説明

接着剤組成物、及びそれを用いた積層体、並びに二次電池

【課題】 本発明は、熱融着性フィルムと金属箔の接着において高い接着強度を有し、電解質溶液に浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体であって、熱融着性フィルムと金属箔とを貼り合わせていた接着剤層が熱融着性フィルムを熱融着する際の熱で軟化・流動しにくい積層体を形成できる、接着剤組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】 下記(A)〜(D)を含有する接着剤組成物であって、ビスフェノール化合物にポリアルキレンオキサイドが付加してなる水酸基価が100〜450mgKOH/gのポリオール(A)とカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)との合計100重量%中に、前記ポリオール(A)を2〜30重量%、前記エラストマー(B)を10〜80重量%、前記粘着付与剤(C)を10〜80重量%含み、ポリイソシアネート(D)を、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基/前記ジオール(B)の水酸基=0.3〜8/1(モル比)の範囲で含む、接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用の電池容器の形成に好適な積層体に関する。詳しくは、熱融着性フィルムと金属箔との接着において高い接着強度を有し、電解質に浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体であって、熱融着性フィルムと金属箔とを貼り合わせていた接着剤層が熱融着性フィルムを熱融着する際の熱で軟化・流動しにくい積層体に関する。
本発明は、前記のような二次電池容器用の積層体の形成に好適な接着剤組成物に関する。
また、本発明は、前記のような二次電池容器用の積層体を用いてなる二次電池に関する。
さらに詳しくは、本発明は、非水電解質二次電池用の積層体、前記積層体形成用の接着剤組成物、及び前記積層体を用いてなる非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、軽量かつ小型の非水電解質二次電池の需要が増大している。なかでも、より軽量コンパクト化が可能な、アルミニウム箔に代表される金属箔を含むラミネートフィルムを用いてなる、袋状やトレイ状の電池容器を用いたものが注目を集めている。
【0003】
袋状やトレイ状の電池容器を用いた電池は、多くの場合、以下のようにして得る。
工程1: 袋状やトレイ状の電池容器に用いられる積層体を形成する。電池容器用積層体は、一般に、外装部材/金属箔/熱融着樹脂フィルムを積層した形態のものであり、各構成部材は接着剤により接着されている。
工程2: 前記積層体を用い、前記熱融着樹脂フィルムを内層とする、少なくとも一方の端が空いた状態の袋やトレイを形成する。
工程3: 前記袋や前記トレイに、電池本体、前記電池本体の正極・負極にそれぞれ接続されてなる複数の電極端子(前記電極端子の他の端部は前記袋や前記トレイから突出するように配する)、及び電解質を入れる。
工程4: そして、袋状の場合は、開放端近傍の前記熱融着樹脂フィルム同士を対向させ、開放端から電極端子の他の端部を袋外に突出させた状態で前記熱融着樹脂フィルムで挟み、開放端近傍を熱融着させることにより、電池本体及び電解質等を密封する。
トレイ状の場合は、トレイ縁部の前記熱融着樹脂フィルムに、平板状の積層体を構成する熱融着樹脂フィルムを対向させ、トレイ縁部からトレイ外部に電極端子の他の端部を突出させた状態で前記熱融着樹脂フィルムで挟み、トレイ縁部を熱融着させることにより、電池本体及び電解質等を密封する。
【0004】
従って、電池容器用積層体のうち、金属箔と熱融着樹脂フィルムとを貼り合わせるための接着剤には、主に以下の性能が要求される。
(1) 金属箔と熱融着樹脂フィルムとの接着強度が大きいこと。
(2) 上記の接着剤層が耐電解液性を有していること。即ち、電解質を電池容器内に密封しても、金属箔と熱融着樹脂フィルムとの接着強度が維持できること。
例えば、リチウム電池の電解質溶液は、六フッ化リン酸リチウムのようなリチウム塩と、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート等の溶剤とを含む。
電池容器に電解質溶液を入れると、電解質溶液が熱融着樹脂フィルムを通り抜け、接着剤層に達すし、熱融着樹脂フィルムと金属箔との接着力低下を引き起こす。さらに、電池容器外部から電解質溶液に水分が浸入すると、六フッ化リン酸リチウムのようなリチウム塩と水とが反応し、フッ酸が発生する。発生したフッ酸は熱融着樹脂フィルム及び接着剤層を通り抜け、金属箔にまで到達し、金属箔を腐食させ、この腐食が熱融着樹脂フィルムと金属箔との接着力を著しく低下させる。
そこで、熱融着樹脂フィルムと金属箔とを貼りあわせる接着剤層には、電解質溶液に対する耐性が求められる。
【0005】
(3) 上記の接着剤層が耐短絡性を有していること。即ち、熱融着時、接着剤層の熱流動が大きくないこと。前記の工程4で説明したように、電池容器を密封する際には、電極端子の他の端部が容器外部に突出するように配して、熱融着樹脂フィルム同士を熱融着する。この熱融着時の熱で、金属箔と熱融着樹脂フィルムとを貼り合わせていた接着剤層が軟化・流動化すると、接着剤層の外部に位置する金属箔と電極端子とが接触し、短絡してしまう。従って、電池容器用積層体の最内層の熱融着樹脂フィルムを金属箔と貼りあわせるための接着剤層には、熱融着時の熱で大きくは流動しないことが求められる。
【0006】
特許文献1(特開平3−62447号公報)には、熱融着樹脂フィルムの素材として、アクリル酸変性ポリエチレンまたはアクリル酸変性ポリプロピレンの利用が開示されている。
【0007】
また、特許文献2(特開2001−236932号公報)には、金属箔とオレフィン系樹脂層との間に、受酸層であるハイドロタルサイトを含有する変性オレフィン系樹脂層を設けてなる電池の包材が開示されている。変性オレフィン系樹脂としては、無水マレイン酸ポリプロピレンが開示されている。
【0008】
特許文献3(特開2003−123708号公報)には、酸変性熱可塑性エラストマー(A)及びカップリング剤(B)を含有する接着剤組成物を用い、未延伸ポリプロピレンフィルムと、ナイロンフィルムがラミネートされてなるアルミニウム箔とを貼り合わせ、未延伸ポリプロピレンフィルム/接着剤層/アルミニウム箔/ナイロンフィルムという構成の積層体を得、前記積層体を包装材として用い二次電池を得る旨、開示されている。さらに接着剤組成物に粘着付与剤を含み得ることも開示されている。
【0009】
特許文献4(WO2009/087776号パンフレット)には、カルボキシル基含有ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネートとを含有する接着剤組成物が開示されており、粘着付与剤の利用が開示されている。
また、特許文献5(特開2010−092703号公報)にも同様の接着剤が開示され、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせて、前記熱可塑性樹脂フィルムを内層とする電池ケース用包装材料として用い得る旨記載されている。
しかし、特許文献4、5に記載される接着剤を硬化して得られる接着剤層は、熱可塑性樹脂フィルムを熱融着させ、電池容器を形成しようとする際、非常に熱流動しやすいので、端子部で短絡しやすいという欠点を有していた。
【0010】
さらに、特許文献6(WO2004/041954号パンフレット)には、カルボキシル基含有熱可塑性エラストマー(A)、ポリオレフィンポリオール(B)、粘着付与剤(C)及び多官能イソシアネート(D)を含有する接着剤組成物が開示されている。そして、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔やポリエチレンテレフタレートフィルムと、未延伸ポリプロピレンフィルムとを貼り合わせ旨記載されている。
また、特許文献7(特開2005−063685号公報)にも同様の接着剤が開示され、前記接着剤を用いて、アルミニウム箔と熱可塑性樹脂フィルムとを貼り合わせて、前記熱可塑性樹脂フィルムを内層とする電池ケース用包装材料として用い得る旨記載されている。
しかし、特許文献6、7に記載される接着剤を硬化して得られる接着剤層も、特許文献4、5の場合と同様に、熱可塑性樹脂フィルムを熱融着させ、電池容器を形成しようとする際、熱流動しやすいので、端子部で短絡しやすいという欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−62447号公報
【特許文献2】特開2001−236932号公報
【特許文献3】特開2003−123708号公報
【特許文献4】WO2009/087776号パンフレット
【特許文献5】特開2010−092703号公報
【特許文献6】WO2004/041954号パンフレット
【特許文献7】特開2005−063685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、熱融着性フィルムと金属箔の接着において高い接着強度を有し、電解質溶液に浸漬されても接着強度を高レベルで維持できる積層体であって、熱融着性フィルムと金属箔とを貼り合わせていた接着剤層が熱融着性フィルムを熱融着する際の熱で軟化・流動しにくい積層体を形成できる、接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記(A)〜(D)を含有する接着剤組成物であって、
下記一般式(1)で表される水酸基価が100〜450mgKOH/gであるポリオール(A)と、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)の合計100重量%中に、前記ポリオール(A)を2〜30重量%、前記エラストマー(B)を10〜80重量%、前記粘着付与剤(C)を10〜80重量%含み、
ポリイソシアネート(D)を、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基/前記ポリオール(A)の水酸基=0.3〜8/1(モル比)の範囲で含む、接着剤組成物に関する。
【0014】
【化1】

(式中、R1およびR2は、直鎖または分岐構造を有する炭素数1〜8の炭化水素を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に水素、メチル基またはエチル基を表し、nおよびmは1以上の整数から選ばれる。)
【0015】
前記ポリオール(A)の水酸基価は、130〜450mgKOH/gであることが好ましく、
前記ポリオール(A)のR1およびR2は、分岐構造を有する炭素数1〜4の炭化水素であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体であって、
前記接着剤層が、前記発明のいずれか記載の接着剤組成物から形成された接着剤層である、積層体に関し、金属箔側に他のシート状部材がさらに積層されてなることが好ましい。
【0017】
さらに本発明は、金属箔又は熱融着性フィルムの一方の面に、前記発明のいずれか記載の接着剤組成物を塗工し、未硬化の接着剤層を形成し、
前記未硬化の接着剤層の表面に、熱融着性フィルム又は金属箔を重ね、
前記未硬化の接着剤層を硬化し、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせることを特徴とする、金属箔と熱融着性フィルムとの積層体の製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、電池本体と、前記電池本体の正極と負極にそれぞれ接合されてなる複数の端子と、電池容器と、電解質とを具備する二次電池であって、
前記電池容器が、接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体を用い、前記熱融着性フィルムが前記電解質に接するものであり、
前記熱融着性フィルムの一部の熱融着によって、前記複数の端子の他の端部を前記電池容器から突出させた状態で、前記電池本体と前記複数の端子と電解質とを前記電池容器内部に密封してなり、
前記接着剤層が、前記発明のいずれか記載の接着剤組成物から形成された接着剤層である、二次電池に関し、電池容器を形成する積層体は、金属箔側に他のシート状部材をさらに具備する積層体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の接着剤組成物により、高い接着強度で熱融着性フィルムと金属箔とを貼り合わせた積層体を得ることができる。そして、前記積層体が電解質溶液に浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持できる。熱融着性フィルムを融着させる際の熱によって、硬化後の接着剤層が軟化・流動化しにくいので、短絡しにくい、二次電池用容器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明で使用されるポリオール(A)について説明する。本発明で使用されるポリオール(A)は、下記一般式(1)で表される構造を有している。
【0021】
【化2】

(式中、R1およびR2は、直鎖または分岐構造を有する炭素数1〜8の炭化水素を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に水素、メチル基またはエチル基を表し、nおよびmは1以上の整数から選ばれる。)
【0022】
本発明で使用されるポリオール(A)は、後述するポリイソシアネート(D)を反応させることによって、ウレタン結合による架橋構造を形成し、接着強度が向上し、耐電解液性が優れ、更に熱融着時の温度での軟化・流動性を大幅に抑制し、短絡を防止することができる。
【0023】
本発明で使用されるポリオール(A)は、ビスフェノール化合物と炭素数1〜8のアルキレンオキシドを付加反応することにより得られる。製造の際に触媒を用いても良く、用いられる触媒としては、1級アミン、2級アミン、3級アミンおよびそれらの塩などのアミン系触媒、4級アンモニウム塩、酸触媒などが挙げられる。
【0024】
前記ビスフェノール化合物としては、
R3=R4=水素の、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、2,2’−メチレンビスフェノールや、
R3=R4=メチル基の、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(o−ヒドロキシフェニル)−2−(p−ヒドロキシフェニル)プロパンや、
R3=水素、R4=メチル基の、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンや、
R3=メチル基、R4=エチル基の、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン 等が挙げられる。
【0025】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシドなどが挙げられ、特にエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが本発明で使用される他の成分との相溶性が良いという観点から好ましい。
【0026】
また、本発明で使用されるポリオール(A)は、構造中にビスフェノール構造を有するため、後述のカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン相に相溶することから、エラストマー(B)のスチレン相由来の高い耐熱性、耐薬品性を保持したまま後述のポリイソシアネート(D)との反応による高架橋構造が得ることができ、より高い短絡防止性、耐薬品性を得ることができる。
【0027】
本発明で使用されるポリオール(A)の水酸基価は、後述のポリイソシアネート(D)との反応により得られる架橋構造が密になり、耐電解液性に優れるという理由から100〜450mgKOH/gであるのが好ましく、更に好ましくは130〜450mgKOH/gである。ポリオール(A)の水酸基価が100mgKOH/gよりも小さい時は、後述のポリイソシアネート(D)との反応により得られる架橋構造が不足することで耐電解液性が悪化したり、ポリオール(A)1分子中におけるビスフェノール構造の割合が少なくなるためスチレン相への相溶性が悪化し、短絡防止性が悪化してしまう恐れがある。
ポリオール(A)は、一種類を単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い
【0028】
本発明で使用されるポリオール(A)は、耐電解液性が優れるという理由から、R1およびR2の炭化水素が分岐構造を有していることが好ましい。耐電解液性が優れる理由としては、R1およびR2の炭化水素が分岐していることで立体障害の効果により後述のポリイソシアネート(D)との反応により形成されるウレタン結合の分解を抑制していることが考えらえる。
【0029】
本発明で使用されるポリオール(A)としては、入手し易いという点で、下記一般式(2)で示されるものが好ましい。市販品としては、例えば、東邦化学工業株式会社製のビスオールシリーズや、株式会社アデカ製のアデカポリオールBPXシリーズ、三洋化成工業株式会社製のニューポールBPシリーズ、BPEシリーズ、日本乳化剤株式会社製のBAシリーズ等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い
【0030】
【化3】

一般式(2)において、R1、R2、m、nは、一般式(1)と同様。
【0031】
次に、本発明で使用されるカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)について説明する。本発明における「熱可塑性エラストマー」とは、加硫処理を行わなくても、その成形品が常温でゴム弾性を有する樹脂、すなわち熱可塑性樹脂にしてかつゴム弾性を有する物を指す。化学構造的にはABA型のブロックまたは(A−B)n型のマルチブロック構造を有するものが一般的である。
【0032】
前記熱可塑性エラストマーは、耐電解液性および耐熱性が優れるという理由から、ポリスチレン構造を分子中に有しているものが好ましく、具体例としてはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレンーイソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレン共重合体等が挙げられる。以下、ポリスチレン単位を有するブロック共重合体をスチレン系エラストマーという。
【0033】
本発明で使用されるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、前述のポリオール(A)や粘着付与剤(C)や溶剤等との相溶性が良く、金属基材への接着強度が優れる点から、構造中にカルボキシル基を有することが重要である。熱可塑性エラストマーへのカルボキシル基の導入方法としては、熱可塑性エラストマーを製造するためのモノマーの重合の際に、適量のマレイン酸や無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸や前記不飽和カルボン酸の無水物を共重合させる方法が一般的である。
【0034】
本発明で使用されるカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の酸価は、0.05〜30(mgCH3ONa/g)であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜25.0(mgCH3ONa/g)であり、特に1〜25(mgCH3ONa/g)であることが好ましい。カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(A)の酸価が0.05(mgCH3ONa/g)よりも低い時は、本発明の接着剤組成物に含まれる他の成分との相溶性が悪化したり、金属基材との十分な接着強度が得られないおそれがあり、30(mgCH3ONa/g)よりも高い時はエラストマー(B)の粘弾性が損なわれてしまうおそれがある。
【0035】
本発明で使用されるカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、エラストマー(B)中にスチレン単位が5〜60重量%含まれることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%である。カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン単位が5重量%よりも少ない時は、十分な粘弾性が得られない恐れがあり、スチレン単位が60重量%よりも多い時は、溶剤への溶解性が著しく低下し溶液安定性を損ねてしまうおそれがある。
【0036】
本発明で使用されるカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のタフテックMシリーズや、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンFGシリーズ等が挙げられる。これは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0037】
次に、本発明で使用される粘着付与剤(C)について説明する。本発明において、粘着付与剤(C)は金属箔と熱融着性フィルム間の高度な接着強度を付与するために使用される。
本発明で使用される粘着付与剤(C)としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂および水添石油樹脂等が挙げられ、接着強度を向上させる目的で用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0038】
前記ポリテルペン系樹脂の具体例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体およびこれらとフェノールあるいはビスフェノールAとの共重合体などが挙げられ、市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製のYSレジンPX、YSレジンA、YSポリスターT等が挙げられる。
【0039】
前記ロジン系樹脂としては、天然ロジン、重合ロジンおよびこれらのエステル誘導体などが挙げられ、市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のペンセルA、スーパーエステルA、パインクリスタルKR−85、KR−612、KR−614、KE−100、KE−311、KE−359、KE−604等が挙げられる。
【0040】
前記脂肪族系石油樹脂としては、一般に石油のC5留分より合成される樹脂である。市販品としては、例えば、トーネックス株式会社製のエスコレッツ、日本ゼオン株式会社製のクイントン、グッドイヤー社製のウィングダック等が挙げられる。
【0041】
前記脂環族系石油樹脂としては、一般に石油のC9留分より合成される樹脂である。市販品としては、例えば、丸善石油化学株式会社製のマルカレッツ等がある。
【0042】
前記共重合石油樹脂としては、一般に石油のC5/C9を共重合した樹脂である。市販品としては、例えば、東邦化学工業株式会社のトーホーハイレジン等がある。
【0043】
前記水添石油樹脂としては、上記の粘着付与剤樹脂を水素添加したものである。市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のアルコン、ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロン、トーネックス株式会社のエスコレッツ等がある。
【0044】
本発明で使用される粘着付与剤(C)の軟化点は、60〜160℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。粘着付与剤(C)の軟化点が60℃よりも低い時は、十分な接着強度向上の効果が得られないおそれがある。また、粘着付与剤(C)の軟化点が160℃よりも高い時は、接着剤の凝集力を損ない接着強度が低下してしまうおそれがある。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、前記(A)〜(C)の合計100重量%中に、前記ポリオール(A)を2〜30重量%、前記カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を10〜80重量%、前記粘着付与剤(C)を10〜80重量%含むことが重要であり、前記ポリオール(A)を2〜20重量%、前記カルボキシル基含有熱可塑性エラストマー(B)を20〜60重量%、前記粘着付与剤(C)を25〜70重量%含むことが好ましい。
【0046】
前記ポリオール(A)の含有量が2重量%より少ない場合、ポリオール(A)と後述のポリイソシアネート(D)との反応による架橋構造が疎になり、十分な短絡防止性が得られない。また、ポリオール(A)の含有量が30重量%より多い場合、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が相対的に少なくなり、エラストマー(B)による凝集力を損ねてしまい十分な接着強度を確保できないおそれがある。
【0047】
前記カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が10重量%より少ない場合、接着剤の凝集力が不足し十分な接着強度が得られないおそれがある。また、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が80重量%より多い場合、溶液粘度が高くなりすぎて塗工性が悪化してしまうおそれがある。
【0048】
一方、粘着付与剤(C)の含有量が10重量%より少ない場合、粘着付与剤(C)の添加による十分な接着強度向上の効果が得られなくなるおそれがある。また、粘着付与剤(C)の含有量が80重量%より多い場合、接着剤層の凝集力が不足し十分な接着強度が得られない。
【0049】
本発明の接着剤組成物は、前記ポリオール(A)と反応する硬化性成分として、ポリイソシアネート(D)を含む。
本発明で使用されるポリイソシアネート(D)としては、以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートおよびこれらから誘導された化合物を好ましく用いることができる。
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートおよびこれらから誘導された化合物、即ち、前記ジイソシアネートヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体等が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせても使用しても良い。
【0050】
本発明で使用されるポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の数は、1分子中、平均して2〜7個が好ましく、さらに好ましくは2.2〜3.5個である。ポリイソシアネート(D)1分子中のイソシアネート基の数が2個より少ないと、十分な架橋量を得ることができず、電解液耐性が悪化したり、短絡防止性が不足してしまうおそれがある。また、ポリイソシアネート(D)1分子中のイソシアネート基の数が7個より多いと、ポットライフが非常に短くなり使用が困難となるおそれがある。
【0051】
本発明で使用されるポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の官能基量は、2.5〜6.0mmol/gの範囲が好ましく、さらに好ましくは3.0〜5.5mmol/gである。ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の官能基量が2.5mmol/gより少ないと、十分な架橋量を得ることができず、電解液耐性が悪化したり、十分な短絡防止性が得られないおそれがある。また、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基の官能基量が6.0mmol/gより多いと、ポットライフが非常に短くなり使用が困難となるおそれがある。
【0052】
本発明の接着剤組成物は、前記ポリオール(A)由来の水酸基1モルに対して、イソシアネート基の量が0.3〜8モルとなる範囲でポリイソシアネート(D)を含むことが重要であり、イソシアネート基の量は好ましくは0.6〜6モルである。(以下、ポリオール(A)の水酸基の合計に対するポリイソシアネート(D)の全イソシアネート基の当量比をNCO/OH比と呼ぶ。)
NCO/OH比が0.3未満では、ポリオール(A)との反応による架橋構造が不足し、短絡防止性が不足する。一方、NCO/OH比が8より大きいと、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)による凝集力を損ねてしまい接着強度が低下してしまったり、ポリオール(A)との反応が早すぎ、接着剤組成物としてのポットライフ(使用可能時間)が非常に短くなってしまったりする。
【0053】
本発明の接着剤組成物において、上記(A)〜(D)の他に、接着剤用として公知の添加剤を配合しても良い。各種添加剤は、(D)と共に配合することもできるし、(D)の配合に先んじて配合することもできる。
【0054】
本発明で使用される公知の添加剤として、硬化反応を促進させたい場合、公知の反応促進剤を使用することができる。この場合、(D)の配合に先んじて配合することが好ましい。
本発明で使用される反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0055】
本発明で使用される反応促進剤の配合量としては、(A)〜(C)の合計100重量部に対して、0.001〜0.2重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。反応促進剤の添加量が0.001重量部未満であると、硬化反応の十分な促進効果が得られない恐れがあり、0.2重量部よりも大きいと、硬化反応が早すぎるため接着剤のポットライフを損ねてしまう恐れがある。
【0056】
本発明の接着剤組成物は、金属箔と熱融着性フィルムとの積層に好適に使用される。
金属箔の金属としては、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。
熱融着性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられ、特に未延伸のフィルムが好適に用いられる。
これらの金属製の熱融着性フィルムは、各種表面処理を施したものであっても良い。表面処理の例としては、例えば、サンドブラスト処理、研磨処理などの物理的処理や蒸着による脱脂処理、エッチング処理やカップリング剤を塗布するプライマー処理などの化学処理がある。
【0057】
本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
金属箔(又は熱融着性フィルム)の一方の面に、本発明の接着剤組成物を塗工し、溶剤を揮散させ(乾燥させ)、未硬化の接着剤層を形成し、60〜150℃、加圧下に前記未硬化の接着剤層の表面に、熱融着性フィルム(又は金属箔)を重ねた後、40〜80℃で3〜7日程度静置し、接着剤層を十分硬化させ(エージングとも称する)、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせる。
接着剤組成物の塗工には、コンマコーター等の一般的な塗工機を用いることができる。また、乾燥硬化時の硬化接着剤層の厚み(量)は、1〜30g/m2程度であることが好ましい。
【0058】
なお、金属箔は、他方の面(本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層が接していない面)に、他のシート状部材を具備することができる。
他のシート状部材は、予め接着剤組成物(本発明の接着剤組成物と同じであってもよいし、異なっていてもよい)を用いて、金属箔に積層されていてもよいし、本発明の接着剤組成物を用いて金属箔と熱融着性フィルムとの積層体を得た後、金属箔に他のシート状部材を積層することもできる。
用いられる他のシート状部材としては、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂(ナイロン)等の延伸フィルム等が挙げられ、この他のシート状部材は、積層体が電池容器となる際、外装部材となる。
【0059】
本発明の接着剤組成物を用いて、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせてなる積層体を用いてなる二次電池用電池容器について説明する。本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、二次電池、特に非水電解質二次電池の電池容器の形成に好適に用いられる。
二次電池は、電池本体と、前記電池本体の正極と負極にそれぞれ接合されてなる複数の端子と、電池容器と、電解質とを具備する。前記電池容器は、本発明の接着剤組成物から形成される接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体から得られるものであり、前記熱融着性フィルムが前記電解質に接する。
【0060】
電池容器には、袋状用の容器のパウチタイプと、金型を用いて平板状の積層体を成型加工してなるトレイ状容器タイプとがある。袋状用の容器の一形態が、特開2007−2794381号公報の図8に例示される。また、トレイ状容器の一形態が同公報の図9に示され、他の形態が図2に示される。本発明の接着剤組成物を用いてなる積層体は、袋状、トレイ状、両方のタイプの容器の形成に使用できる。いずれの場合も、熱融着性フィルムが内側を向くように配し、複数の端子の先端部を外部に突出した状態で、熱融着性フィルムの一部を熱融着し、電池本体及び電解質溶液を密封する。
【0061】
熱融着性フィルムの一部を熱融着する際、本発明の接着剤組成物から形成された接着剤層は、軟化・流動しにくいので、融着部における金属箔と端子との接触(短絡)を来たしにくい。また、電解質溶液は、熱融着性プラスチックシートから金属箔に向かって浸透し始めるが、本発明の接着剤組成物から形成された接着剤層は、電解質溶液に対する耐性に優れているので、熱融着性プラスチックシートと金属箔との間の接着強度は低下せず、液漏れ等の問題が発生しない。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、部は重量部、%は重量%、水酸基価はmgKOH/g、酸価はmgCHONa/gをそれぞれ示す。
【0063】
<主剤1>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン BA−P8グリコール(水酸基価170mgKOH/g)を7部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1913(スチレン含量30重量%)を65部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製ロジンエステル パインクリスタル KE−100(軟化点100℃)を28部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤1の溶液(固形分30%)を得た。
【0064】
<主剤2>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン BA−P8グリコール(水酸基価170mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1913(スチレン含量30重量%)を18部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を67部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤2の溶液(固形分30%)を得た。
【0065】
<主剤3>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン BA−P8グリコール(水酸基価170mgKOH/g)を26部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1913(スチレン含量30重量%)を49部、粘着付与剤(C)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロン P−85(軟化点85℃)を67部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤3の溶液(固形分30%)を得た。
【0066】
<主剤4>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン BA−6Uグリコール(水酸基価228mgKOH/g)を10部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としてクレイトンポリマー株式会社製SEBS クレイトンFG−1901G(スチレン含量30重量%)を15部、粘着付与剤(C)としてトーネックス株式会社製水添化ジシクロペンタジエン樹脂 エスコレッツ 5320(軟化点125℃)を67部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤4の溶液(固形分30%)を得た。
【0067】
<主剤5>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン BA−6Uグリコール(水酸基価228mgKOH/g)を20部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としてクレイトンポリマー株式会社製SEBS クレイトンFG−1901G(スチレン含量30重量%)を60部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製ロジンエステル パインクリスタル KE−100(軟化点100℃)を20部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤5の溶液(固形分30%)を得た。
【0068】
<主剤6>
ポリオール(A)として三井東圧化学株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)メタン KF300B(水酸基価330mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1943(スチレン含量20重量%)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤6の溶液(固形分30%)を得た。
【0069】
<主剤7>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−11(水酸基価310mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1943(スチレン含量20重量%)を50部、粘着付与剤(C)としてヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂 クリアロン P−85(軟化点85℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤7の溶液(固形分30%)を得た。
【0070】
<主剤8>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−11(水酸基価310mgKOH/g)を10部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1943(スチレン含量20重量%)を50部、粘着付与剤(C)としてトーネックス株式会社製水添化ジシクロペンタジエン樹脂 エスコレッツ 5320(軟化点125℃)を40部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤8の溶液(固形分30%)を得た。
【0071】
<主剤9>
ポリオール(A)として日本乳化剤株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン BA−8グリコール(水酸基価195mgKOH/g)を8部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1911(スチレン含量30重量%)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製ロジンエステル パインクリスタル KE−100(軟化点100℃)を42部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤9の溶液(固形分30%)を得た。
【0072】
<主剤10>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−1000(水酸基価113mgKOH/g)を10部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1911(スチレン含量30重量%)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製ロジンエステル パインクリスタル KE−100(軟化点100℃)を40部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤10の溶液(固形分30%)を得た。
【0073】
<主剤11>
カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1943(スチレン含量20重量%)を65部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤11の溶液(固形分30%)を得た。
【0074】
<主剤12>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−11(水酸基価310mgKOH/g)を25部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を75部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤12の溶液(固形分30%)を得た。
【0075】
<主剤13>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−11(水酸基価310mgKOH/g)を25部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1943(スチレン含量20重量%)を75部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤13の溶液(固形分30%)を得た。
【0076】
<主剤14>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−11(水酸基価310mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック H1051(スチレン含量20重量%、酸未変性)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤14の溶液(固形分30%)を得た。
【0077】
<主剤15>
ポリオール(A)として株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン アデカポリオールBPX−2000(水酸基価57mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1913(スチレン含量20重量%)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤15の溶液(固形分30%)を得た。
【0078】
<主剤16>
ポリオール(A)として三菱化学株式会社製のポリオレフィンポリオール ポリテールH(水酸基価47mgKOH/g)を15部、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として旭化成工業株式会社製SEBSタフテック M1913(スチレン含量20重量%)を50部、粘着付与剤(C)として荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂 アルコン P−140(軟化点140℃)を35部、反応促進剤として日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタンU−810を0.01部仕込み、トルエン/メチルエチルケトン=8/2の混合溶剤で希釈して50℃で3時間加熱攪拌し、主剤15の溶液(固形分30%)を得た。
【0079】
<硬化剤1>
イソホロンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量4.08mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)をトルエンで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤1とする。
【0080】
<硬化剤2>
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量5.19mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)をトルエンで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤2とする。
【0081】
<硬化剤3>
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体(イソシアネート基の官能基量3.97mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)をトルエンで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤3とする。
【0082】
<硬化剤4>
トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体(イソシアネート基の官能基量4.13mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)をトルエンで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものを硬化剤4とする。
【0083】
<実施例1〜10>、<比較例1〜8>
表1、2に示すNCO/OH比となるように、各種主剤溶液と硬化剤溶液を配合し、トルエンで希釈して固形分20%に調整した溶液を接着剤溶液とする。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
表1中に示す略語は以下の通り。
【0087】
<ポリオール(A)>
・BA−P8グリコール:日本乳化剤株式会社製 2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:170(mgKOH/g)
・BA−6Uグリコール:日本乳化剤株式会社製 2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:228(mgKOH/g)
・BA−8グリコール:日本乳化剤株式会社製 2,2−ビス(4−ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:195(mgKOH/g)
・アデカポリオールBPX−11:株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:310(mgKOH/g)
・アデカポリオールBPX−1000:株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:113(mgKOH/g)
・アデカポリオールBPX−2000:株式会社ADEKA製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)プロパン、水酸基価:57(mgKOH/g)
・KF300B:三井東圧化学株式会社製の2,2−ビス(4−ポリオキシプロピレンオキシフェニル)メタン、水酸基価:330(mgKOH/g)
・ポリテールH:三菱化学株式会社製のポリオレフィンポリオール、水酸基価:47(mgKOH/g)
【0088】
<カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)>
・タフテックM1911:旭化成工業株式会社製SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン含量30重量%、酸価:2(mgCHONa/g)
・タフテックM1913:旭化成工業株式会社製SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン含量30重量%、酸価:10(mgCHONa/g))
・タフテックM1943:旭化成工業株式会社製SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン含量20重量%、酸価:10(mgCHONa/g))
・タフテックH1052:旭化成工業株式会社製SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン含量20重量%、酸価:0(mgCHONa/g))
・クレイトンFG−1901G:クレイトンポリマー社製SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン、スチレン含量30重量%、酸価:11mgCHONa/g)
【0089】
<粘着付与剤(C)>
・パインクリスタルKE−100:荒川化学工業株式会社製ロジンエステル、軟化点:100℃
・アルコンP−140:荒川化学工業株式会社製完全水添C9樹脂、軟化点:140℃
・クリアロンP−85:ヤスハラケミカル株式会社製水添テルペン樹脂、軟化点:85℃
・エスコレッツ5320:トーネックス株式会社製水添ジシクロペンタジエン樹脂、軟化点:125℃
【0090】
<反応促進剤>
・ネオスタンU−810:日東化成株式会社製ジラウリン酸ジオクチル錫
【0091】
<ポリイソシアネート(D)>
・IPDIトリマー:イソホロンジイソシアネートの三量体
・HDIトリマー:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体
・HDI−TMP:ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体
・TDI−TMP:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体
【0092】
<性能試験>
(アルミニウム箔/未延伸ポリプロピレンラミネートフィルムの作製)
厚み100μmのアルミニウム箔の片面に実施例および比較例の各接着剤を塗布し、100℃、1分間乾燥し(乾燥時接着剤量:2〜3g/m)、前記接着剤層に厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(以下CPPと呼ぶ)を重ね合わせ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層体を得た。その後、得られた積層体を60℃、7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤層を十分硬化させた。こうして、得られたアルミニウム箔/CPPラミネートフィルムを、以下「Al/CPP積層フィルム」と呼ぶ
【0093】
(接着強度)
[25℃剥離試験]
前記Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。アルミニウム箔/CPP間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。
【0094】
[耐短絡試験]
前記Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、それぞれ50mm×50mmの大きさに切断し、試験片とした。
2枚の試験片をCPP側が向き合うようにし、幅4mm、長さ55mm、厚さ70μmのニッケル端子の長さ55mmの辺が試験片の50mmの辺にほぼ平行になるような位置に、端子の先端が約10mmほど試験片外に突出するよう、2枚の試験片のCPP間に挟む。次いで、ヒートシール機を用い、上下2枚の金属系熱板(7mm×7mm)間に、幅4mmニッケル端子が前記熱板で覆われるよう、2枚の試験片ごとニッケル端子を挟み、190℃、1.0MPaで20秒間、圧着した。
試験片及びニッケル端子を代え、100回圧着試験を行った。試験片外に突出させたニッケル端子先端部と2枚の試験片の外側のアルミニウム箔間の導通を調べ、短絡した回数で短絡防止性を評価した。
【0095】
[耐電解液試験]
前記Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で2週間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、この試験片を電解液[6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)に溶解し、1mol/lの6フッ化リン酸リチウム溶液としたもの]に85℃で7日間浸漬させた。その後、試験片を取り出し約10分程度流水で洗浄し、ペーパーワイパーで水を十分に拭き取った後に十分に水分を乾燥させた。
こうして得られた試験片を、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。アルミニウム箔/CPP間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。
得られた積層フィルムの評価結果を表3〜4に示す。
【0096】
<評価基準>
[25℃剥離試験]
◎ 実用上優れる:7N/15mm以上
○ 実用域:5〜7N/15mm
△ 実用下限:2〜5N/15mm
× 実用不可:2N/15mm未満
【0097】
[耐短絡試験]
◎ 実用上優れる:100回耐短絡試験を行い、短絡0回
○ 実用域:100回耐短絡試験を行い、短絡1〜5回
△ 実用下限:100回短絡試験を行い、短絡6〜15回
× 実用不可:100回短絡試験を行い、短絡16回以上
【0098】
[耐電解液試験]
◎ 実用上優れる:耐電解液試験前後で剥離強度の保持率が90%以上
○ 実用域:耐電解液試験前後で剥離強度の保持率が60%〜90%
△ 実用下限:耐電解液試験前後で剥離強度の保持率が20%〜60%
× 実用不可:耐電解液試験前後で剥離強度の保持率が20%未満、もしくはデラミネート
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
表4に示すように、比較例1は、ポリオール(A)を含有しないため、ポリイソシアネート(D)との架橋構造が出来ず短絡防止性および耐電解液性が著しく低下した。
比較例2は、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含有しないため、接着剤層の凝集力が不足し、接着強度が著しく低下した。
比較例3は、粘着付与剤(C)を含有しないため、十分な接着強度を確保できなかった。
比較例4は、ポリイソシアネート(D)を含有しないため、ポリオール(A)との架橋構造が出来ず短絡防止性および耐電解液性が著しく低下した。
【0102】
比較例5は、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)がカルボキシル基を含有しないため、接着剤組成物の他の成分との相溶性が悪化し、接着剤層の粘弾性が悪化し、接着強度が著しく悪化した。
【0103】
比較例6および比較例7は、ポリオール(A)の水酸基価が100mgKOH/gよりも低いため、ポリイソシアネート(D)との架橋構造が不足し、接着剤の架橋度と凝集力が不足し、ラミネート強度、短絡防止性が著しく悪化した。特に比較例8は、ポリオール(A)としてポリオレフィンポリオールを使用したため、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)中のスチレン相による凝集力が低下し、ラミネート強度および耐電解液性が著しく悪化した。
【0104】
比較例8は、ポリオール(A)に比して過量のポリイソシアネート(D)を配合したので、両者の反応が早すぎて接着剤調製時に沈殿が発生してしまい、接着剤の塗工および評価ができなかった。
【0105】
一方、表3に示す実施例1〜10は、ポリオール(A)として一般式1で表される構造を有しており、水酸基価が100〜450mgKOH/gであるポリオール、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として、酸価が0.05〜30.0mgCH3ONa/gで共重合体中にスチレン単位が5〜60重量%含まれるカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー、粘着付与剤(C)として軟化点が60〜160℃の粘着付与剤、及びポリイソシアネート(D)として、1分子中、平均して2〜7個であるポリイソシアネートを、それぞれ好適な量を含有するので、初期接着力、エージング後の接着力、耐湿熱性試験後の接着力をすべてバランスよく満たしていた。
【0106】
中でも実施例8、9がすべての試験で高い性能を示した。
実施例8、9の接着剤は、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が20〜60重量%という好適範囲であったため、好適範囲外の実施例1、2と比較すると接着強度が良好であった。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリオール(A)の含有量が2〜20重量%という好適範囲であったため、好適範囲外の実施例3と比較してカルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との配合量のバランスとポリイソシアネート(D)との架橋密度が最適な範囲となり、短絡防止性および耐電解液性が良好であった。
また、実施例8、9の接着剤は、粘着付与剤(C)の含有量が25〜70重量%という好適範囲であったため、好適範囲外であった実施例4、5と比較すると接着強度が良好であった。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリイソシアネート(D)がNCO/OH=0.6〜6.0という好適な配合比で配合されているため、実施例6、7と比較すると、接着強度、短絡防止性、電解液耐性が優れていた。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリオール(A)の水酸基価が130〜450mgKOH/gという好適範囲であったため、ポリオール(A)の水酸基価が好適範囲外の実施例10と比較すると、短絡防止性および電解液耐性が優れていた。
また、実施例8ではポリオール(A)の構造中のR1、R2の炭化水素が分岐構造を有しているため、分岐構造を有していない実施例9に比べると耐電解液性試験での劣化が抑制され、耐電解液試験後の接着力保持率が高い値を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の接着剤を用いれば、ポリオレフィン系樹脂と金属を高強度で接着することができ、耐薬品性に優れ、高温時に熱流動性し難いため、高温でのラミネート不良が生じ難い積層体を得ることができる。このような特性を利用して、特に本発明の接着剤を用いることでポリオレフィン系樹脂/金属間の接着強度、耐電解液性、短絡防止性の優れたポリオレフィン系樹脂非水電解質二次電池用ソフトパックを形成することができる。
本発明の接着剤を用いてなる非水電解質二次電池用ソフトパックは、非水電解質二次電池の安全性、寿命延長、供給の安定化に寄与することが出来る。このような非水電解質二次電池の高品質化は、非水電解質二次電池の普及につながり、新規エネルギー材料としてエネルギーの高効率利用という観点から環境保全に寄与することにもなる。
【0108】
その他、本発明に係る接着剤組成物は、非水電解質二次電池用ソフトパックの他に、建築、医療、自動車など各種産業分野において、高接着強度、耐薬品性、高温時のラミネート安定性が求められるポリオレフィン系樹脂を用いた材料用の接着剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)を含有する接着剤組成物であって、
下記一般式(1)で表される水酸基価が100〜450mgKOH/gであるポリオール(A)と、カルボキシル基含有スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と、粘着付与剤(C)の合計100重量%中に、前記ポリオール(A)を2〜30重量%、前記エラストマー(B)を10〜80重量%、前記粘着付与剤(C)を10〜80重量%含み、
ポリイソシアネート(D)を、ポリイソシアネート(D)のイソシアネート基/前記ポリオール(A)の水酸基=0.3〜8/1(モル比)の範囲で含む、
接着剤組成物。
【化1】

(式中、R1およびR2は、直鎖または分岐構造を有する炭素数1〜8の炭化水素を表し、R3およびR4は、それぞれ独立に水素、メチル基またはエチル基を表し、nおよびmは1以上の整数から選ばれる。)
【請求項2】

前記ポリオール(A)の水酸基価が130〜450mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物
【請求項3】
前記ポリオール(A)のR1およびR2が分岐構造を有する炭素数1〜4の炭化水素であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体であって、
前記接着剤層が、請求項1〜3いずれか1項に記載の接着剤組成物から形成された接着剤層である、積層体。
【請求項5】
金属箔側に他のシート状部材がさらに積層されてなる、請求項4記載の積層体。
【請求項6】
金属箔又は熱融着性フィルムの一方の面に、
請求項1〜3いずれか1項に記載の接着剤組成物を塗工し、未硬化の接着剤層を形成し、
前記未硬化の接着剤層の表面に、熱融着性フィルム又は金属箔を重ね、
前記未硬化の接着剤層を硬化し、金属箔と熱融着性フィルムとを貼り合わせることを特徴とする、金属箔と熱融着性フィルムとの積層体の製造方法。
【請求項7】
電池本体と、前記電池本体の正極と負極にそれぞれ接合されてなる複数の端子と、電池容器と、電解質とを具備する二次電池であって、
前記電池容器が、接着剤層を介して、金属箔と熱融着性フィルムとが積層されてなる積層体を用い、前記熱融着性フィルムが前記電解質に接するものであり、
前記熱融着性フィルムの一部の熱融着によって、前記複数の端子の他の端部を前記電池容器から突出させた状態で、前記電池本体と前記複数の端子と電解質とを前記電池容器内部に密封してなり、
前記接着剤層が、請求項1〜3いずれか1項に記載の接着剤組成物から形成された接着剤層である、二次電池。
【請求項8】
電池容器を形成する積層体が、金属箔側に他のシート状部材をさらに具備する積層体である、請求項7記載の二次電池。

【公開番号】特開2012−126826(P2012−126826A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279499(P2010−279499)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】