説明

接着剤付きウエハ、接着剤組成物及び接着剤付きウエハの製造方法

【課題】印刷法で平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を付設でき、接着性に優れる接着剤付きウエハ、接着剤組成物及び接着剤付きウエハの製造方法を提供する。
【解決手段】 レベリング作用を有する表面調整剤を含む接着剤組成物を用いて、半導体ウエハの表面に、平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を印刷法により付設したことを特徴とする接着剤付きウエハ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付きウエハ、接着剤組成物及び接着剤付きウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材の接合には銀ペーストが主に使用されていた。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化・細密化が要求されるようになってきている。こうした要求に対して、銀ペーストでは所望の位置に接着剤を付設することができるものの、樹脂のはみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより前記要求に対処しきれなくなってきている。
【0003】
そのため、前記要求に対処するべく、近年、シート状の接着剤である接着シートが使用されるようになってきた。この接着シートは個片貼付け方式、あるいはウエハ裏面貼付け方式において使用されており、銀ペーストに比べ接着剤層の膜厚の制御性に優れる。前者の個片貼付け方式の接着シートを用いて半導体装置を製造する場合、リール状の接着シートをカッティング、あるいはパンチングによって個片に切り出した後、その個片を所望の貼付け位置に接着し前記接着シート位置にダイシング工程によって個片化された半導体素子を接合して、その後必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程などを経ることによって半導体装置が得られることとなる。
【0004】
しかし、前記個片貼付け方式の接着シートを用いるためには、接着シートを切り出して所望の位置に接着する専用の組み立て装置が必要であることから、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、後者のウエハ裏面貼付け方式の接着シートを用いて半導体装置を製造する場合、まず半導体ウエハの裏面に接着シートを貼付け、さらに接着シートの他面にダイシングテープを貼り合わせる。その後、前記ウエハからダイシングによって半導体素子を個片化し、個片化した接着シート付きウエハをピックアップし、それを所望の位置に接合する。その後の加熱、硬化、ワイヤボンドなどの工程を経ることにより、半導体装置が得られることとなる(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの方法は上記の課題を解決しているが、半導体ウエハ全面に接着シートを貼り合わせる工程をとるため、任意の場所のみに接着シートを付設することは難しかった。また、すでに基板などに実装済みのウエハの上に接着シートを貼り付けることは困難であった。さらに、ウエハと接着シートをダイシングにより同時に切断するため、ウエハにクラックが生じやすいなどの課題があった。特に厚さ50μm以下の極薄ウエハでは、クラックの発生が著しく、信頼性を低下させるなどの問題になっていた。また、接着シートを同時に切断するためには、切断速度を遅くする必要があり、コスト上昇を招いていた。
【0006】
一方、ウエハの切断方法として、ウエハを完全に切断せずに、折り目となる溝を加工する方式であるハーフダイシング(半切断)、レーザ照射によりウエハ内部に選択的に改質層を形成することで、容易に切断することができる方法であるレーザ加工法(ステルスダイシング)などの技術(特許文献4、特許文献5参照)は、特にウエハの厚さが薄い場合にチッピング不良を低減する効果があるが、これらの切断方法では、接着シートを同時に切断することができないため、上記ウエハ裏面貼付け方式をとることはできなかった。以上の点から、接着シートをダイシングテープ上に付設し、これをウエハに貼り付ける方法はウエハへの貼り付け工程が一回であり、接着シートも同時に切断できるという利点を有するが、ダイシングの効率が低い、半切断の手法を用いることができないなどの課題があった。
【0007】
また、基材フィルム上に接着剤を付設した接着層を有する接着シートで、接着剤層の所定位置に溝が形成されている接着シートが提案されている(特許文献6参照)。これは接着シートの溝とウエハの切断予定の箇所あるいは切断済みの箇所を位置あわせすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−226796号公報
【特許文献2】特開2002−158276号公報
【特許文献3】特開平2−32181号公報
【特許文献4】特開2002−192367号公報
【特許文献5】特開2003−1457号公報
【特許文献6】特開2004−266163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、チップ貼り合わせ時にボイドの発生を低減し、広い接着面を有する接着性に優れた接着剤付きウエハを提供することである。また、本発明の課題は、印刷法でウエハの表面に平坦状又は上に凸状の半球状の接着層を形成できる接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(1)レベリング作用を有する表面調整剤を含む接着剤組成物を用いて、半導体ウエハの表面に、平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を印刷法により付設してなる接着剤付きウエハに関する。
【0011】
また、本発明は、(2)前記半導体ウエハの所定位置に接着剤層を付設してなる前記(1)記載の接着剤付きウエハに関する。
【0012】
また、本発明は、(3)前記印刷法が、有版印刷法である前記(1)または(2)に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0013】
また、本発明は、(4)前記印刷法が、無版印刷法である前記(1)または(2)に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0014】
また、本発明は、(5)前記印刷法が、インクジェット印刷法である前記(1)または(2)に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0015】
また、本発明は、(6)前記半導体ウエハは、切断されたウエハ又は切断予定のウエハである前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0016】
また、本発明は、(7)前記半導体ウエハの切断箇所又は切断予定箇所と、接着剤層の付設箇所とが重ならないようにウエハの表面に接着剤層を付設してなる前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0017】
また、本発明は、(8)前記半導体ウエハの切断予定箇所は、ハーフダイシング又はステルスダイシングの予備加工がなされることを特徴とする前記(7)記載の接着剤付きウエハ。
【0018】
また、本発明は、(9)接着剤層の厚みが0.5μm以上かつ20μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の接着剤付きウエハに関する。
【0019】
また、本発明は、(10)前記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の接着剤付きウエハに使用される接着剤組成物であって、絶縁性樹脂及びレベリング作用を有する表面調整剤を含み、25℃での粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする接着剤組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、(11)25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満である溶剤を含む、前記(10)に記載の接着剤組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、(12)表面張力が20.0mN/m〜44.0mN/mであることを特徴とする前記(10)又は(11)に記載の接着剤組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、(13)前記絶縁性樹脂が、(a)環球式で測定した軟化点が50℃以上の室温で固体状のエポキシ樹脂と(b)水酸基当量100g/eq以上のフェノール樹脂を含む、前記(10)〜(12)のいずれか一項に記載の接着剤組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、(14)絶縁性樹脂が、放射線が照射されることによって硬化する樹脂であることを特徴とする、前記(10)〜(13)のいずれか一項に記載の接着剤組成物に関する。
【0024】
また、本発明は、(15)半導体ウエハの表面に接着剤層が付設されてなる接着剤付きウエハの製造方法であって、
前記(10)〜(14)のいずれか一項に記載の接着剤組成物を、前記半導体ウエハの表面上の所定の位置に印刷法により付設する工程と、
当該所定の位置に付設した前記接着剤組成物から溶剤を揮発させて接着剤層を形成する工程とを備える接着剤付きウエハの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、印刷法でウエハの表面に平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を形成できる接着剤組成物を提供することが可能となり、それを用いて印刷法でウエハの表面に平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を付設することにより、チップ貼り合わせ時にボイドの発生を低減し、広い接着面を有する接着性に優れた接着剤付きウエハを提供することができる。また、本発明によれば、印刷法によりウエハの切断前後や実装前後にかかわらず、所望の位置に接着剤層を付設できることから、工程の簡略化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】接着剤層の平坦性を求めるための半導体ウエハ上に付設した接着剤層の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の接着剤付き半導体ウエハにおいては、印刷法を用いてウエハの切断予定箇所を避けて接着剤層を付設できるため、ダイシング時に接着剤を切断する必要がなく、ダイシングの速度を速くすることができる。また、予めダイシングしたウエハの切断箇所と、接着剤層の付設箇所とが重ならないようにウエハの表面に接着剤層を付設することで、所定チップごとに接着剤が切断された状態にあるため、クラックが無い接着剤付き半導体ウエハを得ることができる。またインクジェット印刷法を使用すれば、すでに基材上などに実装済みの半導体ウエハの表面にも接着剤層を付設することができ、実装工程の自由度が高くなる。
【0028】
本発明の接着剤付きウエハは、レベリング作用を有する表面調整剤を含む接着剤組成物を用いて、半導体ウエハの表面に、平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を印刷法により付設したことを特徴とする。
【0029】
本発明における半導体ウエハは、特に限定されず、切断されたウエハであっても切断予定のウエハであってもよく、例えば、ダイシング前のウエハ、ダイシング後のウエハ、個片化後のウエハ、さらには個片化後に基板等に実装したウエハなどいずれの状態のウエハも対象となる。また、ウエハは電気回路が加工されたウエハであっても、電気的回路が加工されていないダミーウエハであってもよい。
【0030】
本発明の接着剤付きウエハにおける接着剤層は、印刷法により半導体ウエハの表面に付設されたものである。印刷法は、特に限定されず、有版印刷法でも無版印刷法でもよく、例えば、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、ディスペンサー印刷法、インクジェット印刷法などが例示される。これらのなかでも、スクリーンなどの型が不必要で、半導体ウエハに直接接することなく、精度よく接着剤層を付設できる点でインクジェット印刷法が好ましい。特に、半導体装置の薄型化の要求から、0.5〜20μmの範囲内の極薄の接着剤層を付設する場合、半導体ウエハの所定位置に少量の接着剤層を精度良く付設でき、さらに個片化したウエハの表面にも印刷できる点においても、インクジェット法が好ましい。
【0031】
本発明の接着剤付きウエハにおける接着剤層の厚みは、特に制限はないが、好ましくは0.1〜250μmである。前記厚みを0.1μm以上にすることにより応力緩和効果が良好になり、250μm以下にすることにより経済的であり、半導体装置の薄型化の要求に対応しやすくなる。特に、半導体装置の薄型化の要求から、前記接着剤層の厚みは、より好ましくは0.5〜20μmである。
【0032】
本発明の接着剤付きウエハにおける接着剤層は、半導体ウエハの所定位置に付設してなるものであり、当該接着剤層の付設箇所は、半導体ウエハの切断箇所又は切断予定箇所と重ならないことが好ましい。半導体ウエハの切断箇所と、接着剤層の付設箇所とが重ならないようにすることにより、チップ毎に接着剤が切断された状態となり、クラックが無い接着剤付きウエハを得られ易くなる。また、半導体ウエハの切断予定箇所と、接着剤層の付設箇所とが重ならないようにすることにより、ダイシング時に硬度の異なる材料、すなわちウエハと接着剤を同時に切断することが避けられるため、チッピング等の歩留まり低下を抑制しやすくなる。当該半導体ウエハの切断予定箇所は、切断しやすくする為にハーフダイシング又はステルスダイシングにより切断前に予備加工がなされることが好ましい。
【0033】
本発明の接着剤付きウエハにおける接着剤層は、半硬化の状態で半導体ウエハの表面に平坦状または上に凸の半球状に付設されており、それによってウエハ貼付け時にボイドの発生を低減でき、広い接着面積を確保して優れた接着性を発揮できる。接着剤層が平坦状または上に凸の半球状に付設されていることで、ウエハ貼り付け時に圧着により、接着剤層を構成する接着剤組成物が中央から端部へ流動し、空気の巻き込みを抑制しボイドの発生を低減することができる。これに対し、接着剤層の表面が凹凸状であったり、枠状化している場合は、ウエハ貼り付け時に凹部に存在する空気を逃すことができ難いため、ボイドが発生し接着面積が狭くなり接着性に劣ってしまう。
【0034】
接着剤層をウエハの表面に平坦状または上に凸の半球状に付設するには、接着剤組成物の溶剤揮発状態を均一化すればよい。本発明においては、レベリング作用を有する表面調整剤を含む接着剤組成物を用いることで、溶剤の揮発状態を均一化でき、接着剤層の表面張力の均一化を計れ、平坦状または上に凸の半球状の接着剤層を付設することができる。ここで、平坦状とは、平坦もしくは図1に示すようにわずかな起伏を有する概平坦である状態を含む。平坦性は、例えば、以下の式(1)の値で判断することができる(図1参照)。
【0035】
[(最大膜厚−最小膜厚)/設定膜厚×100] 式(1)
これによれば、接着剤層の形状が平坦であるほど式(1)の値が小さくなるといえる。本発明においては、前記式(1)の値が24以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。前記値を24以下にすることにより、ウエハ貼り付け時の圧着による空気の巻き込みを抑制し、ボイドの発生を低減しやすくなる。
【0036】
また、接着剤層の形状が完全に凸状もしくは完全に平坦状の場合は、最小膜厚が存在しないため、最大膜厚と最小膜厚が等しいとし、式(1)の値を0とする。なお、式(1)において、最大膜厚とは個々の独立した接着剤層における最大の膜厚であり、最小膜厚とは個々の独立した接着剤層における最小の膜厚である。また、設定膜厚とは接着剤組成物の樹脂量と印刷面積より計算によって求めた膜厚である。
【0037】
本発明においては、半導体ウエハの切断箇所又は切断予定箇所と、接着剤層の付設箇所とが重ならないこと、すなわち、ウエハの切断箇所又は切断予定箇所は、接着剤層の不在部であることが好ましい。ウエハの切断箇所又は切断予定箇所に、接着剤層が付設していないことにより、ダイシング時のチッピングによる歩留まり低下を抑制しやすくなる。このような接着剤層の不在部は、ウエハの切断箇所又は切断予定箇所の近傍のみでもよいが、接着剤層の全面にわたり0.01mm〜1mm刻みの網目になるように接着剤層の不在部の溝を形成しても良い。この場合、ウエハの切断箇所又は切断予定箇所の近傍に常に接着剤層の不在部の溝が存在するため、ウエハの切断箇所又は切断予定箇所と接着剤層の不在部との位置合わせが不要であるか、高精度の位置合わせが不要になるため、製造コストの低減が図れる点で好ましい。なお、この場合、ウエハの下部の接着剤層にも不在部の溝が残るが、貼り付け時の圧着より接着剤層が流動し、溝は消失するため、信頼性の低下は起こらない。また、基板上に実装したウエハの上に、さらに個片化したウエハを積み重ねる場合は、積み重ねるウエハのサイズに併せて所望の位置に接着剤層を付設することで、材料のロスを削減することができる。
【0038】
本発明の接着剤付きウエハに使用される接着剤組成物は、レベリング作用を有する表面調整剤を含むものであり、かかる表面調整剤を含むことにより接着剤層の表面張力を均一化でき、ウエハの表面に平坦状又は上に凸の半球状の接着剤層を付設することができる。表面調整剤としては、レベリング作用を有するものであれば特に限定されず、シリコン系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、その他の表面調整剤などが挙げられる。市販されているシリコン系表面調整剤としては、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製商品名)、1711、1751N、1761、LS−001、LS−050(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、グラノール100、グラノール115、グラノール200、グラノール400、グラノール410、グラノール440、グラノール435、グラノール450、グラノール482グラノールB−1484、ポリフローATF−2(以上、TEGO社製商品名)などが挙げられる。市販されているアクリル系表面調整剤としては、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−392(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製商品名)、OX−880EF、OX−881、OX−883、OX−883HF、OX−70、OX−77EF、OX−60、OX−710、OX−720、OX−720EF、OX−750HF、LAP−10、LAP−20、LAP−30、1970、230、LF−1980、LF−1982、LF−1983、LF−1984、LF−1985、LHP−95、LHP−96(以上、楠本化成株式会社製、DISPARLONシリーズ)、ポリフローNo.3、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50E,ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.55、ポリフローNo.64、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.S、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D−50、ポリフローNo.95、ポリフローNo.300、ポリフローNo.460、ポリフローWS、ポリフローWS−30、ポリフローWS−314(以上、共栄社化学社製商品名)などが挙げられる。市販されているビニル系表面調整剤としては、LHP-90、LHP-91、(以上、楠本化成株式会社、DISPARLONシリーズ)などが挙げられる。また、その他の表面調整剤としては、フッソ変性ポリマーであるBYK-340、シリコン変性ポリマーであるBYK-SILCLEAN3700(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製商品名)などが挙げられる。これらのなかでも、表面張力差を最小限に抑え、表面張力の均一化効果が高いシリコン系表面調整剤が好ましい。また、前記表面調整剤は、1種を単独で使用してもよく又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記表面調整剤の配合量は、接着剤組成物の樹脂総質量に対して2.0〜0.05質量%であることが好ましく、1.0〜0.05質量%であることがより好ましく、0.5〜0.2質量%であることが特に好ましい。前記配合量を0.05質量%以上にすることにより、レベリング作用が良好になり接着剤層の表面に凹凸が発生するのを抑制し、2.0質量%以下にすることにより溶剤との相溶性が良好になり相分離や泡立ちを防ぐことができる。
【0040】
本発明において用いられる接着剤組成物は、絶縁性樹脂を含んでいることが好ましい。絶縁性樹脂は、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂であることが好ましく、熱硬化性樹脂であることが特に好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂及びその硬化剤等が例示される。これらは単独又は2種類以上を併用してもよい。前記熱硬化性樹脂のなかでも、耐熱性が高い点で、エポキシ樹脂及びその硬化剤が好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;多官能エポキシ樹脂;複素環含有エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂など一般に知られているものを適用することができる。
【0042】
このようなエポキシ樹脂としては、市販のものでは、例えば、エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1055、エピコート1004、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1003F、エピコート1004F(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、DER−330、DER−301、DER−361、DER−661、DER−662、DER−663U、DER−664、DER−664U、DER−667、DER−642U、DER−672U、DER−673MF、DER−668、DER−669(以上、ダウケミカル社製、商品名)、YD8125、YDF8170(以上、東都化成株式会社製、商品名)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;YDF−2004(東都化成株式会社製、商品名)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピコート152、エピコート154(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、EPPN−201(日本化薬株式会社製、商品名)、DEN−438(ダウケミカル社製、商品名)N−865(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピコート180S65(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイトECN1273、アラルダイトECN1280、アラルダイトECN1299(以上、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)、YDCN−701、YDCN−702、YDCN−703、YDCN−704(以上、東都化成株式会社製、商品名)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1020、EOCN−1025、EOCN−1027(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、ESCN−195X、ESCN−200L、ESCN−220(以上、住友化学株式会社製、商品名)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エポン1031S、エピコート1032H60、エピコート157S70(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、アラルダイト0163(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)、デナコールEX−611、デナコールEX−614、デナコールEX−614B、デナコールEX−622、デナコールEX−512、デナコールEX−521、デナコールEX−421、デナコールEX−411、デナコールEX−321(以上、ナガセ化成株式会社製、商品名)、EPPN501H、EPPN502H(以上、日本化薬株式会社製、商品名)等の多官能エポキシ樹脂;エピコート604(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、YH−434(東都化成株式会社製、商品名)、TETRAD−X、TETRAD−C(以上、三菱ガス化学株式会社製、商品名)、ELM−120(住友化学株式会社製、商品名)等のアミン型エポキシ樹脂;アラルダイトPT810(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名)等の複素環含有エポキシ樹脂;ERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206(以上、UCC社製、商品名)等の脂環式エポキシ樹脂;などを使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0043】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは5000未満、より好ましくは3000未満である。
【0044】
また、エポキシ樹脂は、耐熱性の観点から、環球式で測定した軟化点が50℃以上の室温(25℃)で固体状であるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。かかる環球式で測定した軟化点が50℃以上の室温で固体状であるエポキシ樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂全体の20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよく、エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0045】
本発明において使用する硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることが可能なものであれば、特に限定することなく使用可能である。このような硬化剤としては、例えば、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物およびこれらのハロゲン化物、ポリアミド、ポリスルフィド、三ふっ化ほう素などが挙げられる。多官能フェノール類の例としては、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフタレンジオール類、ビフェノール類、及びこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体などが挙げられる。また、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
【0046】
市販されている好ましいフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH4150、フェノライトVH4170(以上、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0047】
前記硬化剤としては、水酸基当量100g/eq以上のフェノール樹脂を含むことが好ましい。このようなフェノール樹脂としては、上記水酸基当量を有するものであれば特に制限は無いが、吸湿時の耐電食性に優れることから、ノボラック型あるいはレゾール型の樹脂を用いることが好ましい。
【0048】
上記したフェノール樹脂の具体例として、例えば、次記一般式(I)で示されるフェノール樹脂が挙げられる。
【化1】

【0049】
(一般式(I)中、Rは、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、環状アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、水酸基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、nは、1〜3の整数を表し、そしてmは、0〜50の整数を表す。)
このようなフェノール樹脂としては、一般式(I)に合致する限り、特に制限は無いが、耐湿性の観点から、85℃、85%RHの恒温恒湿槽に48時間投入後の吸水率が2質量%以下であることが好ましい。また、熱重量分析計(TGA)で測定した350℃での加熱重量減少率(昇温速度:5℃/min、雰囲気:窒素)が5質量%未満のものを使用することは、加熱加工時などにおいて揮発分が抑制されることで、耐熱性、耐湿性などの諸特性の信頼性が高くなり、また、加熱加工などの作業時の揮発分による機器の汚染を低減することができるために、好ましい。
【0050】
一般式(I)で示されるフェノール樹脂は、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物を、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができる。上記したようなフェノール樹脂としては、例えば、ミレックスXLC−シリーズ、同XLシリーズ(以上、三井化学株式会社製、商品名)などを挙げることができる。
【0051】
上記フェノール樹脂をエポキシ樹脂と組み合せて使用する場合の配合割合は、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比(エポキシ当量/水酸基当量)で、好ましくは0.70/0.30〜0.30/0.70、より好ましくは0.65/0.35〜0.35/0.65、さらにより好ましくは0.60/0.40〜0.40/0.60、特に好ましくは0.55/0.45〜0.45/0.55である。前記当量比が上記範囲を外れると、接着した際に硬化性に劣る可能性がある。このなかで、エポキシ樹脂及び分子量500以下である低分子量成分の含有量が20質量%以下で分子量1000以下である低分子量成分の含有量が30質量%以下のフェノール樹脂と溶剤を含み、25℃での粘度が50mPa・s以下であるものが、耐熱性とインクジェット法での製膜性が優れる点で好ましく、市販品としては、三井化学株式会社製商品名、XLC−LLが挙げられる。
【0052】
本発明で用いられる接着剤組成物は、上記の効果を阻害しない範囲において、硬化促進剤、触媒、添加剤、フィラー、カップリング剤、高分子量成分等を含んでも良い。高分子量成分としてはポリイミド、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明で用いられる接着剤組成物は、25℃での粘度が50mPa・s以下であることが好ましい。前記粘度が50mPa・s以下であることにより、印刷法による接着剤層の付設がし易くなる。特に、インクジェット印刷法を用いる場合は、印刷時の不吐出ノズルの発生や、ノズルの目詰まりを十分に防止することができ、良好な印刷性を得られやすくなる。より安定した吐出性を得られるという点では、前記粘度は、1〜30mPa・sであることがより好ましく、5〜15mPa・sであることが特に好ましい。
【0054】
接着剤組成物の粘度を前記範囲になるように調製する方法としては、溶剤の含有量を適宜調整すればよい。粘度の調整手法としては予め高固形分に調製したワニスに溶剤を加えて薄めながら粘度を測定し、上記粘度範囲となるように固形分を調整すればよい。ここで、粘度は、音叉型振動式、E型もしくはB型粘度計を用いて室温(25℃)で測定して求めることができる。
【0055】
本発明で用いられる接着剤組成物は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満である溶剤を含むことが好ましく、それにより、溶剤の揮発による接着剤組成物の粘度上昇を十分に抑えることができる。本発明で用いられる接着剤組成物は、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満である溶剤に加えて、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤を含んでいても良い。但し、この場合、25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤の配合割合は、溶剤全量を基準として、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。前記25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤の配合割合を60質量%以下にすることにより、良好な印刷性が得られやすく、特にインクジェット印刷法を用いる場合は、インクジェットヘッドのノズルから接着剤組成物の液滴を吐出しやすくなり、さらにインクジェットヘッドの目詰まりを防止しやすくなる。
【0056】
上記25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満の溶剤は、蒸気圧が前記の範囲にあり、且つ、樹脂成分を分散又は溶解させることが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチル−2−ピロリドン、アニソール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
また、上記25℃における蒸気圧が1.34×10Pa以上の溶剤は、蒸気圧が前記の範囲にあり、且つ、樹脂成分を分散又は溶解させることが可能なものであれば特に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
本発明で用いられる接着剤組成物中における溶剤の含有割合については、特に限定されず、接着剤組成物の25℃での粘度が50mPa・s以下となるように適宜調整することが好ましい。
【0059】
本発明で用いられる接着剤組成物の表面張力は、良好な印刷性を得る観点から、20.0mN/m〜44.0mN/mであることが好ましく、21.0mN/m〜27.0mN/mであることがより好ましい。前記表面張力が20.0mN/m未満又は44.0mN/mを越える場合、インクジェット印刷法を用いる場合は吐出性が損なわれる可能性がある。接着剤組成物の表面張力を前記範囲に調整する方法として、レベリング作用を有する表面調整剤の配合量を適宜選択すればよい。
【0060】
本発明の接着剤付きウエハの製造方法は、半導体ウエハの表面に接着剤層が付設されてなる接着剤付きウエハの製造方法であって、本発明の接着剤組成物を、前記半導体ウエハの表面上の所定の位置に印刷法により付設する工程と、当該所定の位置に付設した前記接着剤組成物から溶剤を揮発させて接着剤層を形成する工程とを備える方法である。溶剤は加熱乾燥などの乾燥方法によって接着剤組成物から揮発させ、接着剤をBステージ化することが好ましい。
【0061】
半導体ウエハとして切断予定のウエハを用いた場合には、接着剤付きウエハを所定の大きさに切断することにより、接着剤付き半導体素子を得ることができる。ウエハを切断する方法としては、ダイヤモンドソーによる切断、レーザ光による切断などが挙げられるが、切断する前にハーフダイシングやステルスダイシングなどの予備加工を施し、切断しやすくしておいても良い。また、予めハーフダイシングした後にバックグラインド工程でダイシングしていない厚さ部分を除去することで、個片化する先ダイシングプロセス(文献:Electronic Journal 2005年11月号等)を利用する方法も挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例を用いてより詳細に説明する。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(接着剤組成物の作製)
(実施例1)
エポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YDCN−703」、エポキシ当量210、軟化点70℃)33.3質量部、硬化剤としてフェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名「XLC−LL」、水酸基当量174)28.4質量部、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「キュアゾール2PZ−CN」)0.1質量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−189」)0.1質量部、及び、γ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−1160」)0.3質量部、表面調整剤として(楠本化成株式会社、商品名「ディスパロン1711」)0.3質量部からなる組成物に、樹脂固形分が23質量%となるように、γ−ブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)を加えて攪拌混合した後に真空脱気し、接着剤組成物を得た。
【0064】
前記接着剤組成物の粘度を小型振動式粘度計(株式会社エー・アンド・ディー社製、商品名「SV−10」)を用いて25℃で測定したところ、11.7mPa・sであった。また、前記接着剤組成物の表面張力を表面張力試験機(協和界面化学社製、商品名「CBVP−Z」)で測定したところ25.6mN/mであった。
【0065】
上記で得られた接着剤組成物0.5mgをインクジェット装置(マイクロジェット社製、商品名「Nano Printer 1000」)で吐出し、ブレードダイシングにより40.0mm角に個片切断した5インチシリコンウエハの表面に付設し、接着剤付きウエハを作製した。なお、インクジェット印刷の条件は、約50plの液滴量で液滴飛翔速度が7.5m/sなるように設定した。シリコンウエハの表面に付設した接着剤層の大きさは、5.0mm角四方で、精密表面形状測定装置(Ambios社製、商品名「XP−2」)を用いて印刷膜の断面を測定したところ接着剤層の厚さは2.6μmであった。また、ダイシングによる切断部から3mm内側に接着剤層が付設するよう印刷した。接着剤層の平坦性を前述の式(1)により求めたところ0であり、凸状であった。
【0066】
(実施例2)
エポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名「YDCN−703」、エポキシ当量210、軟化点70℃)33.3質量部、硬化剤としてフェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名「XLC−LL」、水酸基当量174)28.4質量部、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名「キュアゾール2PZ−CN」)0.3質量部、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−189」)0.1質量部、及び、γ―ウレイドプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名「NUC A−1160」)0.3質量部、表面調整剤として(ビックケミー・ジャパン株式会社製商品名「BYK310」)0.3質量部からなる組成物に、樹脂固形分が23質量%となるように、γ−ブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)、を加えて攪拌混合した後に真空脱気し、接着剤組成物を得た。
【0067】
前記接着剤組成物の粘度及び表面張力を実施例1と同様の方法で測定したところ、粘度が11.7mPa・s、表面張力が22.1mN/mであった。
【0068】
上記で得られた接着剤組成物を用いて、実施例1と同様に操作して接着剤付きウエハを作製した。接着剤層の厚さは2.6μm、接着剤層の平坦性は0であり、凸状であった。
【0069】
(実施例3)
エポキシ樹脂としてビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社、商品名「N−865」)42.0質量部、硬化剤としてビスフェノールAノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社、商品名「VH−4170」)23.0質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業株式会社製)0.04質量部、表面調整剤として(楠本化成株式会社製、商品名「ディスパロン1711」)0.3質量部からなる組成物に、樹脂固形分が22質量%となるように、γ−ブチロラクトン(25℃における蒸気圧2.3×10Pa)を加えて攪拌混合した後に真空脱気し、接着剤組成物を得た。
【0070】
前記接着剤組成物の粘度及び表面張力を実施例1と同様の方法で測定したところ、粘度が9.21mPa・s、表面張力が25.9mN/mであった。
【0071】
上記で得られた接着剤組成物を用いて、実施例1と同様に操作して接着剤付きウエハを作製した。接着剤層の厚さは2.6μm、接着剤層の平坦性は0であり、凸状であった。
【0072】
(比較例1)
表面調整剤を含まないこと以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を得たところ、粘度は10.9mPa・s、表面張力は44.0mN/mであった。
【0073】
上記で得られた接着剤組成物を用いて、実施例1と同様に操作して接着剤付きウエハを作製した。接着剤層の厚さは2.6μm、接着剤層の平坦性は144であり、印刷面端部、すなわち四辺部が高くなり、中央のへこんだ枠状であった。
【0074】
(接着剤付き半導体素子の作製)
実施例1〜3および比較例1で作製した接着剤付きウエハを120℃で3分間乾燥した後、接着剤付き半導体素子に分割し、さらに別の接着剤が付いてない半導体チップを2000番研磨面が、接着剤付き半導体素子の接着剤層に対向するようにしてマウンタで貼付した。この際の接着温度は120℃で2kgの荷重を4秒間印圧して行った。接着剤により半導体チップは接着剤付き半導体素子上に充分に粘着、保持されているので、半導体チップが脱落することはなかった。これをさらに180℃1時間硬化したものを試料として用い、ダイシェア強度、接着剤層の平坦性及び接着面積の評価を以下により行った。結果を表1に示す。
【0075】
(ダイシェア強度の測定)
上記により作製した接着剤付き半導体素子の接着剤層と半導体チップ裏面2000番研磨面のダイシェア強度は、万能型ボンドテスター(Dage社製、商品名「DAGE4000型」)を用いて測定し、8.2kg/チップ以上を「良好」、8.2kg/チップ未満を「不良」とした。
【0076】
(接着剤層の平坦性の評価)
精密表面形状測定装置(Ambios社製、商品名「XP−2」)を用いて上記により作製した接着剤付き半導体素子の接着剤層の断面を測定し、前述の式(1)により平坦性を求め、0以上24以下であるものを「良好」とし、24を超えるものを「不良」とした。
【0077】
(接着面積の評価)
ダイシェア強度測定後の半導体チップ剥離面の接着跡を目視で観察し、接着面積が80%以上のものを「良好」、80%未満のものを「不良」とした。
【0078】
(ボイドの発生)
実施例1〜3および比較例1で作製した接着剤付きウエハの接着剤層に接着剤層の面積と同じサイズのガラスチップを圧着し、目視で観察してボイドの発生の有無を観察した。1つ以上のボイドが認められたものを「有り」、ボイドが認められなかったものを「無し」とした。結果を表1に示す。
【表1】

【0079】
実施例1〜3の接着剤組成物を用いて作製した接着剤付き半導体ウエハは、接着剤層を平坦又は上に凸の半球状に付設することが出来、接着剤層が半導体チップ圧着時に広い接着面積を確保でき、ダイシェア強度にも優れる。これに対して、比較例1の接着剤組成物を用いて作製した接着剤付き半導体ウエハは、接着剤層を平坦又は上に凸の半球状に付設することが出来ず、接着剤層が半導体チップ圧着時に広い接着面積を確保できず、ボイドの発生も認められ、ダイシェア強度が低下し接着性に劣る。
【符号の説明】
【0080】
1 最小膜厚
2 最大膜厚
3 インク印刷量からの設定膜厚
4 インクジェット印刷により作製した接着剤層
5 設定膜形状
6 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの表面に接着剤層が付設されてなる接着剤付きウエハの前記接着層を形成するための接着剤組成物であって、絶縁性樹脂とレベリング作用を有する表面調整剤と溶剤とを含み、25℃での粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記溶剤の25℃における蒸気圧が1.34×10Pa未満であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
表面張力が20.0mN/m〜44.0mN/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂が、(a)環球式で測定した軟化点が50℃以上の室温で固体状のエポキシ樹脂と(b)水酸基当量100g/eq以上のフェノール樹脂を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記絶縁性樹脂が、放射線が照射されることによって硬化する樹脂であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
半導体ウエハの表面に接着剤層が付設されてなる接着剤付きウエハの製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物を、前記半導体ウエハの表面上の所定の位置に印刷法により付設する工程と、
当該所定の位置に付設した前記接着剤組成物から溶剤を揮発させて接着剤層を形成する工程とを備える接着剤付きウエハの製造方法。
【請求項7】
前記印刷法が、インクジェット印刷法である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記半導体ウエハは、切断されたウエハ又は切断予定のウエハである請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記半導体ウエハの切断箇所又は切断予定箇所と、前記接着剤層の付設箇所とが重ならないように前記半導体ウエハの表面に前記接着剤組成物を付設することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記半導体ウエハの切断予定箇所は、ハーフダイシング又はステルスダイシングの予備加工がなされることを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記接着剤層の厚みが0.5μm以上かつ20μm以下であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60597(P2013−60597A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209372(P2012−209372)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2008−189518(P2008−189518)の分割
【原出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】