説明

接着シート、接合方法および接合体

【課題】被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜を備えた接着シート、かかる接着シートと被着体とを、低温下で効率よく接合し得る接合方法、および、接着シートと被着体とが高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を提供すること。
【解決手段】本発明の接着シートは、機能性基板2と、接合膜3とを有しており、被着体4に接着して用いられるものである。この接着シートが備える接合膜3は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、表面35付近に存在する脱離基が脱離し、これにより接合膜3の表面35に、被着体4との接着性が発現し得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、接合方法および接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の機能を有する機能性基板を備える接着シートを、被着体(対向基板)に対して接合する際には、従来、機能性基板の一方の面に、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤等の接着剤で構成される接合膜を設け、この接合膜を介して、機能性基板を被着体に接合する方法が多く用いられている。
接着剤は、一般的に、接合する機能性基板および被着体の材質によらず、優れた接着性を示すものである。このため、種々の材料で構成された機能性基板と被着体とを、様々な組み合わせで接着することができる。すなわち、接合する機能性基板および被着体の材質によらず、機能性基板を備える接着シートを被着体に接着することができる。
【0003】
このような接着剤で構成される接合膜を用いて接着シートを被着体に接着する場合、予め硬化前の接合膜が機能性基板上に設けられた接着シートを用意し、この接着シートを、機能性基板と被着体との間に接合膜が介在するような状態で、被着体に接触させる。その後、熱または光等の作用により接合膜を硬化(固化)させることにより、機能性基板と被着体とを接着する。
ところが、このような接着剤で構成される接合膜を用いた接合では、以下のような問題がある。
【0004】
・接着強度が低い
・寸法精度が低い
・硬化時間が長いため、接着に長時間を要する
また、多くの場合、接着強度を高めるためにプライマーを用いる必要があり、そのためのコストと手間が接着工程の高コスト化・複雑化を招いている。
【0005】
一方、接合膜を介在させず機能性基板(接着シート)を被着体に対して直接接合する接合方法として、固体接合による方法がある(例えば、特許文献1参照)。
このような固体接合によれば、接合膜を形成する必要がないので、接着シートを被着体に対して高い寸法精度で接合することができる。
しかしながら、固体接合には、以下のような問題がある。
【0006】
・接合させる機能性基板および被着体の材質に制約がある
・接合プロセスにおいて高温(例えば、700〜800℃程度)での熱処理を伴う
・接合プロセスにおける雰囲気が減圧雰囲気に限られる
このような問題を受け、接合に供される機能性基板および被着体の材質によらず、機能性基板を備える接着シートを、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合し得る接着シートの開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−82404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜を備えた接着シート、かかる接着シートと被着体とを、低温下で効率よく接合し得る接合方法、および、接着シートと被着体とが高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接着シートは、被着体に接着して用いられ、
所定の機能を有する機能性基板と、
該機能性基板の一方の面側に設けられ、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜とを有し、
前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする。
これにより、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜を備えた接着シートとすることができる。
【0010】
本発明の接着シートでは、前記脱離基は、前記接合膜の表面付近に偏在していることが好ましい。
これにより、接合膜に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜に、接合膜としての機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができる。
【0011】
本発明の接着シートでは、前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
本発明の接着シートでは、前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接着シートの接着性をより高度化することができる。
【0012】
本発明の接着シートでは、前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものであることが好ましい。
かかる構成の接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜は、基板に対して特に強固に接着するとともに、対向基板に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、基板と対向基板とを強固に接合することができる。
【0013】
本発明の接着シートでは、前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、接着シートと被着体とをより強固に接合することができるようになる。
本発明の接着シートは、被着体に接着して用いられ、
所定の機能を有する機能性基板と、
該機能性基板の一方の面側に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜とを有し、
前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする。
これにより、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合することができる接合膜を備えた接着シートとすることができる。
【0014】
本発明の接着シートでは、前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものであることが好ましい。
かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜を成膜することができる。
本発明の接着シートでは、前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものであることが好ましい。
これにより、基板上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜を形成することができる。
【0015】
本発明の接着シートでは、前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
このように成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基として用いる構成とすることにより、形成された金属膜中に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜を成膜することができる。
【0016】
本発明の接着シートでは、前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成されることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、機能性基板の接着性をより高度化することができる。
【0017】
本発明の接着シートでは、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基で構成される脱離基は、化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を備える接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の接着シートでは、前記有機金属材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体を用いて接合膜を成膜することにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、確実に接合膜を形成することができる。
【0018】
本発明の接着シートでは、前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性を発揮するものとなる。
本発明の接着シートでは、前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜の安定性が高くなり、接着シートと被着体とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0019】
本発明の接着シートでは、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じることが好ましい。
これにより、被着体に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能な接着シートが得られる。
本発明の接着シートでは、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、被着体に対して、特に強固な接合が可能となる。
【0020】
本発明の接着シートでは、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接着シートと被着体とを接合した接合体の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
本発明の接着シートでは、前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしていることが好ましい。
これにより、接着シートを用いて得られた接合体の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
【0021】
本発明の接着シートでは、前記機能性基板は、可撓性を有することが好ましい。
これにより、被着体の接着シートを接着させる面が、湾曲面のような平坦面で構成されていない面であったとしても、接着シートを、この接着させる面の形状に追従して変形させることができる。また、被着体が板状をなし、接着シートをこの被着体の表面と裏面との双方に亘って接着する場合であっても、接着シートを折り曲げることにより、被着体の表面および裏面の双方に貼り付けることができる。
【0022】
本発明の接着シートでは、前記機能性基板は、シート状をなしていることが好ましい。
本発明の接着シートでは、前記機能性基板は、パターニングされていることが好ましい。
本発明の接着シートでは、前記機能性基板は、配線、電極、端子、回路、半導体回路、電波の送受信部、光学素子、表示体および機能性フィルムのうちの少なくとも1つの機能を有することが好ましい。
本発明の接着シートが備える機能性基板として、かかる機能を有するものを適用することができる。
【0023】
本発明の接着シートでは、前記機能性基板の少なくとも前記接合膜を形成する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、表面処理を施さなくても、十分な接合強度が得られる。
【0024】
本発明の接着シートでは、前記接合膜を備える前記一方の面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、機能性基板の表面を清浄化および活性化し、接合膜と対向基板との接合強度を高めることができる。
本発明の接着シートでは、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、機能性基板の表面を特に最適化することができる。
【0025】
本発明の接着シートでは、前記機能性基板と前記接合膜との間に、中間層が介挿されていることが好ましい。
これにより、信頼性の高い接合体を得ることができる。
本発明の接着シートでは、前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、機能性基板と接合膜との間の接合強度を特に高めることができる。
【0026】
本発明の接合方法は、本発明の接着シートと、前記被着体とを用意する工程と、
該接着シートが有する前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与する工程と、
前記接合膜と前記被着体とを密着させるように、前記接着シートと前記被着体とを貼り合わせ、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、接着シートと被着体とを、低温下で効率よく接合することができる。
【0027】
本発明の接合方法は、本発明の接着シートと、前記被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着体とを密着させるように、前記接着シートと前記被着体とを貼り合わせ、積層体を得る工程と、
該積層体中の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接着シートと前記被着体とを接合し、接合体を得る工程とを有することを特徴とする。
これにより、接着シートと被着体とを、低温下で効率よく接合することができる。また、積層体の状態では、接着シートと被着体との間は接合されていないので、接着シートと被着体とを重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができる。その結果、接合膜の表面方向における位置精度を高めることができる。
【0028】
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0029】
本発明の接合方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜に付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の脱離基を確実に脱離させることができる。その結果、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
【0030】
本発明の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて基板や被着体に損傷等が生じるのを防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
【0031】
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の接合方法では、前記被着体は、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理を施した表面を有するものであり、
前記接着シートは、前記表面処理を施した表面に対して、前記接合膜が密着するようにして貼り合わされることが好ましい。
これにより、接着シートと被着体との接合強度をより高めることができる。
【0032】
本発明の接合方法では、前記被着体は、あらかじめ、官能基、ラジカル、開環分子、不飽和結合、ハロゲンおよび過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質を有する表面を有するものであり、
前記接着シートは、前記基または物質を有する表面に対して、前記接合膜が密着するようにして貼り合わされることが好ましい。
これにより、接着シートと被着体との接合強度を十分に高くすることができる。
【0033】
本発明の接合方法では、さらに、前記接合体に対して、その接合強度を高める処理を行う工程を有することが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
本発明の接合方法では、前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合体にエネルギー線を照射する方法、前記接合体を加熱する方法、および前記接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合体の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
本発明の接合体は、本発明の接着シートと、被着体とを有し、
これらを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする。
これにより、接着シートと被着体とが高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い接合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の接着シートを説明するための図(斜視図)である。
【図2】本発明の接着シートが備える、Iの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図3】本発明の接着シートが備える、Iの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図4】Iの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図4に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。
【図6】本発明の接着シートが備える、IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図7】本発明の接着シートが備える、IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図8】IIの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図9】接着シートの他の構成を説明するための図(斜視図)である。
【図10】本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図11】本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図12】本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図13】本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図14】本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図15】本発明の接合体を適用して得られた弾性表面波素子を示す平面図である。
【図16】図15に示す弾性表面波素子の縦断面図である。
【図17】本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の接着シート、接合方法および接合体を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の接着シートは、所定の機能を有する機能性基板(以下、単に「基板」と言うこともある。)と、この機能性基板の一方の面側に設けられた接合膜とを有しており、被着体(対向基板)に接着(接合)して用いられるものである。
【0036】
この接着シートが備える、接合膜は、エネルギーの付与により脱離する脱離基を有しており、接合膜の少なくとも一部の領域に対するエネルギー付与により、脱離基が脱離して、この脱離基が脱離した領域に、被着体(対向基板)との接着性が発現するものである。
このような特徴を有する接合膜を備える接着シートは、被着体に対して、高い寸法精度で強固に、かつ低温下で効率よく接合可能なものである。そして、かかる接着シートを用いることにより、基板と被着体とが強固に接合してなる信頼性の高い接合体が得られる。
【0037】
<第1実施形態>
まず、本発明の接着シート、この接着シートと被着体(対向基板)とを接合する接合方法(本発明の接合方法)、および本発明の接着シートを備える接合体の各第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の接着シートを説明するための図(斜視図)、図2は、本発明の接着シートが備える、Iの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図3は、本発明の接着シートが備える、Iの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図4は、Iの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図5は、図4に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図、図6は、本発明の接着シートが備える、IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図7は、本発明の接着シートが備える、IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図8は、IIの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図9は、接着シートの他の構成を説明するための図(斜視図)、図10および図11は、本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1ないし図11中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0038】
以下では、まず、本発明の接着シートの第1実施形態について説明する。
本実施形態では、接着シート1は、図1に示すように、機能性基板2(単に「基板2」ともいう。)と、機能性基板2上(一方の面)に設けられた接合膜3とを有している。この接着シート1は、被着体4に、接合膜3を介して機能性基板2を接着して用いられる。
機能性基板2は、所定の機能を有するものであり、接着シート1を被着体4に接着した際に、その機能を発揮するものである。
【0039】
この基板2は、所定の機能を有し、接合膜3を支持する程度の剛性を有するものであれば、いかなる材料で構成されたものであってもよい。
具体的には、基板2の構成材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、Si、Ge、InP、GaPNのような半導体系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコン、ポリシリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、ハイドロキシアパタイト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
また、基板2は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
【0040】
以上のような材料で構成される基板2は、配線、電極、端子、回路、半導体回路、電波の送受信部、光学素子、機能性フィルムおよび表示体のうちの1つまたは2つ以上の機能を有している。これらのうち、電波の送受信部としては、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグが備えるアンテナ部等が挙げられる。光学素子としては、例えば、光学フィルター、ミラー、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、ビームスプリッター、偏光板(偏光子)および旋光板(旋光子)等が挙げられる。機能性フィルムとしては、例えば、後述する被着体4に対する、保護フィルム、防水フィルム、ガスバリアフィルム、断熱フィルム(断熱層)、伝熱フィルム(伝熱層;ヒートシンク)、色調を調整するためのフィルムおよび滑り性(摩擦係数)を調整するためのフィルム等が挙げられる。
【0041】
基板2の形状は、本実施形態では、図1に示すように、シート状(板状)をなしている。このような形状をなす基板2は、比較的容易に被着体4に対して接着する(貼り付ける)ことができる。
また、この基板2は、可撓性を有するものであるのが好ましい。これにより、被着体4の接着シート1を接着させる面が、湾曲面のような平坦面で構成されていない面であったとしても、接着シートを、この接着させる面の形状に追従して変形させることができる。また、被着体4が板状をなし、接着シート1をこの被着体4の表面と裏面との双方に亘って接着する場合であっても、接着シート1を折り曲げることにより、被着体4の表面および裏面の双方に貼り付けることができる。
【0042】
さらに、可撓性を有する基板2は、塑性変形し得るもの、または弾性変形し得るもののいずれであってもよいが、弾性変形し得るもので有るのが好ましい。これにより、たとえ被着体4が接着シート1を接着した後に変形を繰り返して使用されるものであったとしても、接着シート1は、疲労破壊を生じることなく、被着体4の形状に対応して変形し得るものとなる。
【0043】
なお、基板2が可撓性を有する場合、基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
接合膜3は、接着シート1を被着体4に接着した際に、機能性基板2と被着体(対向基板)4との間に位置し、これらの基板2と被着体4との接合を担うものである。
この接合膜3は、その少なくとも一部の領域、すなわち、平面視における接合膜の全面または一部の領域に対する、エネルギーの付与により、接合膜3の表面付近に存在する脱離基303が、脱離するものである(図2参照)。そして、このような接合膜3は、脱離基303の脱離によって、その表面のエネルギーを付与した領域に、被着体(対向基板)4との接着性が発現するものである。
【0044】
本発明の接着シート1では、主にこの接合膜3の構成に特徴を有しており、具体的には、接合膜3としては、次のようなIまたはIIの構成のものが用いられる。
以下、IおよびIIの構成の接合膜3について、それぞれ、詳述する。
I: まず、Iの構成の接合膜3は、基板2上に設けられ、金属原子と、この金属原子結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである(図2参照。)。換言すれば、接合膜3は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入したものと言うことができる。
【0045】
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3(金属原子および酸素原子の少なくとも一方)から脱離し、図3に示すように、接合膜3の少なくとも表面35の付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた接着シート1は、被着体4に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
【0046】
また、接合膜3は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち金属酸化物に脱離基303が結合したものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、接着シート1を被着体4に接着して得られる、後述する接合体5においても、寸法精度が高いものが得られる。
さらに、接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接着シート1を用いて得られる接合体5の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0047】
また、本発明では、接合膜3をIの構成のものとする場合、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、後述する接合体5において、接合膜3を機能性基板2と被着体4とを電気的に接続する端子等として用いることができる。
さらに、接合膜3は、透光性を有するものであるものが好ましい。これにより、本発明の接合体5を、光学素子等における、透光性を必要とする領域に適用することができる。
【0048】
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜3の表面35付近に存在していればよく、接合膜3のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜3の表面35付近に偏在していてもよい。なお、脱離基303が表面35付近に偏在する構成とすることにより、接合膜3に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜3に、接合膜としての機能の他に、導電性や透光性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。
【0049】
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜3を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜3は、優れた導電性と透明性とを発揮するものとなる。
【0050】
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0051】
また、接合膜3中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、接着シート1と被着体4とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0052】
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接着シート1の接着性をより高度なものとすることができる。
【0053】
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、Iの構成の接合膜3では、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0054】
以上のことを考慮すると、接合膜3としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜3は、基板2に対して特に強固に接着するとともに、被着体4に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、基板2と被着体4とを強固に接合することができる。
【0055】
また、接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接着シート1と被着体4とを接合した接合体5の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体5の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0056】
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、基板2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接着シート1と被着体4とを貼り合わせた際に、接合膜3の被着体4に対する密着性を高めることができる。
【0057】
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、接合膜3のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、I−A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、接合膜3の表面35付近に偏在させる場合には、例えば、I−B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
【0058】
以下、I−AおよびI−Bの方法を用いて、接合膜3を成膜する場合について、詳述する。
I−A: I−Aの方法では、接合膜3は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を基板2に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができるため、接合膜3のほぼ全体に亘って脱離基303を導入することができる。
【0059】
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜3は、被着体4に対して特に強固に接合し得るものとなる。さらに、PVD法で成膜された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、接合体5の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0060】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
【0061】
以下、PVD法により接合膜3を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜3を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、基板2上にイオンビームスパッタリング法により接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図4に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜3の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
【0062】
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、基板2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
【0063】
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、基板2上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
【0064】
イオン源(イオン銃)215は、図5に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図4に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
【0065】
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
【0066】
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
【0067】
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる、イオン源215を複数設置することにより、接合膜3の成膜速度をより速くすることができる。
【0068】
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、基板2および接合膜3が、不用な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0069】
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして基板2上に接合膜3が形成される。
まず、機能性基板2を用意し、この基板2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
【0070】
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
【0071】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
【0072】
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
【0073】
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が基板2上に被着することにより、接合膜3が形成される。
【0074】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、厚さ方向のほぼ全体に亘って脱離基303が存在する接合膜3を成膜することができる。
【0075】
I−B: また、I−Bの方法では、接合膜3は、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
【0076】
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
【0077】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、基板2上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
【0078】
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、I−B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニール)する方法、I−B2:イオンインプラテーション法等が挙げられるが、中でも、特に、I−B1の方法を用いるのが好ましい。I−B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
【0079】
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理することにより、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
なお、I−Bの方法を用いて接合膜3の成膜する場合も、I−Aの方法を用いて接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
【0080】
まず、機能性基板2を用意する。そして、この基板2を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
【0081】
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
【0082】
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、基板2上に被着して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
【0083】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
【0084】
次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程において、基板2および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
【0085】
次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前工程でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜3が形成される。
【0086】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
【0087】
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
【0088】
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜3を成膜することができる。
【0089】
II: 次に、IIの構成の接合膜3は、基板2上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである(図6参照。)。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3の少なくとも表面35付近から脱離し、図7に示すように、接合膜3の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜3を備えた接着シート1は、被着体4に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
【0090】
また、接合膜3は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、接合膜3自体が寸法精度の高いものとなり、接着シート1を被着体4に接着して得られる、後述する接合体5においても、寸法精度が高いものが得られる。
このような接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、従来から用いられている、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の接着剤に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、接着シート1を用いて得られる接合体5の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。さらに、接着剤の硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0091】
また、本発明では、接合膜3をIIの構成のものとする場合、接合膜3は、導電性を有するものであるのが好ましい。これにより、後述する接合体において、接合膜3を機能性基板2と被着体4とを電気的に接続する端子等として用いることができる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
【0092】
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
【0093】
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の導電性をより高めることができる。
【0094】
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜3は、優れた導電性を発揮するものとなる。また、接合膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜3を成膜することができる。
【0095】
また、脱離基303は、前述したように、接合膜3から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0096】
具体的には、IIの構成の接合膜3では、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接着シート1の接着性をより高度なものとすることができる。
【0097】
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0098】
また、かかる構成の接合膜3において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、接着シート1と被着体4とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜3を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0099】
また、接合膜3の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、50〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接着シート1と被着体4とを接合した接合体5の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
すなわち、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体5の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0100】
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、基板2の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、接着シート1と被着体4とを貼り合わせた際に、接合膜3の被着体4に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0101】
以上説明したような接合膜3は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、II−A:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体に付与して接合膜3を形成する方法、II−B:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜の表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜3を形成する方法、II−C:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、II−Cの方法により接合膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜3を形成することができる。
【0102】
以下、II−Cの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法により、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置500について説明する。
【0103】
図8に示す成膜装置500は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜3の形成をチャンバー511内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置500は、チャンバー(真空チャンバー)511と、このチャンバー511内に設置され、基板2(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)512と、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段560と、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段570と、チャンバー511内の排気をして圧力を制御する排気手段130と、基板ホルダー512を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
【0104】
基板ホルダー512は、本実施形態では、チャンバー511の底部に取り付けられている。この基板ホルダー512は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、基板2上に接合膜を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー512の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター521が配設されている。このシャッター521は、基板2および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0105】
有機金属材料供給手段560は、チャンバー511に接続されている。この有機金属材料供給手段560は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽562と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ565と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に導くガス供給ライン561と、ガス供給ライン561の途中に設けられたポンプ564およびバルブ563とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段560では、貯留槽562は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ563を開放した状態で、ポンプ564を作動させて、キャリアガスをガスボンベ565から貯留槽562に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン561内を通過してチャンバー511内に供給されるようになっている。
【0106】
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段570がチャンバー511に接続されている。ガス供給手段570は、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ575と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー511内に導くガス供給ライン571と、ガス供給ライン571の途中に設けられたポンプ574およびバルブ573とで構成されている。かかる構成のガス供給手段570では、バルブ573を開放した状態で、ポンプ574を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ575から、供給ライン571を介して、チャンバー511内に供給されるようになっている。ガス供給手段570をかかる構成とすることにより、チャンバー511内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜3が成膜される。
【0107】
チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜することができる。その結果、この接合膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
【0108】
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段530は、ポンプ532と、ポンプ532とチャンバー511とを連通する排気ライン531と、排気ライン531の途中に設けられたバルブ533とで構成されており、チャンバー511内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
【0109】
以上のような構成の成膜装置500を用いてMOCVD法により、以下のようにして基板2上に接合膜3が形成される。
まず、機能性基板2を用意する。そして、この基板2を成膜装置500のチャンバー511内に搬入し、基板ホルダー512に装着(セット)する。
次に、排気手段530を動作させ、すなわちポンプ532を作動させた状態でバルブ533を開くことにより、チャンバー511内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
【0110】
また、ガス供給手段570を動作させ、すなわちポンプ574を作動させた状態でバルブ573を開くことにより、チャンバー511内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段570による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
【0111】
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー512を加熱する。基板ホルダー512の温度は、形成する接合膜3の種類、すなわち、接合膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜3を成膜することができる。
【0112】
次に、シャッター521を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽562が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ564を動作させるとともに、バルブ563を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
【0113】
このように、前記工程で基板ホルダー512が加熱された状態で、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、基板2上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、基板2上に接合膜3を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜3を基板2上に形成することができる。
【0114】
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜3を確実に形成することができる。
【0115】
また、本実施形態では、ガス供給手段570を動作させることにより、チャンバー511内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、基板2上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
【0116】
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜3を成膜することができる。
以上のように、接合膜3を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜3を成膜することができる。
【0117】
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜3に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、機能性基板2上に接合膜3を成膜することができる。
なお、基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、上記の方法により接合膜3を形成するのに先立って、基板2の構成材料に応じて、あらかじめ、基板2と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
【0118】
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、基板2の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、接合膜3と基板2との接合強度を高めることができる。
【0119】
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜3を形成するために、基板2の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す基板2の表面が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、基板2の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜3の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる基板2の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0120】
このような材料で構成された基板2は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された基板2を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、接着シート1(結合膜3)と被着体4とを強固に接合することができる。
なお、この場合、基板2の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合膜3を形成すべき領域の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0121】
また、表面処理に代えて、基板2の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、あらかじめ、中間層を形成するようにしてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、接合膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能、接合膜3を成膜する際に接合膜3の膜成長を促進する機能(シード層)、接合膜3を保護する機能(バリア層)等を有するものが好ましい。このような中間層を介して基板2と接合膜3とを接合することになり、信頼性の高い接合体を得ることができる。
【0122】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、タングステン、銅およびその合金等の金属系材料、金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0123】
また、これらの各種材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、基板2と接合膜3との間の接合強度を特に高めることができる。
以上のようにして、機能性基板2の一方の面側に接合膜3を備える接着シート1を製造することができる。
なお、接着シート1は、その形状が上述したような板状(シート状)をなす場合の他、テープ状をなすものやラベル状をなすものであってもよいし、さらには、櫛歯形状のようにパターニングされているものであってもよい(図9参照)。
【0124】
図9に示すような櫛歯形状をなす接着シート1は、予め、櫛歯形状をなす機能性基板2を用意した後、この機能性基板2上に接合膜3を形成することにより得ることができる他、上述した板状の接着シートを、各種エッチング法を用いてパターニングすることにより得ることができる。
また、パターニングの形状は、櫛歯形状に限らず、L字形状、U字形状、枠状および蛇行形状等の任意の形状とすることができる。
【0125】
次に、本実施形態の接着シートの接合方法について説明する。
本実施形態にかかる接合方法は、接着シートを用意する工程と、接着シートの接合膜に対してエネルギーを付与して、接合膜中から脱離基を脱離させることにより、接合膜を活性化させる工程と、被着体(対向基板)を用意し、接着シートが備える接合膜と被着体とが密着するようにして、接着シートを被着体に貼り合わせ、接合体を得る工程とを有する。
【0126】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前述した方法を用いて、接着シート1(本発明の接着シート)を用意する(図10(a)参照)。
[2]次に、接着シート1の接合膜3の表面35に対してエネルギーを付与する。
ここで、接合膜3にエネルギーを付与すると、接合膜3では、脱離基303の結合手が切れて接合膜3の表面35付近から脱離し、脱離基303が脱離した後には、活性手が接合膜3の表面35付近に生じる。これにより、接合膜3の表面35に、被着体4との接着性が発現する。
【0127】
このような状態の接着シート1は、被着体4と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0128】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図10(b)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の脱離基303を確実に脱離させることができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0129】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0130】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3に必要以上に紫外線が照射されない程度の時間とするのが好ましい。これにより、接合膜3が変質・劣化するのを効果的に防止することができる。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
【0131】
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0132】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0133】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3の表面35付近から確実に切断することができる。
【0134】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3から確実に切断することができる。
【0135】
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面35に合わせた状態で、この表面35に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面35付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面35に存在する脱離基303を選択的に脱離させることができる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0136】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3の表面35付近に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基板2および接合膜3の変質・劣化、すなわち接着シート1の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接着シート1と被着体4との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0137】
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面35付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面35付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
【0138】
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図2および図6に示すように、その表面35付近に脱離基303を有している。かかる接合膜3にエネルギーを付与すると、脱離基303(図2では、水素原子、図6では、メチル基)が接合膜3から脱離する。これにより、図3および図7に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
【0139】
ここで、本明細書中において、接合膜3が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、接合膜3の構成原子において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0140】
したがって、活性手304とは、図3および図7に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304が存在するようにすれば、被着体4に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
【0141】
また、本実施形態では、接着シート1を被着体4に接着する(貼り合わせる)前に、あらかじめ、接着シート1の接合膜3に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、接着シート1と被着体4とを貼り合わせる(重ね合わせる)際、または貼り合わせた(重ね合わせた)後に行うようにしてもよい。なお、このような場合については、後述する第2実施形態において説明する。
【0142】
[3]次に、被着体(他の被着体)4を用意する。そして、図10(c)に示すように、活性化させた接合膜3と被着体4とが密着するようにして、接着シート1を被着体4に接触させる。これにより、前記工程[2]において、接合膜3が被着体4に対する接着性が発現していることから、接合膜3と被着体4とが化学的に結合することとなり、接着シート1が被着体4に接着して、図11(d)に示すような接合体5が得られる。
【0143】
このようにして得られた接合体5では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接着シート1と被着体4とが接合されている。このため、接合体5は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0144】
また、このような接着シート1を用いて得られた接合体5を得る方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された基板2および被着体4をも、接合に供することができる。
また、接合膜3を介して基板2と被着体4とを接合しているため、基板2や被着体4の構成材料に制約がないという利点もある。
【0145】
以上のことから、本発明によれば、基板2および被着体4の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、固体接合では、接合層を介していないため、基板2と被着体4との間の熱膨張率に大きな差がある場合、その差に基づく応力が接合界面に集中し易く、剥離等が生じるおそれがあったが、接合体(本発明の接合体)5では、接合膜3によって応力の集中が緩和され、剥離の発生を的確に抑制または防止することができる。
【0146】
ここで、接着シート1を接着する被着体4は、基板2と同様、いかなる材料で構成されたものであってもよい。
具体的には、被着体4は、基板2の構成材料と同様の材料で構成し得る。
また、被着体4は、図10に示す板状のものに限らず、例えば、塊状(ブロック状)、棒状等のものであってもよい。
【0147】
ところで、被着体4の構成材料は、基板2と異なっていても同じであっても良いが、基板2と被着体4の各熱膨張率は、ほぼ等しくなっているのが好ましい。基板2と被着体4の熱膨張率がほぼ等しければ、接着シート1と被着体4とを貼り合せた際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体5において、剥離等の不具合が発生するのを確実に防止することができる。
また、後に詳述するが、基板2および被着体4の各熱膨張率が互いに異なる場合であっても、接着シート1と被着体4とを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化するのが好ましい。これにより、接着シート1と被着体4とを高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0148】
すなわち、基板2と被着体4の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、基板2と被着体4との熱膨張率の差にもよるが、基板2および被着体4の温度が25〜50℃程度である状態下で、接着シート1を被着体4に貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基板2と被着体4との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体5における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
【0149】
また、この場合、具体的な基板2と被着体4との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
さらに、基板2と被着体4は、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、接着シート1と被着体4とをより強固に接合することができる。
【0150】
以上説明したような被着体4の接着シート1との接合に供される領域には、基板2と同様に、被着体4の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、被着体4と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接着シート1と被着体4との接合強度をより高めることができる。
なお、表面処理としては、基板2に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
【0151】
また、被着体4の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接着シート1と被着体4との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる被着体4の構成材料には、前述した基板2の構成材料と同様のもの、すなわち、各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を用いることができる。
さらに、被着体4の接着シート1との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、接着シート1と被着体4との接合強度を十分に高くすることができる。
【0152】
このような基や物質としては、例えば、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。このような基または物質を有する表面は、接着シート1の接合膜3に対する接合強度のさらなる向上を実現し得るものとなる。
【0153】
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接着シート1と特に強固に接合可能な被着体4が得られる。
また、表面処理に代えて、被着体4の接着シート1との接合に供される領域には、あらかじめ、接合膜3との密着性を高める機能を有する中間層を形成しておくのが好ましい。これにより、かかる中間層を介して接着シート1と被着体4とを接合することになり、より接合強度の高い接合体5が得られるようになる。
【0154】
かかる中間層の構成材料には、前述の基板2に形成する中間層の構成材料と同様のものを用いることができる。
ここで、本工程において、接着シート1と被着体4とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、被着体4の接着シート1との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接着シート1の接合膜3と被着体4とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接着シート1の接合膜3の表面35に存在する水酸基と、被着体4の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接着シート1と被着体4とが接合されると推察される。
【0155】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接着シート1と被着体4との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接着シート1と被着体4とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接着シート1(接合膜3)を被着体4に貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0156】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、脱離基303を備えた状態で化学的に比較的安定な膜であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接着シート1(接合膜3を備えた基板2)を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[2]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体5の製造効率の観点から有効である。
【0157】
以上のようにして、図11(d)に示す接合体(本発明の接合体)5を得ることができる。
なお、図11(d)では、接着シート1の接合膜3の全面を覆うように被着体4を重ね合わせているが、これらの相対的な位置は、互いにずれていてもよい。すなわち、接合膜3から被着体4がはみ出るように、接着シート1と被着体4とが重ね合わされていてもよい。
【0158】
このようにして得られた接合体5は、基板2と被着体4との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体5は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。そして、後述のように、接合体5を用いて、例えば弾性表面波素子を構成した場合、耐久性に優れた弾性表面波素子が得られる。また、本発明の接着シート1によれば、基板2と被着体4とが上記のような大きな接合強度で接合された接合体5を効率よく作製することができる。
【0159】
なお、従来のシリコン基板同士を直接接合するような固体接合では、接合に供される基板の表面を活性化させても、その活性状態は、大気中で数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持することができなかった。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの基板を貼り合わせる等の作業に要する時間を、十分に確保することができないという問題があった。
【0160】
これに対し、本発明によれば、比較的長時間に亘って活性状態を維持することができる。このため、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。なお、比較的長時間に亘って活性状態を維持し得ることは、有機成分で構成される脱離基303が脱離した活性化状態が安定化していることに起因しているものと推察される。
【0161】
なお、接合体5を得る際、または、接合体5を得た後に、この接合体5(接着シート1と被着体4の積層体)に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([4A]、[4B]および[4C])のうちの少なくとも1つの工程(接合体5の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体5の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0162】
[4A] 本工程では、図11(e)に示すように、得られた接合体5を、基板2と被着体4とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、基板2の表面および被着体4の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、接合体5における接合強度をより高めることができる。
また、接合体5を加圧することにより、接合体5中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体5における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、接合体5を加圧する際の圧力は、接合体5が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して接合体5における接合強度を高めることができる。
【0163】
なお、この圧力は、基板2および被着体4の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、基板2および被着体4の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体5の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基板2および被着体4の各構成材料によっては、基板2および被着体4に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体5を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0164】
[4B] 本工程では、図11(e)に示すように、得られた接合体5を加熱する。
これにより、接合体5における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体5を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体5の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体5が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0165】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、図11(e)に示すように、接合体5を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体5の接合強度を特に高めることができる。
【0166】
[4C] 本工程では、図11(f)に示すように、得られた接合体5に紫外線を照射する。
これにより、接合膜3と基板2および被着体4との間に形成される化学結合を増加させ、基板2および被着体4と接合膜3との間の接合強度をそれぞれ高めることができる。その結果、接合体5の接合強度を特に高めることができる。
【0167】
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[2]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
また、本工程[4C]を行う場合、基板2および被着体4のうち、いずれか一方が透光性を有していることが必要である。そして、透光性を有する基板側から、紫外線を照射することにより、接合膜3に対して確実に紫外線を照射することができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体5における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0168】
<第2実施形態>
次に、本発明の接着シート、この接着シートと被着体とを接合する接合方法(本発明の接合方法)、および本発明の接着シートを備える接合体の各第2実施形態について説明する。
図12は、本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図12中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0169】
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、接着シート1を被着体4に重ね合わせた(接触させた)後に、接合膜3にエネルギーを付与して、接着シート1を被着体4に接着するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0170】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、本発明の接着シート1を用意する工程と、被着体(対向基板)4を用意し、接着シート1が備える接合膜3と被着体4とが密着するように、これらを重ね合わせる工程と、重ね合わせてなる積層体中の接合膜3に対してエネルギーを付与して、接合膜3を活性化させ、これにより、接着シート1と被着体4とを接合してなる接合体5を得る工程とを有する。
【0171】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、前記第1実施形態と同様にして、接着シート1を用意する(図12(a)参照)。
[2]次に、図12(b)に示すように、被着体4を用意し、接合膜3の表面35と被着体4とが密着(接触)するように、接着シート1と被着体4とを重ね合わせ、積層体を得る。なお、この積層体の状態では、接着シート1と被着体4との間は接合されていないので、接着シート1の被着体4に対する相対位置を調整することができる。これにより、接着シート1と被着体4とを重ね合わせた後、これらの位置を容易に微調整することができる。その結果、接合膜3の表面35方向における位置精度を高めることができる。
【0172】
[3]次に、図12(c)に示すように、積層体中の接合膜3に対してエネルギーを付与する。接合膜3にエネルギーが付与されると、接合膜3に、被着体4との接着性が発現する。これにより、接着シート1と被着体4とが接合され、接合体5が得られる(図12(d)参照)。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
【0173】
また、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法としては、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、および接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0174】
このうち、接合膜3にエネルギー線を照射する方法としては、前記第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
なお、この場合、エネルギー線は、基板2または被着体4を透過して接合膜3に照射されることとなる。したがって、基板2または被着体4のうちエネルギー線を照射する側の基板は、透光性を有するもので構成される。
【0175】
一方、接合膜3を加熱することにより、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、基板2および被着体4が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜3を確実に活性化させることができる。
【0176】
また、加熱時間は、接合膜3の脱離基303を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜3は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、基板2または被着体4は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された基板2または被着体4は、効率よく発熱する。その結果、接合膜3を効率よく加熱することができる。
【0177】
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、基板2または被着体4のうちヒータまたは火炎を接触させる側の基板は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、基板2または被着体4を介して、接合膜3に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜3を効率よく加熱することができる。
また、接合膜3に圧縮力を付与することにより、接合膜3に対してエネルギーを付与する場合には、接着シート1と被着体4とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜3に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜3に、被着体4との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、基板2と被着体4の各構成材料によっては、基板2および被着体4に損傷等が生じるおそれがある。
【0178】
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のようにして、接着シート1を被着体4に接着して接合体5を得ることができる。
【0179】
<第3実施形態>
次に、本発明の接着シート、この接着シートと被着体とを接合する接合方法(本発明の接合方法)、および本発明の接着シートを備える接合体の各第3実施形態について説明する。
図13は、本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第3実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図13中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0180】
以下、第3実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態または前記第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、接合膜3の一部の所定領域350のみを選択的に活性化させることにより、接着シート1を被着体4に、前記所定領域350において部分的に接着(接合)するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0181】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、本発明の接着シート1を用意する工程と、接着シート1の接合膜3に対して、一部の所定領域350に対して選択的にエネルギーを付与して、前記所定領域350を選択的に活性化させる工程と、被着体(対向基板)4を用意し、接着シート1が備える接合膜3と被着体4とが密着するように、これらを貼り合わせ、接着シート1と被着体4とが前記所定領域350において部分的に接合されてなる接合体5bを得る工程とを有する。
【0182】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、接着シート1(本発明の接着シート)を用意する(図13(a)参照)。
[2]次に、図13(b)に示すように、接着シート1の接合膜3の表面35のうち、一部の所定領域350に対して選択的にエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜3では、所定領域350において、図2および図6に示す脱離基303が接合膜3から脱離する。そして、脱離基303が脱離した後には、所定領域350において、図3および図7に示すように、接合膜3の表面35付近に活性手304が生じ、接合膜3が活性化される。これにより、接合膜3の所定領域350に、被着体4との接着性が発現し、一方、接合膜3の所定領域350以外の領域には、該接着性は全く発現しないか、発現したとしてもほとんど発現しない。
【0183】
このような状態の接着シート1は、所定領域350において、被着体4と部分的に接着可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
また、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。この方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0184】
また、本実施形態では、エネルギー線として、特に、レーザ光、電子線のような指向性の高いエネルギー線を用いるのが好ましい。かかるエネルギー線であれば、目的の方向に向けて照射することにより、所定領域に対してエネルギー線を選択的にかつ簡単に照射することができる。
また、指向性の低いエネルギー線であっても、接合膜3の表面35のうち、エネルギー線を照射すべき所定領域350以外の領域を覆うように(隠すように)して照射すれば、所定領域350に対してエネルギー線を選択的に照射することができる。
具体的には、図13(b)に示すように、接合膜3の表面35の上方に、エネルギー線を照射すべき所定領域350の形状に対応する形状をなす窓部61を有するマスク6を設け、このマスク6を介してエネルギー線を照射すればよい。このようにすれば、所定領域350に対して、エネルギー線を選択的に照射することが容易に行える。
【0185】
[3]次に、図13(c)に示すように、被着体(対向基板)4を用意する。そして、所定領域350を選択的に活性化させた接合膜3と被着体4とが密着するように、接着シート1と被着体4とを貼り合わせる。これにより、図13(d)に示す接合体5bを得る。
このようにして得られた接合体5bは、基板2と被着体4の対向面全体を接合するのではなく、一部の領域(所定領域350)のみを部分的に接合してなるものである。そして、この接合の際、接合膜3に対してエネルギーを付与する領域を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、接着シート1の接合膜3を活性化させる領域(本実施形態では、所定領域350)の面積を制御することにより、接合体5bの接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合した箇所を容易に分離することができる接合体5bが得られる。
【0186】
また、図13(d)に示す接着シート1と被着体4との接合部(所定領域350)の面積や形状を適宜制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、基板2と被着体4との間で熱膨張率の差が大きい場合でも、接着シート1を被着体4に確実に接合することができる。
さらに、接合体5bでは、接着シート1と被着体4との間隙のうち、接合している所定領域350以外の領域では、わずかな間隙が生じている(残存している)。したがって、この所定領域350の形状を適宜調整することにより、接着シート1と被着体4との間に、例えば、閉空間や流路等を容易に形成することができる。
【0187】
なお、前述したように、接着シート1と被着体4との接合部(所定領域350)の面積を制御することにより、接合体5bの接合強度を調整可能であると同時に、接合体5bを分離する際の強度(割裂強度)を調整可能である。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体5bを作製する場合には、接合体5bの接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体5bを分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
【0188】
以上のようにして接合体5bを得ることができる。
なお、接合体5bを得た後、この接合体5bに対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
このとき、接合体5bの接合膜3と被着体4との界面のうち、所定領域350以外の領域(非接合領域)では、わずかな間隙が生じている(残存している)。したがって、接合体5bを加圧しつつ、加熱する際には、この所定領域350以外の領域において、接合膜3と被着体4とが接合されないような条件で行うようにするのが好ましい。
また、上記のことを考慮して、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行う場合、これらの工程を、所定領域350に対して選択的に行うのが好ましい。これにより、所定領域350以外の領域において、接合膜3と被着体4とが接合されるのを防止することができる。
【0189】
<第4実施形態>
次に、本発明の接着シート、この接着シートと被着体とを接合する接合方法(本発明の接合方法)、および本発明の接着シートを備える接合体の各第4実施形態について説明する。
図14は、本発明の接着シートを用いて、接着シートと被着体とを接合する接合方法の第4実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図14中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0190】
以下、第4実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態ないし前記第3実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、基板2の上面25のうち、一部の所定領域350のみに選択的に接合膜3aを形成することにより、接着シート1と被着体4とを、前記所定領域350において部分的に接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0191】
すなわち、本実施形態にかかる接合方法は、基板2と、基板2上の一部の所定領域350のみに形成された接合膜3aとを有する接着シート1を用意する工程と、接着シート1の接合膜3aに対してエネルギーを付与して、接合膜3aを活性化させる工程と、被着体(対向基板)4を用意し、接着シート1が備える接合膜3aと被着体4とが密着するように、これらを貼り合わせ、接着シート1と被着体4とが接合膜3aを介して接合されてなる接合体5cを得る工程とを有する。
【0192】
以下、本実施形態にかかる接合方法の各工程について順次説明する。
[1]まず、図14(a)に示すように、基板2の上面25の上方に、所定領域350の形状に対応する形状をなす窓部61を有するマスク6を設ける。
次に、マスク6を介して、基板2の上面25に接合膜3aを成膜する。例えば、図14(a)に示すように、マスク6を介して接合膜3aを成膜することにより、所定領域350に選択的に接合膜3aが形成される。
【0193】
[2]次に、図14(b)に示すように、接合膜3aにエネルギーを付与する。これにより、接着シート1では、接合膜3aに、被着体4との接着性が発現する。
なお、本工程でエネルギーを付与する際には、接合膜3aに選択的にエネルギーを付与してもよいが、接合膜3aを含む基板2の上面25全体にエネルギーを付与するようにしてもよい。
また、接合膜3aに付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実施形態で挙げたような方法で付与される。
【0194】
[3]次に、図14(c)に示すように、被着体(対向基板)4を用意する。そして、接合膜3aと被着体4とを密着するように、接着シート1と被着体4とを貼り合わせる。これにより、図14(d)に示す接合体5cを得る。
このようにして得られた接合体5cは、基板2と被着体4の対向面全体を接合するのではなく、一部の領域(所定領域350)のみを部分的に接合してなるものである。そして、接合膜3aを形成する際、形成領域を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、接合膜3aを形成する領域(所定領域350)の面積を制御することにより、接合体5cの接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合した箇所を容易に分離することができる接合体5cが得られる。
【0195】
また、図14(d)に示す接着シート1と被着体4との接合部(所定領域350)の面積や形状を適宜制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、基板2と被着体4との間で熱膨張率差が大きい場合でも、接着シート1と被着体4とを確実に接合することができる。
さらに、接合体5cの基板2と被着体4との間には、所定領域350以外の領域に、接合膜3aの厚さに相当する離間距離の間隙3cが形成されている(図14(d)参照)。したがって、所定領域350の形状や接合膜3aの厚さを適宜調整することにより、基板2と被着体4との間に、所望の形状の閉空間や流路等を容易に形成することができる。
【0196】
以上のようにして接合体5cを得ることができる。
なお、接合体5cを得た後、この接合体5cに対して、必要に応じ、前記第1実施形態の工程[4A]、[4B]および[4C]のうちの少なくとも1つの工程を行うようにしてもよい。
以上のような前記各実施形態にかかる接着シート1を用いた接合方法は、種々の被着体4に接着シート1を接合するのに用いることができる。
【0197】
このような接着シート1と被着体4との接合により得られる部材(接合体)としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子、弾性表面波素子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
【0198】
<弾性表面波素子>
ここでは、本発明の接合体を弾性表面波素子(SAWデバイス)に適用した場合の実施形態について説明する。
図15は、本発明の接合体を適用して得られた弾性表面波素子を示す平面図、図16は、図15に示す弾性表面波素子の縦断面図である。なお、以下の説明では、図16中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0199】
図15および図16に示す弾性表面波素子610は、トランスバーサル型構造の弾性表面波素子であり、少なくとも表面付近に圧電性を有する基板620と、基板620上に設けられた入力用のIDT630および出力用のIDT640と、各IDT630、640の上面に設けられた絶縁保護膜650とを有している。
基板620は、基部621上に、下地層622および圧電体層623が順次積層されて構成されている。
【0200】
基部621の構成材料としては、例えば、Si、GaSi、SiGe、GaAs、STC、InPのような各種半導体材料、各種ガラス材料、各種セラミックス材料、ポリイミド、ポリカーボネートのような各種樹脂材料等が挙げられる。
基部621の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜1mm程度であるのが好ましく、0.1〜0.8mm程度であるのがより好ましい。
【0201】
また、基部621は、単層で構成されたもののみならず、複数の層の積層体で構成されたものでもよく、この場合、各層は、前述したような材料を任意に組み合わせて用いることができる。
下地層622は、圧電体層623において励振される弾性表面波の特性(条件)を設定(規定)する機能を有するものである。この特性としては、例えば、発振周波数、振幅、伝搬速度等が挙げられる。
【0202】
下地層622を設け、その構成材料を適宜設定することにより、弾性表面波の特性を所望のものに設定することが可能となる。
この下地層622の構成材料としては、例えば、ダイヤモンド、シリコン、サファイヤ、ガラス、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好ましく、特に、ダイヤモンド、サファイヤ、タンタル酸リチウム、ニオブ酸カリウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好適である。これにより、無線LANや光通信などの高速通信分野への適用を目的として要求される弾性表面波の高周波化に寄与することができる。
【0203】
下地層622の平均厚さは、特に限定されないが、1〜20μm程度であるのが好ましく、3〜10μm程度であるのがより好ましく、3〜5μm程度であるのがさらに好ましい。
また、下地層622は、単層で構成されたもののみならず、目的とする弾性表面波の特性に応じて、複数の層の積層体で構成することもできる。なお、下地層622は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0204】
圧電体層623は、弾性表面波の伝搬媒体として機能するものである。
この圧電体層623の構成材料としては、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムのうちの少なくとも1種を主とするものが好ましい。このような材料で圧電体層623を構成することにより、高周波であり、かつ温度特性に優れた弾性表面波素子610が得られる。
【0205】
また、圧電体層623の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜2μm程度であるのがより好ましい。
なお、基板620には、多層構成のものに代えて、単層構成の基板を使用することもできる。
IDT(入力側電極)630は、圧電体層623に電圧を印加して、圧電体層623に弾性表面波を励振させる機能を有するものであり、一方、IDT(出力側電極)640は、圧電体層623を伝搬する弾性表面波を検出し、弾性表面波を電気信号に変換して外部に出力する機能を有するものである。
【0206】
したがって、IDT630に駆動電圧が入力されると、圧電体層623において弾性表面波が励振され、フィルタリング機能による特定の周波数帯域の電気信号が、IDT640から出力される。
各IDT630、640は、それぞれ、電極指631、641を有する櫛歯形状をなす一対の櫛歯電極で構成されており、櫛歯電極の電極指631、641の幅、間隔、厚さ等を調整することにより、弾性表面波の発振周波数の特性を所望のものに設定することができる。
【0207】
各IDT(基材)630、640の構成材料としては、それぞれ、例えば、Al、Cu、W、Mo、Ti、Au、Y、Pb、Scまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
絶縁保護膜650は、IDT630、640表面に異物が付着するのを防止し、異物を介した電極指631、641間のショートを防ぐものである。
【0208】
この絶縁保護膜650は、IDT(櫛歯電極)630、640の上面に、これらとほぼ等しい形状かつほぼ等しい面積となるよう形成されている。
この弾性表面波素子610では、絶縁保護膜650およびIDT630、640が、それぞれ、機能性基板2および接合膜3で構成される。
かかる構成の弾性表面波素子610は、それぞれ、絶縁保護膜650およびIDT630、640の形状に対応した、機能性基板2および接合膜3を備える接着シート1を基板(被着体)620に接着することにより製造することができる。
【0209】
このような構成により、弾性表面波が伝搬する経路上で、絶縁保護膜650から基板620への材質変化が無くなり、この経路上での材質変化は、実質的に電極指631、641から基板620への変化のみとなる。したがって、材質変化に起因した弾性表面波の反射およびこの反射によるエネルギー損失が抑えられ、高い入出力効率が得られるようになる。
【0210】
<配線基板>
さらに、本発明の接合体を配線基板に適用した場合の実施形態について説明する。
図17は、本発明の接合体を適用して得られた配線基板を示す斜視図である。
図17に示す配線基板410は、絶縁基板413と、絶縁基板413上に配設された電極412と、リード414と、リード414の一端に、電極412と対向するように設けられた電極415と、電極412と電極415とを電気的に接合する導電層416とを有している。
【0211】
この配線基板410では、電極415および導電層416が、それぞれ、機能性基板2および接合膜3で構成される。
かかる構成の配線基板410では、それぞれ、電極415および導電層416の形状に対応した、機能性基板2および接合膜3を備える接着シート1を、電極412に接着することにより製造することができる。このようにして製造した配線基板410において、電極412、415間は、導電層416で強固に接合されることになり、各電極412、415間の層間剥離等が確実に防止されるとともに、信頼性の高い配線基板410が得られる。
【0212】
また、導電層416は、電極415および導電層416を接合するとともに、各電極412、415間を導通する機能をも担う。導電層416は、非常に薄いものでも十分な接合力を発揮する。このため、各電極412、415間の間隙をより小さくすることができ、各電極412、415間の電気抵抗成分(接触抵抗)の低減を図ることができる。その結果、各電極412、415間の導電性をより高めることができる。
また、導電層416は、前述したように、その厚さを高い精度で容易に制御することができる。これにより、配線基板410は、より寸法精度の高いものとなり、各電極412、415間の導電性も容易に制御することができる。
【0213】
以上、本発明の接着シート、接合方法および接合体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の接合方法は、前記各実施形態のうち、任意の1つまたは2つ以上を組み合わせたものであってもよい。
また、本発明の接合方法では、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程を追加してもよい。
【実施例】
【0214】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、以下では、接着シートが備える接合膜の被着体に対する接合強度等の特性を評価することを目的に、各種基板と各種対向基板とを接合膜を介して接合した場合を一例として評価した。
(実施例1A)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
【0215】
次いで、単結晶シリコン基板を図4に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、イオンビームスパッタリング法を用いて、ITOに水素原子が導入された接合膜(平均厚さ100nm)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0216】
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
【0217】
このようにして成膜された接合膜は、ITOに水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
これにより、単結晶シリコン基板上に接合膜が形成された、本発明の接着シートを得た。
【0218】
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板(対向基板)の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
【0219】
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0220】
(実施例2A)
接合体を加圧しつつ加熱する際の加熱温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1Aと同様にして接合体を得た。
(実施例3A〜13A)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表1に示す材料に変更した以外は、前記実施例1Aと同様にして接合体を得た。
【0221】
(実施例14A)
まず、前記実施例1Aと同様にして、単結晶シリコン基板とガラス基板(基板および対向基板)を用意し、それぞれに酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、シリコン基板の表面処理を行った面に、前記実施例1Aと同様にして接合膜を成膜した。これにより、接着シートを得た。
次に、接着シートの接合膜と、ガラス基板の表面処理を行った面とが接触するように、接着シートとガラス基板とを重ね合わせた。
そして、重ね合わせた各基板に対して、以下に示す条件で紫外線を照射した。
【0222】
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
これにより、各基板を接合し、接合体を得た。
続いて、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0223】
(実施例15A)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのステンレス鋼基板を用意した。
次いで、シリコン基板を、図4に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、ATOに水素原子が導入された接合膜(平均厚さ100nm)を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0224】
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ATO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
次に、得られた接合膜に、以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、シリコン基板に形成した接合膜の表面のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
【0225】
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
次に、ステンレス鋼基板にも、シリコン基板と同様にして、酸素プラズマによる表面処理を行った。
【0226】
次に、接合膜の紫外線を照射した面と、ステンレス鋼基板の表面処理を行った面とが接触するように、シリコン基板とステンレス鋼基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0227】
(実施例16A)
加熱の温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例15Aと同様にして接合体を得た。
(実施例17A〜19A)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表2に示す材料に変更した以外は、前記実施例15Aと同様にして接合体を得た。
【0228】
(実施例1B)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、単結晶シリコン基板を図4に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、イオンビームスパッタリング法を用いて、金属酸化物膜として、平均厚さ100nmのITO膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0229】
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ITO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
次に、得られた金属酸化物膜に、以下に示す条件で熱処理を施して、金属酸化物膜(ITO膜)の表面付近に水素原子を導入することにより接合膜を形成した。なお、熱処理の条件は以下に示す通りである。
【0230】
<熱処理の条件>
・熱処理時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :150℃
・処理時間 :60分
以上のようにして成膜された接合膜は、ITO膜の表面付近に水素原子が導入されたもので構成されており、金属原子(インジウムおよびスズ)と、この金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基(水素原子)とを含むものである。
これにより、単結晶シリコン基板上に接合膜が形成された、本発明の接着シートを得た。
【0231】
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板(対向基板)の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
【0232】
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0233】
(実施例2B)
接合体を加圧しつつ加熱する際の加熱温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1Bと同様にして接合体を得た。
(実施例3B〜13B)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表3に示す材料に変更した以外は、前記実施例1Bと同様にして接合体を得た。
【0234】
(実施例14B)
まず、前記実施例1Bと同様にして、単結晶シリコン基板とガラス基板(基板および対向基板)を用意し、それぞれに酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、シリコン基板の表面処理を行った面に、前記実施例1Bと同様にして接合膜を成膜した。これにより、接着シートを得た。
次に、接着シートの接合膜と、ガラス基板の表面処理を行った面とが接触するように、接着シートとガラス基板とを重ね合わせた。
そして、重ね合わせた各基板に対して、以下に示す条件で紫外線を照射した。
【0235】
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
これにより、各基板を接合し、接合体を得た。
続いて、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0236】
(実施例15B)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのステンレス鋼基板を用意した。
次いで、シリコン基板を、図4に示す成膜装置200のチャンバー211内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、金属酸化物膜として平均厚さ100nmのATO膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0237】
<イオンビームスパッタリングの成膜条件>
・ターゲット :ATO
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・チャンバー内の温度 :20℃
・イオンビームの加速電圧 :600V
イオン発生室側のグリッドへの印加電圧 :+400V
チャンバー側のグリッドへの印加電圧 :−200V
・イオンビーム電流 :200mA
・イオン発生室に供給するガス種 :Krガス
・処理時間 :20分
【0238】
次に、基板上に得られた金属酸化物膜に、以下に示す条件で熱処理を施して、金属酸化物膜(ATO膜)の表面付近に水素原子を導入することにより接合膜を形成した。なお、熱処理の条件は以下に示す通りである。
<熱処理の条件>
・熱処理時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・水素ガスの流量 :60sccm
・チャンバー内の温度 :150℃
・処理時間 :60分
【0239】
次に、基板上に得られた接合膜に、以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、シリコン基板に形成した接合膜の表面のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :大気(空気)
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
【0240】
次に、ステンレス鋼基板にも、シリコン基板と同様にして、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、接合膜の紫外線を照射した面と、ステンレス鋼基板の表面処理を行った面とが接触するように、シリコン基板とステンレス鋼基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0241】
(実施例16B)
加熱の温度を80℃から25℃に変更した以外は、前記実施例15Bと同様にして接合体を得た。
(実施例17B、18B、19B)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表4に示す材料に変更した以外は、前記実施例15Bと同様にして接合体を得た。
【0242】
(実施例1C)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのガラス基板を用意した。
次いで、単結晶シリコン基板を図8に示す成膜装置500のチャンバー511内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、表面処理を行った面に、原材料を2,4−ペンタジオネート−銅(II)とし、MOCVD法を用いて、平均厚さ100nmの接合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0243】
<成膜条件>
・チャンバー内の雰囲気 :窒素ガス + 水素ガス
・有機金属材料(原材料) :2,4−ペンタジオネート−銅(II)
・霧化した有機金属材料の流量 :1sccm
・キャリアガス :窒素ガス
・キャリアガスの流量 :500sccm
・水素ガスの流量 :0.2sccm
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・基板ホルダーの温度 :275℃
・処理時間 :10分
以上のようにして成膜された接合膜は、金属原子として銅原子を含み、脱離基として、2,4−ペンタジオネート−銅(II)に含まれる有機物の一部が残存しているものである。
これにより、単結晶シリコン基板上に接合膜が形成された、本発明の接着シートを得た。
【0244】
次に、得られた接合膜に以下に示す条件で紫外線を照射した。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
一方、ガラス基板(対向基板)の片面に対して、酸素プラズマによる表面処理を行った。
【0245】
次に、紫外線を照射してから1分後に、接合膜の紫外線を照射した面と、ガラス基板の表面処理を施した面とが接触するように、単結晶シリコン基板とガラス基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を10MPaで加圧しつつ、120℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0246】
(実施例2C)
接合体を加圧しつつ加熱する際の加熱温度を120℃から25℃に変更した以外は、前記実施例1Cと同様にして接合体を得た。
(実施例3C〜13C)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表5に示す材料に変更した以外は、前記実施例1Cと同様にして接合体を得た。
【0247】
(実施例14C)
まず、前記実施例1Cと同様にして、単結晶シリコン基板とガラス基板(基板および対向基板)を用意し、それぞれに酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、シリコン基板の表面処理を行った面に、前記実施例1Cと同様にして接合膜を成膜した。これにより、接着シートを得た。
次に、接着シートの接合膜と、ガラス基板の表面処理を行った面とが接触するように、接着シートとガラス基板とを重ね合わせた。
そして、重ね合わせた各基板に対して、以下に示す条件で紫外線を照射した。
【0248】
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
これにより、各基板を接合し、接合体を得た。
続いて、得られた接合体を10MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0249】
(実施例15C)
まず、基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmの単結晶シリコン基板を用意し、対向基板として、縦20mm×横20mm×平均厚さ1mmのステンレス鋼基板を用意した。
次いで、シリコン基板を、図8に示す成膜装置500のチャンバー511内に収納し、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、各基板の表面処理を行った面に、原材料を2,4−ペンタジオネート−銅(II)とし、MOCVD法を用いて、平均厚さ100nmの接合膜を成膜した。なお、成膜条件は以下に示す通りである。
【0250】
<成膜条件>
・チャンバー内の雰囲気 :窒素ガス + 水素ガス
・有機金属材料(原材料) :2,4−ペンタジオネート−銅(II)
・霧化した有機金属材料の流量 :1sccm
・キャリアガス :窒素ガス
・キャリアガスの流量 :500sccm
・水素ガスの流量 :0.2sccm
・チャンバーの到達真空度 :2×10−6Torr
・成膜時のチャンバー内の圧力 :1×10−3Torr
・基板ホルダーの温度 :275℃
・処理時間 :10分
【0251】
次に、基板上に得られた接合膜に、以下に示す条件で紫外線を照射した。なお、紫外線を照射した領域は、シリコン基板に形成した接合膜の表面のうち、周縁部の幅3mmの枠状の領域とした。
<紫外線照射条件>
・雰囲気ガスの組成 :窒素ガス
・雰囲気ガスの温度 :20℃
・雰囲気ガスの圧力 :大気圧(100kPa)
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間 :5分
【0252】
次に、ステンレス鋼基板にも、シリコン基板と同様にして、酸素プラズマによる表面処理を行った。
次に、接合膜の紫外線を照射した面と、ステンレス鋼基板の表面処理を行った面とが接触するように、シリコン基板とステンレス鋼基板とを重ね合わせた。これにより、接合体を得た。
次に、得られた接合体を10MPaで加圧しつつ、120℃で加熱し、15分間維持した。これにより、接合体の接合強度の向上を図った。
【0253】
(実施例16C)
加熱の温度を120℃から80℃に変更した以外は、前記実施例15Cと同様にして接合体を得た。
(実施例17C、18C、19C)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表6に示す材料に変更した以外は、前記実施例15Cと同様にして接合体を得た。
【0254】
(比較例1〜3)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表5に示す材料とし、各基材間をエポキシ系接着剤で接着した以外は、前記実施例1Cと同様にして、接合体を得た。
(比較例4〜6)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表5に示す材料とし、各基材間をAgペーストで接着した以外は、前記実施例1Cと同様にして、接合体を得た。
(比較例7〜9)
基板の構成材料および対向基板の構成材料を、それぞれ表6に示す材料とし、各基材間を、周縁部の幅3mmの枠状の領域において、エポキシ系接着剤で部分的に接着した以外は、前記実施例1Cと同様にして、接合体を得た。
【0255】
2.接合体の評価
2.1 接合強度(割裂強度)の評価
各実施例1A〜14A、各実施例1B〜14B、各実施例1C〜14C、および各比較例1〜6で得られた接合体について、それぞれ接合強度を測定した。
接合強度の測定は、各機能性基板を引き剥がしたとき、剥がれる直前の強度を測定することにより行った。そして、接合強度を以下の基準にしたがって評価した。
【0256】
<接合強度の評価基準>
◎:10MPa(100kgf/cm)以上
○: 5MPa( 50kgf/cm)以上、10MPa(100kgf/cm)未満
△: 1MPa( 10kgf/cm)以上、 5MPa( 50kgf/cm)未満
×: 1MPa( 10kgf/cm)未満
【0257】
2.2 寸法精度の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体について、それぞれ厚さ方向の寸法精度を測定した。
寸法精度の測定は、正方形の接合体の各角部の厚さを測定し、4箇所の厚さの最大値と最小値の差を算出することにより行った。そして、この差を以下の基準にしたがって評価した。
<寸法精度の評価基準>
○:10μm未満
×:10μm以上
【0258】
2.3 耐薬品性の評価
各実施例および各比較例で得られた接合体を、80℃に維持したインクジェットプリンタ用インク(エプソン社製、「HQ4」)に、以下の条件で3週間浸漬した。その後、各機能性基板を引き剥がし、接合界面にインクが浸入していないかを確認した。そして、その結果を以下の基準にしたがって評価した。
【0259】
<耐薬品性の評価基準>
◎:全く浸入していない
○:角部にわずかに浸入している
△:縁部に沿って浸入している
×:内側に浸入している
【0260】
2.4 抵抗率の評価
各実施例12A、13A、12B、13B、12C、13C、および各比較例5、6で得られた積層体について、それぞれ接合部分の抵抗率を測定した。そして、測定した抵抗率を以下の基準にしたがって評価した。
<抵抗率の評価基準>
○:1×10−3Ω・cm未満
×:1×10−3Ω・cm以上
【0261】
2.5 形状変化の評価
各実施例15A〜19A、各実施例15B〜19B、各実施例15C〜19Cおよび各比較例7〜9で得られた接合体について、それぞれの接合体の接合前後における形状変化を測定した。
具体的には、接合体の反り量を、接合前後で測定し、以下の基準にしたがって評価した。
【0262】
<反り量の評価基準>
◎:接合前後で反り量がほとんど変化しなかった
○:接合前後で反り量がわずかに変化した
△:接合前後で反り量がやや大きく変化した
×:接合前後で反り量が大きく変化した
以上、2.1〜2.5の各評価結果を表1〜表6に示す。
【0263】
【表1】

【0264】
【表2】

【0265】
【表3】

【0266】
【表4】

【0267】
【表5】

【0268】
【表6】

【0269】
表1〜表6から明らかなように、各実施例で得られた接合体は、接合強度、寸法精度、耐薬品性および抵抗率のいずれの項目においても優れた特性を示した。
また、各実施例で得られた接合体は、各比較例で得られた接合体よりも反り量の変化が小さかった。
一方、各比較例で得られた接合体は、耐薬品性が十分ではなかった。また、寸法精度は、特に低いことが認められた。さらに、抵抗率は、高いものであった。
【符号の説明】
【0270】
1……接着シート 2……機能性基板 25……上面 3、3a……接合膜 303……脱離基 304……活性手 3c……間隙 35……表面 350……所定領域 4……被着体 5、5b、5c……接合体 6……マスク 61……窓部 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 410……配線基板 412……電極 413……絶縁基板 414……リード 415……電極 416……導電層 500……成膜装置 511……チャンバー 512……基板ホルダー 521……シャッター 530……排気手段 531……排気ライン 532……ポンプ 533……バルブ 560……有機金属材料供給手段 561……ガス供給ライン 562……貯留槽 563……バルブ 564……ポンプ 565……ガスボンベ 570……ガス供給手段 571……ガス供給ライン 573……バルブ 574……ポンプ 575……ガスボンベ 610‥‥弾性表面波素子 620‥‥基板 621‥‥基部 622‥‥下地層 623‥‥圧電体層 630‥‥IDT(入力側電極) 631‥‥電極指 640‥‥IDT(出力側電極) 641‥‥電極指 650‥‥絶縁保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に接着して用いられ、
所定の機能を有する機能性基板と、
該機能性基板の一方の面側に設けられ、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含む接合膜とを有し、
前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記脱離基は、前記接合膜の表面付近に偏在している請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種である請求項1または2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれかに記載の接着シート。
【請求項5】
前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものである請求項1ないし4のいずれかに記載の接着シート。
【請求項6】
前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし5のいずれかに記載の接着シート。
【請求項7】
被着体に接着して用いられ、
所定の機能を有する機能性基板と、
該機能性基板の一方の面側に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜とを有し、
前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与し、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記被着体との接着性が発現するものであることを特徴とする接着シート。
【請求項8】
前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものである請求項7に記載の接着シート。
【請求項9】
前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものである請求項8に記載の接着シート。
【請求項10】
前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項8または9に記載の接着シート。
【請求項11】
前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成される請求項8ないし10のいずれかに記載の接着シート。
【請求項12】
前記脱離基は、アルキル基である請求項11に記載の接着シート。
【請求項13】
前記有機金属材料は、金属錯体である請求項8ないし12のいずれかに記載の接着シート。
【請求項14】
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種である請求項7ないし13のいずれかに記載の接着シート。
【請求項15】
前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項7ないし14のいずれかに記載の接着シート。
【請求項16】
前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じる請求項1ないし15のいずれかに記載の接着シート。
【請求項17】
前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項16に記載の接着シート。
【請求項18】
前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし17のいずれかに記載の接着シート。
【請求項19】
前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしている請求項1ないし18のいずれかに記載の接着シート。
【請求項20】
前記機能性基板は、可撓性を有する請求項1ないし19のいずれかに記載の接着シート。
【請求項21】
前記機能性基板は、シート状をなしている請求項1ないし20のいずれかに記載の接着シート。
【請求項22】
前記機能性基板は、パターニングされている請求項1ないし21のいずれかに記載の接着シート。
【請求項23】
前記機能性基板は、配線、電極、端子、回路、半導体回路、電波の送受信部、光学素子、表示体および機能性フィルムのうちの少なくとも1つの機能を有する請求項1ないし22のいずれかに記載の接着シート。
【請求項24】
前記機能性基板の少なくとも前記接合膜を形成する部分は、シリコン材料、金属材料またはガラス材料を主材料として構成されている請求項1ないし23のいずれかに記載の接着シート。
【請求項25】
前記接合膜を備える前記一方の面には、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし24のいずれかに記載の接着シート。
【請求項26】
前記表面処理は、プラズマ処理である請求項25に記載の接着シート。
【請求項27】
前記機能性基板と前記接合膜との間に、中間層が介挿されている請求項1ないし26のいずれかに記載の接着シート。
【請求項28】
前記中間層は、酸化物系材料を主材料として構成されている請求項27に記載の接着シート。
【請求項29】
請求項1ないし28のいずれかに記載の接着シートと、前記被着体とを用意する工程と、
該接着シートが有する前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与する工程と、
前記接合膜と前記被着体とを密着させるように、前記接着シートと前記被着体とを貼り合わせ、接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項30】
請求項1ないし28のいずれかに記載の接着シートと、前記被着体とを用意する工程と、
前記接合膜と前記被着体とを密着させるように、前記接着シートと前記被着体とを貼り合わせ、積層体を得る工程と、
該積層体中の前記接合膜の少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接着シートと前記被着体とを接合し、接合体を得る工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項31】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項29または30に記載の接合方法。
【請求項32】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項31に記載の接合方法。
【請求項33】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項31または32に記載の接合方法。
【請求項34】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項31ないし33のいずれかに記載の接合方法。
【請求項35】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項31ないし34のいずれかに記載の接合方法。
【請求項36】
前記被着体は、あらかじめ、前記接合膜との密着性を高める表面処理を施した表面を有するものであり、
前記接着シートは、前記表面処理を施した表面に対して、前記接合膜が密着するようにして貼り合わされる請求項29ないし35のいずれかに記載の接合方法。
【請求項37】
前記被着体は、あらかじめ、官能基、ラジカル、開環分子、不飽和結合、ハロゲンおよび過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質を有する表面を有するものであり、
前記接着シートは、前記基または物質を有する表面に対して、前記接合膜が密着するようにして貼り合わされる請求項29ないし36のいずれかに記載の接合方法。
【請求項38】
さらに、前記接合体に対して、その接合強度を高める処理を行う工程を有する請求項29ないし37のいずれかに記載の接合方法。
【請求項39】
前記接合強度を高める処理を行う工程は、前記接合体にエネルギー線を照射する方法、前記接合体を加熱する方法、および前記接合体に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項38に記載の接合方法。
【請求項40】
請求項1ないし28のいずれかに記載の接着シートと、被着体とを有し、
これらを、前記接合膜を介して接合してなることを特徴とする接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−229412(P2010−229412A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102353(P2010−102353)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【分割の表示】特願2007−246300(P2007−246300)の分割
【原出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】