説明

接着剤組成物及びその製造方法

【課題】建築用途、工業用途及びコーティング用、特に化粧合板、複合パネルなどの建材用途に有用な水分散型接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定の分岐アルキル基を有するビニルエステル不飽和単量体;2〜15質量%及び、(B)ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体;10〜40質量%、(C)カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体;1〜5質量%、(D)前記(A)〜(C)以外の単量体であって、且つエチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニルではない共重合可能なエチレン性不飽和単量体;40〜87質量%、を共重合した重合体と、ホルムアルデヒド捕捉剤として、硫酸ヒドロキシルアミン、ジシアンジアミド、塩酸ヒドロキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも1種と、を有することを特徴とする水分散型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型接着剤組成物及びその製造方法に関する。具体的には、本発明は、環境への負荷の大きい揮発性有機溶剤や可塑剤などを含まず、耐水性、初期接着性、コンタクト接着性、常態接着強度、引張剪断強度及び耐熱クリープ性に優れた、木材から金属、各種プラスチックまで幅広く接着できる、例えば建築用途、工業用途及びコーティング用、特に化粧合板、複合パネルなどの建材用途に有用な水分散型接着剤組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具、洗面台、建築内装材の各所に使用される接着剤、例えば、これらの用途において主に使用されているクロロプレンゴム系接着剤などの有機溶剤系接着剤は、シックハウス症候群や環境問題を引き起こす可能性の高い揮発性有機溶媒や塩素を含んでいる。一方で、近年、健康や環境に対する関心がさらに高まっていることから、揮発性有機化合物の含有量が少ない、水を媒体とする接着剤の転換が強く望まれている。更に、同様に家具や洗面台、建築内装材の他に化粧合板、複合パネルなどの建材用途にも使用される反応型ホットメルト接着剤は、塗装時の加熱溶融時に反応が進行しゲル物が発生するため、反応の進行を軽減させるために塗装機内部全体を窒素ガスで置換させる必要があり、塗装機のメンテナンスなど多大な経費も必要となる。従って、より安全でハンドリング性に優れる水系接着剤への転換が強く要望されている。
このような要望に従い、水を媒体とする酢ビ系エマルションやエチレン−酢ビエマルションを用いた接着剤組成物が開発された。しかしながら、これらの接着剤は、初期接着力、コンタクト性、耐水性、乾燥性及び塗工性が劣ると言う問題を有していた。
接着剤組成物から有機溶媒や塩素を初めとするハロゲンを除き、且つ接着力等が優れた接着剤組成物を得るための検討がなされている。例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3では、ドライラミネート用水性接着剤として、連鎖移動剤存在下でカルボニル基とジヒドラジドの架橋構造を導入した水性接着剤が提案されている。しかしながら、これらの接着剤は、接着性及びコンタクト性を向上させる為に連鎖移動剤を必須成分としている為に、耐熱クリープ性など耐熱性が充分ではない。特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9及び特許文献10では、カルボニル基とジヒドラジドの架橋構造を導入した樹脂が提案されている。しかしながら、これらの樹脂を用いた接着剤は、接着剤として求められる凝集力が不十分であり、プラスチック材との接着性、水系接着剤で問題となりやすい初期接着力も不十分である。
特許文献11及び特許文献12において、初期接着力やコンタクト接着性を解決するために、低分子量脂肪族カルボン酸のビニルエステルを必須成分とする接着剤組成物が提案されている。しかし、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニルなどの低分子の脂肪族カルボン酸ビニルエステルは耐水性を著しく低下させる。一方、特許文献12において開示されている低分子量分岐型脂肪族カルボン酸のビニルエステルや高分子量直鎖脂肪族カルボン酸のビニルエステルは、一般的に(メタ)アクリル酸エステルとの反応性比が小さく、エチレンや酢酸ビニルを第3成分として加えなければ共重合させることが難しい。しかし、酢酸ビニルを第3成分として共重合した場合、前述の通り耐水性が低下し、エチレンは気密性の高い反応釜を必要とするなど、容易に合成できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220279号公報
【特許文献2】特開2006−219511号公報
【特許文献3】特開2006−299125号公報
【特許文献4】特開平09−227848号公報
【特許文献5】特開平10−077455号公報
【特許文献6】特開平06−287534号公報
【特許文献7】特開平06−287457号公報
【特許文献8】特開平06−264041号公報
【特許文献9】特開平06−158010号公報
【特許文献10】特開昭60−020980号公報
【特許文献11】特開2009−269956号公報
【特許文献12】特開平05−271631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、環境への負荷の大きい揮発性有機溶剤や可塑剤などを含まず、耐水性、初期接着性、コンタクト接着性、常態接着強度、引張剪断強度及び耐熱クリープ性に優れた、木材から金属、各種プラスチックまで幅広く接着できる、例えば建築用途、工業用途及びコーティング用、特に化粧合板、複合パネルなどの建材用途に有用な水分散型接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の課題について鋭意研究を重ねた結果、特定の単量体を共重合して得られる重合体及び特定の成分を含む水分散型接着剤組成物により、上記課題が解決できることを見いだし、本発明をするに至った。すなわち、本発明は、
(A)下記一般式(a)

(R1及びR2は、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、且つ、R1及びR2の炭素原子の合計が6〜7である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体;2〜15質量%及び、
(B)ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体;10〜40質量%、
(C)カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体;1〜5質量%、
(D)前記(A)〜(C)以外の単量体であって、且つエチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニルではない共重合可能なエチレン性不飽和単量体;40〜87質量%、
を共重合した重合体と、
ホルムアルデヒド捕捉剤として、硫酸ヒドロキシルアミン、ジシアンジアミド、塩酸ヒドロキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも1種と、
を有する水分散型接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水分散型接着剤組成物は、成膜助剤や可塑剤として揮発性有機溶剤を含まず、耐水性、初期接着性、コンタクト接着性、常態接着強度、引張剪断強度及び耐熱クリープ性に優れた、木材から金属、各種プラスチックまで幅広く接着でき、例えば、建築用途、工業用途、コーティング用の幅広い用途に使用できる。本発明の水分散型接着剤組成物は、特に、化粧合板、複合パネルなどの建材用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の水分散型接着剤組成物は、特定の単量体を共重合して得られる重合体及びホルムアルデヒド補足剤を含む。
【0008】
その1.重合体を得るために使用する単量体
1.エチレン性不飽和単量体(A)
エチレン性不飽和単量体(A)は、下記一般式(a)

(R1及びR2は、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、且つ、R1及びR2の炭素原子の合計が6〜7である。)
で示されるエチレン性不飽和単量体である。これらの単量体の1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記、エチレン性不飽和単量体(A)としては、具体的には、ネオデカン酸ビニルエステル及びその異性体、ネオノナン酸ビニルエステル及びその異性体等が挙げられる。
エチレン性不飽和単量体(A)を使用することにより、耐水性を低下することなく、初期接着性及びコンタクト接着性(引張剪断強度)を向上させると言う効果が得られる。
エチレン性不飽和単量体(A)は、重合体の2〜15質量%、好ましくは5〜15質量%、より好ましくは5〜10質量%の量で使用することが好ましい。2質量%以上の量で使用することにより、優れた引張剪断強度及び初期接着性を得ることができる。一方15質量%以下の量で使用することにより、重合反応がスムーズに進むことにより、未反応モノマーの残存量を低減できる。
【0009】
2.ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)
分子中にベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ホモポリマーのガラス転移温度が高く、他の単量体との共重合性が良好であるという点から、スチレン及びベンジルメタクリレートが好ましい。これらベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体を使用することにより、ポリマー中のベンゼン環がスタッキングし、塗膜の凝集力が高まり、優れた引張剪断強度が得られる。更に被着体がプラスチック材の場合、接着強度を高めることができる。ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)は、該重合体の10〜40質量%、好ましくは20〜40質量%、より好ましくは20〜36質量%の量で使用することが好ましい。10質量%以上の量で使用することにより、優れた引張剪断強度が得られ、プラスチック材への接着性も向上する。一方、40質量%以下の量で使用することにより、適度な凝集力を得ることができ、優れたコンタクト接着性を得ることができる。
【0010】
3.カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(C)
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。特に、乳化重合時における反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸が好適に使用することができる。
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(C)は、該重合体の1〜5質量%、好ましくは1〜4質量%、より好ましくは1.5〜3質量%の量で使用することが好ましい。1質量%以上の量で使用することにより、重合体を製造する際に凝集物が発生することを防ぐことができ、しかも良好な機械的安定性及び塗装作業性が得られ、更に、アルミ材の様な非鉄金属を含め、金属類に対する接着性が向上する。5質量%以下の量で使用することにより、優れた耐水性が得られ、また重合体が高粘度化することを防ぐことにより優れた塗装作業性を得ることができる。
【0011】
4.その他のエチレン性不飽和単量体(D)
本発明で使用するその他のエチレン性不飽和単量体(D)は、前記(A)〜(C)以外の単量体であって、且つエチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニルではない共重合可能なエチレン性不飽和単量体である。
これらの単量体として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ソーダ、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステルモノマーを挙げることができる。
更に、上記のアクリル酸エステルモノマーの他に、アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基を持つα,β−エチレン性不飽和モノマーやアクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン等のビニルモノマーを使用できる。
更に、架橋構造を導入する目的で、前記ジビニルベンゼンや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体、乳化重合反応時の温度にて相互に反応する官能基を持つ単量体を組合せ、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組合せの官能基を持つエチレン性不飽和単量体、加水分解縮合反応する、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、や(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシリル基含有エチレン性不飽和単量体も使用できる。
上記単量体は、いずれも、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
前記不飽和単量体(D)は、重合体の40〜87質量%、好ましくは50〜85質量%の量で使用することが好ましい。40〜87質量%の量で使用することにより、重合体のガラス転移温度を−30℃〜10℃に調整することができる。なお、前記架橋構造を導入する目的で使用する単量体は、重合体の3質量%以下の量で使用することにより良好な接着力及び粘着力を得ることができる。
【0012】
その2.重合体の製造方法
本発明の接着剤組成物に使用される重合体は、上記エチレン性不飽和単量体(A)〜(D)を共重合することにより得られる。なお、エチレン性不飽和単量体(A)は、その他の単量体との反応性が低いため、共重合反応がスムーズに進まない場合がある。このような場合には、エチレン性不飽和単量体(A)のみを重合し、エチレン性不飽和単量体のポリマー転化率が80〜98質量%になった後に、その他のエチレン性不飽和単量体(B)〜(D)を乳化重合することにより、効率良く重合体を得ることができる。
具体的な方法として、例えば以下の方法により重合体を製造することができる。攪拌機、還流冷却塔、温度計及び滴下装置を備えた4つ口フラスコ等の容器に水、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤を添加し、エチレン性不飽和単量体(A)及び重合開始剤を添加する。反応容器中の液体を攪拌しながら良く混合し、重合開始剤や分子量に適した温度まで加熱し、重合反応を開始する。次いで、エチレン性不飽和単量体(A)のポリマー転化率が80〜98質量%になった時点で、ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(C)及び、その他のエチレン性不飽和単量体(D)の混合物及び必要に応じて追加の重合開始剤を従来から公知の1段階又は、多段階にて逐次投入する半回分乳化重合することによって得ることができる。
尚、上記ポリマー転化率は、
(加熱残分−アニオン性界面活性剤及び又はノニオン性界面活性剤の質量)÷(配合中の投入したエチレン性不飽和単量体(A)の質量)×100
の式によって算出する。
また、加熱残分は、JIS K5601−1−2に従い、140℃に設定したオーブンにて30分間乾燥させた後の重量より算出する。
【0013】
上記重合開始剤としては、従来から一般的にラジカル重合に使用されているものが使用可能であるが、中でも水溶性のものが好適であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライドや、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用できる。前記重合開始剤は、重合開始剤の種類や得られる重合体の分子量に合わせて適宜調整して使用する。
なお、連鎖移動剤については、ポリマーの分子量低下によって耐熱クリープ性、接着強度の低下をまねく為に使用しないことが好ましい。なお、使用しないことが好ましい連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン等の長鎖のアルキルメルカプタン類や、芳香族メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素類等、α−メチルスチレンダイマー、アルコール類を挙げることができる。
【0014】
更に該重合体を合成するにあたり、一般的に乳化重合で用いられる界面活性剤については特に制限無く使用することができる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪酸塩や、高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエーテル硫酸塩、等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。更に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルや、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤も適宜組み合わせて使用することができる。その他、乳化安定化剤としてポリビニルアルコールや、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が好適に用いる事ができる。但し、上記界面活性剤及び乳化安定剤としては、接着剤塗布時に被着材と接着剤組成物との界面に配向する傾向があり、剥離の原因となる場合がある。その為、より好適には、分子中にエチレン性不飽和基を有する、α−スルホナト−ω−(1−(アリルオキシメチル−アルキルオキシポリオキシエチレンアンモニウム塩(第一工業製薬(株)製;アクアロンKHシリーズ)、
2−ポリオキシエチレン−4−ノニル−2−プロペニルフェニルエーテル(第一工業製薬(株)製;アクアロンRNシリーズ)、
[({α−[2−(アリルオキシ)−1−({[アルキル(C=10〜14)]オキシ}メチル)エチル]−ω−ヒドロキシポリ(n=1〜100)(オキシエチレン)}を主成分とする、{アルカノール(C=10〜14、分岐型)と1−(アリルオキシ)−2,3−エポキシプロパンの反応生成物}のオキシラン重付加物)の硫酸エステル化物]のアンモニウム塩(ADEKA(株)製;アデカリアソープSRシリーズ)、
α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩(ADEKA(株)製;アデカリアソープSEシリーズ)、
α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル))(ADEKA(株)製;アデカリアソープERシリーズ)、
ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム(花王(株)製;ラテムルPDシリーズ)、
ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩(日本乳化剤(株)製;アントックスMS60)、
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本乳化剤(株)製;MA50、日本油脂(株)製;ブレンマーPE−350)、
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製;ブレンマーPP−1000)、
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート(日本油脂(株)製;ブレンマーPEPシリーズ)、
ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノアクリレート(日本油脂(株)製;ブレンマーAEPシリーズ)、
などを反応性界面活性剤として使用することが好ましい。
これら界面活性剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。界面活性剤の量は、エチレン性不飽和単量体(A)〜(D)の総量に対して、0.8〜30質量%の量で使用される。
【0015】
その3.重合体
前記方法によって得られる重合体は、−30〜10℃、好ましくは−20〜10℃、より好ましくは−15〜5℃の範囲のガラス転移温度(以下、Tgという)を有することが好ましい。−30℃以上のガラス転移温度を有することにより、良好なコンタクト接着性や粘着性と共に、良好な引張剪断強度及び耐熱クリープ性を得ることができる。一方、10℃以下のTgを有することにより、良好なコンタクト接着性及び造膜性を得ることができ、水分散型接着剤組成物に成膜助剤や可塑剤を添加する必要が無くなる。なお、Tgは、上記エチレン性不飽和単量体(A)〜(D)を適宜組み合わせることにより調整できる。
尚、本発明において、重合体組成物のTgは、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+……+Wi/Tgi+……Wn/Tgn
[上記FOX式は、n種の単量体からなる重合体を構成する各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度をTgi(K)とし、各モノマーの質量分率をWiとしており、(W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1)である。]
また、最低成膜温度を下げる目的で、成膜助剤、凝集助剤として、エチレングリコールモノブチルエーテルやジエチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートなど、一般的に使用されるものは特に制限無く使用することが出来るが、これらは揮発性有機溶剤である為、人体を始め環境への負荷が大きい為に、出来る限り使用しないことが好適である。
本発明で使用する重合体の重量平均分子量は、100,000〜1,000,000、好ましくは150,000〜1,000,000、より好ましくは200,000〜1,000,000であることが好ましい。100,000以上の重量平均分子量であることにより、コンタクト接着性(引張剪断強度)及び耐熱クリープ性を向上すると言う効果が得られる。また、1,000,000以下の重量平均分子量であることにより、初期接着性の向上と言う効果が得られる。
【0016】
なお、本発明で使用する前記重合体にアンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶性無機塩類をpH調整剤として添加してpH7〜10に調整しておくことで、得られた重合体の貯蔵時の安定性を更に改善できる。前記pH調整剤として、特にアンモニア、水酸化ナトリウムを好適に使用することができる。
【0017】
その4.ホルムアルデヒド補足剤
ホルムアルデヒド捕捉剤は、例えば、硫酸ヒドロキシルアミン、ジシアンジアミド、塩酸ヒドロキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらホルムアルデヒド補足剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。ホルムアルデヒド補足剤を使用することにより、接着剤を使用する対象である合板等が、シックハウス症候群などの主原因とも言われるホルムアルデヒドを含んでいる場合であっても、前記ホルムアルデヒド補足剤がホルムアルデヒドを吸着し、ホルムアルデヒドの大気中への放散を防止できる。
【0018】
その5.水分散型接着剤組成物
本発明の水分散型接着剤組成物は、前記重合体及びホルムアルデヒド補足剤を含む。具体的には、本発明の水分散型接着剤組成物は、前記重合体及びホルムアルデヒド補足剤に、必要に応じて任意の成分を添加し、攪拌することにより得ることができる。なお、前記重合体の量は、乾燥質量により、水分散型接着剤組成物の60〜99.8質量%、好ましくは80〜99.8質量%、より好ましくは90〜99.8質量%の量で配合することが好ましい。重合体を60質量%以上含むことにより、初期接着性やコンタクト接着性が向上すると言う効果が得られる。
ホルムアルデヒド補足剤は、水分散型接着剤組成物の0.2〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%の量で使用することが好ましい。0.2質量%以上の量で使用することにより、接着対象物に含まれるホルムアルデヒドを大気中に放散させることを低減することができると言う効果が得られる。一方、20質量%を超過する量を添加しても、ホルムアルデヒドの低減効果は一定以上の向上は見られない。
更に、必要に応じて前記重合体とは別の水分散型重合体又は水溶性重合体、消泡剤、防腐剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、炭酸カルシウムなどの充填材、更に劣化や老化を防止する目的で、ヒンダードアミン系光安定剤や酸化防止剤などの老化防止剤を任意で添加することができる。
水は、水分散型接着剤組成物の40〜60質量%、好ましくは45〜50質量%の量で含むことが好ましい。
上記のように得られた本発明の水分散型接着剤組成物は、常圧下で沸点が50〜260℃である揮発性有機化合物(VOC)を含まないことがより好ましい。
【0019】
その6.水分散型接着剤組成物の使用方法
本発明の水分散型接着剤組成物は、接着する対象に塗布し、接着対象を密着させ、必要に応じて加熱することにより、接着対象を接着できる。
本発明の水分散型接着剤組成物を接着する対象に塗布する際には、例えば、刷毛やロール、スプレー等の方法により塗布することができる。塗布量は、例えば、乾燥質量により10〜500g/m2の量を塗布することができる。
一方又は両方の接着対象に本発明の水分散型接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱を行うこともできる。加熱する場合には、例えば、60〜150℃の温度で1〜10分加熱することができる。
本発明の水分散型接着剤組成物を使用する接着対象に特に制限はなく、例えば、建築用途、工業用途及びコーティング用、特に化粧合板、複合パネルなどの建材用途に好適に使用される。
【実施例】
【0020】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0021】
《重合体1の合成》
攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下装置を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水40部及び、アンモニウム=4−ノニル−2−(1−プロペニル)フェノキシポリ(n=0〜29)エトキシエチル=スルファート15%水溶液(第一工業製薬製;アクアロンBC0515)2.7部仕込み、反応器内を撹拌しながら窒素で置換し、80℃まで昇温した。その後、pH調整剤として、炭酸水素ナトリウム0.1部、引き続き、開始剤として過硫酸カリウム0.4部をそれぞれ添加し、次いで予め別容器にて撹拌混合しておいた、表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。その後、撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和し、重合体1を得た。
【0022】
《重合体2の合成》
重合体1の合成と同様に4つ口フラスコに、イオン交換水40部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩25%水溶液(第一工業製薬製;ハイテノールNF0825)1.6部及び、ネオノナン酸ビニルエステル10部を仕込み、反応器内を撹拌しながら窒素で置換し、80℃まで昇温した。炭酸水素ナトリウム0.1部、過硫酸カリウム0.4部を順次添加し、撹拌を続けながら80℃で50分間維持した。(この時点で反応器内の樹脂分散体をサンプリングし、ポリマー転化率を計算したところ99%であった。)引き続き、予め別容器にて撹拌混合しておいた、表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。更に撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和し、重合体2を得た。
【0023】
《重合体3の合成》
重合体2の合成と同様に過硫酸カリウム0.4部を添加後、撹拌を続けながら80℃で15分間維持した。(この時点で反応器内の樹脂分散体をサンプリングし、ポリマー転化率を計算したところ75%であった。)引き続き、予め別容器にて撹拌混合しておいた表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。更に撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和し、重合体3を得た。
【0024】
《重合体4の合成》
重合体2の合成と同様に4つ口フラスコに、イオン交換水40部、アンモニウム=4−ノニル−2−(1−プロペニル)フェノキシポリ(n=0〜29)エトキシエチル=スルファート15%水溶液(第一工業製薬製;アクアロンBC0515)2.7部及び、ネオノナン酸ビニルエステル5部、ネオデカン酸ビニルエステル5部を仕込み、反応器内を撹拌しながら窒素で置換し、80℃まで昇温した。炭酸水素ナトリウム0.1部、過硫酸カリウム0.4部を順次添加し、撹拌を続けながら80℃で30分間維持した。(この時点で反応器内の樹脂分散体をサンプリングし、ポリマー転化率を計算したところ92%であった。)引き続き、予め別容器にて撹拌混合しておいた、表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。更に撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和し、重合体4を得た。
【0025】
《重合体5の合成》
重合体2の合成と同様に4つ口フラスコに、イオン交換水40部、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩25%水溶液(第一工業製薬製;ハイテノールNF0825)1.6部及び、ネオデカン酸ビニルエステル5部を仕込み、反応器内を撹拌しながら窒素で置換し、80℃まで昇温した。炭酸水素ナトリウム0.1部、過硫酸カリウム0.4部を順次添加し、撹拌を続けながら80℃で30分間維持した。(この時点で反応器内の樹脂分散体をサンプリングし、ポリマー転化率を計算したところ95%であった。)引き続き、予め別容器にて撹拌混合しておいた、表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。更に撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却し、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和し、重合体5を得た。
【0026】
《重合体6の合成》
単量体の組成を表1のものに変更した以外は、重合体5の合成と同様に合成し、重合体6を得た。
【0027】
《重合体7の合成》
アニオン性界面活性剤を、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩25%水溶液から、アンモニウム=4−ノニル−2−(1−プロペニル)フェノキシポリ(n=0〜29)エトキシエチル=スルファート15%水溶液2.7部に変更した以外、重合体5と同様に合成することで重合体7を得た。尚、重合体7を東ソー製 HLC−8220GPCにて重量平均分子量を測定したところ、約70,000g/mol(ポリスチレン換算)であった。
【0028】
《重合体8の合成》
単量体の組成を表1のものに変更した以外は、重合体1と同様に合成することで重合体8を得た。
【0029】
《重合体9の合成》
単量体の組成を表1のものに変更した以外は、重合体7と同様に合成することで重合体9を得た。
【0030】
《重合体10の合成》
攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下装置を備えた4つ口フラスコに、イオン交換水40部及び、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩25%水溶液(第一工業製薬製;ハイテノールNF0825)1.6部仕込み、反応器内を撹拌しながら窒素で置換し、80℃まで昇温した。その後、pH調整剤として、炭酸水素ナトリウム0.1部、引き続き、開始剤として過硫酸カリウム0.4部をそれぞれ添加し、次いで予め別容器にて撹拌混合しておいた、表1に記載の単量体混合物を4時間かけて連続滴下した。その後、撹拌を続けながら80℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8まで中和した。但し、重合時の安定性は非常に悪く、凝集体が大量に発生した為、150メッシュのステンレスメッシュを用いて濾過し、濾液を重合体10として得た。
【0031】
《重合体11の合成》
単量体(A)組成を、ネオノナン酸ビニルエステル10部に変更した以外、重合体4と同様に合成し、重合体11を得た。尚、表1記載の単量体混合物を滴下する直前の反応器内の重合率は、91%であった。
【0032】
《重合体12の合成》
単量体の組成を表1のものに変更した以外は、重合体1の合成と同様にして、重合体12を得た。
【0033】
《重合体13の合成》
単量体の組成を表1のものに変更した以外は、重合体5の合成と同様にして、重合体13を得た。尚、表1記載の単量体混合物を滴下する直前の反応器内の重合率は、96%であった。
【0034】
《重合体14の合成》
単量体(A)組成を、ネオデカン酸ビニルエステル10部に変更した以外、重合体2と同様に合成し、重合体14を得た。尚、表1記載の単量体混合物を滴下する直前の反応器内の重合率は94%であった。
【0035】
【表1】

【0036】
〔実施例1〜8及び比較例1〜8〕
上記の様にして得られた重合体1〜14にホルムアルデヒド補足剤を添加し、更に、消泡剤としてアデカネートB−943(ADEKA製)及び防腐剤としてデニサイドEF(ナガセケムテックス製)を添加した。また、増粘剤としてアデカノールUH420(ADEKA製)を適宜添加し、接着剤組成物の粘度を2,000mPa・sに調整した。但し、比較例8については、重合体14の粘度が2,000mPa・s以上であった為、増粘剤は添加せず、そのまま用いた。また、実施例1については造膜助剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルを添加した。
【0037】
〔評価方法〕
[重合体の状態]
重合体1〜14を合成後に150メッシュで濾過し、濾過残渣を乾燥後秤量する。その後以下の計算式にて、凝集物発生量を算出し、更に以下の規準にて重合体の状態を評価した。
凝集物発生量=(乾燥後の濾過残渣の重量)/(単量体の総重量)
○;凝集物発生量が0.1%以下
×;凝集物発生量が0.1%を超過
【0038】
[臭気]
官能試験によって行い、以下の規準にて評価した。
○;弱いアクリル臭のみが感じられる。
△;やや未反応のモノマー臭又は、添加された造膜助剤臭が感じられる。
×;強いモノマー臭がする。
【0039】
[コンタクト接着性]
JIS K6850に準拠して行う。150mm×25mm×5mmの木板(栂材)、ポリスチレン板、塩化ビニル板、ABS板、アルミ(アルマイト封孔処理)板それぞれに、乾燥後塗布重量50g/m2となるように塗布し、60℃オーブンにて3分間乾燥した後、同種材同士を25mm×25mmとなる様に相互に塗布面を貼り合わせる。その後23℃、50%RHにて7日間養生し、試験板を得た。
その後、島津製作所製オートグラフAG−Iにて引張剪断強度試験を行い、以下の規準にて評価した。尚、引張の速度は50mm/minで行った。
○;1.0N/mm2以上
△;0.5N/mm2以上、1.0N/mm2未満
×;0.5N/mm2未満
【0040】
[常態接着強度(180°剥離接着強度試験)]
JIS K6854−2に準拠して行う。オレフィンシート(200mm×25mm×0.25mm)に50〜75g/m2となるように塗布し、60℃オーブンにて3分間乾燥した後、23℃室温下にて150mm×25mm×5mmのポリスチレン板を貼り合わせ、ゴムローラーにて圧着した。その後23℃、50RHにて7日間養生し、試験片を得た。
その後、23℃下にて島津製作所製オートグラフAG−Iにて180°剥離接着強度試験を行い、以下の規準にて評価した。尚、剥離速度は300mm/minで行った。
○;20N/25mm以上
△;5N/25mm以上、20N/25mm未満
×;5N/25mm未満
【0041】
[初期接着性試験(クリープ試験)]
常態接着強度と同様に接着剤を塗布・乾燥させたポリオレフィンシートにポリスチレン板を貼り合わせ、23℃室温下にてゴムローラーにて圧着させ、90°剥離試験片を得た。その後速やかに90°剥離試験片の一方のポリオレフィンシートの端部に500gの錘を載せ、90°剥離式のクリープ試験を行い、90秒後の剥離距離に応じて以下の規準にて評価した。
○;剥離距離が0〜10mm未満
△;剥離距離が10mm以上、20mm未満
×;20mm以上剥離
【0042】
[耐熱クリープ試験]
初期接着性試験と同様にして作製した90°剥離試験片を23℃、50%RHにて7日間養生した。その後、60℃無風オーブンに試験片を入れ、90°剥離試験片の一方のポリオレフィンシートの端部に200gの錘を載せ、60℃下にて90°剥離式の耐熱クリープ試験を行った。1時間後の剥離距離に応じて以下の規準にて評価した。
○;剥離距離が0〜10mm未満
△;剥離距離が10mm以上、20mm未満
×;20mm以上剥離
【0043】
[温水浸漬後の接着強度]
常態接着強度試験と同様にして作製した試験片を60℃温水に24時間浸漬し、更に23℃にて冷却した後、180°剥離接着強度試験を行った。尚、剥離速度は300mm/minで測定し、以下の規準にて評価した。
○;20N/25mm以上
△;5N/25mm以上、20N/25mm未満
×;5N/25mm未満
【0044】
[ホルムアルデヒド放散低減効果]
テドラーバックの片面に切れ込みを入れ、メラミン樹脂にて作製された合板(100mm×100mm×15mm)を挿入し、開口部をヒートシール装置で密閉した。その後23℃に調整された部屋に7日間静置した後、テドラーバック内のアセトアルデヒド濃度を検知管を用いてガス濃度測定を2回行い、その平均値を初期値とした。
同種のメラミン樹脂合板(100mm×100mm×15mm)の全面に上記で作製した各接着剤を塗布し、9号綿帆布にて全面を覆った。各辺の綿帆布同士の重複部は2mm以内とした。養生1日後、初期値測定と同様に、切り込みを入れたテドラーバックに綿帆布で覆われた試験片を挿入し、開口部を密閉した後、23℃下にて7日間静置した。その後、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度を2回測定し、初期値からの減少率を算出し、以下の規準にて評価した。
○;初期値からの減少率が60%以上
×;初期値からの減少率が60%未満
【0045】
これらの評価結果を、表2に示す。
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の水分散型接着剤組成物は、環境への負荷の大きい揮発性有機溶剤や可塑剤などを含まず、耐水性、初期接着性、コンタクト接着性、常態接着強度、引張剪断強度及び耐熱クリープ性に優れた、木材から金属、各種プラスチックまで幅広く接着できる、例えば建築用途、工業用途及びコーティング用、特に化粧合板、複合パネルなどの建材用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記、一般式(a)

(R1及びR2は、C1〜C6のアルキル基を示し、且つ、R1及びR2の炭素原子総数が6〜7である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体;2〜15質量%及び、
(B)ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体;10〜40質量%、
(C)カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体;1〜5質量%、
(D)前記(A)〜(C)以外の単量体であって、且つエチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニルではない共重合可能なエチレン性不飽和単量体;40〜87質量%、
を共重合した重合体と、
ホルムアルデヒド捕捉剤として、硫酸ヒドロキシルアミン、ジシアンジアミド、塩酸ヒドロキシルアミン、アジピン酸ジヒドラジドから選ばれる少なくとも1種と、
を有することを特徴とする水分散型接着剤組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和単量体(A)が、ネオデカン酸ビニルエステル、ネオノナン酸ビニルエステル又はこれらの異性体である請求項1に記載の水分散型接着剤組成物。
【請求項3】
常圧下で沸点が50〜260℃である揮発性有機溶剤を含まないこと特徴とする請求項1又は2に記載の水分散型接着剤組成物。
【請求項4】
前記重合体のガラス転移温度が、−30℃〜10℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水分散型接着剤組成物。
【請求項5】
前記ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)が、スチレン、ベンジルメタクリレート又はフェノキシエチルアクリレートの何れかである請求項1〜4のいずれか1項に記載の水分散型接着剤組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(C)が、アクリル酸又はメタクリル酸である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水分散型接着剤組成物。
【請求項7】
水と、アニオン性界面活性剤及び/又はノニオン性界面活性剤と重合開始剤の存在下において、
(A)下記、一般式(a)

(R1及びR2は、C1〜C6のアルキル基を示し、且つ、R1及びR2の炭素原子総数が6〜7である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、
をポリマー転化率が80〜98質量%になるまで重合する工程、
ベンゼン環を有するエチレン性不飽和単量体(B)、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(C)及び、前記(A)〜(C)以外の単量体であって、且つエチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び酪酸ビニルではないエチレン性不飽和単量体(D)の混合物を半回分乳化重合する工程、
を含む重合体の製造方法。
【請求項8】
前記乳化重合において、連鎖移動剤を使用しない請求項7に記載の重合体の製造方法。

【公開番号】特開2012−214580(P2012−214580A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79794(P2011−79794)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】