説明

接着テープ及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】製品の歩留り低下を抑制でき、且つ太陽電池セルの接続作業性を向上させることができる接着テープを提供すること。
【解決手段】
複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープであって、金属箔と、該金属箔の少なくとも一方面上に設けられた、導電性粒子及び絶縁性接着剤組成物を含有する接着剤からなるフィルム状の接着剤層と、を備え、前記導電性粒子が金めっきニッケル粒子又は金/ニッケルめっきプラスチック粒子であり、前記絶縁性接着剤組成物が、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤及びフェノキシ樹脂を含む、接着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープ及びそれを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽光発電装置である。太陽電池モジュールは、近年、クリーンエネルギーとして注目を集めており、今後その市場は急激に拡大すると予想されている。このような太陽電池モジュールは、一般的に、複数の太陽電池セルが電気的に接続された構造を有する。
【0003】
太陽電池セルを電気的に接続する方法として、従来、はんだを用いる方法が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。はんだは、導通性や固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0004】
一方、はんだを使用せずに太陽電池セルを電気的に接続する方法として、導電性接着剤を使用する方法も開示されている(例えば特許文献3,4,5及び6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−204256号公報
【特許文献2】特開2005−050780号公報
【特許文献3】特開2000−286436号公報
【特許文献4】特開2001−357897号公報
【特許文献5】特開平7−147424号公報
【特許文献6】特開2005−101519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、はんだを用いる接続方法では、接続の際に高温(通常、はんだの溶融温度は230〜260℃)を伴うため、被着体(太陽電池セル)に体積収縮等が生じ、太陽電池の特性劣化が生じることがあった。そのため、製品の歩留りが低下するという問題があった。
【0007】
特に、太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セルの価格が太陽電池モジュールの価格の約40%を占め、また太陽電池市場の急速な拡大が予想されるため、将来、太陽電池セルの薄型化が求められることは必死である。そして、太陽電池セルの薄型化が進むと、接続の際に伴う高温により太陽電池セルの反り及び割れが生じ、さらに製品の歩留まり低下が顕著になるという問題もある。
【0008】
さらに、はんだを用いる接続方法においては、はんだの特性上、被着体との接続界面の厚みをコントロールすることが難しく、パッケージ化する際の寸法精度を十分に得ることが難しかった。そして、十分な寸法精度が得られない場合にはパッケージングプロセスの際、製品の歩留まりの低下につながる。
【0009】
一方、導電性接着剤を使用する方法は、はんだを用いる方法よりも低温での接続が可能となるため、薄型化された太陽電池セルの電気的接続に適している。しかし、従来の導電性接着剤を使用する方法では、導電性接着剤を被着体に転写する工程が必要となり、太陽電池セルの接続作業性が低いという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、製品の歩留り低下を抑制でき、且つ太陽電池セルの接続作業性を向上させることができる接着テープ及びそれを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープであって、金属箔と、金属箔の少なくとも一方面上に設けられた、接着剤からなる接着剤層とを備える接着テープを提供する。
【0012】
本発明の接着テープによれば、金属箔の少なくとも一方面上に接着剤層が設けられているため、太陽電池セル同士を接続するに際して、絶縁性基材上の接着剤層を基材から各太陽電池セルに転写する作業を省略することができる。また、はんだを用いて太陽電池セルを接続する場合よりも十分に低い温度で接続することが可能である。このため、接続の際における太陽電池セルの反り及び割れを十分に防止することができ、ひいては太陽電池モジュールの歩留りを十分に高くすることができる。
【0013】
上記接着剤は導電性粒子を含有することが好ましい。これにより、複数の太陽電池セルの電気的接続を容易に行うことができる。
【0014】
接着剤は、接続後の接続信頼性をより向上させるために、さらに熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
【0015】
金属箔は、導電性に優れることから、銅箔又はアルミニウム箔であることが好ましい。
【0016】
本発明の接着テープにおいては、接着剤層が金属箔の両面に設けられていることが好ましい。これによれば、接着テープの両面に太陽電池セルを接着できるため、太陽電池セルの直列接続及び並列接続のいずれも容易に行うことができる。
【0017】
本発明はまた、複数の太陽電池セルを有し、複数の太陽電池セルが接続部材によって電気的に接続され、接続部材が上述の接着テープを用いて形成されるものである太陽電池モジュールを提供する。このような太陽電池モジュールは、本発明の接着テープを用いているため、製品の歩留りを高くできるとともに、太陽電池セル同士の接続作業性を向上させることができる。このため、太陽電池モジュール作製の際のコストの低減が可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製品の歩留り低下を抑制でき、且つ太陽電池セルの接続作業性を向上させることができる接着テープ及びそれを用いた太陽電池モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る接着テープの一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る接着テープの他の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る太陽電池モジュールの一実施形態を示す部分平面図である。
【図4】図3の太陽電池モジュールの底面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
図1は、本発明に係る接着テープの第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示す接着テープ10は、金属箔1の片面に、接着剤層2が設けられた構造を有する。
【0022】
図2は、本発明に係る接着テープの第2実施形態を示す模式断面図である。図2に示す接着テープ20は、金属箔1の両面に接着剤層2a及び2bが設けられた構造を有する。
【0023】
接着剤層2,2a及び2bは、それぞれ導電性粒子3及び絶縁性接着剤組成物4を含む接着剤からなる。なお、第1及び第2実施形態では接着剤層2,2a及び2bが導電性粒子3を含む実施形態を示したが、接着剤層2,2a及び2bは導電性粒子3を含有していなくともよい。すなわち、金属箔1を、接着剤層を介して、後述する太陽電池セルの電極に押し付けることによって金属箔1と太陽電池セルの電極とを直接接触させることができる場合には、接着剤層2,2a及び2bは導電性粒子を含有していなくともよい。ただし、接着剤層2,2a及び2bが導電性粒子3を含有することにより、太陽電池セル同士の電気的接続をより安定して行うことが可能となる。
【0024】
金属箔1としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケルパラジウム、クロム、モリブデン又はそれらの合金の箔が挙げられる。この中で、導電性に優れることから、銅箔及びアルミニウム箔が好ましい。このような金属箔1の厚みは、接続信頼性等の観点から、10〜200μmであることが好ましい。
【0025】
導電性粒子3としては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子、ニッケル(Ni)粒子、金めっきニッケル粒子、金/ニッケルめっきプラスチック粒子、銅めっき粒子、ニッケルめっき粒子が挙げられる。これらの導電性粒子は、接続時の被着体表面の凹凸に対する導電性粒子の埋め込み性の観点から、毬栗状又は球状であることが好ましい。すなわち、毬栗状又は球状の導電性粒子は、被着体表面の複雑な凹凸形状に対しても埋め込み性が高く、接続後の振動や膨張等の変動に対して追随性が高いことから好ましい。
【0026】
このような導電性粒子は、導電性を確保する点から、平均粒子径2〜20μmであることが好ましい。また、導電性粒子の含有量は、接着剤全体の体積に対して0.1〜20体積%であることが好ましい。導電性粒子の含有量が0.1体積%未満であると、導電性粒子による接続安定性効果が十分に発揮されない傾向にある。また、導電性粒子の含有量が20体積%を超えると、接着剤層の成形性が低下する傾向にある。
【0027】
絶縁性接着剤組成物4としては、熱可塑性材料や、熱や光に対して硬化性を示す材料を用いることができる。この絶縁性接着剤組成物4は、接続後の高温高湿下における接続信頼性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン−ビスマレイミド樹脂及びフェノール樹脂が挙げられる。これらの中では耐熱性を向上させる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンと、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD及び/又はビスフェノールAF等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと、フェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂;ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂;グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0028】
このような熱硬化性樹脂の含有量は、絶縁性接着剤組成物4の全量に対して、10〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましい。この含有量が10質量%未満であると、上記範囲内にある場合と比較して、接着剤の流動性及び作業性が低下する傾向にある。この含有量が80質量%を超えると、上記範囲内にある場合と比較して、接着テープの接着性が低下する傾向にある。
【0029】
絶縁性接着剤組成物4は、熱硬化性樹脂とともに熱硬化性樹脂用硬化剤をさらに含んでいてもよい。
【0030】
熱硬化性樹脂用硬化剤とは、熱硬化性樹脂とともに加熱した場合に、熱硬化性樹脂の硬化を促進する硬化剤を示す。その具体例としては、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ポリアミンの塩、アミンイミド及びジシアンジアミドが挙げられる。これらの中で、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が用いられる場合には、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩又はジシアンジアミドが好適に用いられる。
【0031】
このような熱硬化性樹脂用硬化剤の含有量は、絶縁性接着剤組成物4の全量に対して、2〜10質量%であることが好ましく、4〜8質量%であることがより好ましい。この含有量が2質量%未満であると、上記範囲内にある場合と比較して、接着テープの接着性が低下する傾向にある。この含有量が10質量%を超えると、上記範囲内にある場合と比較して、接着テープの保存の際の安定性が低下する傾向にある。
【0032】
また、接着剤層2,2a及び2bは、膜厚寸法精度や圧着時の圧力配分の観点から、フィルム状であることが好ましい。この場合、接着剤層2,2a及び2bを構成する絶縁性接着剤組成物4は、上述の熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤のほか、フィルム形成材をさらに含有する。
【0033】
フィルム形成材としては、より良好にフィルムを形成できるという観点から、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂等の熱可塑性の高分子が好ましく、フェノキシ樹脂がより好ましい。これらのフィルム形成性高分子の重量平均分子量は、接着フィルムの流動性の観点から、10000〜10000000であることが好ましい。このフィルム形成性高分子の重量平均分子量が10000未満であると、上記範囲内にある場合と比較して、接着剤層2の成形性の形成性が低下する傾向にある。このフィルム形成性高分子の重量平均分子量が10000000を超えると、上記範囲内にある場合と比較して、接着剤層の硬化時の応力緩和効果及び作業性が低下する傾向にある。
【0034】
このようなフィルム形成性高分子の含有量は、絶縁性接着剤組成物4の全量に対して、2〜80質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましい。フィルム形成性高分子の含有量が2質量%未満であると、上記数値範囲にある場合と比較して、硬化時の応力緩和効果及び接着性向上効果が低下する傾向にあり、80質量%を超えると接着剤層の流動性及び作業性が低下する傾向にある。
【0035】
絶縁性接着剤組成物4は、必要に応じて、カップリング剤、分散剤及びキレート材料等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0036】
カップリング剤は、被着体との接着性や濡れ性を改善するために用いられる。その具体例としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤が挙げられる。分散剤は、導電性粒子3の分散性を向上させるために用いられる。その具体例としては、リン酸カルシウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。キレート材料は、銀や銅等の金属マイグレーション等を抑制するために用いられる。その具体例としては、無機イオン交換体が挙げられる。
【0037】
これらの添加剤を用いる場合、その含有量は、絶縁性接着剤組成物4の全量に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜8質量%であることがより好ましい。この含有量が0.1質量%未満であると、上記範囲にある場合と比較して、添加剤を含有することによる効果が小さい。この含有量が10質量%を超えると、上記範囲内にある場合と比較して、接着テープの保存の際の安定性が低下する傾向にある。
【0038】
また、絶縁性接着剤組成物4は、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有するものであってもよい。
【0039】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド類、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリビニルブチラール類等を用いることができる。これらの樹脂は、必要に応じて単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。なお、これらの熱可塑性樹脂の一般的な重量平均分子量は5000〜150000である。
【0040】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基やビニル基等、分子内にオレフィンを有する化合物であれば、特に制限なく公知のものを使用することができる。この中でも(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0041】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができる。具体的には、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
なお、熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する絶縁性接着剤組成物4においても、必要に応じて添加剤をさらに含有することができる。
【0044】
上述の接着剤層2,2a及び2bの厚みは、接着性及び導電性を考慮すると、5〜50μmであることが好ましい。さらに、接着剤層2,2a及び2bの厚みは、接続信頼性を考慮すると、8〜40μmであることがより好ましい。接着剤層2,2a及び2bの厚みは、接着剤の不揮発性成分の量の調整や、アプリケータやリップコータのギャップの調整により制御することができる。
【0045】
上述の接着テープによれば、製品の歩留り低下を抑制でき、且つ太陽電池セルの接続作業性を向上させることができる。
【0046】
このような接着テープは、従来公知の方法により作製することができ、例えば次のような方法で作製することができる。
【0047】
まず、上述の絶縁性接着剤組成物4の構成成分を含む接着剤組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散することで液状化して塗布液を調製する。この塗布液を金属箔の片面又は両面上に塗布した後、溶剤を除去することにより、接着剤層を形成することができる。このとき、絶縁性接着剤組成物4の構成成分に熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤が含まれている場合には、塗布液の乾燥は熱硬化樹脂用硬化剤の活性温度未満で行う。このようにして得られる片面又は両面に接着剤層が形成された金属箔を適当な幅にスリットすることにより、上述の接着テープが得られる。
【0048】
このときの有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系溶剤を用いることができる。また、塗布液は、ロールコーター、スリットダイコーター、ディップコーター、スピンコーター、アプリケータ及びリップコータ等の塗布装置を用いて塗布することができる。なお、金属箔の両面に接着剤層が形成された接着テープを作製する場合には、片面に接着剤層を形成した後にもう一方の面に接着剤層を形成してもよく、ディップコーター等を用いて金属箔の両面に塗布液を塗布した後にこれを乾燥してもよい。
【0049】
本発明の接着テープは、太陽電池セルの接続に好適に用いることができる。太陽電池モジュールでは、一般的に、表面電極を備えた太陽電池セルが複数個、直列及び/又は並列に接続されている。接続された太陽電池セルは、耐環境性のために、強化ガラス等で挟み込まれ、太陽電池セルと強化ガラスとの間隙が透明性のある樹脂によって埋められている。本発明の接着テープは、複数の太陽電池セルを直列及び/又は並列に接続する用途に特に好適に用いられる。
【0050】
本発明の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルを有し、複数の太陽電池セルが上述の接着テープを用いて電気的に接続されたものである。
【0051】
ここで、図3,4及び5は、本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの要部を示す図であり、複数の太陽電池セルが相互に接続された構造の概略を示している。図3は本実施形態における太陽電池モジュールの一部切欠き部分平面図であり、図4は図3の太陽電池モジュールの一部切欠き底面図であり、図5は、図3におけるV−V線断面図を示す。なお、図3及び図4においては後述する接続部材120の一部を切欠いて示してある。
【0052】
図3,4及び5に示すように、本実施形態の太陽電池モジュール100は、複数の太陽電池セル101を有する。各太陽電池セル101は板状の発電部6を有している。発電部6は、太陽光によって起電力を生じさせるものであり、例えば半導体ウエハを用いて形成されているものである。発電部6の表面側には、複数本(図3〜5では6本)のフィンガー電極7が並設されている。そして、フィンガー電極7の上には、フィンガー電極7と交差するように複数本(図3〜5では2本)のバス電極5aが設けられている。ここで、フィンガー電極7とバス電極5aとは接触している。
【0053】
一方、発電部6の裏面側には、裏面電極8が設けられ、裏面電極8の上には、複数本(図3〜5では2本)のバス電極5bが設けられている。ここで、裏面電極8とバス電極5bとは接触している。
【0054】
そして、2つの太陽電池セル101同士は、接続部材120によって接続されている。具体的には、接続部材120の一端は、一方の太陽電池セル101におけるバス電極5aに接続され、接続部材120の他端は、他方の太陽電池セル101におけるバス電極5bに接続されている。すなわち、太陽電池セル101同士は直列に接続されている。接続部材120は、金属箔1と、その両面にそれぞれ設けられる接続層102a,102bとで構成されている。バス電極5bに接触しているのは接続層102aであり、バス電極5aに接触しているのは接続層102bである。
【0055】
ここで、接続部材120は、接着テープ20を用いて形成されるものである。接続層102a,102bは、接着テープ20における接着剤層2a,2bにそれぞれ対応する。このとき、絶縁性接着剤組成物4の構成成分に熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤が含まれている場合には、少なくともバス電極5a及び5bに対応する部分の接続層102a,102bは、後述する方法等により硬化処理されている。従って、少なくともバス電極5a及び5bに対応する部分の接続層102a,102bは、それぞれ導電粒子3と、絶縁性接着剤組成物4の硬化体とで構成されている。
【0056】
そして、太陽電池モジュール100では、上述の接続部材120により接続された太陽電池セル101が強化ガラス(図示せず)等で挟みこまれ、太陽電池セル101と強化ガラスとの間隙が透明性のある樹脂(図示せず)によって埋められる。
【0057】
半導体ウエハの材料としては、例えば、シリコンの単結晶、多結晶及び非結晶等の半導体が挙げられる。
【0058】
フィンガー電極7、バス電極5a及び5b、並びに裏面電極8の材料としては、導電性を有する公知の材料として一般的なもの、例えば、銀を含有したガラスペーストや接着剤樹脂に各種の導電粒子を分散した銀ペースト、金ペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト、アルミペースト及び焼成や蒸着によって形成されるITOが挙げられる。この中で、耐熱性、導電性、安定性及びコストの観点から、銀を含有したガラスペーストからなる電極が好適に用いられる。フィンガー電極7、バス電極5a及び5b、並びに裏面電極8は、半導体ウエハ6上に、例えば、スクリーン印刷等によって形成することができる。
【0059】
絶縁性接着剤組成物4の構成成分に熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂用硬化剤が含まれている場合における上述の接着テープ20の硬化処理は、例えば、140〜200℃、0.5〜4MPaで、5〜20秒間加熱加圧することにより行うことができる。また、絶縁性接着剤組成物4の構成成分に熱可塑性樹脂、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤が含まれている場合における上述の接着テープ20の硬化処理は、例えば、140〜200℃、0.1〜10MPaで、0.5〜120秒間加熱加圧することにより行うことができる。この硬化処理により、バス電極5a及び5bに対して接着テープ20を圧着することができ、接着テープ20における接着剤層2a及び2bの少なくともバス電極5a及び5bに対応する部分が硬化して、接着テープ20は接続部材120となる。
【0060】
かかる構成を有する太陽電池モジュール100は、上述した接着テープを用いているため、製品の歩留りを高くできるとともに、太陽電池セル同士の接続作業性を向上させることができる。このため、太陽電池モジュール作製の際のコストの低減が可能となる。
【実施例】
【0061】
次に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
(1)接着テープの作製
フェノキシ樹脂(高分子量エポキシ樹脂)(ユニオンカーバイト社製、商品名「PKHC」)50gとエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名「YL−980」)20g及びイミダゾール5gを酢酸エチル中に添加し、30質量%の酢酸エチル溶液を調製し、これに平均粒径2.5μmの毬栗状のNi粒子を、固形成分全体の体積に対して5体積%添加した。得られた混合液を厚み75μmの銅箔の片面にロールコーターを用いて塗布した。これを、110℃で5分間乾燥し、片面に厚み30μmの接着剤層が形成された金属箔を得た。これを幅2.0mmにスリットし、接着テープを得た。なお、接着剤層の厚みは、マイクロメータ(Mtutoyo Corp社製、ID−C112)を用いて測定した。
【0063】
(2)接着テープを用いた太陽電池セルの接続
この接着テープを太陽電池セル(厚み150μm,15cm×15cm)上に形成されている電極配線(材質:銀ガラスペースト、2mm×15cm、Rz=10μm、Ry=14μm)の幅方向に合わせ、圧着ツール(装置名AC−S300、日化設備エンジニアリング社製)を用いて170℃,2MPaで,20秒間加熱加圧して、実施例1の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0064】
(実施例2)
接着剤層の厚みを40μmとしたこと以外は実施例1と同様として、実施例2の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0065】
(実施例3)
平均粒径2.5μmの毬栗状のNi粒子に代えて、平均粒子径5μmの金めっきNi粒子を用いたこと以外は実施例1と同様として、実施例3の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0066】
(実施例4)
平均粒径2.5μmの毬栗状のNi粒子に代えて、平均粒子径が10μmの金/Niめっきプラスチック(スチレン−ブタジエン共重合体)粒子を、固形成分全体の体積に対して0.5体積%を用いたこと以外は実施例1と同様として、実施例4の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0067】
(実施例5)
銅箔に代えてアルミニウム箔を用いたこと以外は実施例1と同様として、実施例5の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0068】
(実施例6)
厚み75μmの銅箔に代えて、厚み175μmの銅箔を用いたこと以外は実施例1と同様として、実施例6の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0069】
(実施例7)
Ni粒子を添加しなかったこと以外は実施例1と同様として、実施例7の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0070】
(比較例1)
接着テープに代えてTAB線を用い、TAB線と電極配線とをはんだを用いて接続することにより、比較例1の接着テープ付き太陽電池セルを得た。
【0071】
(太陽電池の評価)
実施例1〜7及び比較例1で得られた接着テープ付き太陽電池セルについて太陽電池のF.F.(曲線因子)を測定した(初期値)。F.F.については、初期測定の終わったセルを85℃,85%RH下に暴露し、1500時間経過後の値も測定した(終値)。ワコム電創社製ソーラシミュレータ(WXS−155S−10,AM1.5G)を用いてIVカーブを測定し、初期値から終値を減じた値をDelta(F.F.)とした。なお、Delta(F.F.)が0.2以上の場合には、接続信頼性が十分でない。
【0072】
さらに、セル歩留り、接着剤層成形性及び接着テープ成形性についても評価した。セル歩留りは、太陽電池セル10枚中、接着テープを圧着した後のセルの状態を観察し、割れや剥離のあるものを除いた割合(%)を示す。また、接着剤層成形性については、φ50μm以上の欠点が無い場合をA、φ50μm以上の欠点がある場合をBとして評価した。接着テープ成形性については金属箔において接着剤層の浮きや剥離が無い場合をA、金属箔において接着剤層の浮きや剥離が有る場合をBとして評価した。以上の実施例1〜7についての、接着テープの材料の構成等を表1に、実施例1〜7及び比較例1についての評価結果を表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【符号の説明】
【0075】
1…金属箔、2,2a,2b…接着剤層、3…導電性粒子、4…絶縁性接着剤組成物、5a,5b…バス電極、6…発電部、7…フィンガー電極、8…裏面電極、10,20…接着テープ、100…太陽電池モジュール、101…太陽電池セル、102a,102b…接続層、120…接続部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープであって、
金属箔と、該金属箔の少なくとも一方面上に設けられた、導電性粒子及び絶縁性接着剤組成物を含有する接着剤からなるフィルム状の接着剤層と、を備え、
前記導電性粒子が金めっきニッケル粒子又は金/ニッケルめっきプラスチック粒子であり、
前記絶縁性接着剤組成物が、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤及びフェノキシ樹脂を含む、接着テープ。
【請求項2】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10000〜10000000である、請求項1に記載の接着テープ。
【請求項3】
前記導電性粒子の含有量が、前記接着剤全体の体積に対して0.1〜20体積%である、請求項1又は2に記載の接着テープ。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂の含有量が、前記絶縁性接着剤組成物の全量に対して、10〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項5】
前記金属箔が銅箔又はアルミニウム箔である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項6】
前記接着剤層が前記金属箔の両面に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項7】
表面電極を備える複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項8】
フィンガー電極と該フィンガー電極と交差するように設けられたバス電極とを備える複数の太陽電池セルを、電気的に接続するための接着テープである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項9】
フィンガー電極と、該フィンガー電極と交差するように設けられたバス電極と、裏面電極と、該裏面電極上に設けられた裏面バス電極と、を備える複数の太陽電池セルを電気的に接続するための接着テープである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着テープ。
【請求項10】
太陽電池セルの前記バス電極を、他の太陽電池セルの前記裏面バス電極に電気的に接続させるために用いられる、請求項9に記載の接着テープ。
【請求項11】
複数の太陽電池セルを有し、
前記複数の太陽電池セルが接続部材によって電気的に接続され、
前記接続部材が請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着テープを用いて形成されるものである、太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記複数の太陽電池セルがそれぞれ、フィンガー電極と、該フィンガー電極と交差するように設けられたバス電極と、裏面電極と、該裏面電極上に設けられた裏面バス電極と、を備える、請求項11に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記接続部材が、前記複数の太陽電池セルのうち一つの前記バス電極を、前記複数の太陽電池セルのうちの他の一つの前記裏面バス電極に電気的に接続する、請求項12に記載の太陽電池モジュール。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−216843(P2012−216843A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93013(P2012−93013)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2010−283616(P2010−283616)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】