説明

接着剤付きフィルムの製造方法

【課題】外観良好で、縁高の発生を抑制し、ロール状に巻き取った際の巻き姿の良好な接着剤付きフィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】フィルムに接着剤を塗布する接着剤付きフィルムの製造方法であって、少なくとも(1)フィルム上の、接着剤塗布幅の両端部に、接着剤を溶解しうる溶剤を5μm以下の厚みで塗布する工程、(2)前記溶剤を塗布したフィルムに接着剤を塗布する工程をこの順に有することを特徴とする接着剤付きフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付きフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤付きフィルムは、包装用途、パッケージ用途、フレキシブル回路材料用途など、様々な分野で使用されている。フレキシブル回路材料用途として、より具体的には、非熱可塑性フィルムに接着剤を塗布したカバーレイフィルム、非熱可塑性フィルムに接着剤を介して銅箔を積層したフレキシブル金属積層板などが挙げられる。
【0003】
カバーレイフィルムは、非熱可塑性フィルムにエポキシなどの接着剤を塗布したものであり、パターン加工した回路材料の保護フィルムとして用いられる。
【0004】
フレキシブル金属積層板には、両面フレキシブル金属積層板と片面フレキシブル金属積層板の2種類がある。また、非熱可塑性フィルムとエポキシなどの硬化性接着剤と金属箔で構成される3層フレキシブル金属積層板、非熱可塑性フィルムとポリイミドなどの熱可塑性接着剤と金属積層板で構成される2層フレキシブル金属積層板がある。一般的に、3層フレキシブル金属積層板、2層フレキシブル金属積層板ともに、非熱可塑性フィルムに接着剤を塗布した後、金属箔を貼り合わせて製造される。
【0005】
非熱可塑性フィルムとして、主にポリイミドフィルムが用いられる。ポリイミドフィルムは表面張力が高いため、ポリイミドフィルムに接着剤を塗布する際、塗布幅の端部で接着剤が盛り上がる現象(以下、縁高とよぶ)が生じる。縁高になった接着剤フィルムをロール状に巻くと、端部の縁高部分のみ厚みが厚くなり、ロールの巻崩れが発生する課題があった。
【0006】
これに対し、帯状支持体に塗布液を塗布するにあたり、塗布幅両端の塗布液が施されない部分の支持体面にあらかじめ溶剤を塗布する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。溶剤と接触する部分の表面張力の低下により端部の塗布厚を低下させることが可能となるものの、溶剤の流動性により、直線上に溶剤の壁を設けることができず、塗布液の内部まで希釈される場合があった。希釈された塗布液が支持体上を流れることにより、外観不良が生じる課題があった。
【特許文献1】特開昭61−257268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、外観良好で、縁高の発生を抑制し、ロール状に巻き取った際の巻き姿の良好な接着剤付きフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フィルムに接着剤を塗布する接着剤付きフィルムの製造方法であって、少なくとも(1)フィルム上の、接着剤塗布幅の両端部に、接着剤を溶解しうる溶剤を5μm以下の厚みで塗布する工程、(2)前記溶剤を塗布したフィルムに接着剤を塗布する工程をこの順に有することを特徴とする接着剤付きフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、外観良好で、縁高の発生を抑制し、ロール状に巻き取った際の巻き姿の良好な接着剤付きフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
接着剤付きフィルムは、フィルムおよび接着剤層を有する。フィルムは非熱可塑性フィルムが好ましく、本発明の製造方法によって得られる接着剤付きフィルムは、カバーレイフィルムやフレキシブル金属積層板に好適に用いられる。フレキシブル金属積層板は、両面フレキシブル金属積層板、片面フレキシブル金属積層板のいずれであってもよく、3層タイプ、2層タイプのいずれであってもよい。
【0011】
非熱可塑性フィルムとしては、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、液晶ポリマフィルムなどが挙げられる。中でも、寸法安定性の観点から、金属層と同等程度の線膨張係数を有するものが好ましい。特にポリイミドフィルムが好ましく、MD方向、TD方向における線膨張係数(50〜200℃)がいずれも5×10−6〜25×10−6cm/cm/℃であることがより好ましい。
【0012】
また、表面張力の高いフィルムを用いた場合に本発明の効果が顕著に奏されるため好ましい。例えば、50〜60mN/mのポリイミドフィルム、シリコーン等を表面に塗布したフィルムなどが挙げられる。
【0013】
また、非熱可塑性フィルムには、プラズマ処理、デスミア処理、サンドマット処理などの表面処理が施されていても構わない。
【0014】
接着剤層には、熱硬化性接着剤、熱可塑性接着剤のいずれを用いてもよい。
【0015】
熱硬化性接着剤としては、例えば、エポキシ系、フェノール系接着剤が挙げられる。エポキシ系接着剤は、エポキシ樹脂と後述の硬化剤を含有する。非ハロゲン難燃化のため、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂、特に非臭素系エポキシ樹脂を選択することができる。また、フェノール系接着剤は、フェノール樹脂と後述の硬化剤を含有する。
【0016】
硬化剤は特に限定されるものではない。例えば、芳香族ポリアミンである3,3’5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホンなどやフェノールノボラック樹脂、ジシアンジアミド、酸無水物などが挙げられる。
【0017】
また、前記熱硬化性接着剤には、硬化促進剤として、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸などの有機酸、ジシアンジアミドなどを含有してもよい。
【0018】
また、エラストマー成分として、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(以下NBR−Cという)などを含有してもよい。
【0019】
さらに、上記成分以外に必要に応じて微粒子状の無機粒子を含有してもよい。無機粒子としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カルシウム・アルミネート水和物などの金属水酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの金属酸化物が挙げられる。さらに、接着剤の特性を損なわない範囲で酸化防止剤、イオン捕捉剤、メラミンおよびその誘導体、シリコーン系化合物などの有機、無機成分を含有してもよい。
【0020】
熱可塑性接着剤としては、熱可塑性ポリイミド系、熱可塑性ポリエーテル系、熱可塑性ポリアミドイミド系、熱可塑性ポリエステルイミド系接着剤が挙げられる。
【0021】
一般的に、熱硬化性接着剤あるいは熱可塑性接着剤は塗布のために適正な粘度に希釈されて用いられる。粘度は塗布方式により適宜選択され、通常50〜10000mPa・secである。塗布方式は、ダイコーティング方式、グラビアコーティング方式、リバースコーティング方式、コンマコーティング方式などが挙げられる。接着剤を希釈する溶剤は、接着剤成分を溶解しうるものであればよいが、塗布時の揮発を防止する観点から、沸点が50℃以上であるものが好ましく、より好ましくは100℃以上である。具体的には、メチルイソブチルケトン、ベンジルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0022】
本発明の接着剤フィルムの製造方法は、(1)フィルム上の、接着剤塗布幅の両端部に、接着剤を溶解しうる溶剤を5μm以下の厚みで塗布する工程、(2)前記溶剤を塗布したフィルムに接着剤を塗布する工程をこの順に有する。接着剤塗布幅の両端部に溶剤を塗布することで、塗布する接着剤の縁高の発生を抑制する。通常、フィルムに塗布した接着剤の端部は、表面張力の関係で、空気層ではなく接着剤層に引っ張られ、縁高になる。本発明では、塗布幅端部にのみ、あらかじめ溶剤を塗布することにより、表面張力を下げ、縁高の発生を抑制することが可能になる。ただし、溶剤塗布量が多いと、塗布した接着剤が希釈され、歩留まりの低下や、粘度低下による塗料の流れ、塗布ムラ等の外観不良が生じる。そのため、本発明においては溶剤の塗布厚みを5μm以下とすることが重要である。好ましくは、1μm以下である。このように溶剤を薄く塗ることで、塗布した接着剤内部の接着剤濃度の低下を抑制でき、接着剤塗布幅の端部のみ接着剤がにじむ様な形になり、外観良好な縁高防止が可能になる。
【0023】
本発明において(1)の工程で使用する溶剤は、接着剤成分の溶解が可能であれば特に限定されないが、沸点が50℃以上であるものが好ましく、100℃以上がより好ましい。沸点が50℃以上であれば、溶剤塗布後、接着剤塗布までの間の溶剤の揮発を抑制することができ、本発明の効果が十分に発揮される。溶剤を塗布する幅は限定されないが、1mm以上が好ましく、20mm以下が好ましい。
【0024】
溶剤は連続的に塗布することが好ましい。連続的に塗布する手段として、ロール、刷毛、布などで塗布する方法が挙げられる。設備的に簡易であることと、5μm以下の厚みが容易であることを考慮すると、刷毛で塗布する手段が好ましい。刷毛の素材はアクリル、ナイロン、牛絹、牛毛、豚毛、羊毛、綿などが挙げられる。刷毛を用いる場合、刷毛をフィルムに接触させ、溶剤を塗布する。刷毛への溶剤の供給は、刷毛に溶剤を滴下・供給する方法、アルコールランプの様な毛細管現象で溶剤を供給する方法が挙げられるが限定しない。
【0025】
溶剤を塗布した後、溶剤を塗布したフィルム上に接着剤を塗布する。接着剤は、端部が溶剤塗布部になるように塗布すればよい。塗布後、接着剤に含まれる溶剤を除去してもよい。必要により、熱硬化またはイミド化のための加熱処理を行ってもよい。さらに金属やフィルムを貼り合わせ、フレキシブル金属積層板やカバーレイフィルムとして用いることもできる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例の説明に入る前に銅張積層板(CCL)の作製方法及び特性評価方法について述べる。
【0027】
A.CCLの作製方法
(a)接着剤塗料組成
水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、H−421)をトルエンに分散させ、サンドミル処理して水酸化アルミニウム分散液を作製した。この分散液に、NBR−C(日本合成ゴム(株)製、PNR−1H)、リン含有エポキシ樹脂(東都化成(株)製、FX−289BEK、リン含有率2wt%)、エポキシ樹脂(油化シェル(株)製、“エピコート”(Ep)834、エポキシ当量250)、硬化剤4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(住友化学(株)製、4,4’DDS)および硬化促進剤三フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ(株)製、BF3MEA)をそれぞれ以下の組成比となるように加え、30℃で撹拌し、以下の組成の溶剤を添加して混合し、濃度26重量%の接着剤溶液を作製した。
<接着剤組成>
H−421 :11重量部
PNR−1H :26重量部
FX−289BEK :18重量部
Ep834 :21重量部
4,4’DDS :3重量部
BF3MEA :0.1重量部
<溶剤組成>
トルエン : 7重量%
ベンジルアルコール :50重量%
メチルイソブチルケトン:30重量%
メタノール : 3重量%
ジメチルホルムアセトアミド:10重量%
(b)CCL作製方法
非熱可塑性フィルム500mm幅の両端部に溶剤を塗布した後、10秒後に前記組成の接着剤を塗布し、熱風オーブンで130℃×10秒、次いで180℃×20秒の乾燥を行い、接着剤付きフィルムを得た。なお、非熱可塑性フィルムとしては、“カプトン”(登録商標)50EN(東レ・デュポン(株)製)、“アピカル”(登録商標)25NPI(カネカ製)、“アピカル”(登録商標)FP(カネカ製)を使用した。得られた接着剤付きフィルムに、銅箔F2−WS 1/3oz(古河電工製)をラミネートして片面CCLを作製した。両面CCLとする場合は、前記のように得られた片面CCLの非熱可塑性フィルム面に同様の処理を行った。
【0028】
B.評価方法
上記方法で得られたCCLを10インチコアに600m巻き、中央部と両端部の直径の厚み差を測定した。また、溶剤により希釈された接着剤の流れによる銅箔表面の波打ち(外観不良)の発生した幅を測定した。
【0029】
(実施例1〜5)
表1に示す要非熱可塑性フィルムに、刷毛を用いて表1に示す溶剤を表1に示す条件で塗布し、CCLを作製した。評価結果を表1に示す。いずれも厚み差が1mm以下であり、製造上問題がなかった。
【0030】
(比較例1〜3)
非熱可塑性フィルムへの溶剤塗布条件を表1のとおりにしてCCLを作製した。評価結果を表1に示す。比較例1、2では、溶剤によって希釈された接着剤の流れに起因する外観不良が多量に生じ歩留まりが低下した。比較例3では、縁高が発生して厚み差が生じ、一部で巻き崩れが発生した。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムに接着剤を塗布する接着剤付きフィルムの製造方法であって、少なくとも(1)フィルム上の、接着剤塗布幅の両端部に、接着剤を溶解しうる溶剤を5μm以下の厚みで塗布する工程、(2)前記溶剤を塗布したフィルムに接着剤を塗布する工程をこの順に有することを特徴とする接着剤付きフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記接着剤を溶解しうる溶剤の沸点が50℃以上であることを特徴とする請求項1記載の接着剤付きフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記接着剤を溶解しうる溶剤を刷毛で塗布することを特徴とする請求項1記載の接着剤付きフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−174650(P2008−174650A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9869(P2007−9869)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】