説明

接着した混成構造物

本発明は、輸送車両、好ましくは自動車車両の構造構成部品を形成する装置および方法に関する。本発明は、混成構造物を含み、好ましくは金属から形成された従来の構成部品よりも重量が軽い構造構成部品を形成するために、接着剤で一体に接着された2またはそれ以上の構成部品で形成された混成構造物を含む。その混成構成部品はまた実質的に過成形工程がない。好都合なことに、組み立てならびに接着剤の圧縮および硬化の間、2つ以上の構成部品の空間的関係を位置決めしかつ維持するために、1つまたは2つ以上のスナップ・フィットなどを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、混成構造を有する改善された車両構成部品(vehicle component)に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー保存の社会的関心がますます増加する中、輸送産業、特に自動車産業は、構造上の完全状態を維持または増加させながら、車両構成部品の寸法や質量を減少させたり最小化させたりしようとする試みを絶えずしてきた。これらの試みの中で、その産業はこれらの目標に合致する代替の設計や材料を考えてきた。
【0003】
特に、輸送産業は、典型的には金属のようなより高密度の材料で作られた車両のある構成部品を置き換えるまたは補うための代替材料の使用を考えてきた。たとえば、伝統的には1つまたは2つ以上の金属構成部品からなる車両の構成部品を支持するために用いられるある構造部材は、強化プラスチック構成部品とそれに対応し隣接する金属構成部品を有する混成(hybrid)構成部品を代わりに含んでもよい。しかし、これは特にプラスチック構成部品を製造するのを困難に導いた。なぜなら、それらは対応する金属構成部品と嵌め合い、要求される構造特性を与えるように適合させられなければならないからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つのそのような製造上の困難は、プラスチック構成部品の過成形(over-molding)において生じる。当業者であれば理解できるであろうが、過成形は、従来の射出成形法に比べずっと費用がかかる。なぜならば、それは余分な構成部品と追加の成形工程を必要とするからである。もうひとつの困難は、成形が開放構造なので生じる。すなわち、過成形される混成構成部品のかなりの部分が通常軸に沿って開放されており、その結果として部材の強度と剛性が落ちてしまう。
【0005】
したがって、削減された費用と重量に対して最大の性能を達成するより効果的な技法で軽量の構造部材を形成する方法に対するニーズがある。さらに、製造費用を実質的に増加させずに、伝統的な構造部材よりも軽い車両用構造部材に対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、輸送車両、好ましくは自動車車両の構造構成部品を形成する装置および方法を含む。本発明は、好ましくは構造構成部品を形成するために接着剤で一体に接着された2つ以上の構成部品からなる、混成構造物を含む。その混成構造物は、好ましくは、伝統的な構造物よりも重量が軽く、過成形工程なしでも作られる。
【0007】
あるときは、その方法は、肋材(rib)および1つまたは2つ以上のかみ合わせ(engagement)特徴を有するまたは有しない第一のプラスチック構成部品を形成することによって、車両の構造構成部品を形成することを含む。その方法は、また、第一の構成部品とかみ合うように適合させられた第二の金属構成部品を形成することも含む。第一および第二の構成部品は、接着剤で一体に接着される。スナップフィットファスナーなどのような1つまたは2つ以上のかみ合わせ特徴が、構成部品をお互いに関連して整列させ空間的に配置するのに用いられてもよい。好ましくは、第一および第二の構成部品の形成は、実質的に過成形工程がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、構造構成部品の強度を維持しまたは向上させながら、構造構成部品の総質量を減らす装置および方法に基いている。充填空間要求および費用の削減もまた達成することができる。本発明は、過成形方法を用いないで、形成され一体に接着された2つ以上の構成部品を有する混成構造物を含む。
【0009】
図1〜3には、本発明の教えるところにしたがって作られた混成構造物10が図示されている。一般に、混成構造物を形成するには、接着剤材料16を使用して、第一および第二の構成部品の2つ、3つまたはそれ以上の接着表面(bonding surface)に沿って、第一の構成部品12と第二の構成部品14を接着する。第一および第二の構成部品の接着表面の接着は、2つ、3つまたはそれ以上の接合部(joint)を形成することになるのが好ましい。その方法は、随意に、さらに、特に混成構造物を組み立てる間または接着剤を硬化させる間、第一の構成部品と第二の構成部品の間の空間的関係を位置決めし維持するために、1つまたは2つ以上の結合特徴(attachment feature)18を使用することを含む。
【0010】
図1〜3に示されるように、第一の構成部品12は、お互いに反対側に位置し、実質的に同一の次元の(dimensional)平面状に存在する、第一の接着平面22と第二の接着平面24を有する基礎部分20を含んでもよい。好ましくは、第一および第二の接着表面は、接着剤を収容し、第二の構成部品と第一および第二の接着を形成するように適合させられている。随意に、接着剤を置くのを容易にし、かつそれらの間に形成される接合の強度を向上させるために、第一および第二の接着表面は、基礎部分の残りの部分よりも凹ませてもよい。
【0011】
第一の構成部品は、さらに、基礎部分から伸びた1つまたは2つ以上の中間部分26を含み、その中間部分は第一の接着表面と第二の接着表面の間に位置する。中間部分は、構造構成部品に追加の強度を付与するように、および/または第二の構成部品との接合のための1つまたは2つ以上の追加の接着表面を付与するように、適合させられる。図1〜3に示されるように、中間部分は細長い隆起部(ridge)であり、それは第一の構成部品の長さの少なくとも一部に及び、そして第三の接着表面28を含んでいてもよい。好ましくは、第三の接着表面は、第一および第二の接着表面の面とは異なる平面の上に存在する。
【0012】
随意に、第一の構成部品は、構成部品の剛性および/または強度を改善するために、1つまたは2つ以上の補強特徴を含んでいてもよい。補強特徴は、第一の構成部品の1つまたは2つ以上の部分に、谷、細長い隆起部、溝、またはその他の表面特徴を形成したものであってもよい。そのような特徴は、1つまたは2つ以上の、好ましくは多数の、補強肋材30を含んでもよい。あるときは、補強特徴は、第一の構成部品の基礎部分を中間部分に連結または統合し、かくして追加的な剛性を付与する。別の場合は、補強特徴は、内側部分のような中間部分の異なる部分と連結または統合されてもよく、それは基礎部分と追加的に連結または統合されていてもよいし、されていなくてもよい。さらに別の場合は、補強特徴は、一般に他の構成部品の形状と相補的になるであろう輪郭形状を画定する。そのような配置は、構造構成部品に改善された耐圧潰性および剛性を付与することができる。1つの、両方の、またはその他の目標を達成するものであれば、いかなる補強特徴であっても適している。
【0013】
中間部分は、さらに、肋材またはその他のものおよび本質的には構造構成部品の強度または剛性を改善するために、1つまたは2つ以上の表面特徴を含んでいてもよい。そのような特徴は、くぼみ、隆起部分、凹所部分、またはその他のものを含むことができる。たとえば、1つまたは2つ以上の表面特徴は、1つまたは2つ以上の補強肋材の一部分または全表面に、繰り返し模様でまたは成り行きまかせに形成することができる。表面特徴の形成は、第一の構成部品の形成中に行ってもよい。代わりに、表面特徴の形成は、後の作業工程で行ってもよい。勿論、表面特徴は、また、第一の構成部品の他の部分の上におよび/または第二の構成部品の上に形成してもよい。
【0014】
補強特徴の配向は、一般に、部材に対する臨界荷重状態において性能を最適化するように、そして他の機能の要求(たとえば、さらなる構成部品の配置または固定)を収容できるように、用いられる。1つの好ましい実施態様においては、図1〜3に示されるように、補強特徴は、基礎部分に概ね垂直であり、そして基礎部分と中間部分を連結する肋材であってもよい。加えて、肋材は、第一の構成部品に沿って、長さ方向に、幅方向に、またはそれらの組み合わせの方向のいずれの方向に伸びていてもよい。さらに、補強肋材は、直線配置でも、弓状配置でも、それらの組み合わせでもよい。たとえば、補強肋材は、成形された構成部品から伸びた円形部分を含んでいてもよい。さらに、補強肋材は、上述したいかなる組み合わせを用いて、またはその他の方法で、繰り返し模様で伸びていてもよい。肋材は、いかなる数の方向に伸びていてもよいし、他の肋材と一緒になって格子(matrix)、列、またはその他の繰り返し模様を形成してもよい。
【0015】
図面に示されるように、第二の構成部品は、外側に伸びた弾力のある突出部40およびそれから伸びた突縁(flange)42を有する基礎部分38を含んでいてもよい。第二の構成部品は、突縁42に位置する第一および第二の接着表面44,46を含む。第二の構成部品は、また、基礎部分の上に位置する第三の接着表面48も含む。好都合に、第一、第二および第三の接着表面44,46,48は、第一の構成部品の第一、第二および第三の接着表面22,24,28と相補的である。
【0016】
構成部品は、さらに、構成部品相互の空間的配向を維持している間、構成部品の適切な連結を確実にするのを支援する1つまたは2つ以上の結合特徴18を含む。いかなる適した機械的固定具を使用してもよいが、スナップフィットファスナーが好ましい。スナップフィットファスナーを利用した1つの好ましい配置では、図1〜3に示されるように、結合特徴は第一の構成部品から伸びた1つまたは2つ以上の雄部分52を含む。好ましい実施態様においては、雄部分は補強肋材の1つまたは2つ以上の上に配置される。結合特徴は、また、第二の構成部品に形成された1つまたは2つ以上の雌部分54も含む。第二の構成部品14が第一の構成部品12の上の位置に移動するにつれて、雄部分52は、構成部品10の両側を、弾性的に外側に、そしてそれらが最終的な位置に弾み戻るのを許すように決められた軌道に、案内し、押し出す。そうすることによって、接着剤を圧縮し、汚れ(smearing)なしに成形される。第一の構成部品が弾み戻る間に、接着剤は、第一の構成部品の中間部分の方へ押し出され、それが第一および第二の接着表面22,24の幅方向に接着剤の適用を改善する。雄部分と雌部分は、2つの構成部品の望ましい空間配向を維持しながら、構成部品を望ましい整列状態で一体に保持するように協働する。たとえば、第一および第二の構成部品は、それらの接着表面において隣接するのを防止してもよい。空間的配向を維持することは、接着剤が接着表面に沿って一定の厚みを持つのを許す。それは接着強度をよくすることにつながる。
【0017】
他の結合特徴もまた構成部品の適正な整列または空間配向を確実にするために用いてもよい。たとえば、スペーサー肋材を接着表面の長さ方向に周期的に配置してもよく、そのときは、肋材の高さは、結果として得られる接着接合部の望ましい最小の厚みになるように選択される。そのような特徴は、硬化の前または硬化中に、接合部の過剰圧縮により接着剤結合が弱くなるのを防止することができる。
【0018】
構成部品は、その構成部品を別の構成部品、骨組み部材、または車両の骨組みのようなその他の構造物にくっつけるための装着(mounting)特徴を含んでもよい。典型的には、装着特徴は、スナップフィット装置、ナットとボルト、ねじ、リベットなどのような機械的固定具を含むか、またはそれらの使用を容易にするであろう。好ましくは、装着特徴は、構成部品の設計の中に統合される。しかし、それらは、別々に作り、構成部品にくっつけてもよい。
【0019】
構成部品は種々の目標を達成するために、その他の特徴を含んでいてもよい。構成部品は、表面処理され、下塗りされ、適用され、または追加の物質層を含んだり、それらの組み合わせなどであってもよい。適した表面処理は、構成部品中の重合体の分子状態を変える数多くの技法、望ましい表面特性を有する物質を構成部品に結合させる技法、またはそれらの組み合わせのいずれをも含む。特別の例として、適したコロナ処理、溶射(flame spray)処理、または表面塗布処理の一つまたは任意の組み合わせが用いられる。適した塗布としては金属に対するイーコートが挙げられる。適した下塗りは、選択した接着剤に基いて選択することができる。一つの実施態様においては、構成部品のうちの少なくとも一つは、望ましい表面エネルギーを達成するために表面処理される。別の実施態様においては、構成部品のうちの一つだけが表面処理される。好ましくは、下塗りのような接着促進剤は、プラスチックで作られた構成部品の上には使用されない。
【0020】
第一の構成部品は通常の成形技術を用いて形成することができる。そのような成形技術としては、吹込成形、回転成形、トランスファー成形、圧縮成形、射出成形、インサート成形などが挙げられる。好ましい方法においては、第一の構成部品を形成するのに、射出成形法が用いられ、実質的に過成形はない。好ましくは、第一の構成部品を成形する間、3つ以上の嵌め合い(mating)表面が形成される。さらに好ましくは、成形方法は、さらに、多数の補強肋材の成形を含む。
【0021】
限定するものではないが、構成部品は、プラスチック(たとえば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、それらの組み合わせなど)、金属(たとえば、鋼鉄、アルミニウム、それらの組み合わせなど)、ガラス、セラミックス、それらの組み合わせなどから形成することができる。
【0022】
好ましくは、第一の構成部品の材料は、高い強度対重量比を有する。したがって、第一の構成部品は、好ましくは、重合体材料を含む。特に好ましい実施態様においては、構成部品の少なくとも1つは、高強度熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含み、スチレン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルエステル、それらの混合物などから選ばれる。さらに好ましくは、それらはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート/アクリロニトリル/ブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリプロピレン、エチレンαオレフィン、ポリブチレンテレフタレート/ポリカーボネート、ポリアミド(たとえば、ナイロン)、ポリエステル、ポリウレタン、シート成形コンパウンド(SMC)(たとえば、ポリエステル、ポリビニルエステル)、熱硬化性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン(たとえば、高密度ポリプロピレン(HDPE))、ポリアクリル酸(poly acrylics)、およびそれらの混合物などからなる群から選ばれる。より好ましくは、構成部品の少なくとも1つは、ポリプロピレンからなる。
【0023】
上記の重合体材料はいずれも、繊維強化したり、その他、セラミック、ガラス、重合体、天然の、合成のまたはその他の繊維で強化したりすることを検討してもよい。1つの好ましい実施態様によれば、強化のために、重合体材料は、長さが約0.1mm〜30.0mmの比較的長いガラス繊維を含む。より好ましくは、繊維は、長さが約0.5mm〜20.0mmである。もっとも好ましくは、繊維は、長さが約0.7mm〜15.0mmである。また、重合体材料に1つまたは2つ以上の充填剤を含めることを検討してもよい。
【0024】
第二の構成部品は、第一の構成部品と混成構造物を形成するために適したいかなる材料を含んでもよい。第一および第二の構成部品の材料は同じであってもよいが、好ましくは異なることが熟考される。該材料は、第一の構成部品よりも低い強度対重量比を有するように選択することができる。典型的には、そのような材料は、第一の構成部品に使用されるものよりも高密度であろう。好ましくは、第二の構成部品の材料は、金属であり、より好ましくは鋼鉄である。好ましくは、第一の構成部品は、結果として得られる構造構成部品のかなりの部分を含んでもよい。別の実施態様においては、第二の構成部品について議論したように、追加の構造支持体またはその他の有利な特性を付与するために、第二の構成部品は、第一の成形された構成部品に適用される追加の構造的層を含むことが熟考される。一つの好ましい実施態様においては、第二の構成部品は、剛構造構成部品で形成され、その形状は第一の構成部品の少なくとも一部分に一致する。
【0025】
第二の構成部品は、第二の構成部品の材料に適した技法を用いて形成してもよい。たとえば、金属構成部品は、適切に、成形したり、型押ししたりしてもよい。
【0026】
本発明は、さらに、1つまたは2つ以上の追加の構成部品(たとえば、3つ以上の構成部品)を用いる構造部材を形成することを意図する。そのような構成部品は、ここで議論した構成部品のいずれを含んでもよい。たとえば、本発明は、第一の構成部品、第二の構成部品、またはその他のものについての教示にしたがって、第三の構成部品を含んでもよい。したがって、第一または第二の構成部品は、第三の構成部品またはその他のものと接合するために、さらに追加の表面または特徴を含んでもよい。
【0027】
したがって、特に図2および3を参照すると、第一の構成部品を第二の構成部品にくっつけるときは、第一および第二の接着表面ならびに第三の接着表面の間に、1つまたは2つ以上の空洞が形成されてもよい。
【0028】
接着剤が第一の構成部品を第二の構成部品に接着するのに用いられる。一つの好ましい実施態様においては、構成部品上の接着表面の一方または他方に接着剤を適用することにより、少なくとも3つの接着接合部が第一および第二の構成部品の間に形成される。接着剤は、接着表面に沿って連続的であってもよいし、断続的であってもよい。接着剤は、第一および第二の構成部品の対応する接着表面の一方または両方に、噴霧してもよいし、浸漬してもよいし、その他の方法で適用してもよい。
【0029】
本発明の接着剤は、随意に、構造用接着剤であってもよいし、キュアオンデマンド材料であってもよいし、その両方であってもよい。接着剤は、望ましい接着物品の製造環境において、流動状態を達成できる必要がある。接着剤は、低蒸気圧溶剤(たとえば、アルコール、エーテル、アセトン、ベンゼン、メタン、エタン、それらの組み合わせなど)に可溶であってもよいし、好ましくは約100℃(212°F)〜240℃(464°F)の温度で溶融流動性(たとえば、溶融流動性、室温流動性など)であってもよいし、発泡性であってもよいし、それらの組み合わせなどであってもよい。好ましくは、接着剤は、約−20℃〜約240℃、より好ましくは約−5℃〜約160℃、そしてもっとも好ましくは約10℃〜約60℃の温度で流動性である。溶融流動性接着剤は、接着される構成部品が構造上の完全状態を失う温度よりもかなり低い融点(たとえば、約5℃〜30℃)を有しているのがよい。
【0030】
好ましい接着剤は、硬化後、自動車車両の運転条件に耐えることができる接着剤を含む。そのような接着剤は、好ましくは約140℃(284°F)までの温度で、より好ましくは約150℃(302°F)までの温度で、さらに好ましくは約160℃(320°F)までの温度で、もっとも好ましくは約200℃(392°F)までの温度で、分解したり、離層したりしないものである。重大ではないが、一つの実施態様においては、ここで接合部に用いられる接着剤は、結果として得られる引張強さが少なくとも約500kPa(約72psi)、より好ましくは少なくとも約1MPa(約145psi)、さらに好ましくは少なくとも約3MPa(約435psi)である。構造用接着剤が使用されるようないくつかの用途においては、結果として得られる引張強さは、約30MPa(約4350psi)程度、より好ましくは少なくとも約45MPa(約6530psi)、さらに好ましくは少なくとも約60MPa(約8700psi)であり得る。
【0031】
さらに、好ましい接着剤は、接着された物品の周囲の動作条件への長期の曝露に耐えることができる。たとえば、好ましい接着剤としては、周囲条件で、または前述の温度と圧力で、炭化水素物質、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、その他の塩類、ブレーキ液、トランスミッション液、グリコール冷却剤、ウィンドシールドウォッシャ溶剤、洗浄剤などへの長期の曝露に耐えることができるものが挙げられる。
【0032】
接着剤は、いかなる数の成分を含んでもよいが、好ましくは2つの成分を含む。他の接着剤系列(たとえばウレタン、シランなど)も同様に考えられるが、好ましい接着剤は1つまたは2つ以上のポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ハイブリッド(hi-bred)ポリイミド/エポキシ樹脂接着剤、アクリル樹脂またはエポキシノボラック/ニトリルゴム接着剤からなる。好ましくは、接着剤は、室温で流動性を示し、低エネルギー基体を接着するものである。より好ましくは、接着剤はポリウレタン系またはアクリル系接着剤からなる。そして、もっとも好ましくは、接着剤は、米国特許第6,710,145号明細書、米国特許第6,713,579号明細書、米国特許第6,713,578号明細書、米国特許第6,730,759号明細書、米国特許第6,949,603号明細書、米国特許第6,806,330号明細書、ならびに米国特許出願公開第2005−0004332号明細書および米国特許出願公開第2005−0137370号明細書に開示されているようなBetamate LESA接着剤であり、それらは引用によって含まれる。その他のふさわしい接着剤としては、米国特許第5,539,070号明細書、米国特許第6,630,555号明細書、米国特許第6,632,908号明細書、および米国特許第6,706,831号明細書に開示されたものが挙げられ、それらは引用によって含まれる。
【0033】
可能な接着剤用組成物は、「アミン有機ボラン錯体重合開始剤と重合性組成物(Amine Organoborane Complex Polymerization Initiators and Polymerizable Compositions)」と題する特許出願、国際公開第01/44311A1号パンフレット、米国特許出願第09/466,321号明細書に開示されており、それらは引用によってここに含まれる。
【0034】
接着剤はプラスチック構成部品の上に下塗りまたはその他の前処理が存在しない状態で使用されるのが好ましいが、構成部品の1つまたは2つ以上に適用された下塗り層またはその他の接着を促進する層が存在する状態で接着剤を使用してもよい。
【0035】
本発明の混成構造物は、数多くの構造構成部品を形成するのに用いることができる。しかし、1つの特に有利な分野は輸送車両を含む。したがって、車両の数多くの構造構成部品および非構造構成部品は本発明の教えるところにしたがって形成することができる。特に、自動車産業に関しては、本発明の方法は、フロントエンドキャリヤーアセンブリー、クロスカービームアセンブリー、テールゲート/リフトゲートアセンブリー、ドアアセンブリー、ウォーターコンダクターアセンブリー、ラジエターエンドタンクアセンブリー、オイルパンアセンブリー、エンジンインテークマニホールドアセンブリー、バルブカバーシリンダーヘッドアセンブリー、排気系統構成部品、外装品、内装品、構造支持体、またはそれらの組み合わせのような構成部品を形成するのに用いることができる。
【実施例】
【0036】
図4は、自動車のフロントエンドキャリアーの形状をした混成構造物を図示している。この配置において、フロントエンドキャリアー10は、第一の成形されたプラスチック構成部品12と第二の金属構成部品14を含む。第一の構成部品は、接着剤16を収容するように、かつ第二の構成部品の第一、第二および第三の接着表面44,46,48と3つ以上の接合部を形成するように適合させられた第一、第二および第三の接着表面22、24、28を含む。
【0037】
第一の構成部品は、中央に1つまたは2つ以上の追加の曲げ剛性のための中間部分26および車外端部に捩り剛性のための平らな表面を含む。その他の特徴は、第一の構成部品の強度と剛性を増加させるために、補強肋材30のような追加の補強特徴を含む。さらなる他の利用できる特徴は、自動車の骨組み部材に構成部品を装着するための1つまたは2つ以上の装着特徴32を含む。さらなる他の特徴は、自動車のボンネットまたはその他のもののための掛け金(latching)機構を収容し、随意に装着するための1つまたは2つ以上の開口部34を含む。さらなる他の特徴は、他の構成部品を収容し、排水口を付与し、構成部品の質量を減らし、製造を容易にし、第一の構成部品を強くし(たとえば、弓状の肋材30を使用して)、またはその他のための1つまたは2つ以上の追加の開口部36を含む。
【0038】
構造構成部品を形成する際は、第一および第二の構成部品は、第一および第二の構成部品の第一、第二および第三の嵌め合う表面によって一体に接合される。前に論じたように、構成部品が構造構成部品に組み立てられるときは、結合特徴18が整列し、第一および第二の構成部品の接着表面の間の空間距離を維持する。したがって、接着表面の間に形成される接着接合部は実質的に均一な厚さになる。
【0039】
複数の構成部品もしくは工程の機能もしくは構造物を単一の構成部品もしくは工程に組み合わせることができること、または1つの工程もしくは構成部品の機能もしくは構造物を複数の工程もしくは構成部品に分離することができることがさらに認識されるであろう。別段の言及がない限り、ここに描写された様々な実施態様の寸法および幾何学的配置は、発明を限定するものではなく、他の寸法または幾何学的配置も可能である。さらに、本発明の特徴をたった1つの実施態様をもって説明したが、そのような特徴はいかなる用途にも他の実施態様の1つまたは2つ以上の他の特徴と組み合わせることができる。この独特の構造物の製作およびその操作もまた、本発明の方法を構成することが、上記から認識されるであろう。本発明は、この方法の実施によって得られる中間体や最終製品をも包含する。「含む」または「含有する」の使用は、詳細に述べた特徴「から実質的になる」または「からなる」実施態様をも意図する。
【0040】
ここで「第一の」および「第二の」と言うときは、第一および第二の品目のみからなる組み合わせに限定されるものではない。そう言及するときは、本発明の主題は第三、第四またはそれ以上の品目を適切に含むことが可能である。さらに、「1つ」または「1」の要素または工程の開示は、追加の要素または工程を排除するものではない。範囲の前の用語「約」または「およそ」の使用は、上限および下限の両方を示し、その範囲に列挙された量によって拘束されるものではない(たとえば、「約1〜3」は「約1〜約3」を含むと意図される)。別段の言及がない限り、または使用の文脈によって別段に口述されるように、重合体の「混合物」または「組み合わせ」と言うときは、そのような重合体のアロイ、配合物、または共重合体さえも意図する。「含む」、「有する」および「含有する」ならびにそれらの語の変化形は、もっと限定的な用語「からなる」または「実質的にからなる」をも意図する。
【0041】
上記の明細書は、説明するためのものであって、限定するためのものではないことが理解される。多くの実施態様は、提供された具体例のほかにたくさんの応用と同様に、上記の明細書を読めば当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、上記の明細書を参照して決定すべきではなく、その代り、添付された特許請求の範囲を参照して決定されるべきであり、均等の範囲を含む。特許出願および公開を含むすべての記事および参考文献の開示は、あらゆる目的のために引用によって含まれる。ここに開示された主題であって特許請求の範囲では省略されたものがあるが、その省略はその主題の権利を放棄するものではなく、また、そのような主題が開示された発明の主題の一部であると発明者が考えなかったとみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の教えるところによって形成された構造構成部品の一態様の分解斜視図を示す。
【0043】
【図2】図1に示された態様の分解横断面図を示す。
【0044】
【図3】図1に示された態様の組み立てられた横断面図を示す。
【0045】
【図4】本発明の構造構成部品の別の態様の分解斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つまたは2つ以上の結合特徴および複数の接着表面を含む第一のプラスチック構成部品を形成すること、
(b)複数の接着表面を有する第二の構成部品を形成すること、
(c)1つまたは2つ以上の結合特徴が各構成部品の接着表面の間の距離を維持しかつ接着剤を均等に圧縮するような状態で、第一の構成部品と第二の構成部品を接着剤で各構成部品の接着表面で一体に接着することを含む、構造物を形成する方法。
【請求項2】
接着する工程が、構成部品を一体に接着する前に、構成部品のいずれかに接着剤を適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一および第二の構成部品が、それぞれ、少なくとも3つの接着表面を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一の構成部品と第二の構成部品を接着した結果、接着表面のうちの少なくとも1つが残りの2つの接着表面とは異なる平面上に存在するようになる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第二の構成部品を形成する工程が、金属の構成部品を形成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一の構成部品を形成する工程が、ガラスを充填したポリプロピレンの構成部品を形成することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
接着する工程が、第一の構成部品の上を前処理せずに、構成部品のいずれかにアクリル系接着剤を適用することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
形成する工程が、第一の構成部品の中に1つまたは2つ以上のスナップフィットファスナーを形成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
形成する工程が、第一の構成部品の中に1つまたは2つ以上の肋材を形成することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第一のプラスチック構成部品の形成が成形技法を含み、第二の構成部品の形成が成形技法または型押し技法を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
接着された第一および第二の構成部品が、フロントエンドキャリヤー、クロスカービーム、計器盤、バンパービームまたは屋根横梁を形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(a)少なくとも3つの接着表面および第一の構成部品の基礎部分と中間部分の間に延在する複数の肋材を含む第一のプラスチック構成部品を形成すること、
(b)第一の構成部品の接着表面に対応する少なくとも3つの接着表面を有する第二の構成部品を形成すること、および
(c)接着表面の長手方向に接着表面間の距離を一定に保ちながらアクリル系接着剤で第一の構成部品を第二の構成部品に接着すること
を含む、自動車車両の構造構成部品を形成する方法。
【請求項13】
接着する工程が、スナップフィットファスナーが接着表面をお互いから一定の距離を保つように、第一および第二の構成部品をスナップフィットファスナーで一体にくっつけることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
接着する工程が、接着表面の間の接着剤を圧縮することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第一の構成部品を形成する工程が、ガラス充填ポリプロピレンの構成部品を形成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第一の構成部品を形成する工程が、構成部品を射出成形または圧縮成形することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第二の構成部品を形成する工程が、イーコートされた金属の構成部品を形成することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
接着する工程が、第一の構成部品の接着表面を前処理せずに、第一または第二の構成部品の接着表面に接着剤を適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(a)少なくとも3つの接着表面およびその間に延在する複数の肋材(ただし、複数の肋材のうちの少なくとも1つはかみ合わせ特徴を含む。)を有する第一のガラス充填プロピレン構成部品を成形すること、
(b)第一の構成部品の少なくとも3つの接着表面に対応する少なくとも3つの接着表面を有し、さらにスナップフィット連結を形成するように第一の構成部品のかみ合わせ特徴とかみ合うような少なくとも一つのかみ合わせ特徴を第二の構成部品の弾性部分に沿って有する第二の構成部品を形成すること、
(c)1つまたは2つ以上の接着表面の長手方向全域にわたって一定の厚みである接着表面間の接着接合部を形成するように、1つまたは2つ以上のかみ合わせ特徴が第一の構成部品に関係させて第二の構成部品を空間的に配置しながら、構造用接着剤で第一および第二の構成部品の少なくとも3つの接着表面を一体に接着すること
を含む、自動車車両の構造構成部品を形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531339(P2008−531339A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557187(P2007−557187)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006555
【国際公開番号】WO2006/091794
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】