説明

接着剤及びそれを用いた易剥離性フィルム

【課題】優れた低温ヒートシール性や安定した剥離強度を保持したまま、剥離時の紙製容器の毛羽立ちが無く、又、耐ブロッキング性能、帯電防止性能に優れた接着剤及びそれにより得られた易剥離性フィルムを提供する。
【解決手段】JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜18重量%の範囲であり、JIS K6924−1で測定したメルトマスフローレイトが5〜40g/10分の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、粘着付与剤樹脂(B)5〜20重量部、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sである低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)3〜10重量部からなる接着剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤に関し、特に容器に蓋材を接着させる接着剤に関し、更に詳しくは紙製容器に適した蓋材接着用の接着剤であり、優れた低温ヒートシール性や高いヒートシール強度を保持したまま、剥離時の紙製容器の毛羽立ちの発生がない接着剤及びそれにより得られた易剥離性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品包装や工業用部品の包装にはポリプロピレンやポリスチレンなどのプラスチック容器や、紙を主体とした容器が使用されており、その蓋材としては適度なシール強度を持ちかつ剥離時にはスムースな剥離性能を持ついわゆる易剥離性フィルムが要求されている。特に小さな電子部品を運搬するのに使用されるキャリヤーテープに用いられるカバーテープには、剥離時の剥離強度安定性が要求される。また紙を用いたキャリヤーテープの場合には剥離強度の安定性のみならず、剥離時の紙繊維の毛羽立ちが無いことが要求される。
【0003】
紙を用いたキャリヤーテープの場合、接着層が紙となるためカバーテープの接着剤として低密度ポリエチレンでも接着が可能である。しかし低密度ポリエチレンでは低温ヒートシール性が劣るため、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することも考えられる。この場合低温ヒートシール性が向上しても接着強度は不十分である。そこで低温ヒートシール性を向上させ、かつ接着強度を高くするためにエチレン−酢酸ビニル共重合体に石油炭化水素樹脂などの粘着付与剤を添加してカバーテープの接着剤として使用することが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。これは酢酸ビニル含有量6%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体を使用し、且つ粘着付与剤を10〜60部添加することにより剥離時の紙基材の毛羽立ちがなく、紙基材に挿入される小型電子部品の付着を抑えるものである。しかしながら、高速化が一段と進んだ状況では140℃以下の低温シール性を満足できるものではなかった。
【0004】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体に石油炭化水素樹脂などの粘着付与剤を多く添加した配合では、ヒートシール強度は改良されても、カバーテープに要求されAる重要な接着性能であるシール強度の温度依存性が少ないこと及び紙の毛羽立ちが無いことを満足することは不可能であった。更に、粘着付与剤添加量の増量により接着剤自体がブロッキングしやすくなり、巻物状態のカバーテープがブロッキングしたり、またキャリヤーテープに貼り合わせた後に内容物である電子部品がカバーテープに接着してしまうという不具合が生じることがあった。また別の重要な性能である帯電防止については、グリセリン脂肪酸エステルなどに代表される界面活性剤を練り込むことにより性能を付与することが一般的に行われている。しかしグリセリン脂肪酸エステルを単独で使用した場合、経時変化による帯電防止性能の低下が発生しやすく安定した帯電防止性能を持つカバーテープは得られていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−105260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ヒートシール強度、低温ヒートシール性、毛羽立ち防止を満足する接着剤およびその接着剤からなる層を接着剤層として基材と貼り合わせたことを特徴とする易剥離性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討した結果、特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体、粘着付与剤樹脂、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体を適量配合した接着剤を使用することにより、低温ヒートシール性やヒートシール強度、剥離時の紙製容器の毛羽立ちを大幅に改良し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜18重量%の範囲であり、JIS K6924−1で測定したメルトマスフローレイトが5〜40g/10分の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、粘着付与剤樹脂(B)5〜20重量部、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sである低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)3〜10重量部からなる接着剤、を要旨とするものである。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の接着剤を構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)は、公知の製造方法により得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であって、低温ヒートシール性や耐ブロッキング性能に優れたものとするため、JIS K 6924−1に準拠し測定した酢酸ビニル含有率が3〜18重量%の範囲にあるものであり、特に6〜15重量%であることが好ましい。酢酸ビニル含有率が3重量%未満の場合、低温ヒートシール性が劣るため好ましくなく、酢酸ビニル含有率が18重量%を超える場合はブロッキング性や帯電防止性能が悪くなるために好ましくない。低温ヒートシール性能や紙容器の毛羽立ち防止に優れたものとするには、JIS K 6924−1に準拠して温度190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレイトが5〜40g/10分の範囲にあるものであり、特に5〜30g/10分であることが好ましい。メルトマスフローレイトが5g/10分未満の場合は低温ヒートシール性、ヒートシール強度、紙容器の毛羽立ち防止が劣るために好ましくなく、メルトマスフローレイトが40g/10分を超える場合は成形安定性が悪く、ブロッキング強度が大きくなるために好ましくない。
【0011】
本発明の接着剤を構成する粘着付与剤樹脂(B)は、低温ヒートシール性を付与するものであれば良く、例えば脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、共重合系石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れ、透明性、低臭気性に優れた接着剤となることから脂環族系水添石油樹脂が特に好ましい。
【0012】
粘着付与剤樹脂(B)の配合量は、低温ヒートシール性とヒートシール強度に優れたものとするため、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、5〜20重量部の範囲にあるものであり、特に10〜20重量部であることが好ましい。5重量部未満の場合は、低温ヒートシール性とヒートシール強度が不十分であり、20重量部を超える場合は、剥離時の紙製容器に毛羽立ちが発生するために好ましくない。
【0013】
本発明の低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)は、公知の製造方法により得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)であって、接着強度の安定性を付与し剥離時の紙製容器の毛羽立ちを押さえるために、ブルックフィールド粘度計を用いて180度で測定した粘度が50〜1,000mPa・s、好ましくは100〜500mPa・sである。ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50mPa・s未満では粘度が低すぎるため配合物の成形安定性が劣るので好ましくなく、1,000mPa・sを超えると剥離時の紙製容器の毛羽立ち改良効果が低くなるため好ましくない。
【0014】
本発明の接着剤に帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤(D)をエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、0.1〜1重量部添加することが好ましい。帯電防止剤(D)としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール粗暴酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の非イオン界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が使用できる。特に帯電防止性能と耐ブロッキング性に優れることより、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用することが好ましい。グリセリン脂肪酸エステルは、一般式(I)
【0015】
【化1】

(I)
【0016】
で表され、RCOOHで表される脂肪酸とグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。式中、Rは一般に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が8〜22である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。該化合物としては、例えばラウリン酸モノグリセリド、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、リノール酸モノグリセリド等が挙げられる、これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該グリセリン脂肪酸エステルとして、商品名リケマールP−100、S−100(以上、理研ビタミン製)、レオドールMS−50(花王製)、モノグリD、M、I(以上、日本油脂製)等が市販されている。
【0017】
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般式(II)
【0018】
【化2】

(II)
【0019】
で表され、RCOOHで表される脂肪酸とグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。式中、Rは一般に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が8〜22である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。該化合物としては、例えばラウリン酸ジグリセリド、パルミチン酸ジグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、リノール酸ジグリセリド等のジグリセリン脂肪酸エステル類;ラウリン酸トリグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、オレイン酸トリグリセリド、リノール酸トリグリセリド等のトリグリセリン脂肪酸エステル類;ステアリン酸ヘキサグリセリド、オレイン酸ヘキサグリセリド、ステアリン酸ペンタグリセリド、オレイン酸ペンタグリセリド、ステアリン酸デカグリセリド、オレイン酸デカグリセリド等が挙げられる、これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、商品名リケマールL−71D、S−71D、O−71D、C−71D(以上、理研ビタミン製)、ユニグリGO−102、GL−106、GS−106(以上、日本油脂製)、サンソフトQ−18D、Q−18F、Q−17F、Q−18S、Q−17S、Q−12S、A−181C(以上、太陽化学製)等が市販されている。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、一般式(III)
O−(CH−CH−O)−H (III)
で表される。式中、Rは一般に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、アルキルフェニル基であり、nは酸化エチレンの重合度を示す。Rの炭素数が8〜22である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンべヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられ、それぞれ酸化エチレン重合度(n)は1〜50のものが例示される。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、商品名リケマールA−20,A−23,A−26、B−203,B−205(以上、理研ビタミン製)、ノニオン−K、ノニオン−S、ノニオン−E、ノニオン−NS、ノニオン−HS(以上、日本油脂製)等が市販されている。
【0021】
本発明に用いられる帯電防止剤(D)は、帯電防止性能と耐ブロッキング性に優れたものとするため、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、0.2〜1重量部添加することが好ましい。特に帯電防止剤(D)としては、(a)グリセリン脂肪酸エステルと(b)ポリグリセリン脂肪酸エステルを併用したもの、又は(a)グリセリン脂肪酸エステルと(b)ポリグリセリン脂肪酸エステルに更に(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを併用したものが帯電防止効果のみならず、易剥離性フィルム表面への帯電防止材のブリードによる白化現象を抑制することができるため、更に好ましい。
【0022】
本発明に用いられる脂肪酸アマイド(E)は、易剥離性フィルムを製造したときのスリップ性を付与するために0.05〜0.3重量部を配合することが望ましく、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等の脂肪酸アミドなどが単独または混合物として用いることができる。特に、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等の不飽和脂肪酸アマイドが、本接着剤のスリップ性のみならずブロッキング防止に効果が有ることから望ましい。
【0023】
本発明の接着剤及び易剥離性フィルムに適度なスリップ性を付与するために、脂肪酸アマイド(E)を0.05〜0.3重量部を配合することが好ましい。脂肪酸アマイド(E)は、適度なスリップ性の付与のみならず帯電防止性能の阻害が少ないことから(d)不飽和脂肪酸アマイドであることが好ましい。
【0024】
本接着剤のスリップ性を付与する添加剤として、脂肪酸アマイド(E)と併用して、一般的に滑剤として用いられるステアリン酸等の脂肪酸、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等のアルコール、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸なども、本発明の性能を阻害しない限り使用できる。
【0025】
また、本発明接着剤の熱安定性及び酸化防止のため、一般的に使用されているフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤を添加することが可能である。
【0026】
本発明の配合物の調整方法は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)、粘着付与剤樹脂(B)、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)、必要に応じて帯電防止剤(D)、脂肪酸アマイド(E)を同時にヘンシェルミキサー又はタンブラー等の混合機により予備ブレンドしておき、単軸又は二軸の押出機で溶融混練する方法が可能である。また帯電防止剤についてはあらかじめポリオレフィン系樹脂に高濃度で練り込んでマスターバッチとしておき、そのマスターバッチを押出ラミネーション加工時に添加することも可能である。マスターバッチのベースとなるポリオレフィン系樹脂はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂が好ましく、更には本発明に使用のエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)であることが特に好ましい。
【0027】
本発明を接着層とした易剥離性フィルムにするには、基材となる二軸延伸されたポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムまたはポリアミドフィルムなどの上にあらかじめアンカーコート剤を塗布後、アンカーコート剤面に本接着剤を押出ラミネーション加工(積層)すると、基材フィルムと本接着剤の2層の易剥離性フィルムを得ることができる。また、基材フィルムと本接着剤の相関強度を向上する目的で、アンカーコート剤を塗布された基材フィルムのアンカーコート剤面上にたとえばポリエチレン系樹脂を押出して多層フィルムにしておき、更にその上に本発明の接着剤を押出ラミネーション加工することで易剥離性フィルムを作ることもできる。
【0028】
基材となる二軸延伸されたポリエステルフィルム等には、本接着剤やポリエチレン系樹脂を貼り合わせる面とは異なる面に帯電防止剤を塗布又は基材フィルム製膜時にあらかじめ原料に練り込んでおくことは、帯電防止性能の向上に効果があるため好ましい。中間層となるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が使用可能である。特に低密度ポリエチレンは押出ラミネート加工適正が優れているため好ましい。また超低密度ポリエチレンは易剥離性フィルムのクッション性を発現するために好ましい。中間層となるポリエチレン系樹脂には、帯電防止剤をあらかじめ練り込んでおくこともできる。
【0029】
また本発明の接着剤を、あらかじめキャスト成形又はインフレ成形などで単層、または多層フィルムとしておき、基材となる二軸延伸されたポリエステルフィルム等と接着剤を介しドライラミネートすることも可能である。またその単層、または多層フィルムを、中間層となるポリエチレン系樹脂を押出ラミネーション加工する際に、基材とは反対の面になるように同時に貼り合わせるサンドイッチラミネーション加工により易剥離性フィルムを作成することも可能である。
【0030】
上記のように積層された易剥離性フィルムは、紙製容器に対する毛羽立ちの発生が無く帯電防止性能にも優れているため、これらの性能が要求される分野に有効的に使用できる。たとえば、電子部品やマイクロチップなどを入れた連続したテープ状の容器(一般的にキャリヤーテープと称する)の蓋材(一般的にカバーテープと称する)として使用できる。キャリヤーテープはポリスチレンなどを用いたプラスチック系のものがあるが、厚紙に部品を挿入する穴又は窪みを設けたキャリヤーテープが多く使用されている。たとえば紙製のキャリヤーテープには穴又は窪みに微小なマイクロチップが挿入され、カバーテープとなる易剥離性フィルムを蓋材となるように短時間で加熱接着される。その後別工程に運ばれ、高速で易剥離性フィルムを剥離しながらマイクロチップを取り出す工程に移される。このようにカバーテープには短時間で加熱接着される低温シール性、剥離した紙繊維がマイクロチップ等に付着するのを防ぐ剥離時の毛羽立ち防止性、更には静電気発生による電子部品に影響を与えない帯電防止性が要求されるため、本発明は充分にこれらを満足できる意剥離性フィルムを提供することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたとおり、本発明は接着剤に関し、特に容器に蓋材を接着させる接着剤に関し、更に詳しくは紙製容器に適した蓋材接着用の接着剤であり、優れた低温ヒートシール性や高いヒートシール強度を保持したまま、剥離時の紙製容器の毛羽立ちの発生がない接着剤及びそれにより得られた易剥離性フィルムとして有用である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に、実施例に用いた測定法を示す。
【0033】
〜メルトマスフローレイト(MFR)〜
エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)のMFRは、JIS K6922−1に準拠して測定した。
【0034】
〜低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体の粘度測定〜
ブルックフィールド粘度計を用い測定した。
【0035】
装置名:BROOKFIELD DIGITAL VISCOMETER
装置製造会社:ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ社
形式:RVTDV−II
測定温度:180℃
配合物の調整方法は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)、粘着付与剤樹脂(B)、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)、帯電防止剤(D)、脂肪酸アマイド(E)を同時にヘンシェルミキサー又はタンブラー等の混合機により予備ブレンドしておき、単軸又は二軸の押出機で溶融混練し本接着剤ペレット(F)を得る。溶融混練温度は、溶融樹脂温度で180℃とした。
【0036】
この本接着剤ペレット(F)を用いた構成物を作成するために、あらかじめ二軸延伸されたポリエステルフィルム(12μm厚み)にウレタン系のアンカーコート剤を使用して低密度ポリエチレンを樹脂温度310℃で25μmの厚みに押出ラミネーション加工をして基材を作成しておき、その基材の低密度ポリエチレン側に本接着剤ペレット(F)を更に樹脂温度220℃で15μm厚みに押出ラミネーション加工を行い、易剥離性フィルム(G)を得た。熱安定性を考慮し、フェノール系酸化防止剤を溶融混練するときに0.05%添加した。
【0037】
接着性能の評価方法は、易剥離性フィルム(G)の接着剤面とキャリヤーテープとなる紙基材とを重ね合わせヒートシール機で180℃、0.3MPa、0.5秒の条件で加圧加熱接着させ、それをシール面の幅方向に直角に幅10mmで短冊状剥離サンプルを作成しその剥離強度を測定した。剥離条件は180℃剥離で剥離速度300mm/分で行った。得られた剥離強度を、1mm幅あたりの剥離強度の換算し易剥離性フィルムの剥離強度とした。
【0038】
低温ヒートシール性は剥離強度の評価条件において140℃、0.3MPa、0.5秒の条件の剥離強度を1mm幅あたりの剥離強度の換算し評価した。
【0039】
紙基材の毛羽立ちの評価は、接着性能評価条件において剥離時の剥離界面状態を顕微鏡観察することにより比較した。
【0040】
帯電防止性能の評価は、易剥離性フィルム(G)の接着剤面の表面固有抵抗値を測定した。
【0041】
ブロッキング防止性能は、易剥離性フィルムを25mm幅の短冊状に2枚作成し、(G)(G)の接着剤面と二軸延伸されたポリエステルフィルムとを重ね合わせ、1kgの荷重を乗せ40℃のオーブン中に24時間放置した後の剪断剥離強度を測定した。
【0042】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体(A)として、酢酸ビニル含有量6%、JIS K6924−1で測定したメルトマスフローレイトが28g/10分である樹脂(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン539)を使用した。粘着付与剤樹脂(B)としては水添石油樹脂(荒川化学(株)製 商品名アルコンP140 軟化温度140℃)をエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し15重量部、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)として、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が240mPa・sである樹脂(東ソー(株)製 商品名特殊ウルトラセン7A55A。メルトマスフローレイトが約30,000g/10分、数平均分子量が2,500)を同6重量部、帯電防止剤(D)として ステアリン酸モノグリセリド(理研ビタミン(株)製 商品名リケマールS−100)0.35重量部、ジグリセリン脂肪酸エステルとしてステアリン酸ジグリセリド(理研ビタミン(株)製 商品名リケマールS−71D)0.24重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしてポリオキシエチレンラウリルエーテル(日本油脂(株)製 商品名ノニオンK−220)0.01重量部とした。脂肪酸アマイド(E)として、エルカ酸アミド(ライオンアクゾ(株)製 商品名アーモスリップE)を同 0.1重量%をタンブラー混合機で予備ブレンドしておき、二軸押出機を用い180℃で溶融混練し本接着剤ペレット(F)を得た。
【0043】
あらかじめ押出ラミネーションで作成しておいた二軸延伸されたポリエステルフィルム(12μm厚み)と低密度ポリエチレン(25μm厚み、東ソー(株)製 商品名ペトロセン203)からなる貼り合わせ基材の低密度ポリエチレン側に、押出ラミネーター(プラコー(株)製 スクリュー径25mmΦ)を用い本接着剤ペレット(F)を220℃で15μmの厚みで押出ラミネーションし易剥離性フィルムを得た。
【0044】
この易剥離性フィルムを用い前記評価方法で性能評価を行った。その結果を表−1に示す。
【0045】
実施例2
実施例1において、エチレン酢酸ビニル含有量(A)を酢酸ビニル含有量15%、メルトマスフローレイトが14g/10分であるエチレン酢酸ビニル共重合体(東ソー(株) 商品名ウルトラセン625)を使用した以外は実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た後、性能評価を行った。
【0046】
実施例3
実施例1において、粘着付与剤の軟化点を125℃(荒川化学(株)製 商品名アルコンP125)とした以外は実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た後、性能評価を行った。
【0047】
比較例1
実施例1において低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用しないで実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た後、性能評価を行った。剥離時に紙基材の毛羽立ちが発生した。
【0048】
比較例2
実施例1において、粘着付与樹脂(B)を3重量部にした以外は実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た。剥離強度、低温ヒートシール性が低いものとなった。
【0049】
比較例3
実施例1において、粘着付与樹脂(B)を25重量部にした以外は実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た。剥離時に紙基材の毛羽立ちが発生し、ブロッキングも発生した。
【0050】
比較例4
実施例1において、低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体の代わりに、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が86,000mPa・sである樹脂(東ソー(株)製 商品名ウルトラセンUE720を使用した以外は実施例1と同様に易剥離性フィルムを得た。帯電防止性能が劣るものとなった。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6924−1で測定した酢酸ビニル含有率が3〜18重量%の範囲であり、JIS K6924−1で測定したメルトマスフローレイトが5〜40g/10分の範囲であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(A)100重量部に対し、粘着付与剤樹脂(B)5〜20重量部、ブルックフィールド粘度計を用いて180℃で測定した粘度が50〜1,000mPa・sである低分子量エチレン−酢酸ビニル共重合体(C)3〜10重量部からなる接着剤。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤に、帯電防止剤(D)0.2〜1重量部を添加したことを特徴とする接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着剤に、脂肪酸アマイド(E)0.05〜0.3重量部を添加したことを特徴とする接着剤。
【請求項4】
帯電防止剤(D)が、(a)グリセリン脂肪酸エステル及び(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル、又は(a)グリセリン脂肪酸エステル、(b)ポリグリセリン脂肪酸エステル及び(c)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルであることを特徴とする請求項2に記載の接着剤。
【請求項5】
脂肪酸アマイド(E)が、(d)不飽和脂肪酸アマイドであることを特徴とする請求項3に記載の接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤と基材フィルムとを積層してなる易剥離性フィルム。
【請求項7】
紙基材からなるキャリヤーテープ用のカバーテープであることを特徴とする請求項6に記載の易剥離性フィルム。

【公開番号】特開2009−35645(P2009−35645A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201802(P2007−201802)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】