説明

接着剤組成物及びそれを用いた部材の仮固定方法

【課題】部材の一部が不透明であっても、部材との剥離性に優れ、切削加工後の部材の寸法精度が向上するといった効果が得られる組成物の提供。
【解決手段】(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤及び(D)熱重合開始剤を含有する組成物であり、該組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃組成物であり、該組成物から得られる硬化体の膨潤率が5質量%以下である組成物。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質を含有しても良い。この組成物を含有する接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いろいろな部材を加工するに際しての仮固定方法であり、それに好適な仮固定用の組成物に関する。例えば、光学用部材を加工するに際して当該部材を仮固定する方法と、当該用途に好適な光硬化性の接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学レンズや光学部品、光学デバイス、プリズム、半導体実装部品等の仮固定用接着剤としては、両面テープやホットメルト系接着剤が使用されている。これらの両面テープや接着剤にて接合又は積層した部材を、所定の形状に切削加工後、接着剤を除去し、加工部材を製造することが行われる。例えば、半導体実装部品では、これらの部品を両面テープにて基材に固定した後、所望の部品に切削加工を行い、更に両面テープに紫外線を照射することで部品からの剥離を行う。ホットメルト系接着剤の場合には、部材を接合後、加熱により間隙に接着剤を浸透させた後、所望の部品に切削加工を行い、有機溶剤中で接着剤の剥離を行う。
【0003】
しかし、両面テープの場合には、厚み精度を出すのが困難であったり、接着強度が弱いため部品加工時にチッピング性が劣ったり、100℃以上の熱をかけないと剥離できなかったりする課題があった。紫外線照射により剥離させる場合には、被着体の透過性が乏しいと剥離できない課題があった。
【0004】
ホットメルト系接着剤の場合には、被着体の透過性が乏しくても接着、剥離できる利点があるが、接着時に100℃以上の熱をかけなければ貼ることができず、使用できる部材に制約があった。剥離時に有機溶剤を使用する必要があり、アルカリ溶液やハロゲン系有機溶剤の洗浄処理工程が煩雑である他、作業環境的にも課題となっていた。
【0005】
これらの欠点を解決するために、水溶性ビニルモノマー等の水溶性化合物を含有する仮固定用の光硬化型又は加熱型接着剤が提案されている。これらの接着剤では、水中での剥離性は解決されるのに対し、部品固定時の接着強度が低く、切削加工後の部材の寸法精度に乏しい課題があった。
【0006】
特定の親水性の高い(メタ)アクリレートの使用により接着性向上させると共に、膨潤や一部溶解によって剥離性を向上させた仮固定用接着剤が提案されている。切削加工時には、部品と、ブレードやダイヤモンドカッター等の切削治具との摩擦熱が発生するために、大量の水で冷却させて行う必要があった。上記の親水性の高い組成物では、切削時に硬化物が膨潤し柔軟になるため、より高い寸法精度に到達できない課題があった。剥離した部材に一部溶解した硬化物が糊残りするため、外観上課題となっていた。
【0007】
樹脂硬化体のガラス転移温度をコントロールしかつ樹脂組成物に溶解しない粒状物質を適量添加することを特徴とする光硬化型の接着剤組成物及びそれを用いた仮固定方法が提案されている。クロムメッキパターンが施されているロータリーエンコーダーや光学デバイスや、電気配線が施されている半導体実装部品等の電子部材は、クロムメッキパターン部や電気配線部等が光に対して不透過となる。そのため、光不透過部分の接着性が得られず、高い寸法精度が得られないばかりか、剥離した部材に接着剤組成物が残留するため、アルカリ溶液やハロゲン系有機溶剤の洗浄処理工程が必要となり、作業環境的にも課題があった。
【0008】
チップ部品仮固定用接着剤塑性物として、重合可能なエチレン製不飽和結合を有する化合物と酸性リン酸基と不飽和結合をそれぞれ1個以上有する単量体、光重合開始剤及び熱重合開始剤からなる接着剤組成物が提案されている。該接着剤組成物を光学用部材を仮固定し、加工後の部材を剥離する用途に用いるには、加工性、剥離性共に十分でない課題があったりいに乏しいター2分を10〜60を温水に浸漬して、膨以上で、(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−116534号公報
【特許文献2】特開平11−71553号公報
【特許文献3】特開2001−226641号公報
【特許文献4】国際公開第2008/018252号パンフレット
【特許文献5】特開平3−160077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、これら従来技術の課題を解決するために色々検討した結果、完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤及び(D)熱重合開始剤を含有する組成物であり、該組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃組成物であり、該組成物から得られる硬化体の膨潤率が5質量%以下であることを特徴とする該組成物であり、(A)及び(B)を、(A):(B)=5:95〜95:5(質量部)の割合で含有し、(A)及び(B)の合計100質量部に対して(C)を0.1〜20質量部、(D)を0.05〜20質量部含有することを特徴とする該組成物であり、(D)の10時間半減期温度が30〜170℃であることを特徴とする該組成物であり、(C)が、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする該組成物であり、(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質を含有することを特徴とする該組成物であり、(E)の形状が球状であることを特徴とする該組成物であり、(E)が架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする該組成物であり、(E)の平均粒径が20〜200μmであることを特徴とする該組成物であり、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25であることを特徴とする該組成物であり、(A)多官能(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することを特徴とする該組成物であり、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーが、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする該組成物であり、2官能(メタ)アクリレートモノマーが、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする該組成物であり、(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び/又は2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする該組成物であり、重合禁止剤を含有することを特徴とする該組成物であり、該組成物を含有することを特徴とする接着剤組成物であり、該接着剤組成物を用いて部材を接着し固定してなることを特徴とする構造体であり、該接着剤組成物を用いて可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法であり、該接着剤組成物を用いて可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を0〜100℃の水に浸漬して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法であり、該接着剤組成物を用いて紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を30〜300℃に加熱して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法であり、該接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法であり、該接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を0〜100℃の水に浸漬して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法であり、該接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を30〜300℃に加熱して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、部材の一部が不透明であっても、部材との剥離性に優れ、切削加工後の部材の寸法精度が向上するといった効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を説明する。
【0014】
本発明で使用する(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや、2個以上の(メタ)アクロイル基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0015】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ビスA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、効果が大きい点で、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリートがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーの重量平均分子量は、5000〜60000が好ましく、6000〜40000がより好ましい。重量平均分子量は、GPCシステム(東ソ−社製SC−8010)等を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求める。
【0016】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、効果が大きい点で、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0017】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0018】
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
(A)多官能(メタ)アクリレートは、疎水性のものがより好ましい。ここでいう疎水性とは、水に溶解しにくい性質又は水と混合しにくい性質をいう。疎水性の多官能(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
疎水性の3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0021】
疎水性の4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤するので位置ずれを起こし、加工時の寸法精度が劣る恐れがあるため好ましくない。親水性であっても、その組成物の硬化体が水により大きく膨潤又は一部溶解することがなければ、使用しても差し支えない。
【0022】
(A)多官能(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましく、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用することがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用する場合の含有割合は、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部中、質量比で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー:2官能(メタ)アクリレートモノマー=15〜97:3〜85が好ましく、25〜95:5〜75がより好ましく、35〜70:65〜30が最も好ましく、45〜65:35〜55が更に好ましい。
【0023】
(A)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、5〜95質量部が好ましく、20〜65質量部がより好ましく、25〜50質量部が最も好ましい。5質量部以上であれば、組成物の硬化体が被着物より当該硬化体が剥離する性質(以下、単に「剥離性」という)が充分に助長されるし、95質量部以下であれば、初期の接着性が低下する恐れがない。
【0024】
(B)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
(B)単官能(メタ)アクリレートは、疎水性のものがより好ましい。ここでいう疎水性とは、水に溶解しにくい性質又は水と混合しにくい性質をいう。疎水性の単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤することにより位置ずれを起こし加工精度が劣る恐れがあるため好ましくない。親水性であっても、その樹脂組成物の硬化体が水によって膨潤又は一部溶解することがなければ、使用しても差し支えない。
単官能(メタ)アクリレートモノマーの中では、効果が大きい点で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び/又は2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを併用することがより好ましい。フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを併用する場合の含有割合は、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート:2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート=10〜70:30〜90が好ましく、20〜60:40〜80がより好ましく、30〜50:50〜70が最も好ましい。
【0027】
(B)単官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部中、5〜95質量部が好ましく、45〜80質量部がより好ましく、50〜75質量部が最も好ましい。5質量部以上であれば初期の接着性が低下する恐れがなく、95質量部以下であれば、剥離性を確保できる。
【0028】
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものである。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0029】
(C)光重合開始剤の使用量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られるし、25質量部以下で充分な硬化速度を得ることができる。より好ましい形態として(C)成分を1質量部以上使用することが、光照射量に依存なく硬化可能となり、更に組成物の硬化体の架橋密度が高くなり、切削加工時に位置ずれ等を起こさなくなり、剥離性が向上する点で、より好ましい。
【0030】
(D)熱重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ化合物類等といった熱分解型の重合開始剤が挙げられる。有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエイト、ヘキシルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート等のアルキルパーオキシエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネイト及びジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類、ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、ジキュミルパーオキサイド、t−ブチルキュミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、クメンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられる。
【0031】
アゾ化合物類としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキシルニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル,ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0032】
(D)熱重合開始剤の10時間半減期温度は30〜170℃が好ましい。この範囲に熱重合開始剤の10時間半減期温度があれば、部分的に光が不透過な部材であっても光照射時の輻射熱や反応熱によって組成物が硬化し、部材の加工時に優れた寸法精度を得ることができる。10時間半減期温度が30℃以上であると、組成物の貯蔵安定性優れ、170℃以下であると、接着性が十分となり、部材の加工時にずれが生じず、寸法精度面に優れる。加工時の寸法精度と組成物の貯蔵安定性の点で、(D)熱重合開始剤の10時間半減期温度は50〜100℃がより好ましく、60〜80℃が最も好ましい。
【0033】
(D)熱重合開始剤の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。0.01質量部以上であれば光が不透過な部材であっても光照射時の輻射熱や反応熱によって組成物が硬化し、部材の加工時に優れた寸法精度を得ることができるし、20質量部以下であれば、十分な貯蔵安定性が得られる。加工時の寸法精度と組成物の貯蔵安定性の点で、(D)熱重合開始剤の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が最も好ましい。
【0034】
本発明の組成物に、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有するリン酸エステルを併用することにより、金属面への密着性を更に向上させることができる。
【0035】
本発明の組成物から得られる硬化体のガラス転移温度は、−50〜50℃が好ましい。硬化体のガラス転移温度がこの範囲内にあることで、硬化体の硬化歪みによるうねりが大きく生じ、剥離性が向上する。その結果、接着面積が減少し、接着強度が低下するので、容易に硬化体を取り外すことができる。組成物から得られる硬化体のガラス転移温度は−50℃以上であれば、使用時にずれを生じにくく、接着精度の点で、優れるし、50℃以下であれば、剥離性に優れる。接着精度と剥離性の点で、前記組成物から得られる硬化体のガラス転移温度は、−25〜45℃が好ましく、−20〜42℃がより好ましく、0〜40℃が最も好ましい。
【0036】
本発明の組成物から得られる硬化体のガラス転移温度の測定方法は特に制限はないが、DSCや動的粘弾性スペクトル等の公知の方法で測定される。好ましい方法は動的粘弾性スペクトルによる方法である。
【0037】
本発明の組成物から得られる硬化体の25℃の水浸漬(2時間)における膨潤率とは、23℃、50%RH(定常状態)における質量に対して、25℃の純水に2時間宙吊りに該硬化体を浸漬し、浸漬後の硬化体の質量増加率を以下の(式1)に従い算出する。
(式1)
膨潤率(%)=[(2時間純水浸漬後の硬化体の質量)−(定常状態の硬化体の質量)/(定常状態の硬化体の質量)]×100(%)
【0038】
膨潤率は、加工性、剥離性の点で、5質量%以下が好ましい。5質量%以下であれば、膨潤による位置ずれを起こしにくく、加工精度が優れ、剥離性が得られる。加工性及び剥離性の点で、膨潤率は4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0039】
本発明は、(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質を使用することが好ましい。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質により、硬化体が一定の厚みを保持することが容易となり、寸法精度が向上したまま接着でき、硬化体の厚みを制御することにより、安定した剥離性を得ることができる。
【0040】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質としては、有機粒子、無機粒子いずれでもかまわない。有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリポリプロピレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子等挙げられる。無機粒子としては、ガラス、シリカ、アルミナ、チタン等セラミック粒子が挙げられる。
【0041】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質は、加工精度の向上、つまり接着剤の膜厚の制御の点で、球状が好ましい。有機粒子の中では、粒子の変形が少なく、粒径のバラツキによる硬化体の膜厚のバラツキが少ない点で、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上が好ましく、架橋ポリスチレン粒子がより好ましい。架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子は、例えば、メタクリル酸メチルモノマーやスチレンモノマーと、架橋性モノマーとの公知の乳化重合法により単分散粒子として得られる。無機粒子としては、粒子の変形が少なく、粒径のバラツキによる硬化体の膜厚のバラツキが少ない点で、球状シリカが好ましい。これらの中では、粒子の沈降等に因る貯蔵安定性や組成物の反応性の点で、有機粒子が好ましい。
【0042】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質のレーザー法による平均粒径は20〜200μmが好ましい。平均粒径が20μm以上であれば剥離性が優れ、200μm以下であれば仮固定した部材の加工時にずれを生じにくく、寸法精度が優れる。剥離性と寸法精度の点で、平均粒径は35〜150μmが好ましく、50〜120μmが最も好ましい。本発明における粒子径及び粒径分布の標準偏差は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」により測定する。
【0043】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の粒径のレーザー法による粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差は0.0001〜0.25が好ましい。この範囲に粒状物質の粒径の標準偏差があれば粒径のバラツキによる硬化体のバラツキ少なくなり、仮固定した部材の加工時のずれが生じ難く、寸法精度が優れ、剥離性が向上する。寸法精度及び剥離性の点で、粒状物質の粒径の標準偏差は0.0001〜0.15が好ましく、0.0001〜0.1がより好ましく、0.0001〜0.08が尚更好ましく、0.0001〜0.072が著しく好ましい。
【0044】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の使用量は、接着強度、加工精度、剥離性の点で、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜10質量部がより好ましく、0.2〜6質量部が最も好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、貯蔵安定性向上のために、重合禁止剤を使用できる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらの中では、効果が大きい点で、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)が好ましい。
【0046】
重合禁止剤の使用量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下であれば良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0047】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等の各種エラストマー、極性有機溶媒等の溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤及び界面活性剤等の添加剤を使用してもよい。
【0048】
本発明において、仮固定する際に用いられる部材の材質に特に制限はなく、紫外線を透過できる材料からなる部材を使用することができる。このような材質としては、水晶部材、ガラス部材、プラスチック部材等が挙げられる。本発明の仮固定方法は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスク等の加工における仮固定に適用可能である。
【0049】
部材上にメッキパターンや電気配線が施されていて、部分的に光が不透過な部材は、光硬化だけでは接着性が不十分であるが、本発明の仮固定方法では加熱によっても、組成物が硬化する。本発明は、部分的に光が不透過な部材であっても、光照射時の輻射熱や反応熱により、工程を増やすことなく十分な接着性が得られる。本発明は、加熱によって組成物を硬化させても良い。
【0050】
仮固定方法としては、仮固定する一方の部材又は支持基板の接着面に組成物を適量塗布し、続いてもう一方の部材を重ね合わせるという方法や、予め仮固定する部材を多数積層しておき、組成物を隙間に浸透させて塗布させる方法等で組成物を塗布した後に、該部材を可視光線又は紫外線を照射して、組成物を硬化させ、部材同士を仮固定する方法等が挙げられる。前記方法により組成物を塗布した後に、オーブンやホットプレート上で組成物を加熱し、組成物を硬化させ、部材を仮固定する方法等も挙げられる。
【0051】
可視光線又は紫外線を照射して、組成物を硬化させ、部材同士を仮固定する方法としては、組成物に可視光線又は紫外線の少なくとも一方を照射して接着力を高める接着方法等が挙げられる。このような可視光線又は紫外線を照射するためのエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等のエネルギー照射源が挙げられる。
【0052】
可視光線又は紫外線を照射して、組成物を硬化させ、部材同士を仮固定する際は、波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを組成物に照射し接着基材同士を接着する。1〜10000mJ/cmであれば組成物が硬化し、十分な接着強度が得られる。1mJ/cm以上であれば組成物が十分に硬化し、10000mJ/cm以下であれば硬化歪みがなく、接着強度が向上する。部材同士を仮固定する際のエネルギー量は、接着強度の点で、10〜5000mJ/cmがより好ましく、100〜2000mJ/cmが最も好ましい。
【0053】
加熱することにより、組成物を硬化させ、部材同士を仮固定する際は、50〜200℃で加熱することが好ましい。50℃以上であれば組成物が十分に硬化し、200℃以下であれば硬化歪みがなく、接着強度が向上し、接着基材が劣化しない。加熱温度は、接着強度と熱による接着基材の劣化の点で、70〜150℃がより好ましく、80〜120℃が最も好ましい。加熱時間は、5〜70分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
【0054】
組成物の硬化体を取り外す際は、組成物に可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを照射することにより、未反応の(C)成分からラジカルが発生し、大きな硬化歪みが発生し、硬化体自体が大きくうねりを生じ、接着面積が減少し、接着強度が低下するので、容易に硬化体を取り外すことができる。硬化体を取り外す際のエネルギー量は、剥離性と接着基材への光エネルギーによる劣化の点で、500〜100000mJ/cmがより好ましく、1000〜600000mJ/cmが最も好ましい。
【0055】
組成物の硬化体を取り外す際のエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等が挙げられる。
【0056】
組成物の硬化体を取り外す際は、硬化体を加熱しながら可視光線又は紫外線を照射しても良い。加熱しながら可視光線又は紫外線を照射することにより、硬化体がより大きな硬化歪みを発生し、より容易に剥離することが可能となる。硬化体を取り外す際の加熱温度は、剥離性と熱による接着基材の劣化の点で、30〜300℃が好ましく、40〜280℃がより好ましく、50〜250℃が最も好ましい。加熱時間は、1〜20分が好ましく、3〜10分がより好ましい。
【0057】
本発明の組成物を使用した仮固定方法としては、上述した光エネルギーによる仮固定方法を用いた後、硬化体を30〜300℃に加熱することにより、硬化体に発生した硬化歪みによるうねりを大きくし、より容易に剥離することができる。硬化体を取り外す際の加熱温度は、剥離性と熱による接着基材の劣化を抑制する点で、40〜280℃がより好ましい。加熱時間は、1〜20分が好ましく、3〜10分がより好ましい。
【0058】
本発明の組成物を使用した仮固定方法としては、上述した光エネルギーによる仮固定方法を用いた後、0〜100℃の水に接着体を浸漬することにより、接着基材と組成物との界面に水が侵入し、より容易に剥離できる。水の温度は高温である方が、硬化体に発生した硬化歪みによるうねりが大きくなり、水が侵入しやすくなり、容易に硬化体を剥離することができる。硬化体を取り外す際の水の温度は、剥離性と温水による接着基材の劣化の点で、30〜95℃がより好ましい。浸漬時間は、1〜120分が好ましく、2〜60分がより好ましく、5〜20分が尚更一層好ましい。
【0059】
仮固定された部材に所望の形状に切断、研削、研磨、孔開け等の加工を施した後、該部材を水、好ましくは温水に浸漬することにより、組成物の硬化体を部材から剥離することができる。
【0060】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(接着剤組成物の作製)
以下に記す手順により接着剤組成物を作製した。(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本曹達社製「TE−2000」(ウレタンアクリレート、重量平均分子量9000、以下「TE−2000」と略す)20質量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート 1,9ND−A」、以下「1,9ND−A」と略す)15質量部、(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す、疎水性の(メタ)アクリレートである)40質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」、以下「M−101A」と略す、疎水性の(メタ)アクリレートである)25質量部、(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「IRGACURE651」、以下「BDK」と略す)10質量部、(D)熱重合開始剤としターシャリーブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(日油製「パーヘキシルO」、以下「パーヘキシルO」と略す、10時間半減期温度は72.1℃である)3質量部、(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質として平均粒径100μm、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差0.063の球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学工業社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部使用して接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物を使用して、以下に示す評価方法にてガラス転移温度、引張せん断接着強さを行った。それらの結果を表1〜2に示した。積算光量は紫外線積算照度計(アイグラフィック社製:EYE UVMETER UVPF-A1(365nm受光器使用))により測定した。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。
【0062】
(評価方法)
ガラス転移温度:接着剤組成物を、1mm厚のシリコンシートを型枠とし、PETフィルムに挟み込んだ。接着剤組成物を、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて上面から硬化させた後、更に365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて下面から硬化させ、厚さ1mmの接着剤組成物の硬化体を作製した。作製した硬化体をカッターにて長さ50mm×幅5mmに切断し、ガラス転移温度測定用硬化体とした。得られた硬化体をセイコー電子産業社製、動的粘弾性測定装置「DMS210」により、窒素雰囲気中にて前記硬化体に1Hzの引張方向の応力及び歪みを加え、昇温速度毎分2℃の割合で昇温しながらtanδを測定し、該tanδのピークトップの温度をガラス転移温度とした。
【0063】
膨潤率:接着剤組成物を、長さ25mm×幅25mm×厚さ1mmのシリコンシートを型枠とし、PETフィルムに挟み込んだ。接着剤組成物を、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて上面から硬化させた後、更に365nmの波長の積算光量2000mJ/cmの条件にて下面から硬化させ、25mm×25mm×1mmtの接着剤組成物の硬化体を作製した。得られた硬化体を23℃、50%RHに24時間放置した後、質量を測定し「定常状態の硬化体の質量」とした。続いて前記硬化体を25℃の純水中に2時間、宙吊りにして該硬化体を浸漬し、「2時間純水浸漬後の硬化体の質量」とし、次式により膨潤率を測定した。
膨潤率(%)=[(2時間純水浸漬後の硬化体の質量)−(定常状態の硬化体の質量)/(定常状態の硬化体の質量)]×100(%)
【0064】
UV照射による引張せん断接着強さ(表の「接着強さ(UV照射)」):JIS K 6850に従い測定した。被着材とした耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、長さ25mm×幅25mm×厚さ2.0mm)を用いて、接着部位を直径8mmの円形として、作製した接着剤組成物にて、2枚の耐熱ガラスを貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長の積算光量500mJ/cmの条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0065】
加熱硬化による引張せん断接着強さ(表の「接着強さ(加熱硬化)」):JIS K 6850に従い測定した。具体的には被着材とした耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、長さ25mm×幅25mm×厚さ2.0mm)を用いて、接着部位を直径8mmの円形として、作製した接着剤組成物にて、2枚の耐熱ガラスを貼り合わせ、オーブンを使用し、120℃、30分の暴露条件にて硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片は、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。
【0066】
粒状物質の平均粒径粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差(表の「標準偏差」):レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製「SALD−2200」)により測定した。
【0067】
(接着・剥離試験(A))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を500mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長の光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ5回照射し、合計10000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを剥離することができた。剥離性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、該フック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張り、剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した(表の「剥離の確認」)。
【0068】
(実施例2)
(接着・剥離試験(B))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を100mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ3回照射し、合計6000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を60℃に加温したホットプレート上で5分間加熱した。その後、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを剥離することができた。剥離性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、吸盤付きフックのフック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張り、剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した。
【0069】
(実施例3)
(接着・剥離試験(C))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、ブラックライトを使用し、365nmの波長のUV光を2000mJ/cm照射し、青板硝子同士を接着した(固定用UV照射)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ2回照射し、合計4000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を80℃の温水に5分間浸漬した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、吸盤付きフックのフック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張り、剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した。
【0070】
(実施例4)
(接着・剥離試験(D))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、オーブンを使用し120℃、30分の暴露条件にて硬化させ、青板硝子同士を接着した(固定用加熱)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長の光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ5回照射し、合計10000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを剥離することができた。剥離性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、吸盤付きフックのフック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張り、剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した(表の「剥離の確認」)。
【0071】
(実施例5)
(接着・剥離試験(E))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、オーブンを使用し、150℃、10分の暴露条件にて硬化させ、青板硝子同士を接着した(固定用加熱)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ50回照射し、合計100000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を60℃に加温したホットプレート上で5分間加熱した。その後、青板硝子Bに触れると青板硝子Aから簡単に青板硝子Bを剥離することができた。剥離性は、剥離用UVを照射した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、吸盤付きフックのフック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張ることで剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した。
【0072】
(実施例6)
(接着・剥離試験(F))
接着基材である青板硝子A(長さ150mm×幅150mm×厚さ1.7mm)上に、作製した接着剤組成物を2.5g塗布し、青板硝子B(長さ80mm×幅80mm×厚さ1.1mm)を貼り合わせ、オーブンを使用し、100℃、60分の暴露条件にて硬化させ、青板硝子同士を接着した(固定用加熱)。得られた接着試験体が完全に接着していることを確認した後、接着試験体にベルトコンベア式メタルハライドランプを使用し、365nmの波長のUV光を接着剤組成物に2000mJ/cmずつ4回照射し、合計8000mJ/cmの光を照射した(剥離用UV照射)。その後、接着試験体を80℃の温水に5分間浸漬した後、青板硝子Bを固定しながら、青板硝子Aの中央部に吸盤付きフックを吸着させ、吸盤付きフックのフック部をデジタルプッシュプルゲージ(AIKOHENGINEERRING CO.Ltd.社製 RX−20)に接続し、プッシュプルゲージを硝子面と垂直方向に引っ張ることで剥離するために必要な引っ張り強度を測定した。剥離の確認として、引っ張り強度を表2に記載した。
【0073】
(実施例7、15)
表3、表5に示す種類の原材料を表3、表5に示す組成で使用したこと以外は実施例2と同様にして接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物について、表4、表6に示す条件で使用したこと以外は実施例2と同様にガラス転移温度、膨潤率、引張せん断接着強さ、接着・剥離試験(B)の評価を行った。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表4、表6に示した。
【0074】
(使用材料)
UV−3000B:ポリエステル系ウレタンアクリレート、重量平均分子量15000(日本合成化学社製「UV−3000B」)
GS−75S:球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−75S」)
R−684:ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」)
パークミルH:クメンハイドロパーオキサイド(日油製「パークミルH―80」、10時間半減期温度は157.9℃である)
GR−200:架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(根上工業社製「アートパールGR−200」)
【0075】
(実施例8、16)
表3、表5に示す種類の原材料を表3、表5に示す組成で使用したこと以外は実施例5と同様にして接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物について、表4、表6に示す条件で使用したこと以外は実施例5と同様にガラス転移温度、膨潤率、引張せん断接着強さ、接着・剥離試験(E) の評価を行った。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表4、表6に示した。
【0076】
(実施例9、11、17、比較例1)
表3、表5、表7に示す種類の原材料を表3、表5、表7に示す組成で使用したこと以外は実施例3と同様にして接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物について、表4、表6、表8に示す条件で使用したこと以外は実施例3と同様にガラス転移温度、膨潤率、引張せん断接着強さ、接着・剥離試験(E) の評価を行った。又、(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表4、表6、表8に示した。
【0077】
(使用材料)
1.6−HX−A:ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート1.6−HX−A」)
GS−240:球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−240」)
パークミルND:クミルパーオキシネオデカノエイト(日油製「パークミルND」、10時間半減期温度は36.5℃である)
I−754:オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物(チバ・ジャパン社製「IRGACURE754」)
パーブチル355:t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(日油製「パーブチル355」、10時間半減期温度は97.1℃である)
GS−L150:球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−L150」)
SP−210:球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「SP−210」SP−210)
【0078】
(実施例10、12、14、18、比較例2、3、4、5)
表3、表5、表7に示す種類の原材料を表3、表5、表7に示す組成で使用したこと以外は実施例6と同様にして接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物について、表4、表6、表8に示す条件で使用したこと以外は実施例6と同様にガラス転移温度、膨潤率、引張せん断接着強さ、接着・剥離試験(E) の評価を行った。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表4、表6、表8に示した。
【0079】
(使用材料)
GS−L200:球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−L200」)
THF:テトラヒドロフルフリルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルTHF」)
HO:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHO」)
14EG−A:ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコールユニット数:14)(共栄社化学社製「ライトアクリレート14EG−A」)
【0080】
(実施例13)
表5に示す種類の原材料を表1に示す組成で使用したこと以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物について、表6に示す条件で使用したこと以外は実施例1と同様にガラス転移温度、膨潤率、引張せん断接着強さ、接着・剥離試験(E)を行った。(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質の平均粒径及び粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差も測定した。それらの結果を表6に示した。
【0081】
【表1】






【0082】
【表2】






【0083】
【表3】





【0084】
【表4】






【0085】
【表5】






【0086】
【表6】






【0087】
【表7】






【0088】
【表8】






【0089】
(実施例19〜36比較例6〜10)
表9に示す実施例や比較例の接着剤組成物を用いて長さ80mm×幅80mm×厚さ1mmの青板ガラスAと長さ150mm×幅150mm×厚さ2mmの青板ガラスBを、表1〜8に示す実施例や比較例の接着・剥離試験方法に従って接着硬化させた。この接着試験体の青板ガラスA部分のみをダイシング装置を使用して10mm角に切断した。切断中に青板ガラスAの脱落は発生せず、良好な加工性を示した。その後、実施例や比較例の接着・剥離試験方法に従って剥離した切断試験片を無作為に10個取り出し、その切断試験片の裏面(接着剤組成物で仮固定した面)の各片を、光学顕微鏡を用いて観察し、ガラスが欠けている箇所の最大幅を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。その結果を、表9に示した。
【0090】
【表9】






【0091】
表1〜9から本発明は優れた効果を有することが判った。比較例1、6は(C)光重合開始剤を含まないため、比較例2、7は(D)熱重合開始剤を含まないため、比較例3、4、8、9はガラス転移温度が高いため、比較例5、10は膨潤率が大きいため、効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の組成物は、その組成故に光硬化性を有し、可視光線又は紫外線によって硬化し、その硬化体は切削水等に影響されずに、高い接着強度を発現できる。
【0093】
部材上にメッキパターンや電気配線が施されていて、部分的に光が不透過な部材は、光硬化だけでは接着性が不十分であり、部材の加工時にずれが生じ、寸法精度の点で、課題があった。本発明は、特定の熱重合開始剤と特定の光重合開始剤と特定の(メタ)アクリルモノマーを併用することにより、部分的に光が不透過な部材であっても、光照射時の輻射熱や反応熱により、工程を増やすことなく十分な接着性が得られ、加工時にずれが生じず、寸法精度が向上し、優れた部材が容易に得られる。
【0094】
本発明は、温水と接触することにより、接着強度が低下し、部材間又は部材と治具との間の接合力が低下するので、容易に部材の回収ができる。
【0095】
本発明は、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、メッキパターンが施されている光学デバイスや電気配線が施されている半導体実装部品等の仮固定用接着剤として、産業上、大変有用である。
【0096】
本発明の部材の仮固定方法は、従来技術に於いて必要であった有機溶媒を用いる必要がなく、剥離後も部材に糊残りがなく、部材から硬化体を容易に回収できるので、作業性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、(C)光重合開始剤及び(D)熱重合開始剤を含有する組成物であり、該組成物から得られる硬化体のガラス転移温度が−50〜50℃組成物であり、該組成物から得られる硬化体の膨潤率が5質量%以下であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
(A)及び(B)を、(A):(B)=5:95〜95:5(質量部)の割合で含有し、(A)及び(B)の合計100質量部に対して(C)を0.1〜20質量部、(D)を0.05〜20質量部含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(D)の10時間半減期温度が30〜170℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(C)が、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
(E)(A)〜(D)に溶解しない粒状物質を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(E)の形状が球状であることを特徴とする請求項5記載の組成物。
【請求項7】
(E)が架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリメタクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5又は6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(E)の平均粒径が20〜200μmであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が0.0001〜0.25であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
(A)多官能(メタ)アクリレートが、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーが、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
2官能(メタ)アクリレートモノマーが、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項10乃至11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(B)単官能(メタ)アクリレートが、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート及び/又は2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
重合禁止剤を含有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の組成物を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて部材を接着し固定してなることを特徴とする構造体。
【請求項17】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。
【請求項18】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を0〜100℃の水に浸漬して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。
【請求項19】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて紫外線を波長365nmにおいて1〜10000mJ/cmのエネルギーを接着剤組成物に照射して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を30〜300℃に加熱して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。
【請求項20】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。
【請求項21】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を0〜100℃の水に浸漬して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。
【請求項22】
請求項15に記載の接着剤組成物を用いて接着剤組成物を50〜200℃に加熱して部材を接着して仮固定し、該仮固定された部材を加工後、可視光線又は紫外線を波長365nmにおいて150000mJ/cm以下のエネルギーを接着剤組成物に照射し、接着剤組成物の硬化体を30〜300℃に加熱して前記接着剤組成物の硬化体を部材から取り外すことを特徴とする部材の仮固定方法。

【公開番号】特開2011−219686(P2011−219686A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92754(P2010−92754)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】