説明

接着剤用液状硬化性樹脂組成物

【課題】 屈折率が高く、接着性に優れ黄変の少ない接着剤用液状硬化性樹脂組成物、特に、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)との密着性に優れた、プロジェクションテレビのフレネルレンズ用接着剤を提供する。
【解決手段】 次の成分(A)(B)(C)及び(D):(A)下記式(1)で示される構造を有するウレタン(メタ)アクリレート[R−O−CONH−R−NHCO−O] (1)[式中、Rは、(メタ)アクリロイル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。Rは、環状構造を有する2価の有機基、Rは、炭素数35〜380の2〜6価の有機基である。nは、2〜6の整数である。Rの40〜85モル%が(メタ)アクリロイル基である。] (B)ラジカル重合性化合物 (C)下記式(2)で示される部分構造を有するフェノール性化合物


(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を示す)を含有する接着剤用液状硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料等の接着剤に適した液状硬化性樹脂組成物に関する。詳細には、各種建装材料、包装材料、印刷材料、表示材料、電気電子部品材料、光学部品材料、液晶パネル等の分野における接着剤用液状硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信機器の発展に伴って、種々の表示装置が提案されている。例えば、CRTによるもの、液晶パネルによるもの、スクリーンへの投光により映写をおこなうもの、PDPパネルによるもの等が挙げられる。これらの表示装置では、種々の光学的特性を持つ高分子フィルム、高分子レンズ等を張り合わせて表示性能を確保することが必要である。また、レンズでは表面の光学的処理を高分子フィルムで行う方法が提案されており、レンズ基材と高分子フィルムの接着が必要となってきている。
【0003】
高分子材料の接着には種々の接着剤を用いることが可能であり、例えば、(a)数平均分子量の小さい(5000〜15000)ウレタン(メタ)アクリレート、(b)アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド及びジイソプロピルアクリルアミドから選ばれる化合物及び(c)フェノキシポリエチレングリコール(PEG=1〜5)アクリレートを含有する液状硬化性粘・接着剤組成物がPVCやPETに対して優れた接着性を有することが報告されている(特許文献1参照)。このような高分子材料の接着には、生産性の向上や、溶媒を使用しない環境保護に優れた無溶媒系接着剤を望む傾向が、近年は強まってきている。放射線、特にUV光を照射して接着させることができる無溶媒系の接着剤はこのような要望を満たす材料として期待されている。
【0004】
光学的特性を持つ材料を張り合わせる場合、その接着剤は加熱や紫外線暴露等で色相が変化しないことが必要であるが、この要望を十分に満たす材料は得られていない。
【0005】
一方、(1)ウレタン(メタ)アクリレート、(2)メルカプト基を有するシラン化合物、(3)光重合開始剤、(4)アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー及び(5)(メタ)アクリレート化合物を含有する光硬化性樹脂組成物が、光ファイバユニットのテンションメンバとして用いられる銅被覆された銅線に対する被覆層として有用であることが報告されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、特許文献3には、多層被覆において特定のフェノール性化合物を使用すると蛍光灯黄変が改善されることが記載されているが、接着剤での使用は記載されていない。
【0007】
【特許文献1】特開平7−310067号公報
【特許文献2】特開2000−198824号公報
【特許文献3】特開2002−264276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2の組成物は接着力が十分でない等の問題があった。
本発明の目的は、屈折率が高く、接着性に優れ黄変の少ない接着剤用液状硬化性樹脂組成物、特に、メタクリルスチレン樹脂(MS樹脂)との密着性に優れた、プロジェクションテレビのフレネルレンズ用接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ね、ウレタン(メタ)アクリレートの末端の一部をメタノールで封止し、さらに、脂肪族系ジイソシアネートを用いることにより、屈折率が高く、基材との密着性に優れ、さらには耐候性(黄変度)にも優れる接着剤用液状硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明によれば、以下の接着剤用液状硬化性樹脂組成物が得られる。
[1]次の成分(A)(B)(C)及び(D):
(A)下記式(1)で示される構造を有するウレタン(メタ)アクリレート
[R−O−CONH−R−NHCO−O] (1)
[式中、Rは、(メタ)アクリロイル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。Rは、環状構造を有する2価の有機基、Rは、炭素数35〜380の2〜6価の有機基である。nは、2〜6の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立であってよいが、(A)成分全体として、Rの40〜85モル%が(メタ)アクリロイル基であり、15〜60モル%が炭素数1〜4のアルキル基である。]
(B)ラジカル重合性化合物
(C)下記式(2)で示される部分構造を有するフェノール性化合物
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を示す)
を含有する接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
[2]前記化学式(1)のRが、環式ポリエーテル構造又は脂肪族ポリエーテル構造を有する、上記[1]に記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
[3]さらに、(E)光重合開始剤を含む上記[1]又は[2]記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
[4]前記化学式(1)のR部分の数平均分子量が2,000〜12,000である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
[5]さらに、(F)シランカップリング剤を含む上記[1]〜[4]のいずれかに記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
[6]前記式(1)において、Rが、下記式(3)で示される構造である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
−[R−D]−R− (3)
(式中、Rはハードセグメント構造を有するポリオール残基であり、Dはジイソシアネート残基であり、Rはソフトセグメント構造を有するポリオール残基であり、kは2〜5の整数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無溶媒で塗布に適度な粘度を持ち、高屈折率であり、高分子材料に対して十分な接着性を持ち、加熱や紫外線暴露に対して色相変化が少ない接着剤用液状硬化性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物(以下、本発明の組成物ということがある)を構成する各成分について説明する。
【0013】
成分(A):
成分(A)であるウレタン(メタ)アクリレートは、下記式(1)で示される構造を有する(以下、「一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート」という)。
[R−O−CONH−R−NHCO−O] (1)
[式中、Rは、(メタ)アクリロイル基又は炭素数1〜4のアルキル基であり、(メタ)アクリロイル基である場合には、(b)水酸基含有(メタ)アクリレートに由来し、炭素数1〜4のアルキル基である場合には、下記(d)炭素数1〜4のアルコールに由来する。Rは、環状構造を有する2価の有機基であり、下記(a)ジイソシアネート成分に由来する。Rは、炭素数35〜380の2〜6価の有機基であり、下記(c)ポリオール成分に由来する。nは、2〜6の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立であってよいが、(A)成分全体として、Rの40〜85モル%が(メタ)アクリロイル基であり、15〜60モル%が炭素数1〜4のアルキル基である。]
【0014】
(a)成分のジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、特に、脂肪族系化合物である2,4−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネートが好ましい。ジイソシアネート成分に脂肪族系化合物を用いることで、加熱時の黄変が抑制される。より良好な加熱時の低黄変性を求める場合は、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。
【0015】
これらのジイソシアネートは、単独であるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
(b)成分の水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの如きグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等を挙げることができる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0017】
これらの、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、単独であるいは、二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
さらに、(c)ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロヘキサンジメチロール、トリシクロデカンジメチロール、1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール、ビスフェノールAポリエトキシグリコール、ビスフェノールAポリプロポキシグリコール、ビスフェノールAポリエトキシプロポキシグリコール、ビスフェノールFポリエトキシグリコール、ビスフェノールFポリプロポキシグリコール、ビスフェノールFポリエトキシプロポキシグリコール、ビスフェノールSポリエトキシグリコール、ビスフェノールSポリプロポキシグリコール、ビスフェノールSポリエトキシプロポキシグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレンブチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0019】
(c)ポリオールとしては、これらの化合物の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。ビスフェノール骨格等のハードセグメント構造を有する化合物を用いることにより高屈折率化を図ることでき、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等に代表されるポリエーテルポリオール等のソフトセグメント構造を有する化合物を用いると基材との接着性を改善することができる。そこで、これらのハードセグメント構造とソフトセグメント構造を有する化合物を使用することにより、高い屈折率と良好な接着性を両立させることができる。このような例としては、例えば、前記式(1)において、Rが、下記式(3)で示す構造を与える(c)ジオールを挙げることができる。
−[R−D]−R− (3)
(式中、Rはハードセグメント構造を有するポリオール残基であり、Dはジイソシアネート残基であり、Rはソフトセグメント構造を有するポリオール残基であり、kは2〜5の整数である。
このような例において、特に、RがビスフェノールAポリエトキシプロポキシグリコールであり、ジイソシアネート化合物がイソホロンジイソシアネートであり、Rがポリプロピレングリコールである(c)ジオールが好ましい。
【0020】
特に、屈折率の点でビスフェノールAポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシグリコール、ビスフェノールAポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)プロポキシグリコール、ビスフェノールAポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシプロポキシグリコール、ビスフェノールFポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシグリコール、ビスフェノールFポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)プロポキシグリコール、ビスフェノールFポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシプロポキシグリコール、ビスフェノールSポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシグリコール、ビスフェノールSポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)プロポキシグリコール及びビスフェノールSポリ(好ましくは重合度:平均値としてn=2〜40)エトキシプロポキシグリコールから選ばれる一種又は二種以上を使用することが好ましい。
【0021】
特に好ましいハードセグメント構造を有するポリオールとしては、下記式(4)
【化3】

(式中、mは1〜5であり、2〜4が好ましい。)
で示されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオールの市販品としては、例えば、DA400(日本油脂社製、m=2)が挙げられる。
【0022】
成分(A)は、ポリオール残基が前記式(3)の構造において、kが3程度なるように、(c)ポリオールと(a)ジイソシアネートとを反応割合等を調整して反応させることが好ましい。具体的には、ジイソシアネートのモル比は、ポリオール1モルに対して、ジイソシアネートは1.5モル以下になるように調整する。水酸基含有(メタ)アクリレートはポリオールとジイソシアネートのモル比から計算される過剰のイソシアネート当量に対して1.0〜1.5当量となるように調整することが好ましい。
【0023】
(d)炭素数1〜4のアルコールは、得られるウレタン(メタ)アクリレートの末端の一部を封止し、本発明の組成物を硬化させるための重合反応に関与しないようにするために添加される。(d)炭素数1〜4のアルコールとしては、メタノールが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートの一部末端を封止することにより、各種プラスチック基材との密着性を向上させることができる。
【0024】
一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートの原料のうち、イソシアネート基と反応しうる水酸基を有する(a)水酸基含有(メタ)アクリレート及び(d)メタノールは、(a)水酸基含有(メタ)アクリレート:(d)メタノールのモル比率が、85:15〜40:60の範囲内で反応させることが必要であり、85:15〜70:30の範囲内で反応させることが好ましく、76:24で反応させることが特に好ましい。上記範囲外では、基材との密着性が低下したり、耐候性が低下したりする。
【0025】
上記成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法としては、ポリオール及び有機ポリイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールを反応させる方法;有機ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ポリオール、有機ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールを一括に仕込んで反応させる方法が挙げられる。これらのうちで本発明で用いる一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートを得るためには、いずれの方法を用いてもよいが、好ましくは有機ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法がよい。
【0026】
成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際、水酸基含有(メタ)アクリレート、有機ポリイソシアネート、ポリオール及びメタノールのそれぞれの使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対して有機ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が1.1〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールの水酸基の合計が0.1〜1当量となるようにするのが好ましい。さらに、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対して有機ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基が1.3〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレート及びメタノールの水酸基の合計が0.3〜1当量となるようにするのが特に好ましい。この好適範囲から外れると、粘度が高くなる等して液状での取り扱いが困難になる。
【0027】
成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートを製造する際、通常、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン−2−メチルトリエチレンアミン等のウレタン化触媒が反応原料の総量に対して0.01〜1質量%の量で用いられる。尚、反応温度は通常、10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0028】
成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートの好ましい数平均分子量は500から20,000であり、特に1,000〜15,000であることが好ましい。成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量が500未満であると、本樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の基材への密着性が低下し、逆に数平均分子量が20,000を超えると樹脂組成物の粘度が高くなり取り扱いにくくなり易い。
【0029】
成分(A)の一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートは、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物全量に対して1〜80質量%配合されることが好ましく、1〜60質量%配合されることがさらに好ましい。1質量%未満や80質量%を越えると塗工性を損ねる可能性がある。成分(A)を用いることで粘着性の高い硬化物(接着剤)が得られる。
【0030】
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物には、さらに、ジイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを配合することもできる。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
【0031】
成分(B):
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物には、成分(B)のラジカル重合性化合物を配合する。当該ラジカル重合性化合物のうち単官能性化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートの如き脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ポリオキシエチレンパラクミルフェニルエーテル(メタ)アクリレート及び下記式(5)、(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0032】
【化4】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、lは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)
【化5】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R10は水素原子又はメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す。)
【0033】
これら単官能性化合物のうちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、及び上記式(6)の化合物が好ましい。
【0034】
これら単官能性化合物は、市販品IBXA(大阪有機化学工業(株)社製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210、アロニックスM−110(以上、東亞合成(株)社製)等として入手することができる。
【0035】
上記のごとく調製された接着剤用液状硬化性樹脂組成物の硬化物の高分子製材料に対する接着力は、たとえば、PETフィルムでは、10N/m以上のピール強度が得られる。
【0036】
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物には、さらに成分(B)として、重合性多官能化合物を配合することができる。重合性多官能性化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
成分(B)に含まれる重合性多官能化合物のうち、トリシクロデカンジイルジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドを付加させたビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
成分(B)に含まれる重合性多官能性化合物の市販品としては、例えばユピマーUV、SA−1002(以上、三菱化学(株)社製)、アロニックスM−103、M−215、M−315、M−325、TO−1210(以上東亞合成(株)製)、GX−8345(第一工業製薬(株)製)を使用することができる。
【0039】
尚、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物中における、成分(B)(単官能及び多官能のラジカル重合性化合物の合計)の配合量は、通常15〜95質量%、好ましくは25〜95質量%の範囲内である。また、成分(B)に含まれる多官能のラジカル重合性化合物の配合量は、成分(B)の全量を100質量%として、好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%である。多官能のラジカル重合性化合物の配合量が、成分(B)の全量の10質量%を超えると、硬化物のガラス転移温度が上昇して接着力が低下する傾向がある。
【0040】
成分(C):
本発明で使用される成分(C)である、フェノール性化合物は、下記式(2)で示される構造を有する。
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を示す)
【0041】
フェノールのヒドロキシ基が結合した炭素原子の両隣の炭素原子に、メチル基及び炭素数が1〜8の炭化水素基Rが結合した構造を有するヒンダードフェノール基を有する化合物であり、好ましくはこのヒンダードフェノール基を1〜6個有する。炭素数が1〜8の炭化水素基Rは、好ましくは炭素数が1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tret−ブチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、tert−ブチル基であり、さらに好ましくは、tert−ブチル基である。
【0042】
ヒンダードフェノール性化合物としては、例えば、ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](イルガノックス 245)、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー GA−80)、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}等が挙げられる。(上記において、イルガノックスは、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)の登録商標、スミライザーは、住友化学工業(株)の登録商標である。)
【0043】
本発明で用いる成分(C)は、下記の式(7)のヒンダードフェノール基を有するフェノール性化合物が好ましい。
【化7】

【0044】
また、本発明で用いる成分(C)は、2価の有機基の両端に、上記式(7)のヒンダードフェノール基をそれぞれ1つ結合した、下記の式(8)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化8】

【0045】
式(8)中の2価の有機基(−R11−)は、炭素数2以上の炭化水素鎖、エステル構造を含む、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる。
【0046】
上記の化合物の好ましい例として、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,2−チオ−ジエチレンビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}が挙げられるが、中でも特に好ましい化合物は、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンである。
【0047】
成分(C)のヒンダードフェノール性化合物は、熱的安定性及び蛍光灯下での色安定性の点から本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物中に、好ましくは0.01〜3質量%、さらに好ましくは0.03〜1質量%、特に好ましくは0.05〜0.5質量%配合する。
【0048】
成分(D):
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物には、本願発明の効果を損なわない範囲で、成分(D)として亜リン酸エステル基とフェノール性水酸基を有する化合物を添加することもできる。成分(D)は、硬化膜の黄変抑制に効果的である。成分(D)の具体例は例えば下記式(9)で表わすことができる。
(R12O)P(OR133-q (9)
(式中、qは1〜3の整数を示し、R12はフェノール性水酸基を有する有機基を示し、R13はリン原子を含んでいてもよい有機基を示す。)
【0049】
12及びR13は炭素以外の元素を有しても良く、当該炭素以外の元素としては例えば、窒素、硫黄、酸素、ハロゲン、リンが挙げられる。また、二以上のR12及びR13が連結して環状の有機基になっても良い。
【0050】
12で示されるフェノール性水酸基を有する有機基の例としては、ベンゼン又はナフタレン環上に1〜3個のアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子が置換していてもよいヒドロキシフェニル、ヒドロキシナフチル又はヒドロキシフェニルアルキル基が挙げられる。またR13で示される有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。ここでアリール基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換していてもよいフェニル又はナフチル基が挙げられる。アリールアルキル基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換していてもよいフェニルアルキル基が挙げられる。また、R12及びR13は連結していてもよい。R13がリン原子を含む場合としては、2〜4価のアルカン残基又は2〜4価の芳香族炭化水素残基等にフェノール性水酸基を有する亜リン酸エステルが2〜4個結合している場合が挙げられる。
【0051】
(D)亜リン酸エステル基とフェノール性水酸基を有する化合物の具体例としては、2−メチル−4−ヒドロキシフェニルジエチルホスファイト、2−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルジエチルホスファイト、2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルジエチルホスファイト、ビス(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルホスファイト、トリス(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシキノンジイル−ホスファイト等が挙げられる。
【0052】
本発明で用いる(C)亜リン酸エステル基とフェノール性水酸基を有する化合物は、Polymer Degradation and Stability 77 (2002) p29に記載されている方法で合成することができる。これら亜リン酸エステル基とフェノール性水酸基を有する化合物の市販品としてはスミライザーGP(住友化学)が挙げられる。
【0053】
上記成分(D)は、前記安定性、耐久性及び樹脂液保存安定性向上の点から、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物中に0.1〜10質量%含有することが好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましく、0.1〜3質量%が特に好ましい。成分(D)を用いることで、紫外線と加熱による黄変が抑制される。
【0054】
成分(E):
また、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物を光硬化させる場合には、成分(E)として光重合開始剤を用い、必要に応じて、さらに光増感剤を添加するのが好ましい。ここで、光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォフフィンオキシド;イルガキュアー184、369、651、500、907、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61(以上、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製);ルシリンLR8728(BASF製);Darocure1116、1173(以上、メルク製);ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられる。また、光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB製)等が挙げられる。
上記成分(E)は、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物中に0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%、さらに好ましくは0.5〜3質量%配合する。
【0055】
成分(F):
本発明の組成物には、さらに接着力を上げることを目的として成分(F)としてシランカップリング剤を添加することができる。シランカップリング剤の例としては、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜2のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤が好ましい。とくにγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシランが高い接着性を発現する上で好ましい。
上記成分(F)は、本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物中に0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜3質量%配合する。
【0056】
その他の任意添加成分:
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で種々の添加剤等を含有させることができる。例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等を必要に応じて配合することができる。ここで、酸化防止剤としては、例えば、Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Antigen P、3C、FR、Sumilizer GA−80(住友化学工業(株)製)等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、例えば、Tinuvin P、234、320、326、327、328、329、213(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Seesorb102、103、110、501、202、712、704(以上、シプロ化成(株)製)、サノール LS−765(三共ライフテック株式会社)等が挙げられ、光安定剤としては、例えば、Tinuvin 292、144、622LD(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、サノールLS770(三共(株)製)、Sumisorb TM−061(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物は、従来の接着剤組成物に比べて粘度が低いため、容易、かつ、より均一に基材上に塗布することができる。
本発明の組成物は、屈折率が1.50以上、好ましくは1.53以上である。本発明の組成物を、プロジェクションテレビ用フレネルレンズを透明樹脂基板(特に、メチルメタクリル・スチレン共重合体からなる基板)に接着するための接着剤として用いた場合、屈折率が高いため、フレネルレンズの屈折率を低下させることなく、高い接着力を発揮することができる。
また、本発明の組成物は、耐候性にも優れ、黄変することが少ない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
合成例1:ウレタン(メタ)アクリレート(UA’−1)の合成
撹拌機を備えた反応容器に3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート13.7質量%、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫0.05質量%、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01質量%及びイソボルニルアクリレート42.8質量%を仕込んだ。撹拌しながら温度が30℃以下に保たれるように2−ヒドロキシエチルアクリレート2.9質量%を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次に、ビスフェノールAエチレンオキシド付加ジオール(エチレンオキシド構造単位の数=4;平均分子量=400)を14.8質量%加え、40℃で1時間反応させた。次にポリテトラメチレングリコールジオール(平均分子量=2000)を25.8質量%加え、50〜70℃で2時間反応を続けた。残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。
このようにして、前記式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレートUA’−1(式(1)のRがメタノールの割合が0モル%である。)を得た。
【0060】
合成例2:一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA’−2)の合成
合成例1のヒドロキシエチルアクリレートに替えて、メタノール0.1g及びヒドロキシエチルアクリレート2.5gの両方を添加した他は、合成例1と同様にして、一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA’−2;式(1)のRがメタノールである割合が、12モル%である。)を得た。
【0061】
合成例3:一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA−1)の合成
合成例1のヒドロキシエチルアクリレートに替えて、メタノール0.2g及びヒドロキシエチルアクリレート2.2gの両方を添加した他は、合成例1と同様にして、一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA−1;式(1)のRがメタノールである割合が、24モル%である。)を得た。
【0062】
合成例4:一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA−2)の合成
合成例1のヒドロキシエチルアクリレートに替えて、メタノール0.3g及びヒドロキシエチルアクリレート1.9gの両方を添加した他は、合成例1と同様にして、一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレート(UA−2;式(1)のRがメタノールである割合が、36モル%である。)を得た。
【0063】
実施例1
合成例3で得られたウレタン(メタ)アクリレート(UA−1)の反応液(UA−1の量として23g)の液温度を50〜60℃に保ちながらアロニックスM−110(東亞合成(株)製)40.5g、イソボニルアクリレート21.5g、ラウリルアクリレート15.5g、ルシリンTPO(BASF(株)製)を1g、スミライザーGA−80(住友化学(株)製)0.3g、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(SH6062、東レダウ(株)製)1g、サノールLS−765(三井ライフテック(株)製)0.3gを加え均一な樹脂液になるまで撹拌し接着剤用液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0064】
実施例2及び比較例1〜2
表1に示したウレタン(メタ)アクリレートを用いた他は、実施例1と同様にして、それぞれ接着剤用液状硬化性樹脂組成物を得た。
【0065】
試験例
[粘度]
樹脂液の25℃における粘度をB型粘度計を用いて測定した(単位:mPa・s)。
【0066】
[ΔYI]
スライドガラス上に253μm厚のアプリケーターを用いて樹脂液を塗布し、メタルハライドランプを用いて0.1J/cmの紫外線を照射して、厚さ約130μmの硬化フィルムを得た。スライドガラス上の硬化フィルムを温度23℃、湿度50%RHの環境下において、蛍光灯光を50時間照射した。蛍光灯管は東芝製FL20SSN/18を使用し、硬化フィルム上での照度は1200luxであった。蛍光灯光照射前後に色相変化を、色差計(日本電色工業(株)製SZ−Σ80分光色差計)を用いてYI(イエローインデックス)で評価した。YI値が小さいほど黄色度が低く、色相の変化が小さいことを示す。
【0067】
[接着力]
254μm厚のアプリケータバーを用いて100μm厚の3mm厚のスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS)板上に樹脂液を塗布し、その上に100μm厚の透明なPETフィルムを気泡が入らぬように張り合わせた。透明フィルム側からメタルハライドランプを用いて1.0J/cmの紫外線を照射して硬化した。硬化後試験片を23℃、湿度50%RHで24時間状態調整し、接着力評価用試験片とした。23℃、湿度50%RHの環境中で、引っ張り試験機にて上記試験片の接着力をJISK6854に準拠し、引っ張り速度50mm/分の条件下、PETフィルムどうしの接着力はTピール法で、PETフィルムとMS板の接着力は180度ピール法でそれぞれ測定した(単位:N/cm)。
【0068】
[屈折率]
589nmでの屈折率をアッベ屈折率計にて25℃で測定した。
実施例と比較例の組成物の評価結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
表1中の商品名は下記のものを示す。
アロニックス M−110:東亞合成(株)製単官能ラジカル重合性化合物
スミライザー GA−80:3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;住友化学(株)製ヒンダードフェノール性化合物
ルシリンTPO:BASF(株)製シランカップリング剤
SH6062:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;東レダウ(株)製シランカップリング剤
サノール LS−765:三井ライフテック(株)製紫外線吸収剤
【0071】
表1の結果から、一部末端アルコール封止ウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、粘度が低く、色相変化が少なく、かつ接着力に優れる接着剤用樹脂組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物は、高分子フィルム、樹脂板等の接着剤で、光学特性が要求されるフィルム、樹脂板、特にプロジェクションテレビ用フレネルレンズの接着に適している。また本発明の接着剤用液状硬化性樹脂組成物は、優れた接着性を有し、耐熱性、耐水性に優れかつ成形加工性にも優れ、接着剤用組成物として有用である。特にガラス、プラスチック基板、特にMSフィルムやPETフィルムに対し優れた接着性を有するので塩ビシートにMSフィルムやPETフィルムをラミネートするのに適しているが、この他各種、建装材料、包装材料、印刷材料、表示材料、電気電子部品材料、光学部品材料、液晶パネル等の分野においても有用なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)(B)(C)及び(D):
(A)下記式(1)で示される構造を有するウレタン(メタ)アクリレート
[R−O−CONH−R−NHCO−O] (1)
[式中、Rは、(メタ)アクリロイル基又は炭素数1〜4のアルキル基である。Rは、環状構造を有する2価の有機基、Rは、炭素数35〜380の2〜6価の有機基である。nは、2〜6の整数である。複数存在するRは、それぞれ独立であってよいが、(A)成分全体として、Rの40〜85モル%が(メタ)アクリロイル基であり、15〜60モル%が炭素数1〜4のアルキル基である。]
(B)ラジカル重合性化合物
(C)下記式(2)で示される部分構造を有するフェノール性化合物
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を示す)
を含有する接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記化学式(1)のRが、環式ポリエーテル構造又は脂肪族ポリエーテル構造を有する、請求項1に記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(E)光重合開始剤を含む請求項1又は2記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記化学式(1)のR部分の数平均分子量が2,000〜12,000である請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、(F)シランカップリング剤を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記式(1)において、Rが、下記式(3)で示される構造である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤用液状硬化性樹脂組成物。
−[R−D]−R− (3)
(式中、Rはハードセグメント構造を有するポリオール残基であり、Dはジイソシアネート残基であり、Rはソフトセグメント構造を有するポリオール残基であり、kは2〜5の整数である。

【公開番号】特開2006−348170(P2006−348170A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175975(P2005−175975)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】