説明

接着剤塗布装置

【課題】複数液混合型の接着剤を塗布する場合でも詰まりを防ぎながら薬液を混合して塗布する。
【解決手段】互いに近接した位置に配置された噴出口2a,3aをそれぞれ有し、該各噴出口2a,3aに向かって薬液を供給する複数の薬液供給通路2,3と、各噴出口2a,3aから噴出された薬液を互いに混合させる混合手段4とを備える接着剤塗布装置1を提供する。本発明によれば、各薬液が噴出口2a,3aから噴出された後に混合手段4によって混合されて標的に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の液を混合しながら噴出させる装置が知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−33294号公報
【特許文献2】特開2001−232245号公報
【特許文献3】特開2001−239190号公報
【特許文献4】特開2006−110646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の薬液を混合することにより硬化させる複数液混合型の接着剤を、特許文献1〜4の装置を使用して塗布しようとすると、噴出口の内側で接着剤が硬化して詰まってしまい、継続して使用することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、複数液混合型の接着剤を塗布する場合でも詰まりを防ぎながら薬液を混合して塗布することができる接着剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、互いに近接した位置に配置された噴出口をそれぞれ有し、該各噴出口に向かって薬液を供給する複数の薬液供給通路と、前記各噴出口から噴出された前記薬液を互いに混合させる混合手段とを備える接着剤塗布装置を提供する。
本発明によれば、接着剤の成分である複数種類の薬液を、別々の薬液供給通路に供給して噴出口から噴出させると、それらの薬液を噴出口から噴出された後に混合手段によって混合して標的に塗布することができるとともに、薬液供給経路内で薬液が互いに混合されて硬化してしまうことによる詰まりを防ぐことができる。
【0007】
上記発明においては、前記混合手段が、前記噴出口から噴出された前記薬液を霧状にする霧化機構を備えていてもよい。
このようにすることで、各薬剤を簡便に混合させることができる。
また、上記発明においては、前記霧化機構が、前記噴出口近傍にガス吹出口を有し、該ガス吹出口から圧縮ガスを吹き出させるガス供給通路を備えていてもよく、前記噴出口を覆うメッシュ部材であってもよい。
このようにすることで、簡便な構成で薬液を霧状にすることができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記混合手段が、前記噴出口近傍に気流吹出口を有する気流通路と、前記気流吹出口に向かって、前記気流通路内に旋回気流を発生させる旋回気流発生部とを備えていてもよい。
このようにすることで、各噴出口から噴出された薬液が旋回気流に巻き込まれながら進むことにより、簡便に薬液を混合することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記混合手段が、前記薬液を前記各噴出口から順番に時分割で繰り返し噴出させてもよい。
このようにすることで、標的上で各薬液が順番に繰り返し積層されることにより、薬液を簡便に混合することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記各噴出口から噴出された薬液の噴出範囲を所定の範囲内に制限する噴出範囲制限手段を備えていてもよい。
このようにすることで、異なる位置の噴出口から噴出された各薬液を所望の範囲内に塗布することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記噴出範囲制限手段が、前記噴出口を囲み前記薬液の噴出方向に筒状の気流を形成する送風通路を備えていてもよい。
このようにすることで、噴出口から噴出された薬液を囲む気流の幕(エアカーテン)が形成され、薬液の噴出範囲をエアカーテン内に制限することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数液混合型の接着剤を塗布する場合でも詰まりを防ぎながら薬液を混合して塗布することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る接着剤塗布装置の構成図である。
【図2】図1の接着剤塗布装置の使用時を示す図である。
【図3】図1の接着剤塗布装置の変形例であり、メッシュにより薬液を霧化する構成を示す図である。
【図4】図1の接着剤塗布装置のもう1つの変形例であり、旋回気流により薬液を霧化する構成を示す図である。
【図5】図1の接着剤塗布装置のもう1つの変形例であり、カム機構によりシリンジから時分割で交互に薬液を噴出させる構成を示す図である。
【図6】図1の接着剤塗布装置のもう1つの変形例であり、シャッタによりシリンジから時分割で交互に薬液を噴出させる構成を示す図である。
【図7】図6のシャッタの変形例を示す図である。
【図8】図1の接着剤塗布装置のもう1つの変形例であり、押圧部および制御部によりシリンジから時分割で交互に薬液を噴出させる構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る接着剤塗布装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る接着剤塗布装置1は、医療用の2液混合型の接着剤を切開部位などの患部Aに塗布するために使用されるものであり、図1に示されるように、噴出口2a,3aが互いに隣接して配置された、A液(薬液)aが供給されるA液供給通路(薬液供給通路)およびB液(薬液)bが供給されるB液供給通路(薬液供給通路)3と、これらの供給通路2,3の噴出口2a,3aの間から圧縮ガスを吹き出させるガス供給通路4と、噴出口2a,2bから噴出されたA液aおよびB液bを囲むように筒状のエアカーテン5aを発生させる送風通路5とを備えている。
【0015】
接着剤は、一般に医療用として使用されるものであれば特に制限はない。A液aおよびB液bの組み合わせとしては、例えば、フィブリノーゲン含有液とトロンビン含有液とを使用してもよいし、アルブミンやゼラチンなどの生体内に豊富に存在するタンパク質含有液とグルアタールアルデヒドやホルムアルデヒドなどのタンパク質の架橋剤含有液とを使用してもよい。
【0016】
A液供給通路2およびB液供給通路3はそれぞれ、A液aを貯留するA液貯留室2b内またはB液bを貯留するB液貯留室2b内に連通し、操作者による操作により図示しない機構を介して同時に、A液aおよびB液bを噴出口2a,3aから噴出させるようになっている。
【0017】
ガス供給通路4は、ガスを高圧状態で収容する図示しない高圧ガス室内に接続され、噴出口2a,3aからA液aおよびB液bが噴出されると同時に、噴出口2a,3aの間に開口した吹出口(ガス吹出口)4aから圧縮ガスを吹き出させるようになっている。これにより各噴出口2a,3aから噴出されたA液aおよびB液bが霧化されるようになっている。
【0018】
送風通路5は、噴出口2a,3aを囲む環状の送出口5bを有し、図示しない送風機から送風されてきたガスを送出口5bから送出させる。これにより、A液aおよびB液bの噴出方向に、噴出されたA液aおよびB液bを囲む筒状のエアカーテン(筒状の気流)5aが形成され、A液aおよびB液bがエアカーテン5aの位置を超えて飛散することが防止されるようになっている。
【0019】
このように構成された接着剤塗布装置1によれば、図2に示されるように、A液aおよびB液bを各噴出口2a,3aから噴出させることにより、霧状のA液aおよびB液bを患部Aに塗布することができる。この場合に、A液aとB液bとが噴出口2a,3aより内側で混合されることがないので、使用の途中で各供給通路2,3内が詰ってしまうことを防止して継続して使用することができるという利点がある。
【0020】
また、このようにして異なる位置からA液aおよびB液bを噴出させても、A液aおよびB液bの飛散領域をエアカーテン5a内に制限して、A液aおよびB液bを略共通の領域に塗布することができるという利点がある。また、別々の噴出口2a,3aから各液を噴出させても、霧化して粒子径を小さくすることにより互いに均一に混ざり合った状態で患部Aに塗布して、十分に効率良く硬化させることができるという利点がある。
【0021】
なお、上記実施形態においては、A液aおよびB液bを圧縮ガスにより霧化することとしたが、これに代えて、図3に示されるように、各噴出口2a,3aを覆うメッシュ(メッシュ部材)6a,6bを設け、A液aおよびB液bをメッシュ6a,6bに通過させることにより霧化してもよい。このようにすることで、構成をより簡略にすることができる。
この場合に、孔径が同一のメッシュ6a,6bを用いてもよいが、孔径の異なるメッシュ6a,6bを用いることにより、霧化されたA液aのミスト径とB液bのミスト径とを異なせてA液aとB液bとをより効率的に混合させることができる。
【0022】
また、上記実施形態においては、A液aおよびB液bを混合するためにこれらの薬液を霧化することとしたが、これに代えて、旋回気流を発生させることとしてもよい。例えば、図4に示されるように、ガス供給通路(気流通路)4内に螺旋羽根7を設けて螺旋状の流路を形成することにより旋回気流を発生させて吹出口4aから吹き出させることができる。
【0023】
このようにすることで、吹出口(気流吹出口)4aから噴き出された旋回気流に、その側方で噴出されたA液aおよびB液bが巻き込まれながら患部Aに向かうことにより、A液aとB液bとを混合することができる。
【0024】
また、上記実施形態においては、ガス供給通路4に代えて、A液aとB液bとを時分割で繰り返し噴出させる時分割噴出機構(混合手段)を備えていてもよい。
時分割噴出機構の例を図5〜図8に示す。図5〜図8に示す例では、上述したA液a供給通路2およびB液供給通路3に代えて、A液シリンジ(薬液供給通路)8およびB液シリンジ(薬液供給通路)9を備えている。
【0025】
図5は、時分割噴出機構として、各シリンジ8,9のプランジャ8a,9aが交互に上下に移動するように該プランジャ8a,9aを往復運動させるカム機構(混合手段)10を備えた構成を示している。これにより、一方のシリンジ8,9からA液aまたはB液bが交互に噴出される。
【0026】
図6は、時分割噴出機構として、噴出口8b,9bを交互に開放させるシャッタ(混合手段)11を備えた構成を示している。シャッタ11は、図6のように、各シリンジ8,9の噴出口8a,9aの間で往復直線運動することにより、一方の噴出口8b,9bのみを交互に開放させてもよい。
【0027】
また、シャッタ11は、図7に示されるように、各シリンジ8,9間の略中心軸線回りに回転する円板状であり、噴出口8a,9aに一致する位置に貫通した窓11aが設けられていてもよい。このようにしても、シャッタ11を回転させることにより、窓11aが噴出口8a,9aの位置に一致したときに一方の噴出口8b,9bからA液aまたはB液bを噴出させることができる。
【0028】
なお、シャッタ11を設ける場合には、シャッタ11にA液aおよびB液bに付着し、これらがシャッタ11の表面で混合して硬化する可能性がある。したがって、シャッタ11が各噴出口8b,9b間を移動する途中にシャッタ11の表面に接触する位置にスポンジなどの拭取部材12を配置し、シャッタ11に付着したA液aおよびB液bが順次拭き取られるようにすることが好ましい。
【0029】
図8は、プランジャ8a,9aを押圧するアクチュエータなどの押圧部(混合手段)13と、該押圧部13によりプランジャ8a,9aが交互に押圧されるように押圧部13によるプランジャ8a,8bの押圧量を制御する制御部(混合手段)14とを備えた構成を示している。
【0030】
このように、A液aとB液bとを時分割で交互に繰り返し噴出させることで、患部A上においてA液aとB液bとが交互に積層され、その積層方向にA液aとB液bとが接触することによりこれらの液a,bを均一に混合することができる。なお、この場合に、A液aとB液bとしてタンパク質含有液と架橋剤含有液とを用いる場合には、タンパク質含有液が先に噴出されるようにすることが好ましい。このようにすることで、架橋剤をより効果的にタンパク質に作用させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 接着剤塗布装置
2 A液供給通路(薬液供給通路)
3 B液供給通路(薬液供給通路)
2a,3a 噴出口
4 ガス供給通路(混合手段、気流通路)
4a 吹出口(ガス吹出口、気流吹出口)
5 送風通路
5a 送出口
5b エアカーテン
6a,6b メッシュ(混合手段、霧化機構、メッシュ部材)
7 螺旋羽根(混合手段、旋回気流発生部)
8 A液シリンジ(薬液供給通路)
9 B液シリンジ(薬液供給通路)
8a,9a プランジャ
8b,9b 噴出口
10 カム機構(混合手段)
11 シャッタ(混合手段)
12 拭取部材
13 押圧部(混合手段)
14 制御部(混合手段)
A 患部
a A液(薬液)
b B液(薬液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに近接した位置に配置された噴出口をそれぞれ有し、該各噴出口に向かって薬液を供給する複数の薬液供給通路と、
前記各噴出口から噴出された前記薬液を互いに混合させる混合手段とを備える接着剤塗布装置。
【請求項2】
前記混合手段が、前記噴出口から噴出された前記薬液を霧状にする霧化機構を備える請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項3】
前記霧化機構が、前記噴出口近傍にガス吹出口を有し、該ガス吹出口から圧縮ガスを吹き出させるガス供給通路を備える請求項2に記載の接着剤塗布装置。
【請求項4】
前記霧化機構が、前記噴出口を覆うメッシュ部材である請求項2に記載の接着剤塗布装置。
【請求項5】
前記混合手段が、
前記噴出口近傍に気流吹出口を有する気流通路と、
前記気流吹出口に向かって、前記気流通路内に旋回気流を発生させる旋回気流発生部とを備える請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項6】
前記混合手段が、前記薬液を前記各噴出口から順番に時分割で繰り返し噴出させる請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項7】
前記各噴出口から噴出された薬液の噴出範囲を所定の範囲内に制限する噴出範囲制限手段を備える請求項1に記載の接着剤塗布装置。
【請求項8】
前記噴出範囲制限手段が、前記噴出口を囲み前記薬液の噴出方向に筒状の気流を形成する送風通路を備える請求項7に記載の接着剤塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194304(P2011−194304A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62551(P2010−62551)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】