説明

接着剤及び接着工法

【課題】作業性、硬化性に優れ、接着強度及び耐久性に優れる接着剤及び接着工法の提供。
【解決手段】主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤。主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ、分散剤及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤。更にポリマーディスパージョンや硬化時間調整剤を含有しても良い。主剤と硬化剤をそれぞれの容器に別々に収容し、使用時に2剤を混合してなる接着工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性、硬化性に優れ、接着強度及び耐久性の高い接着剤であり、建築・土木分野の各種接着用途に適用できる。更にその接着剤を用いた接着工法である。
【背景技術】
【0002】
コンクリート、岩盤等の母材に穿孔し、その穿孔の中にアンカーボルト等の固定部材を固定するために用いられる接着剤として、主に有機系接着剤が用いられている。
【0003】
有機系接着剤としては、例えば特許文献1に記載されているような、熱硬化性ラジカル硬化樹脂を含有する主剤と有機過酸化物を含有する硬化剤からなる2剤混合型樹脂接着剤が挙げられる。使用にあたっては、主剤と硬化剤がそれぞれの容器内に別々に収容されており、接着剤として使用する場合にそれらを混合して使用するものである。2剤性の注入式カートリッジは、主剤と硬化剤がそれぞれの容器内に別々に収容されて一体として組み合わせて作られたものであり、使用する際にはカートリッジにミキシングノズルを取り付け、カートリッジのピストンを加圧することにより主剤と硬化剤を吐出させ、ミキシングノズル内で2剤を混合して吐出し、コンクリート等の母材に穿孔した孔の中に樹脂組成物を充填し、アンカーボルトを挿入した後、硬化させて、接着一体化するものである。
【0004】
しかしながら、有機系接着剤は、発火しやすいこと、母材を事前に乾燥しておく必要があること、耐久性に課題があること等の課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−338818号公報
【特許文献2】特開2004−244521号公報
【特許文献3】特開2008−169286号公報
【0006】
一方、無機系の接着剤が提案されているが、コンクリート、岩盤等の母材の孔とアンカーボルトの隙間に空隙が発生しやすく、十分な接着強度が得られない場合があった。
【0007】
【特許文献4】特開2006−335586号公報
【特許文献5】特開2009−114000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の接着剤は、主体が無機物であるため発火しないこと、母材を事前に乾燥しておく必要が無いこと、耐久性が高いこと等の特徴があり、更に従来の無機系の接着剤と比較して岩盤等の母材の孔とアンカーボルトの隙間に浸透しやすく、高い接着強度が得られる等の特徴がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤であり、主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ、分散剤及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤であり、カルシウム化合物が、水酸化カルシウムである該接着剤であり、微粒子シリカ及び/又はカルシウム化合物が、高速攪拌機、媒体攪拌式ミル及び高圧水を使用した粉砕機からなる群より選ばれた一種又は二種以上を用いて製造したものである該接着剤であり、分散剤が高性能分散剤である該接着剤であり、更にポリマーディスパージョンを含有してなる該接着剤であり、更に硬化時間調整剤を含有してなる該接着剤であり、主剤と硬化剤をそれぞれの容器に別々に収容し、使用時に2剤を混合してなる接着工法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接着剤を使用することにより、作業性、硬化性に優れ、更に接着強度及び耐久性に優れる接着剤及び接着工法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の部や%は、特記しない限り、質量部や質量%をいう。
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき具体的に説明する。
【0013】
本発明の微粒子シリカは、金属シリコンを酸化させる方法、又はジルコニアを製造する過程で電気炉から発生するフューム(シリカフューム)を捕集する方法で製造することができ、特に、金属シリコン粉末を分散させたスラリーを火炎中に噴射し燃焼、酸化させる方法で製造された微粒子シリカ粉末が、凝集(ストラクチャー)が少なく、硬化剤との反応性が大きい点で、好ましい。
【0014】
本発明の微粒子シリカは、例えば、可燃ガスと助燃ガスとによって形成される高温火炎中に金属シリコンやシリカ質原料粉末を噴射して溶融球状化し、冷却しながら球状シリカ粉末を捕集する。更に、分級処理によって、流動性の助長効果に優れた平均粒子径を有する微粒子球状シリカ粉末を捕集することができる。
【0015】
本発明において、例えば、可燃ガスと助燃ガスとによって形成される高温火炎中に金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が5〜70%であるスラリーを、少なくとも10m/秒以上の突出速度で噴射して溶融球状化し、捕集することにより、球状シリカ粉末を製造する。更に、分級処理によって、流動性の助長効果に優れた平均粒子径を有する微粒子球状シリカ粉末を捕集することができる。例えば、特許文献6や特許文献7により製造することができる。
【0016】
【特許文献6】特開2001−354409号公報
【特許文献7】特開2002−20113号公報
【0017】
又、かかる微粒子シリカは、浸透性、圧縮強さ特性の点で、球形度の平均値は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上が特に好ましい。
【0018】
球形度は、走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−T200型」)と画像解析装置(日本アビオニクス社製)を用いて測定することができる。例えば、先ず、粉末のSEM写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対応する真円の面積を(B)とすると、その粒子の球形度はA/B×100(%)として表示できる。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、PM=2πr、B=πrであるから、B=π×(PM/2π)となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B×100(%)=A×4π/(PM)×100(%)として算出することができるので、任意の粒子200個の平均値を粉末の球形度として求めることができる。
【0019】
更に、微粒子シリカの非晶化率は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、100%が特に好ましい。
【0020】
非晶化率は、粉末X線回折装置(例えば、RIGAKU社製「Mini Flex」)を用い、CuKα線の2θが26〜27.5°の範囲において試料のX線回折分析を行い、特定回折ピークの強度比から測定することができる。
【0021】
かかる微粒子シリカとしては、例えば、電気化学工業社製商品名「SFP−20M」、「SFP−30M」や、アドマッテック社製商品名「アドマファイン」等が挙げられる。
【0022】
本発明の微粒子シリカの粒度は、所望の効果が得られれば特に限定されないが、モルタルやコンクリートへの浸透性や接着強度に優れることから、平均粒径1.0μm以下が好ましく、0.05〜0.8μmがより好ましい。
【0023】
本発明のカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、石膏等の無機物質、ギ酸カルシウム等の有機酸のカルシウム塩等が挙げられる。これらの中では、主剤との反応性が大きい点で、水酸化カルシウムが好ましい。
【0024】
カルシウム化合物は、単独で難溶性又は不溶性の場合は、モルタルやコンクリートへの浸透性や接着強度に優れることから、平均粒径1.0μm以下に粉砕することが好ましく、平均粒径0.05〜1.0μmに粉砕することがより好ましい。或いは、カルシウム化合物が水酸化カルシウムの場合は、塩化カルシウム等の可溶性カルシウム塩と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の可溶性アルカリ塩とを、それぞれ溶解し混合する、いわゆるビルドアップ法によっても微細な水酸化カルシウムを製造することができる。
【0025】
本発明では、微粒子シリカ及びカルシウム化合物を、更に必要に応じて分散剤を添加してそれぞれ水に分散し、主剤及び硬化剤を製造する。
【0026】
本発明の主剤中の微粒子シリカの濃度は80%以下が好ましく、30〜70%がより好ましい。微粒子シリカの濃度が80%を超えると作業性が悪い場合がある。又、本発明では、予め高濃度の微粒子シリカスラリーを製造し、施工時に水により希釈して使用することも可能である。
【0027】
本発明の硬化剤中のカルシウム化合物の使用量は、微粒子シリカ100部に対して20〜200部が好ましく、50〜100部がより好ましい。カルシウム化合物の量が20部未満、或いは200部を超えると主剤との反応性が小さい場合がある。又、本発明では、予め高濃度のカルシウム化合物スラリーを製造し、施工時に水により希釈して使用することも可能である。
【0028】
本発明の硬化剤中のカルシウム化合物の濃度は60%以下が好ましく、10〜50%がより好ましい。カルシウム化合物の濃度が60%を超えると作業性が悪い場合がある。又、本発明では、予め高濃度のカルシウム化合物スラリーを製造し、施工時に水により希釈して使用することも可能である。
【0029】
本発明では、硬化剤中に分散剤を併用する。本発明は、使用に応じて、主剤にも分散剤を併用する。硬化剤のみに分散剤を添加した場合、主剤の液と混合した瞬間に、組成物が反応し、急激に粘度を上昇させることができる。又、主剤及び硬化剤に分散剤を併用した場合、急激な粘度上昇を防止できる。従って、主剤及び硬化剤の分散剤の使用量を変えることで、任意の作業時間を確保することが可能となる。
【0030】
本発明で使用する分散剤としては、スルホン化メラミン系、ナフタレンスルホン酸系、ポリカルボン酸系、及びポリエーテル系等のいわゆる高性能分散剤の使用が好ましく、これらの一種若しくは二種以上の混合物として使用される。
【0031】
主剤の分散剤の使用量は、主剤の微粒子シリカ100部に対して0.1〜30部(固形分換算、以下同様)以下が好ましく、1〜10部がより好ましい。0.1部未満だと硬化剤の液と混合した瞬間に反応固化してしまい、作業時間が確保できない場合があり、30部を超えると硬化時間が長くなる場合がある。
【0032】
硬化剤の分散剤の使用量は、カルシウム化合物100部に対して1〜30部が好ましく、5〜20部がより好ましい。1部未満だと、主剤と混合した瞬間に反応固化してしまい、作業時間が確保できない場合があり、30部を超えると硬化時間が長くなる場合がある。接着強度を高めるために、微粒子シリカ及びカルシウム化合物は、あらかじめ各種湿式粉砕機で粉砕又は分散することが好ましい。
【0033】
分散剤を主剤と硬化剤の両方に使用すると良好な浸透性が得られる理由は不明だが、分散剤が微粒子シリカやカルシウム化合物の表面で反応し、微粒子シリカとカルシウム化合物が接触しても直ちに水和反応しないよう、硬化遅延しているためと考えられる。
【0034】
尚、ここで言う平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製「LA−920型」)を用い、湿式分散処理した懸濁液を、通常前処理として行う超音波分散処理を行わずに、水媒中で測定した値である。JIS R 1629では、超音波をかけて凝集物を分散処理してから粒度を測定するため、実際に隙間へ注入しても浸透性が悪い場合がある。そこで、超音波分散処理を行わずに測定することで実際の隙間への浸透性と近い結果となる。超音波分散処理を行わずに測定した微粒子シリカ及びカルシウム化合物の平均粒径が1.0μm以下である場合、浸透性が向上する。そのため、接着強度を高めることができる。
【0035】
湿式分散処理した懸濁液とは、例えば、微粒子シリカを湿式分散処理した主剤、水酸化カルシウムを湿式分散処理した硬化剤をいう。
尚、水酸化カルシウムの粒度はpH値の影響を受けるため、NaOHにて水のpH値を12以上にしてから測定を行う。
【0036】
本発明で使用する湿式粉砕機は、高速攪拌機、媒体攪拌式ミル、及び高圧水を使用した粉砕機等のいずれを使用する方法でも良く、単独又は併用して選択するものであり、これらの湿式粉砕機のうち、粉砕効率の点で、高圧水を使用した粉砕機が好ましい。
【0037】
高速攪拌機としては、単純に攪拌子が高速で回転するだけではなく、いわゆる、乱流状態となり、粒子に剪断力が働くような構造が好ましい。例えば、太平洋機工社製商品名「シャープフローミル」、特殊機化工業社製商品名「ホモミクサー」、「ホモミックラインミル」及び「ホモディスパー」等がそれに類する。又、媒体攪拌式ミルは、1mm以下のビーズを用いて粉砕するものが好ましい。1mm以下のビーズを用いて粉砕する媒体攪拌式ミルとしては、アシザワファインテック社製商品名「スターミル」、三井鉱山社製商品名「SC−ミル」及び寿工業社製商品名「デュアルアペックスミル」等が挙げられる。又、高圧水を使用した粉砕機は、スラリーに50〜400MPaの高圧を加え、このスラリーを二つの流路に分岐させ、再度合流する部分で対向衝突させて粉砕するものである。このような粉砕機としては、スギノマシン社製商品名「スターバースト」や「アルティマイザー」、ナノマイザー社製商品名「ナノマイザー」及びマイクロフルイディスク社製商品名「マイクロフルイタイザー」等が挙げられる。これらの中では、隙間への浸透性の点で「スターバースト」が好ましい。
【0038】
更に、適度な可塑性を保持する点から、ポリマーディスパージョンを含有することが好ましい。ポリマーディスパージョンとしては、スチレンアクリル共重合体、アクリル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体からなる群より選ばれた一種又は二種以上を含有することが好ましい。これらのうち、少量で効果のある点から、エチレン−ビニルアルコール共重合体がより好ましい。
【0039】
ポリマーディスパージョンの使用量(固形分換算、以下同様)は、主剤の微粒子シリカ100部に対して10部以下が好ましく、0.1〜5部がより好ましく、0.5〜3部が最も好ましい。使用量が10部を超えると粘性が高くなり、作業性が悪い場合がある。
【0040】
本発明の接着剤は、硬化時間を調整するために、硬化時間調整剤を含有することができる。硬化時間調整剤としては特に限定されるものではないが、例えば公知のアルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属燐酸塩等の無機塩や、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸及び乳酸等の有機酸類及び該有機酸類の塩類等から選ばれる一種又は二種以上が挙げられる。これらの中では、作業性の点から、アルカリ金属硫酸塩及び/又はアルカリ金属炭酸塩が好ましく、アルカリ金属硫酸塩がより好ましい。アルカリ金属硫酸塩としては、硫酸ナトリウムや硫酸カリウム等が挙げられる。
【0041】
硬化時間調整剤の使用量は、カルシウム化合物100部に対して30部以下が好ましく、0.1〜30部がより好ましく、1〜10部が最も好ましい。硬化時間調整剤が30部を超えると作業性が悪い場合がある。
【0042】
本発明の接着剤には、接着に求められる機能に応じて、通常使用される添加剤、例えば、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤等を適宜添加することができる。又、充填材として、石英砂、硅砂、硅石粉、セラミックス粉、石灰砂、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、マイカ、火山灰、シラス、コンクリート粉、ガラスフレーク、フライアッシュ、カーボンブラック、アルミナ、ガラスマイクロバルーン、シリカバルーン等を添加することができる。
【0043】
主剤と硬化剤の混合比率は、5:1〜1:5が好ましく、2:1〜1:2がより好ましい。主剤と硬化剤の混合方法は、例えば、主剤と硬化剤を容器に入れ、攪拌棒やミキサーで混合する方法、或いは、主剤と硬化剤をそれぞれの容器に別々に収容し、使用時に2剤を混合する方法等が挙げられるが、作業性の点から後者の方法が好ましい。主剤或いは硬化剤をそれぞれ収容する容器は、運搬や保管時には漏れや破損の無いものであれば良く、材質としては、ガラス、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、金属等が挙げられる。2剤を混合する方法としては、注入式カートリッジやスタティックミキサー等により混合する方法が挙げられる。
【0044】
本発明の接着剤は、常温硬化型であり、室温において、水和反応により自然に硬化するが、100℃以下で加熱することにより、硬化を促進することができる。
【0045】
本発明の接着剤の適用箇所は特に限定されないが、アンカーボルト等の固定や、コンクリート、モルタル、スレート、ガラス、ホーロー、金属の接着等に用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例は特記しない限り、20℃で行った。
【0047】
実施例1
【0048】
(接着剤の調整)
粒径、種類の異なる微粒子シリカ100部、分散剤5部(固形分換算)、水100部を混合し、スギノマシン社製商品名「スターバースト」で湿式分散処理し、更にポリマーディスパージョンを加え、主剤(A剤)を作製した。一方、市販の水酸化カルシウム(平均粒径9.5μm)100部、分散剤10部、水150部を混合し、同様にスギノマシン社製商品名「スターバースト」で粉砕時間を変えて湿式分散処理し、更に硬化時間調整剤を加えて、硬化剤(B剤)を作製した。
「スターバースト」のスラリーに加えた圧力は全て245MPaとした。
カルシウム化合物の使用量が、微粒子シリカ100部に対して、75部になるように、主剤と硬化剤を混合し、表1に示す配合にて接着剤を作製した。
微粒子シリカは、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が5〜70%であるスラリーを火炎中に、少なくとも10m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させる方法により製造した。
【0049】
(使用材料)
微粒子シリカS1:湿式分散処理後の平均粒径0.05μm、球形度97%、非晶化率100%、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が30%であるスラリーを火炎中に150m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させ捕集する方法で製造した微粒子球状シリカ
微粒子シリカS2:平均粒径0.1μm、球形度97%、非晶化率100%、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が30%であるスラリーを火炎中に120m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させ捕集する方法で製造した微粒子球状シリカ
微粒子シリカS3:湿式分散処理後の平均粒径0.6μm、球形度97%、非晶化率100%、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が30%であるスラリーを火炎中に100m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させ、捕集する方法で製造した微粒子球状シリカ
微粒子シリカS4:湿式分散処理後の平均粒径1.0μm、球形度96%、非晶化率100%、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が30%であるスラリーを火炎中に50m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させ、捕集する方法で製造した微粒子球状シリカ
微粒子シリカS5:湿式分散処理後の平均粒径3.5μm、球形度95%、非晶化率100%、金属シリコン粉末を水に分散させた金属シリコン粉末濃度が30%であるスラリーを火炎中に2m/秒以上の突出速度で噴射し燃焼、酸化させ、捕集する方法で製造した微粒子球状シリカ
フェロシリコン副生シリカフュームS6:湿式分散処理後の平均粒径15.5μm (参考値:超音波処理した場合は3.7μm)、球形度86%
シリカゾルS7:湿式分散処理後の平均粒径10.1μm、球形度75%(参考値:超音波分散処理した場合は平均粒径9.8μm)
カルシウム化合物C1:湿式分散処理後の平均粒径0.05μm、水酸化カルシウム
カルシウム化合物C2:湿式分散処理後の平均粒径0.1μm、水酸化カルシウム
カルシウム化合物C3:湿式分散処理後の平均粒径0.5μm、水酸化カルシウム
カルシウム化合物C4:湿式分散処理後の平均粒径1.0μm、水酸化カルシウム
カルシウム化合物C5:湿式分散処理後の平均粒径3.5μm(参考値:超音波処理した場合の平均粒径は3.3μm)、水酸化カルシウム
分散剤:ナフタレンスルホン酸系市販品、液状、固形分濃度40%
ポリマーディスパージョン:エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるポリマーディスパージョン、市販品
硬化時間調整剤:硫酸ナトリウム、市販品
水:水道水
【0050】
(試験方法)
平均粒径:レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製「LA−920型」)を用いた。
A剤及びB剤を、超音波分散処理を行わずに、水媒中で測定した。
付着強度:主剤、硬化剤はそれぞれポリエチレン製容器に入れ、カートリッジにミキシングノズルを取り付け、カートリッジのピストンを加圧することにより主剤と硬化剤を吐出させ、ミキシングノズル内で2剤を混合して吐出し、JIS A6909に準じて、モルタルとの付着強度を測定した。
【0051】
試験結果を表1に示す。
【0052】
【表1】






【0053】
特定の微粒子シリカ、特定のカルシウム化合物を用いることにより、高い付着強度を示すことが判る。更に、ポリマーディスパージョンや硬化時間調整剤の併用により、更に性能が向上することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の接着剤は、アンカーボルト等の固定や、コンクリート、モルタル、スレート、ガラス、ホーロー、金属の接着等に用いることができる。
【0055】
本発明は、微粒子シリカやカルシウム化合物の平均粒径が1.0μm以下と微細なことから、作業性、硬化性に優れ、更に接着強度及び耐久性に優れる接着剤及び接着工法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤。
【請求項2】
主剤として平均粒径が1.0μm以下である微粒子シリカ、分散剤及び水を含有し、硬化剤として平均粒径1.0μm以下のカルシウム化合物、分散剤及び水を含有してなる接着剤。
【請求項3】
カルシウム化合物が、水酸化カルシウムである請求項1又は2のうちのいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項4】
微粒子シリカ及び/又はカルシウム化合物が、高速攪拌機、媒体攪拌式ミル及び高圧水を使用した粉砕機からなる群より選ばれた一種又は二種以上を用いて製造したものである請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項5】
分散剤が高性能分散剤である請求項1〜4記載の接着剤。
【請求項6】
更にポリマーディスパージョンを含有してなる請求項1〜5記載の接着剤。
【請求項7】
更に硬化時間調整剤を含有してなる請求項1〜6記載の接着剤。
【請求項8】
主剤と硬化剤をそれぞれの容器に別々に収容し、使用時に2剤を混合してなる接着工法。

【公開番号】特開2012−158728(P2012−158728A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21282(P2011−21282)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】