説明

接着剤組成物、回路接続用接着剤及びそれを用いた接続体

【課題】低温短時間で硬化させた場合であっても、十分な接着性及び接続信頼性を得ることを可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続用接着剤及び接続体を提供すること。
【解決手段】(a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を含む接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、回路接続用接着剤及びそれを用いた接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に要求される特性は、接着性を始めとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐にわたる。また、接着に使用される被着体には、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等の多種多様な表面状態を有する基材が用いられる。このため、接着剤は、各被着体にあわせて分子設計する必要がある。
【0003】
従来、前記半導体素子や液晶表示素子用の接着剤として熱可塑性樹脂が主成分として用いられてきた(例えば、特許文献1参照)が、熱可塑性の接着剤は信頼性、耐熱性に問題がある。そのため、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が主流となっている(例えば、特許文献2参照)。かかる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、及び、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒を含むものが一般に用いられている。熱潜在性触媒は硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。実際の工程での硬化条件は、170〜250℃の温度で1〜3時間硬化することにより、所望の接着性が得られる。
【0004】
近年、半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化している。このため、上記の条件で熱処理を行った場合には、硬化時の加熱により、周辺部材に悪影響を及ぼすおそれがある。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要性があり、低温(100〜170℃)、短時間(1時間以内、好ましくは数秒以内)、換言すれば「低温速硬化」での接着が要求されている。この低温速硬化を達成するために、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒が使用されることもあるが、その場合、接着剤が室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0005】
最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体(以後、「(メタ)アクリレート誘導体」という)とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている(例えば、特許文献3、4参照)。ラジカル硬化型接着剤は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間で硬化させることが可能である。特に分子内に2個以上の(メタ)アクリレート誘導体を有する化合物を用いた場合には、硬化後に架橋構造が形成されるため、接着性や接続信頼性が向上し得る。
【特許文献1】特開平04−62714号公報
【特許文献2】特開平01−113480号公報
【特許文献3】特開2002−203427号公報
【特許文献4】国際公開第98/044067号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3、4等に記載されている従来のラジカル硬化型接着剤は、硬化時の硬化収縮が大きいため、エポキシ硬化系接着剤と比較して接着強度が劣るという問題がある。
【0007】
本発明は、低温短時間で硬化させた場合であっても、十分な接着性及び接続信頼性を得ることを可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続用接着剤及び接続体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記事情に鑑み本発明は、(a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を含む接着剤組成物を提供する。
【0009】
かかる接着剤組成物によれば、低温短時間で硬化させた場合であっても、十分な接着性及び接続信頼性を得ることができる。
【0010】
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤は、下記一般式(I)で表される化合物、又は下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
【化1】

(式(I)中、m、nは独立に1〜3の整数、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、R、Rは、それぞれ任意の一価の有機官能基を表す。)
【0012】
【化2】

(式(II)中、m、nは独立に1〜3の整数、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、R、R、Rは独立に水素原子又は任意の一価の有機官能基を表す。)
【0013】
本発明の接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物を50〜250質量部、(c)ラジカル重合開始剤を0.05〜30質量部、(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を0.2〜5質量部含有することが好ましい。
【0014】
本発明の接着剤組成物は、(e)導電粒子を、接着剤組成物全量を基準として、0.1〜30体積%さらに含有することが好ましい。
【0015】
本発明は、相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、相対向する回路電極同士が電気的に接続されるように基板同士を接着するために用いられる回路接続用接着剤であって、上記本発明の接着剤組成物からなる回路接続用接着剤を提供する。
【0016】
かかる回路接続用接着剤は、本発明の接着剤組成物を用いているので、低温短時間で硬化させた場合であっても、十分な接着性及び接続信頼性を得ることができる。
【0017】
本発明は、第一の回路電極を有する第一の基板と、第二の回路電極を有する第二の基板とを、第一の回路電極と第二の回路電極とが相対向するように配置し、対向配置した第一の基板と第二の基板との間に、上記本発明の回路接続用接着剤を介在させ、加熱加圧して、第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続させてなる接続体を提供する。
【0018】
かかる接続体は、本発明の回路接続用接着剤を用いているので、十分に接着性及び接続信頼性が高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温短時間で硬化させた場合であっても、十分な接着性及び接続信頼性を得ることを可能とする接着剤組成物、それを用いた回路接続用接着剤及び接続体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を含む。
【0021】
(a)熱可塑性樹脂としては、特に制限無く公知のものを使用することができる。このような樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂類、ポリ(メタ)アクリレート類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリエステル類、ポリエステルウレタン類、ポリビニルブチラール類等を用いることができる。これらは単独で、あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
さらに、これら樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
上記樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また接着剤としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。分子量は特に制限を受けるものではないが、一般的な重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000以上であればフィルム形成性を満たせる傾向があり、また150,000以下であれば他の成分との相溶性が悪くなる傾向を防止することができる。
【0022】
なお、本明細書中、重量平均分子量とは、以下の条件でゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定したもののことをいう。
〈GPC条件〉
使用機器:日立L−6000型〔株式会社日立製作所〕
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)〔日立化成工業株式会社製商品名〕
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75ml/min
検出器:L−3300RI〔株式会社日立製作所〕
【0023】
(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物としては、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば、特に制限無く公知のものを使用することができる。
その具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート等の多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて単独あるいは混合して用いてもよい。
【0024】
(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは50〜250質量部であり、より好ましくは60〜150質量部である。添加量が50質量部以上であれば、硬化後の耐熱性がさらに向上する。また、250質量部以下であれば、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が低下するのを防止することができる。
【0025】
(c)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている過酸化物やアゾ化合物等公知の化合物を用いることができるが、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ重量平均分子量が180〜1,000のパーオキシエステル誘導体又はジアシルパーオキサイド化合物が好ましい。重量平均分子量の測定方法は上述の方法を使用することができる。
その具体例としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0026】
(c)ラジカル重合開始剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜30質量部であり、好ましくは0.1〜20質量部である。添加量が0.05質量部以上であれば、硬化不足が防止でき、また、30質量部以下であれば、放置安定性の低下を防止できる。
【0027】
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤としては、下記一般式(i)又は(ii)で表される基を有するシラン化合物を好適に用いることができ、より好適には下記一般式(I)又は(II)で表される化合物を用いることができる。
【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

(式中、m、nは独立に1〜3の整数、Rは、水素原子、メチル基又はエチル基、R、Rは、それぞれ任意の一価の有機官能基、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、R、R、Rは独立に水素原子又は任意の一価の有機官能基を表す。)
【0031】
上記一般式(I)又は(II)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0032】
【化6】

(Etは、エチル基を示す。)
【0033】
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.2〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜3質量部であり、さらに好ましくは1〜2質量部である。添加量が0.2質量部未満では所望の添加効果を得ることができない傾向にあり、5質量部を超えると接着剤成分との相分離を引き起こす傾向にある。
【0034】
本発明の接着剤組成物を回路接続用途に用いる場合には、接着剤に導電性又は異方導電性を付与するために、(e)導電粒子を含有させることが好ましい。
(e)導電粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、(e)導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。
(e)導電粒子が、プラスチックを核とし、この核に上述の金属、金属粒子やカーボンを被覆したものやはんだのような熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に厚みバラツキを吸収したり、電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0035】
また、これらの導電粒子の表面を、さらに高分子樹脂等で被覆した微粒子を(e)導電粒子として用いてもよい。このような微粒子は、導電粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独で、あるいは導電粒子と混合して用いることができる。
【0036】
(e)導電粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。(e)導電粒子の添加量は、特に制限は受けないが、接着剤組成物全量を基準として、0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。
この値が、0.1体積%未満であると導電性が劣る傾向があり、30体積%を超えると回路の短絡が起こる傾向がある。なお、「体積%」は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0037】
本発明の接着剤組成物には、リン酸エステル誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤等の接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、下記一般式で表される化合物を好適に添加することができる。これらの化合物は単独で用いても、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0038】
【化7】

(ここでR8は水素、メチル基、nは1〜10の整数、mは1又は2を示す。)
【0039】
本発明の接着剤組成物には、橋架け率の向上を目的として、(b)(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物の他に、アリル基、マレイミド基、ビニル基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を適宜添加してもよい。その具体例としては、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
本発明の接着剤組成物には、流動性向上を目的に、単官能(メタ)アクリレートを添加してもよい。その具体例としては、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリンが挙げられる。
【0041】
本発明の接着剤組成物には、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を添加してもよい。その具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ−ε−カプロラクトンが挙げられる。
上記ゴム成分としては、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましく、さらに流動性向上の観点から、液状ゴムがより好ましい。その具体例としては、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量が10〜60%が好ましい。これらの化合物は単独で用いても、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0042】
本発明の接着剤組成物には、貯蔵安定性付与を目的に、t−ブチルピロカテコール、t−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPOL)等に代表される重合禁止剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0043】
本発明の接着剤組成物は、室温(25℃)で液状である場合にはペースト状接着剤として使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化して、ペースト状接着剤として用いることもできる。
使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤との反応性が十分に小さく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以上であれば、室温で放置した場合の揮発を防ぐことができ、開放系でも使用することができる。また、沸点が150℃以下であれば、溶剤を揮発させることが容易であり、接着後の信頼性に悪影響を及ぼすこともない。
【0044】
本発明の接着剤組成物は、フィルム状接着剤として使用することもできる。フィルム状接着剤は、例えば、接着剤組成物に必要により溶剤等を加える等した溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去することにより作製することができる。フィルム状接着剤は、取扱性等の点から一層便利である。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜170℃であることが好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0046】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体を接続するための回路接続用接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0047】
本発明の接続体は、第一の回路電極を有する第一の基板と、第二の回路電極を有する第二の基板とを、第一の回路電極と第二の回路電極とが相対向するように配置し、対向配置した第一の基板と第二の基板との間に、上記本発明の回路接続用接着剤を介在させ、加熱加圧して、第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続させてなるものである。
【0048】
回路接続用接着剤としては、(e)導電粒子を含む本発明の接着剤組成物からなる異方導電フィルムが好ましい。
【0049】
回路電極を形成する基板としては、例えば、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
(シランカップリング剤1の合成)
3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン(製品名:KBE9007、信越化学工業株式会社製)25gと3,5−ジメチルピラゾール(東京化成工業株式会社製)9.7gを、メチルエチルケトン(製品名:2−ブタノン、和光純薬工業株式会社製、純度99%)50gに加えて120分間加熱還流させて、下記式(IIa)で表されるシランカップリング剤1を得た。
【0052】
【化8】

なお、FT−IRによってイソシアネート基由来の吸収(2270cm−1)の消失を確認することにより、反応の終結を確認した。また加熱還流の際の温度制御はオイルバス(装置名:HOB−50D,アズワン株式会社製)により行った。
【0053】
(シランカップリング剤2の合成)
3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン(製品名:KBE9007、信越化学工業株式会社製)25gとブタノンオキシム(東京化成株式会社製)8.7gを、メチルエチルケトン(製品名:2−ブタノン、和光純薬工業株式会社製、純度99%)50gに加えて4時間加熱還流させて、下記式(Ia)で表されるシランカップリング剤2を得た。
【0054】
【化9】

なお、FT−IRによってイソシアネート基由来の吸収(2270cm−1)の消失を確認することにより、反応の終結を確認した。また、加熱還流の際の温度制御はオイルバス(装置名:HOB−50D,アズワン株式会社製)により行った。
【0055】
(実施例1、2、比較例1、2)
(a)熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂(製品名:PKHC、ユニオンカーバイド社製、重量平均分子量45,000)40gを、ガラス製の容器に入れたメチルエチルケトン(製品名:2−ブタノン、和光純薬工業株式会社製、純度99%)60gに溶解して、固形分40重量%の溶液としたものと、下記のようにして調製したウレタン樹脂を用いた。
重量平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール(製品名:ポリブチレンアジペートジオール、Aldrich社製)450重量部と、平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール(製品名:ポリオキシテトラメチレングリコール、Aldrich社製)450重量部、1,4−ブチレングリコール(製品名:1,4−ブチレングリコール、Aldrich社製)100重量部を、メチルエチルケトン(製品名:2−ブタノン、和光純薬工業株式会社製、純度99%)4000重量部中で溶解し、ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:ジフェニルメタンジイソシアネート、Aldrich社製)390重量部を加えて70℃にて60分間反応させて、ウレタン樹脂を得た。
なお、この時の温度制御はオイルバス(装置名:HOB−50D,アズワン株式会社製)により行った。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定したところ、100,000であった。
【0056】
(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物として、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亞合成株式会社製商品名)、ウレタンアクリレート(AT−600、共栄社化学株式会社製商品名)及びビス[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート(P−2M、共栄社化学株式会社製商品名)を用いた。
(c)ラジカル重合開始剤として、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーヘキシルO、日本油脂株式会社製商品名)を用いた。
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤として、上述の方法によって合成したシランカップリング剤1,2を用いた。また、比較用のシランカップリング剤としてアルコキシシリルイソシアネート(KBE9007、信越化学工業社製)を用いた。
(e)導電粒子として、下記のようにして作製した導電粒子を用いた。
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設けることにより、平均粒径4μm、比重2.5の導電粒子を作製した。
【0057】
上述の(a)〜(d)成分を表1に示す固形重量比で配合し、さらに(e)導電粒子を1.5体積%配合分散させた。この分散液を、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置(装置名:SNC−S3.0、康井精機株式会社製)を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
〔接続抵抗及び接着強度の測定〕
上記製法によって得たフィルム状接着剤を用いて、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.5μmの窒化ケイ素(SiN)又は0.2μmの酸化インジウム(ITO)薄層を全面に形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用い、80℃、1MPaで3秒間仮付けした。その後、温度160℃、3MPaで10秒間の加熱加圧を行って幅2mmにわたり接続し、接続体を作製した。
この接続体の接着直後と、接着後80℃、95%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(耐湿試験後)の、SiN又はITOに対する接着強度(接着力)を、JIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定した。ここで、接着強度の測定装置は、東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。
また、ITO薄膜を全面に形成したガラスを用いた場合の接続体について、隣接回路間の抵抗値をマルチメータ(装置名:TR6848、株式会社アドバンテスト製)で測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均(x+3σ)で示した。
【0060】
以上のようにして行った接続体の接着力と接続抵抗の測定結果をまとめて表2に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
シランカップリング剤を添加した場合(実施例1、2、比較例2)に得られた接着剤組成物は、シランカップリング剤を添加しない場合(比較例1)と比較して接着力が向上した。
【0063】
また、接着剤組成物に、加熱によりイソシアネートを生成しないアルコキシシリルイソシアネートを添加した場合(比較例2)、接着力は向上したが接続抵抗が悪化した。
加熱によりイソシアネートを生成するシランカップリング剤を添加した場合(実施例1、2)は接続抵抗が低下することなく接着力が向上し、良好な電気的な接続がなされ接続信頼性が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物、(c)ラジカル重合開始剤、及び(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を含む接着剤組成物。
【請求項2】
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤が、下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【化1】

(式(I)中、m、nは独立に1〜3の整数、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、R、Rは、それぞれ任意の一価の有機官能基を表す。)
【請求項3】
(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤が、下記一般式(II)で表される化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【化2】

(式(II)中、m、nは独立に1〜3の整数、Rは水素原子、メチル基又はエチル基、R、R、Rは独立に水素原子又は任意の一価の有機官能基を表す。)
【請求項4】
(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(b)分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性化合物を50〜250質量部、(c)ラジカル重合開始剤を0.05〜30質量部、(d)加熱によりイソシアネートを生成する官能基を有するシランカップリング剤を0.2〜5質量部含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(e)導電粒子を、接着剤組成物全量を基準として、0.1〜30体積%さらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
相対向する回路電極を有する基板間に介在させ、前記相対向する回路電極同士が電気的に接続されるように前記基板同士を接着するために用いられる回路接続用接着剤であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物からなる回路接続用接着剤。
【請求項7】
第一の回路電極を有する第一の基板と、
第二の回路電極を有する第二の基板とを、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが相対向するように配置し、
対向配置した前記第一の基板と第二の基板との間に、請求項6に記載の回路接続用接着剤を介在させ、加熱加圧して、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを電気的に接続させてなる接続体。
【請求項8】
前記第一の回路電極を有する第一の基板が半導体素子である、請求項7に記載の接続体。

【公開番号】特開2009−256582(P2009−256582A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242749(P2008−242749)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】