説明

接着剤組成物、回路接続材料、接続体及びその製造方法、並びに半導体装置

【課題】 低温短時間硬化性と保存安定性とを両立することができ、接続信頼性に優れた回路接続材料の実現を可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続材料、接続体及びその製造方法並びに半導体装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の接着剤組成物は、オキセタン化合物と、エポキシ化合物と、下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤とを含有する。



一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜4の炭化水素基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を示し、Xは、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸イオンを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続材料、接続体及びその製造方法、並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶ディスプレイ等の分野で、電子部品の固定や回路接続の用途に各種の接着剤が使用されている。例えば、液晶ディスプレイとTCPとの接続、FPCとTCPとの接続、及び、FPCとプリント配線板との接続には、回路接続材料として接着剤組成物中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている。最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップを基板に直接実装するいわゆるCOGが行われており、ここでも異方導電性接着剤などが適用されている。これらの分野では、電子回路の高密度化・高精細化に伴い、接着剤にも高い接着力や信頼性が求められている。
【0003】
近年、精密電子機器の分野では、回路の更なる高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、従来のエポキシ樹脂系を用いた回路接続材料の接続条件(170℃以上)では、配線の脱落・剥離・位置ずれが生じる等の問題点があり、COGでは更にチップと基板との熱膨張差に起因する反り、更に、反りに起因するチップと基板の剥離が顕著に発生する問題があった。そのため、低温且つ短時間の接続条件であって、更に高接着力が得られる接着剤が要求されている。
【0004】
高接着力化を達成するための手段として、カチオン重合型ではグリシジルエーテル型エポキシよりも硬化収縮が少ないオキセタン化合物と、熱潜在カチオン発生剤を組み合わせた接着剤組成物が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−072957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるオキセタン化合物を使用した系では、接着剤組成物の低温短時間硬化性と保存安定性との両立が十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低温短時間硬化性と保存安定性とを両立することができ、接続信頼性に優れた回路接続材料の実現を可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続材料、接続体及びその製造方法並びに半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは種々検討を行い、オキセタン化合物とエポキシ化合物とを併用し、特定の熱潜在性カチオン発生剤を組み合わせた接着剤組成物が、低温短時間硬化と保存安定性とを両立し、良好な接続信頼性及び良好な接着力を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、オキセタン化合物と、エポキシ化合物と、下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤と、を含有する接着剤組成物を提供する。
【0010】
【化1】



一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜4の炭化水素基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を示し、Xは、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸イオンを示す。
【0011】
本発明の接着剤組成物は、上記構成を有することにより、低温短時間硬化性と保存安定性とを両立する接続信頼性に優れた回路接続材料の実現が可能となる。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、導電粒子を接着剤組成物全量に対して0.1〜30体積%の割合で含むことができる。この場合、接着剤組成物を回路接続材料として用いたときに、回路の短絡を防止しつつ回路電極同士を低い接続抵抗で接続することが容易となる。
【0013】
本発明はまた、本発明の接着剤組成物からなり、相対向する回路電極間に介在され、該回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続するために用いられる回路接続材料を提供する。
【0014】
本発明の回路接続材料は、十分な保存安定性を有しながらも低温短時間の接続条件で十分な接着力を発現することができる。これにより、接続信頼性に優れた接続体を得ることができる。
【0015】
本発明はまた、対向配置された一対の回路部材と、本発明の回路接続材料の硬化物からなり、一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように回路部材同士を接着する接続部とを備える接続体を提供する。
【0016】
本発明はまた、対向配置された一対の回路部材の間に本発明の回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、上記回路接続材料の硬化物からなり、一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように回路部材同士を接着する接続部を形成することにより、一対の回路部材及び接続部を備える接続体を得る接続体の製造方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、半導体素子と、半導体素子を搭載する基板と、半導体素子及び基板が電気的に接続されるように半導体素子及び基板を接着する半導体素子接続部材とを備え、上記半導体素子接続部材が本発明の回路接続材料の硬化物である半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温短時間硬化性と保存安定性とを両立することができ、接続信頼性に優れた回路接続材料の実現を可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続材料、接続体及びその製造方法並びに半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る接続体の一実施形態を示す部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)はそれぞれ回路部材を接続して接続体を得る一連の工程図である。
【図3】本発明の半導体装置の一実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の接着剤組成物は、(A)オキセタン化合物と、(B)エポキシ化合物と、(C)下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤とを含有する。
【0021】
【化2】



一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜4の炭化水素基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を示し、Xは、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸イオンを示す。
【0022】
(A)オキセタン化合物は、(C)カチオン発生剤から加熱によって発生したカチオン種によって硬化するものであればよい。本発明の接着剤組成物は、硬化後にひび割れが起こりにくい点から、分子中に1〜4個のオキセタン環を有しているオキセタン化合物を含むことが好ましい。
【0023】
1個のオキセタン環を有するオキセタン化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化3】



【0025】
一般式(2)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基或いは3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基或いはフェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基或いはブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基或いはブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、又はエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基或いはペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0026】
2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0027】
【化4】



【0028】
一般式(3)において、Rは、上記一般式(2)におけるものと同様の基である。Rは、例えば、エチレン基、プロピレン基或いはブチレン基等の線状或いは分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基或いはポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基或いはブテニレン基等の線状或いは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基又はカルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0029】
また、Rは、下記一般式(4)〜(16)で示される基から選択される多価基であってもよい。この中でも、硬化性、はく離抑制の観点から式(11)で示される基が好ましい。
【0030】
【化5】



【0031】
一般式(4)において、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0032】
【化6】



【0033】
一般式(5)において、Rは、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、アミノ基、スルホニル基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、又はジメチルメチレン基である。
【0034】
【化7】



【0035】
一般式(6)において、R10は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0036】
【化8】



【0037】
一般式(7)において、R11は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、アミノ基、スルホニル基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、ジメチルメチレン基、フェニルメチルメチレン基、又はビフェニルメチレン基である。
【0038】
【化9】



【0039】
【化10】



【0040】
一般式(8)及び一般式(9)において、R12は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基又はカルバモイル基である。さらに、R12は、ナフタレン環の2〜4箇所に置換していてもよい。
【0041】
【化11】



【0042】
2個のオキセタン環を有する化合物について上記した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(17)で示される化合物が挙げられる。なお、一般式(17)において、Rは、上記一般式(2)におけるものと同様の基である。
【0043】
【化12】



【0044】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(18)で示される化合物等が挙げられる。
【0045】
【化13】



【0046】
一般式(18)において、Rは、上記一般式(2)におけるものと同様の基であり、mは3又は4である。R13は、例えば、下記一般式(19)、式(20)及び式(21)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記一般式(22)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基が挙げられる。
【0047】
【化14】



一般式(19)において、R14はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である。
【0048】
【化15】



【0049】
【化16】



【0050】
【化17】



一般式(22)において、nは1〜10の整数である。
【0051】
本発明で使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0052】
【化18】



【0053】
また、これら以外にも、分子量1,000〜5,000程度の比較的高分子量の1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。さらにオキセタンを含むポリマーとして、側鎖にオキセタン環を有するポリマー等も同様に用いることができる。なお、本発明においてオキセタン化合物は、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
(A)オキセタン化合物のオキセタン当量は、43〜1000が好ましく、50〜800がより好ましく、73〜600が特に好ましい。オキセタン当量が43未満又は1000を超えると、後に説明する電極の接続時に、電極間の接着強度が低下する傾向がある。これらのオキセタン化合物は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、腐食防止の観点から好ましい。
【0055】
(A)オキセタン化合物の含有量は、接着剤組成物全体に対して10〜90質量%とするのが好ましく、25〜75質量%とするのがより好ましい。含有量が10質量%未満の場合、接着剤組成物の硬化物の物性(ガラス転移温度、弾性率等)が低下する傾向にあり、一方、含有量が90質量%を超えると、硬化収縮が大きくなりすぎて接着力が低下する傾向にある。
【0056】
(B)エポキシ化合物としては、低温硬化性と高接着性を得るために、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、又は脂環式エポキシ樹脂を用いることができる。
【0057】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、カチオン発生剤から加熱によって発生したカチオン種によって硬化するものであればよい。例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやビスフェノールF等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂や、ポリグリシジルエーテル、ビフェニルジグリシジルエーテルが挙げられる。さらに、これらの樹脂にカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ハロゲンなどの各種官能基が置換されている樹脂も適用可能である。これらは所望の特性を有する接着剤組成物を得るために、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が高接着力化の観点から好ましい。
【0058】
脂環式エポキシ樹脂は、カチオン発生剤から加熱によって発生したカチオン種によって硬化するものであればよい。中でも、エポキシ基を2個以上有する脂環式エポキシ樹脂は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。更に、分子中にエポキシ基を2〜6個有する脂環式エポキシ樹脂は、硬化性に優れており特に好ましい。
【0059】
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化して得られるシクロヘキセンオキシドやシクロペンテンオキシド含有化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタジオキサン、3,4−エポキシ−1−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−1−メチルヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロエキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
(B)エポキシ化合物の含有量は、接着剤組成物全体に対して1〜50質量%とするのが好ましく、5〜30質量%とするのがより好ましい。含有量が5質量%未満の場合、接着剤組成物の保存安定性が不十分になる傾向にあり、一方、含有量が50質量%を超えると、硬化反応が不十分となり、接続体の抵抗値が高くなる。
【0061】
(C)カチオン発生剤は、下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤が用いられる。
【0062】
【化19】



【0063】
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜4の炭化水素基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよい。炭素数1〜4個の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等が挙げられる。R及びRは互いに結合して環を形成する場合、硫黄原子と環状化合物を形成できるテトラメチレン基などの炭素数4〜6の炭化水素基が挙げられる。保存安定性を付与する観点から、R及びRはメチル基、又は、R及びRは、互いに結合して硫黄原子と環を形成するテトラメチレン基であることが好ましい。
【0064】
また、一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を示す。芳香族炭化水素基としては、フェニル基やその誘導体などが挙げられる。保存安定性を付与する観点から、Rは水素原子あるいはメチル基、Rはメチル基あるいはフェニル基が好ましい。
【0065】
また、一般式(1)中、Xは、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸イオンを示す。これらのイオンは、スルホニウムカチオンの対アニオンであり、式(1)のスルホニウム塩を形成する。
【0066】
具体的なカチオン発生剤の例としては、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、シンナミルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−2−ブテニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−2−ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを好ましく使用することができる。上記ではヘキサフルオロアンチモネート塩を例に挙げたが、その他のヘキサフルオロホスフェート塩、テトラフルオロボレート塩、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート塩も使用できる。
【0067】
(C)カチオン発生剤の含有量は、(A)オキセタン化合物100質量部に対して0.05〜30質量部とすることが好ましく、0.1〜15質量部とすることがより好ましい。この含有量が、0.05質量部未満では、硬化が不十分となる傾向があり、30質量部を超えると相溶性が低下する傾向がある。
【0068】
本発明の接着剤組成物には、(A)オキセタン化合物の硬化挙動を制御する目的で添加剤を添加することができる。この添加剤は、カチオン発生剤から発生されるカチオンを効率的に捕捉するものであり、具体的には、メチル硫酸イオンを有するスルホニウム塩、クラウンエーテル、スルフィド類が挙げられる。
【0069】
メチル硫酸イオンをもつスルホニウム塩としては、例えば、ベンジル−p−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムメチルスルフェート、ベンジル−p−ヒドロキシフェニルエチルスルホニウムスルフェート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムメチルスルフェート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムスルフェート、o−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムスルフェート、m−メチルベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムスルフェート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムスルフェート、ベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムスエウフェート、ベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニルメチルスルホニウムスルフェート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムスルフェート、α−ナフチルメチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムスルフェート、4−ヒドロキシフェニルジメチルメチルスルフェート等が挙げられる。この中でも硬化調節能の観点から4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムスルフェートが好ましい。
【0070】
クラウンエーテルとしては、例えば、12−クラウン−4−エーテル、14−クラウン−4−エーテル、15−クラウン−5−エーテル、18−クラウン−6−エーテル、21−クラウン−7−エーテル、24−クラウン−8−エーテル、30−クラウン−7−エーテル、ベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、ジベンゾ−18−クラウン−6−エーテル、トリベンゾ−18−クラウン−6−エーテルなどが挙げられる。
【0071】
スルフィド類としては、1つ以上のスルフィド構造が含まれるアルキルスルフィドあるいはアリールスルフィドであればいかなる有機化合物でも可能であり、具体的には、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィドなどの炭素数2〜40の鎖状アルキルスルフィド化合物、テトラヒドロチオフェン、チオモルホリン、フェニルメチルスルフィド、4−ヒドロキシフェニルスルフィド、4−メトキシカルボニルオキシフェニルメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド、ジアセチルスルフィド、ベンジルメチルスルフィド、ベンジルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(ベンゾイルメチル)スルフィド、ジ(α−フェニルエチル)スルフィド、ジフェニレンスルフィド、ジフルフリルスルフィド、フルフリルメチルスルフィド、メトキシメチルフェニルスルフィドなどが挙げられる。
【0072】
添加剤の使用割合は、(C)カチオン発生剤に対して0.01〜20質量部とすることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10質量部である。添加剤の使用量が多いと、硬化時に停止反応を起こし低架橋密度となり、満足のいく硬化物が得られない恐れがある。また、添加剤の使用量が少ないと、添加剤としての効果が得られず、優れたポットライフを有する回路接続材料が得られない。
【0073】
本発明の接着剤組成物においては、カチオン発生剤のカチオン発生効率及びオキセタン化合物の反応率を高めるために、連鎖移動剤を適宜組合せて使用することもできる。連鎖移動剤としては、プロトン性化合物であれば特に制限されるものではなく、公知の化合物を使用することができ、具体的には、シクロヘキセンジオール、2,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール類及びこれらの誘導体を用いることができる。
【0074】
本発明の接着剤組成物は、加熱処理を行うことで硬化させることができるものであると好ましい。ここでいう硬化とは、オキセタン基の転化率が70%以上となることを意味する。加熱の処理の温度は、好ましくは40℃〜180℃、更に好ましくは50℃〜160℃であり、加熱時間は、好ましくは0.1秒〜10時間、更に好ましくは1秒〜1時間である。加熱温度が40℃未満であると硬化速度が遅く、180℃を超えると望まない副反応が進行しやすい。加熱時間が0.1秒未満では硬化反応が十分に進行せず、10時間を超えると硬化物の生産性が低下し、更に望まない副反応も進みやすい。
【0075】
本発明の接着剤組成物は、導電粒子を更に含有することができる。導電粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン粒子等が挙げられる。また、導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子、カーボン等を被覆したものであってもよい。導電粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子、カーボン等を被覆したもの、又は、熱溶融金属粒子である場合、加熱加圧により変形性を有するので回路部材同士を接続する際に導電粒子と電極との接触面積が増加して信頼性が向上することから好ましい。
【0076】
また、上記の導電粒子の表面を更に高分子樹脂等で被覆した微粒子は、導電粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、回路電極間の絶縁性を向上させることができることから、好ましく用いられる。導電粒子の表面を高分子樹脂等で被覆した粒子は、それ単独で又は他の導電粒子と混合して用いることができる。
【0077】
導電粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。導電粒子の配合量は、接着剤組成物全体を基準として0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。導電粒子の配合量が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0078】
本発明の接着剤組成物には、被着体の腐食を防止することを目的として、金属水酸化物又は酸化金属を添加、混合することができる。金属水酸化物又は酸化金属は、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。また、これらの粒径は、接着剤組成物への分散、被着体への高接着化、被着体の腐食防止能の観点から10μm以下であることが好ましい。
【0079】
本実施形態の接着剤組成物における金属水酸化物又は酸化金属の配合量は、(A)オキセタン化合物100質量部に対して0.1〜60質量部とすることが好ましく、1〜30質量部とすることがより好ましい。この配合量が0.1質量部未満では、十分な腐食防止効果が得られず、60質量部を超えると分散性が悪化する傾向がある。
【0080】
本発明の接着剤組成物には、発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色剤、安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤等)、増量剤、粘度調節剤、テルペンフェノール共重合体、テルペン樹脂、ロジン誘導体、脂環族系炭化水素樹脂等に代表される粘着付与剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、離型剤等を添加・混合することができる。上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料等の染料、カーボンブラック、マイカ等の無機顔料及びカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料等が挙げられる。また、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッドアニリド系等の化合物が挙げられる。更にまた、上記無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム、チタン、銅、真鍮、マグネシウム等の無機質及び金属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金及び銀等の金属粉末、木粉、珪酸アルミニウム、タルク、クレイ、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩及びその他の塩基性塩、ガラス中空球、ガラスフレーク等のガラス材料、炭化珪素、窒化アルミ、ムライト、コージェライト等が挙げられる。
【0081】
本発明の接着剤組成物は、増粘化や後述するフィルム化を目的として、種々のポリマーを適宜添加してもよい。使用するポリマーは、(A)オキセタン化合物および(B)エポキシ化合物の硬化を阻害しないものであれば特に制限なく公知のポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂類、ポリメタクリレート類、ポリアクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエステルウレタン類、ポリビニルブチラール類、SBS及びそのエポキシ変性体、SEBS及びその変性体、NBR及びその水素化体、等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。更に、これらポリマー中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば接着剤組成物としては好適に用いることができる。
【0082】
上記ポリマーの分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。上記ポリマーの重量平均分子量としては、5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。ポリマーの重量平均分子量が5,000未満では、フィルム形成性が劣る傾向があり、150,000を超えると、他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。上記ポリマーの配合量としては、(A)オキセタン化合物100質量部に対して20〜320質量部とすることが好ましい。上記ポリマーの配合量が、20質量部未満又は320質量部を超える場合は、流動性や接着性が低下する傾向がある。
【0083】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃未満の場合、室温で放置すると揮発する恐れがあり、開放系での使用が制限される。一方、沸点が150℃を超えると、溶剤を揮発させることが難しく、接着後の信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0084】
本発明の接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して被着体の接着を行うことができる。加熱温度は、50〜190℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜30MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0085】
本発明の接着剤組成物は、フィルム状にしてから用いることも可能である。このフィルム状接着剤は、接着剤組成物に溶剤等を加えた混合液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、又は不織布等の基材に上記混合液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することによって得ることができる。このように接着剤組成物をフィルム状とすると、取扱性に優れ一層便利である。
【0086】
また、導電粒子を含有する本発明の接着剤組成物からフィルムを作製すると、異方導電性フィルムを得ることができる。この異方導電性フィルムは、例えば、基板上の対抗する電極間に載置し、加熱加圧することにより両電極を接着することができるとともに、電気的に接続することができる。ここで電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【0087】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0088】
本発明に係る接着剤組成物、及び、例えば、異方導電性フィルムなどの導電粒子を含有する本発明に係る接着剤組成物は、基板上の相対向する電極間に存在させ、これらを加熱加圧することにより両電極の接触と基板間の接着を得、電極との接続を行う回路接続材料として用いることができる。電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、TCPやFPC、COFに代表されるポリイミド基材、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等のフィルム上に電極を形成した基材、プリント配線板等のこれら複合の各組み合わせを適用することができる。
【0089】
次に、本発明の接続体及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0090】
図1は、本発明に係る接続体の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示すように、本実施形態の接続体1は、相互に対向する第1の回路部材20及び第2の回路部材30を備えており、第1の回路部材20と第2の回路部材30との間には、これらを電気的に接続する接続部10が設けられている。第1の回路部材20は、第1の回路基板21と、回路基板21の主面21a上に形成される第1の回路電極22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0091】
一方、第2の回路部材30は、第2の回路基板31と、第2の回路基板31の主面31a上に形成される第2の回路電極32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0092】
第1の回路部材20及び第2の回路部材30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限されない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO(酸化インジウム錫)等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて用いることができる。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0093】
接続部10は、上記本発明に係る接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により形成され、絶縁性物質11及び導電粒子7を含有している。導電粒子7は、対向する第1の回路電極22と第2の回路電極32との間のみならず、主面21aと31aとの間にも配置されている。本実施形態の接続体1においては、第1の回路電極22と第2の回路電極32とが、導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。また、この導電粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0094】
なお、接続部10が導電粒子7を含有していない場合には、第1の回路電極22及び第2の回路電極32の間に所望の量の電流が流れるように、それらを直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0095】
接続部10は、上記本発明に係る接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第1の回路部材20又は第2の回路部材30に対する接続部10の接着強度が十分に高くなり、かつ、接続抵抗が十分低くなり、しかもこの状態を長期間にわたって持続させることができる。また、そのような接続を低温短時間での加熱処理によって達成することができる。したがって、第1の回路電極22及び第2の回路電極32間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0096】
次に、上述した接続体の製造方法について、その工程図である図2を参照しつつ、説明する。
【0097】
先ず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状回路接続材料40を用意する(図2(a)参照)。フィルム状回路接続材料40は、上述したように本発明に係る回路接続材料をフィルム状に成形してなるものである。回路接続材料は、接着剤成分5と、導電粒子7とを含有する。ここで、接着剤成分5には上述した本発明に係る接着剤成分が用いられる。
【0098】
フィルム状回路接続材料40の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状回路接続材料40の厚さが10μm未満では、回路電極22、32間に回路接続材料が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、回路電極22、32間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路電極22、32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0099】
次に、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料40側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20上に載せる。このとき、フィルム状回路接続材料40はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状回路接続材料40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0100】
そして、フィルム状回路接続材料40を、図2(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20に仮接続する(図2(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状回路接続材料40中の接着剤組成物が硬化しない温度よりも低い温度とする。
【0101】
続いて、図2(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料40上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。
【0102】
そして、フィルム状回路接続材料40を加熱しながら、図2(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20、30を介して加圧する。このときの加熱温度は、本発明に係るカチオン発生剤がカチオン種を発生可能な温度とする。これにより、カチオン発生剤においてカチオン種が発生し、脂環式エポキシ化合物の重合が開始される。こうして、フィルム状回路接続材料40が硬化処理され、本接続が行われ、図1に示すような回路部材の接続体が得られる。
【0103】
加熱温度は、好ましくは40℃〜180℃、更に好ましくは50℃〜150℃であり、加熱時間は、好ましくは0.1秒〜10時間、更に好ましくは1秒〜1時間である。加熱温度が40℃未満であると硬化速度が遅く、180℃を超えると望まない副反応が進行しやすい。加熱時間が0.1秒未満では硬化反応が進行せず、10時間を超えると硬化物の生産性が低下し、更に望まない副反応も進みやすい。
【0104】
上記のようにして、回路部材の接続体を製造すると、得られる回路部材の接続体において、導電粒子7を対向する回路電極22、32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。また、低温短時間での加熱により接続部を形成することができるため、回路部材への影響を小さくすることができる。
【0105】
また、フィルム状回路接続材料40の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤成分5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが接続部10を介して強固に接続される。即ち、得られる回路部材の接続体においては、接続部10は上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する接続部10の接着強度が十分に高くなり、かつ、回路電極22、32間の接続抵抗を十分に低減することができる。また、この回路部材の接続体は、そのような状態を長期間にわたって持続することができる。したがって、得られる回路部材の接続体は、回路電極22、32間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極22、32間の電気特性の長期信頼性に優れる。
【0106】
また、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料40を用いて回路部材の接続体を製造しているが、フィルム状回路接続材料40に代えて、フィルム状に形成されていない回路接続材料を用いてもよい。この場合でも、回路接続材料を溶媒に溶解させ、その溶液を、第一の回路部材20又は第二の回路部材30のいずれかに塗布し乾燥させれば、第一及び第二の回路部材20、30間に回路接続材料を介在させることができる。
【0107】
また、導電粒子7の代わりに、他の導電材料を用いてもよい。他の導電材料としては、粒子状、又は短繊維状のカーボン、AuめっきNi線等の金属線条等が挙げられる。
【0108】
次に、本発明に係る半導体装置の実施形態について説明する。図3は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。図3に示すように、本実施形態の半導体装置2は、半導体素子50と、半導体の支持部材となる基板60とを備えており、半導体素子50及び基板60の間には、これらを電気的に接続する半導体素子接続部材80が設けられている。また、半導体素子接続部材80は基板60の主面60a上に積層され、半導体素子50は更にその半導体素子接続部材80上に積層されている。
【0109】
基板60は回路パターン61を備えており、回路パターン61は、基板60の主面60a上で半導体接続部材80を介して又は直接に半導体素子50と電気的に接続されている。そして、これらが封止材70により封止され、半導体装置2が形成される。
【0110】
半導体素子50の材料としては特に制限されないが、シリコン、ゲルマニウムの4族の半導体素子、GaAs、InP、GaP、InGaAs、InGaAsP、AlGaAs、InAs、GaInP、AlInP、AlGaInP、GaNAs、GaNP、GaInNAs、GaInNP、GaSb、InSb、GaN、AlN、InGaN、InNAsP等のIII−V族化合物半導体素子、HgTe、HgCdTe、CdMnTe、CdS、CdSe、MgSe、MgS、ZnSe、ZeTe等のII−VI族化合物半導体素子、そして、CuInSe(ClS)等の種々のものを用いることができる。
【0111】
半導体素子接続部材80は、上記本発明に係る接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により形成され、絶縁性物質11及び導電粒子7を含有している。導電粒子7は、半導体素子50と回路パターン61との間のみならず、半導体素子50と主面60aとの間にも配置されている。本実施形態の半導体装置2においては、半導体素子50と回路パターン61とが、導電粒子7を介して電気的に接続されている。このため、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗が十分に低減される。したがって、半導体素子50及び回路パターン61間の電流の流れを円滑にすることができ、半導体の有する機能を十分に発揮することができる。また、この導電粒子7を上述した配合割合とすることによって電気的な接続の異方性を示すことも可能である。
【0112】
なお、半導体素子接続部材80が導電粒子7を含有していない場合には、半導体素子50と回路パターン61とを所望の量の電流が流れるように直接接触させるか若しくは十分に近づけることで電気的に接続される。
【0113】
半導体素子接続部材80は上記本発明に係る接着剤組成物からなる回路接続材料の硬化物により構成されている。このことから、半導体素子50及び基板60に対する半導体素子接続部材40の接着強度が十分に高くなり、かつ、半導体素子50及び回路パターン61間の接続抵抗を十分に低減することができる。そして、この状態を長期間にわたって持続させることができる。また、低温短時間での加熱により半導体素子接続部材を形成できるため、半導体素子などへの影響を小さくすることができる。したがって、半導体素子50及び基板60間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
<スルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤の合成>
(合成例1)
スクリューバイアル瓶に、シンナミルブロミド(11.8g、60.0mmol)とジメチルスルフィド(3.0g、63.0mmol)を加え、密封し無溶媒下室温にて一晩攪拌した。その後、未反応のジメチルスルフィドを減圧下にて留去し、無色固体のシンナミルジメチルスルホニウムブロミドを得た(15.6g、収率100%)。シンナミルジメチルスルホニウムブロミド(3.1g、12.0mmol)を三角フラスコに入れ、さらに酢酸エチル(24mL)を加えて溶解させた。そして、ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(3.4g、13.2mmol)を水(26mL)に溶解させ、系中にゆっくり滴下した。室温にて2時間攪拌後、酢酸エチル(50mL)で有機層を抽出し、さらに水で洗浄(50mL×3)、減圧乾燥を行い、淡黄色固体のシンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを得た(2.9g、収率58%)。
【0117】
<フィルム状回路接続材料の作製>
(実施例1)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)35質量部、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピコート828、三菱化学社製)10質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0118】
(実施例2)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)35質量部、エポキシ化合物として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(製品名:セロキサイド2021P、ダイセル化学社製)10質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、添加剤として、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニムメチルスルフェート0.15質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0119】
(実施例3)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)35質量部、エポキシ化合物として3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(製品名:セロキサイド2021P、ダイセル化学社製)10質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、添加剤として、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニムメチルスルフェート0.15質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0120】
(比較例1)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)35質量部、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピコート828、三菱化学社製)10質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0121】
(比較例2)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)35質量部、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピコート828、三菱化学社製)10質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、添加剤として、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニムメチルスルフェート0.15質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0122】
(比較例3)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、オキセタン化合物としてビフェニレンビスオキセタン(製品名:OXBP、宇部興産社製)45質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0123】
(比較例4)
ポリマーとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、InChem社製(PKHC/メチルエチルケトン=40/60質量部)溶液50質量部(ポリマー分)、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:エピコート828、三菱化学社製)45質量部、熱潜在性カチオン発生剤として、シンナミルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート5質量部、導電粒子としてNiめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)35質量部を混合し樹脂溶液とした。この樹脂溶液を厚み50μmの片面を表面処理したPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で5分間熱風乾燥することにより、接着剤層の厚みが20μmのフィルム状回路接続材料を得た。なお、得られたフィルム状回路接続材料における導電粒子の含有量は5体積%であった。
【0124】
<反応率の測定>
実施例1〜3、並びに比較例1〜4のフィルム状回路接続材料を、160℃で5秒間加熱した。その後、それぞれのフィルム状回路接続材料の赤外吸収スペクトルを測定し、環状エーテルの転化率を算出した。結果は、環状エーテルの転化率が80%以上の場合を○、転化率が80%未満の場合を×として表1に示した。
【0125】
<保存安定性の測定>
実施例1〜3、並びに比較例1〜4のフィルム状回路接続材料を、40℃の恒温装置に5日間放置した。放置後それぞれのフィルム状回路接続材料の赤外吸収スペクトルを測定し、環状エーテルの転化率を算出した。結果は、環状エーテルの転化率が5%未満を◎、5%以上10%未満を○、10%以上を×として表1に示した。
【0126】
(接続体の作製)
実施例1〜3、並びに比較例1〜4のフィルム状回路接続材料をそれぞれ、ガラス基板(コーニング#1737、外形38mm×28mm、厚さ0.5mm、表面にITO配線パターン(パターン幅50μm、ピッチ50μm)を有するもの)に2×20mmの大きさでPET樹脂フィルムから転写した。次いで、ICチップ(外形1.7mm×17.2mm、厚さ0.55mm、バンプの大きさ50μm×50μm、バンプのピッチ50μm)を160℃5秒、80MPa(バンプ面積換算)の荷重をかけて加熱加圧して実装した。
【0127】
(接着力の測定)
実施例1〜3、並びに比較例1〜4のフィルム状回路接続材料を用いて接続した接続体について、ダイシェア強度試験を行った。結果を表1に示す。
【0128】
(接続抵抗の測定)
実施例1〜3、並びに比較例1〜4のフィルム状回路接続材料を用いて接続した接続体について、隣接回路間の抵抗値(14端子測定した中の最大値)を測定した。また、500時間、85℃、85%RHの条件で500時間負荷を掛けた高温高湿試験後の抵抗値(14端子測定した中の最大値)も測定した。結果は、抵抗値が1Ω未満を◎、15Ω未満を○、15Ω以上を×、接続不良を××として表1に示した。
【0129】
【表1】



【0130】
表1に示すように実施例1〜3で得られたフィルム状回路接続材料は、低温速硬化性と保存安定性を両立し、さらに、ダイシェア強度、接続信頼性も良好であり、高温高湿試験後も良好な接続信頼性が得られた。
【0131】
カチオン発生剤として、4−ヒドロキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを配合した比較例1のフィルム状回路接続材料は、保存安定性は良好なものの160℃5秒では硬化せず、カチオン発生剤として、4−ヒドロキシフェニル−メチル−1−ナフチルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートを配合した比較例2のフィルム状回路接続材料は、硬化性は高いものの保存安定性が悪化し、硬化性と保存安定性を両立することが困難であった。
【0132】
一方、オキセタン化合物のみをモノマとして用いた比較例3のフィルム状回路接続材料は、硬化性は良好なものの保存安定性が悪化し、エポキシ化合物のみをモノマとして用いた比較例4のフィルム状回路接続材料は、硬化性および保存安定性は良好なものの、高温高湿試験後の接続信頼性が悪化した。
【0133】
本発明によれば、オキセタン化合物とエポキシ化合物を併用し、特定の構造のカチオン発生剤を用いることにより、低温速硬化性、保存安定性、接続信頼性が良好であり、さらに、高いダイシェア強度を発現できるフィルム状回路接続材料が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0134】
1…接続体、2…半導体装置、5…接着剤成分、7…導電粒子、10…接続部、11…絶縁性物質、20…第1の回路部材、21…第1の回路基板、22…第1の回路電極、30…第2の回路部材、31…第2の回路基板、32…第2の回路電極、40…フィルム状回路接続材料、50…半導体素子、60…基板、61…回路パターン、70…封止材、80…半導体素子接続部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン化合物と、
エポキシ化合物と、
下記一般式(1)で示されるスルホニウム塩型熱潜在性カチオン発生剤と、
を含有する接着剤組成物。
【化1】



[一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数が1〜4の炭化水素基を示し、R及びRは互いに結合して環を形成していてもよく、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が1〜10の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を示し、Xは、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、又は、テトラキスペンタフルオロフェニルホウ酸イオンを示す。]
【請求項2】
導電粒子を、接着剤組成物全量に対して0.1〜30体積%の割合で含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着剤組成物からなり、相対向する回路電極間に介在され、該回路電極を加圧し加圧方向の電極間を電気的に接続するために用いられる、回路接続材料。
【請求項4】
対向配置された一対の回路部材と、
請求項3に記載の回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように前記回路部材同士を接着する接続部と、
を備える、接続体。
【請求項5】
対向配置された一対の回路部材の間に請求項3に記載の回路接続材料を介在させ、全体を加熱及び加圧して、前記回路接続材料の硬化物からなり、前記一対の回路部材の間に介在しそれぞれの回路部材が有する回路電極同士が電気的に接続されるように前記回路部材同士を接着する接続部を形成することにより、前記一対の回路部材及び前記接続部を備える接続体を得る、接続体の製造方法。
【請求項6】
半導体素子と、
前記半導体素子を搭載する基板と、
前記半導体素子及び前記基板が電気的に接続されるように前記半導体素子及び前記基板を接着する半導体素子接続部材と、を備え、
前記半導体素子接続部材は、請求項3に記載の回路接続材料の硬化物である、半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171980(P2012−171980A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32339(P2011−32339)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】