説明

接着剤組成物、接着剤フィルム及びその製造方法

【課題】優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを実現できる接着剤組成物、接着剤フィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)第1硬化剤と、(D)第2硬化剤とを含み、第2硬化剤が、第1硬化剤よりも低い反応開始温度を有し、エポキシ樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜50質量部の割合で配合され、第1硬化剤(C)は、アクリル樹脂100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で配合され、第2硬化剤(D)は、エポキシ樹脂(B)の反応基数の20〜70%の反応基数を有するように配合されている接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、接着剤フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、その柔軟性を生かしてハードディスク装置や携帯電話などの電子機器によく用いられている。FPCとしては、金属張積層板とカバーレイとを、接着剤フィルムを介して熱圧着したものや、金属張積層板の裏面側に接着剤フィルムを介してポリイミドや金属からなる補強板をさらに設けたFPCも知られている。
【0003】
このようなFPCにおいては、接着剤フィルムとして、半田耐熱性に優れるアクリル系の接着剤組成物を半硬化状態にさせた接着剤フィルムが広く使用されている。例えば下記特許文献1には、アクリル系の接着剤組成物として、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドアミンやジアミドアミンなどの硬化剤を含むアクリル系接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−265906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FPC用の接着剤フィルムとしては、ポリイミドや金属に対して優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時の接着剤の流れ出しが少ない接着剤フィルムが望ましい。
【0006】
しかし、上述した特許文献1記載の接着剤組成物は、半硬化して接着剤フィルムとしても、その接着剤フィルムがプレスキュア時に熱と圧力によって容易に流れ出し、接着部位より大きく染み出すという問題を有していた。この染み出し部分は、FPCを電子機器に組み込んだ際にその電子機器に不具合を起こすおそれがある。例えば、そのFPCをハードディスク装置の内部に組み込んだ場合、その染み出し部分がFPCから分離してハードディスク上に付着し、ハードディスク装置の正常な動作を妨げるおそれがある。
【0007】
従って、優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを実現できる接着剤組成物が求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを実現できる接着剤組成物、接着剤フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、上記特許文献1に記載の接着剤組成物においては、エポキシ樹脂の反応基数に対するポリアミドアミンの反応基数の比率が小さいことが、プレスキュア時において接着剤が容易に流れ出す原因の一つではないかと考えた。即ち、エポキシ樹脂の反応基数に対するポリアミドアミンの反応基の比率が小さいため、プレスキュア時にエポキシ樹脂が十分に硬化されておらず、接着剤組成物が柔らなくなっており、その結果、プレスキュア時において接着剤組成物の流れ出し量が大きくなるのではないかと考えた。そして、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、接着剤組成物中のエポキシ樹脂の反応基数に対する第2硬化剤の反応基の比率を所定の範囲にするとともに、エポキシ樹脂や第2硬化剤より低い反応開始温度を有する第1硬化剤をアクリル樹脂に対して所定の割合で配合することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)第1硬化剤と、(D)第2硬化剤とを含み、前記第2硬化剤(D)が、前記第1硬化剤(C)よりも低い反応開始温度を有し、前記エポキシ樹脂(B)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜50質量部の割合で配合され、前記第1硬化剤(C)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で配合され、前記第2硬化剤(D)は、前記エポキシ樹脂(B)の反応基数の20〜70%の反応基数を有するように配合されていることを特徴とする接着剤組成物である。
【0011】
この接着剤組成物は、第2硬化剤の反応開始温度以上の温度で且つ第1硬化剤の反応開始温度よりも低い温度下に置かれると、エポキシ樹脂と第2硬化剤とを十分に反応させることが可能となり、十分に硬い接着剤フィルムを実現することが可能となる。このため、プレスキュアしても、流れ出しを十分に抑制することが可能な接着剤フィルムを実現することができる。また本発明の接着剤組成物は、第2硬化剤よりも反応開始温度の高い第1硬化剤を適量含むため、第1硬化剤の反応開始温度以上の温度によるプレスキュアによってエポキシ樹脂と第1硬化剤とを反応させて十分に硬化させることが可能で且つ優れた半田耐熱性を付与し得る接着剤フィルムを実現することもできる。
【0012】
また本発明は、上記接着剤組成物を、前記第2硬化剤(D)の反応開始温度以上の温度で且つ前記第1硬化剤(C)の反応開始温度よりも低い温度下に配置して接着剤を形成する工程と、前記接着剤を含む接着剤溶液を基板上に塗布し乾燥させて接着剤フィルムを形成する工程とを含む接着剤フィルムの製造方法である。
【0013】
この製造方法によれば、上記接着剤組成物を、第2硬化剤の反応開始温度以上の温度で且つ第1硬化剤の反応開始温度よりも低い温度下に置くことで、エポキシ樹脂と第2硬化剤とを十分に反応させることが可能となり、十分に硬い接着剤フィルムを実現することが可能となる。このため、プレスキュアしても、流れ出しを十分に抑制することができる接着剤フィルムを実現することができる。また、上記接着剤組成物は、第2硬化剤よりも反応開始温度の高い第1硬化剤を適量含むため、第1硬化剤の反応開始温度以上の温度によるプレスキュアによってエポキシ樹脂と第1硬化剤とを反応させて十分に硬化させることが可能で且つ優れた半田耐熱性を付与し得る接着剤フィルムを得ることができる。
【0014】
さらに本発明は、上記接着剤フィルムの製造方法により得られる接着剤フィルムである。
【0015】
この接着剤フィルムによれば、プレスキュアしても、流れ出しを十分に抑制することができる。また、上記接着剤フィルムは、第2硬化剤よりも反応開始温度の高い第1硬化剤を適量含むため、第1硬化剤の反応開始温度以上の温度によるプレスキュアによってエポキシ樹脂と第1硬化剤とを反応させて十分に硬化させることが可能となり、これにより、得られる接着層に、優れた半田耐熱性を付与することができる。
【0016】
尚、本発明において、「反応開始温度」とは、示差走査熱量測定において、第1硬化剤又は第2硬化剤とエポキシ樹脂との反応による発熱が発生する温度を言うものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを実現できる接着剤組成物、接着剤フィルムおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る接着剤フィルムを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。尚、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明に係る接着剤フィルムを用いて製造されたフレキシブルプリント配線板の一例を示す断面図である。図1に示すように、フレキシブルプリント配線板100はベースフィルム1を備えている。ベースフィルム1の表面1a上には接着層2が設けられ、接着層2上には回路を形成する金属層3が設けられ、接着層2の上には、金属層3を覆うように接着層4が設けられ、接着層4上には絶縁フィルム5が設けられている。
【0021】
一方、ベースフィルム1の裏面1b上には接着層6を介して補強板7が設けられている。補強板7はステンレス、ポリイミドなどから構成されている。
【0022】
次に、フレキシブルプリント配線板100の製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【0023】
まず図2に示すように、カバーレイ10と、金属張積層板20と、補強板7と、金属張積層板20及び補強板7を貼り合わせるための接着剤フィルム30とを準備する。
【0024】
カバーレイ10は、絶縁フィルム5上に接着剤層14を設けてなるものであり、接着剤組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム5上に塗布し乾燥することにより得ることができる。このため、接着剤層14は、接着剤組成物の一部を硬化させた状態、例えば半硬化の状態となっている。絶縁フィルム5としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等からなる厚さ3μm〜50μm程度のフィルム等を用いることができる。
【0025】
金属張積層板20は、ベースフィルム1上に接着剤層22および金属層3を順次設けてなるものであり、接着剤組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層22上に金属層3を貼り付けることによって得ることができる。ここで、接着剤層22は、接着剤組成物の一部を硬化させた状態、例えば半硬化の状態となっている。ベースフィルム1としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。金属層3は銅箔等からなる。
【0026】
接着剤フィルム30は、次のようにして得ることができる。
【0027】
まず、接着剤組成物を準備する。接着剤組成物としては、(A)アクリル樹脂と、(B)エポキシ樹脂と、(C)第1硬化剤と、(D)第2硬化剤とを含むものを準備する。ここで、第2硬化剤(D)としては、第1硬化剤(C)よりも低い反応開始温度を有するものを使用し、エポキシ樹脂(B)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜50質量部の割合で配合し、第1硬化剤(C)は、アクリル樹脂(A)100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で配合し、第2硬化剤(D)は、エポキシ樹脂(B)の反応基数の20〜70%の反応基数を有するように配合する。
【0028】
そして、この接着剤組成物を溶媒中に溶解し、第2硬化剤(D)の反応開始温度以上の温度で且つ第1硬化剤(C)の反応開始温度よりも低い温度下に配置する。このためには、例えば、溶媒中に溶解した接着剤組成物を加熱還流させればよい。これにより、接着剤組成物中の第2硬化剤(D)とエポキシ樹脂(B)とを反応させ、接着剤を含む接着剤溶液を得る。
【0029】
次いで、この接着剤溶液を、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなる基板上に塗布し乾燥させる。こうして、基板上に接着剤フィルム30が得られる。
【0030】
次に、補強板7の上に、接着剤フィルム30、金属張積層板20、カバーレイ10を順次重ね合わせる。このとき、金属張積層板20のベースフィルム1と接着剤フィルム30とを対向させた状態とし、カバーレイ10の接着剤層14と金属張積層板20の接着剤層22及び金属層3とを対向させた状態とする。また接着剤フィルム30を補強板7に重ね合せる場合、基板付きの接着剤フィルムを補強板7に重ね合わせた後、基板を剥離する。但し、基板付きの接着剤フィルムから接着剤フィルム30を剥離し、これを補強板7の上に重ね合わせてもよい。
【0031】
そして、補強板7、接着剤フィルム30、金属張積層板20及びカバーレイ10を熱圧着させる。これにより、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22及び接着剤フィルム30がプレスキュアされる。このとき、プレスキュアの温度は第1硬化剤の反応開始温度以上の温度となるようにする。また、接着剤フィルム30は、プレスキュアする前に、エポキシ樹脂と第2硬化剤とを十分に反応させており、十分に硬くなっている。このため、プレスキュアしても、接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑制することができる。また、接着剤フィルム30は、第2硬化剤よりも反応開始温度の高い第1硬化剤を適量含むため、第1硬化剤の反応開始温度以上の温度によるプレスキュアによってエポキシ樹脂と第1硬化剤とを反応させることができる。これにより接着剤フィルム30は十分に硬化され、得られる接着層6は優れた半田耐熱性を有することとなる。
【0032】
こうして、カバーレイ10の接着剤層14はさらに硬化されて接着層4となり、金属張積層板20の接着剤層22はさらに硬化されて接着層2となり、接着剤フィルム30はさらに硬化されて接着層6となる。こうしてフレキシブルプリント配線板100が得られる。このフレキシブルプリント配線板100では、接着層6が、優れた半田耐熱性を有することとなる。このため、電子部品等を実装しても、接着層6内に膨れ等がほとんど発生しない。またフレキシブルプリント配線板100は、プレスキュア時の流れ出しを抑制できる接着剤フィルム30を使用して製造されたものである。このため、このようなフレキシブルプリント配線板100をハードディスク装置などの電子機器の内部に組み込んでも、接着層6のはみ出し部分によって電子機器の正常動作を妨げることが十分に防止される。
【0033】
次に、接着剤シート30の製造に用いる接着剤組成物についてさらに詳細に説明する。
【0034】
(A)アクリル樹脂
アクリル樹脂は、モノマー単位としてアクリル酸エステルを有するもので且つエポキシ樹脂に柔軟性を付与し得るものであれば特に制限なく使用可能である。このようなアクリル樹脂としては、例えばアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートとアセトニトリルとの共重合体やこれらにカルボキシル基又はエポキシ基などの官能基を導入したアクリル樹脂などが挙げられる。ここで、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなどが挙げられる。上記アクリル樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、エポキシ樹脂との反応性を有するという理由から、カルボキシル基を導入したアクリル樹脂が好ましい。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、などの酸で変性されたアクリル樹脂が挙げられる。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂は、カルボキシル基を含有するものであればよく、水酸基などの他の官能基をさらに導入したものであってもよい。カルボキシル基を導入したアクリル樹脂としては、例えばWS−023(ナガセケムテックス社製)、SG−700−AS(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。エポキシ基を導入したアクリル樹脂としては、例えばSG−P3(ナガセケムテックス社製)などが挙げられる。
【0035】
(B)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂であれば特に制限なく使用可能である。このようなエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)、リン含有エポキシ樹脂、及びこれらのハロゲン化物(臭素化エポキシ樹脂等)や水素添加物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂が、低吸湿性の点から好ましい。尚、臭素化エポキシ樹脂等は、接着剤に難燃性が要求される場合に、特に有効である。アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)は、感光性を有するので、接着剤組成物に光硬化性を付与するために有効である。
【0036】
エポキシ樹脂は、アクリル樹脂100質量部に対し12.5〜50質量部の割合で配合される。アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量が12.5質量部未満では、接着剤フィルム30が柔らかくなりすぎ、接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑制できなくなる。一方、アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量が50質量部を超えると、接着剤フィルム30が硬くなりすぎ、優れた半田耐熱性を接着層6に付与することができなくなる。尚、アクリル樹脂100質量部に対するエポキシ樹脂の配合量は、半硬化状態で過度な粘着性を示さず、かつ硬化後に粘着性を消失させることから、20〜30質量部であることが好ましい。
【0037】
(C)第1硬化剤
第1硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化に用い得るものであり且つ第2硬化剤よりも高い反応開始温度を有するものであれば、特に制限なく使用することが可能である。このような第1硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン系硬化剤、脂環式アミン系硬化剤、第2級もしくは第3級アミン系硬化剤、芳香族アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール化合物、トリアジン構造を有するフェノールノボラック樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。但し、第1硬化剤の反応開始温度は、80℃以上あることが、第2硬化剤を反応させる工程で、硬化反応を起こさせないことから好ましい。但し、プレスキュアの温度で十分な反応を示す必要があることから、100℃以下であることが好ましい。
【0038】
第1硬化剤は、アクリル樹脂100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で配合される。第1硬化剤の配合量が0.05質量部未満では、プレスキュア時の接着剤フィルム30の流れ出しが十分に抑制できず、優れた半田耐熱性を接着層6に付与することもできなくなる。尚、アクリル樹脂100質量部に対する第1硬化剤の配合量は、プレスキュア時の反応を十分に進行させるという理由から、0.2〜0.4質量部であることが好ましい。
【0039】
(D)第2硬化剤
第2硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化に用い得るものであり且つ第1硬化剤よりも低い反応開始温度を有するものであれば、特に制限なく使用することが可能である。このような第2硬化剤としては、例えばポリアミドアミン、脂肪族ポリアミンなどを使用することが可能である。但し、第2硬化剤の反応開始温度は、30℃以下であることが、第1硬化剤と反応が十分に区別できるという理由から好ましい。但し、ワニスの可使時間を長く保つ又はワニスの保存安定性を高めるという理由から、20℃以上であることが好ましい。
【0040】
第2硬化剤は、エポキシ樹脂の反応基数の20〜70%の反応基数を有するように配合される。ここで、エポキシ樹脂の反応基数に対する第2硬化剤の反応基数の比率は、エポキシ樹脂のエポキシ当量及び配合量、並びに、第2硬化剤の活性水素当量及び配合量に基づいて算出することができる。例えば、エポキシ樹脂のエポキシ当量が190(g/eq)、その配合量が25質量部で、第2硬化剤の活性水素当量が114(g/eq)、その配合量が5質量部であるとすると、エポキシ樹脂の反応基数に対する第2硬化剤の反応基数の比率は、以下のようにして算出される。
100×[(1/114)×5]/〔(1/190)×25〕=33%
【0041】
第2硬化剤の反応基数がエポキシ樹脂の反応基数の20%未満では、接着剤フィルム30が柔らかくなりすぎ、接着剤フィルム30の流れ出しを十分に抑制できなくなる。一方、第2硬化剤の反応基数がエポキシ樹脂の反応基数の70%を超えると、接着剤フィルム30が硬くなりすぎ、優れた半田耐熱性を接着層6に付与することができなくなる。尚、エポキシ樹脂の反応基数に対する第2硬化剤の反応基数の比率は、エポキシ樹脂の反応状態を適当な半硬化状態に保つという理由から、エポキシ樹脂の反応基数の20〜40%であることが好ましい。
【0042】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて、添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等のフィラーや、シランカップリング剤等の分散剤などが挙げられる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、接着剤フィルム30のみが、上記(A)〜(D)を有する接着剤組成物を用いて製造されているが、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22も、上記(A)〜(D)を有する接着剤組成物を用いて製造されてもよい。
【0044】
また上記製造方法では、補強板7、接着剤フィルム30、金属張積層板20及びカバーレイ10を重ね合わせて一括して接着剤層14,22及び接着剤フィルム30を硬化させているが、フレキシブルプリント基板100を得るためには、接着剤層14,22及び接着剤フィルム30を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば補強板7、接着剤フィルム30及び金属張積層板20を重ね合わせ、接着剤層22及び接着剤フィルム30を硬化させ、積層体を得た後、この積層体と、カバーレイ10とを重ね合わせ、接着剤層14を硬化させてもフレキシブルプリント配線板100を得ることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、表1〜3において、特に指定しない限り、数値の単位は質量部を表す。
【0046】
(実施例1〜4及び比較例1〜7)
まず(A)アクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)第1硬化剤、(D)第2硬化剤、(E)フィラー及び(F)分散剤を表1〜3に示す割合で配合して接着剤組成物を得た。そして、接着剤組成物を、メチルエチルケトンからなる溶媒中に溶解させ、表1〜3に示す「接着剤組成物の反応温度」で8時間加熱還流撹拌を行い、第2硬化剤とエポキシ樹脂とを反応させ、接着剤を含む接着剤溶液を得た。
【0047】
得られた接着剤溶液を、非シリコン系材料で離型処理をしたPETフィルムの表面に塗工し、120℃で4分間加熱して接着剤フィルムを形成した。このとき、接着剤フィルムの厚さが25μmとなるようにした。
【0048】
上記(A)アクリル樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)第1硬化剤、(D)第2硬化剤、(E)フィラー及び(F)分散剤としては、具体的には下記のものを使用した。
(A)アクリル樹脂
(A−1)カルボキシル基を導入したエチルアクリレート−ブチルアクリレート−アセトニトリル共重合体(ナガセケムテックス社製WS−023)
(A−2)カルボキシル基を導入したエチルアクリレート−ブチルアクリレート−アセトニトリル共重合体(ナガセケムテックス社製SG−700−AS)
(B)エポキシ樹脂
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製JER828EL)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(JER社製JER152)
(C)第1硬化剤
(C−1)3フッ化ホウ素(和光純薬社製BF−MEA)
反応開始温度:80℃
(C−2)イミダゾール(四国化成社製C11Z−CN)
反応開始温度:130℃
(D)第2硬化剤
(D−1)ポリアミドアミン(DIC社製EA−2020)
反応開始温度:20℃
活性水素当量(g/eq):114
(D−2)ポリアミドアミン(富士化成社製HR−11)
反応開始温度:20℃
活性水素当量(g/eq):110
(D−3)フェノール樹脂(群栄化学社製PSM−4326)
反応開始温度:120℃
活性水素当量(g/eq):120
(E)フィラー
水酸化アルミニウム(昭和電工社製H−43S)
(F)分散剤
不飽和脂肪酸ポリアミンアミドと酸性エステル(ビッグケミージャパン社製BYK−980)
【0049】
[特性評価]
接着剤フィルムを、CCLのベース面(回路とは反対側の面)にロールラミネートした後、PETフィルムを剥離した。そして、接着剤フィルムにポリイミド(PI)板又は鏡面処理したステンレス(SUS)板を載せ、160℃で1時間、55kgf/cmの圧力をかけてプレスキュアを行い、CCLにPI板又はSUS板を接着させ、特性評価用の試料を得た。そして、この試料について以下の特性を評価した。
【0050】
(接着剤層の流れ出し性)
上記試料のうちCCLにPI板を接着した試料について、その端部からの接着剤フィルムの流れ出し量の最大値を目視にて測定した。結果を表1〜3に示す。尚、接着剤の流れ出し量は、60μm以下であれば接着剤の流れ出しが十分に抑制されているとして「合格」とし、60μmを超えた場合には接着剤の流れ出しが十分に抑制されていないとして「不合格」とした。
【0051】
(吸湿後の半田耐熱性)
上記のようにして得られた試料を、40℃、90%RHの恒温槽に96時間置いた後、260℃で融解したはんだ槽に3分間フロートし、膨れの発生の有無を観察した。尚、3分以上膨れが生じない試料については半田耐熱性に優れるとして「A」と表示し、10秒超3分未満で膨れが生じた試料については半田耐熱性に劣るとして「B」と表示することとした。10秒以下で膨れが生じた試料については半田耐熱性にさらに劣るとして「C」と表示することとした。結果を表1〜3に示す。
【0052】
(ピール強度)
上記のようにして得られた試料について、90°ピール強度を測定した。結果を表1〜3に示す。尚、表1〜3において、ピール強度が10N/cm以上の強度を有する試料は密着性に特に優れるものである。
【表1】

【表2】

【表3】

【0053】
表1〜3に示す結果より、実施例1〜4の接着剤組成物は、プレスキュア時の接着剤フィルムの流れ出し性及び吸湿後の半田耐熱性について合格基準に達することが分かった。これに対し、比較例1〜7の接着剤組成物は、プレスキュア時の接着剤フィルムの流れ出し性及び吸湿後の半田耐熱性の少なくとも一方が合格基準に達しないことが分かった。
【0054】
以上のことから、本発明の接着剤組成物によれば、優れた半田耐熱性を示しつつ、プレスキュア時における流れ出しをも抑制できる接着剤フィルムを実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0055】
30…接着剤フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル樹脂と、
(B)エポキシ樹脂と、
(C)第1硬化剤と、
(D)第2硬化剤とを含み、
前記第2硬化剤(D)が、前記第1硬化剤(C)よりも低い反応開始温度を有し、
前記エポキシ樹脂(B)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して12.5〜50質量部の割合で配合され、
前記第1硬化剤(C)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で配合され、
前記第2硬化剤(D)は、前記エポキシ樹脂(B)の反応基数の20〜70%の反応基数を有するように配合されていること、
を特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤組成物を、前記第2硬化剤(D)の反応開始温度以上の温度で且つ前記第1硬化剤(C)の反応開始温度よりも低い温度下に配置して接着剤を形成する工程と、
前記接着剤を含む接着剤溶液を基板上に塗布して乾燥させて接着剤フィルムを形成する工程とを含む接着剤フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の接着剤フィルムの製造方法により得られる接着剤フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12525(P2012−12525A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151299(P2010−151299)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】