接着フィルム
【課題】低温での貼り付け性を有する、アルカリ現像液によるパターン形成が可能な接着フィルムを提供する。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる、主鎖中にイミド骨格を有する樹脂と、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する接着フィルム1であって、前記ジアミンが、特定の脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含み、当該接着フィルム1を被着体上に貼り付け、前記接着フィルム1を露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド2.38%水溶液を用いて現像することにより接着剤パターンが形成され、前記接着剤パターンを介して前記被着体に他の被着体を接着することが可能である、接着フィルム。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる、主鎖中にイミド骨格を有する樹脂と、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する接着フィルム1であって、前記ジアミンが、特定の脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含み、当該接着フィルム1を被着体上に貼り付け、前記接着フィルム1を露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド2.38%水溶液を用いて現像することにより接着剤パターンが形成され、前記接着剤パターンを介して前記被着体に他の被着体を接着することが可能である、接着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、並びにこれを用いて得られる接着フィルム、接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材とを接着するための接着剤や、半導体チップを各種の被着体に接着するための接着剤には、低応力性、低温での貼り付け性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性が求められる。さらに、半導体パッケージや電子部品の機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。感光性接着剤としては、これまで、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)あるいはポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(特許文献1〜3参照)。しかし、前者の場合はイミド化のための閉環反応の際に、後者の場合は接着工程の際に、それぞれ300℃以上の高温を要するため周辺材料への熱的ダメージが大きいという問題があった。また、残留熱応力が発生しやすいという問題もあった。
【0003】
一方、ポリイミド樹脂などを用いた接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温での貼り付け性及びはんだ耐熱性を改良することも試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリイミド樹脂を用いた従来の感光性接着剤は、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温での貼り付け性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、露光後に熱圧着したときに十分に高い接着力を発現することが可能な、再接着性を付与することも困難であった。
【0006】
本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有する感光性接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、被着体に低温で貼り付けることが可能な接着フィルムを提供することを目的とする。更に、本発明は、半導体チップが優れた接着力で接着された、信頼性の高い半導体装置及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)カルボキシル基を側鎖として有し酸価が80〜180mg/KOHであるポリイミドと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する。上記酸価は、好ましくは80〜150mg/KOHである。
【0008】
この感光性接着剤組成物は、カルボキシル基を有するとともに、上記特定範囲の酸価を有するポリイミドを用いたこと等により、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後に十分な再接着性を発現するものとなった。
【0009】
本発明の感光性接着剤組成物は、(D)熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。この熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンを含むジアミンとを反応させて得られるポリイミドであることが好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
ポリイミドの重量平均分子量は、アルカリ現像液によるパターン形成性及びフイルム形成性の観点から、5000〜150000であることが好ましい。
【0013】
ポリイミドのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。これにより、感光性接着剤組成物からなる接着フィルムを半導体ウェハ等の被着体に、より低い温度で貼付けることが可能になる。同様の観点から、上記ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含むことが好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。
【0016】
上記ジアミンは、更に、下記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンをジアミン全体の1〜20モル%含むことが好ましい。
【0017】
【化3】
【0018】
式中、R1及びR2は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R3、R4、R5及びR6は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、n2は1〜5の整数を示す。
【0019】
放射線重合性化合物の分子量が2000以下であり、本発明の感光性接着剤組成物が放射線重合性化合物をポリイミド100重量部に対して20重量部以上含有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る感光性接着剤組成物は、当該感光性接着剤組成物を介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。また、本発明に係る感光性接着剤組成物は、当該感光接着剤組成物を介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、260℃において0.5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。
【0021】
露光後の感光性接着剤組成物の100℃における貯蔵弾性率は0.01〜10MPaであることが好ましい。露光後、更に加熱硬化された後の感光性樹脂組成物の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。
【0022】
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析おける感光性接着剤組成物の質量減少率が5%となる温度は260℃以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の接着フィルムは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる。また、本発明の接着シートは、基材と、これの一方面上に設けられた上記本発明に係る接着フィルムとを備える。
【0024】
本発明の接着剤パターンは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものである。この接着剤層は、上記本発明の感光性接着剤組成物がパターン形成性に優れているため、高精細なパターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。
【0025】
本発明の接着剤層付半導体ウェハは、半導体ウェハと、これの一方面上に設けられ上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える。
【0026】
本発明の半導体装置は、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて被着体に接着された半導体チップを有する。また、本発明の電子部品はこの半導体装置を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明の感光性接着剤組成物は、アルカリ現像液への溶解速度が大きく、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後に高い再接着性を発現する。また、本発明の接着フィルムは被着体に比較的低温で貼り付けることが可能であり、周辺材料への熱的ダメージが抑制されるため、信頼性の高い半導体装置及び電子部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った端面図である。
【図5】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】接着剤パターンを介してカバーガラスが半導体ウェハに接着された状態を示す上面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った端面図である。
【図11】接着剤パターンを介してカバーガラスが半導体ウェハに接着された状態を示す上面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った端面図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図14】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図15】本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る感光性接着剤組成物は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合開始剤を含有する。
【0031】
上記ポリイミドは、主鎖中にイミド骨格を有し、カルボキシル基を側鎖として有する1種又は2種以上の重合体から構成される。ポリイミドの酸価は80〜180mg/KOHである。ポリイミドの酸価が80mg/KOH未満であると、アルカリ現像液への溶解性が低下し、180mg/KOHを超えると現像中に接着剤層が被着体からはく離してしまう可能性が高くなる。同様の観点から、ポリイミドの酸価は150mg/KOH以下であることがより好ましい。特に、感光性接着剤組成物が後述する熱硬化性樹脂を含有し、且つ、ポリイミドの酸価が80〜180mg/KOHであることが好ましい。
【0032】
カルボキシル基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。これにより、ポリイミドにはジアミンに由来するカリボキシル基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、酸価を80〜180mg又は80〜150mg/KOHとすることができる。
【0033】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応(縮合反応)は、当業者には理解されるように、公知の方法により行うことができる。例えば、この反応においては、まず、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、等モル又はほぼ等モルの比率で、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。各成分の添加順序は任意である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。生成したポリアミド酸を50〜80℃の温度に加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。生成したポリアミド酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが生成する。脱水閉環は、加熱による熱閉環法、又は脱水剤を使用する化学閉環法により行うことができる。
【0034】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込み比に関して、より具体的には、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲内とする。ジアミンの比率が2.0molを超えると末端がアミノ基であるポリイミドオリゴマーが多く生成し、0.5molを下回ると末端がカルボキシル基であるポリイミドオリゴマーが多く生成する傾向にある。ポリイミドオリゴマーの量が多くなると、ポリイミドの重量平均分子量が低下して、感光性接着剤組成物の耐熱性等の種々の特性の低下が生じ易くなる。上記仕込み比を調整することによって、ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000の範囲内となるように調製することができる。
【0035】
ポリイミドの合成に使用されるジアミンとしては、アルカリ水溶液への溶解性を特に良好なものとするために、上記一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンが好ましい。
【0036】
ポリイミドのTgを低下させて熱応力を低減するため、ジアミンは、更に、上記一般式(III)の脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。式(III)の脂肪族エーテルジアミンとしては、より具体的には、下記化学式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、低温での貼付け性及び被着体に対する良好な接着性を確保できる点で、式(IIIa)の脂肪族エーテルジアミンが好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
脂肪族エーテルジアミンの市販品としては、例えば、サンテクノケミカル(樵)製のジェファーミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」、「D−4000」、「ED−600」、「ED−900」、「ED−2001」、「EDR−148」(以上商品名)、BASF(製)のポリエーテルアミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」(以上商品名)が挙げられる。
【0039】
更に、露光後の再接着性を更に高めるために、上記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを使用することが好ましい。
【0040】
化学式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、式中のn2が1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンが挙げられ、n2が2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンが挙げられる。
【0041】
これらのジアミンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この場合、一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンを全ジアミンの10〜50モル%、一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの1〜20モル%(更に好ましくは5〜10モル%)、一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの10〜90モル%とすることが好ましい。これにより、通常、ポリイミドの酸価を80〜180mg/KOH又は80〜150mg/KOHとすることができる。シロキサンジアミンが全ジアミンの1モル%未満であると、露光後の再接着性が低下する傾向にあり、20モル%を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下する傾向にある。また、脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの10モル%未満であると、ポリイミドのTgが高くなって低温加工性(低温での貼付け性)が低下する傾向にあり、90モル%を超えると、熱圧着時にボイドが発生しやすくなる傾向にある。
【0042】
ジアミンは、上記以外のジアミンを更に含んでいてもよい。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0043】
ポリイミドを合成する際の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物は、接着剤の諸特性の低下を抑えるため、無水酢酸からの再結晶により精製されていることが好ましい。あるいは、テトラカルボン酸二無水物は、その融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上加熱することにより乾燥されていてもよい。テトラカルボン酸二無水物の純度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱開始温度と吸熱ピーク温度との差によって評価することができ、再結晶や乾燥等によりこの差が20℃以内、より好ましくは10℃以内となるように精製されたカルボン酸二無水物をポリイミドの合成のために用いることが好ましい。吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量:5mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で測定される。
【0044】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテ−ト無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]−ブタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0045】
特に、溶剤への良好な溶解性を付与するため、下記化学式(V)又は(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。この場合、これらの式で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合を、全テトラカルボン酸二無水物100モル%に対して50モル%以上とすることが好ましい。この割合が50モル%未満であると、溶解性向上効果が低下する傾向にある。
【0046】
【化5】
【0047】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
ポリイミドの重量平均分子量は5000〜150000の範囲内であることが好ましく、20000〜500000がより好ましく、30000〜40000が更に好ましい。ポリイミドの重量平均分子量が5000より小さいと、フイルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えると、アルカリ性現像液への溶解性が低下して、現像時間が長くなる傾向にある。ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000とすることにより、半導体素子を半導体素子搭載用支持基材等の被着体に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができるという効果も得られる。なお、上記の重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製「C−R4A」(商品名))を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量のことである。
【0049】
ポリイミドのガラス転移温度(以下「Tg」という。)は30℃〜150℃の範囲が好ましい。Tgが30℃未満であると、圧着時にボイドが生成しやすくなる傾向にある。Tgが150℃を超えると、被着体への貼付け温度及び露光後の圧着温度が高くなり周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。なお、上記のTgとは粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてフイルムを測定したときのtanδのピーク温度である。
【0050】
放射線重合性化合物としては、紫外線や電子ビームなどの放射線の照射により、重合する化合物であれば、特に制限は無い。放射線重合性化合物は、アクリート基又はメタクリレート基を有する化合物であることが好ましい。放射線重合性化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(10)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレートが挙げられる。式(10)中、R3及びR4は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、q及びrは各々独立に1以上の整数を示す。
【0051】
【化6】
【0052】
ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、例えば、ジオール類、下記一般式(21)で表されるイソシアネート化合物、及び下記一般式(22)で表される化合物の反応により生成する。
【0053】
【化7】
【0054】
式(21)中、sは0又は1を示し、R5は炭素原子数が1〜30の2価又は3価の有機基を示す。式(22)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7はエチレン基又はプロピレン基を示す。
【0055】
尿素メタクリレートは、例えば、下記一般式(31)で表されるジアミンと、下記一般式(32)で表される化合物との反応により生成する。
【0056】
【化8】
【0057】
式(31)中、R8は炭素原子数が2〜30の2価の有機基を示す。式(32)中、tは0又は1を示す。
【0058】
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等などを使用することができる。
【0059】
これらの放射線重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも上記一般式(10)で示される放射線重合性化合物は硬化後の耐溶剤性を付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは硬化後の可とう性を付与できる点で好ましい。
【0060】
放射線重合性化合物の分子量は2000以下が好ましい。分子量が2000を超えると、感光性接着剤組成物のアルカリ水溶液への溶解性が低下する傾向にあり、また、接着フィルムのタック性が低下して、半導体ウェハ等の被着体に低温で貼付けることが困難となる傾向にある。
【0061】
放射線重合性化合物の含量は、ポリイミド100重量部に対して20〜80重量部であることが好ましく、30〜60重量部であることが更に好ましい。放射線重合性化合物の量が80重量部を超えると、重合した放射線重合性化合物が原因となって熱圧着後の接着性が低下する傾向にある。5重量部未満であると、露光後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
【0062】
光重合開始剤は、パターン形成時の感度を良くするために、300−400nmにおいて吸収帯を有することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1,2,4−ジェチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン及びエチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフインオキサイド及びビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフインオキサイド等のビスアシルフォスフインオキサイドなどが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
光重合開始剤の量は、特に制限はないが、ポリイミド100重量部に対して通常0.01〜30重量部である。
【0064】
感光性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。本発明において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミドとの相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものが好ましい。硬化性や硬化物特性の点からは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、AD、S又はFのグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
シアネート樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−、m−又はp−ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン、及び下記一般式(40)、(41)、(42)又は(43)で表されるマレイミド化合物等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
【化9】
【0069】
式(40)において、Rは−〇−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR41は各々独立に水素原子、低級アルキル基低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ1はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0070】
式(41)において、R42は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR43は各々独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ2は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0071】
式(42)において、Xは0〜4の整数を示し、複数のZ3は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0072】
式(43)において、2つのR44は各々独立に2価の炭化水素基を示し、複数のR45はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、2つのZ4は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、yは1以上の整数を示す。
【0073】
式(40)〜(43)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4としては、マレイン酸残基、シトラコン酸残基などが挙げられる。
【0074】
式(41)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパンが挙げられる。
【0075】
式(42)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]フルオロメタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0076】
熱硬化性樹脂を用いる場合、これを硬化させるために、硬化剤、硬化促進剤、触媒等の添加剤を感光性接着剤組成物中に適宜加えることができる。触媒を添加する場合は助触媒を必要に応じて使用することができる。
【0077】
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ水溶液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
【0078】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0079】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂の硬化剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜200重量部が好ましく、硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜50重量部が好ましい。
【0081】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合、触媒及び必要に応じて助触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などが挙げられ、助触媒としてはアルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などが好ましい。
【0082】
熱硬化性樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用する場合、その硬化剤としてラジカル重合剤を使用することが好ましい。ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。このとき、ラジカル重合剤の使用量は、ビスマレイミド樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0083】
感光性接着剤組成物は、接着強度を上げる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
【0084】
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、ポリイミド100重量部に対して、0〜50重量部が好ましく、0〜20重量部がより好ましい。50重量部を超えると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0085】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
感光性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
【0087】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着フィルムに導電性又はチキソ性を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、非金属無機フィラー及び有機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の授拝機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0088】
フィラーを用いる場合、その量は、ポリイミド100重量部に対し、1000重量部以下が好ましく、500重量部以下がより好ましい。下限は特に制限はないが、一般に1重量部である。フィラーの量が1000重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0089】
感光性接着剤組成物は、これを介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。25℃における上記せん断接着力が5MPa未満であると、電子部品を組み立てる際に加えられる外力に耐え得る接着固定機能を得ることが困難となる傾向にある。また、感光性接着剤組成物は、これを用いてシリコンチップをガラス基板に接着したときに、260℃において0.5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。260℃における上記せん断接着力が0.5MPa未満であると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
【0090】
25℃又は260℃における上記せん断接着力は、3mm×3mm×400μm厚のシリコンチップと10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板とが、露光及び加熱された厚さ約40μmの感光性接着剤組成物からなる接着層を介して接着された積層体について、測定温度:25℃又は260℃、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でシリコンチップの側壁に対してせん断方向の外力を加えたときに測定される接着力(最大応力)である。測定装置としては、Dage社製の接着力試験機「Dage−4000」が用いられる。
【0091】
上記積層体は、典型的には以下のような手順で準備される。まず、感光性接着剤組成物からなる接着フィルムをポリエチレンテレフタレートフイルム(PETフイルム)上に形成させ、この接着フィルムを6インチサイズ、400μm厚のシリコンウェハにラミネートする。ラミネートは、ロール及び支持体を有する装置を用い、80℃に加熱しながら、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で行う。次いで、ラミネートされた接着フィルムに対してPETフイルム側から1000mJ/cm2の紫外線を照射する。その後、シリコンウェハを接着フィルムとともに裁断して、3mm×3mmの大きさの接着フィルム付きシリコンチップを得る。シリコンウェハは、PETフイルムを剥がしてから接着フイルムに感圧型のダイシングテープをラミネートした後、ダイサーを用いて裁断される。接着フィルム付きシリコンチップを、10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板に接着フィルムがシリコンチップとガラス基板との間に挟まれる向きで載せ、120℃の熱盤上で500gf、10秒間の条件で熱圧着させる。更に、160℃のオーブン中で3時間の加熱により接着フィルムを硬化させる。以上の操作により、せん断接着力を測定するための上記積層体が得られる。
【0092】
感光性接着剤組成物の露光後の100℃における貯蔵弾性率は0.01〜10MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率が0.01MPa未満であるとパターン形成後の熱圧着の際に加えられる熱及び圧力に対する耐性が低下して、パターンが潰れ易くなる傾向にあり、10MPaを超えると露光後の再接着性が低下して、パターン形成後に被着体に熱圧着する際、十分な接着力を得るために要する温度が高くなる傾向がある。
【0093】
上記貯蔵弾性率の値は、露光された感光性樹脂組成物からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
【0094】
動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には以下のようにして準備される。まず、PETフイルム及びこれの一面上に形成された厚さ約40μmの接着フィルムを有する接着シートを35mm×10mmの大きさに切り出し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射する。露光後、PETフイルムをはく離して上記試験片が得られる。
【0095】
感光性接着剤組成物の、露光後、更に加熱硬化された後の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。この貯蔵弾性率が1MPa未満であると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
【0096】
上記貯蔵弾性率の値は、露光後、更に加熱硬化された後の感光性樹脂組成物からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
【0097】
上記動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には、露光後の動的粘弾性測定のための試験片の作製の説明において上述した条件と同様の条件で露光された接着フィルムを、さらに160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させて得られる。
【0098】
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析おける感光性接着剤組成物の質量減少率が5%となる温度(以下「5%質量減少温度」という。)は、260℃以上であることが好ましい。5%質量減少温度が260℃を下回ると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、又は部材を汚染する可能性が高くなる。
【0099】
5%質量減少温度は、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期の質量に対する質量減少率が5%となる温度である。熱重量分析のための試料は、露光後、更に加熱硬化された後の貯蔵弾性率についての説明において上述の条件と同様の条件で露光及び加熱された接着フィルムを、乳鉢を用いて細かく砕いて準備される。測定装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR 6300」が用いられる。
【0100】
以上の諸特性は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合開始剤、さらに必要に応じて熱硬化性樹脂及びフィラーを用いて感光性接着剤組成物を調製し、これらの種類、及び配合比を調整することで達成できる。
【0101】
図1は、本発明に係る接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。図1に示す接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物をフイルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す断面図である。図2に示す接着シート10は、基材3と、これの一方面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とから構成される。
【0102】
接着フィルム1は、例えば、ポリイミド、放射線重合性化合物、光重合開始剤、及び必要に応じて他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート10の状態で保存及び使用することもできる。
【0103】
上記の混合及び混練は、通常の授拝機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
【0104】
熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0105】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチルーピロリジノンが挙げられる。
【0106】
ワニス層の厚みは好ましくは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを超えると得られる接着フィルム1中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0107】
接着フィルム1の残存揮発分は好ましくは10質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組立のための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発成分は、50mm×50mmサイズに切断した接着フィルムの初期の質量をM1とし、この接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2としたときに、残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
【0108】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフイルム、ポリエーテルナフタレートフイルム、メチルペンテンフイルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフイルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0109】
図3は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った端面図である。図3、4に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ5と、これの一方面上に設けられ上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層1と、を備える。半導体ウェハ5は、典型的にはシリコンウェハである。
【0110】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ5上に、接着フィルム1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物からなるフイルムであるため、例えば室温〜100℃程度の低温で半導体ウェハ20に貼付けることが可能である。
【0111】
接着剤層付半導体ウェハ20は、接着剤層1を介して被着体を半導体ウェハ5に接着する工程を経てCCDカメラモジュール、CMOSカメラモジュール等の電子部品を製造するために好適に用いられる。以下、CCDカメラモジュールを製造する場合の例について説明する。CMOSカメラモジュールも同様の方法で製造することができる。
【0112】
図5は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤パターン1aは、被着体としての半導体ウェハ5上において、半導体ウェハ5上に設けられた複数の有効画素領域7を囲う略正方形の辺に沿ったパターンを有するように形成されている。
【0113】
図7は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。図7、8に示す接着剤パターン1bは被着体としての半導体ウェハ5上において、半導体ウェハ5上に設けられた有効画素領域7が露出する略正方形の開口部が形成されるようにパターン化されている。
【0114】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ5上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ水溶液により現像することにより形成される。すなわち、接着剤パターン1a及び1bは、露光後の感光性接着剤組成物から構成される。
【0115】
続いて、接着剤パターン1a又は1bを介して半導体ウェハ20にもう一方の被着体としてのカバーガラス9が接着される。図9はカバーガラス9が接着剤パターン1aを介して半導体ウェハ20に接着された状態を示す上面図であり、図10は図9のX−X線に沿った端面図である。図11はカバーガラス9が接着剤パターン1bを介して半導体ウェハ20に接着された状態を示す上面図であり、図12は図11のXI−XI線に沿った端面図である。カバーガラス9は、加熱硬化された接着剤パターン1a又は1bを挟んで半導体ウェハ20に接着されている。カバーガラス9を接着剤パターン1a又は1b上に載せ、これを熱圧着することにより、カバーガラス9が接着される。接着剤パターン1a及び1bは、カバーガラス9を接着するための接着剤として機能するとともに、有効画素領域7を囲む空間を確保するためのスペーサとしても機能している。
【0116】
カバーガラス9を接着した後、破線Dに沿ったダイシングにより、図13に示される半導体装置30a又は図14に示される半導体装置30bが得られる。半導体装置30aは、半導体チップ5、有効画素領域7、接着剤パターン(接着剤層)1a及びカバーガラス9から構成される。半導体装置30bは、半導体チップ5、有効画素領域7、接着剤パターン(接着剤層)1b及びカバーガラス9から構成される。
【0117】
図15は、本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。図15に示すCCDカメラモジュール50aは、固体撮像素子としての半導体装置30aを備える電子部品である。半導体装置30aは、ダイボンドフイルム11を介して半導体素子搭載用支持基材15に接着されている。半導体装置30aは、ワイヤ12を介して外部接続端子と電気的に接続されている。
【0118】
CCDカメラモジュール50は、有効画素領域7の真上に位置するように設けられたレンズ40と、レンズ40とともに半導体装置30aを内包するように設けられた側壁16と、レンズ40が嵌め込まれた状態でレンズ40及び側壁16の間に介在する嵌め込み用部材17とが半導体素子搭載用支持基材15上に搭載された構成を有する。
【0119】
図16は、本発明に係る電子部品としてのCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。図16に示すCCDカメラモジュール50bは、上記実施形態のようにダイボンディングフイルムを用いて半導体装置が接着された構成に代えて、はんだ13を介して半導体装置30aが半導体装置搭載用支持基材15と接着された構成を有する。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
ポリイミドPI−1の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に3,5−ジアミノ安息香酸(以下「DABA」と略す)7.6g及びNMPを仕込んだ。次いで4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下「ODPA」と略す)15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレンを加え、180℃に昇温させてその温度を5時間保持したところ、茶色の溶液を得られた。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥しポリイミド(以下「ポリイミドPI−1」という。)を得た。
【0122】
DMFを移動相としてGPCを測定したところ、ポリイミドPI−1の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は72000であった。また、ポリイミドPI−1の原料の仕込み比から算出される酸価は130mg/KOHであった。
【0123】
ポリイミドの酸価は、原料の仕込み比に基づいて以下のようにして算出される。ポリイミドPI−1及び他のポリイミドの酸価はこの方法により算出した。原料として使用したテトラカルボン酸二無水物について、分子量をAwn(用いた化合物の種類ごとに、Aw1、Aw2、Aw3、・・・)とし、モル数をAmn(用いた化合物の種類ごとに、Am1、Am2、Am3、・・・)とする。また、原料として使用したジアミンについて、分子量をBwn(用いた化合物の種類ごとに、Bw1、Bw2、Bw3、・・・)とし、モル数をBm(用いた化合物の種類ごとに、Bm1、Bm2、Bm3、・・・)とする。そして、全テトラカルボン酸二無水物のモル数をAall(Aall=ΣAmn)、全ジアミンのモル数をBall(Ball=ΣBmn)とすると、計算式:酸価(mg/KOH)=1/[Σ{(Awn+Bwn−36)×(Amn/Aall)×(Bmn/Ball)}]×55.1×1000により酸価が算出される。
【0124】
ポリイミドPI−1を溶剤と混合したワニスを離型用シリコーンで表面処理したPETフイルム上に塗布し、乾燥して、厚さ40μmのポリイミドのフイルムを作製した。このフイルムから35mm×10mmのサイズに切り出した試験片について、粘弾性測定器「RSA−2」(商品名)を用いて昇温速度5℃/分、周波数1Hz、測定温度−150℃〜300℃の条件で測定して、tanδが極大値を示した温度をポリイミドPI−1のTgとした。なお、tanδが複数の温度で極大値を示した場合には、それらのうち最も大きい極大値を示した温度をTgとした。ポリイミドPI−1のTgは200℃であった。
【0125】
ポリイミドPI−2の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA6.84g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)9.99g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドPI−2」という。)を得た。
【0126】
ポリイミドPI−2の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は51000、Tgは140℃であった。また、ポリイミドPI−2の原料の仕込み比から算出される酸価は90mg/KOHであった。
【0127】
ポリイミドPI−3の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA2.28g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.16g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドPI−3」という。)を得た。
【0128】
ポリイミドPI−3の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は47000、Tgは50℃であった。また、ポリイミドPI−3の原料の仕込み比から算出される酸価は88mg/KOHであった。
【0129】
ポリイミドP1−4の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA1.9g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.16g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)0.87g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−4」という。)を得た。
【0130】
ポリイミドP1−4の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は33000、Tgは55℃であった。また、ポリイミドP1−4の原料の仕込み比から算出される酸価は88mg/KOHであった。
【0131】
ポリイミドP1−5の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にm−フェニレンジアミン5.4g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−5」という。)を得た。
【0132】
ポリイミドP1−5の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は68000、Tgは210℃であった。また、ポリイミドP1−5はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0133】
ポリイミドP1−6の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)99.9g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−6」という。)を得た。
【0134】
ポリイミドP1−6の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は74000、Tgは10℃であった。また、ポリイミドP1−6はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0135】
ポリイミドP1−7の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)49.95g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)8.71g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−7」という。)を得た。
【0136】
ポリイミドP1−7の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は45000、Tgは30℃であった。また、ポリイミドP1−7はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0137】
ポリイミドP1−8の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(以下「MBAA」と略す。分子量286.28)2.15g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.59g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)2.26g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA17gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−8」という。)を得た。
【0138】
ポリイミドP1−8の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は28000、Tgは30℃であった。また、また、ポリイミドP1−8の原料の仕込み比から算出される酸価は167mg/KOHであった。
【0139】
ポリイミドP1−9の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に1,12−ジアミノドデカン2.10g(以下「DDO」と略す)、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)17.98g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)2.61g及びNMPを仕込んだ。次いで4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(以下「BPADA」と略す)15.62gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−9」という。)を得た。
【0140】
ポリイミドP1−9の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は70000、Tgは53℃であった。また、P1−9の酸価はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため80mg/KOH未満とみなした。
【0141】
ポリイミドP1−10の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(以下「BAPP」と略す)6.83g、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン(以下「B−12」と略す)3.40g及びNMPを仕込んだ。次いでデカメチレンビストリメリテート二無水物(以下「DBTA」と略す)17.40gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−10」という。)を得た。
【0142】
ポリイミドP1−10の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は89000、Tgは73℃であったまた、ポリイミドP1−10はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を<80mg/KOHとみなした。
【0143】
ポリイミドP1−11の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にMBAA14.3g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−11」という。)を得た。
【0144】
ポリイミドP1−11の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は82000、Tgは180℃であった。また、ポリイミドP1−11の原料の仕込み比から算出される酸価は197mg/KOHであった。
【0145】
表1及び表2に、ポリイミド合成の際の仕込み比(モル比)と、得られたポリイミドの評価結果をまとめて示す。表1中の仕込み比の数値は、テトラカルボン酸二無水物全体及びジアミン全体をそれぞれ基準としたときの数値(モル%)である。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
実施例1
ポリイミドPI−1、放射線重合性化合物としてのエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(「BPE−100」(商品名)、新中村化学社製)、及び光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフインオキサイド(「I−819」(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を、表2に示す組成(重量部)となるように、シクロヘキサノン中で均一に混合して、接着フィルム形成用のワニスを調製した。このワニスを、離型用シリコーンで表面処理したPETフイルム上に塗布し、乾燥して、厚さ40μmの接着フィルムを形成させた。
【0149】
実施例2−7、比較例1−8
それぞれ、表3又は4に示す原料及び組成とした他は実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。
【0150】
表3、4に示す原料の内容は以下の通りである。
BPE−100:新中村化学、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
U−2PPA:新中村化学、ウレタンアクリレート
YDF−8170:東都化成、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ESCN−195:住友化学、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂
H−1:明和化成、フェノールノボラック
R972:日本アエロジル、疎水性フユームドシリカ(平均粒径:約16nm)
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
作製した接着フィルムについて、以下に示す方法により、パターン形成性、低温貼付け性、せん断接着力を評価した。評価結果を表3、4にまとめて示す。
【0154】
(1)パターン形成性
接着フィルムを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上にロールで加圧することにより積層し、その上にマスクを載せた。そして、高精度平行露光機(オーク製作所製)で露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38%溶液を用いてスプレー現像した。現像後、パターン形成(ライン幅1mm)されているか確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をCとした。
【0155】
(2)低温貼付け性
支持台上に載せたシリコンウェハ(6inch径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、接着フィルムをロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフイルムを剥がし、接着フィルム上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム「ユーピレックス」(商品名)を前記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ「ストログラフE−S」(商品名)を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着フィルム−ユーピレックス間のピール強度を測定した。ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをCとした。
【0156】
(3)接着性(せん断接着力)
シリコンウェハ(6inch径、厚さ400μm)に、ロール及び支持体を有する装置を用いて、80℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で接着フィルムをラミネートした。次に、高精度平行露光機(オーク製作所製)を用いて、PETフイルム側から露光量:1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。PETフイルムをはく離し、接着フィルム上に感圧型のダイシングテープをラミネートした。そして、ダイサーを用いてシリコンウェハを接着フィルムとともに3mm×3mmサイズに裁断して、接着フィルムが積層されたシリコンチップを得た。このシリコンチップを、10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板上に接着フィルムが挟まれる向きで載せ、120℃の熱盤上で500gf、10秒の条件で熱圧着した。その後、160℃のオーブン中で3時間加熱し、接着フィルムを加熱硬化させた。得られたサンプルについて、Dage製接着力試験機Dage−4000を用いて、25℃、又は260℃の熱盤上で、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でシリコンチップ側にせん断方向の外力を加えたときの最大応力を25℃又は260℃におけるせん断接着力とした。
【0157】
(4)露光後の100℃における弾性率
接着フィルムを35mm×10mmの大きさに切断し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離した露光後の接着フィルムを試験片として、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」を用いて、昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の条件で動的粘弾性を測定した。この動的粘弾性測定から100℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0158】
(5)加熱硬化後の260℃における弾性率
接着フィルムを35mm×10mmの大きさに切断し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離してから、接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させた。硬化された接着フィルムを試験片として、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」を用いて、昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で動的粘弾性を測定した。この動的粘弾性測定から260℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0159】
(6)5%質量減少温度
接着フィルムに対して、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離してから、接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させた。硬化された接着フィルムを乳鉢で細かく砕いて得た粉末を試料として、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR 6300」を用いて、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で熱重量分析を行った。この熱重量分析から、質量減少率が5%となる温度(5%質量減少温度)を求めた。
【0160】
表3に示すように、実施例の接着フィルムは、パターン形成性及び低温貼り付け性のいずれもが優れていた。また、実施例の接着フィルムは露光後の圧着によっても高い接着力を示しており、露光後の再接着性の点でも優れていた。一方、表4に示すように、比較例の接着フィルムはパターン形成性、低温貼り付け性及び再接着性のいずれかの点で十分なものではなかった。
【符号の説明】
【0161】
1…接着フィルム(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、3…基材、5…半導体ウェハ、7…有効画素領域、9…カバーガラス、10…接着シート、15…半導体素子搭載用支持基材、20…接着剤層付半導体ウェハ、30a,30b…半導体装置、50a,50b…CCDカメラモジュール。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、並びにこれを用いて得られる接着フィルム、接着シート、接着剤層付半導体ウェハ、半導体装置及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持基材とを接着するための接着剤や、半導体チップを各種の被着体に接着するための接着剤には、低応力性、低温での貼り付け性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性が求められる。さらに、半導体パッケージや電子部品の機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法によっては、パターン形成可能な感光性の機能を兼ね備えることが求められる場合がある。感光性とは光を照射した部分が化学的に変化し、水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する機能である。この感光性を有する感光性接着剤を用いると、フォトマスクを介して露光し、現像液によってパターン形成させることにより、高精細な接着剤パターンを形成することが可能となる。感光性接着剤としては、これまで、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)あるいはポリイミド樹脂をベースとした材料が使用されていた(特許文献1〜3参照)。しかし、前者の場合はイミド化のための閉環反応の際に、後者の場合は接着工程の際に、それぞれ300℃以上の高温を要するため周辺材料への熱的ダメージが大きいという問題があった。また、残留熱応力が発生しやすいという問題もあった。
【0003】
一方、ポリイミド樹脂などを用いた接着剤に熱硬化性樹脂を配合して架橋することにより、低温での貼り付け性及びはんだ耐熱性を改良することも試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリイミド樹脂を用いた従来の感光性接着剤は、アルカリ現像液によるパターン形成性及び被着体への低温での貼り付け性の両方について同時に高いレベルを達成することは困難であった。また、露光後に熱圧着したときに十分に高い接着力を発現することが可能な、再接着性を付与することも困難であった。
【0006】
本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有する感光性接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後の十分な再接着性を有するとともに、被着体に低温で貼り付けることが可能な接着フィルムを提供することを目的とする。更に、本発明は、半導体チップが優れた接着力で接着された、信頼性の高い半導体装置及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の感光性接着剤組成物は、(A)カルボキシル基を側鎖として有し酸価が80〜180mg/KOHであるポリイミドと、(B)放射線重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有する。上記酸価は、好ましくは80〜150mg/KOHである。
【0008】
この感光性接着剤組成物は、カルボキシル基を有するとともに、上記特定範囲の酸価を有するポリイミドを用いたこと等により、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後に十分な再接着性を発現するものとなった。
【0009】
本発明の感光性接着剤組成物は、(D)熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。この熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0010】
上記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンを含むジアミンとを反応させて得られるポリイミドであることが好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
ポリイミドの重量平均分子量は、アルカリ現像液によるパターン形成性及びフイルム形成性の観点から、5000〜150000であることが好ましい。
【0013】
ポリイミドのガラス転移温度は、150℃以下であることが好ましい。これにより、感光性接着剤組成物からなる接着フィルムを半導体ウェハ等の被着体に、より低い温度で貼付けることが可能になる。同様の観点から、上記ジアミンは、更に、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含むことが好ましい。
【0014】
【化2】
【0015】
式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。
【0016】
上記ジアミンは、更に、下記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンをジアミン全体の1〜20モル%含むことが好ましい。
【0017】
【化3】
【0018】
式中、R1及びR2は各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R3、R4、R5及びR6は各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、n2は1〜5の整数を示す。
【0019】
放射線重合性化合物の分子量が2000以下であり、本発明の感光性接着剤組成物が放射線重合性化合物をポリイミド100重量部に対して20重量部以上含有することが好ましい。
【0020】
本発明に係る感光性接着剤組成物は、当該感光性接着剤組成物を介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。また、本発明に係る感光性接着剤組成物は、当該感光接着剤組成物を介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、260℃において0.5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。
【0021】
露光後の感光性接着剤組成物の100℃における貯蔵弾性率は0.01〜10MPaであることが好ましい。露光後、更に加熱硬化された後の感光性樹脂組成物の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。
【0022】
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析おける感光性接着剤組成物の質量減少率が5%となる温度は260℃以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の接着フィルムは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる。また、本発明の接着シートは、基材と、これの一方面上に設けられた上記本発明に係る接着フィルムとを備える。
【0024】
本発明の接着剤パターンは、上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層を被着体上に形成し、該接着剤層をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものである。この接着剤層は、上記本発明の感光性接着剤組成物がパターン形成性に優れているため、高精細なパターンを有することが可能であり、また、露光後の再接着性に優れる。
【0025】
本発明の接着剤層付半導体ウェハは、半導体ウェハと、これの一方面上に設けられ上記本発明の感光性接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える。
【0026】
本発明の半導体装置は、上記本発明の感光性接着剤組成物を用いて被着体に接着された半導体チップを有する。また、本発明の電子部品はこの半導体装置を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明の感光性接着剤組成物は、アルカリ現像液への溶解速度が大きく、アルカリ現像液によるパターン形成性に優れ、露光後に高い再接着性を発現する。また、本発明の接着フィルムは被着体に比較的低温で貼り付けることが可能であり、周辺材料への熱的ダメージが抑制されるため、信頼性の高い半導体装置及び電子部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る接着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った端面図である。
【図5】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った端面図である。
【図7】本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】接着剤パターンを介してカバーガラスが半導体ウェハに接着された状態を示す上面図である。
【図10】図9のX−X線に沿った端面図である。
【図11】接着剤パターンを介してカバーガラスが半導体ウェハに接着された状態を示す上面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った端面図である。
【図13】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図14】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図15】本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る感光性接着剤組成物は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合開始剤を含有する。
【0031】
上記ポリイミドは、主鎖中にイミド骨格を有し、カルボキシル基を側鎖として有する1種又は2種以上の重合体から構成される。ポリイミドの酸価は80〜180mg/KOHである。ポリイミドの酸価が80mg/KOH未満であると、アルカリ現像液への溶解性が低下し、180mg/KOHを超えると現像中に接着剤層が被着体からはく離してしまう可能性が高くなる。同様の観点から、ポリイミドの酸価は150mg/KOH以下であることがより好ましい。特に、感光性接着剤組成物が後述する熱硬化性樹脂を含有し、且つ、ポリイミドの酸価が80〜180mg/KOHであることが好ましい。
【0032】
カルボキシル基を有するポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、カルボキシル基及びアミノ基を有するジアミンとの反応により、得ることができる。これにより、ポリイミドにはジアミンに由来するカリボキシル基が導入される。ジアミンの種類及びその仕込み比、反応条件等を適宜調整することにより、酸価を80〜180mg又は80〜150mg/KOHとすることができる。
【0033】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応(縮合反応)は、当業者には理解されるように、公知の方法により行うことができる。例えば、この反応においては、まず、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、等モル又はほぼ等モルの比率で、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。各成分の添加順序は任意である。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。生成したポリアミド酸を50〜80℃の温度に加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することもできる。生成したポリアミド酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが生成する。脱水閉環は、加熱による熱閉環法、又は脱水剤を使用する化学閉環法により行うことができる。
【0034】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの仕込み比に関して、より具体的には、テトラカルボン酸二無水物の合計量1.0molに対して、ジアミンの合計量を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲内とする。ジアミンの比率が2.0molを超えると末端がアミノ基であるポリイミドオリゴマーが多く生成し、0.5molを下回ると末端がカルボキシル基であるポリイミドオリゴマーが多く生成する傾向にある。ポリイミドオリゴマーの量が多くなると、ポリイミドの重量平均分子量が低下して、感光性接着剤組成物の耐熱性等の種々の特性の低下が生じ易くなる。上記仕込み比を調整することによって、ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000の範囲内となるように調製することができる。
【0035】
ポリイミドの合成に使用されるジアミンとしては、アルカリ水溶液への溶解性を特に良好なものとするために、上記一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンが好ましい。
【0036】
ポリイミドのTgを低下させて熱応力を低減するため、ジアミンは、更に、上記一般式(III)の脂肪族エーテルジアミンを含むことが好ましい。式(III)の脂肪族エーテルジアミンとしては、より具体的には、下記化学式(IIIa)、(IIIb)又は(IIIc)で表されるものが挙げられる。これらの中でも、低温での貼付け性及び被着体に対する良好な接着性を確保できる点で、式(IIIa)の脂肪族エーテルジアミンが好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
脂肪族エーテルジアミンの市販品としては、例えば、サンテクノケミカル(樵)製のジェファーミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」、「D−4000」、「ED−600」、「ED−900」、「ED−2001」、「EDR−148」(以上商品名)、BASF(製)のポリエーテルアミン「D−230」、「D−400」、「D−2000」(以上商品名)が挙げられる。
【0039】
更に、露光後の再接着性を更に高めるために、上記一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを使用することが好ましい。
【0040】
化学式(IV)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、式中のn2が1のとき、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサンが挙げられ、n2が2のとき、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンが挙げられる。
【0041】
これらのジアミンは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この場合、一般式(I)又は(II)で表される芳香族ジアミンを全ジアミンの10〜50モル%、一般式(IV)で表されるシロキサンジアミンを全ジアミンの1〜20モル%(更に好ましくは5〜10モル%)、一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンを全ジアミンの10〜90モル%とすることが好ましい。これにより、通常、ポリイミドの酸価を80〜180mg/KOH又は80〜150mg/KOHとすることができる。シロキサンジアミンが全ジアミンの1モル%未満であると、露光後の再接着性が低下する傾向にあり、20モル%を超えるとアルカリ現像液への溶解性が低下する傾向にある。また、脂肪族エーテルジアミンが全ジアミンの10モル%未満であると、ポリイミドのTgが高くなって低温加工性(低温での貼付け性)が低下する傾向にあり、90モル%を超えると、熱圧着時にボイドが発生しやすくなる傾向にある。
【0042】
ジアミンは、上記以外のジアミンを更に含んでいてもよい。例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0043】
ポリイミドを合成する際の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物は、接着剤の諸特性の低下を抑えるため、無水酢酸からの再結晶により精製されていることが好ましい。あるいは、テトラカルボン酸二無水物は、その融点よりも10〜20℃低い温度で12時間以上加熱することにより乾燥されていてもよい。テトラカルボン酸二無水物の純度は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される吸熱開始温度と吸熱ピーク温度との差によって評価することができ、再結晶や乾燥等によりこの差が20℃以内、より好ましくは10℃以内となるように精製されたカルボン酸二無水物をポリイミドの合成のために用いることが好ましい。吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度は、DSC(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、サンプル量:5mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:窒素の条件で測定される。
【0044】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテ−ト無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]−ブタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0045】
特に、溶剤への良好な溶解性を付与するため、下記化学式(V)又は(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。この場合、これらの式で表されるテトラカルボン酸二無水物の割合を、全テトラカルボン酸二無水物100モル%に対して50モル%以上とすることが好ましい。この割合が50モル%未満であると、溶解性向上効果が低下する傾向にある。
【0046】
【化5】
【0047】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
ポリイミドの重量平均分子量は5000〜150000の範囲内であることが好ましく、20000〜500000がより好ましく、30000〜40000が更に好ましい。ポリイミドの重量平均分子量が5000より小さいと、フイルム形成性が低下する傾向にあり、150000を超えると、アルカリ性現像液への溶解性が低下して、現像時間が長くなる傾向にある。ポリイミドの重量平均分子量を5000〜150000とすることにより、半導体素子を半導体素子搭載用支持基材等の被着体に接着固定する際の加熱温度(ダイボンディング温度)も低くすることができるという効果も得られる。なお、上記の重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(例えば、島津製作所製「C−R4A」(商品名))を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量のことである。
【0049】
ポリイミドのガラス転移温度(以下「Tg」という。)は30℃〜150℃の範囲が好ましい。Tgが30℃未満であると、圧着時にボイドが生成しやすくなる傾向にある。Tgが150℃を超えると、被着体への貼付け温度及び露光後の圧着温度が高くなり周辺部材にダメージを与えやすくなる傾向にある。なお、上記のTgとは粘弾性測定装置(レオメトリック社製)を用いてフイルムを測定したときのtanδのピーク温度である。
【0050】
放射線重合性化合物としては、紫外線や電子ビームなどの放射線の照射により、重合する化合物であれば、特に制限は無い。放射線重合性化合物は、アクリート基又はメタクリレート基を有する化合物であることが好ましい。放射線重合性化合物の具体例としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(10)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレートが挙げられる。式(10)中、R3及びR4は各々独立に水素原子又はメチル基を示し、q及びrは各々独立に1以上の整数を示す。
【0051】
【化6】
【0052】
ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは、例えば、ジオール類、下記一般式(21)で表されるイソシアネート化合物、及び下記一般式(22)で表される化合物の反応により生成する。
【0053】
【化7】
【0054】
式(21)中、sは0又は1を示し、R5は炭素原子数が1〜30の2価又は3価の有機基を示す。式(22)中、R6は水素原子又はメチル基を示し、R7はエチレン基又はプロピレン基を示す。
【0055】
尿素メタクリレートは、例えば、下記一般式(31)で表されるジアミンと、下記一般式(32)で表される化合物との反応により生成する。
【0056】
【化8】
【0057】
式(31)中、R8は炭素原子数が2〜30の2価の有機基を示す。式(32)中、tは0又は1を示す。
【0058】
以上のような化合物の他、官能基を含むビニル共重合体に、少なくとも1個のエチレン性不飽和基と、オキシラン環、イソシアネート基、水酸基、及びカルボキシル基等の官能基とを有する化合物を付加反応させて得られる、側鎖にエチレン性不飽和基を有する放射線重合性共重合体等などを使用することができる。
【0059】
これらの放射線重合性化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも上記一般式(10)で示される放射線重合性化合物は硬化後の耐溶剤性を付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートは硬化後の可とう性を付与できる点で好ましい。
【0060】
放射線重合性化合物の分子量は2000以下が好ましい。分子量が2000を超えると、感光性接着剤組成物のアルカリ水溶液への溶解性が低下する傾向にあり、また、接着フィルムのタック性が低下して、半導体ウェハ等の被着体に低温で貼付けることが困難となる傾向にある。
【0061】
放射線重合性化合物の含量は、ポリイミド100重量部に対して20〜80重量部であることが好ましく、30〜60重量部であることが更に好ましい。放射線重合性化合物の量が80重量部を超えると、重合した放射線重合性化合物が原因となって熱圧着後の接着性が低下する傾向にある。5重量部未満であると、露光後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる傾向にある。
【0062】
光重合開始剤は、パターン形成時の感度を良くするために、300−400nmにおいて吸収帯を有することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1,2,4−ジェチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン及びフェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン及びエチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフインオキサイド及びビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフインオキサイド等のビスアシルフォスフインオキサイドなどが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
光重合開始剤の量は、特に制限はないが、ポリイミド100重量部に対して通常0.01〜30重量部である。
【0064】
感光性接着剤組成物は、熱硬化性樹脂を更に含有することが好ましい。本発明において熱硬化性樹脂とは、熱により架橋反応を起こしうる反応性化合物をいう。このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含有する樹脂、トリアリルトリメリタートを含有する樹脂、シクロペンタジエンから合成された熱硬化性樹脂、芳香族ジシアナミドの三量化による熱硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、高温において優れた接着力を持たせることができる点で、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びビスマレイミド樹脂が好ましく、取り扱い性及びポリイミドとの相溶性の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。これら熱硬化性樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものが好ましい。硬化性や硬化物特性の点からは、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂が極めて好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、AD、S又はFのグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
シアネート樹脂としては、例えば、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス[4−シアネートフェニル−1−(1−メチルエチリデン)]ベンゼン、シアネーテッドフェノール−ジシクロペンタンジエンアダクト、シアネーテッドノボラック、ビス(4−シアナートフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナートフェニル)エーテル、レゾルシノールジシアネート、1,1,1−トリス(4−シアネートフェニル)エタン、2−フェニル−2−(4−シアネートフェニル)イソプロピリデン等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
ビスマレイミド樹脂としては、例えば、o−、m−又はp−ビスマレイミドベンゼン、4−ビス(p−マレイミドクミル)ベンゼン、1,4−ビス(m−マレイミドクミル)ベンゼン、及び下記一般式(40)、(41)、(42)又は(43)で表されるマレイミド化合物等が挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
【化9】
【0069】
式(40)において、Rは−〇−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR41は各々独立に水素原子、低級アルキル基低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ1はそれぞれ独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0070】
式(41)において、R42は−O−、−CH2−、−CF2−、−SO2−、−S−、−CO−、−C(CH3)2−又は−C(CF3)2−を示し、4つのR43は各々独立に水素、低級アルキル基、低級アルコキシ基、フッ素、塩素又は臭素を示し、2つのZ2は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0071】
式(42)において、Xは0〜4の整数を示し、複数のZ3は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示す。
【0072】
式(43)において、2つのR44は各々独立に2価の炭化水素基を示し、複数のR45はそれぞれ独立に1価の炭化水素基を示し、2つのZ4は各々独立にエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸残基を示し、yは1以上の整数を示す。
【0073】
式(40)〜(43)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4としては、マレイン酸残基、シトラコン酸残基などが挙げられる。
【0074】
式(41)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、4,4−ビスマレイミドジフェニルエーテル、4,4−ビスマレイミドジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミド−3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルホン、4,4−ビスマレイミドジフェニルスルフィド、4,4−ビスマレイミドジフェニルケトン、2’−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、4−ビスマレイミドジフェニルフルオロメタン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパンが挙げられる。
【0075】
式(42)で表されるビスマレイミド樹脂としては、例えば、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]フルオロメタン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
【0076】
熱硬化性樹脂を用いる場合、これを硬化させるために、硬化剤、硬化促進剤、触媒等の添加剤を感光性接着剤組成物中に適宜加えることができる。触媒を添加する場合は助触媒を必要に応じて使用することができる。
【0077】
エポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤を使用することが好ましく、これらを併用することがより好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アルカリ水溶液への溶解性に優れる点から、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物が好ましい。
【0078】
上記分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0079】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化を促進するものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0080】
エポキシ樹脂の硬化剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜200重量部が好ましく、硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0〜50重量部が好ましい。
【0081】
熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を使用する場合、触媒及び必要に応じて助触媒を使用することが好ましい。触媒としては、例えば、コバルト、亜鉛、銅等の金属塩や金属錯体などが挙げられ、助触媒としてはアルキルフェノール、ビスフェノール化合物、フェノールノボラック等のフェノール系化合物などが好ましい。
【0082】
熱硬化性樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用する場合、その硬化剤としてラジカル重合剤を使用することが好ましい。ラジカル重合剤としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。このとき、ラジカル重合剤の使用量は、ビスマレイミド樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましい。
【0083】
感光性接着剤組成物は、接着強度を上げる等の目的で、適宜カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられるが、中でもシランカップリング剤が高い接着力を付与できる点で好ましい。
【0084】
カップリング剤を用いる場合、その使用量は、ポリイミド100重量部に対して、0〜50重量部が好ましく、0〜20重量部がより好ましい。50重量部を超えると感光性接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
【0085】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピルトリアルコキシシラン、及びポリエトキシジメチルシロキサンが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
感光性接着剤組成物は、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉等の金属フィラー、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、ほう酸アルミ、セラミック等の非金属無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラーなどが挙げられる。
【0087】
上記フィラーは所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、接着フィルムに導電性又はチキソ性を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着フィルムに低熱膨張性、低吸湿性を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着フィルムに靭性を付与する目的で添加される。これら金属フィラー、非金属無機フィラー及び有機フィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。フィラーを用いた場合の混合、混練は、通常の授拝機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0088】
フィラーを用いる場合、その量は、ポリイミド100重量部に対し、1000重量部以下が好ましく、500重量部以下がより好ましい。下限は特に制限はないが、一般に1重量部である。フィラーの量が1000重量部を超えると接着性が低下する傾向がある。
【0089】
感光性接着剤組成物は、これを介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。25℃における上記せん断接着力が5MPa未満であると、電子部品を組み立てる際に加えられる外力に耐え得る接着固定機能を得ることが困難となる傾向にある。また、感光性接着剤組成物は、これを用いてシリコンチップをガラス基板に接着したときに、260℃において0.5MPa以上のせん断接着力が得られるものであることが好ましい。260℃における上記せん断接着力が0.5MPa未満であると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
【0090】
25℃又は260℃における上記せん断接着力は、3mm×3mm×400μm厚のシリコンチップと10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板とが、露光及び加熱された厚さ約40μmの感光性接着剤組成物からなる接着層を介して接着された積層体について、測定温度:25℃又は260℃、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でシリコンチップの側壁に対してせん断方向の外力を加えたときに測定される接着力(最大応力)である。測定装置としては、Dage社製の接着力試験機「Dage−4000」が用いられる。
【0091】
上記積層体は、典型的には以下のような手順で準備される。まず、感光性接着剤組成物からなる接着フィルムをポリエチレンテレフタレートフイルム(PETフイルム)上に形成させ、この接着フィルムを6インチサイズ、400μm厚のシリコンウェハにラミネートする。ラミネートは、ロール及び支持体を有する装置を用い、80℃に加熱しながら、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で行う。次いで、ラミネートされた接着フィルムに対してPETフイルム側から1000mJ/cm2の紫外線を照射する。その後、シリコンウェハを接着フィルムとともに裁断して、3mm×3mmの大きさの接着フィルム付きシリコンチップを得る。シリコンウェハは、PETフイルムを剥がしてから接着フイルムに感圧型のダイシングテープをラミネートした後、ダイサーを用いて裁断される。接着フィルム付きシリコンチップを、10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板に接着フィルムがシリコンチップとガラス基板との間に挟まれる向きで載せ、120℃の熱盤上で500gf、10秒間の条件で熱圧着させる。更に、160℃のオーブン中で3時間の加熱により接着フィルムを硬化させる。以上の操作により、せん断接着力を測定するための上記積層体が得られる。
【0092】
感光性接着剤組成物の露光後の100℃における貯蔵弾性率は0.01〜10MPaであることが好ましい。この貯蔵弾性率が0.01MPa未満であるとパターン形成後の熱圧着の際に加えられる熱及び圧力に対する耐性が低下して、パターンが潰れ易くなる傾向にあり、10MPaを超えると露光後の再接着性が低下して、パターン形成後に被着体に熱圧着する際、十分な接着力を得るために要する温度が高くなる傾向がある。
【0093】
上記貯蔵弾性率の値は、露光された感光性樹脂組成物からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
【0094】
動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には以下のようにして準備される。まず、PETフイルム及びこれの一面上に形成された厚さ約40μmの接着フィルムを有する接着シートを35mm×10mmの大きさに切り出し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射する。露光後、PETフイルムをはく離して上記試験片が得られる。
【0095】
感光性接着剤組成物の、露光後、更に加熱硬化された後の260℃における貯蔵弾性率は1MPa以上であることが好ましい。この貯蔵弾性率が1MPa未満であると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。
【0096】
上記貯蔵弾性率の値は、露光後、更に加熱硬化された後の感光性樹脂組成物からなる試験片の動的粘弾性を測定することにより得られる。動的粘弾性は、昇温速度:5℃/分、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で測定される。測定装置としては、例えば、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」が用いられる。
【0097】
上記動的粘弾性測定のための試験片は、典型的には、露光後の動的粘弾性測定のための試験片の作製の説明において上述した条件と同様の条件で露光された接着フィルムを、さらに160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させて得られる。
【0098】
露光後、更に加熱硬化された後の熱重量分析おける感光性接着剤組成物の質量減少率が5%となる温度(以下「5%質量減少温度」という。)は、260℃以上であることが好ましい。5%質量減少温度が260℃を下回ると、感光性接着剤組成物を用いて得た半導体装置を基板に半田付けで実装する際、高温の加熱によるはく離又は破壊を抑制することが困難になる傾向にある。また、加熱時に発生する揮発成分による周辺材料、又は部材を汚染する可能性が高くなる。
【0099】
5%質量減少温度は、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で行われる熱重量分析において、初期の質量に対する質量減少率が5%となる温度である。熱重量分析のための試料は、露光後、更に加熱硬化された後の貯蔵弾性率についての説明において上述の条件と同様の条件で露光及び加熱された接着フィルムを、乳鉢を用いて細かく砕いて準備される。測定装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR 6300」が用いられる。
【0100】
以上の諸特性は、ポリイミド、放射線重合性化合物及び光重合開始剤、さらに必要に応じて熱硬化性樹脂及びフィラーを用いて感光性接着剤組成物を調製し、これらの種類、及び配合比を調整することで達成できる。
【0101】
図1は、本発明に係る接着フィルムの一実施形態を示す断面図である。図1に示す接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物をフイルム状に成形したものである。図2は、本発明に係る接着シートの一実施形態を示す断面図である。図2に示す接着シート10は、基材3と、これの一方面上に設けられた接着フィルム1からなる接着剤層とから構成される。
【0102】
接着フィルム1は、例えば、ポリイミド、放射線重合性化合物、光重合開始剤、及び必要に応じて他の成分を有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスの層を形成させ、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート10の状態で保存及び使用することもできる。
【0103】
上記の混合及び混練は、通常の授拝機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、乾燥中に熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が充分に揮散する条件で乾燥する。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。
【0104】
熱硬化性樹脂が十分には反応しない温度とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量10mg、昇温速度5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。
【0105】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチルーピロリジノンが挙げられる。
【0106】
ワニス層の厚みは好ましくは1〜100μmである。この厚みが1μm未満であると被着体を固定する機能が低下する傾向にあり、100μmを超えると得られる接着フィルム1中の残存揮発分が多くなる傾向にある。
【0107】
接着フィルム1の残存揮発分は好ましくは10質量%以下である。この残存揮発分が10%を超えると組立のための加熱の際に溶媒の揮発による発泡に起因して接着層内部にボイドが残存し易くなり、耐湿信頼性が低下し易くなる傾向にある。また、加熱の際に発生する揮発成分による周辺材料又は部材を汚染する可能性も高くなる。この残存揮発成分は、50mm×50mmサイズに切断した接着フィルムの初期の質量をM1とし、この接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2としたときに、残存揮発分(質量%)={(M2−M1)/M1}×100により算出される。
【0108】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフイルム、ポリエーテルナフタレートフイルム、メチルペンテンフイルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフイルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0109】
図3は、本発明に係る接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った端面図である。図3、4に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ5と、これの一方面上に設けられ上記感光性接着剤組成物からなる接着剤層1と、を備える。半導体ウェハ5は、典型的にはシリコンウェハである。
【0110】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ5上に、接着フィルム1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。接着フィルム1は、上記感光性接着剤組成物からなるフイルムであるため、例えば室温〜100℃程度の低温で半導体ウェハ20に貼付けることが可能である。
【0111】
接着剤層付半導体ウェハ20は、接着剤層1を介して被着体を半導体ウェハ5に接着する工程を経てCCDカメラモジュール、CMOSカメラモジュール等の電子部品を製造するために好適に用いられる。以下、CCDカメラモジュールを製造する場合の例について説明する。CMOSカメラモジュールも同様の方法で製造することができる。
【0112】
図5は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のVI−VI線に沿った端面図である。図5、6に示す接着剤パターン1aは、被着体としての半導体ウェハ5上において、半導体ウェハ5上に設けられた複数の有効画素領域7を囲う略正方形の辺に沿ったパターンを有するように形成されている。
【0113】
図7は、本発明に係る接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のVIII−VIII線に沿った端面図である。図7、8に示す接着剤パターン1bは被着体としての半導体ウェハ5上において、半導体ウェハ5上に設けられた有効画素領域7が露出する略正方形の開口部が形成されるようにパターン化されている。
【0114】
接着剤パターン1a及び1bは、感光性接着剤組成物からなる接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ5上に形成して接着剤層付半導体ウェハ20を得、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ水溶液により現像することにより形成される。すなわち、接着剤パターン1a及び1bは、露光後の感光性接着剤組成物から構成される。
【0115】
続いて、接着剤パターン1a又は1bを介して半導体ウェハ20にもう一方の被着体としてのカバーガラス9が接着される。図9はカバーガラス9が接着剤パターン1aを介して半導体ウェハ20に接着された状態を示す上面図であり、図10は図9のX−X線に沿った端面図である。図11はカバーガラス9が接着剤パターン1bを介して半導体ウェハ20に接着された状態を示す上面図であり、図12は図11のXI−XI線に沿った端面図である。カバーガラス9は、加熱硬化された接着剤パターン1a又は1bを挟んで半導体ウェハ20に接着されている。カバーガラス9を接着剤パターン1a又は1b上に載せ、これを熱圧着することにより、カバーガラス9が接着される。接着剤パターン1a及び1bは、カバーガラス9を接着するための接着剤として機能するとともに、有効画素領域7を囲む空間を確保するためのスペーサとしても機能している。
【0116】
カバーガラス9を接着した後、破線Dに沿ったダイシングにより、図13に示される半導体装置30a又は図14に示される半導体装置30bが得られる。半導体装置30aは、半導体チップ5、有効画素領域7、接着剤パターン(接着剤層)1a及びカバーガラス9から構成される。半導体装置30bは、半導体チップ5、有効画素領域7、接着剤パターン(接着剤層)1b及びカバーガラス9から構成される。
【0117】
図15は、本発明の電子部品に係るCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。図15に示すCCDカメラモジュール50aは、固体撮像素子としての半導体装置30aを備える電子部品である。半導体装置30aは、ダイボンドフイルム11を介して半導体素子搭載用支持基材15に接着されている。半導体装置30aは、ワイヤ12を介して外部接続端子と電気的に接続されている。
【0118】
CCDカメラモジュール50は、有効画素領域7の真上に位置するように設けられたレンズ40と、レンズ40とともに半導体装置30aを内包するように設けられた側壁16と、レンズ40が嵌め込まれた状態でレンズ40及び側壁16の間に介在する嵌め込み用部材17とが半導体素子搭載用支持基材15上に搭載された構成を有する。
【0119】
図16は、本発明に係る電子部品としてのCCDカメラモジュールの一実施形態を示す断面図である。図16に示すCCDカメラモジュール50bは、上記実施形態のようにダイボンディングフイルムを用いて半導体装置が接着された構成に代えて、はんだ13を介して半導体装置30aが半導体装置搭載用支持基材15と接着された構成を有する。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
ポリイミドPI−1の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に3,5−ジアミノ安息香酸(以下「DABA」と略す)7.6g及びNMPを仕込んだ。次いで4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下「ODPA」と略す)15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に室温で5時間攪拌した。次に該フラスコに水分受容器付の還流冷却器を取り付け、キシレンを加え、180℃に昇温させてその温度を5時間保持したところ、茶色の溶液を得られた。こうして得られた溶液を室温まで冷却した後、蒸留水中に投じて再沈殿させた。得られた沈殿物を真空乾燥機で乾燥しポリイミド(以下「ポリイミドPI−1」という。)を得た。
【0122】
DMFを移動相としてGPCを測定したところ、ポリイミドPI−1の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は72000であった。また、ポリイミドPI−1の原料の仕込み比から算出される酸価は130mg/KOHであった。
【0123】
ポリイミドの酸価は、原料の仕込み比に基づいて以下のようにして算出される。ポリイミドPI−1及び他のポリイミドの酸価はこの方法により算出した。原料として使用したテトラカルボン酸二無水物について、分子量をAwn(用いた化合物の種類ごとに、Aw1、Aw2、Aw3、・・・)とし、モル数をAmn(用いた化合物の種類ごとに、Am1、Am2、Am3、・・・)とする。また、原料として使用したジアミンについて、分子量をBwn(用いた化合物の種類ごとに、Bw1、Bw2、Bw3、・・・)とし、モル数をBm(用いた化合物の種類ごとに、Bm1、Bm2、Bm3、・・・)とする。そして、全テトラカルボン酸二無水物のモル数をAall(Aall=ΣAmn)、全ジアミンのモル数をBall(Ball=ΣBmn)とすると、計算式:酸価(mg/KOH)=1/[Σ{(Awn+Bwn−36)×(Amn/Aall)×(Bmn/Ball)}]×55.1×1000により酸価が算出される。
【0124】
ポリイミドPI−1を溶剤と混合したワニスを離型用シリコーンで表面処理したPETフイルム上に塗布し、乾燥して、厚さ40μmのポリイミドのフイルムを作製した。このフイルムから35mm×10mmのサイズに切り出した試験片について、粘弾性測定器「RSA−2」(商品名)を用いて昇温速度5℃/分、周波数1Hz、測定温度−150℃〜300℃の条件で測定して、tanδが極大値を示した温度をポリイミドPI−1のTgとした。なお、tanδが複数の温度で極大値を示した場合には、それらのうち最も大きい極大値を示した温度をTgとした。ポリイミドPI−1のTgは200℃であった。
【0125】
ポリイミドPI−2の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA6.84g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)9.99g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドPI−2」という。)を得た。
【0126】
ポリイミドPI−2の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は51000、Tgは140℃であった。また、ポリイミドPI−2の原料の仕込み比から算出される酸価は90mg/KOHであった。
【0127】
ポリイミドPI−3の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA2.28g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.16g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドPI−3」という。)を得た。
【0128】
ポリイミドPI−3の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は47000、Tgは50℃であった。また、ポリイミドPI−3の原料の仕込み比から算出される酸価は88mg/KOHであった。
【0129】
ポリイミドP1−4の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にDABA1.9g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.16g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)0.87g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−4」という。)を得た。
【0130】
ポリイミドP1−4の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は33000、Tgは55℃であった。また、ポリイミドP1−4の原料の仕込み比から算出される酸価は88mg/KOHであった。
【0131】
ポリイミドP1−5の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にm−フェニレンジアミン5.4g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−5」という。)を得た。
【0132】
ポリイミドP1−5の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は68000、Tgは210℃であった。また、ポリイミドP1−5はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0133】
ポリイミドP1−6の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)99.9g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA15.5gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−6」という。)を得た。
【0134】
ポリイミドP1−6の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は74000、Tgは10℃であった。また、ポリイミドP1−6はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0135】
ポリイミドP1−7の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)49.95g及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)8.71g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−7」という。)を得た。
【0136】
ポリイミドP1−7の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は45000、Tgは30℃であった。また、ポリイミドP1−7はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を80mg/KOH未満とみなした。
【0137】
ポリイミドP1−8の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に5,5’−メチレン−ビス(アントラニリックアシッド)(以下「MBAA」と略す。分子量286.28)2.15g、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED400」(商品名)、分子量433)15.59g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)2.26g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA17gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−8」という。)を得た。
【0138】
ポリイミドP1−8の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は28000、Tgは30℃であった。また、また、ポリイミドP1−8の原料の仕込み比から算出される酸価は167mg/KOHであった。
【0139】
ポリイミドP1−9の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に1,12−ジアミノドデカン2.10g(以下「DDO」と略す)、脂肪族エーテルジアミン(BASF社製「ED2000」(商品名)、分子量1998)17.98g、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン(信越化学製「LP−7100」(商品名)分子量348.4)2.61g及びNMPを仕込んだ。次いで4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(以下「BPADA」と略す)15.62gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−9」という。)を得た。
【0140】
ポリイミドP1−9の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は70000、Tgは53℃であった。また、P1−9の酸価はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため80mg/KOH未満とみなした。
【0141】
ポリイミドP1−10の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(以下「BAPP」と略す)6.83g、4,9−ジオキサデカン−1,12−ジアミン(以下「B−12」と略す)3.40g及びNMPを仕込んだ。次いでデカメチレンビストリメリテート二無水物(以下「DBTA」と略す)17.40gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−10」という。)を得た。
【0142】
ポリイミドP1−10の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は89000、Tgは73℃であったまた、ポリイミドP1−10はカルボン酸を含むジアミンを用いてポリマーを合成していないため、その酸価を<80mg/KOHとみなした。
【0143】
ポリイミドP1−11の合成
攪拌機、温度計、及び窒素置換装置を備えたフラスコ内にMBAA14.3g及びNMPを仕込んだ。次いでODPA16gをNMPに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調整しながら上記フラスコ内に滴下した。これ以降の操作は全てポリイミドPI−1の合成と同様に行って、ポリイミド(以下「ポリイミドP1−11」という。)を得た。
【0144】
ポリイミドP1−11の重量平均分子量及びTgをポリイミドPI−1と同様の条件で測定したところ、重量平均分子量は82000、Tgは180℃であった。また、ポリイミドP1−11の原料の仕込み比から算出される酸価は197mg/KOHであった。
【0145】
表1及び表2に、ポリイミド合成の際の仕込み比(モル比)と、得られたポリイミドの評価結果をまとめて示す。表1中の仕込み比の数値は、テトラカルボン酸二無水物全体及びジアミン全体をそれぞれ基準としたときの数値(モル%)である。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
実施例1
ポリイミドPI−1、放射線重合性化合物としてのエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(「BPE−100」(商品名)、新中村化学社製)、及び光重合開始剤としてのビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフインオキサイド(「I−819」(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を、表2に示す組成(重量部)となるように、シクロヘキサノン中で均一に混合して、接着フィルム形成用のワニスを調製した。このワニスを、離型用シリコーンで表面処理したPETフイルム上に塗布し、乾燥して、厚さ40μmの接着フィルムを形成させた。
【0149】
実施例2−7、比較例1−8
それぞれ、表3又は4に示す原料及び組成とした他は実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。
【0150】
表3、4に示す原料の内容は以下の通りである。
BPE−100:新中村化学、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート
U−2PPA:新中村化学、ウレタンアクリレート
YDF−8170:東都化成、ビスフェノールF型エポキシ樹脂
ESCN−195:住友化学、クレゾールノボラック型固体状エポキシ樹脂
H−1:明和化成、フェノールノボラック
R972:日本アエロジル、疎水性フユームドシリカ(平均粒径:約16nm)
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
作製した接着フィルムについて、以下に示す方法により、パターン形成性、低温貼付け性、せん断接着力を評価した。評価結果を表3、4にまとめて示す。
【0154】
(1)パターン形成性
接着フィルムを、シリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)上にロールで加圧することにより積層し、その上にマスクを載せた。そして、高精度平行露光機(オーク製作所製)で露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38%溶液を用いてスプレー現像した。現像後、パターン形成(ライン幅1mm)されているか確認し、パターン形成されていた場合をA、パターン形成されていなかった場合をCとした。
【0155】
(2)低温貼付け性
支持台上に載せたシリコンウェハ(6inch径、厚さ400μm)の裏面(支持台と反対側の面)に、接着フィルムをロール(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)で加圧することにより積層した。PETフイルムを剥がし、接着フィルム上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム「ユーピレックス」(商品名)を前記と同様の条件でロールにより加圧して積層した。このようにして準備したサンプルについて、レオメータ「ストログラフE−S」(商品名)を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着フィルム−ユーピレックス間のピール強度を測定した。ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをCとした。
【0156】
(3)接着性(せん断接着力)
シリコンウェハ(6inch径、厚さ400μm)に、ロール及び支持体を有する装置を用いて、80℃、線圧:4kgf/cm、送り速度:0.5m/minの条件で接着フィルムをラミネートした。次に、高精度平行露光機(オーク製作所製)を用いて、PETフイルム側から露光量:1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。PETフイルムをはく離し、接着フィルム上に感圧型のダイシングテープをラミネートした。そして、ダイサーを用いてシリコンウェハを接着フィルムとともに3mm×3mmサイズに裁断して、接着フィルムが積層されたシリコンチップを得た。このシリコンチップを、10mm×10mm×0.55mm厚のガラス基板上に接着フィルムが挟まれる向きで載せ、120℃の熱盤上で500gf、10秒の条件で熱圧着した。その後、160℃のオーブン中で3時間加熱し、接着フィルムを加熱硬化させた。得られたサンプルについて、Dage製接着力試験機Dage−4000を用いて、25℃、又は260℃の熱盤上で、測定速度:50μm/秒、測定高さ:50μmの条件でシリコンチップ側にせん断方向の外力を加えたときの最大応力を25℃又は260℃におけるせん断接着力とした。
【0157】
(4)露光後の100℃における弾性率
接着フィルムを35mm×10mmの大きさに切断し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離した露光後の接着フィルムを試験片として、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」を用いて、昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜200℃の条件で動的粘弾性を測定した。この動的粘弾性測定から100℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0158】
(5)加熱硬化後の260℃における弾性率
接着フィルムを35mm×10mmの大きさに切断し、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離してから、接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させた。硬化された接着フィルムを試験片として、レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」を用いて、昇温速度:5℃/min、周波数:1Hz、測定温度:−50℃〜300℃の条件で動的粘弾性を測定した。この動的粘弾性測定から260℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0159】
(6)5%質量減少温度
接着フィルムに対して、高精度平行露光機(オーク製作所)を用いて露光量:1000mJ/cm2の条件でPETフイルム側から紫外線を照射した。PETフイルムをはく離してから、接着フィルムを160℃のオーブン中で3時間の加熱により硬化させた。硬化された接着フィルムを乳鉢で細かく砕いて得た粉末を試料として、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR 6300」を用いて、昇温速度:10℃/分、空気流量:80mL/分、測定温度:40℃〜400℃の条件で熱重量分析を行った。この熱重量分析から、質量減少率が5%となる温度(5%質量減少温度)を求めた。
【0160】
表3に示すように、実施例の接着フィルムは、パターン形成性及び低温貼り付け性のいずれもが優れていた。また、実施例の接着フィルムは露光後の圧着によっても高い接着力を示しており、露光後の再接着性の点でも優れていた。一方、表4に示すように、比較例の接着フィルムはパターン形成性、低温貼り付け性及び再接着性のいずれかの点で十分なものではなかった。
【符号の説明】
【0161】
1…接着フィルム(接着剤層)、1a,1b…接着剤パターン、3…基材、5…半導体ウェハ、7…有効画素領域、9…カバーガラス、10…接着シート、15…半導体素子搭載用支持基材、20…接着剤層付半導体ウェハ、30a,30b…半導体装置、50a,50b…CCDカメラモジュール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる、主鎖中にイミド骨格を有する樹脂と、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する接着フィルムであって、
前記ジアミンが、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含み、
当該接着フィルムを被着体上に貼り付け、前記接着フィルムを露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド2.38%水溶液を用いて現像することにより接着剤パターンが形成され、前記接着剤パターンを介して前記被着体に他の被着体を接着することが可能である、接着フィルム。
【化1】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。)
【請求項2】
当該接着フィルムを介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られる、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記主鎖中にイミド骨格を有する樹脂がカルボキシル基を有する、請求項1又は2に記載の接着フィルム。
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られる、主鎖中にイミド骨格を有する樹脂と、放射線重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する接着フィルムであって、
前記ジアミンが、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンをジアミン全体の10〜90モル%含み、
当該接着フィルムを被着体上に貼り付け、前記接着フィルムを露光した後、テトラメチルアンモニウムハイドライド2.38%水溶液を用いて現像することにより接着剤パターンが形成され、前記接着剤パターンを介して前記被着体に他の被着体を接着することが可能である、接着フィルム。
【化1】
(式中、Q1、Q2及びQ3は各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、n1は1〜80の整数を示す。)
【請求項2】
当該接着フィルムを介してシリコンチップをガラス基板に接着したときに、25℃において5MPa以上のせん断接着力が得られる、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記主鎖中にイミド骨格を有する樹脂がカルボキシル基を有する、請求項1又は2に記載の接着フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−40339(P2013−40339A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211171(P2012−211171)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2009−168978(P2009−168978)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2009−168978(P2009−168978)の分割
【原出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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