説明

接着剤組成物、半導体ウエハ保護膜形成用シート

【課題】 本発明は、平坦性、切断特性及び接着性に優れる保護膜を形成することができる半導体ウエハ保護膜形成用シート及び接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)フェノキシ樹脂 100質量部、(B)エポキシ樹脂 5〜200質量部、(C)下記一般式(1)、(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物 1〜20質量部、(D)エポキシ樹脂硬化触媒、(E)無機充填剤、及び(F)沸点が80℃〜180℃、25℃における表面張力が20〜30dyne/cmである極性溶媒を含有する接着剤組成物。
Si(OR (1)
Si(OR (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、及び、半導体ウエハをダイシングする際に半導体ウエハ裏面を保護する膜(フィルム)を形成するための半導体ウエハ保護膜形成用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの実装面積を小さくするために、フリップチップ接続法が用いられている。該接続法では、通常、(1)半導体ウエハの表面に回路および接続用バンプを形成し、(2)半導体ウエハの裏面を所定の厚さまで研磨し、(3)半導体ウエハをダイシングして半導体チップを得、(4)該チップの回路形成面を基板側に向けて基板に接続した後、(5)半導体チップを保護するために樹脂封止等を行なう、という手順がとられる。
【0003】
ところが、(2)の研磨工程で半導体ウェハ裏面に微小な筋状の傷が形成され、それがダイシング工程やパッケージングの後にクラック発生の原因になることがある。そこで、このような筋状の傷が研磨工程で生じてもその後の工程に悪影響を及ぼさないように、(2)の研磨工程の後で裏面に保護膜(チップ用保護膜)を形成することが提案され、さらに、このような保護膜を形成するためにシートとして、剥離シートとその剥離面上に形成された保護膜形成層とからなるものが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
一方、上記ダイシング工程においては、回転刃の振動などによりウエハが損傷する(以下「チッピング」という)ことがあることが知られている。
【0005】
上記チップ用保護膜にはダイシング工程におけるチッピングの防止も期待されるところであるが、該保護膜が平坦で無い場合には、ダイシングフィルムと保護膜の間に隙間が生じてしまい、ダイシングフィルムと保護膜とが接していない部分が発生する。この保護膜の非平坦性に起因して、空気層が保護膜とダイシングフィルムとの間に不均一に乗じる結果、ウエハの切断時に回転刃を振動させ、ウエハを一層損傷させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−280329号公報
【特許文献2】特開2004−260190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題を解決し、平坦性、切断特性及び接着性に優れる保護膜を形成することができる半導体ウエハ保護膜形成用シートを提供すること、並びに、かかる半導体ウエハ保護膜形成用シートの保護膜形成層を実現することができる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、
(A)フェノキシ樹脂 100質量部
(B)分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂 5〜200質量部
(C)少なくとも下記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物 1〜20質量部
Si(OR(1)
Si(OR(2)
(式中Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
(D)エポキシ樹脂硬化触媒 有効量
(E)無機充填剤
前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量100質量部に対して5〜900質量部
及び、
(F)沸点が80℃〜180℃、25℃における表面張力が20〜30dyne/cmである極性溶媒
前記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の合計量100質量部に対して10〜300質量部
を含有する接着剤組成物を提供する。
【0009】
このような接着剤組成物を用いれば、平坦性及び接着性に優れ、ダイサーによる切断特性に優れる保護膜を形成することができる。
【0010】
また、前記(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、前記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上のアルコキシシランと、下記一般式(3)で示されるアルコキシシランとの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であることが好ましい。
Si(OR(3)
(式中、Rは前記と同様である。Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
【0011】
このように、(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物が、前記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上のアルコキシシランと、上記一般式(3)で示されるアルコキシシラン(2官能性アルコキシシラン)との加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物、特に、3官能性シロキサン単位と2官能性シロキサン単位を有する部分加水分解縮合物であれば、ブリードによる接着性の低下を防止することができるため好ましい。
【0012】
また、前記(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物が、下記一般式(4)で示されるトリアルコキシシランのうち、1種又は2種以上のトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物であることが好ましい。
’Si(OR’)(4)
(式中R’は炭素数1〜3のアルキル基であり、R’はアミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかで置換された、若しくは非置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0013】
このように、アルコキシシラン部分加水分解縮合物のより好ましい形態として、3官能性アルコキシシラン単独の部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0014】
また、前記(D)成分のエポキシ樹脂硬化触媒が、リン系硬化触媒及び/又はアミン系硬化触媒であることが好ましい。
【0015】
このように、(D)成分のエポキシ樹脂硬化触媒として、リン系硬化触媒、アミン系硬化触媒が挙げられる。
【0016】
また、本発明は、半導体ウェハに保護膜を形成するための半導体ウエハ保護膜形成用シートであって、少なくとも、基材フィルムと、該基材フィルムの片面に形成された前記接着剤組成物から前記(F)成分の極性溶媒を乾燥除去した組成物からなる保護膜形成層とを有するものであることを特徴とする半導体ウエハ保護膜形成用シートを提供する。
【0017】
このような本発明の半導体ウェハ保護膜形成用シートによれば、半導体ウエハの非回路面に平坦性の優れる保護膜を容易に形成することができる。その結果、ダイシングフィルムと保護膜の間に隙間が発生し難く、ダイシングの際に回転刃に不均一な振動を発生することを防止することができる。そのため、チッピングが起こり難く、信頼性の高い半導体装置を高い歩留まりで得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の接着剤組成物、及び半導体ウェハ保護膜形成用シートであれば、接着性、特に平坦性に優れ、ダイサーによる切断特性に優れる保護膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。本明細書において「重量平均分子量」(Mwと略すこともある)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0020】
上記のように、従来、平坦性、切断特性及び接着性に優れる保護膜を形成することができる半導体ウエハ保護膜形成用シート、及びこの保護膜形成用シートを実現することができる接着剤組成物が求められていた。
【0021】
本発明者らは、(A)フェノキシ樹脂:100質量部、(B)分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂:5〜200質量部、(C)少なくとも下記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物:1〜20質量部
Si(OR(1)
Si(OR(2)
(式中Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)、(D)エポキシ樹脂硬化触媒:有効量、(E)無機充填剤:前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量100質量部に対して5〜900質量部、及び、(F)沸点が80℃〜180℃、25℃における表面張力が20〜30dyne/cmである極性溶媒:前記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の合計量100質量部に対して10〜300質量部を含有する接着剤組成物であれば、平坦性、切断特性及び接着性に優れる保護膜を形成することができることを見出した。
以下、本発明の接着剤組成物について説明する。
【0022】
<接着剤組成物>
−(A)フェノキシ樹脂−
フェノキシ樹脂は重量平均分子量が通常10000〜200000、好ましくは12000〜100000である。
【0023】
フェノキシ樹脂としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールAもしくはビスフェノールF等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。このようなフェノキシ樹脂としては商品名PKHC、PKHH、PKHJ(いずれも巴化学社製)、ビスフェノールA、ビスフェノールF混合タイプの商品名エピコート4250、エピコート4275、エピコート1255HX30、臭素化エポキシを用いたエピコート5580BPX40(いずれも日本化薬社製)、ビスフェノールAタイプの商品名YP-50、YP-50S、YP-55、YP-70(いずれも東都化成社製)、JER E1256、E4250、E4275、YX6954BH30、YL7290BH30(いずれもジャパンエポキシレジン社製)等があげられる。
【0024】
フェノキシ樹脂として好ましいものは、PKHH、YP−50、YP−50S、YP−55、YP−70、JER E1256等のビスフェノールAタイプである。
【0025】
これらのフェノキシ樹脂は一種単独でも二種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0026】
−(B)エポキシ樹脂−
本発明で(B)成分として用いられるエポキシ樹脂は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物である。特に、エポキシ当量が50〜5000g/eqであることが好ましく、より好ましくは100〜500g/eqである。
【0027】
該エポキシ樹脂は重量平均分子量が通常10000未満、好ましくは400〜9000、より好ましくは500〜8000である。
【0028】
このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、またはこれらのハロゲン化物のジグリシジルエーテル;並びに、これらの化合物の縮重合物(いわゆるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等);ブタジエンジエポキシド;ビニルシクロヘキセンジオキシド;レゾルシンのジグリシジルエーテル;1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ベンゼン;4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ジフェニルエーテル;1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキセン;ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート;1,2−ジヒドロキシベンゼン、レゾルシノール等の多価フェノールまたは多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシグリシジルエーテル或いはポリグリシジルエステル;フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂(或いはハロゲン化ノボラック型フェノール樹脂)とエピクロルヒドリンとを縮合させて得られるエポキシノボラック(即ち、ノボラック型エポキシ樹脂);過酸化法によりエポキシ化した、エポキシ化ポリオレフィン、エポキシ化ポリブタジエン;ナフタレン環含有エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;シクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0029】
これらの中でも(B)成分として好ましいものは、室温で液状であるビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0030】
これらのエポキシ樹脂は1種単独でも2種以上の組み合わせとしても使用することができる。
【0031】
(B)成分のエポキシ樹脂の配合量は、(A)成分のフェノキシ樹脂100質量部に対して5〜200質量部、特に10〜100質量部であることが好ましい。エポキシ樹脂の配合量が5質量部未満であると接着剤組成物の接着力が劣る場合があり、200質量部を超えると接着剤層の柔軟性が不足する場合がある。
【0032】
−(C)アルコキシシラン部分加水分解縮合物−
(C)成分は、少なくとも下記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物である。
Si(OR (1)
Si(OR (2)
(式中Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
【0033】
また、(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、上記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上のアルコキシシランと、下記一般式(3)で示されるアルコキシシランとの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物とすることもできる。
Si(OR (3)
(式中、Rは前記と同様である。Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
【0034】
一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物とは、シリコーンオイルが2官能性シロキサンであるのに対して、3官能性または4官能性のシロキサン単位を主成分とする3次元網目構造を有するシリコーンであり、一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応で直接合成された部分加水分解縮合物の他に、一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応を経て更に加水分解縮合反応により合成された部分加水分解縮合物も含む。(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、4官能性や3官能性シロキサン単位を有していれば特に限定されず、1)2官能性シロキサン単位と4官能性や3官能性シロキサン単位を組み合わせたもの、2)4官能性や3官能性シロキサン単位のみからなるものなどがある。ブリードによる接着性の低下を防止する観点から、少なくとも3官能性シロキサン単位と2官能性シロキサン単位を有することが好ましく、2官能性シロキサン単位/3官能性シロキサン単位(モル比)が1を超えることがより好ましい。
【0035】
一般式(2)、(3)において、ケイ素原子に結合したRおよびRとしては、炭素数1から3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、その中でも、基材に対する平滑塗工特性、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂との相溶性の観点からは、フェニル基およびメチル基を含むアルコキシシランが好ましい。また、架橋密度を高くする観点からは、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基又はγ−グリシドキシ基を含むものが好ましい。このような基を用いて架橋密度を高くすることにより、耐熱性、耐リフロー性、膜強度、耐溶剤性に優れた接着剤組成物を得ることができる。アルコキシシラン部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)中の各3官能性シロキサン単位において、Rは単一であっても、2種以上であってもよいが、耐熱性、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂との相溶性、高い架橋密度を両立させる点で、フェニル基およびメチル基を有することがより好ましい。
【0036】
また、3官能性アルコキシシラン単独の部分加水縮合物がより好ましく、前記(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物が、下記一般式(4)で示されるトリアルコキシシランのうち、1種又は2種以上のトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物である場合が好ましい。
’Si(OR’) (4)
(式中R’は炭素数1〜3のアルキル基であり、R’はアミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかで置換された、若しくは非置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0037】
また、一般式(2)で示される3官能性アルコキシシランを含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、主鎖がすべてシロキサン結合であることが好ましい。このようなアルコキシシラン部分加水分解縮合物を含有することにより、接着剤組成物の基材に対する平滑塗工特性を向上させることができる。
【0038】
一般式(1)で示される4官能性アルコキシシランを含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「Mシリケート51」(多摩化学工業(株)製)、商品名「MSI51」(コルコート社製)、商品名「MS51」、「MS56」(三菱化学(株)製))、テトエトキシシランの部分加水分解縮合物(商品名「シリケート35」、「シリケート45」(多摩化学工業(株)製)、商品名「ESI40」、「ESI48」(コルコート社製))、テトラメトキシシランとテトラエトキシシランとの共部分加水分解縮合物(商品名「FR−3」(多摩化学工業(株)製)、商品名「EMSi48」(コルコート社製))などを挙げることができる。
【0039】
一般式(2)で示される3官能性アルコキシシランを含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物の例としては、(i)旭化成ワッカー(株)製:SY231(メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(アルコキシ当量222))、SY550(メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む)、SY300(水酸基、フェニル基、プロピル基を含む(水酸基価3重量%))、SY409(水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価2.5重量%))、SY430(水酸基、フェニル基を含む(水酸基価5重量%))、IC836(水酸基、フェニル基を含む(水酸基価3.5重量%))、(ii)信越化学工業(株)製:ストレートシリコーンレジン:KR220L(固体)、KR242A、KR271、KR282(重量平均分子量(Mw)=100000〜200000、水酸基を含む(水酸基価1重量%))、KR300、KR311(Mw=6000〜10000、水酸基を含む(水酸基価4.5重量%))、シリコーン中間体:KC89(メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量45重量%))、KR500(メトキシ基を含む(メトキシ基含有量30重量%))、KR212(Mw=2000〜3000、水酸基、メチル基、フェニル基を含む(水酸基価5重量%))、KR213(メトキシ基、メチル基、フェニル基を含む(メトキシ基含有量22重量%))、KR9218(メトキシ基、メチル基、フェニル基を含む(メトキシ基含有量15重量%))、KR251、KR400、KR255、KR216、KR152(iii)東レ・ダウコーニング(株)製:シリコーンレジン:804RESIN(フェニルメチル系)、805RESIN(フェニルメチル系)、806ARESIN(フェニルメチル系)、840RESIN(フェニルメチル系)、SR2400(メチル系)、シリコーン中間体:3037INTERMEDIATE(Mw=1000、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量18重量%))、3074INTERMEDIATE(Mw=1400、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量17重量%))、Z−6018(Mw=2000、水酸基、フェニル基、プロピル基を含む(水酸基価6重量%))、217FLAKE(Mw=2000、水酸基、フェニル基を含む(水酸基価6重量%))、220FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、233FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、249FLAKE(Mw=3000、水酸基、フェニル基、メチル基を含む(水酸基価6重量%))、QP8−5314(Mw=200、メトキシ基、フェニル基、メチル基を含む(メトキシ基含有量42重量%))、SR2402(Mw=1500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量31重量%))、AY42−161(Mw=1500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量36重量%))、AY42−162(Mw=2500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量33重量%))、AY42−163(Mw=4500、メトキシ基、メチル基を含む(メトキシ基含有量25重量%))、(iv)東亜合成(株)製:シルセスキオキサン誘導体、OX−SQ(オキセタニル基を含む(官能基当量:263g/eq))、OX−SQ−H(オキセタニル基を含む(官能基当量:283g/eq))、OX−SQSI−20(オキセタニル基を含む(官能基当量:262g/eq))、AC−SQ(アクリロイル基を含む(官能基当量:165g/eq))、及びこれらのアルコキシシラン部分加水分解縮合物を、更に加水分解縮合反応させたアルコキシシラン部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0040】
一般式(3)で示される2官能性アルコキシシランを含むアルコキシシランの部分加水分解縮合物の例としては、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0041】
該アルコキシシラン部分加水分解縮合物の配合量は、(A)成分のフェノキシ樹脂100質量部に対して1〜20質量部であり、好ましくは2〜15質量部である。1質量部より少ないと、半導体ウエハに貼付した際に保護膜にチッピング防止に必要な平坦性が得難く、20質量部より多いと、本発明の接着剤組成物の接着力の低下、保護膜の平坦性の低下が生じ易く、さらに組成物(塗工液)に相分離が起こり易い。
【0042】
−(D)エポキシ樹脂硬化触媒−
(D)成分であるエポキシ樹脂硬化触媒としては、リン系硬化触媒、アミン系硬化触媒等が例示される。
【0043】
リン系硬化触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、および下記式で示される化合物が挙げられる。
【化1】

(式中、R〜R15は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素、臭素、よう素などのハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基、ビニル基機、アリル基等の炭素原子数2〜8のアルケニル基、プロピニル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜8のアルキニル基、フェニル基、トルイル基等の炭素原子数6〜8のアリール基などの一価の非置換の炭化水素基、これらの炭化水素基の水素原子の少なくとも1部がフッ素、臭素、よう素などのハロゲン原子で置換された例えばトリフルオロメチル基などの置換炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。置換一価炭化水素基においては総ての置換基が同一でもおのおの異なっていても構わない。)
【0044】
リン系硬化触媒で特に好ましい具体例は、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムトリフェニルボレート、テトラフェニルホスホ二ウムテトラフェニルボレート等である。
【0045】
アミン系硬化触媒としては、例えば、ジシアンジアミド、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体などが挙げられる。これらの中で好ましいものは、ジシアンジアミド、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールである。
【0046】
(D)成分の触媒としては、上述した触媒を1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。特に好ましくはジシアンジアミドが使用される。
【0047】
(D)成分のエポキシ樹脂硬化触媒の配合量は、有効量であり、具体的には、5〜50質量部である。
【0048】
−(E)無機充填剤−
本発明で用いられる無機充填剤(E)としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物やカーボンブラック、銀粒子等の導電性粒子を使用することができる。シリカとしては溶融シリカ、結晶シリカが好ましい。これらの中でも、特にシリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物が好ましい。
【0049】
無機充填剤の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜7μmである。無機充填剤の平均粒径がこの範囲内にあると、保護膜形成用シートの保護膜形成層としても半導体ウエハ上に設けた保護膜としても被膜表面の性状を良好に保ちやすく、均一な被膜を得やすい。また、最近接着剤層として被膜に求められる厚みは15〜50μmであるが、無機充填剤の平均粒径が上記範囲内にあると、凝集した2次粒子が存在しても、所望の厚みを支障なく達成することができる。
【0050】
該無機充填剤の配合量は、(A)、(B)、(C)、(D)成分の合計量100質量部に対して5〜900質量部、より好ましくは10〜700質量部、最も好ましくは100〜500質量部である。該配合量が、5質量部未満では、無機充填剤の配合目的を十分に達成することが難しく、高吸水率、高線膨張係数、低強度となり、一方、900質量部を超えると組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が悪くなる。
【0051】
−(F)溶媒−
(F)成分の溶媒としては、沸点が80℃〜180℃、25℃における表面張力が20〜30dyne/cmである極性溶媒が使用される。
【0052】
該溶媒の沸点は好ましくは100〜180℃であり、より好ましくは120〜160℃である。沸点が80℃より低いと塗工中に溶媒が塗工液(組成物)から揮散し、塗工液にゲル状物を生成して平坦な塗膜の形成が困難になる。沸点が180℃を超えると、塗工後に塗膜から溶媒を除去するのにより高温で処理する必要が生じ、組成物中で反応が進行し、接着膜として機能低下を引き起こす。
【0053】
該溶媒は25℃における表面張力は20〜30dyne/cm(2×10−4〜3×10−4N/cm)である。表面張力が20dyne/cm未満であると、塗工した際の塗膜端部ひいては乾燥後の被膜端部の形状維持が困難となったり、縦筋が発生し易くなる。30dyne/cmを超えると、基材フィルムに対して塗工性が低下し、塗工抜けが発生し易くなる。
【0054】
(F)成分の極性溶媒の好ましい具体例としては、キシレン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン等のパーフルオロ芳香族炭化水素系溶媒;四塩化炭素、エチルクロライド、1,1,1-トリクロロエタン、イソブチルクロライド、t−ブチルクロライド、ビニルクロライド、ブロモエチル等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチル・n−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル・n−ブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸ブチル、等の酢酸アルキル系溶媒、シクロヘキサノンなどが挙げられる。中でもメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、及びこれらの混合溶媒が好ましい。
【0055】
これらの極性溶媒は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することが出来るが、2種以上を組合わせて使用することが好ましい。2種以上、特に2種を併用することにより、沸点や組成物の溶解性に差を生じさせて、平滑な塗膜を形成することができる。2種以上を使用する場合には、各溶媒は少なくとも25質量%であることが好ましい。
【0056】
また、該極性溶媒の配合量は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の合計量100質量部に対して10〜300質量部である。
【0057】
−その他の任意成分−
本発明の接着剤組成物は上述した成分に加えて、必要に応じて、その他の成分および各種の添加剤を含むことができる。その他の任意成分について以下に説明する。
【0058】
・モノエポキシ化合物
前述した(B)成分のエポキシ樹脂(分子中に少なくともエポキシ基を2以上有する)の他に、本発明の目的を損なわない量で、モノエポキシ化合物を配合することは差し支えない。例えば、このモノエポキシ化合物としては、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、プロピレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、オクチレンオキシド、ドデセンオキシドなどが挙げられる。
【0059】
・エポキシ樹脂の硬化剤
硬化剤は必須ではないが、これを添加することにより樹脂マトリックスの制御が可能となり、低線膨張率化、高Tg化、低弾性率化等の効果を期待することができる。
【0060】
この硬化剤としては、従来から知られているエポキシ樹脂用の種々の硬化剤を使用することができる。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メンタンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのアミン系化合物;エポキシ樹脂−ジエチレントリアミンアダクト、アミン−エチレンオキサイドアダクト、シアノエチル化ポリアミンなどの変性脂肪族ポリアミン;ビスフェノールA、トリメチロールアリルオキシフェノール、低重合度のフェノールノボラック樹脂、エポキシ化もしくはブチル化フェノール樹脂、“Super Beckcite”1001[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、“Hitanol”4010[(株)日立製作所製]、Scado form L.9(オランダScado Zwoll社製)、Methylon 75108(米国ゼネラルエレクトリック社製)などの商品名で知られている分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を含有するフェノール樹脂;“Beckamine”P.138[日本ライヒホールド化学工業(株)製]、“メラン”[(株)日立製作所製]、“U−Van”10R[東洋高圧工業(株)製]などの商品名で知られている炭素樹脂;メラミン樹脂、アニリン樹脂などのアミノ樹脂;式HS(C24OCH2OC24SS)n24OCH2OC24SH(n=1〜10の整数)で示されるような1分子中にメルカプト基を少なくとも2個有するポリスルフィド樹脂;無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸などの有機酸もしくはその無水物(酸無水物)などが挙げられる。
【0061】
上記した硬化剤のうちでもフェノール系樹脂(特に、フェノールノボラック樹脂)が、本発明の組成物に良好な成形作業性を与えるとともに、優れた耐湿性を与え、また毒性がなく、比較的安価であるので望ましい。
【0062】
上記した硬化剤は、1種単独で用いてもよいが、各硬化剤の硬化性能などに応じて2種以上を併用してもよい。
【0063】
この硬化剤の量は、(A)成分のフェノキシ樹脂と(B)成分のエポキシ樹脂との反応を妨げない範囲で、その種類に応じて適宜調整される。一般には前記エポキシ樹脂100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部の範囲で使用される。硬化剤の使用量が1質量部以上であれば、通常硬化剤の添加効果を期待することができ、100質量部以下であれば、経済的に不利となる恐れがないほか、エポキシ樹脂が希釈されて硬化に長時間を要するようになり、更には硬化物の物性が低下するという不利が生じる場合がない。
【0064】
・その他の添加剤:
本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、無機系または有機系の顔料、染料等の着色剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、熱安定剤等を添加することができる。例えば、顔料、染料等を配合して保護膜を着色しておくと、レーザーマークなどの刻印した場合、視認性や光学機器認識性能が向上する。
【0065】
また、本発明では、半導体ウェハに保護膜を形成するための半導体ウエハ保護膜形成用シートであって、少なくとも、基材フィルムと、該基材フィルムの片面に形成された上述した接着剤組成物から前記(F)成分の極性溶媒を乾燥除去した組成物からなる保護膜形成層とを有する半導体ウエハ保護膜形成用シートを提供する。以下に半導体ウェハ保護膜形成用シートについて説明する。
【0066】
<半導体ウエハ保護膜形成用シート>
−基材フィルム−
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等の合成樹脂フィルムが用いられ、特に、チッピング防止保護膜形成層を硬化後に基材を該保護膜形成層から剥離する場合には、耐熱性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムが好ましく用いられる。また基材フィルムの表面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布して離型処理を施して離型性被膜を形成してもよい。
【0067】
基材フィルムの膜厚は、通常は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、特に好ましくは20〜100μm程度である。
【0068】
−保護膜形成層−
保護膜形成層は、上記基材フィルム上に前述した本発明の組成物を、塗布して溶媒を乾燥させた後に通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmになるように、グラビアコーター等公知の方法で施与することにより得ることができる。
【0069】
上記組成物中の溶剤の乾燥条件は、通常、室温で2時間以上、40〜130℃で1〜20分間程度であり、好ましくは50〜120℃で1〜20分間である。
【0070】
上記本発明の半導体ウェハ保護膜形成用シートは、以下の方法により使用することができる。
(1)本発明の保護膜形成用シートの保護膜形成層上に、回路が形成された半導体ウエハの裏面を貼付する工程、
(2)保護膜形成層から基材フィルムを剥離して裏面に保護膜を有する半導体ウェハを得る工程、
(3)加熱により保護膜を硬化する工程、
(4)硬化させた保護膜上にダイシングフィルムを貼付する工程、
(5)半導体ウエハおよび保護膜をダイシングする工程。
ここで、工程(2)と(3)が逆順であってもよい。
【0071】
工程(3)における加熱は、硬化剤が有効に硬化性能を発揮する条件であって、通常、120〜200℃で30分間〜12時間、特に好ましくは150〜190℃で1〜6時間である。
【0072】
工程(5)における半導体ウエハのダイシングは、ダイシングシートを用いた常法により行われる。本発明の保護膜形成用シートを用いることによって、チップ切断面に微小な割れや欠け(チッピング)が発生し難くなる。ダイシングにより、裏面に保護膜を有する半導体チップが得られる。該チップは、コレット等の汎用手段によりピックアップする。これにより、均一性の高い保護膜を、チップ裏面に簡便に形成でき、しかもダイシング時に発生するチッピングが軽減されるために、回路面に対する損傷が少ない歩留まりが高い半導体装置となる。
【実施例】
【0073】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0074】
<アルコキシシラン部分加水分解縮合物の製造>
(合成例1)
2Lのフラスコに、メチルトリエトキシシラン400g(2.25Siモル)、テトラメトキシシラン91g(0.60Siモル)、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン37g(0.15Siモル)を仕込み、よく混合させた。次いで液温が約10℃になるよう冷却後、0.25Nの酢酸水溶液306gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、40℃以下で1時間、次いで60℃で3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、加水分解で生成したメタノール及びエタノールを常圧にて液温が80℃になるまで留去した後、無色透明のアルコキシシラン部分加水分解縮合物A(アルコキシシラン部分加水分解縮合物A)を得た。
【0075】
(合成例2)
2Lのフラスコに、KC−89S(商品名、信越化学工業(株)製;メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物、平均4量体)232g(2.29Siモル)、メタノール240gを仕込み、よく混合させた。次いで液温が約10℃になるよう冷却後、0.05Nの塩酸水溶液245gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、60℃にて6時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、加水分解で生成したメタノールを80mmHgの減圧下、液温が50℃以下の温度で1時間減圧留去した後、無色透明のアルコキシシラン部分加水分解縮合物反応液B(アルコキシシラン部分加水分解縮合物B)を得た。
【0076】
(比較合成例1)
2Lのフラスコに、メチルトリエトキシシラン240g(1.35Siモル)、テトラエトキシシラン343g(1.65Siモル)を仕込み、よく混合させた。次いで液温が約10℃になるよう冷却後、0.25Nの酢酸水溶液345gを滴下し、内温が40℃を超えないように冷却しながら加水分解を行った。滴下終了後、60℃にて3時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、加水分解で生成したエタノールを常圧にて液温が80℃になるまで留去した後、無色透明のアルコキシシラン部分加水分解縮合物反応液C(アルコキシシラン部分加水分解縮合物C)を得た。尚、アルコキシシラン部分加水分解縮合物Cの重量平均分子量は36000であり、本発明の接着剤組成物中のアルコキシシラン部分加水分解縮合物の重量平均分子量の範囲内(300以上30000以下)ではないものである。
【0077】
(比較合成例2)
2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン600g(4.41Siモル)、酢酸0.4gと蒸留水80gを仕込み、10℃以下に冷却後、10℃以下で3時間加水分解を行った。室温にて16時間、次いで60℃にて4時間撹拌し、加水分解を完結させた。
その後、加水分解で生成したメタノールを80mmHgの減圧下、液温が50℃以下の温度で1時間減圧留去した後、無色透明のアルコキシシラン部分加水分解縮合物反応液D(アルコキシシラン部分加水分解縮合物D)を得た。尚、アルコキシシラン部分加水分解縮合物Dの重量平均分子量は200であり、本発明の接着剤組成物中のアルコキシシラン部分加水分解縮合物の重量平均分子量の範囲内(300以上30000以下)ではないものである。
【0078】
得られた上記アルコキシシラン部分加水分解縮合物に関して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析(ポリスチレン換算)を行った結果について表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
(接着剤組成物の調製方法)
以下表2、3に示す量で下記成分を混合して、固形分50重量%の組成物を得た。表2、3に示す成分(A)〜(E)は以下のとおりである。
【0081】
(A)成分
フェノキシ樹脂系ポリマー:Mw60000、 JER1256(ジャパンエポキシレジン社製)
(B)成分
エポキシ樹脂:RE310S(日本化薬社製)、25℃の粘度15Pa・s
(C)成分
上記、アルコキシシランA、アルコキシシランB、アルコキシシランC、アルコキシシランD
(D)成分
ジシアンジアミド(DICY−7):ジャパンエポキシレジン社製
(E)成分
シリカ:SE2050 平均粒径0.5μm 最大粒径5μm KBM−403処理品、(株)アドマテックス社製
(F)成分
シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン
【0082】
(保護膜形成用シートの作成)
上記のように調整した接着剤組成物を、表面がシリコーン離型剤で被覆された厚さ38μmのPETフィルム上に塗布し、110℃で10分間加熱乾燥をして溶媒を除去し、厚さ25μmの保護膜形成層を形成した。
【0083】
(外観感応試験)
目視観察を行い、透過光にて保護膜形成層に塗工ムラが無いかを確認した。
【0084】
(平坦性試験)
キーエンス社製 レーザー顕微鏡 VK−8710にてPETフィルム上に形成した保護膜形成層を観察し、直径50μm以上300μm以下で且つ深さ10μm以上の凹部を凹状欠陥として数を数えた。観察単位面積は1mである。
【0085】
(チッピング試験)
保護膜形成用シートの保護膜形成層面を、接着フィルム貼り付け装置(テクノビジョン社製、商品名:FM−114)を用いて70℃で厚み220μmのシリコンウエハ(8インチの未研磨ウエハをディスコ社製 DAG−810を用いて#2000研磨して、220μm厚としたウエハ)の表面に貼り付けた後、該保護膜形成層からPETフィルムを剥がし、保護膜が形成されたシリコンウェハを得た。該シリコンウエハを回路形成面側から下記条件で10mm×10mm角のチップにダイシングした。得られたチップ8個の顕微鏡断面写真を撮り、断面方向に長さ25μm以上の大きさの割れや欠けがある場合にチッピング「有り」と評価した。結果を表2、表3に示す。
【0086】
[ダイシング条件]
装置:DISCOダイサー DAD−341
カット方法:シングル
刃回転数:40000rpm
刃速度:50mm/sec
ダイシングフィルムの厚み85μm
ダイシングフィルムへの切り込み:15μm
【0087】
(せん断接着力試験)
上述と同様の方法で、保護膜形成用シートの保護膜形成層面を直径8インチのシリコンウエハの裏面に貼り付けた後、基材フィルムを剥離した。保護膜が貼付されたウエハを保護膜ごと3mm×3mm角のチップに切断した。その後、チップをピックアップして10mm×10mmのシリコンウエハの中央部に、170℃で、0.63MPaの加圧下で1秒間熱圧着をして積層体を得た。得られた積層体を175℃で4時間加熱処理をし、保護膜を硬化させて試験片を作成した。この試験片をDAGE社製 DAGE4000を用いて、速度200μm/sec、高さ50μm、試験片温度260℃でせん断接着力を測定した。
【0088】
結果を表2、表3に示す。
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
本発明の接着剤組成物を用いれば、平坦性、切断特性及び接着性に優れる保護膜を形成することができた(実施例1〜8)。一方、アルコキシシラン部分加水分解縮合物を含まない接着剤組成物(比較例1)、アルコキシシラン部分加水分解縮合物量が1質量部未満、20質量部を超える接着剤組成物(比較例2〜5)、重量平均分子量が300以上30000以下の範囲外であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物C、Dを用いた接着剤組成物(比較例6、7)では、凹状欠陥やチッピングが発生した。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)フェノキシ樹脂 100質量部
(B)分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂 5〜200質量部
(C)少なくとも下記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上を含むアルコキシシランの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であり、重量平均分子量が300以上30000以下で、残存アルコキシ量が2wt%以上50wt%以下であるアルコキシシラン部分加水分解縮合物 1〜20質量部
Si(OR (1)
Si(OR (2)
(式中Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
(D)エポキシ樹脂硬化触媒 有効量
(E)無機充填剤
前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計量100質量部に対して5〜900質量部
及び、
(F)沸点が80℃〜180℃、25℃における表面張力が20〜30dyne/cmである極性溶媒
前記(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分の合計量100質量部に対して10〜300質量部
を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
前記(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、前記一般式(1)及び(2)で示されるアルコキシシランのうち1種又は2種以上のアルコキシシランと、下記一般式(3)で示されるアルコキシシランとの加水分解縮合反応により合成した部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
Si(OR (3)
(式中、Rは前記と同様である。Rは、炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、オキセタニル基、ビニル基、水酸基、アミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかであり、互いに同一又は異なっていても良い。)
【請求項3】
前記(C)成分のアルコキシシラン部分加水分解縮合物が、下記一般式(4)で示されるトリアルコキシシランのうち、1種又は2種以上のトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
’Si(OR’) (4)
(式中R’は炭素数1〜3のアルキル基であり、R’はアミノ基、(メタ)アクリロキシ基、イソシアネート基、及びγ−グリシドキシ基のいずれかで置換された、若しくは非置換の炭素数1〜3のアルキル基である。)
【請求項4】
前記(D)成分のエポキシ樹脂硬化触媒が、リン系硬化触媒及び/又はアミン系硬化触媒であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
半導体ウェハに保護膜を形成するための半導体ウエハ保護膜形成用シートであって、少なくとも、基材フィルムと、該基材フィルムの片面に形成された請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着剤組成物から前記(F)成分の極性溶媒を乾燥除去した組成物からなる保護膜形成層とを有するものであることを特徴とする半導体ウエハ保護膜形成用シート。

【公開番号】特開2011−190339(P2011−190339A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57224(P2010−57224)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】