説明

接着剤組成物及び接着性ドライフィルム

【解決手段】(A)式(1)の繰り返し単位を有するエポキシ基含有高分子化合物、


[0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0、X及びYは2価の有機基を表す。](B)溶剤を含有する接着剤組成物。
【効果】露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性も高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物、及び接着性ドライフィルムに関するものである。
【0002】
特に、接着性、耐熱性、薬品耐性、絶縁性、及び、高透過率性を有し、保護ガラスと半導体素子、特にCCDやCMOS等の固体撮像素子シリコン基板と保護ガラスの貼り合わせ用途に好適に用いられる接着剤組成物及び接着性ドライフィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、CCD,CMOSイメージセンサーのパッケージ構造は、センサー部分を水分やほこり等の異物から守るため、ディスペンス等の印刷法によって塗布される液状、フィルム状の光硬化型感光性樹脂組成物によって保護ガラスと接着するシステムをとっている。このフォトリソグラフィー法による接着剤の成形は、まず、シリコン基板又はガラス基板上に、感光性接着剤組成物を塗布又は感光性接着剤フィルムを積層し、感光性接着層を形成する。次に該感光性接着剤層を露光、ベーク、現像した後、保護ガラス基板(シリコン基板)を密着させ、加熱、加圧により接着剤層と保護ガラスとを接着する。その後、熱硬化、ダイシングすることにより、中空構造型パッケージが得られる。このような感光性樹脂組成物としては、アクリル樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を有する感光性樹脂組成物(特許文献1:特開2002−351070号公報)、感光性の変性エポキシ樹脂、光重合開始剤、希釈溶剤、及び、熱硬化性化合物を有する感光性樹脂組成物(特許文献2:特開2003−177528号公報)等が開示されている。
また、単なる熱硬化性の接着剤としては、ポリイミド樹脂、硬化性化合物、及び、シランカップリング剤を含む接着性ドライフィルム(特許文献3:特開2003−253220号公報)も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−351070号公報
【特許文献2】特開2003−177528号公報
【特許文献3】特開2003−253220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載の感光性樹脂組成物では、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が不十分であり、かつ露光、ベーク、現像の3工程が製造に必須となるため、高価で生産性が低い欠点を有する。また、特許文献3記載の熱硬化性の接着剤においても、接着性や、耐熱性、耐光性等の特性が不十分である。
更に最近では、貫通電極(TSV)を用いた3次元実装技術がCMOSイメージセンサー製造の主流となりつつあり、この3次元実装では保護ガラスと接着、熱硬化後のシリコン基板にバック研磨を行い、シリコン基板を100μm以下にまで薄膜化することが必須となる。この際、バック研磨後の接着基板が大きく反ることが新たに問題となっており、特に8インチ以上の大口径ウエハーで顕著となっている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため、製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性が高く、更に3次元実装製造で必要とされるバック研磨後の接着基板の反りを抑えることが可能なエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物、及び接着性ドライフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)のエポキシ基含有化合物を用いた接着剤組成物、及び接着性ドライフィルムがCCD,CMOSイメージセンサー製造用接着剤として優れることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物、及び接着性ドライフィルムを提供する。
請求項1:
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有高分子化合物、
【化1】


[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数であり、a、b、c及びdは全繰り返し単位数に占める各繰り返し単位の割合を示し、0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(3)で示される2価の有機基であり、式(3)で示される2価の有機基を少なくとも1個有する。
【化2】


(式中、Zは、
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。R5及びR6は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1及び2のいずれかである。)
【化4】


(式中、Vは、
【化5】


のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R7及びR8は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1及び2のいずれかである。)]
(B)溶剤
を含有することを特徴とする接着剤組成物。
請求項2:
上記一般式(1)において、0.05≦c/(a+b+c+d)≦0.5であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
請求項3:
上記一般式(1)において、0.05≦d/(a+b+c+d)≦0.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
請求項4:
更に、(C)酸無水物を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の接着剤組成物。
請求項5:
(C)酸無水物が下記一般式(4)で示されるものである請求項4記載の接着剤組成物。
【化6】


(式中、R9、R10は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基又はSiO含有アルキル基で、相互に異なっていても同一でもよい。更に、R9、R10が結合してこれらが結合する炭素原子と共に3員環〜7員環の環構造を形成してもよい。あるいは、上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のR9相互及びR10相互がそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数4〜12の環を形成するか、又はR9相互又はR10相互がそれぞれ直接又はアルキレン基を介して結合する(但し、該アルキレン基は酸素原子を介在してもよく、シロキサン結合を介在してもよい)か、又は上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のそれぞれのR9、R10が結合して形成された上記3員環〜7員環の環構造のそれぞれの1個の炭素原子相互が結合してもよい。)
請求項6:
(C)酸無水物が、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、及び下記式で示される酸無水物から選ばれるものである請求項5記載の接着剤組成物。
【化7】


請求項7:
更に、(D)酸化防止剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の接着剤組成物。
請求項8:
更に、(E)エポキシ基含有架橋剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の接着剤組成物。
請求項9:
更に、(F)塩基性化合物又は塩基発生剤を含有する請求項1〜8のいずれか1項記載の接着剤組成物。
請求項10:
CCD又はCMOSイメージセンサー保護用である請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物。
請求項11:
請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物の接着性樹脂層を支持フィルム上に形成してなる接着性ドライフィルム。
請求項12:
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物層及び保護ガラス基板を順次積層させた積層物を含む固体撮像デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物及び接着性ドライフィルムを使用することで、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性も高く、更に3次元実装製造で必要とされるバック研磨後の接着基板の反りを抑えることが可能で、CCD,CMOSイメージセンサー製造に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例における密着性測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ基含有高分子化合物は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が3,000〜500,000の高分子化合物である。
【化8】

【0012】
式中、R1〜R4は同一でも異なってもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0013】
また、後述する接着性、フィルム製造性の観点から、mは1〜100、好ましくは1〜80の整数である。また、接着性、接合ウエハーの反り量、信頼性の観点から、a、b、c、dは0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0であり、好ましくは0.1≦(c+d)/(a+b+c+d)≦0.5、更に好ましくは0.15≦(c+d)/(a+b+c+d)≦0.25である。この場合、0.05≦c/(a+b+c+d)≦0.4、特に0.1≦c/(a+b+c+d)≦0.15、0.05≦d/(a+b+c+d)≦0.4、特に0.2≦d/(a+b+c+d)≦0.25であることが好ましい。またa、bは0.4≦a/(a+b+c+d)≦0.9、0.4≦b/(a+b+c+d)≦0.9であることが好ましい。なお、a+b+c+d=1である。
【0014】
更に、Xは下記一般式(2)、Yは下記一般式(3)で示されるフェノール性水酸基を有する2価の芳香族基より選ばれるが、本発明の高分子化合物は、式(3)に示される2価の有機基を少なくとも1個有する。
【化9】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1より選ばれる。また、R5、R6は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1、2のいずれかである。)
【0015】
5、R6の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
【化10】


のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1より選ばれる。また、R7
8は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、2のいずれかである。)
7、R8の具体例としては、R5、R6と同様なものが挙げられる。
【0017】
本発明のシルフェニレン骨格含有高分子化合物の重量平均分子量は、これを用いた光硬化性樹脂組成物の相溶性及び光硬化性、かつ、上記組成物からなる硬化物の機械的特性の観点から、3,000〜500,000、好ましくは5,000〜300,000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0018】
本発明のシルフェニレン骨格を有する高分子化合物は、下記式(5)のハイドロジェンシルフェニレン(1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)
【化11】

【0019】
と、あるいはこのハイドロジェンシルフェニレン及び下記一般式(6)のジヒドロオルガノシロキサン
【化12】


(式中、R3、R4及びmは、上記と同一である。)
と、下記一般式(7)で示されるジアリル基を有する特定のエポキシ基含有化合物、
【化13】

(式中、V、R7、R8、p、hは、上記と同一である。)
【0020】
更に、必要に応じて下記一般式(8)で示されるジアリル基を有する特定のフェノール化合物
【化14】

(式中、Z、R5、R6、n、kは、上記と同一である。)
とを、触媒の存在下に所謂「ハイドロシリレーション」重合反応を行うことにより、製造することができる。
【0021】
なお、本発明の式(1)で示される繰り返し単位を有するエポキシ基含有高分子化合物の重量平均分子量は、上記式(7)及び上記式(8)で表される化合物のアリル基総数と上記式(5)で示されるハイドロジェンシルフェニレン、あるいは、このハイドロジェンシルフェニレンと上記式(6)で示されるジヒドロオルガノシロキサンのヒドロシリル基総数との比(アリル基総数/ヒドロシリル基総数)を調整することにより容易に制御することが可能である。あるいは、上記ジアリルフェノール化合物とハイドロジェンシルフェニレン及びジヒドロオルガノシロキサンの重合時に、例えば、O−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより、上記重量平均分子量は容易に制御することが可能である。
【0022】
上記重合反応において、触媒としては、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・xH2O、H2PtCl6・xH2O、NaHPtCl6・xH2O、KHPtCl6・xH2O、Na2PtCl6・xH2O、K2PtCl4・xH2O、PtCl4・xH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・xH2O(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、米国特許第3,775,452号明細書);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(所謂ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体等が挙げられる。その使用量は触媒量であり、通常白金族金属として、反応重合物の総量に対して、0.001〜0.1質量%であることが好ましい。
【0023】
上記重合反応においては、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。
【0024】
上記重合条件として、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能という観点から、重合温度は例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。
【0025】
また、重合時間は、重合物の種類及び量にもよるが、重合系中に湿気の介入を防ぐため、およそ0.5〜100時間、特に0.5〜30時間以内で終了するのが好ましい。このようにして重合反応を終了後、溶剤を使用した場合はこれを留去することにより、本発明の式(1)で示されるエポキシ基を含有する高分子化合物を得ることができる。
【0026】
次に、本発明のエポキシ基含有シリコーン高分子化合物を用いた接着剤組成物について説明する。接着剤組成物は、(A)上記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するエポキシ基含有シリコーン高分子化合物及び(B)溶剤を必須成分とし、好ましくは(C)酸無水物、(D)酸化防止剤、(E)エポキシ基含有架橋剤、更に、必要に応じて(F)塩基性化合物又は塩基発生剤を含有するものである。
【0027】
(B)成分の溶剤としては、上述した高分子化合物、酸無水物、酸化防止剤、エポキシ基含有架橋剤、塩基性化合物、塩基発生剤等の成分が溶解可能であることが必要である。
【0028】
例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコール−モノ−tert−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0029】
これらの中でも特に、上述した高分子化合物の溶解性が最も優れている、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン又はそれらの混合溶剤が好ましい。
【0030】
上記溶剤の配合量は、接着剤組成物の相溶性、粘度及び塗布性の観点から、(A)、(C)、(D)、(E)、(F)成分の全固形分100質量部に対して50〜2,000質量部、特に100〜l,000質量部が好ましい。
【0031】
(C)酸無水物は高分子化合物中のエポキシ官能基とタンデム的に熱架橋反応を起こし、硬化膜の形成を容易になし得るための成分であると共に、硬化膜の強度を更に上げるものである。そのような酸無水物としては、カルボン酸系酸無水物で、下記一般式(4)で示される化合物が好ましい。
【0032】
【化15】


(式中、R9、R10は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル基又はSiO含有アルキル基で、相互に異なっていても同一でもよい。更に、R9、R10が結合してこれらが結合する炭素原子と共に3員環〜7員環の環構造を形成してもよい。あるいは、上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のR9相互及びR10相互がそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数4〜12の環を形成するか、又はR9相互又はR10相互がそれぞれ直接又はアルキレン基を介して結合する(但し、該アルキレン基は酸素原子を介在してもよく、シロキサン結合を介在してもよい)か、又は上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のそれぞれのR9、R10が結合して形成された上記3員環〜7員環の環構造のそれぞれの1個の炭素原子相互が結合してもよい。)
【0033】
具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、及び下記式で示される酸無水物が挙げられる。
【0034】
【化16】

【0035】
本発明の酸無水物の配合量は、高分子化合物中のエポキシ基の割合及び熱硬化時の硬化性の観点から、上記エポキシ基含有シリコーン高分子化合物100質量部に対して0.5〜50質量部、特に1〜30質量部が好ましい。
【0036】
(D)酸化防止剤は、硬化膜の耐熱性、耐光性等の特性向上、特に膜の着色による透過率の低下を防止するための成分であり、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的にはBASF社製のIrganox1330、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、CHIBASSORB119FL、ADEKA社製のAdekastab AO−60等が例示される。下記に構造式を示す。
【0037】
【化17】

【0038】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、具体的にはBASF社製のChimassorb 2020 FDL、Chimassorb 944FDL、Chimassorb119FL等が例示される。
また、他の酸化防止剤として、イオウ系耐熱安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系光安定剤等を酸化防止剤として配合してもよい。
酸化防止剤の配合量は、上記エポキシ基含有シリコーン高分子化合物100質量部に対して0.1〜10質量部、特に1〜3質量部が好ましく、2種又は3種以上を混合して配合してもよい。
【0039】
(E)エポキシ基含有架橋剤は、酸無水物と高分子化合物中のエポキシ官能基と熱架橋反応の補助的に促進させるための成分であり、エポキシ基の2官能、3官能、4官能以上の多官能架橋剤が用いられ、ビスフェノール型(A型、F型)、ノボラック型、クレゾール型、ビフェニル型、ビフェニルアラルキル型、アニリン型等のエポキシ基含有架橋剤が使用可能である。
更に、シリコーン系、アルキル基系を含む架橋剤も使用可能である。例えば、日本化薬社製のEOCN−1020、EOCN−102S、XD−1000、NC−2000−L、EPPN−201、GAN、NC6000等が挙げられ、具体例を下記のものを例示できる。なお、下記式においてMeはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0040】
【化18】

【0041】
【化19】

【0042】
【化20】

【0043】
エポキシ基含有架橋剤の配合量は、上記エポキシ基含有シリコーン高分子化合物100質量部に対して0.1〜30質量部、特に1〜20質量部が好ましく、2種又は3種以上を混合して配合してもよい。
【0044】
更に、本発明では必要に応じて、塩基性化合物又は塩基発生剤を(F)成分として添加することができる。この塩基性化合物としては、高分子化合物中のエポキシ官能基と組成物中に添加される酸無水物が熱架橋反応を起こす触媒として配合される。本塩基性化合物の働きにより、硬化膜形成に必要な硬化温度を制御することが可能となる。
【0045】
このような塩基発生剤としては、和光純薬工業(株)製のWPBG−015、WPBG−018、WPBG−034、WPBG−057、サンアプロ(株)製のU−CAT 5002、U−CAT 881、U−CAT 3503N等が挙げられる。
【0046】
【化21】

【0047】
次に、塩基性化合物としては、まず、ピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが代表例として例示されるが、更に第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体、更に、下記一般式(11)で示される化合物等の通常アミンも挙げられる。
N(Z)n(Y)3-n (11)
【0048】
式中、n=1、2又は3である。側鎖Zは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(12)〜(14)で表されるいずれかの置換基である。側鎖Yは同一でも異なっていてもよく、水素原子、又は直鎖状、分岐状もしくは環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル基もしくはヒドロキシル基を含んでもよい。また、側鎖Z同士が結合して環を形成してもよい。
【0049】
【化22】

【0050】
ここで、R300、R302、R305は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R301、R304は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。R303は単結合又は炭素数1〜4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基であり、R306は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。
【0051】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0052】
第二級の脂肪族アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0053】
第三級の脂肪族アミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0054】
また、混成アミン類としては、例えば、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。
【0055】
芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えば、アニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えば、オキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えば、ピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、ピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1−メチル−2−ピリジン、4−ピロリジノピリジン、1−メチル−4−フェニルピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えば、キノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0056】
カルボキシル基を有する含窒素化合物としては、例えば、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えば、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン等)等が例示される。
【0057】
スルホニル基を有する含窒素化合物としては、3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示される。
【0058】
ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。
【0059】
アミド誘導体としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。
イミド誘導体としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0060】
上記一般式(11)で表される化合物としては、トリス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2−(1−エトキシプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示できるが、これらに制限されない。
【0061】
なお、上記塩基発生剤、塩基性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は硬化性の観点から、上記エポキシ基含有シリコーン高分子化合物100質量部に対して0〜5質量部、特に0.01〜0.5質量部が好ましい。
【0062】
その他、本発明の接着剤組成物には上記各成分以外に、更に添加成分を配合してもよい。そのような添加成分としては、例えば塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0063】
これらは、市販されているものを用いることができ、例えば、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」及び「S−145」(いずれも旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−4031」及び「DS−451」(いずれもダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(大日本インキ工業(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)及び「X−70−093」(信越化学工業(株)製)である。
【0064】
本発明の接着剤組成物の調製は通常の方法で行われるが、上記各成分等を撹拌混合し、その後必要に応じて固形分をフィルター等により濾過することにより、本発明の接着剤組成物を調製することができる。
このようにして調製された本発明の接着剤組成物は、例えば、CCD,CMOSイメージセンサー製造用接着剤として好適に用いられる。
【0065】
次に、上記接着剤組成物を用いた本発明のCCD,CMOSイメージセンサー製造時のシリコンウエハーとガラス基板の接合方法について説明する。
まず、上記接着剤組成物を基板上に塗布する。上記基板としては、例えば固体撮像素子シリコンウエハー等が挙げられる。
【0066】
塗布法としては、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。例えば、ディップ法、スピンコート法、ロールコート法等の手法により塗布することができる。塗布量は目的に応じ適宜選択することができるが、膜厚0.1〜100μm、好ましくは1〜100μm、更に好ましくは5〜60μmとすることが好ましい。更に、後述するように予めこの組成物のドライフィルムを形成しておき、基板と貼り合わせることも可能である。
【0067】
ここで、保護ガラス基板との接合時のアウトガス軽減のために、必要に応じて予備加熱(プリベーク)により溶剤等を予め揮発させておいてもよい。予備加熱は、例えば40〜140℃で1分〜1時間程度行うことができる。
【0068】
このようにして得られた接着剤組成物付のシリコン基板(固体撮像素子シリコンウエハー)を接合装置を用いて、保護ガラス基板と仮接合を行うことができる。仮接合の条件としては、接合温度は好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃、接合前保持時間は好ましくは0〜10min,より好ましくは1〜5min、接合時減圧は好ましくは100mbar以下、より好ましく5×10-3mbar以下の条件である。更に、接合圧力は0.1〜50kN、より好ましくは0.5〜20kNで仮接合を行うことができる。更に仮接合基板を熱硬化させ最終的な接合基板が得られる。熱硬化温度としては、好ましくは160〜220℃、より好ましくは180〜200℃、硬化時間は好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜2時間で行うことができる。
【0069】
加えて、本発明の接着性ドライフィルムの製造は通常の方法で行われるが、更に詳しく説明する。
まず、本発明の接着性ドライフィルムにおいて使用される支持フィルムは、単一でも複数の重合体フィルムを積層した多層フィルムでもよい。材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムがあるが、適度の可とう性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらのフィルムについては、コロナ処理や剥離剤が塗布されたような各種処理が行われたものでもよい。これらは市販品を使用することができ、例えばセラピールWZ(RX)、セラピールBX8(R)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7302、E7304(以上、東洋紡績(株)製)、ピューレックスG31、ピューレックスG71T1(以上、帝人デュポンフィルム(株)製)、PET38×1−A3、PET38×1−V8、PET38×1−X08(以上、ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0070】
本発明の接着性ドライフィルムにおいて使用される保護フィルムは、上述した支持フィルムと同様のものを用いることができるが、適度の可とう性を有するポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンが好ましい。これらは市販品を使用することができ、ポリエチレンテレフタレートとしては既に例示したもの、ポリエチレンとしては、例えばGF−8(タマポリ(株)製)、PEフィルム0タイプ(ニッパ(株)製)が挙げられる。
【0071】
上記支持フィルム及び保護フィルムの厚みは、硬化性ドライフィルム製造の安定性及び巻き芯に対する巻き癖、所謂カール防止の観点から、いずれも好ましくは10〜100μm、特に好ましくは25〜50μmである。
【0072】
次に、本発明における接着性ドライフィルムの製造方法について説明する。上記接着性ドライフィルムの製造装置は、一般的に粘着剤製品を製造するためのフィルムコーターが使用できる。上記フィルムコーターとしては、例えば、コンマコーター、コンマリバースコーター、マルチコーター、ダイコーター、リップコーター、リップリバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、3本ボトムリバースコーター、4本ボトムリバースコーター等が挙げられる。
【0073】
支持フィルムを上記フィルムコーターの巻出軸から巻き出し、上記フィルムコーターのコーターヘッドを通過させるとき、上記支持フィルム上に本発明の接着剤組成物を所定の厚み、特に1〜100μm、好ましくは5〜60μmで塗布した後、所定の温度と所定の時間で熱風循環オーブンを通過させ、上記支持フィルム上で乾燥させた接着性樹脂層を上記フィルムコーターの別の巻出軸から巻き出された保護フィルムと共に、所定の圧力でラミネートロールを通過させて上記支持フィルム上の上記接着性樹脂層と貼り合わせた後、上記フィルムコーターの巻取軸に巻き取ることによって製造される。この場合、上記温度としては25〜150℃が好ましく、上記時間としては1〜100分間が好ましく、上記圧力としては0.01〜5MPaが好ましい。
【0074】
更に、上記接着性ドライフィルムを、フィルム貼り付け装置を用いて基板に密着させる。上記基板としては、例えばシリコンウエハー、固体撮像素子シリコンウエハー、プラスチック基板、セラミック基板及び各種金属製回路基板等が挙げられる。上記フィルム貼り付け装置としては、真空ラミネーターが好ましい。上記固体撮像素子シリコンウエハー等を上記フィルム貼り付け装置に取り付け、上記接着性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、露出した上記接着性樹脂層を、所定真空度の真空チャンバー内において、所定の圧力の貼り付けロールを用いて、所定の温度のテーブル上で上記基板に密着させる。なお、上記温度としては60〜120℃が好ましく、上記圧力としては0〜5.0MPaが好ましく、上記真空度としては50〜500Paが好ましい。上記密着後、接着性ドライフィルム付のシリコン基板は(固体撮像素子シリコンウエハー)は、接着剤組成物と同様に、予備加熱、仮接合、熱硬化を行って最終的な接合基板を得ることができる。更に、該接合基板上に保護ガラス基板を形成させることができる。
従って、シリコンウエハー,固体撮像素子シリコンウエハー,プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、本発明に係る接着剤組成物層を形成し、その上に保護ガラス基板を配置した積層物を含み、CCDやCMOSに用いられる固体撮像デバイスを得ることができる。なお、このデバイスの製造に当っては、上記シリコンウエハー等の基板上に接着剤組成物層を形成し、その上に保護ガラス基板を積層するようにしてもよく、あるいは保護ガラス基板上に接着剤組成物層を形成し、その上にシリコンウエハー等の基板を積層するようにしてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。また、下記合成例において使用する化合物(M−1)〜(M−7)の化学構造式を以下に示した。
【化23】

【0076】
[合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)396.9g、化合物(M−4)45.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、78℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを950g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(A−1)を得た。
【0077】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物は、GPC(東ソーHLC−8220)により、一般式(1)の繰り返し単位の構造を有し、GPCによるポリスチレン換算で重量平均分子量62,000であり、式(1)におけるa,b,c,dは原料(M−1)乃至(M−5)の使用量からモル計算して求めた(以下、同様)。具体的には、aは0.594、bは0.351、cは0.061、dは0.039であった。また、X,Yは下記の通りであり、m=1〜40であった。
【0078】
【化24】

【0079】
[合成例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)352.8g、化合物(M−4)90.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、79℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを980g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(A−2)を得た。
【0080】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量64,000であり、式(1)におけるaは0.480、bは0.320、cは0.120、dは0.080であった。また、X,Y,mは合成例1と同様であった。
【0081】
[合成例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)308.7g、化合物(M−4)135.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、80℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを900g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(A−3)を得た。
【0082】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量68,000であり、式(1)におけるaは0.420、bは0.280、cは0.180、dは0.120であった。また、X,Y,mは合成例1と同様であった。
【0083】
[合成例4]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)220.5g、化合物(M−4)225.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、80℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを950g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(A−4)を得た。
【0084】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量75,000であり、式(1)におけるaは0.294、bは0.206、cは0.306、dは0.194であった。また、X,Y,mは合成例1と同様であった。
【0085】
[合成例5]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)352.8g、化合物(M−3)116.1gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、73℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを940g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(A−5)を得た。
【0086】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量55,000であり、式(1)におけるaは0.351、bは0.149、cは0.352、dは0.148であった。
【0087】
[合成例6]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)441.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、78℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で5時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを950g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(B−1)を得た。
【0088】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量51,000であり、式(1)におけるaは0.590、bは0.410、cは0、dは0であった。
【0089】
[合成例7]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)225.0g、化合物(M−2)161.2gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−5)949.6g、化合物(M−6)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温するのを確認後、更に、3時間,90℃まで加温後再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−7)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、75℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で5時間熟成した後、室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン(MIBK)1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。更に、得られた高分子化合物溶液に純水760gを加えて撹拌、静置分液を行い下層の水層を除去した。この分液水洗操作を6回繰り返し、高分子化合物溶液中の微量酸成分を取り除いた。この高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを900g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とする高分子化合物溶液(B−2)を得た。
【0090】
この高分子化合物溶液中の高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量53,000であり、式(1)における(c+d)/(a+b+c+d)は0である。
【0091】
[実施例及び比較例]
上記合成例1〜7で合成した高分子化合物、及び下記表示のC−1、C−2高分子化合物を使用して、表1に記載した組成で、溶剤、酸無水物、酸化防止剤、エポキシ基含有架橋剤、塩基性化合物又は塩基発生剤及びその他添加物等を配合して、その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製0.2μmフィルターで精密濾過を行った接着剤組成物(実施例1〜9、19、21及び比較例1〜4)を得た。
【0092】
更に、接着性ドライフィルムに関しては、フィルムコーターとしてダイコーター、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を用いて、組成物の実施例1〜9、及び、比較例1〜4の組成物を上記支持フィルム上に50μmの塗布厚みで塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより、支持フィルム上に樹脂層を形成した。そして、上記接着性樹脂層の上から、保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(厚さ50μm)を用いて、上記保護フィルムをラミネートロールを用いて圧力1MPaにて貼り合わせて、接着性ドライフィルム(実施例10〜18、20、22、比較例5〜8)を作製した。
【0093】
C−1:アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル−アクリル酸−アクリル酸ヒドロキシエチル=14.0:47.0:35.0:2.5:1.5(Mw=450,000)
C−2:
【化25】

【0094】
エポキシ基含有架橋剤
【化26】

【0095】
【表1】


U−CAT5002:DBUテトラフェニルボレート(サンアプロ製)
WPBG−034:9−アントリルメチル−1−イミダゾリルカルボキシレート(和光純薬製)
【0096】
次いで、8インチシリコンウエハーに、スピンコータを使用して、表1記載の膜厚で各実施例及び比較例の接着剤組成物をコートした。そして、溶剤を除去するため、ホットプレートにより130℃で5分間プリベークを行った。また、8インチシリコンウエハーをフィルム貼り付け装置に取り付け、上記表1記載の膜厚で各実施例及び比較例の接着性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し露出した上記接着性樹脂層を、100Paの真空度の真空チャンバー内において、1MPaの圧力の貼り付けロールを用いて110℃テーブル上で上記基板に密着させた。更に、溶剤を除去するため、ホットプレートにより130℃で5分間プリベークを行った。
【0097】
得られた接着剤組成物、及び接着性ドライフィルム付8インチシリコンウエハーに、接合装置を用いて、接合温度150℃、接合前保持時間は1min,接合時減圧は4×10-3mbar、接合圧力は2kNで仮接合を行った。更に本仮接合基板を200℃、2時間熱硬化させ最終的な接合基板が得られた。
【0098】
次に各評価は以下の方法に従い実施した。
接合性:
仮接合を行い、熱硬化後の8インチウエハー全面を観察、ボイド(未接着部)の発生状況から、全面ボイド発生=×、外周部(エッジ部)のみボイド発生=△、外周部(エッジ部)の50%以下でボイド発生=○、全面ボイド発生せず=◎で評価した。
密着性:
接着剤組成物のコート及び接着性ドライフィルムの貼り付け後、シリコンウエハー基板上にダイサーを用いて2mm×2mmのチップに切断した保護ガラス基板を接合し、熱硬化後の基板を、ボンドテスター(Dage series 4000−PXY:Dage社製)を用いて、ウエハー基板からのチップ保護ガラス基板の剥離時にかかる抵抗力により、密着性を評価した。テスト条件は、テストスピード50.0μm/sec、テスト高さ800μmで行った。図1に密着性測定法を示した。なお、図中1はシリコン(Si)ウエハー基板、2は接合保護ガラス基板(直径2mm×2mm、膜厚500μm)、3はボンドテスターの測定治具、4はその移動方向を示す。得られた数値は5チップ測定の平均値であり、数値が高いほどウエハー基板と保護ガラス基板の密着性が高い。
【0099】
耐熱性:
接着剤組成物及び接着性ドライフィルムの膜厚500μmのガラス基板にスピンコート、又はラミネート後、200℃,2時間の熱硬化をN2雰囲気下で行い、初期の透過率(波長400nm)を測定し、次に空気中下265℃,3分間ホットプレート上で加温し、加温後の透過率(波長400nm)を再度測定し、減衰率(%)=加温後の透過率(波長400nm)/初期の透過率(波長400nm)×100を求めた。
【0100】
耐光性:
接着剤組成物及び接着性ドライフィルムの膜厚500μmのガラス基板にスピンコート、又はラミネート後、200℃,2時間の熱硬化をN2雰囲気下で行い、初期の透過率(波長400nm)を測定し、次に模擬太陽光(波長350nm以下をカット)500万ルクスの照射後の透過率(波長400nm)を再度測定し、減衰率(%)=照射後の透過率(波長400nm)/初期の透過率(波長400nm)×100を求めた。
【0101】
接合ウエハーの反り量:
接着剤組成物及び、接着性ドライフィルムの8インチシリコンウエハー基板と保護ガラス基板の接合熱硬化後の基板を、バック研磨装置を用いてシリコン側を初期725〜100μmまで研磨を実施し、バック研磨後の接合8インチウエハーの反り量を測定した。
上記評価結果を表2に記載した。
【0102】
【表2】

【符号の説明】
【0103】
1 シリコンウエハー基板
2 接合保護ガラス基板
3 ボンドテスターの測定治具
4 測定治具の移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が3,000〜500,000のエポキシ基含有高分子化合物、
【化1】


[式中、R1〜R4は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数であり、a、b、c及びdは全繰り返し単位数に占める各繰り返し単位の割合を示し、0又は正数であり、但し、c及びdが同時に0になることはなく、かつ0<(c+d)/(a+b+c+d)≦1.0である。Xは下記一般式(2)で示される2価の有機基、Yは下記一般式(3)で示される2価の有機基であり、式(3)で示される2価の有機基を少なくとも1個有する。
【化2】


(式中、Zは、
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。R5及びR6は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1及び2のいずれかである。)
【化4】


(式中、Vは、
【化5】


のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R7及びR8は、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1及び2のいずれかである。)]
(B)溶剤
を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記一般式(1)において、0.05≦c/(a+b+c+d)≦0.5であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記一般式(1)において、0.05≦d/(a+b+c+d)≦0.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
更に、(C)酸無水物を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(C)酸無水物が下記一般式(4)で示されるものである請求項4記載の接着剤組成物。
【化6】


(式中、R9、R10は、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜10の置換又は非置換のアルキル基又はSiO含有アルキル基で、相互に異なっていても同一でもよい。更に、R9、R10が結合してこれらが結合する炭素原子と共に3員環〜7員環の環構造を形成してもよい。あるいは、上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のR9相互及びR10相互がそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数4〜12の環を形成するか、又はR9相互又はR10相互がそれぞれ直接又はアルキレン基を介して結合する(但し、該アルキレン基は酸素原子を介在してもよく、シロキサン結合を介在してもよい)か、又は上記一般式(4)で示される2個の酸無水物のそれぞれのR9、R10が結合して形成された上記3員環〜7員環の環構造のそれぞれの1個の炭素原子相互が結合してもよい。)
【請求項6】
(C)酸無水物が、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、及び下記式で示される酸無水物から選ばれるものである請求項5記載の接着剤組成物。
【化7】

【請求項7】
更に、(D)酸化防止剤を含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の接着剤組成物。
【請求項8】
更に、(E)エポキシ基含有架橋剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の接着剤組成物。
【請求項9】
更に、(F)塩基性化合物又は塩基発生剤を含有する請求項1〜8のいずれか1項記載の接着剤組成物。
【請求項10】
CCD又はCMOSイメージセンサー保護用である請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物の接着性樹脂層を支持フィルム上に形成してなる接着性ドライフィルム。
【請求項12】
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、請求項1〜9のいずれか1項記載の接着剤組成物層及び保護ガラス基板を順次積層させた積層物を含む固体撮像デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2012−188650(P2012−188650A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29248(P2012−29248)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】