説明

接着剤用樹脂組成物及び積層体

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、サーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層とを接着する接着剤として、優れた耐熱性、接着性、成形性を有する接着剤用樹脂組成物、及び該接着剤用樹脂組成物を用いた成形性、バリアー性に優れたサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層の積層体を提供することにある。
【解決手段】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとを含んでなる接着剤用樹脂組成物、及びこれらに(C)ポリアリレート又は(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体とを含んでなる接着剤用樹脂組成物と該接着剤用樹脂組成物を用いたサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層からなる積層体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はサーモトロピック液晶ポリマーとポリオレフィンからなる積層体の接着に優れた接着剤用樹脂組成物、及びそれを用いたサーモトロピック液晶ポリマーとポリオレフィンの積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスバリアー性を有するフィルムとして、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)又はポリビニルアルコール(PVA)などを用いた多層フィルムが食品包装材料、保存用包装材料などに広く使われている。また樹脂製のガソリンタンクではポリエチレンとEVOHとの多層材料が使われており、ポリエチレンで形状と力学強度を持たせ、EVOHによってガソリン蒸気の透過を実用の範囲で阻止している。
【0003】またポリエチレンテレフタレートは比較的ガスバリアー性に優れており、低コストであることからプラスチックボトルなどへ広く使われている。一方、液晶ポリマーはガスバリアー性に優れていることに加え、EVOHではバリアー性がない水蒸気に対してもバリアー性を有しており、多層シートの構造を単純化できる利点がある為、その応用研究が進んでいる。
【0004】しかしながら、液晶ポリマーは自己配列性が特異的に高く、またサーモトロピック液晶ポリマーでは結晶化速度も大きいために固化し易く、射出成型におけるウエルド強度が低く、他素材との熱融着生も極めて悪い。そのため、サーモトロピック液晶ポリマーと他素材間との接着性を向上させる目的で、接着剤に関していくつかの提案が為されている。
【0005】例えば、サーモトロピック液晶ポリマーとポリブチレンテレフタレートとの接着性を改善するためにグリシジル変性エチレン酢酸ビニルを用い、ポリプロピレンとの接着性を改善するために、アクリル酸エチル−エチレン−無水マレイン酸共重合体を用いた特開平2-253950号公報、特開平2-253951号公報、特開平4-135750号公報がある。
【0006】またポリエチレンとの接着性を改善するものとしてエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などを用いた特開平11-240074号公報がある。しかし、いずれの接着剤もサーモトロピック液晶ポリマーと比較して耐熱性に劣り、溶融粘度も十分高くないため成形性が悪い欠点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、サーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層とを接着する接着剤として、優れた耐熱性、接着性、成形性を有する接着剤用樹脂組成物、及び該接着剤用樹脂組成物を用いた成形性、バリアー性に優れたサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層の積層体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上述した課題を解決するため鋭意研究した結果、サーモトロピック液晶ポリマーとポリオレフィンからなる多層フィルムを形成する際、両層間に形成する中間層として、該サーモトロピック液晶ポリマーと該ポリオレフィンとを含む接着剤用樹脂組成物を用いることにより、接着性に優れ、成形性にも優れた多層フィルムが形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとを含んでなる接着剤用樹脂組成物であり、好ましくは、(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンに、更に(C)ポリアリレート又は(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体とを含んでなる接着剤用樹脂組成物であり、その溶融粘度が100(Pa・s)以上であることが好ましい。
【0010】中でも好ましい(C)ポリアリレートは一般式(1)の構造を有するポリエステルであり、
【0011】一般式(1)
【化2】


【0012】(式中、Rは水素原子、又はCm2m+1のアルキル基であり、mは1〜8の整を表す)更に、該ポリアリレートの芳香族ジカルボン酸成分が、イソフタル酸5〜100モル%、テレフタル酸95〜0モル%であり、一般式(1)のRがメチル基である接着剤用樹脂組成物であり、(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体を含む場合は、不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト量が0.01〜10重量%である接着剤用樹脂組成物である。
【0013】また本発明の接着剤用樹脂組成物は(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとの重量比が10/90〜90/10であることが好ましく、更にこれに(C)ポリアリレートが10/90〜99/1の重量比で加わるか(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体との重量比が10/90〜99/1で添加された接着剤用樹脂組成物である。
【0014】また本発明は、(I)サーモトロピック液晶ポリマー層と、(II)ポリオレフィン層との間に本発明の接着剤用樹脂組成物を(III)接着剤層として含む積層体であり、(I)サーモトロピック液晶ポリマー層に接する接着剤層(III−1)におけるサーモトロピック液晶ポリマーの含量がポリオレフィンより多く、且つ(II)ポリオレフィン層に接する(III−2)接着剤層におけるポリオレフィンの含量がサーモトロピック液晶ポリマーより多い2つ以上の接着剤層を有する積層体を含むものであって、特に好ましい積層体の形状はフィルム又はシートである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとを含んでなる接着剤用樹脂組成物、及び更にこれらに(C)ポリアリレート又は(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体とを含んでなる接着剤用樹脂組成物、及び該接着剤用樹脂組成物を用いたサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層からなる積層体に関するものである。
【0016】本発明で使用する(A)サーモトロピック液晶ポリマーとは、ポリマーの融点以上の温度域において液晶性を示すポリマーであり、一般には全芳香族ポリエステル又はポリエステルアミドである。これを形成するモノマーとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ヒドロキノン、レゾルシノール、4−アミノ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、
【0017】4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ビフェノール、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、4−アミノフェノールなどが挙げられる。これらのモノマーのうち1種ないしはそれ以上を組み合わせて共重合したものが用いられる。
【0018】これらサーモトロピック液晶ポリマーの製造方法は、例えば米国特許第4,473,682号公報、米国特許第5,204,443号公報、米国特許第5,656,714号公報などに開示されている。
【0019】本発明に用いられる(B)ポリオレフィンとは、好ましくはポリエチレンもしくはポリプロピレン、又はエチレンもしくはプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。α−オレフィンとしては、炭素数3〜10であるプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等を挙げることができる。これらには多数の市販ポリマーがあり、それらを有利に用いることができる。
【0020】本発明の積層体の接着剤層はサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層との間に形成される。一般に液晶ポリマーとポリオレフィンとからなる組成物は相分離系であるため、各成分が共連続構造もしくは、それに類似した海島構造をとることが接着剤層に接するサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層とを均等に接着する上で望ましい。
【0021】そのような観点から、接着剤層として用いる樹脂組成物は(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとを含む樹脂組成物であり、その重量比は10/90〜90/10であることが望ましく、好ましくは40/60〜80/20、更に好ましくは50/50〜70/30である。
【0022】接着剤層には、サーモトロピック液晶ポリマーとポリオレフィンとの親和性及び粘度を制御し、サーモトロピック液晶ポリマー層及びポリオレフィン層と接着剤層との親和性を制御する目的で、第三成分として(C)ポリアリレート及び/又は(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体を加えてもよい。
【0023】ここで(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンからなる樹脂組成物と、(C)ポリアリレート及び/又は、(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体との重量比は10/90〜99/1が望ましく、好ましくは30/70〜95/5、更に好ましくは50/50〜90/10である。
【0024】該樹脂組成物の調製法は公知の方法で可能である。例えば、原料をあらかじめタンブラー又はヘンシェルミキサーのような混合機で混合した後、1軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなど通常の溶融混練装置に供給し、該混合物の溶融する温度、およそ200℃〜400℃にて溶融混練した後ペレットとする方法などがある。
【0025】本発明に用いられる(A)サーモトロピック液晶ポリマー、(B)ポリオレフィン、及び(A)と(B)並びにこれに(C)もしくは(D)を加えた接着剤の溶融粘度としては、(A)サーモトロピック液晶ポリマーの融点より25℃高い温度において、せん断速度5sec-1でのキャピラリーレオメーターを用いて測定した溶融粘度が、100(Pa・s)以上、好ましくは102〜107(Pa・s)、更に好ましくは5×102〜106(Pa・s)、最も好ましくは103〜106(Pa・s)のものが用いられる。
【0026】このとき(A)サーモトロピック液晶ポリマーの分子量は測定困難であるが、(B)ポリオレフィンの重量平均分子量はおよそ103〜106である。共押出しや多層ブロー成型等により得られる積層体では、上記以外の粘度域ではドローダウン、多層構造の乱れ、層の破断などの成形性低下を招き好ましくない。
【0027】一般的な多層ブロー成型では、積層体の各層の樹脂をアキュムレータ方式の共押出成型により、円筒状のパリソンに形成し、その後、このパリソンを任意の形状に作られた温調された金型内に置き、加圧ガスをパリソン中に吹き込み成型する。また多層構造の構成は各々その目的によって異なる。
【0028】例えば、燃料タンクなどのガスバリアー性、溶液の浸透遮断性を要求される用途では、(I)サーモトロピック液晶ポリマー層を中心に、その両側に(III)接着剤層、その外側に(II)ポリオレフィン層を配置し、(I)サーモトロピック液晶ポリマー層と(III)接着剤層の好ましい厚みが約0.01〜1mm、(II)ポリオレフィン層の好ましい厚みが約0.1〜5mmである。
【0029】接着剤層は均一な組成ばかりでなく、多少異なる樹脂や樹脂組成比の接着剤層を複数積層したものを用いることもできる。例えば、サーモトロピック液晶ポリマー層に接する(III−1)接着剤層としてサーモトロピック液晶の含有量が高い樹脂組成物を用い、ポリオレフィン層に接する(III−2)接着剤層としてポリオレフィン樹脂の含有量が高い樹脂組成物を用いて、接着剤層として各層に接着性を高めた2種以上の樹脂組成を持つものなどが効果的に使用できる。
【0030】即ち、それぞれ接する層との親和性を高める組成を選択することによって、接着剤層とサーモトロピック液晶ポリマー層あるいはポリオレフィン層との接着力を高めることができる。更に組成を連続的、段階的に変化させ、同様な効果をもたせることが可能である。
【0031】本発明で言うポリアリレートとは、二価フェノールと芳香族二塩基酸とからなるポリエステルであり、例えば芳香族ジカルボン酸又はそのエステル、酸無水物、酸ハライド等とビスフェノール又はそのエステル形成性誘導体との重縮合反応によって得られる。
【0032】これらの芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、3,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられ、好ましくは5〜100モル%のイソフタル酸及び95〜0モル%のテレフタル酸である場合が挙げられる。
【0033】本発明のビスフェノールの例としてはヒドロキノン、レゾルシン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
【0034】1,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシナフチル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、パラ−α,α’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−パラ−ジイソプロピルベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,3’−、4,2’−、2,2’−、
【0035】2,3’−ヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,6−ジメチルジフェニルエーテル、ビス−(ヒドロキシナフチル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。中でも好ましくは3,3’,5,5’−テトラアルキル−4,4’−ビフェノール、更に好ましくは3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールである。
【0036】ポリアリレートの重合方法としては、芳香族ジカルボン酸ジハライドとビスフェノールをお互いに相溶しない二種の溶媒に溶解した後、アルカリ及び触媒量の第4級アンモニウム塩などの存在下に2液を混合・撹拌して重縮合反応を行う界面重合法、芳香族ジカルボン酸ジハライドとビスフェノールを第3級アミンなどの酸を受容するアルカリ性化合物の存在下、有機溶媒中で反応せしめる溶液重合法、芳香族ジカルボン酸とビスフェノールジエステル、又は芳香族ジカルボン酸ジエステルとビスフェノールを原料として溶融状態でエステル交換反応する溶融重合法などがある。
【0037】本発明のポリアリレートが、イソフタル酸単位とテレフタル酸単位から成る芳香族ジカルボン酸と、3,3’,5,5’−テトラアルキル−4,4’−ビフェノール単位、特に3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位とからなるポリエステルである場合には、芳香族ジカルボン酸を構成するイソフタル酸とテレフタル酸の割合は、イソフタル酸の量で規定すると5〜100モル%、好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは60〜100モル%、これに対応してテレフタル酸単位0〜95モル%、好ましくは0〜50モル%、更に好ましくは0〜40モル%である。
【0038】一方、ジカルボン酸とジオールとの構成単位の割合は50モル%ずつである。例えば、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール単位50モル%に対し芳香族ジカルボン酸単位が50モル%を超えると重合度の高いポリマーが得られないため好ましくない。
【0039】本発明に用いるポリアリレートは、成型物の高い力学物性を保持するため、重量平均分子量は2×104以上、好ましくは2×104〜1×106程度である。また本発明に用いる芳香族ポリエステルの好ましいガラス転移温度は150℃〜400℃であり、より好ましくは200〜350℃、更に好ましくは200〜300℃である。
【0040】(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体は、エチレン・α−オレフィン共重合体に不飽和カルボン酸又はその誘導体から選ばれるモノマーをグラフト反応することによって得られる。不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト変性量が通常0.001〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%のグラフト変性エチレン、α−オレフィン共重合体が用いられる。
【0041】ここでいうエチレン・α−オレフィン共重合体とは、エチレンとα−オレフィンとがランダムに共重合しており、メルトフローレート(ASTM D1238.E)が0.01〜50g/10分、好ましくは0.01〜20g/10分であり、エチレン含有量が30〜95モル%、好ましくは75〜95モル%、特に好ましくは75〜90モル%である。
【0042】このエチレン・α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のものが用いられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセンなどが用いられ、これらのα−オレフィンは単独又は2種以上の混合物として用いられる。
【0043】(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体に用いられる不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、又はその誘導体、例えば、酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステルなどが挙げられが挙げられる。
【0044】具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが例示される。これらの中では、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、エンドシス−ビシクロ(2,2,1)ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸又はこれらの酸無水物が好適に用いられる。
【0045】該不飽和カルボン酸又はその誘導体から選ばれる変性用モノマーを変性前のエチレン・α−オレフィン共重合体に共重合して変性物を製造するには,公知の種々の方法が利用できる。例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体を溶媒に溶解させた後、変性モノマーを添加して共重合させる方法、あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体を溶融させた後、変性モノマーを添加して共重合させる方法などが挙げられる。
【0046】いずれの場合にも、前記変性モノマーを効率よく共重合させるにはラジカル反応開始剤の存在下に反応を実施することが好ましい。グラフト反応は,通常60〜350℃の温度で行われる。ラジカル開始剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して,通常0.001〜1重量部の量で用いられる。
【0047】上記のラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル及びアゾ化合物などが挙げられる。中でも、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルオキシドが好ましい。
【0048】接着剤層に加える(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体は、未変性のポリオレフィン、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体により1部が希釈されていてもよい。
【0049】本発明で用いられる(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体は、市販されているものも好適に用いることが出来る。例えば、「アドマー(商品名、三井化学株式会社製)」、「モディック(商品名、三菱化学株式会社製)」、「ボンダイン(商品名、住化シーディエフ化学(有)製)」等、及びこれらを主として含む樹脂組成物などが挙げられる。
【0050】本発明の積層体の各樹脂層には、必要に応じて、繊維状又は粒状の充填剤を配合することが可能であり、各層の樹脂成分100重量部に対して、通常1〜100重量部の範囲で配合することによって強度、剛性、耐熱性寸法安定性を更に向上させることができる。
【0051】繊維状充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウムや酸化亜鉛などのウィスカー類、アルミナ繊維、アスベスト、炭化ケイ素、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維、石こう繊維などが挙げられる。
【0052】また粒状の充填剤としては、マイカ、タルク、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、クレー、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩や炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化鉄などの金属酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0053】これらは2種類以上併用してもよく、中空であってもよく、これらの充填剤は通常充填剤の処理剤として用いられるシラン系やチタン系のカップリング剤で処理してもよい。また、本発明の接着剤樹脂組成物や積層体層を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、公知慣用の離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、難燃剤、難燃助剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び帯電防止剤等を含有せしめることができる。
【0054】
【実施例】以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」又は「%」は「重量部」又は「重量%」を表す。
【0055】(参考例1:サーモトロピック液晶ポリマーの合成)攪拌翼及び導入口を備えた反応容器に、4−ヒドロキシ安息香酸2.8モル、2,6−ヒドロキシナフトエ酸0.2モル、テレフタル酸0.75モル、2,6−ナフタレンジカルボン酸0.25モル、パラアミノフェノール0.3モル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル0.67モル、パラヒドロキシフェネチルアルコール0.03モルを仕込み、減圧下に窒素置換してから、無水酢酸5.5モルを加えた。
【0056】続いて、攪拌下で145℃に加熱し,3時間反応後、4時間かけて290℃に昇温し、200Paなる減圧下で反応を続行した。得られた粗ポリマーを粉砕し200Paの減圧下で10時間かけて、290℃に昇温し、固相重合を行った。得られたポリマーの溶融粘度は、キャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値として1.2×103(Pa・s)であり、融点はセイコー電子製示差走査型熱量計(DSC)による測定で295℃であった。
【0057】(参考例2:ポリアリレートの合成)撹拌翼、窒素導入口を備えた重合装置に3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール2.41Kg(9.8モル)を、水酸化ナトリウム1.0Kgを含む30lの脱酸素水に溶解し水溶液を得た。別に、78gのメチルトリオクチルアンモニウムクロライド、イソフタル酸クロリド1.58Kg(7.8モル)、テレフタル酸クロリド406g(2.0モル)を5lの脱酸素したトルエンに溶解させ有機溶液を得た。
【0058】水溶液を窒素気流下で撹拌しながら、有機溶液を加え、25℃で30分間撹拌を続けた。次いで、水溶液相を傾斜法にて取り除いた。生成物を含む有機溶液相を蒸留水で繰り返し洗浄した後に、アセトン浴に注ぎ沈殿を得た。得られた沈殿を繰り返しアセトンで洗浄して芳香族ポリエステルを得た。その後、真空乾燥機にて、室温から徐々に加温し最終的に240℃で2時間、約200Paで真空乾燥して3.5Kgのポリエステル樹脂を得た。このポリエステル樹脂を30℃のクロロホルム中にて固有粘度を測定したところ0.97dl/gであリ、重量平均分子量は7×104であった。
【0059】該ポリエステル樹脂をキャストフィルムにして、セイコー電子製の動的粘弾性測定装置により、昇温速度1℃/分、周波数1Hzの条件で測定したところ、tanδピーク温度から見たガラス転移温度は270℃であった。また引張強度は97MPa、弾性率1900MPaであった。得られたポリマーの溶融粘度は、キャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値として2.4×105 (Pa・s)であった。
【0060】(参考例3)得られたサーモトロピック液晶ポリマー、及びポリエチレン(F5010、エースポリマー株式会社製)を射出成型機により各々板状成型試片(幅10mm、厚さ2mm、長さ50mm)に成型した。得られたポリエチレンの板状成型試片を「ポリエチレン板状試片」と称する。
【0061】このポリエチレンの溶融粘度はキャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値として3.6×103 (Pa・s)であった。該サーモトロピック液晶ポリマーの板状試片を更に熱プレスにより厚さ0.4mmのシートとし、これから幅10mm、長さ50mmの短冊試片を切り出した(以後「LCP試片」と称する)。
【0062】(実施例1)上記のサーモトロピック液晶ポリマーとポリエチレンを重量比60/40の割合で押出し機にて混練し、これを射出成型機にて板状成型試片(幅10mm、厚さ2mm、長さ50mm)に成型した。混練物の溶融粘度はキャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での粘性率として1.7×103(Pa・s)であった。
【0063】この板状試片を更に熱プレスにより厚さ0.1mmのシートとし、これから幅10mm、長さ5mmの短冊試片を切り出し接着剤層とした。LCP試片とポリエチレン板状試片との長手方向の端部を5mmの幅で重ね、その間に短冊状に切り出した接着剤層を挟み、LCP試片側から幅5mmの矩形状ヒーターにより310℃で10秒間熱融着した。
【0064】次いで、得られたLCP試片とポリエチレン板状試片との接着物の両端を引張り試験機のチャックに保持し、剥離角度0°、剥離速度10mm/分で引張り試験を行った。その破壊強度から引張せん断強さを求め、表1に示した。
【0065】(実施例2)上記のサーモトロピック液晶ポリマー、ポリエチレン、ポリアリレートを重量比48/32/20の割合で押出し機にて混練し、これを射出成型機にて板状成型試片(幅10mm、厚さ2mm、長さ50mm)に成型した。混練物の溶融粘度はキャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値として2.2×103(Pa・s)であった。
【0066】この板状試片を更に熱プレスにより厚さ0.1mmのシートとし、これから幅10mm、長さ5mmの短冊試片を切り出し接着剤層とした。以下実施例1と同様に試料片を成型し引張せん断強さを求め、表1に示した。
【0067】(実施例3)上記のサーモトロピック液晶ポリマー、ポリエチレン、不飽和カルボン酸とポリオレフィンとの共重合体であるアドマー(SF731、三井化学株式会社製)を重量比70/15/15の割合で押出し機にて混練し、これを射出成型機にて板状成型試片(幅10mm、厚さ2mm、長さ50mm)に成型した。
【0068】混練物の溶融粘度はキャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値として1.5×103(Pa・s)であった。この板状試片を更に熱プレスにより厚さ0.1mmのシートとし、これから幅10mm、長さ5mmの短冊試片を切り出し接着剤層とした。以下実施例1と同様に試料片を成型し引張せん断強さを求め、表1に示した。
【0069】(実施例4)上記のサーモトロピック液晶ポリマー、ポリエチレン、不飽和カルボン酸とポリオレフィンとの共重合体であるアドマー(SF731、三井化学株式会社製)を重量比90/5/5(D1)、及び60/25/15(D2)の割合で各々押出し機にて混練し、これを射出成型機にて板状成型試片(幅10mm、厚さ2mm、長さ50mm)に成型した。
【0070】混練物の溶融粘度はキャピラリーレオメータを用い、320℃、せん断速度5sec-1での測定値としてD1が1.3×103(Pa・s)、D2が1.5×103(Pa・s)であった。この板状試片を更に熱プレスにより厚さ0.1mmのシートとし、これから幅10mm、長さ2.5mmの短冊試片を切り出し接着剤層とした。
【0071】接着剤層としてこれら2種類のシートを用い、ポリエチレン板状試料の上にポリエチレン含有量が多い方の接着剤層を載せ、その上にポリエチレン含有量が少ない接着剤層を載せ、更にその上にLCP試片を載せて、実施例1と同様に熱融着した。以下、実施例1と同様に引張せん断強さを求め、表1に示した。
【0072】(実施例5)上記の(A)サーモトロピック液晶ポリマー、(B)ポリエチレン及び実施例3に記載の(D)接着剤用樹脂組成物を、この順序で芯層用押出し機(口径40mm)、最外層用押出し機(口径50mm)、接着剤層用押出し機(口径40mm)に供給し、共押出ブローダイ(ダイ温度330℃)によりパリソンとした後、金型内にて0.5MPaで圧縮空気を引き込み、B/C/A/C/B構成の層の厚さが1/0.2/0.2/0.2/1mm、容積500mlのボトルを成型した。
【0073】ボトル側面から幅15mmの矩形試片を切り出し、(A)サーモトロピック液晶ポリマーと(D)接着剤用樹脂組成物との間の接着力を測定した。剥離角度90°、剥離速度50mm/分で測定した結果、82(N/15mm)の剥離強度を得た。
【0074】また、このボトルに150gの市販レギュラーガソリンを入れ、金属キャップをした状態で8週間、室温に保存した結果、ガソリンの透過蒸発による重量減少は1.2gであった。
【0075】(比較例1)実施例1におけるLCP試片とポリエチレン板状試片の端部を直接重ね、実施例1と同様に熱融着した。しかしこれを用いて実施例1のように引張せん断強さを求めようとしたが、殆ど接着力がなく測定不可能であった。
【0076】(比較例2)不飽和カルボン酸とポリオレフィンとの共重合体であるアドマー(SF731、三井化学株式会社製)を200℃で熱プレスし、厚さ0.1mmのシートとした。これを接着剤層として用い、実施例1と同じ条件でLCP試片とポリエチレン板状試片の間にはさんで熱融着したが、アドマーの粘度が低く、試験片外へ大きく漏れ出た。また、サーモトロピック液晶ポリマー及びポリエチレンに対して、アドマーは明らかに粘度が低く、共押し出しは不可能であった。
【0077】
【表1】


【0078】
【発明の効果】本発明は、サーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層とを接着する接着剤として、優れた耐熱性、接着性、成形性を有する接着剤用樹脂組成物、及び該接着剤用樹脂組成物を用いた成形性、バリアー性に優れたサーモトロピック液晶ポリマー層とポリオレフィン層の積層体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとを含んでなる接着剤用樹脂組成物。
【請求項2】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンと(C)ポリアリレートとを含んでなる請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項3】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンと(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体とを含んでなる請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項4】 溶融粘度が100(Pa・s)以上である請求項1〜3のいずれか一つに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項5】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーの溶融粘度が100(Pa・s)以上である請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項6】 (B)ポリオレフィンの溶融粘度が100(Pa・s)以上である請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項7】 (C)ポリアリレートが一般式(1)の構造を有するポリエステルである請求項2に記載の接着剤用樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】


(式中、Rは水素原子、又はCm2m+1のアルキル基であり、mは1〜8の整数を表す)
【請求項8】 (C)ポリアリレートの一般式(1)の芳香族ジカルボン酸成分が、イソフタル酸5〜100モル%、テレフタル酸95〜0モル%である請求項7に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項9】 (C)ポリアリレートの一般式(1)のRがメチル基である請求項7に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項10】 (D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体が、不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト量が0.01〜10重量%である請求項3に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項11】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとの重量比が10/90〜90/10である請求項1に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項12】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとの重量比が10/90〜90/10であり、(A)と(B)とからなる組成物と(C)ポリアリレートとの重量比が10/90〜99/1である請求項2又は4〜9のいずれか一つに記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項13】 (A)サーモトロピック液晶ポリマーと(B)ポリオレフィンとの重量比が10/90〜90/10であり、(A)と(B)とからなる組成物と(D)不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとの共重合体との重量比が10/90〜99/1である請求項3〜6のいずれか一つ、又は10に記載の接着剤用樹脂組成物。
【請求項14】 (I)サーモトロピック液晶ポリマー層と、(II)ポリオレフィン層との間に請求項1〜13のいずれか一つに記載の接着剤用樹脂組成物を(III)接着剤層として含む積層体。
【請求項15】 (I)サーモトロピック液晶ポリマー層に接する接着剤層(III−1)におけるサーモトロピック液晶ポリマーの含量がポリオレフィンより多く、且つ(II)ポリオレフィン層に接する(III−2)接着剤層におけるポリオレフィンの含量がサーモトロピック液晶ポリマーより多いことを特徴とする2つ以上の接着剤層を有する請求項14に記載の積層体。
【請求項16】 形状がフィルム又はシートである請求項14又は15に記載の積層体。

【公開番号】特開2002−249754(P2002−249754A)
【公開日】平成14年9月6日(2002.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−52046(P2001−52046)
【出願日】平成13年2月27日(2001.2.27)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】