説明

接点開閉機構及び電磁継電器

【課題】接点間に発生するアークを、可動接触片のバネ性に悪影響を与えることなく、簡単かつ安価な構成により、迅速に消弧させる。
【解決手段】固定接点57を有する固定接触片51と、固定接点57に接離可能に対向する可動接点62を有する可動接触片52とを備える。接触片の少なくともいずれか一方は、残る他方の接触片に設けた接点側へと延びる延在部59bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点開閉機構、及び、この接点開閉機構を備えた電磁継電器、特に、パワーリレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接点開閉機構として、可動接点を設けた板バネの左右いずれかの側端に、アークの引き延ばしを終端させるための突出片を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来の接点開閉機構では、接点間に発生したアークを磁力によって引き延ばし、突出片で終端させるようとしているものの、この突出片の位置は、接点間距離よりも離れている。このため、実際にアークが発生した場合、その終端位置が必ずしも突出片とならない恐れがある。
【0004】
また、他の接点開閉機構として、固定電極にアークランナー導体を設け、さらにこのアークランナー導体に突起を設けることにより、開極時に可動電極接点と固定電極接点との間に発生するアークを可動電極の先端と突起との間に転流させるようにしたものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、前記従来の接点開閉機構では、電極に別部材としてアークランナー導体が必要であり、しかもこのアークランナー導体に突起を設けるための別加工を行わなければならない。このため、構造が複雑化すると共にコストアップを招来するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196372号公報
【特許文献2】特開2010−170876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接点間に発生するアークを、可動接触片のバネ性に悪影響を与えることなく、簡単かつ安価な構成により、迅速に消弧させることのできる接点開閉機構及び電磁継電器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
接点開閉機構を、
固定接点を有する固定接触片と、前記固定接点に接離可能に対向する可動接点を有する可動接触片とを備え、
前記各接触片は、ベースに固定される固定部と、ベースから突出して接点が設けられる本体部とを有し、
前記接触片の少なくともいずれか一方は、残る他方の接触片に設けた接点側へと延びる延在部を備え、
前記延在部は、接点を挟んで固定部とは反対側に形成した構成としたものである。
【0009】
この構成により、接点間に発生したアークを確実に延在部へと導くことができ、早期に消弧させることが可能となる。また、アークが消弧する際、延在部が損傷したとしても、それは導通部分とは関係のない領域とすることができる。さらに、接触片の導通領域から延設部の先端位置までの距離を十分に大きくとるようにすれば、アークによる損傷に対して耐性のある構造とすることが可能となる。
【0010】
前記延在部は、本体部から突出する接点よりも突出寸法が大きいのが好ましい。
【0011】
この構成により、接点間に発生したアークを、より一層、効果的に消弧させることができる。
【0012】
前記延在部は、本体部を屈曲することにより形成するのが好ましい。
【0013】
この場合、本体部をほぼ直角に屈曲するのが好適である。
【0014】
前記接点間に発生したアークを、前記延在部へと引き延ばす磁石を備えるのが好ましい。
【0015】
この構成により、接点間に発生するアークを延在部へと伸長させることで、より一層、効果的に消弧させることができる。
【0016】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、電磁継電器を、前記いずれかに記載した接点開閉機構を備えた構成としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少なくともいずれか一方の接触片に、残る他方の接触片に設けた接点側へと延びる延在部を形成するようにしたので、接点間に発生したアークを確実に延在部へと伸長させることができ、早期に消弧させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電磁継電器の斜視図である。
【図2】図1からケース及びアーク消弧部材を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】図1からケースのみを除去した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】図4を反対側から見た状態を示す分解斜視図である。
【図6】(a)はベースを上方側から見た状態を示す斜視図、(b)はベースを下方側から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図2に示す電磁石ブロック及び可動鉄片の分解斜視図である。
【図8】図2に示す電磁石ブロックと可動鉄片の分解斜視図である。
【図9】図1からケースを除去した状態を示す接点閉成時の断面図である。
【図10】図1からケースを除去した状態を示す接点開放時の断面図である。
【図11】図3の接点開閉部の拡大斜視図である。
【図12】図4の電磁石ブロックによる吸引力曲線と、可動接触片に作用する力の変化を示すグラフである。
【図13】図4の可動接触片を示す拡大斜視図である。
【図14】他の実施形態に係る電磁継電器の接点開閉機構を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(1.全体構成)
図1から図5は、本実施形態に係る電磁継電器を示す。この電磁継電器は、大略、ベース1に、電磁石ブロック2、接点開閉部3、及び、可動鉄片4を設け、ケース5を被せたものであり、ここでは、印加電圧が400Vで、通電量が20Aのパワーリレーを使用している。
【0021】
(1−1.ベース1)
ベース1は、図6に示すように、合成樹脂材料を成形加工することにより平面視矩形状に形成され、長手方向の2箇所には、第1装着部6と第2装着部7が設けられている(以下、長辺に沿って長手方向に延びる方向をX軸、短辺に沿って短手方向に延びる方向をY軸、高さ方向に延びる方向をZ軸として説明する)。
【0022】
第1装着部6は、後述する電磁石ブロック2を装着するためのもので、ベース1の上面に形成される第1周縁壁8と第2装着部7とで囲まれた凹所9内に支持凹部10が形成されている。凹所9の底面には、支持凹部10の(ベース1の短手方向:YY´方向)両側に、上下面に貫通する一対のコイル端子孔11がそれぞれ形成されている。
【0023】
支持凹部10の(ベース1の長手方向)近傍にはガイド部12が形成されている。ガイド部12は、短手方向(YY´方向)に対応して設けた一対のガイド壁13と、これらを結ぶ絶縁壁14とで構成されている。ガイド壁13の対向面には、上下方向に延びるガイド溝15がそれぞれ形成されている。両ガイド溝15により、後述するヨーク41の両側部がガイドされる。また、ガイド壁13と絶縁壁14で囲まれた領域の中央部分には、ガイド凹部16が形成されている。ガイド凹部16には、後述するヒンジバネ44の被ガイド部50が位置する。
【0024】
第2装着部7は、接点開閉部3を装着するためのもので、前記第1装着部6の第1周縁壁8と同一高さの台座部17が形成されている。台座部17には、YY´方向に延びる、スリット状をした第1端子孔18が形成されている。第1端子孔18は、ベース1の底面では両側の2箇所の連通部19でのみ貫通し、後述する可動接触片52が圧入されるようになっている。台座部17の第1装着部側を除く3辺からは第2周縁壁20が形成されている。第2周縁壁20のX´方向側を構成する部分は肉厚が大きくなり、そこにはYY´方向に延びる、スリット状をした一対の第2端子孔21がそれぞれ形成されている。
【0025】
(1−2.電磁石ブロック2)
電磁石ブロック2は、図7及び図8に示すように、鉄心22にスプール23を介してコイル24を巻回したものである。
【0026】
鉄心22は、磁性材料を棒状としたもので、下端部に鍔状の磁極部25が形成され、上端部にはヨーク41が加締固定されるようになっている。
【0027】
スプール23は、合成樹脂材料を成形加工することにより得られ、中心孔26を形成する筒状の胴部27と、その上下両端部に形成される鍔部(上端側鍔部28及び下端側鍔部29)とで構成されている。
【0028】
上端側鍔部28は、上面に逃がし溝30が形成され、そこには中心孔26が開口している。逃がし溝30には、後述するヨーク41の一端部が配置される。下端側鍔部29には中心孔26が開口し、そこから鉄心22を挿入可能となっている。
【0029】
下端側鍔部29の両側部には端子取付部31が設けられ、そこには端子保持孔32がそれぞれ形成されている。各端子保持孔32には、後述するコイル端子36が圧入固定される。端子取付部31の一端両側には段部33がそれぞれ形成され、端子保持孔32に圧入固定したコイル端子36のコイル巻付部39がそれぞれ突出するようになっている。また、下端側鍔部29には、胴部27から側端面に掛けて一方の段部33へと連通する案内溝34が形成されている。案内溝34には、胴部27に巻回するコイル24の一端側(巻き始め側)が配置され、段部33に突出するコイル端子36のコイル巻付部39に巻き付けられるようになっている。下端側鍔部29の底面には所定間隔で一対のガイド突部35が設けられている。これらガイド突部35は、ベース1の支持凹部10内に位置してベース1に対してスプール23すなわち電磁石ブロック2を位置決めする役割を果たす。
【0030】
コイル端子36は、導電性材料を平板状としたもので、下端部は下方に向かうに従って徐々に幅及び厚みが小さくなるように形成されている。コイル端子36の上端部にはプレス加工により片面から膨出する圧入部37が形成され、その上方部分は幅広部38となっている。幅広部38の一端からはコイル巻付部39が突出している。
【0031】
コイル24は、スプール23の胴部27に巻回された後、外周面に絶縁シート40が貼着されるようになっている。コイル24の一端部が前記スプール23の案内溝34に配置され、スプール23の胴部27への巻回後、両端部はそれぞれ各コイル端子36のコイル巻付部39に巻き付けられた後、半田付けされる。
【0032】
前記鉄心22の一端部にはヨーク41が加締固定されている。
ヨーク41は、磁性材料を略L字形となるように折り曲げたものである。ヨーク41の一端部には、前記鉄心22の一端部を挿通して加締固定するための開口部41aが形成されている。ヨーク41の他端部は幅広となって、その下端部両側には突出部42がそれぞれ形成されている。両突出部42の間には、後述する可動鉄片4が位置し、一方の角部が可動鉄片4を回動可能に支持する支点として機能している。ヨーク41の中間部外面には、上下2箇所に加締用の突起43が形成されている。
【0033】
前記ヨーク41の中間部には、前記突起43を利用してヒンジバネ44が加締固定されている。但し、ヨーク41へのヒンジバネ44の固定方法は、加締に限らず、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等、他の方法で行うようにしてもよい。
【0034】
ヒンジバネ44は、ヨーク41の中間部外面に面接触する接続部45を備える。接続部45には、2箇所に貫通孔45aが形成され、前記ヨーク41の突起43が挿通されて加締られるようになっている。
【0035】
(1−3.接点開閉部3)
接点開閉部3は、図4及び図5に示すように、銅等の導電性材料を板状にプレス加工した、固定接触片51と可動接触片52とで構成されている。
【0036】
固定接触片51は、圧入部53と、圧入部53から下方側に延びる端子部54と、圧入部53から上方側に延びる本体部55とで構成されている。圧入部53には、プレス加工により片面から膨出する膨出部56が形成されている。この膨出部56によりベース1の第2端子孔21に圧入可能となっている。端子部54は、圧入部53よりも幅狭で、片側に位置をずらせて形成されている。本体部55は、端子部54とは反対側に位置をずらせて形成され、圧入部53のほぼ半分の幅寸法となっている。本体部55の上端部には貫通孔が形成され、そこには固定接点57が加締固定されている。
【0037】
可動接触片52は、圧入部58と、圧入部58の両側から上方側へとそれぞれ延びる一対の本体部59とで構成されている。
圧入部58には、前記固定接触片51と同様に、上下方向中央部に幅方向に延びる膨出部60が形成され、ベース1の第1端子孔18に圧入可能となっている。また、圧入部58の下縁両端部には下方に突出する一対の突起61が形成されている。
【0038】
本体部59は、圧入部58の近傍部分で屈曲されて延びており、上端部には貫通孔59aが形成され、そこには可動接点62がそれぞれ加締固定されている。また、本体部59の上端部には、図13に示すように、固定接触片51側に向かって斜め上方へと屈曲する延在部59bが形成されている。本体部59に対する延在部59bの傾斜角度は、ここでは約140度としている。但し、この約140度から約90度までの範囲であれば、自由に選択することができる。そして、延在部59bの先端部分は、本体部59に垂直な方向での位置が、可動接点62よりも突出するように延在されている。
【0039】
可動接触片52は、圧入部58をベース1の第1端子孔18に圧入された状態で、可動接点62が第2端子孔21に圧入された固定接触片51の固定接点57に接離可能に対向させる。そして、この状態では、図10に示すように、延在部59bの先端部分が、前述の通り、可動接点62よりも突出することにより固定接点57側に接近している。したがって、接点間にアークが発生したとしても、このアークは、延在部59bの先端部分へと伸長し、この延在部を介して早期に消弧されることになる。
【0040】
(1−4.可動鉄片4)
可動鉄片4は、図7及び図8に示すように、板状の磁性材料をプレス加工により略L字形に形成したものである。可動鉄片4の一端側は、鉄心22の磁極部25に吸引される被吸引部63である。被吸引部63の先端部及び基部は幅狭となっており、スプール23の底面に形成したガイド突部35と、ヨーク41の下端部に形成した突出部42との干渉がそれぞれ回避されている。可動鉄片4の他端側には開口部64が形成されている。開口部64にはヒンジバネ44が挿通し、被吸引部63の角部に圧接している。可動鉄片4の他端部は幅狭となっており、又、開口部64の上方側にはカード部材65が一体化されている。
【0041】
カード部材65は、合成樹脂材料からなり、一体化した可動鉄片4の上端側が露出する一方の面には、可動鉄片4の上端部の両側に形成される第1突出部66と、上方側に形成される第2突出部67とがそれぞれ形成されている。可動鉄片4の被吸引部63が鉄心22の磁極部25から離間した際、第2突出部67にヒンジバネ44の弾性当接部46が衝突した後、第1突出部66がヨーク41に当接するように構成されている。カードの他方の面には、幅方向に所定間隔で上下方向に延びる突条部68が形成されている。突条部68の上端部には、さらに突出する押圧部69が形成され、可動接触片52の本体部59の上端部を押圧可能となっている。カード部材65の下端部には、他方の面よりも突出し、さらに下方側へと延びる遮蔽壁70が形成されている。
【0042】
(1−5.ケース5)
ケース5は、図2に示すように、合成樹脂材料を下面が開口する箱状としたものである。ケース5の上面角部には密閉用孔71が形成されている。密閉用孔71は、ベース1とケース5の嵌合部分のシール後に熱封止される。ケース5の上面縁部(密閉用孔71と反対側)には、両側及び中央部にスリット状の凹部72がそれぞれ形成されている。各及ぶ72の間には、上面よりも窪んだ凹所73が形成されており、その上面中央部には突起74がそれぞれ形成されている。
【0043】
前記ケース5には、凹部72及び凹所73を利用してアーク消弧部材75が取り付けられている。
【0044】
アーク消弧部材75は、アークを消弧させるために所定間隔で配置した一対の永久磁石76と、これら永久磁石76を磁気的に接続するための磁性材料からなる接続部材77とで構成されている。
【0045】
永久磁石76は略直方体形状で、接続部材77の両対向壁78の内面に取り付けた状態で、対向面が異なる極性となるように配置される。但し、対向面の極性は、接点間で電流が流れる方向の違いに応じてアーク電流に作用する力の方向が、後述する接続部材77の中間壁79側へと向かうように設定すればよい。
【0046】
接続部材77は、板状の磁性材料をプレス加工により、両端側が互いに対向するように屈曲したものである。各対向壁78の内面には永久磁石76がそれ自身の磁力によって吸着固定されている。接続部材77の中間壁79には、両側部がそれぞれ異なる端部側から切り起こされることにより、前記各対向壁78の間に位置する中間突出部80がそれぞれ形成されている。各中間突出部80は、両対向壁78の中央部に位置し、両接点開閉位置の間に突出することにより磁路を短くする役割を果たしている。すなわち、各永久磁石76から発生した磁束は、中間突出部80を介して中間壁79及び各対向壁78を通過し、永久磁石76に戻る磁気回路で閉ループを構成する。
【0047】
このように、前記アーク消弧部材75によれば、一対の永久磁石76だけでなく、これらを磁気的に接続するための接続部材77を設けるようにしている。このため、磁気回路が形成され、磁束漏れが発生しにくくなる。また、中間突出部80を設けることにより、磁路を短く設定することができる。したがって、磁気効率を高めることが可能となる。この結果、接点開閉時にアークが発生したとしても、このアークは、フレミング左手の法則によって側方に伸長され、短時間で消弧されることになる。
【0048】
(2.組立方法)
続いて、前記構成からなる電磁継電器の組立方法について説明する。
【0049】
スプール23の胴部27にコイル24を巻回し、下端側鍔部29にコイル端子36を圧入固定する。コイル24の両端部は、コイル巻付部39に巻き付けて半田付けする。また、スプール23の中心孔26に、下端側から鉄心22を挿通し、上端から突出する部分に、予めヒンジバネ44を取り付けたヨーク41を加締固定する。これにより、電磁石ブロック2が完成する。
【0050】
完成した電磁石ブロック2には、ヒンジバネ44を利用してヨーク41の下端部に可動鉄片4を回動可能に支持する。この状態では、可動鉄片4に一体化したカード部材65の第1突出部66がヨーク41に当接可能となり、又、ヒンジバネ44の弾性当接部46がカード部材65の第2突出部67に接離可能となる。そして、可動鉄片4を取り付けた電磁石ブロック2と、接点開閉部3とをベース1に装着する。
【0051】
電磁石ブロック2の装着では、コイル端子36をベース1のコイル端子孔11に圧入し、ヨーク41の両側部をガイド壁13のガイド溝15に挿入する。装着状態では、ガイド突部35が支持凹部10内に位置し、電磁石ブロック2がYY´方向に位置決めされる。また、ヨーク41の突出部42の下端面と、端子取付部31の底面とがそれぞれベース1の凹所9の底面に当接する。これにより、ベース1の凹所9の底面とスプール23の下端側鍔部29の底面との間に可動鉄片4が回動可能な隙間が形成される。可動鉄片4に一体化したカード部材65の遮蔽壁70がベース1の絶縁壁14を越えて配置される。このとき、ベース1のガイド壁13及び絶縁壁14、カード部材65の上方部及び遮蔽壁70によって、電磁石ブロック2と接点開閉部3との間の絶縁性が十分に確保される。
【0052】
また、接点開閉部3の装着では、可動接触片52の圧入部58をベース1の第1端子孔18に圧入する。可動接触片52の装着では、突起61が連通部19に位置することにより、ベース1の底面から可動接触片52の装着状態を確認することができるようになっている。また、可動接触片52の上端部には、先に装着したカード部材65の押圧部69が圧接し、可動鉄片4は、可動接触片52の弾性力によって被吸引部63が鉄心22の磁極部25から離間した初期位置に位置決めされる。
【0053】
また、固定接触片51の端子部54をベース1の第2端子孔21に挿入し、圧入部53を圧入して固定する。この状態では、固定接触片51は可動接触片52に所定間隔で対向し、固定接点57に対して可動接点62が接離可能となる。また、可動接触片52の上端部から延在する延在部59bの先端部分は、後述するように、永久磁石76によってアークが引き延ばされる方向の所定領域内において、本体部59よりも固定接触片51側に突出している。
【0054】
また、ケース5にアーク消弧部材75を取り付ける。アーク消弧部材75の取付では、接続部材77の対向壁78に永久磁石76を取り付けた状態で、ケース5に形成した各凹部72に、接続部材77の対向壁78及び永久磁石76と、中間突出部80とをそれぞれ挿通する。そして、アーク消弧部材75を取り付けたケース5をベース1に被せ、両者の嵌合部分をシールする。
【0055】
なお、内部空間は、密閉用孔71を熱封止することにより密封状態とすればよい。但し、密閉用孔71は開放したままとし、内部空間を周囲雰囲気と連通した状態で使用することも可能である。
【0056】
(3.動作)
次に、前記構成からなる電磁継電器の動作について説明する。
【0057】
コイル24に通電しておらず、電磁石ブロック2が消磁している状態では、可動鉄片4が可動接触片52の弾性力によってヨーク41によって支持された支点を中心として被吸引部63を鉄心22の磁極部25から離間する初期位置に位置する。したがって、可動接点62は固定接点57から離間した開放状態を維持する。
【0058】
コイル24に通電し、電磁石ブロック2を励磁すると、図9に示すように、可動鉄片4は鉄心22の磁極部25に被吸引部63を吸引され、可動接触片52の付勢力に抗して回動する。これにより、可動接触片52が弾性変形し、可動接点62を固定接触片51の固定接点57に閉成する。
【0059】
コイル24への通電を遮断し、電磁石ブロック2を消磁すると、可動鉄片4は鉄心22の吸引力を失って可動接触片52の弾性力により回動する。このとき、まず、可動鉄片4のカード部材65に形成した第2突出部67がヒンジバネ44の弾性当接部46に衝突する。第2突出部67は合成樹脂製であり、弾性当接部46は弾性変形する。しかも、可動鉄片4が回動を開始してから早期に第2突出部67と弾性当接部46の当接状態が得られる。したがって、衝突音は殆ど発生することがない。そして、可動鉄片4がさらに回動することにより弾性当接部46を弾性変形させながら、合成樹脂製の第1突出部66がヨーク41の中間部に当接する。このため、可動鉄片4の回動速度が低減され、ここでも衝突音の発生は十分に抑制される。このように、可動鉄片4は衝突音を発生させることなくスムーズに初期位置に復帰し、可動接点62は固定接点57から離間して開放位置に位置する。
【0060】
ところで、接点を開放する際、接点間にアークが発生することがある。この場合、接点開閉領域の周囲にはアーク消弧部材75が配置されている、また、可動接触片52の上端部には延在部59bが形成されている。このため、発生したアークは迅速に消弧される。
【0061】
すなわち、各永久磁石76のN極から発生した磁束は、接続部材77の中間突出部80を介して中間壁79を通り、対向壁78から前記各永久磁石76のS極に戻る磁気回路をそれぞれ流れる。各磁気回路は閉ループを構成し、周囲への磁束漏れが殆どない。そして、中間突出部80の存在により接点開閉位置、つまり接点間に発生したアークに対して効果的に磁力を作用させることができる。この結果、フレミング左手の法則により、発生したアークには、接点開放方向とは直交する方向(上方側)に力が作用し、このアークは大きく引き延ばされる。また、アークが引き延ばされる方向には、可動接触片52の上端部に形成した延在部59bの先端部分が位置している。したがって、発生したアークは、最も近い位置である延在部の先端部分に到達し、急速に消弧される。
【0062】
また、前記電磁石ブロック2の動作電圧は次のようにして調整することができる。
すなわち、ヒンジバネ44の弾性当接部46の傾斜角度を変更することにより、電磁石ブロック2の動作電圧を抑えることが可能となる。詳しくは、ヨーク41に対する弾性当接部46の傾斜角度を大きくすると、図12のグラフに示すように、鉄心22の磁極部25から発生させた磁界により可動鉄片4の被吸引部63に作用する力の変化(吸引力曲線)に対して、動作点の位置を変更することができる。つまり、弾性当接部46の傾斜角度を大きくすることにより、接点が開放してから第1突出部66に弾性当接部46が当接するまでに必要となる力を抑えることができる。この結果、吸引力曲線が、図示されるものよりも小さい位置で変化するように、電磁石ブロック2の動作電圧を抑制することが可能となる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0064】
前記実施形態では、延在部59bを可動接触片52の上端部に形成するようにしたが、固定接触片51の上端部に形成するようにしてもよいし、可動接触片52と固定接触片51の両方に形成するようにしてもよい。但し、両方に形成する場合、延在部同士が短絡しないように位置関係には注意が必要である。例えば、延在部の位置関係を本体部の長手方向に位置をずらせる等により対応することが可能である。
【0065】
また、前記実施形態では、延在部59bを、本体部59に対して約140度の角度をなすように構成としたが、約90度までは自由に設定することができ、図14に示すように、約90度とするのが最も好ましい。約140度よりも角度が大きくなれば、本体部59から垂直な方向への突出寸法が、可動接点62に比べて大きくするために、延在部59bの長さが大きくなり過ぎる。一方、約90度よりも角度が小さくなれば、各接点に接近し過ぎて短絡の恐れがある。そこで、本体部59に対する延在部59bのなす角度を、約90度から約140度の範囲としている。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る接点開閉機構は、電磁継電器のみならず、スイッチ等、接点が開閉し、接点間にアークが発生する機構を備えた電気機器であれば、同様に採用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…ベース
2…電磁石ブロック
3…接点開閉部
4…可動鉄片
5…ケース
6…第1装着部
7…第2装着部
8…第1周縁壁
9…凹所
10…支持凹部
11…コイル端子孔
12…ガイド部
13…ガイド壁
14…絶縁壁
15…ガイド溝
16…ガイド凹部
17…台座部
18…第1端子孔
19…連通部
20…第2周縁壁
21…第2端子孔
22…鉄心
23…スプール
24…コイル
25…磁極部
26…中心孔
27…胴部
28…上端側鍔部
29…下端側鍔部
30…逃がし溝
31…端子取付部
32…端子保持孔
33…段部
34…案内溝
35…ガイド突部
36…コイル端子
37…圧入部
38…幅広部
39…コイル巻付部
40…絶縁シート
41…ヨーク
42…突出部
43…突起
44…ヒンジバネ
45…接続部
46…弾性当接部
47…第1傾斜部
48…第2傾斜部
49…弾性支持部
50…被ガイド部
51…固定接触片
52…可動接触片
53…圧入部
54…端子部
55…本体部
56…膨出部
57…固定接点
58…圧入部
59…本体部
59a…貫通孔
59b…延在部
60…膨出部
61…突起
62…可動接点
63…被吸引部
64…開口部
65…カード部材
66…第1突出部
67…第2突出部
68…突条部
69…押圧部
70…遮蔽壁
71…密閉用孔
72…スリット
73…凹所
74…突起
75…アーク消弧部材
76…永久磁石
77…接続部材
78…対向壁
79…中間壁
80…中間突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する固定接触片と、前記固定接点に接離可能に対向する可動接点を有する可動接触片とを備え、
前記各接触片は、ベースに固定される固定部と、ベースから突出して接点が設けられる本体部とを有し、
前記接触片の少なくともいずれか一方は、残る他方の接触片に設けた接点側へと延びる延在部を備え、
前記延在部は、接点を挟んで固定部とは反対側に形成したことを特徴とする接点開閉機構。
【請求項2】
前記延在部は、本体部から突出する接点よりも突出寸法が大きいことを特徴とする請求項1に記載の接点開閉機構。
【請求項3】
前記延在部は、本体部を屈曲することにより形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の接点開閉機構。
【請求項4】
前記延在部は、本体部をほぼ直角に屈曲することにより形成したことを特徴とする請求項3に記載の接点開閉機構。
【請求項5】
前記接点間に発生したアークを、前記延在部へと引き延ばす磁石を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の接点開閉機構。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれか1項に記載の接点開閉機構を備えたことを特徴とする電磁継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−98126(P2013−98126A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242446(P2011−242446)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)