説明

接着剤及びそれを用いた接続構造体

【課題】
低温かつ短時間で硬化して、回路部材を接続した場合であっても優れた接着強度を有する回路部材の接続構造体を得ることができ、かつ得られる接続構造体の高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができ、さらには取り扱い性にも優れる回路部材接続用接着剤、及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供すること。
【解決手段】
(a)熱可塑性樹脂、(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有してなる回路部材接続用接着剤であって、(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物がエポキシアクリレートを含み、(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物の含有量が(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、5〜33.3質量部である回路部材接続用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、及びそれを用いた回路部材の接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。このような用途に用いる接着剤に対しては、接着強度をはじめとして、耐熱性、高温高湿環境下(例えば、85℃/85%RH)における接続信頼性等多岐に渡る特性が要求されている。また、接着に使用される被着体としては、プリント配線板や、ポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、Si、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられている。よって、各被着体にあわせた接着剤の分子設計が必要である。
【0003】
従来から、上記半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、高接着強度でかつ高接続信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂との反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、及びエポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒を構成成分として含有するものが一般に用いられている。
【0004】
熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程では、170〜250℃、1〜3時間の硬化条件で硬化することにより、所望の接着強度を得ていた。
【0005】
しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼすおそれが出てきた。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、より低温でかつ短時間での硬化、換言すれば低温速硬化での接着が要求されている。この低温速硬化を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要があるが、活性化エネルギーの低さと室温付近での貯蔵安定性とを兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0006】
これに対して最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物とを併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化型接着剤は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間で硬化することが可能である(例えば、特許文献2参照)。また、エーテル結合によって柔軟性及び可とう性を付与したウレタンアクリレート化合物をラジカル重合性化合物として使用するラジカル硬化型接着剤も提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】特開2001−262079号公報
【特許文献4】特開2002−285128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2等に記載されている従来のラジカル硬化型接着剤は、硬化時の硬化収縮が大きいために、エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、接着強度に劣るという問題がある。
【0009】
また、特許文献3、4等に記載されているウレタンアクリレートを使用したラジカル硬化型接着剤は、分子内にエーテル結合を有しているため、硬化後の弾性率やガラス転移温度等の接着剤物性が低下し、さらに吸水率上昇や耐加水分解性が低下する問題がある。このため、半導体素子や液晶表示素子の接着剤に使用した場合に、高温高湿環境下(例えば、85℃/85%RH)における十分な接続信頼性が得られないという問題がある。
さらに、上述のウレタンアクリレートは室温で低粘度の液状であり、フィルム状接着剤の配合成分として使用した場合には、表面のベトツキの程度を示す表面タック力が増加し、取扱い性に問題があることが明らかになった。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、低温かつ短時間(例えば、160℃で10秒間)で硬化して、回路部材を接続した場合であっても優れた接着強度を有する回路部材の接続構造体を得ることができ、かつ得られる接続構造体の高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができ、さらには取り扱い性にも優れる接着剤、及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することを目的とする。
なお、本明細書中、「接続構造体の高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができる」とは、高温高湿環境下に長時間おかれた場合であっても、回路部材間の接着強度の低下と、相対する接続端子間における接続抵抗の上昇とを十分に抑制することができることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、(a)熱可塑性樹脂、(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物(以下、単に「(b)ラジカル重合性化合物」という。)、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有してなる接着剤を提供する。
【0012】
本発明の接着剤によれば、低温かつ短時間で硬化して、回路部材を接続した場合であっても優れた接着強度を有する回路部材の接続構造体を得ることができ、かつ得られる接続構造体の高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができ、さらには取り扱い性にも優れる。本発明の接着剤により、このような効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、(b)ラジカル重合性化合物が取り扱い温度(例えば、30℃以下)で固体として存在するために、液状成分が相対的に減少することが理由の1つとして考えられる。
【0013】
本発明の接着剤は、(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物をさらに含有してなることが好ましい。これにより、低温かつ短時間の硬化条件において、より優れた接着強度を得ることができる。
【0014】
(a)熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、高温高湿環境下で長時間おかれた場合の接着強度の低下をより高度に抑制することができる。
【0015】
本発明の接着剤は、(e)導電性粒子をさらに含有してなることが好ましい。これにより、接着剤に導電性又は異方導電性を付与することができるため、接着剤を、接続端子を有する回路部材同士の接続用途等により好適に使用することが可能となる。また、上記接着剤を介して電気的に接続した接続端子間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0016】
また本発明は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子とを対向して配置し、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子との間に、上記本発明の接着剤を介在させ、加熱加圧して、第一の接続端子と第二の接続端子とを電気的に接続させてなる、回路部材の接続構造体を提供する。
【0017】
かかる接続構造体は、上記本発明の接着剤を用いているため、回路部材の接着強度を十分に高くすることができ、かつ高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温かつ短時間で硬化して、回路部材を接続した場合であっても優れた接着強度を有する回路部材の接続構造体を得ることができ、かつ得られる接続構造体の高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができ、さらには取り扱い性にも優れる接着剤、及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の回路部材の接続構造体の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「融点」とは、示差走査熱量測定により得られた示差走査熱量測定曲線の発熱ピークにおける温度を意味する。また上記示差走査熱量測定は、例えば示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、Pyris DSC7)を用い、空気を流量10mL/minで流入し、25℃に保持した後、10℃/minで120℃まで昇温させる条件で行うことができる。
【0021】
本発明において用いる(a)熱可塑性樹脂としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。このようなポリマとしては、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエステルウレタン類、ポリビニルブチラール類、エチレン−ビニル酢酸共重合体などを用いることができる。これらは必要に応じて単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらポリマ中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。上記ポリマの分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜500,000が好ましく、10,000〜100,000がより好ましい。この値が、5,000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり、また500,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。
【0022】
本発明において用いる(b)ラジカル重合性化合物としては、スチレン誘導体、マレイミド誘導体や分子内にアクリロイル基またはメタクリロイル基(以後、(メタ)アクリロイル基と呼ぶ)を1つ以上有する化合物であり、かつ30℃以下で固体であるものであれば特に制限なく、公知のものを使用することができる。
ここで、「30℃以下で固体である」とは、上記化合物を単独で30℃以下で静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性が無く固体状態を示すこと、あるいは上記化合物について上述の示差走査熱量測定を行い、その融点が30℃を超えることを意味する。
【0023】
(b)ラジカル重合性化合物の具体例としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)−マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾール、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、ビス(4−ビニルフェニル)スルホン、2−t−ブトキシ−6−ビニルナフタレン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロシキメチル)アクリルアミド、下記一般式(A)〜(J)で示される化合物が挙げられる。これらの化合物の中で速硬化性の観点からは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、低温硬化性及び取扱い性の観点からは、融点が50〜100℃の化合物が好ましい。これらの化合物は、必要に応じて単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0024】
【化1】


(ここでlは、1〜10の整数を表す。)
【0025】
【化2】

【0026】
【化3】


(ここでR1は、水素またはメチル基、R2は、水素またはメチル基、mは、15〜30の整数を表す。)
【0027】
【化4】


(ここでR3は、水素またはメチル基、R4は、水素またはメチル基、nは、15〜30の整数を表す。)
【0028】
【化5】


(ここでR5は、水素またはメチル基を表す。)
【0029】
【化6】


(ここでR6は、水素またはメチル基、oは、1〜10の整数を表す。)
【0030】
【化7】


(ここでR7は、水素または下記一般式(a)、(b)で示す有機基、pは、1〜10の整数を表す。)
【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】


(ここでR8は水素または下記一般式(c)、(d)で示す有機基、qは、1〜10の整数を表す。)
【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】


(ここでR9は、水素またはメチル基を表す。)
【0037】
【化14】


(ここでR10は、水素またはメチル基を表す。)
【0038】
(b)ラジカル重合性化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部であり、より好ましくは5〜100質量部である。添加量が1質量部未満の場合、硬化後の耐熱性低下とともにフィルムの表面タック増加に伴って取扱い性が低下するおそれがある。また、200質量部を超える場合には、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が低下するとともに、硬化後の膜質が脆化して接着力が低下するおそれがある。本発明において、取扱い性の指標としては、25〜30℃における表面タック力を用いることができ、接着剤の取り取扱い性や被着体の仮固定性の点から、表面タック力が50gf以下であることが望ましい。
【0039】
本発明において用いる(c)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができるが、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1,000の過酸化物が好ましい。このような(c)ラジカル重合開始剤の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、あるいは2種以上の化合物を混合して用いることができる。
【0040】
また、本発明において用いる(c)ラジカル重合開始剤としては、150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、特に制限無く、公知の化合物を使用することができるが、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年)、p17〜p35に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が光照射に対する感度が高いためより好ましい。これらの化合物は、単独で用いてもよく、上記過酸化物やアゾ化合物と混合して用いてもよい。
【0041】
本発明の(c)ラジカル重合開始剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がさらに好ましい。ラジカル重合開始剤が0.1質量部未満の場合、硬化不足が懸念され、また、30質量部を超える場合には、放置安定性が低下するおそれがある。
【0042】
本発明において用いる(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物としては、特に制限無く公知のものを使用することができるが、ビニル基としてラジカル重合性に優れる(メタ)アクリロイル基を分子内に少なくとも一つ以上有するリン酸(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。このような化合物としては、下記一般式(K)〜(M)で示される化合物が挙げられる。
【0043】
【化15】


(ここでR11は、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基、R12は水素またはメチル基、r、sは独立に1〜8の整数を示す。)
【0044】
【化16】


(ここでR13は、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基、t、u、vは独立に1〜8の整数を示す。)
【0045】
【化17】


(ここでR14は、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基、R15は、水素またはメチル基、w、xは独立に1〜8の整数を示す。)
【0046】
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物の具体例としては、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル等が挙げられる。
【0047】
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物を添加する場合の、その添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜30質量部であり、より好ましくは0.1〜20質量部である。添加量が0.05質量部未満の場合、高接着強度が得られにくく、また、30質量部を超える場合には、硬化後の接着剤の物性低下が著しく、信頼性が低下するおそれがある。
【0048】
本発明に用いる(e)導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。導電性粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。またこれらの導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独で、あるいは導電性粒子と混合して用いることができる。
【0049】
この(e)導電性粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。
(e)導電性粒子の添加量は、特に制限は受けないが、接着剤組成物の全体積を基準として、0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0050】
本発明の接着剤は、橋架け率の向上や硬化物の靭性確保を目的に、30℃以下で固体である上記ラジカル重合性化合物とともに、多官能(メタ)アクリレート化合物を適宜添加してもよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(N)、(O)で示される化合物等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0051】
【化18】


(ここでR16は、水素またはメチル基、R17は、水素またはメチル基、yは、1〜8の整数、zは、1〜8の整数を表す。)
【0052】
【化19】


(ここでR18は、水素またはメチル基、R19は、水素またはメチル基、aは、1〜8の整数、bは、0〜8の整数を表す。)
【0053】
本発明の接着剤には、硬化速度の制御や貯蔵安定性をより向上させるために、適宜安定化剤を添加してもよい。このような安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができるが、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が好ましい。
【0054】
安定化剤を添加する場合の、その添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜30質量部であり、より好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が0.01質量部未満の場合、添加効果が著しく低下することが懸念され、また、30質量部を超える場合には、他の成分との相溶性が低下するおそれがある。
【0055】
本発明の接着剤には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤、尿素樹脂、メラミン樹脂などの接着助剤を適宜添加してもよい。接着助剤としては、下記一般式(P)で示される化合物が好ましく、単独で、あるいは2種以上の化合物を混合して用いることができる。
【0056】
【化20】


(ここでR20、R21、R22は独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、アリール基、R23は(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基、グリシジル基、cは1〜10の整数を示す。)
【0057】
本発明の接着剤には、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を添加してもよい。ゴム成分の具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトン、アクリルゴムが挙げられる。
【0058】
上記ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましく、さらに流動性向上の観点から、液状ゴムがより好ましい。
液状ゴムの具体例としては、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基またはモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量が10〜60%であるものが好ましい。これらの化合物は単独で、あるいは2種以上の化合物を混合して用いることができる。
【0059】
本発明の接着剤は、室温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発するおそれがあり、開放系での使用が制限される。また、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0060】
本発明の接着剤はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱い性等の点から一層便利である。
【0061】
上述の接着剤は加熱及び加圧を併用することにより、被着体を接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けず、例えば100〜250℃とすることができるが、硬化時の加熱による周辺部材への悪影響を十分に抑制するために、100〜180℃とすることが好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧の時間は、0.5秒〜120秒間とすることができるが、低コスト化の点から、0.5秒〜10秒とすることが好ましい。例えば、140〜200℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【0062】
本発明の接着剤は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、ダイボンディングフィルム、ダイボンディングペースト等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0063】
本発明の回路部材の接続構造体は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子とを対向して配置し、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子との間に、上述の接着剤を介在させ、加熱加圧して、第一の接続端子と第二の接続端子とを電気的に接続させてなる接続構造体である。
【0064】
図1は、本発明の回路部材の接続構造体の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の接続構造体は、相互に対向する第一の回路部材20及び第二の回路部材30を備えており、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。
【0065】
第一の回路部材20は、回路基板(第一の回路基板)21と、回路基板21の主面21a上に形成される回路電極(第一の回路電極)22とを備えている。なお、第一の回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0066】
一方、第二の回路部材30は、回路基板(第二の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第二の回路電極)32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0067】
第一及び第二の回路部材20,30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0068】
回路接続部材10は、上述の接着剤の硬化物からなるものである。この回路接続部材10は、樹脂11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する回路電極22と回路電極32との間のみならず、主面21a,31a同士の間にも配置されている。回路部材の接続構造においては、回路電極22,32が、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。即ち、導電性粒子7が回路電極22,32の双方に直接接触している。
【0069】
ここで、導電性粒子7は、先に説明した(e)導電性粒子であり、樹脂11は、上述の接着剤の硬化物である。
【0070】
この回路部材の接続構造においては、上述したように、対向する回路電極22と回路電極32とが導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、回路電極22,32間の接続抵抗が十分に低減される。従って、回路電極22,32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。なお、回路接続部材10が導電性粒子7を含有していない場合には、回路電極22と回路電極32とが直接接触することで、電気的に接続される。
【0071】
本実施形態の接続構造体の製造方法、すなわち回路部材20,30の接続方法は、例えば以下のとおりである。まず、回路部材20,30の間に、上述の接着剤を介在させる。このとき、回路電極22及び32が相互に対向するように、回路部材20,30を配置する。次に、回路部材20,30を介して接着剤を加熱しながら、それらの積層方向に加圧して、接着剤の硬化処理を施し回路接続部材10を形成する。硬化処理は、例えば上述の加熱温度、加圧圧力で行うことが可能であり、その方法は接着剤により適宜選択される。
【0072】
回路接続部材10は、上述の接着剤の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、かつ高温高湿環境下における接続信頼性の低下を十分に抑制することができる。
【0073】
なお、上述の実施形態においては、導電性粒子を含有する場合について説明したが、本発明の回路部材の接続構造体は、導電性粒子を含有していなくともよい。導電性粒子を含有しない場合には、相対向する電極同士が直接接触することにより電気的に接続される。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔ウレタン樹脂の合成〕
重量平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール450質量部と、平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール450質量部、1,4−ブチレングリコール100質量部とを、メチルエチルケトン4000質量部中で溶解し、ジフェニルメタンジイソシアネート390質量部を加えて70℃にて60分間反応させて、ウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定したところ、10万であった。
【0075】
(実施例2、3、5、6、8、9、参考例1、4、7、比較例1〜3)
熱可塑性樹脂として、上記ウレタン樹脂をメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒に溶解して固形分30重量%にした溶液と、メチルエチルケトンに固形分40重量%で溶解したフェノキシ樹脂(ZX−1356−2、東都化成株式会社製商品名)またはメチルエチルケトンとトルエンの混合溶媒に固形分40重量%で溶解したポリエステルウレタン樹脂(UR−1350、東洋紡績株式会社製商品名)とを併用して用いた。
ラジカル重合性化合物として、30℃で固体であるエポキシアクリレート(VR−60及びVR−90、昭和高分子株式会社製商品名)を単独で、もしくは、液状のラジカル重合性化合物であるイソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(M−215、東亜合成株式会社製商品名)、ウレタンアクリレート(UA6100、新中村化学株式会社製商品名)と併用して用いた。
酸性化合物として、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP−2M、共栄社株式会社製商品名)を用いた。
【0076】
ラジカル重合開始剤として、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日本油脂株式会社製商品名)を用いた。
またポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0077】
上述の成分を下記表1に示す固形重量比で配合し、さらに上記導電性粒子を1.5体積%配合分散させた。これを、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが18μmである、実施例2、3、5、6、8、9、参考例1、4、7、比較例1〜3のフィルム状接着剤を得た。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例2、3、5、6、8、9、参考例1、4、7、比較例1〜3のフィルム状接着剤の表面タック力を、タッキングテスタ(株式会社レスカ製、LT25A−500)(ベース温度30℃)を用いて、JISZ−0237に準じて測定した。
【0080】
〔接続抵抗、接着強度の測定〕
実施例2、3、5、6、8、9、参考例1、4、7、比較例1〜3のフィルム状接着剤を、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み12μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)との間に介在させた。これを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続し、接続体を作製した。
この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後(試験後)にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。
【0081】
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。以上のようにして行ったフィルム状接着剤の表面タック力、接続抵抗及び接着強度の測定の結果を下記表2に示した。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例2、3、5、6、8、9、参考例1、4、7で得られた接着剤組成物は、加熱温度160℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に168時間保持した後(試験後)で、約3Ω以下の良好な接続抵抗及び400N/m以上の良好な接着強度を示すことが明らかとなった。さらには、表面のベトツキの程度を示す表面タック力が低く、取扱い性に優れることが明らかとなった。
これらに対して、本発明における30℃で固体であるラジカル重合性化合物を使用しない比較例1では、表面タック力が高く取扱い性が悪いのに加えて接着強度が低いことが明らかとなった。また、比較例2、3では、良好な接続抵抗及び接着強度を示すものの、表面タック力が大きく、取扱い性に問題があることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0084】
7…導電性粒子、10…回路接続部材、11…樹脂、20,30…回路部材、21,31…回路基板、22,32…回路電極。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物、及び(c)ラジカル重合開始剤を含有してなる回路部材接続用接着剤であって、
(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物がエポキシアクリレートを含み、
(b)30℃以下で固体であるラジカル重合性化合物の含有量が(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、5〜33.3質量部である回路部材接続用接着剤。
【請求項2】
(d)分子内に少なくとも一つ以上のリン酸基を有するビニル化合物をさらに含有してなる、請求項1に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項3】
(a)熱可塑性樹脂が、ポリエステルウレタン樹脂を含む、請求項1または2に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項4】
(e)導電性粒子をさらに含有してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤。
【請求項5】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
前記第一の接続端子と前記第二の接続端子とを対向して配置し、
対向配置した前記第一の接続端子と前記第二の接続端子との間に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路部材接続用接着剤を介在させ、加熱加圧して、前記第一の接続端子と前記第二の接続端子とを電気的に接続させてなる、回路部材の接続構造体。


【図1】
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【公開番号】特開2013−7040(P2013−7040A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172964(P2012−172964)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2009−531210(P2009−531210)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】