説明

接着剤組成物及び太陽電池用裏面保護シート

【課題】 本発明の目的は、種々のシート状部材間、特にPETフィルム層を含む層間で高い接着力を示し、高温高湿度環境下に曝されても高い接着力を維持できる太陽電池用裏面保護シートを製造可能とする接着剤組成物を提供することにある。
【解決手段】 イソシアネート基と水酸基のモル比が特定の範囲となるように、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する接着剤組成物であって、前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)が、直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位を特定量含む液状ポリカーボネートポリオール(C)とジイソシアネート(D)とを構成成分とする、特定分子量、特定ガラス転移温度のポリカーボネートウレタンポリオール(A)である、接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、前記接着剤組成物を用いて、プラスチックフィルムや金属箔等を積層してなる太陽電池裏面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外産業用途向け、たとえば、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、ステッカーなどに用いられる多層(複合)フィルムとして、アルミニウムや銅、鋼板などの金属箔や金属板あるいは金属蒸着フィルムと、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂などのプラスチックフィルムとを貼り合わせて積層(ラミネート)フィルムにしたものが使用されてきた。これらの多層フィルムにおける、金属箔、金属板または金属蒸着フィルムとプラスチックフィルムとを貼り合わせる接着剤としては、優れた接着性能を示すポリウレタン系接着剤が知られている。
【0003】
特開平10−218978号公報(特許文献1)には、優れた初期凝集力と接着力等を与えることができる、バランスを考慮したポリエステル樹脂と、これを用いたポリウレタン系接着剤が開示されている。
【0004】
特開平06−116542号公報(特許文献2)には、食品包装用複合ラミネートフィルム形成用のポリウレタン系接着剤が開示されている。
【0005】
さらに、特開2007−136911号公報(特許文献3)には、ポリエステル系樹脂またはポリエステルポリウレタン系樹脂で構成された接着改善層を備えた太陽電池裏面保護シートが開示されている。
【0006】
太陽電池裏面保護シートにおいては、特に、耐熱性、絶縁性が優れるという理由からPETフィルムが多用されており、更に耐加水分解性を向上させた低オリゴマーPETフィルム、水蒸気バリア性の高い蒸着PETフィルム、太陽光の反射効率を向上させる白色PETフィルムなど、様々なバリエーションのPETフィルムが各フィルムメーカーから上市されている。太陽電池裏面保護シート用として接着剤を使用する場合、PET基材へ高い接着力を有することが重要であり、特許文献1〜3に開示されるようなポリエステル系樹脂またはポリエステルウレタン系樹脂で構成された接着剤は、これらPETフィルムへ高い接着力を有することが知られている。
【0007】
しかし、これらのポリエステル系樹脂またはポリエステルポリウレタン系樹脂を含有する接着剤を用いて、太陽電池裏面保護シートを形成した場合、高温高湿度下に長時間おかれると加水分解がポリエステル系樹脂またはポリエステルポリウレタン系樹脂に発生して接着力が低下して、太陽電池として出力劣化の懸念が生じるという問題があった。
【0008】
ポリエステル系接着剤の長期耐久性を改良するために、WO2009/072431(特許文献4)や特開2010−138291号公報(特許文献5)には、ポリエステル系樹脂よりも耐加水分解性が優れているポリカーボネートジオールを原料とするポリウレタンポリール系接着剤が開示され、太陽電池バックシートへの適用が示唆されている。しかし、ポリエステル系樹脂を用いた接着剤に比べて、ポリカーボネート系樹脂を用いた接着剤は、長期耐久性は飛躍的に向上するが、PETフィルムへの接着力が劣るという問題があった。これは、エステル結合よりもカーボネート結合の方が分極率が低いために、PETフィルム表面官能基との相互作用が弱いということに起因していると考えられる。
【0009】
また、特開2003−238930号公報(特許文献6)では耐加水分解性の良いポリカーボネートジオールとポリエステルジオールを共重合させた樹脂で構成された接着剤が開示されているが、長期耐久性の低いポリエステル構造が樹脂の主鎖中に存在しているため、接着力と長期耐久性が互いに両立できていなかった。
【0010】
さらに、特開2008−004691号公報(特許文献7)には、太陽電池裏面封止用シートにおいて、耐加水分解性を向上させるために、ポリエステル系樹脂またはポリエステルポリウレタン系樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物の少なくとも1種を配合した接着剤を使用することが開示されているが、これにおいても長期耐久性が十分であるとは言い難く、ポリエステル系樹脂の持つPETフィルムへの高い接着力と、ポリカーボネート系樹脂の持つ高い耐加水分解性を両立した接着剤を開発することが大きな課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−218978号公報
【特許文献2】特開平06−116542号公報
【特許文献3】特開2007−136911号公報
【特許文献4】国際公開 WO2009/072431号パンフレット
【特許文献5】特開2010−138291号公報
【特許文献6】特開2003−238930号公報
【特許文献7】特開2008−004691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、種々のシート状部材間、特にPETフィルム層を含む層間で高い接着力を示し、高温高湿度環境下に曝されても高い接着力を維持できる太陽電池用裏面保護シートを製造可能とする接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基/ポリカーボネートウレタンポリオール(A)中の水酸基=0.5〜10/1(モル比)の範囲で、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する接着剤組成物であって、
前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)が、直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位を80〜100モル%含み、25℃で液状であるポリカーボネートポリオール(C)とジイソシアネート(D)とを構成成分とする、数平均分子量5,000〜25,000、ガラス転移温度が−40〜10℃のポリカーボネートウレタンポリオール(A)である、接着剤組成物に関する。
前記接着剤組成物において、ポリカーボネートポリオール(C)1分子あたりのカーボネート基当量は100〜145g/molであることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、太陽電池に設けられている太陽電池素子の太陽光の入射面とは反対側の面を保護する太陽電池用裏面保護シートであって、
2つ以上のシート状部材の積層体を備え、
前記積層体を構成する前記シート状部材間の接着の少なくとも一部に、請求項1又は2記載の接着剤組成物から形成された硬化処理済み接着剤層が用いられている太陽電池用裏面保護シートに関する。
前記太陽電池用裏面保護シートは、前記積層体を構成する前記シート状部材の少なくとも1つが水蒸気バリア層を有し、前記水蒸気バリア層は、金属箔、金属酸化物層付きプラスチックフィルム、及び非金属酸化物層付きプラスチックフィルムからなる群より選ばれることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、種々のシート状部材間、特にPETフィルム層を含む層間で高い接着力を示し、高温高湿度環境下に曝されても高い接着力を維持できる太陽電池用裏面保護シートを提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの概略の一例である模式的断面図。
【図2A】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【図2B】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【図2C】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【図2D】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【図2E】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【図2F】本発明に係る太陽電池用裏面保護シートの例を説明する模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の接着剤組成物は、前記したように水酸基の量とイソシアネート基の量とが特定の範囲となるように、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する。本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)は、ポリオール成分としてポリカーボネートポリオール(C)1種又は2種以上と、ポリイソシアネート成分として後述するジイソシアネート(D)とを構成成分とするものであり、構造中にウレタン基を導入することにより高い凝集力を付与することができる。
【0018】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)は、ジオール成分と、ジメルカーボネートやジエチルカーボネート等の炭素数1〜4程度の単鎖ジアルキルカーボネートや、ジフェニルカーボネート等との反応により得られる。
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)は、構造中のカーボネート基と基材との強い相互作用が得られるという理由から、前記ジオール成分として、直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位を80〜100モル%含むことが好ましい。ポリカーボネートポリオール(C)における直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位が80モル%より小さい場合、例えば、分岐アルキル鎖を有するジオール成分が多い場合、分岐したアルキル側鎖の立体障害によりカーボネート基と基材との相互作用が阻害され、高い接着力が得られない恐れがある。
【0019】
ポリカーボネートポリオール(C)で使用される直鎖状のアルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。形成されるポリカーボネートポリオール(C)の結晶性を崩し、25℃で液状とするために、2種以上を併用することが好ましく、そのうちの1種類が90モル%以上にならないようにすることが好ましい。
【0020】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)は、塗工時およびエージング工程時におけるカーボネート基と基材の相互作用が良好であり高い接着力を得られるという理由から、25℃で液状であることが好ましい。ここでいう液状とは流動性があるということを意味し、たとえば、試薬瓶にポリカーボネートポリオール(C)を入れ、試薬瓶を逆さにし、24時間静置した際に、1mm以上流動すれば、液状であると判断される。
【0021】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)は、カーボネート基と基材との相互作用を強めるという観点から、カーボネート基当量(ポリカーボネートポリオール(C)中のカーボネート基1モルあたりのポリカーボネートポリオール(C)の分子量)が100〜145g/molの範囲であることが好ましく、更に好ましくは110〜140g/molの範囲である。ポリカーボネートポリオール(C)のカーボネート基当量が145g/molよりも大きい時は、カーボネート基と基材との相互作用が不足し、十分な接着力が得られない恐れがある。また、ポリカーボネートポリオール(C)のカーボネート基当量が100g/molよりも小さくしようとした場合、ポリカーボネートポリオール(C)の粘度が高くなりすぎるため製造上困難である。
ポリカーボネートポリオール(C)のカーボネート基当量は、次式から算出される。「ポリカーボネートポリオール(C)のカーボネート基当量(g/mol)=ポリカーボネートポリオール(C)の分子量(g)/ポリカーボネートポリオール(C)中のカーボネート基のモル数(mol)」
【0022】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)の分子量は、400〜8,000の範囲が好ましく、より好ましくは400〜5,000の範囲であり、500〜3500の範囲がさらに好ましい。ポリカーボネートポリオール(C)の分子量が400より小さいと、溶剤への溶解性が不足する恐れがある。一方、ポリカーボネートポリオール(C)の分子量が8,000より大きいと、ポリカーボネートポリオール(C)の粘度が高くなりすぎるため製造上困難である。なお、ガラス転移温度(Tg)を−40〜10℃の範囲のポリカーボネートウレタンポリオール(A)を形成し易いという点でも、ポリカーボネートポリオール(C)の分子量は、上記範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明で使用されるポリカーボネートポリオール(C)は、市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラノールT4671、T4672、T5651、T5652、宇部興産株式会社製のETERNACOLL PH100、PH200などが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意で組み合わせて使用しても良い。
【0024】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)は、前記のポリカーボネートポリオール(C)と、ポリイソシアネート成分として後述するジイソシアネート(D)とを構成成分とするものである。
ポリカーボネートウレタンポリオール(A)を得る際に使用されるジイソシアネート(D)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の既知のジイソシアネート等が挙げられる。ジイソシアネート(D)としては、前記した種々のジイソシアネートと低分子ジオール類との付加体であって、イソシアネート基を2個有するものも挙げられる。ジイソシアネート(D)は、これら例示されたものに限定されるものではない。本発明では、ジイソシアネート(D)として、例示したものを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0025】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)は、数平均分子量が5,000〜25,000の範囲であり、好ましくは8,000〜15,000である。ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の数平均分子量が5,000以上とすることにより、後述するポリイソシアネート(B)と十分反応する前、即ちエージング工程前の接着剤層の凝集力を確保し、ラミネート時に貼り合わせる素材同士が巻きズレを起こさない。また、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の数平均分子量が25,000以下とすることにより、塗工時の粘度を適切な範囲とでき、基材との濡れ性を確保でき、十分な接着力を得ることができる。
【0026】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)のガラス転移温度は、−40〜10℃であり、好ましくは−30〜0℃の範囲である。
ガラス転移温度が−40℃以上のポリカーボネートウレタンポリオール(A)を用いることによって、エージング工程前に十分な接着力が得ることができ、エージング中に巻きズレを生じない。また、ガラス転移温度が10℃以下のポリカーボネートウレタンポリオール(A)を用いると、塗工時に基材を十分濡らすことができ、十分な接着力を確保できる。 なお、ガラス転移温度とは非晶質固体材料にガラス転移が起きる温度であり、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)のガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量分析)装置により、昇温速度10℃/min.で測った値である。
なお、ここでのガラス転位温度とは、(メタ)アクリル系共重合体(A)を乾燥させて固形分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転位温度のことを示す。例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−50℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で150℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の段階状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。本発明の上記の方法により測定した値を記載している。
【0027】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)のガラス転移温度は、例えば、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)を合成する際に使用するポリカーボネートポリオール(C)の分子量、ポリカーボネートポリオール(A)の合成に使用するアルキレンジオールの種類および組成比、ジイソシアネート(D)の種類、後述する併用可能な他のジオール(E)の種類および組成比などを変えることにより調整できる。
【0028】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)の水酸基価は、4〜25mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは、5〜18mgKOH/gの範囲である。水酸基価が4mgKOH/g以上のポリカーボネートウレタンポリオール(A)を用いることにより、後述のポリイソシアネート(B)との反応により架橋密度が十分であって、耐久性に優れる接着剤層を形成できる。また、水酸基価が25mgKOH/g以下のポリカーボネートウレタンポリオール(A)を用いることにより、接着剤塗工時に十分な長さの使用可能時間(以下、ポットライフともいう)を確保できる。
なお、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の水酸基価は、後述の方法により測定した値である。
【0029】
また、本発明のポリカーボネートウレタンポリオール(A)は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)を合成する際に使用するポリオールとしてポリカーボネートポリオール(C)以外に他のジオール(E)を併用しても良い。
【0030】
また本発明で使用できる他のジオール(E)の分子量は、60〜300の範囲が好ましい。そこで、他のジオール(E)を以下、低分子ジオール(E)ともいう。このような低分子ジオール(E)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖のアルキレンジオールや、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の分岐アルキル鎖を有するアルキレンジオールなどが挙げられる。
【0031】
低分子ジオール(E)の好ましい配合量としては、ポリカーボネートジオール(C)と低分子ジオール(E)の合計100モル%のうち、0〜60モル%の範囲である。低分子ジオール(E)として分岐アルキル鎖を有するアルキレンジオールを使用した場合、低分子ジオール(E)中の分岐アルキル鎖は、ポリカーボネートジオール(C)中のカーボネート基に隣接しない。従って、カーボネート基と基材との相互作用は、分岐アルキル鎖が存在しても阻害されない。
【0032】
本発明で使用されるポリカーボネートウレタンポリオール(A)を合成する際には、公知の反応促進剤を使用することもできる。公知の反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0033】
次に本発明の接着剤組成物に含まれるポリイソシアネート(B)について説明する。
本発明で使用されるポリイソシアネート(B)としては、以下に限定されるものではないが、周知のジイソシアネートから誘導された化合物を好ましく用いることができる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、若しくは水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネートから誘導された化合物、即ち、前記ジイソシアネートヌレート体、トリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体等が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせても使用しても良い。
【0034】
本発明で使用されるポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の数は、1分子中、平均して2〜7個が好ましく、さらに好ましくは2.2〜3.5個である。ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の数が2個より少ないと、十分な架橋量を得ることができず、接着剤層の耐久性が不足してしまうおそれがある。また、ポリイソシアネート(B)1分子中のイソシアネート基の数が7個より多いと、ポットライフ(使用可能時間)が非常に短くなり接着剤の使用が困難となるおそれがある。
【0035】
本発明で使用されるポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の官能基量は、2.5〜6mmol/gの範囲が好ましく、さらに好ましくは3〜5.5mmol/gである。ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の官能基量が2.5mmol/gより少ないと、十分な架橋量を得ることができず、接着剤の耐久性が不足してしまう恐れがある。また、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基の官能基量が6mmol/gより多いと、ポットライフが非常に短くなり接着剤の使用が困難となるおそれがあったり、過剰量のポリイソシアネート(B)が耐湿熱性試験時に単独で水と反応し、接着剤の粘弾性を損ねてしまう恐れがある。
【0036】
本発明の接着剤組成物は、前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)由来の水酸基1モルに対して、イソシアネート基の量が0.5〜10モルとなる範囲でポリイソシアネート(B)を含むことが重要であり、イソシアネート基の量は好ましくは1〜4モルである。(以下、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の水酸基の合計に対するポリイソシアネート(B)の全イソシアネート基の当量比をNCO/OH比と呼ぶ。)
NCO/OH比が0.5未満では、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)との反応による架橋構造の架橋密度が不足し、十分な接着剤の耐久性が得られない恐れがある。また、NCO/OH比が10より大きいと、ポリカーボネートウレタンポリオールとの反応が早すぎるため、接着剤組成物としてのポットライフが非常に短くなってしまったりする。
【0037】
本発明の積層シート用接着剤には、シランカップリング剤、反応促進剤、レベリング剤等種々の添加剤を配合することができる。
【0038】
本発明で使用される公知の添加剤として、金属箔に対する接着強度を向上させたい場合、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
本発明で使用されるシランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基を有するトリアルコキシシランが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0039】
本発明で使用されるシランカップリング剤の添加量は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の固形分100重量部に対し、0.5〜5重量部であることが好ましく、1〜3重量部であることがより好ましい。シランカップリング剤の添加量が0.5重量部未満では、シランカップリング剤を添加することによる金属箔に対する接着強度向上効果に乏しく、5重量部より多く添加しても、それ以上の性能の向上は認められない。
【0040】
本発明で使用される公知の添加剤として、硬化反応を促進させたい場合、公知の反応促進剤を使用することができる。
本発明で使用される反応促進剤としては、たとえば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0041】
本発明で使用される反応促進剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の固形分100重量部に対し0.005〜0.2重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.1重量部である。反応促進剤の添加量が0.005重量部未満であると、硬化反応の十分な促進効果が得られない恐れがあり、0.2重量部よりも多いと、硬化反応が早すぎるため溶液安定性を損ねてしまう恐れがある。
【0042】
本発明で使用される公知の添加剤として、ラミネート外観を向上させる目的で、公知のレベリング剤または消泡剤を、主剤に配合することができる。
本発明で使用されるレベリング剤としては、たとえば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポ
リエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0043】
本発明で使用されるレベリング剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の固形分100重量部に対し0.05〜3重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。レベリング剤の添加量が0.05重量未満であると、十分なレベリング性の向上が得られない恐れがあり、3重量部よりも多いと、接着剤の接着力を大きく悪化させてしまう恐れがある。
【0044】
本発明で使用される消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物などの公知のものが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
本発明で使用される消泡剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の固形分100重量部に対し0.05〜3重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2重量部である。消泡剤の添加量が0.05重量未満であると、十分な消泡効果が得られない恐れがあり、3重量部よりも多いと、接着剤の接着力を大きく悪化させてしまう恐れがある。
【0045】
本発明で使用される溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチレンクロリド、エチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意に組み合わせて使用しても良い。
【0046】
本発明の接着剤の不揮発分(固形分)は、10〜50重量%の範囲が好ましい。本接着剤は上記に例示したような溶剤を用いて固形分の調整を行うことができる。
【0047】
次に本発明の太陽電池用裏面保護シートについて説明する。まず、本発明に係る太陽電池モジュールの概略の一例である模式的断面図を図1に示す。太陽電池モジュール100は、同図に示すように、太陽電池素子である太陽電池セル1、太陽電池用表面保護シート2、受光面側封止材層3、非受光面側封止材層4、太陽電池用裏面保護シート5を備える。太陽電池セル1は、図1に示すように、太陽電池セル1の受光面側に位置する受光面側封止材層3と、太陽電池セル1の非受光面側に位置する非受光面側封止材層4とに挟持され、封止されている。そして、受光面側封止材層3は、太陽電池用表面保護シート2によって保護され、非受光面側封止材4は、太陽電池用裏面保護シート5によって保護されている。なお、本発明に係る太陽電池モジュールの構成は、図1の構成に限定されず種々の変形が可能である。
【0048】
太陽電池用裏面保護シート5は、例えば、耐候性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満足させるために、通常、複数層のシート状部材の積層体からなる。
【0049】
図2A〜図2Fに、本発明に係る太陽電池用裏面保護シート5の例を説明する模式的断面図を示す。図2Aの太陽電池用裏面保護シート5aは、第1シート状部材11、第2シート状部材12の2層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、本発明の接着剤組成物から形成された硬化処理済み接着剤層51(以下、単に「接着剤層51」とも云う)を介して接合されている。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、プラスチックフィルム、金属箔、金属層付きプラスチックフィルム、金属酸化物層付きプラスチックフィルム、非金属酸化物層付きプラスチックフィルム、及び窒化珪素層付きプラスチックフィルム等により形成することができる。金属層、金属酸化物層、非金属酸化物層、窒化珪素層は、蒸着等により形成することができる。
【0050】
図2Aの好適な例としては、例えば、第1シート状部材11をプラスチックフィルムにより形成し、第2シート状部材12をアルミニウム等の金属やアルミナ等の金属酸化物や二酸化珪素等の非金属酸化物や窒化珪素等からなる蒸着層22が設けられたプラスチックフィルム21より構成する例が挙げられる。また、図2Bの太陽電池用裏面保護シート5bのように、第2シート状部材12のアルミナ等の金属酸化物や二酸化珪素等の非金属酸化物等からなる蒸着層22が、接着剤層51側に設けられていてもよい。さらに図2Cのように、第2シート状部材12としてアルミニウム箔等の金属箔23を用いることもできる。この場合、金属箔23の非受光面側には、白コート層等のコーティング層24を設けることもできる。コーティング層24は、必要に応じて着色とすることができる。
これら図2A〜2Cの場合、第2シート状部材12が水蒸気バリア層として機能する。無論、第1シート状部材11、第2シート状部材が共にプラスチックフィルム等によって構成されていてもよい。シートを2層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートに要求される複数の特性を効果的に満足させることができる。なお、本明細書でいうフィルムは、特に厚みに制限はないものとする。
【0051】
図2Dの太陽電池用裏面保護シート5dは、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第3のシート状部材13の3層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、第1接着剤層51を介して接合され、第2シート状部材12と第3シート状部材13は、第2接着剤層52を介して接合されている。図2Dの好適な例としては、第1シート状部材11〜第3シート状部材13をすべてプラスチックフィルムにより構成する例が挙げられる。また、図2A,図2Bのように、金属や金属酸化物や非金属酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムがいずれかのシート状部材に採用されていてもよい。また、図2Cのように、シート状部材自身がアルミニウム箔等の金属箔であってもよい。シートを3層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートに要求される複数の特性をより効果的に満たすように設計することができる。
【0052】
図2E太陽電池用裏面保護シート5eは、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第3シート状部材13、第4シート状部材14の4層のシート状部材を有する。第1シート状部材11と第2シート状部材12は、第1接着剤層51を介して接合され、第2シート状部材12と第3シート状部材13は、第2接着剤層52を介して接合され、第3シート状部材13と第4シート状部材14は、第3接着剤層53を介して接合されている。図2Eの好適な例としては、例えば、第1シート状部材11、第2シート状部材12、第4シート状部材14をプラスチックフィルムにより構成し、第3シート状部材13をアルミニウム箔等の金属箔により構成する例が挙げられる。この場合、第3シート状部材13は、バリア層として機能する。シートを4層積層することによって、太陽電池用裏面保護シートの特性をより優れたものにすることができる。第3シート状部材13は、図2Fに示す太陽電池用裏面保護シート5fのように、酸化珪素等からなる非金属酸化物層31をプラスチックフィルム32上に蒸着したものを用いてもよい。非金属酸化物層の代わりに金属や金属酸化物層をプラスチックフィルム32上に蒸着したものを用いることもできる。なお、図2A〜図2Fの各シート状部材の配置、層数や構成等は一例であって、種々の変形が可能である。
【0053】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、
ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリスルホン系樹脂フィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム、
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
これらのプラスチックフィルムを支持体として、アクリル系、フッ素系塗料がコーティングされてなるフィルムや、ポリフッ化ビニリデンやアクリル樹脂などが共押出しにより積層されてなる多層フィルムなどを使用することができる。さらに、ウレタン系接着剤層などを介して上記のプラスチックフィルムが複数積層されたシート状部材を用いても良い。
【0054】
金属箔としては、アルミニウム箔、銅箔などが挙げられる。
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる
【0055】
これらの中でも、太陽電池モジュールとして使用する際の耐候性、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満たす為に、温度に対する耐性を有する、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムと、太陽電池セルの水の影響による出力低下を防止する為に水蒸気バリア性を有する金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔と、光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なフッ素系樹脂フィルムとが積層されてなる太陽電池用裏面保護シートが好ましい。
【0056】
中でも、積層体のシート状部材の組合せとして、太陽光の入射面側から、被受光面側封止材層4と接着性の良好なポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、フッ素樹脂フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムやコロナ処理、ポリエステル系樹脂層やアクリル系樹脂層などを形成したポリエステル系樹脂フィルムを積層し、次いで電気絶縁性の付与を目的として、100μmより厚いポリエステル系樹脂フィルムを積層し、次いで場合によって水蒸気バリア性を有する金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔を積層し、次いで光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なフッ素系樹脂フィルム、耐候性樹脂層を形成しても良いポリエステル系樹脂フィルムとが積層されてなる太陽電池用裏面保護シートが好ましい。
【0057】
セルの発電容量にあわせ、太陽電池の裏面保護シートには、耐部分放電電圧700V若しくは1000Vの耐性が要求される。太陽電池モジュールを電圧印加による破損から保護するためである。耐部分放電電圧は、裏面保護シートの厚みに依存するので、裏面保護シートを構成するシート状部材として、100μmから300μm程度のものを少なくとも一種用いることが好ましい。
【0058】
本発明の太陽電池用裏面保護用シートは、例えば、次のような製造方法で得ることができる。
本発明に係る接着剤組成物を用いて多層フィルムを製造するには、通常用いられている方法を採用できる。たとえば、シート状部材の片面に、コンマコーターやドライラミネーターによって接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、他のシート状部材と貼り合わせ、常温もしくは加熱下に硬化させれば良く、加熱下に貼り合せることが好ましい。具体的には、50〜80℃、加圧下に貼り合せた後、40〜60℃で3〜7日程度静置し、エージング(接着剤層の硬化を進行)することが好ましい。ラミネート基材表面に塗布される接着剤量は、1〜50g/m2程度であることが好ましい。ラミネート基材としては、用途に応じて任意の基材を、任意の数で選択することができ、3層以上の多層構成とする際には、各層の貼り合わせの全てまたは一部に本発明に係る接着剤を使用できる。が好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例中における各評価は下記の方法に従った。なお、実施例中、部は重量部、%は重量%、水酸基価はmgKOH/g、酸価はmgKOH/gをそれぞれ示す。数平均分子量、ガラス転移温度、水酸基価、酸価は以下のようにして求めた。
【0060】
<数平均分子量>
数平均分子量の測定は、東ソー社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用い、溶媒はテトラヒドロフランを用いた。数平均分子量は標準ポリスチレン換算で行った。
【0061】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度の測定は、セイコーインスツルメンツ社製DSC「RDC220」を用いて行った。下記手法で合成したポリカーボネートウレタンポリオールA−1〜A−14溶液を乾燥した試料、約10mgをアルミニウムパンに量り採り、DSC装置にセットして液体窒素で−100℃まで冷却した後、10℃/minで昇温して得られたDSCチャートからガラス転移温度を求めた。
【0062】
<水酸基価、酸価>
酸価は、試料0.2gを三角フラスコに取り、エタノール20mlに溶解した後に、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
水酸基価は、試料約2gをピリジン約10mlに溶解した後、予め調整した無水酢酸/ピリジンの体積比が15/85である混合溶液5mlを加え、20時間放置した。その後、水1mlとエタノール10mlを加え、0.1Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬にはフェノールフタレインを用いた。
【0063】
ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の合成例
<合成例1>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が126.6g/mol、数平均分子量が2,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ、固形分80%のポリカーボネートポリオール(C)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C)溶液に、ジイソシアネート(D)としてキシリレンジイソシアネートを、NCO/OH比が0.76となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―1)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−1)は、数平均分子量5,800、ガラス転移温度−25℃、水酸基価19.8mgKOH/g、であった。
【0064】
<合成例2>
NCO/OH比を0.9とした以外は、前記合成例1と同様にして、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―2)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−2)は、数平均分子量23,000、ガラス転移温度−19℃、水酸基価4.86mgKOH/g、であった。
【0065】
<合成例3>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が133.5g/mol、数平均分子量が500、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)と、低分子ジオール(E)である3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオールのモル比が70:30となるように、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%の、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオールとの混合溶液を得た。
前記混合溶液に、ジイソシアネート(D)として水素添加キシリレンジイソシアネートをNCO/OH比が0.91となるように添加し、70℃で5時間反応させた。IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―3)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−3)は、数平均分子量10,000、ガラス転移温度5℃、水酸基価11.2mgKOH/g、であった。
【0066】
<合成例4>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が125.8g/mol、数平均分子量が3,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C)溶液に、ジイソシアネート(D)として水素添加キシリレンジイソシアネートをNCO/OH比が0.79となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―4)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−4)は、数平均分子量10,000、ガラス転移温度−32℃、水酸基価11.2mgKOH/g、であった。
【0067】
<合成例5>
ジオール成分のモル比が1,5−ペンタンジオール:1,6−ヘキサンジオール:3−メチル−1,5−ペンタンジオール=40:45:15、カーボネート基当量が140.8g/mol、数平均分子量が2,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)と、低分子ジオール(E)である1,6−ヘキサンジオールを、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオールのモル比が50:50となるように窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%の、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオールとの混合溶液を得た。
前記混合溶液に、ジイソシアネート(D)として水素添加キシリレンジイソシアネートをNCO/OH比が0.84となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―5)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−5)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−22℃、水酸基価9.4mgKOH/g、であった。
【0068】
<合成例6>
ジオール成分のモル比が1,5−ペンタンジオール:1,6−オクタンジオール=50:50、カーボネート基当量が123.0g/mol、数平均分子量が1,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.84となるように添加し、70℃で5時間反応させた。IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―6)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−6)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−21℃、水酸基価9.3mgKOH/g、であった。
【0069】
<合成例7>
NCO/OH比を0.83とした以外は、前記合成例6と同様にして、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―7)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−7)は、数平均分子量14,000、ガラス転移温度−18℃、水酸基価8.0mgKOH/g、であった。
【0070】
<合成例8>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が128.8g/mol、数平均分子量が1,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.83となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―8)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−8)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−22℃、水酸基価9.4mgKOH/g、であった。
【0071】
<合成例9>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が128.8g/mol、数平均分子量が1,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C)と、低分子ジオール(E)である3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオール(E)のモル比が90:10となるように、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%の、前記ポリカーボネートポリオール(C)と前記低分子ジオール(E)との混合溶液を得た。
前記混合溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.84となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A―9)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A−9)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−16℃、水酸基価9.5mgKOH/g、であった。
【0072】
<合成例10>
NCO/OH比を0.4とした以外は、前記合成例8と同様にして、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―10)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−10)は、数平均分子量3,500、ガラス転移温度−29℃、水酸基価32.1mgKOH/g、であった。
【0073】
<合成例11>
NCO/OH比を0.95とした以外は、前記合成例8と同様にして、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―11)溶液を得た。
のポリカーボネートウレタンポリオール(A’−11)は、数平均分子量32,000、ガラス転移温度−3℃、水酸基価3.5mgKOH/g、であった。
【0074】
<合成例12>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が133.5g/mol、数平均分子量が500、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C’)と、低分子ジオール(E)である3−メチル−1,5−ペンタンジオールとを、前記ポリカーボネートポリオール(C’)と前記低分子ジオール(E)のモル比が50:50となるように、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%の、前記ポリカーボネートポリオール(C’)と前記低分子ジオール(E)との混合溶液を得た。
前記混合溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.92となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―12)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−12)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度15℃、水酸基価9.3mgKOH/g、であった。
【0075】
<合成例13>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が125.5g/mol、数平均分子量が4,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C’)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C’)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C’)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.75となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―13)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−13)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−44℃、水酸基価9.4mgKOH/g、であった。
【0076】
<合成例14>
ジオール成分のモル比が3−メチル−1,5−ペンタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=90:10、カーボネート基当量が149.1g/mol、数平均分子量が1,000、25℃で液状のポリカーボネートポリオール(C’)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C’)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C’)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.84となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―14)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−14)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−22℃、水酸基価9.3mgKOH/g、であった。
【0077】
<合成例15>
ジオール成分のモル比が1,4−ブタンジオール:1,6−ヘキサンジオール=70:30、カーボネート基当量が130.0g/mol、数平均分子量が1,000、25℃で固形のポリカーボネートポリオール(C’)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C’)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C’)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.82となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―15)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−15)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−21℃、水酸基価9.3mgKOH/g、であった。
【0078】
<合成例16>
ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールだけを用いた、カーボネート基当量が149.1g/mol、数平均分子量が1000、25℃で固体のポリカーボネートポリオール(C’)を、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%のポリカーボネートポリオール(C’)溶液を得た。
前記ポリカーボネートポリオール(C’)溶液に、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.83となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリカーボネートウレタンポリオール(A’―16)溶液を得た。
このポリカーボネートウレタンポリオール(A’−16)は、数平均分子量14,000、ガラス転移温度6℃、水酸基価8mgKOH/g、であった。
【0079】
<合成例17>
3−メチル−1,5−ペンタンジオール:アジピン酸=50:50(モル)で反応させた、数平均分子量が1,000、25℃で液状のポリエステルポリオールを、窒素気流下で攪拌しながら反応釜の酢酸エチル中に溶解させ固形分80%とし、ジイソシアネート(D)としてイソホロンジイソシアネートをNCO/OH比が0.82となるように添加し、70℃で5時間反応させた。
IR測定によりNCOピークがないことを確認した後、酢酸エチルを添加して、固形分50重量%のポリエステルウレタンポリオール(A’―16)溶液を得た。
このポリエステルウレタンポリオール(A’−16)は、数平均分子量12,000、ガラス転移温度−18℃、水酸基価9.4mgKOH/g、であった。
【0080】
ポリイソシアネート(B)の調製例
<調製例1>
ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量5.19mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものをポリイソシアネート(B−1)溶液とする。
<調製例2>
イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体(イソシアネート基の官能基量3.75mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものをポリイソシアネート(B−2)溶液とする。
<調製例3>
イソホロンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量4.08mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)を酢酸エチルで希釈して固形分50%の樹脂溶液としたものをポリイソシアネート(B−3)溶液とする。
【0081】
<実施例1〜9>、<比較例1〜11>
表2に示すNCO/OH比となるように、各種ポリカーボネートウレタンポリオール(A)溶液とポリイソシアネート(B)溶液を配合し、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)とポリイソシアネート(B)の合計100重量部に対して、グリシジル基含有シランカップリング剤(「KBM−403」信越化学(株)製)を1重量部及びジラウリン酸ジオクチル錫(「ネオスタン U−810」、日東化成(株)製)を0.01重量部配合し、酢酸エチルで希釈して固形分30%に調整した溶液を接着剤溶液とする。
【0082】
【表1】

【0083】
表1中に示す略語は以下の通り。
<ポリカーボネートジオール(C)、低分子ジオール(E)>
・1,3−PD:1,3−プロパンジオール(分子量76)
・1,4−BD:1,4−ブタンジオール(分子量90)
・1,5−PD:1,5−ペンタンジオール(分子量104)
・1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール(分子量118)
・MPD:3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分子量118)
・AA:アジピン酸
【0084】
<ジイソシアネート(D)>
・XDI:キシリレンジイソシアネート(イソシアネート基の官能基量10.64mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数2)
・H6XDI:水素添加キシリレンジイソシアネート(イソシアネート基の官能基量10mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数2)
・IPDI:イソホロンジイソシアネート(イソシアネート基の官能基量9mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数2)
【0085】
<エージング前後の接着力試験>
(PETフィルム/接着剤層/PETフィルムの作製)
厚さ50μmの延伸ポリエステルフィルム(東レ製:商品名 X10S)のコロナ処理面側に実施例および比較例の各接着剤を塗布し、80℃、1分間乾燥し、乾燥時接着剤量:4〜5g/m2の接着剤層をそれぞれ形成し、PETフィルム上の前記接着剤層に厚さ50μmの延伸ポリエステルフィルム(東レ製:商品名 X10S)のコロナ処理面側を重ね合わせ、60℃に設定した2つのロール間を通過させることでラミネートした。
その後、得られたPETフィルム/接着剤層/PETフィルムの積層体の一部を、40℃、40%RHの環境下で、5日間、エージングし、接着剤層を十分に硬化させた。
エージング前後の前記積層体を、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。PETフィルム間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0086】
<耐湿熱性試験後の接着力試験>
(PETフィルム/接着剤層/PETフィルムの作製)
前記のようにして、40℃、40%RHの環境下で、5日間、エージングし、接着剤層を十分に硬化させたPETフィルム/接着剤層/PETフィルムの積層体を、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、85℃、湿度85%の環境下で1000時間、2000時間、3000時間静置した。
その後、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、ASTM−D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度300mm/分でT型剥離試験をおこなった。PETフィルム間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0087】
<評価基準>
[エージング前の接着力試験]
◎ 実用上優れる:3N/15mm以上
○ 実用域:2〜3N/15mm
△ 実用下限:1〜2N/15mm
× 実用不可:1N/15mm未満
[エージング後の試験、耐湿熱性試験後の接着力試験]
◎ 実用上優れる:5N/15mm以上
○ 実用域:4〜5N/15mm
△ 実用下限:2〜4N/15mm
× 実用不可:2N/15mm未満
【0088】
【表2】

【0089】
表2中に示す略語は以下の通り。
<ポリイソシアネート(B)>
・HDIトリマー:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量5.19mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)
・IPDI−TMP:イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体(イソシアネート基の官能基量3.75mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)
・IPDIトリマー:イソホロンジイソシアネートの三量体(イソシアネート基の官能基量4.08mmol/g、1分子あたりの平均イソシアネート基数3)
<添加剤>
・KBM−403:信越化学株式会社製 グリシジル基含有シランカップリング剤 KBM−403
・U−810:日東化成株式会社製 ジラウリン酸ジオクチル錫 ネオスタン U−810
【0090】
表2に示すように、比較例1は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)を使用していないため、接着力が大幅に悪化し基材のデラミネートが生じた。
比較例2は、ポリイソシアネート(B)を使用していないため、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)との反応による架橋構造が形成されていないため、耐湿熱性が不十分であり、耐湿熱性試験後の接着力が大幅に悪化した。
比較例3は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の数平均分子量が3,500であり、5,000未満であることから、エージング工程前の接着剤の凝集力が不足し、エージング工程前の接着力が大きく悪化した。
【0091】
比較例4は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の数平均分子量が32,000であり、25,000より大きいので、PETフィルムへの濡れ性が不足し、エージング前後で十分な接着力を得ることができなかった。また、耐湿熱性試験後においては、耐湿熱性試験による接着力低下は見られなかったが、元々の接着力が低いため、使用できるレベルには不十分であった。
【0092】
比較例5は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)のガラス転移温度が15℃であり、10℃より高いため、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)基材への濡れ性が不足し、エージング前後の接着力が大幅に悪化した。また、耐湿熱性試験後の接着力がエージング後の接着力よりも高くなっているのは、85℃という高温状態でポリカーボネートウレタンポリオール(A)の基材への濡れ性が向上したためであると考えられる。
【0093】
比較例6は、ガラス転移温度が−44℃であり、−40℃より低いので、接着剤の凝集力が不足し、エージング工程前の接着強度が悪化した。また、エージング後も元々も接着剤の凝集力が不足しているため、十分な接着力が得られなかった。
【0094】
比較例7は、ポリカーボネートポリオール(C)のジオール成分の90モル%が3−メチル−1,5−ペンタンジオールというアルキル側鎖を有するジオールを使用しており、直鎖状のジオールが10モル%しか使用されていないため、カーボネート基がアルキル側鎖の立体障害によりPET基材との間の相互作用を阻害され、高い接着力が得られなかった。
【0095】
比較例8は、ポリカーボネートポリオール(C)が25℃で固形であるため、塗工時のPET基材への濡れ性が不十分であり、エージング工程前の接着力が悪化し、測定場所により接着力にムラが生じた。エージング工程後は濡れ性が改善し、接着力の向上が見られた。
【0096】
比較例9は、ポリイソシアネート(B)の配合量がNCO/OH=15と過剰であるため、塗工する前にポリカーボネートウレタンポリオール(A)との反応が進み、ゲル物が発生したため塗工することができなかった。
【0097】
比較例10は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)として、ポリエステルウレタンポリオールを使用しているため、エージング前後の接着力は高い値を示したのに対し、耐湿熱性試験後の接着力が大幅に悪化した。これはエステル結合の耐加水分解性が低いことに起因していると考えられる。
【0098】
一方、表2に示す実施例1〜9は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)が、数平均分子量が5,000〜25,000、ガラス転移温度が−40〜10℃であり、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)が、直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位を80〜100モル%含み、25℃で液状であるポリカーボネートポリオール(C)とジイソシアネート(D)から合成され、
更にポリイソシアネート(B)がポリイソシアネート(B)のイソシアネート基/前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の水酸基=0.5〜10/1(モル比)の範囲で含有しており、エージング前の接着力、エージング後の接着力、耐湿熱性試験後の接着力をすべてバランスよく満たしていた。
【0099】
中でも、表2に示す実施例8、9は、すべての試験で高い性能を示した。
実施例8、9の接着剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の数平均分子量が8,000〜15,000という好適範囲であったため、好適範囲外の実施例1、2と比較すると、凝集力およびPETフィルムとの濡れ性が良好であり高い接着強度を示した。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)のガラス転移温度が−30〜0℃という好適範囲であったため、好適範囲外の実施例3、4と比較すると、凝集力およびPETフィルムとの濡れ性が良好であり高い接着強度を示した。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)で使用しているポリカーボネートジオール(C)のカーボネート基当量が110〜140という好適範囲であったため、好適範囲外の実施例5と比較すると、カーボネート基の密度が高く、PETフィルムとの相互作用が強固であるため高い接着強度を示した。
また、実施例8、9の接着剤は、ポリイソシアネート(B)の配合量が、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基/前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)の水酸基=1〜4/1(モル比)の好適範囲であったため、好適範囲外の実施例6、7と比較すると、凝集力のバランスが優れ、高い接着強度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の接着剤を用いれば、耐久性に優れる太陽電池裏面保護シートを形成することができる。

たとえば、JIS C 8917(結晶系太陽電池モジュールの環境試験方法及び耐久試験方法)には、耐湿性試験B−2として、85℃、85%RH下で1000時間の耐久性試験が課せられており、特に過酷な試験方法として知られている。今回は85℃、85%RH雰囲気下で3000時間まで耐湿熱性試験を行っており、この耐湿熱性試験に耐えることは、本接着剤がより過酷な長期の耐湿性試験に十分耐え得ることを示唆する。
本発明の接着剤を用いてなる太陽電池裏面保護シートは、このような長期耐湿熱試験において、十分な層間接着強度(ラミネート強度)を保持し、シート層間にデラミネーションを発生させないことにより、太陽電池素子の保護、発電効率の維持、さらに太陽電池の寿命延長に寄与することができる。太陽電池の寿命延長は、太陽電池システムの普及につながり、化石燃料以外でのエネルギー確保の観点から、環境保全に寄与することにもなる。
【0101】
本発明に係る接着剤は、太陽電池裏面保護シートの他、長期の耐湿熱性の要求される建造物など屋外産業用途向け多層積層材(防壁剤、屋根材、窓材、屋外フローリング材、証明保護材、自動車部材等)用の接着剤として好適である。
さらに、その他の分野、例えば、プラスチックレンズやプリズム、光ファイバーなどの光学部材、フレキシブルプリント配線盤用ソルダーレジスト、多層プリント配線盤用層間絶縁膜などの電気・電子部材、リチウムイオンの電池パックの包装フィルム、その他紙やプラスチックフィルム全般等のコーティング剤、食品パッケージ用の接着剤などとしても幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 太陽電池セル
2 太陽電池用表面封止シート
3 受光面側封止材層
4 非受光面側封止材層
5 太陽電池用裏面保護シート
11 第1シート状部材
12 第2シート状部材
13 第3シート状部材
14 第4シート状部材
21 プラスチックフィルム
22 蒸着層
23 金属箔
24 コーティング層
31 非金属酸化物層
51 第1接着剤層
52 第2接着剤層
53 第3接着剤層
100 太陽電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基/ポリカーボネートウレタンポリオール(A)中の水酸基=0.5〜10/1(モル比)の範囲で、ポリカーボネートウレタンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含有する接着剤組成物であって、
前記ポリカーボネートウレタンポリオール(A)が、直鎖状アルキレンジオールからなるジオール単位を80〜100モル%含み、25℃で液状であるポリカーボネートポリオール(C)とジイソシアネート(D)とを構成成分とする、数平均分子量5,000〜25,000、ガラス転移温度が−40〜10℃のポリカーボネートウレタンポリオール(A)である、接着剤組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートポリオール(C)1分子あたりのカーボネート基当量が100〜145g/molであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
太陽電池に設けられている太陽電池素子の太陽光の入射面とは反対側の面を保護する太陽電池用裏面保護シートであって、
2つ以上のシート状部材の積層体を備え、
前記積層体を構成する前記シート状部材間の接着の少なくとも一部に、請求項1又は2記載の接着剤組成物から形成された硬化処理済み接着剤層が用いられている太陽電池用裏面保護シート。
【請求項4】
前記積層体を構成する前記シート状部材の少なくとも1つが水蒸気バリア層を有し、
前記水蒸気バリア層は、金属箔、金属酸化物層付きプラスチックフィルム、及び非金属酸化物層付きプラスチックフィルムからなる群より選ばれることを特徴とする請求項3記載の太陽電池用裏面保護シート。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate


【公開番号】特開2013−112696(P2013−112696A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257584(P2011−257584)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】