説明

接着剤組成物及びコンクリート打ち継ぎ方法

【解決手段】既設コンクリート又はモルタル等下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物であって、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質から成ることを特徴とする接着剤組成物、及び当該接着剤組成物を既設コンクリート又はモルタルの打ち継ぎ面に塗付し、当該接着剤組成物に接して新しくモルタル又はコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法である。
【効果】略水平表面でない既設コンクリート又はモルタル等下地に塗付しても垂れることが無く、このため塗付作業性が良好で、新たに打設するモルタルのセメント分の水和を阻害することがなく、既設コンクリート下地が湿潤状態にあっても十分な付着強度と良好な破壊状況となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等の垂直面又は天井面等の水平上面ではない既設のコンクリート又はモルタル等下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に、打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物に関し、詳しくは垂直面又は天井面等の水平上面ではない面に塗付しても垂れることがない接着剤組成物及びコンクリート打ち継ぎ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既設コンクリート又はモルタル等下地に新たなコンクリート又はモルタルを打ち継ぐ際には、打ち継ぎ面のレイタンス層やセメントペースト層などの脆弱層をサンディング等によって除去した後、水湿しをして新たなコンクリート又はモルタルを打設している。しかし、水湿しの量の管理が難しく、また既設コンクリートの吸水状態は均一でないため、部分的に水湿しの量が不足し、当該部分では新たなコンクリートが打設された際、その水分が既設コンクリート側に吸い込まれることになる。このため新たなコンクリート側の打設界面部分の水量が不足し、当該部分のセメントの水和が不十分となって強度が低下するという課題があった。
【0003】
これに対して、分散質としてアクリル酸エステル系単量体単位、メタアクリル酸エステル系単量体単位、スチレン系単量体単位及びジエン系単量体単位の中から選ばれた少なくとも一種の単量体単位からなる単独重合体又は共重合体を含有し、かつ分散剤として末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体を含有する水性エマルジョンからなるセメントモルタル用打ち継ぎ材を打ち継ぎ面に塗布し、皮膜の高い耐アルカリ性によって新たに打設されるコンクリートの水分の既設コンクリート側への移行を抑制し、新たなコンクリートの接着力を著しく向上させることが開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、エポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤とを含有し、またはエポキシ樹脂と、ポリアミン系硬化剤と、ポリサルファイドポリマーと、3級アミン化合物とを含有し、ポリアミン系硬化剤をエポキシ樹脂1当量に対し、0.1〜0.6当量配合したプライマー組成物により、湿潤した既設コンクリートにも打ち継ぎ可能なプライマー組成物及びコンクリートの打ち継ぎ方法が開示されている(特許文献2、特許文献3)。
【0005】
また、硬化コンクリートに新たなコンクリートを打ち継ぐ場合において、硬化コンクリートの打ち継ぎ面にポリマーセメント、ポリマーセメントモルタルあるいはポリマーセメントコンクリートを厚さ3〜10cm打設し、このポリマーセメントに接して新たなコンクリートを打設することにより、打ち継ぎ部のクラック発生を抑制するコンクリートの打ち継ぎ方法と当該打ち継ぎ部を有するコンクリート硬化体が開示されている(特許文献4)。
【0006】
さらには、既設の硬化体と、当該硬化体に打ち継がれる透水性コンクリートの間に介在させて用いるためのペースト又はモルタルであって、セメント又はセメントを含む粉体混合物100重量部と、細骨材0〜300重量部と、ポリマー0.5〜20重量部と、ペーストまたはモルタルのJロートの流下時間が3〜15秒となるように配合される水とを含むことを特徴とする透水コンクリート打ち継ぎ用ペースト又はモルタルを、打ち継ぎ面に2mm〜40mm、好ましくは3mm〜30mm厚みに塗布することによって既設コンクリートに透水性コンクリートを打ち継ぐことが開示されている(特許文献5)。
【特許文献1】特開平6−184489号公報
【特許文献2】特開2000−273354号公報
【特許文献3】特開2000−345101号公報
【特許文献4】特開2003−105972号公報
【特許文献5】特開2001−261412号公報
【0007】
特許文献1では、既設コンクリート表面が乾燥している場合は水性エマルションの水分が既設コンクリート表面に含浸して皮膜を形成するが、既設コンクリート表面が湿潤している場合は塗付された水性エマルションの造膜が十分に行われず、その状態で新たなコンクリートが打設されると、造膜が不十分な部分が脆弱層となり、打ち継ぎ部における新旧コンクリートの接着性が低下する場合がある。また皮膜によって下地の凹凸が小さくなって、新たに打設されるモルタル又はコンクリートの凹凸に対する引っかかりが少なくなり、略水平表面でない下地にモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際は、当該モルタル又はコンクリートが流下したり落下したりすることがあった。
【0008】
特許文献2及び3ではポリアミン系硬化剤によってはコンクリートの水和を阻害する場合があり、その場合新たに打設されるコンクリートの打ち継ぎ界面でセメントが未水和となって上記同様に打ち継ぎ部の接着性が低下する場合がある。また下地表面の含水率が過度に高いトンネルのコンクリート等に対しては打ち継ぎ部の接着性が不十分であった。さらには既設コンクリート又はモルタル下地の凹凸が著しい場合は刷毛等により均一に塗付することが難しかった。加えてエポキシ樹脂接着剤の塗布量は接着力を確保するため通常は0.3kg/m〜1.0kg/mが好ましいが、垂直面や天井面等の水平上面ではない面へ当該塗付量のエポキシ樹脂接着剤を塗布すると、接着剤自身が垂れたり落下して、新しく打ち継いだモルタル又はコンクリートが硬化前に流下したり落下することがあった。
【0009】
特許文献4では、ポリマーセメントを既設コンクリートに3cm以上、特許文献5では少なくとも2mm以上打設または塗布するとして、ポリマーセメントの比重が2.0程度の場合、m塗付量としては2mm厚のときは約4kg/m、3cm厚みでは約60kg/m塗付する必要があり、略水平表面のコンクリートの打ち継ぎには使用できても垂直面や天井面等の水平上面ではない面には塗布することが出来ず、従って水平上面ではない面でのモルタル又はコンクリートの打ち継ぎを行うことが出来なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、新たに打設するコンクリート又はモルタルに含まれるセメントの水和を阻害することが無く、また既設コンクリート又はモルタルの打継ぎ面が湿潤している場合であっても打ち継ぎ部の接着性が高く、さらには垂直面又は天井面等の水平上面ではない面のコンクリート又はモルタルに新たにモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際にも、打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物が垂れることがなく、さらには打ち継いだモルタル又はコンクリートが流下したり落下したりすることのない接着剤組成物及びモルタル打ち継ぎ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、既設コンクリート又はモルタル下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物であって、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質から成ることを特徴とする接着剤組成物であり、新たなモルタル又はコンクリートの水和を阻害することが無く、既設コンクリートまたはモルタルの打ち継ぎ面が湿潤していても打ち継ぎ部の接着強度が高く、水平上面ではない垂直面や天井面等のコンクリートやモルタルに新たにモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際にも、打ち継いだモルタル又はコンクリートが流下したり落下したりすることの無い接着剤組成物を提供する。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の接着剤組成物に於いて、水分散性ポリアミンエポキシアダクトが、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であることを特徴とする接着剤組成物であり、新たなモルタル又はコンクリートの水和を阻害することが無く、既設コンクリートまたはモルタルの打ち継ぎ面が湿潤していても打ち継ぎ部の接着強度が高く、略水平表面でない垂直面又は天井裏面等のコンクリートに新たにモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際にも、打ち継いだモルタル又はコンクリートが流下したり落下したりすることの無い接着剤組成物を提供する。
【0013】
請求項3記載の発明は、既設コンクリート又はモルタル下地に新たなモルタルを打ち継ぐにあたって、請求項1又は請求項2記載の接着剤組成物を既設コンクリート又はモルタルの打ち継ぎ面に塗付し、当該接着剤組成物に接して新しくモルタル又はコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法であり、既設コンクリート又はモルタルの打ち継ぎ面が湿潤していても打ち継ぎ部の接着強度が高く、水平上面ではない垂直面又は天井面等のコンクリートやモルタルに新たにモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際にも、打ち継いだモルタル又はコンクリートが流下したり落下したりすることが無い、作業効率の高いモルタル打継ぎ方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着剤組成物は、既設コンクリート又はモルタル等下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物であって、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴とする接着剤組成物であって、水分散性ポリアミンエポキシアダクトが(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であることにより、新たに打設するモルタルのセメント分の水和を阻害することが無いという効果がある。
【0015】
また、既設コンクリートまたはモルタルの打ち継ぎ面が湿潤していても打ち継ぎ部の接着強度が高く、さらには垂直面又は天井面等の水平上面ではない打ち継ぎ面に塗付しても接着剤組成物が垂れることが無く、リシンガン等で容易にこれらの打ち継ぎ面に吹き付け塗布することが可能であり、結果として作業性が極めて良好であるという効果がある。特に打ち継ぎ面に塗付した後は、接着剤組成物中の水分が下地コンクリート又はモルタルに吸い込まれると共に、接着剤組成物中の水硬性セメントの水和に急速に消費され、又は空気中に揮発することによって接着剤組成物の粘度の増加が短時間で著しい。このため垂直面又は天井面等の水平上面ではない打ち継ぎ面に塗付した当該接着剤組成物が垂れることなく留まることは確実であり、この効果は大きい。さらにはポリオレフィン樹脂系パルプ状物質を配合していることでそのタレ止め効果は増幅される効果がある。ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質は水分が揮発等した接着剤組成物の自身の凝集力を高める効果もあり、新たに打ち継がれるモルタルやコンクリートに接着剤組成物が引っ張られても、ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質によって接着剤組成物がせん断破壊することがなく、この効果によって新たに打ち継がれるモルタルやコンクリートがずり落ちたり落下したりすることがない。従って大面積な垂直面又は天井面等の水平上面でない既設コンクリート又はモルタルに新たにモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際には極めて有効な接着剤組成物及びコンクリート打ち継ぎ方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の接着剤組成物は、既設コンクリート又はモルタル等下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物であり、液状エポキシ樹脂と水分散性ポリアミン−エポキシアダクトである水系硬化剤を混合することにより強制的に乳化させたポリマーディスパーションと、水硬性セメント及びポリオレフィン樹脂系パルプ状物質を混合したものである。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂は、液状であり、常温硬化するものであればよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂およびそれらの変性物などを単独あるいは併せて用いてもよく、また、希釈剤を用いて液状化してもよい。最も多く配合するエポキシ樹脂の軟化点は、35℃以下が好ましい。このような液状エポキシ樹脂としては、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、汎用性、コスト等で好ましい。
【0018】
また本発明の水分散性ポリアミンエポキシアダクトである水系硬化剤は、前記エポキシ樹脂と混合し、また水分を良好に分散させることができるものであればよく、当該水分散性ポリアミンエポキシアダクトは、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であって、特許2661678号公報に記載されているものである。これに該当する水分散性ポリアミンエポキシアダクトには、ジョリシールJBX−140B(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂硬化剤、商品名、活性水素当量380、固形分33%水溶液、粘度90mPas/23℃)がある。
【0019】
水硬性成分はセメントであり、セメントとしては水硬性であれば特に限定されることはなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、アルミン酸石灰質セメント、ケイ酸アルミン酸石灰質セメント、リン酸セメント等が使用できる。特に白セメントすなわち白色ポルトランドセメントは、流動性が良い点で好ましい。当該水硬性セメントの配合量はエポキシ樹脂100重量部に対して好ましくは50重量部から250重量部を配合することで本発明の効果が顕著であるが、50重量部未満250重量部超であっても塗付作業性に支障がなく打ち継ぎ部の接着が良好で、また塗付面における本発明の接着剤組成物に垂れを生じたり、さらには新たに打設するコンクリート又はモルタルが流下したり落下することがなければ、その範囲で配合量を調整することが出来る。
【0020】
ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質は、ポリオレフィン系樹脂の極細繊維をフィブリル化したものであり、代表的な商品にケミベスト(三井化学株式会社、商品名)がある。当該製品は繊維の原料或いは後処理により、親水性と疎水性のタイフ゜があり、どちらも効果が得られ、また繊維長も各種あるが、打ち継ぎ面へのローラー刷毛での塗付、又は吹き付け塗付の作業性から繊維長0.1mmのものが好ましい。当該ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質の配合量はエポキシ樹脂100部に対して好ましくは5重量部から10重量部を配合することで本発明の効果が顕著であるが、5重量部未満10重量部超であっても塗付作業性に支障がなく、また塗付面における本発明の接着剤組成物に垂れを生じたり、さらには新たに打設するコンクリート又はモルタルが流下したり落下することがなければ、その範囲で配合量を調整することが出来る。
【0021】
配合物の混合形態として、エポキシ樹脂、水分散性ポリアミンエポキシアダクト、水、水硬性セメント及びポリオレフィン樹脂系パルプ状物質が主たる配合物であるが、2液、1粉体とするのが使用に際して好ましい。すなわち、エポキシ樹脂、水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水とポリオレフィン樹脂系パルプ状物質、及び水硬性セメントとするのが、混合・分散不十分、特性の失活、計量ミス・誤差を防ぐには好ましいが、別個に配合しても構わない。
【0022】
本発明の接着剤組成物はコンクリートに0.2〜1.5kg/m塗付するが、0.7kg/mが塗付作業性の点で適当である。0.2kg未満/mでは下地上に均一に塗付することが難しい。1.5kg/m以下の塗付量であればリシンガンで容易に塗布することが出来る。
【0023】
以下、実施例及び比較例にて詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
攪拌機にJBX−140A(アイカ工業(株)製エポキシ樹脂、商品名、エポキシ当量180、固形分100%、粘度1300mPas/23℃)100重量部とジョリシールJBX−140B(アイカ工業(株)製水分散性ポリアミンエポキシアダクト、活性水素当量380、固形分33%水溶液、粘度90mPas/23℃、商品名)200重量部およびポリオレフィン樹脂系パルプ状物質(ケミベストFDDSS−50、繊維長0.1mm、三井化学株式会社製、商品名)8重量部を入れ、普通ポルトランドセメント150重量部を配合した接着剤組成物を調製し塗付量は0.7kg/mとし、実施例とした。
【0025】
比較例1
実施例1に換えてアクリルエマルション(ウルトラゾールCMX−243、ガンツ化成株式会社製、商品名:アクリル酸エステル共重合体エマルション、固形分45%、PH5.0、粘度20mPas/25℃)、を水で希釈して固形分10%に調整した)を、比較例1とした。
【0026】
比較例2
実施例1の普通ポルトランドセメントの配合量を0重量部とし、エポキシ樹脂であるジョリシールJBX−140Aと水分散性ポリアミンエポキシアダクトであるジョリシールJBX−140Bの混合物のみとして、比較例2とした。
【0027】
比較例3
実施例1に換えてエポキシ樹脂(ジョリシールJB−8A、アイカ工業株式会社製、商品名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂52.5%)400重量部とポリアミン系硬化剤(ジョリシールJB−8B、アイカ工業株式会社製、商品名:変性脂肪族ポリアミン100%(内メタキシリレンジアミン4%、ポリチオール20%))100重量部を撹拌機に入れて混合し(混合物粘度5Pas/20℃、硬化物比重1.3)、比較例3とした。
【0028】
比較例4
上記実施例において、ポリオレフィン樹脂系パルプ状物質を配合しない接着剤組成物を調製し比較例4とした。
【0029】
表1に実施例及び比較例の結果を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
試験条件
【0032】
既存コンクリート下地:JISA5371付属書2 普通平板 呼び300の規定に適合する300×300×60mmのコンクリート平板表面を高圧水洗して表面の脆弱部を除去して既存コンクリート下地とした。下地は天井裏面となるようにその表面が下側になるように頭上に保持し、接着剤組成物は下面からリシンガンで吹きつけた。
【0033】
養生温度と表面状態:養生温度は5℃と20℃とし、上記普通平板の表面状態はケット水分計HI520にてコンクリートレンジで測定した値が5.0%以下になるように調整した表面状態を乾燥面とした。湿潤面は上記普通平板を7日間水中に浸漬した後、水中から取り出し、表面に浮き留まっている水をウェスで拭いた直後の状態とした。
【0034】
打設時間:実施例及び比較例1〜4の接着剤組成物を塗付し、各温度で30分後と2時間を打設時間とし、当該時間を経過した後、市販コンクリート補修用モルタル(タフエース#10:タフエースエマルション=20:3.5(重量比)、ライオン株式会社製、商品名)を厚さ10mmに金鏝にて塗付した。
【0035】
養生日数:上記モルタルを塗付した後、28日間養生した。
【0036】
評価方法
【0037】
付着強度:付着性の評価は建研式付着力試験器を用いて付着強度と破壊状況を評価した。付着強度はモルタルを28日間養生した後、その表面をサンドペーパー#80にて十分に研磨し、40×40mmの鋼製ジグをエポキシ系接着剤にて接着する。接着剤が硬化後ダイヤモンドカッターにて鋼製ジグの周囲に普通平板に達する切込みを入れ建研式付着力試験器にて付着強度を測定した。付着強度は3.0MPa以上を○、2.0MPa以上3.0MPa未満を△、2.0MPa未満を×とした。
【0038】
破壊状況:上記建研式付着力試験器での付着強度測定後の鋼製ジグに付着したコンクリート片の状態を目視にて評価し、普通平板の破壊片が50%以上鋼製ジグ側に付着しているものを、既存コンクリートの凝集破壊として○とし、50%未満または普通平板とモルタルとの界面での破壊を×とした。
【0039】
付着性試験結果のまとめ:実施例の接着剤組成物では5℃及び20℃の乾燥面及び湿潤面のすべてで付着強度は3.0MPa以上有し、破壊状況は50%以上の普通平板の凝集破壊であったのに対し、比較例1乃至4では塗付したモルタルが落下するか、付着強度が3.0MPa以下、破壊状況が×評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート又はモルタル下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐ際に打ち継ぎ面に塗付する接着剤組成物であって、エポキシ樹脂と水分散性ポリアミンエポキシアダクトと水硬性セメントとポリオレフィン樹脂系パルプ状物質とから成ることを特徴とする接着剤組成物
【請求項2】
前記水分散性ポリアミンエポキシアダクトが、(A)ポリアミンに、ポリアミンの第一アミノ基の10〜50%と反応する量のモノエポキシドと、ポリアミンの残留第一アミノ基の5〜65%と反応する量のポリエポキシドとの混合物を添加反応させて形成した、水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト0.25〜4重量部および(B)第一アミノ基を有するポリアミンとモノエポキシド又はポリエポキシドとの反応によって得られた樹脂相溶性のポリアミン‐エポキシアダクト1重量部とからなり、ポリアミンの残留アミノ基の少なくとも25%がホルムアルデヒドと反応し、ポリアミンは引き続いて酸との反応によって少なくとも部分的に中和されている前記水相溶性のポリアミン‐エポキシアダクトと前記樹脂相溶性ポリアミン‐エポキシアダクトとの混合物であることを特徴とする接着剤組成物
【請求項3】
既設コンクリート又はモルタル下地に新たなモルタル又はコンクリートを打ち継ぐにあたって、請求項1又は請求項2記載の接着剤組成物を既設コンクリート又はモルタルの打ち継ぎ面に塗付し、当該接着剤組成物に接して新しくモルタル又はコンクリートを打設することを特徴とするコンクリート打ち継ぎ方法




【公開番号】特開2009−96818(P2009−96818A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266714(P2007−266714)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】