説明

接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法

【課題】
本発明は、シワ・欠点のない金属積層板を作製するための残溶媒量の少ない接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】
耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸および溶媒を含有する溶液を塗布した後、前記溶媒の沸点以上の温度で処理する接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であって、前記処理の工程が耐熱性ポリイミドフィルムを加熱ロールに0.2〜10秒接触させる工程を有することを特徴とする接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、これに伴い、電子部品も小型化・軽量化の要請が高まっている。
【0003】
電気電子機器印刷回路基板に用いられる積層板の代表例として、フレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit、以下FPCと略す)が挙げられる。
【0004】
FPCに使用されるフレキシブル金属積層板である銅張りポリイミドフィルム(Copper Clad Laminate、以下CCLと略す)は、柔軟性を有する薄い絶縁性フィルムをベースとし、この表面に、接着材料を介して銅箔が加熱・圧着することにより貼り合わされたものである。
【0005】
かかる絶縁性フィルム、接着層、および銅箔からなるフレキシブルプリント配線板では、従来から、絶縁性フィルムとしてポリイミドフィルム等が広く用いられている。この理由は、ポリイミドが優れた耐熱性、電気特性などを有しているためである。
【0006】
また、加工性、接着性、電気特性、寸法安定性の要求から接着層にもポリイミド材料を用いた2層CCLが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、この接着層にポリイミド材料を用いる方法で得られるFPCは厳密には3層であるともいえるが、2つのポリイミド層を一体と見なして2層FPCとするもので擬似2層FPCとも呼ばれる。
【0007】
擬似2層FPCの製造方法としては、例えばラミネート法が挙げられる。ラミネート2層CCLの製造方法には、いくつかの方法があるが、例えば、真空プレス機等を用いてポリイミドフィルムと金属箔との間にポリイミド接着剤をサンドイッチ状に接合する方法、熱ロールラミネート装置を用いて連続的にラミネートする方法が提案されている。特に後者の方法は、長尺品を得ることができる点で有利である。
【0008】
接着剤にポリイミド層を用いた接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法としては、例えばポリイミドフィルムに接着剤をコーティングする方法あるいは共押し出し法などが挙げられる。
【0009】
ポリイミドフィルムに接着剤をコーティングする方法は、フィルムを搬送することによって連続的に生産することができる。この方法では接着剤をコーティングした後、乾燥して溶媒成分を除去する方法が挙げられるが、ラミネートにおいてCCLを作製するときに接着剤中の残溶媒量が多いとCCLのシワ・欠点の原因となる。上記問題を解決する方法として、フィルムの搬送速度を落とすことでフィルムの乾燥時間を長くする方法が挙げられるが、生産性が悪化してしまう。
【0010】
また、ポリイミドフィルムを加熱すると同時に、両面に交互に複数の搬送ロールが当接した状態で、ポリイミドフィルムを搬送する加熱搬送工程を有する製造方法がある(例えば、特許文献2参照)。この方法はポリイミドフィルムと金属箔をはり合わせた後に搬送ロールと接することでCCL全体を加熱するものであり、両面の熱履歴を無くすことで反りを小さくすることができる。しかしながらCCLを高温の大気環境に曝すことになるで金属箔表面が酸化してしまうものであった。また金属箔層とポリイミド層の熱収縮差によりシワ、欠点が発生してしまうものであった。
【0011】
また、接着剤付きポリイミドフィルムに金属箔を貼り合わせてロール状に巻き取られた金属積層体を、150〜250℃に加熱して溶剤を除去する方法がある(例えば、特許文献3参照)。しかしながらCCL作製時にシワ・欠点が生じてしまうものであり、さらにその後に別途加熱工程を経てもシワ・欠点が十分解消されないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−116443号公報
【特許文献2】特開2007−301947号公報
【特許文献3】特開平3−164241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的はポリイミドフィルムに接着剤をコーティングする方法において残溶媒量を低減することによって、その後ラミネートするときにシワ・欠点のないCCLを作製できるような接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸および溶媒を含有する溶液を塗布した後、加熱炉内で前記溶媒の沸点以上の温度で処理する接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であって、前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理中に耐熱性ポリイミドフィルムを加熱ロールに0.2〜10秒接触させる工程を有することを特徴とする接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であることによって、ラミネートするときにシワ・欠点等のない金属積層板を作製することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
好ましい実施態様は、前記加熱ロールの25℃での熱伝導率が16〜500W・m−1・K−1であることを特徴とする前記に記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0016】
好ましい実施態様は、前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理が、160〜180℃で60〜180秒間処理した後、さらに210〜230℃で60〜180秒間処理するものであることを特徴とする前記に記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0017】
好ましい実施態様は、ポリアミック酸を含有する溶液が、ポリアミック酸固形分を8〜12重量%、溶媒を88〜92重量%有することを特徴とする前記に記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により得られる接着剤付きポリイミドフィルムは残溶媒量が低減されており、該接着剤付きポリイミドフィルムを用いて作製した金属積層板はシワ・欠点のないものが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0020】
本発明で用いられる耐熱性ポリイミドフィルムは非熱可塑性ポリイミドを指す。非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化せず、接着性を示さないポリイミドまたは加熱しても軟化する前に熱分解が開始するポリイミドをいう。本発明ではガラス転移温度を有しないポリイミドをいう。ガラス転移温度は動的粘弾性測定装置(DMA)により測定した貯蔵弾性率の変曲点の値により求めることができる。
【0021】
また、該耐熱性ポリイミドフィルムは特に限定されず、例えば、市販されている公知のポリイミドフィルムを使用することが可能である。例えば、カネカ(株)製の“アピカル”(登録商標)、デュポン(株)製及び東レ・デュポン(株)製の“カプトン”(登録商標)、宇部興産(株)製の“ユーピレックス”(登録商標)が挙げられる。これらのフィルムは接着性向上等の理由のために表面に加水分解、コロナ放電、低温プラズマ、物理的粗面化等の表面処理を施すことができる。もちろんそのまま用いてもよい。
【0022】
また該耐熱性ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されない。一般的な厚みである5〜50μmまで好適に用いることが出来る。
【0023】
本発明に係る接着剤付きポリイミドフィルムは、耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸および溶媒を含有する溶液を塗布した後、加熱炉内で前記溶媒の沸点以上の温度で処理する接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であって、前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理中に耐熱性ポリイミドフィルムを加熱ロールに0.2〜10秒接触させる工程を有することを特徴とする接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であることによって、得ることが出来る。上記処理、工程によりポリアミック酸をイミド化することが出来、これが接着剤の層を形成する。温度はポリアミック酸の酸二無水物およびジアミン成分、さらに触媒の有無によって適宜選択することが出来、触媒を用いる場合、200〜230℃であればよい。
【0024】
またポリアミック酸をイミド化して得ることができるポリイミドは熱可塑性ポリイミドが望ましい。ここで熱可塑性ポリイミドは分解温度以下にガラス転移温度を有するものをいう。
【0025】
該耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸を含有した溶液を塗布する方法はグラビアコータ、コンマコータ、リバースコータ、スリットダイコータなど塗布材料の物性に合わせた様々な方法を用いることができる。
【0026】
該熱可塑性ポリイミドは、ガラス転移温度が200℃以上であることが好ましく、より好ましくは230℃以上である。熱可塑性ポリイミド層のガラス転移温度が200℃以上であれば、電子部品実装時の加熱により接着剤の軟化が抑制され、寸法変化率が向上する。
【0027】
接着剤の層としては、溶剤可溶型ポリイミド系組成物、シリコンジアミン含有ポリイミド系組成物等のポリイミド系接着剤組成物や、それらにエポキシ系組成物を混合させたハイブリッド系組成物などを含有していてもよい。さらに、各種特性の向上のために熱可塑性ポリイミド層を含有する接着剤の層には種々の添加剤が配合されていても構わない。
【0028】
該接着剤の層の厚みは、金属箔との接着性、寸法変化率が良好となるため、1〜4μmが好ましい。厚みが1μmより薄いと金属箔の表面に隙間無く熱可塑性ポリイミド層を充填させることが出来ず、接着力および半田耐熱性の低下となる。また4μmより厚いとコーティング後巻き取る工程によって発生したシワを解消することが出来ない。より好ましくは2〜3μmである。
【0029】
本発明にかかるポリアミック酸溶液の酸二無水物成分として用いることができるテトラカルボン酸二無水物は、特に限定されるものではない。例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシフタル酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)並びにそれらの類似物が挙げられる。
【0030】
本発明にかかるポリアミック酸溶液のジアミン成分として用いることができるジアミンは、特に限定されるものではない。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、メチルジシロキサン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4−(3−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、および2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、並びにそれらの類似物などが挙げられる。
【0031】
これらの酸およびジアミン成分は、それぞれ単独で、または任意の割合で混合して用いることができる。本発明の熱可塑性ポリイミドの原料として使用するジアミン成分と酸二無水物成分はこれらに限定されるわけではなく他の構造の原料を用いても構わない。また2−メチルイミダゾールなどの触媒を用いてもよい。
【0032】
ポリアミック酸は有機極性溶媒によって希釈し固形分濃度を調製することができる。溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミドを用いることが出来るが、加熱炉の温度以下の沸点であればその他のアミン系溶媒を用いても構わない。
【0033】
本発明に係る接着剤付きポリイミドフィルムは、耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸および溶媒を含有する溶液を塗布した後、加熱炉内で前記溶媒の沸点以上の温度で処理する接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であって、前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理中に耐熱性ポリイミドフィルムを加熱ロールに0.2〜10秒接触させる工程を有することを特徴とする接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であることによって、得ることが出来る。
【0034】
ここで上記処理工程においてフィルムが加熱ロールに接触すると、加熱ロールからの熱の伝導が増えるため、接着剤中の残溶媒量を減らすことが出来る。またフィルムの製品の残溶媒量を同程度に維持するとすればフィルムの搬送速度を増加させることが出来る。
【0035】
上記処理工程においてフィルムが加熱ロールに0.2〜10秒接触する工程を有する必要がある。接触時間が0.2秒より小さい場合、加熱ロールからの熱の伝達が不十分であり、接着剤中の残溶媒量が多くなってしまう。接触時間が10秒より大きい場合は10秒以下の場合と比較して残溶媒量に変化は見られない。より好ましくは2〜9秒である。
【0036】
ここで残溶媒量は接着剤付きポリイミドフィルム作製時に2.0%以下となることが好ましい。残溶媒量とCCL中の欠点の数とはある程度の相関関係があり、残溶媒量が多くなると欠点の数が増える。残溶媒量が2%より多い欠点の数は増えてしまう。より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
【0037】
またここで加熱ロールは、25℃での熱伝導率が16〜500W・m−1・K−1のロールであることが好ましい。例えば、鉄、ニッケル、チタン、クロム、銅、タンタル、ニオブ、タングステンレス鋼などの金属製のロールが挙げられる。これらのロールは単体で用いてもよいし酸化防止、傷防止等の観点から表面に適宜コーティングを施してもよい。加熱ロールの熱伝導率が17W・m−1・K−1以上であれば加熱ロールからの熱の伝達がより十分となり、接着剤中の残溶媒量がより少なくなる。また加熱ロールの熱伝導率が500W・m−1・K−1より大きい材質は例えばダイヤモンドやカーボンナノチューブが挙げられる。しかしながらこれらを用いてロールを作製することは容易ではないため、500W・m−1・K−1以下であることが好ましい。より好ましくは19〜300W・m−1・K−1である。
【0038】
本発明において前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理が、160〜180℃で60〜180秒間処理した後、さらに210〜230℃で60〜180秒間処理するものであることが好ましい。160℃より低い温度で60秒より短い時間処理した後、さらに210℃より低い温度で60秒より短い処理した場合、接着剤中の残溶媒量が多くなり、その後のラミネート工程でフィルムを熱する際、ラミネート装置を汚してしまう可能性がある。また180℃より高い温度で180秒より長い時間処理した後、さらに230℃より高い温度で180秒より長く処理すると接着剤中の残溶媒量は十分少なく、それ以上除去することは困難であり、むしろ長時間処理するフィルムの搬送速度を遅くすることになり、生産性を落とすことになってしまう。
【0039】
またポリアミック酸を含有する溶液が、ポリアミック酸固形分を8〜12重量%、溶媒を88〜92重量%有することが好ましい。ポリアミック酸固形分が8重量%より低いと加熱後の残溶媒量が多くなり、その後のラミネート工程でフィルムを熱する際、ラミネート装置を汚してしまう可能性がある。またポリアミック酸を含有した溶液の粘度が低くなり、コーティング面端部の厚みが高くなり、巻取り不良の原因となる可能性がある。固形分が12重量%より大きいとポリアミック酸を含有した溶液の粘度が高くフィルム境界面との濡れ角が高くなり、収縮時にTD方向に収縮する力が強くなってしまう。よってより好ましくは9〜11重量%である。
【0040】
巻き取る際の巻き取り速度は1.0〜8.0m/分であることが望ましい。速度が1.0m/分より小さいと生産性を落とすことになる。また速度が8.0m/分より大きいとコーティング面の熱履歴差によりカールする可能性がある。また速度に合わせて加熱炉を設けなければならず困難である。
【0041】
本発明で得られた接着剤付きポリイミドフィルムを用いてラミネートにより金属箔と貼り合わせれば良好なCCLを製造できる。
【0042】
ラミネート装置は熱ロールラミネート装置、またはダブルベルトプレス(DBP)等が挙げられるが特に限定することなく用いることができる。
【0043】
なお、本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0045】
(欠点の発生)
作製したCCLにシワ・欠点が発生するかどうか目視で確認を行った。巻取り時にシワ・欠点がなかったものを◎、5mm以下のシワ・欠点が発生したものを○、5mm以上のシワ・欠点が発生したものを×として評価を行った。
【0046】
(接着剤のイミド化率測定)
作製した巻取り後の接着剤付きポリイミドフィルムの接着剤のイミド化率をFT−IRで測定した。イミド化率は芳香環のピークとC−Nのピークをもとに算出した。
【0047】
(接着剤の残溶媒測定)
本発明で作製した巻取り後の接着剤付きポリイミドフィルムの残溶媒量についてガスクロマトグラフィー島津製作所TGA−50を用いて測定した。
【0048】
(合成例1:ポリアミック酸の合成1)
容量2000mlのガラス製4つ口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を1600g、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)を11.4g、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DAE)を82.9g加え、窒素雰囲気下で攪拌を行った。134gの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)および15gの2−メチルイミダゾールを186gのDMAcに溶解させた溶液を別途調整し、これを上記反応溶液に添加し攪拌を行った。粘度が1000cpsに達したところで攪拌をやめてポリアミック酸溶液を得た。ポリアミック酸の固形分は12.0重量%であった。
【0049】
(合成例2:ポリアミック酸の合成2)
容量2000mlのガラス製4つ口フラスコにDMAcを1320g、SiDAを11.4g、4,4’−DAEを82.9g加え、窒素雰囲気下で攪拌を行った。134gのBPDAおよび15gの2−メチルイミダゾールを186gのDMAcに溶解させた溶液を別途調整し、これを上記反応溶液に添加し攪拌を行った。粘度が2500cpsに達したところで攪拌をやめてポリアミック酸溶液を得た。ポリアミック酸の固形分は14.0重量%であった。
【0050】
(実施例1)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを5.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS304、熱伝導率16.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は1.06重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0051】
(実施例2)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および200℃で120秒加熱を行った。200℃の加熱炉内でフィルムを10秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS316、熱伝導率16.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は98%で残溶媒量は0.88重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0052】
(実施例3)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を12.5μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン50EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で40秒および220℃で40秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを7.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS329J、熱伝導率20.9W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は5.0m/minとした。接着剤のイミド化率は99%で残溶媒量は0.94重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0053】
(実施例4)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が7.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを8.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS329J、熱伝導率20.9W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は5.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は0.91重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0054】
(実施例5)
合成例2で得られたポリアミック酸を固形分濃度が13.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを9.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS329J、熱伝導率20.9W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は5.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は0.88重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0055】
(実施例6)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を12.5μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン50EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを0.3秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS310、熱伝導率14.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は99%で残溶媒量は1.46重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0056】
(実施例7)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を12.5μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン50EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを0.8秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS310、熱伝導率14.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は97%で残溶媒量は1.24重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0057】
(実施例8)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを2.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS310、熱伝導率14.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は1.11重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0058】
(実施例9)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを4.0秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はステンレス鋼ロール(SUS303、熱伝導率16.7W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は4.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は1.05重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観の欠点なく作製できた。
【0059】
(比較例1)
合成例1で得られたポリアミック酸を固形分濃度が10.0重量%になるまでDMAcで希釈した。リバースコータを用いて上記ポリアミック酸溶液を20μm厚の耐熱性ポリイミドフィルム(カプトン80EN,東レ・デュポン製)に乾燥後の接着剤厚みが2μmとなるように連続的に塗布を行った。塗布後のフィルムはリバースコータと併設して設置された加熱炉に通し、170℃で120秒および220℃で120秒加熱を行った。220℃の加熱炉内でフィルムを0.1秒間加熱ロールに接触させた。接触させたロールの材質はニッケル基合金ロール(ハステロイB、熱伝導率11.3W・m−1・K−1)であった。加熱後のフィルムは巻取り機によってロール状に巻き取り、接着剤付きポリイミドフィルムを得た。フィルムの搬送速度は5.0m/minとした。接着剤のイミド化率は100%で残溶媒量は2.32重量%であった。この接着剤付きポリイミドフィルムをもとに作製したCCLは外観上に5mm以下のシワが1つ、5mm以上のシワが1つ発生した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ポリイミドフィルムにポリアミック酸および溶媒を含有する溶液を塗布した後、加熱炉内で前記溶媒の沸点以上の温度で処理する接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法であって、前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理中に耐熱性ポリイミドフィルムを加熱ロールに0.2〜10秒接触させる工程を有することを特徴とする接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記加熱ロールの25℃での熱伝導率が16〜500W・m−1・K−1であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記加熱炉内における前記溶媒の沸点以上の温度での処理が、160〜180℃で60〜180秒間処理した後、さらに210〜230℃で60〜180秒間処理するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリアミック酸を含有する溶液が、ポリアミック酸固形分を8〜12重量%、溶媒を88〜92重量%有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤付きポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−75255(P2013−75255A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216288(P2011−216288)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】