と固定接点との間に異物を噛み込んだ状態を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態1の可動接点に対して比較のために用意した軟質表面層を削除した可動接点の断面形状を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態2の可動接触子の構造と比較の為に示す従来の可動接触子の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる接点開閉器の基礎的な構造を示す横断面図である。図2は、図1の接点開閉器の可動接触子及び固定接触子の斜視図である。図3は、図2の可動接触子が固定接触子に接触する様子を示す側面図である。
【0018】
図1に示すように、接点開閉器100のケースは、固定鉄心1及び電磁コイル2などを設置する背面側ケース3と、接触子などを収容し背面側ケース3に被せる正面側ケース4とから成る。正面側ケース4の中段には、内側端に固定接点5、5が固着され、外側端に端子ねじ6、6を備えて外部接続端子となる一対の固定接触子7、7が、所定距離離間して固定されている。
【0019】
一対の固定接触子7、7の間、すなわち接点開閉器100の中央には、可動接触子支持体8が設置されている。可動接触子支持体8は、その外側端が正面側ケース4のガイド孔4aにガイドされ、図の上下方向に移動可能となっている。可動接触子支持体8の内側端には、可動鉄心9が取付けられている。
【0020】
また、電磁コイル2が巻かれた巻枠2aが中央磁極1aに嵌挿された固定鉄心1が、背面側ケース3内に設置されている。巻枠2aの正面側の鍔と可動鉄心9の凹部との間には、電磁コイル2の非通電時(固定鉄心1の非励磁時)に固定鉄心1と可動鉄心9とを離間させ、可動鉄心9を復帰させるための円錐状に巻かれた復帰ばね10が装着されている。
【0021】
可動接触子支持体8の図示左右方向を向く四角孔8aには、固定接点5、5のそれぞれに接触、離間する可動接点11、11を両端に設けた可動接触子20が、その中央部を四角孔8aに位置させるようにして挿入され支持されている。
【0022】
図2に示すように、可動接触子20は、細長板状の可動端子板12と、この可動端子板12の両端部に搭載された可動接点11、11とから構成され、所定の間隔だけ離れて配置された固定接点5、5に可動接点11、11を対向させるように配置されている。可動端子板12は、固定接点5、5間に凸を向けるように弓型に折り曲げられ、両端部の固定接点5、5側面に可動接点11、11を固定している。図3に示すように、可動接点11は、断面が偏平五角形の短尺柱状を成し断面三角形の先端部を固定接点5、5方向に向けて頂部稜線が可動端子板12の短手方向に延びるように配設されている。
【0023】
図1に戻り、可動接触子20の中央部正面側には、ばね受け20aが固定され、可動接触子20は、ばね受け20aを介して接点ばね13の一端に係合し接点ばね13に支持されている。接点ばね13は少し圧縮され、その他端が四角孔8aの正面側の面に支持されている。このようにして、接点ばね13の他端及び可動接触子20の中央部は、可動接触子支持体8に支持されている。
【0024】
固定鉄心1及び可動鉄心9は、三叉状に形成され、それぞれ対向する中央磁極1a、9a及び二つの側部磁極1b、1b、9b、9bを有している。固定鉄心1の側部磁極1b、1bの吸引面には、くま取りコイル1c、1cが装着されている。
【0025】
電磁コイル2が非通電の非励磁状態では、可動接触子20は、接点ばね13により四角孔8aの背面側の面に押付けられている。また、復帰ばね10の復帰力により、可動接触子支持体8の当接面8bが、正面側ケース4の当接面4bに当接している。
【0026】
また、電磁コイル2が通電されて固定鉄心1が励磁され、可動鉄心9が固定鉄心1に吸引されて可動接触子支持体8が駆動され、可動接点11、11が固定接点5、5に接触した後、可動鉄心9の対向面が固定鉄心1の吸引面に吸着される。
【0027】
図4は、実施の形態1の可動接点11の断面形状を示す図である。すなわち、図4は、可動接点11を、可動端子板12の長手方向に平行な面で切った断面形状を示したものである。上記のように、可動接点11は、断面が偏平五角形の短尺柱状を成し断面三角形の先端部を固定接点5、5方向に向けて頂部稜線が可動端子板12の短手方向に延びるように配設されており、固定接点5と接触する先端部形状が、断面において先端角度θが156°から166°の範囲で且つ頂部先端Tが曲率半径0.1mm以下の円弧となる三角形状を成している。
【0028】
可動接点11は、三層構造を成しており、硬い材質であるNi含有量約15%のAgNiで形成され、先端角度θが156°から166°の範囲の断面三角形状を成す硬質本体層(以降、AgNi層と言う)11aと、AgNi層11aとともにコンタクトメタル部を構成し、AgNi層11aの先端側を覆うように、軟らかい材質である純度99.9%以上のAgで皮膜状に形成された軟質表面層(以降、Ag層と言う)11bと、AgNi層11aと可動端子板12との間に設けられ、AgNi層11aとともに接点本体を構成し、AgNi層11aとAg層11bとから成るコンタクトメタル部を可動端子板12上に支持するベースメタル部11cとから構成されている。
【0029】
AgNi層11aとAg層11bとから成るコンタクトメタル部とベースメタル部11cを合わせた部分、すなわち、接点本体の厚さHが0.8mmであるのに対し、Ag層11bの厚さは0.075mmであり、Ag層11bの厚さは接点本体の厚さの約1割の厚さとなっている。同一形状の接点における材質ごとの硬さの参考比較を、下表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
接点は、接点を構成する粒子径の細かさ(密度の大小)によっても硬さが変化するため一概には言えないが、一般的にはNi含有量約15%のAgNiであれば、純度99.9%以上のAgよりも十分に硬い材質であると考えられる。
【0032】
このAg層11bによって、低電圧低電流領域での使用において硬い絶縁体で形成された異物が噛みこんでも、軟らかい材質のAgが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすくなる。またAg層11bは厚さが小さい(本実施の形態では厚さ0.075mm)ため、絶縁体で形成された異物は、Ag層11bが凹むだけで接点の内部へ完全に埋まり込んでしまうことも少なく、また仮に薄いAg層11b内部に異物が埋まったとしても、開閉衝撃により異物が取れ易い構造となっている。
【0033】
また、前記略三角形の突起の頂点が成す角度θは、156°〜166°程度かつ頂点は半径0.1mm以下で形成されており、突起が十分に鋭い形状であるため、接触面積が小さい。また、Ag層11bの下層には、Ag層11bに対し十分に硬くかつ厚いAgNi(Ni:15%)層であるコンタクトメタル部が存在しているため、接点開閉によって頂点がつぶれることによる突起先端の平滑化が起こり難く、小さな接触面積を維持しやすい。
【0034】
接触面積を小さくするためには前記略三角形の突起の頂点をなるべく鋭角にしたい。しかしながら、鋭角にしすぎると、接触点以外の可動接点−固定接点間の空間距離が大きいため、絶縁破壊による導通確保が難しくなる。この両者はトレードオフの関係にあるが、この両者をどちらも満足するべく適当な角度として、前記略三角形の突起の頂点が成す角度は156°〜166°に構成されている。
【0035】
ここで、本実施の形態の効果の一例として、図4に示す本実施の形態の可動接点11と、図6に示す従来の可動接点11Aと、図9に示す本実施の形態の可動接点からAg層11bを除いた可動接点11Dの3種の可動接点にて行った接触信頼性試験(ある検出抵抗値を上回ったら故障)の結果を示す。なお、可動接点の厚さHは、すべて0.8mmとして比較した。同一の接点開閉器10台に可動接点を各4接点ずつ(計40接点)備え付け、それを一定の開閉頻度により下記接点電圧・電流にて下記回数まで開閉した場合の、信頼水準60%における接触不良発生率(故障率)の比較を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表中(1)の条件では、上記3種の可動接点において、故障率に差は無い。ただし一般的には、開閉回数がより多くなると、従来の可動接点(図6)の故障率は、本実施の形態の可動接点(図4)および本実施の形態の可動接点と形状は等しいがAg層11bは無い可動接点(図9)よりも悪くなる傾向にある。
【0038】
一方、より低電圧低電流域での使用となる表中(2)の条件になると、5万回および125万回の開閉時でも上記3種の可動接点において故障率に差が生じ、本実施の形態の可動接点(図4)が最も故障率が低く、一方で、単に突起頂点の鋭角化かつ材質硬度化を図った接点である本実施の形態の可動接点と形状は等しいがAg層11bは無い可動接点(図9)は、従来の可動接点(図6)よりも故障率が高くなってしまうことがわかる。
【0039】
低電圧低電流での使用の場合、可動接点−固定接点間に発生するアークエネルギーは極微量であるため、接点本体の厚さの約1割程度の厚さ(本実施の形態では厚さ0.075mm)のAg層11bがあれば、アークによってAg層11bがすべて消耗して無くなってしまうことも無く、絶縁体で形成された異物がかみ込んでも軟らかい材質のAg層11bが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすくなる。また接点表面がイオン化傾向の小さいAgであるため、接点表面に酸化被膜が発生し難く、接触信頼性の高い良好な状態を保ち易い。
【0040】
高電圧高電流での使用の場合は、接点本体の厚さの約1割程度の厚さしかないAg層11bは可動接点−固定接点間に発生するアークエネルギーによって消耗し無くなってしまうこともあるが、Ag層11bの下層であるAgNi層11aは十分に硬い金属であるため、鋭角な突起頂点形状を維持し易く開閉回数が増えても接触面積が小さいままであるから、高い接触信頼性を継続することができる。Ag層11bがすべて消耗して無くなってしまうとAg層11bが凹むことによる可動接点−固定接点間の空間距離縮小効果が得られなくなるが、そもそも高電圧高電流である場合は、低電圧低電流に比べて絶縁破壊しやすいため、従来の接点よりも突起頂点が鋭角化されて可動接点−固定接点間の空間距離が大きくなったとしても、接触面積を小さいまま維持できる効果の方が影響は大きく接触信頼性は向上する。
【0041】
本実施の形態においては、軟質表面層の材質としてAg、またその下層の硬質本体層の材質としてNi含有量15%のAgNiを用いているが、これに限らず、硬度に差があり、かつ接点の導通と回路の閉路および遮断の動作に問題の無い材質の組合せであれば、どのような材質を用いてもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、可動端子板12の長手方向と平行に切った可動接点11の断面形状を図4に示したが、接点の摺動方向によっては、可動接点11は、可動端子板12の短手方向の断面形状が図4の形状を成すものであってもよい。
【0043】
実施の形態2.
図5は、本発明にかかる接点開閉器の実施の形態2の可動接触子の構造を示す図である。図5においては、可動接触子を上方から見た様子と側方から見た様子を関連づけて示している。本実施の形態の可動接触子においては、可動端子板22の両先端部が、先端側から形成されたスリットにより、それぞれ二叉状に分割されたいわゆるツイン構造の可動接触子とされている。可動端子板22を分割するスリットは、基部側22aで小さく先端側22bで大きい幅となっている。すなわち、スリットは、第1の幅W1で可動端子板22の基部を分割し、第1の幅W1より大きい第2の幅W2で可動端子板22の先端部を分割する。分割されたそれぞれの先端部には、各々可動接点11が搭載されている。
【0044】
図10は、実施の形態2の可動接触子の構造と比較の為に示す従来の可動接触子の構造を示す図である。従来のツイン構造の可動接触子においては、可動端子板22Aは、基部から先端部に均一な幅W1のスリット22Aaにより二叉状に分割されており、それぞれの先端部に各々可動接点11Aが搭載されていた。
【0045】
本実施の形態の可動接触子によれば、基部側で小さく先端側で大きい幅となったスリットにより分割されているので、可動接点11、11間の距離が従来のものより大きい。これは、長い繊維状の異物に対して接触信頼性を確保すべく、可動接点11、11間距離を従来よりも大きく確保しつつ、機械的開閉による可動端子板22の折損が従来よりも増加しないように、接点近辺以外のスリット幅は従来と等しく構成しているためである。そして、本実施の形態の可動端子板22に、図4に示す実施の形態1の可動接点11を搭載することで、さらに接触信頼性を向上させることができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態によれば、接触面積が小さくかつその接触面積を維持しやすく、さらに接点表面のAg層により、低電圧低電流領域での使用において硬い絶縁体で形成された異物が噛み込んでも、軟らかい材質のAgが凹むことで、可動接点−固定接点間の空間距離が小さくなり、絶縁破壊がおきることにより導通を確保しやすいため、接触信頼性が向上する。
【0047】
また、ツイン構造の可動接触子において、隣り合う可動接点間距離は大きく確保されつつ、先端部以外のスリット幅は従来と同等であるため、従来の可動接触子構造よりも長い繊維状の異物に対する接触信頼性を向上させつつ可動端子板の折損は増加することがない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる接点開閉器は、例えば電源と負荷の間を閉路および開路することに使用される接点開閉器に有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 固定鉄心
1a 中央磁極
1b 側部磁極
1c くま取りコイル
2 電磁コイル
2a 巻枠
3 背面側ケース
4 正面側ケース
4a ガイド孔
4b 当接面
5 固定接点
6 端子ねじ
7 固定接触子
8 可動接触子支持体
8a 四角孔
8b 当接面
9 可動鉄心
9a 中央磁極
9b 側部磁極
10 復帰ばね
11 可動接点
11a AgNi(Ni:15%)層(硬質本体層)
11b Ag層(軟質表面層)
11c ベースメタル部
12 可動端子板
13 接点ばね
20 可動接触子
20a ばね受け
100 接点開閉器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点が設けられた固定接触子と、前記固定接点と対向し前記固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、
前記可動接点は、前記固定接点と接触する先端部が、先端角を構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、
少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層を有する接点本体と、
前記硬質本体層の先端側の表面に、軟質材にて前記硬質本体層より薄く且つ前記接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層と、を備えた
ことを特徴とする接点開閉器。
【請求項2】
前記硬質本体層を形成する硬質材がAg合金であり、前記軟質表面層を形成する軟質材がAgである
ことを特徴とする請求項1に記載の接点開閉器。
【請求項3】
前記Ag合金が、Ni含有量約15%のAgNiである
ことを特徴とする請求項2に記載の接点開閉器。
【請求項4】
前記可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、前記分割された可動端子板の先端部に各々搭載された前記可動接点とを有し、
前記スリットは、第1の幅で前記可動端子板の基部を分割し、前記第1の幅より大きい第2の幅で前記可動端子板の先端部を分割する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接点開閉器。
【請求項5】
固定接点が設けられた固定接触子と、前記固定接点と対向し前記固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、
前記可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、前記分割された可動端子板の先端部に各々搭載された前記可動接点とを有し、
前記スリットは、第1の幅で前記可動端子板の基部を分割し、前記第1の幅より大きい第2の幅で前記可動端子板の先端部を分割する
ことを特徴とする接点開閉器。
【請求項1】
固定接点が設けられた固定接触子と、前記固定接点と対向し前記固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、
前記可動接点は、前記固定接点と接触する先端部が、先端角を構成する2辺の成す角度が156°から166°の範囲で且つ頂部先端が曲率半径0.1mm以下の円弧の概略三角形の断面形状の有する柱状を成し、
少なくとも先端部側に、硬質材にて形成された硬質本体層を有する接点本体と、
前記硬質本体層の先端側の表面に、軟質材にて前記硬質本体層より薄く且つ前記接点本体の厚さの約1割の厚さに形成された軟質表面層と、を備えた
ことを特徴とする接点開閉器。
【請求項2】
前記硬質本体層を形成する硬質材がAg合金であり、前記軟質表面層を形成する軟質材がAgである
ことを特徴とする請求項1に記載の接点開閉器。
【請求項3】
前記Ag合金が、Ni含有量約15%のAgNiである
ことを特徴とする請求項2に記載の接点開閉器。
【請求項4】
前記可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、前記分割された可動端子板の先端部に各々搭載された前記可動接点とを有し、
前記スリットは、第1の幅で前記可動端子板の基部を分割し、前記第1の幅より大きい第2の幅で前記可動端子板の先端部を分割する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接点開閉器。
【請求項5】
固定接点が設けられた固定接触子と、前記固定接点と対向し前記固定接点と接離する可動接点が設けられた可動接触子とを備えた接点開閉器において、
前記可動接触子は、先端側から形成されたスリットにより先端部が二叉状に分割された可動端子板と、前記分割された可動端子板の先端部に各々搭載された前記可動接点とを有し、
前記スリットは、第1の幅で前記可動端子板の基部を分割し、前記第1の幅より大きい第2の幅で前記可動端子板の先端部を分割する
ことを特徴とする接点開閉器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−210611(P2011−210611A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78528(P2010−78528)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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