説明

接着剤組成物

【課題】 光等の活性エネルギー線を通さない部材同士の接着において、高い初期接着力と十分な経時接着力の両方を有する接着剤を提供する。
【解決手段】 分子内に下記一般式(1)で示されるプロペニルエーテル基を含有する化合物(A)、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(B)、及び活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物を使用して、活性エネルギー線を通さない部材の少なくとも片方の部材に該接着剤組成物を塗布し、該塗布面に活性エネルギー線を照射してから他方の部材を貼り合わせることにより、接合する方法である。
CH−CH=CH−O− (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野での接着固定において、高い初期接着力と十分な経時接着力の両方を有する接着剤が望まれている。このような接着剤として、光や電子線等の活性エネルギー線の照射によって高速で硬化する感光性接着剤組成物が、硬化速度が速く生産性向上が可能であること、および硬化させるのに熱を必要とせず、熱変形しやすい熱可塑性樹脂の接着に適していること等から、光学部材、電気・電子部材等の接着剤、シーリング剤として広く使用されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかしながら、これらの接着剤は部材を接着剤で貼り合わせてから光を照射して使用されるものであり、部材の少なくとも片面が透明である必要がある。したがって、光を通さない部材同士の接着では側面から光を照射しなければならず、大面積の接着には不向きである。
光を通さない部材同士を大面積で接着させるためには、光を照射してから部材を貼り合わせる必要があるが、特許文献1記載の接着剤は、酸素による重合阻害があるため十分に反応が進行せず、初期接着力も経時接着力も十分でないという問題がある。特許文献2の接着剤は光を照射すると高速で硬化するが、流動性がなくなり、部材に対する接着剤のぬれ性が不十分となり十分な接着強度は得られないという問題がある。
この問題を解決する接着剤として、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を分子末端に含有するポリウレタンプレポリマーを主成分とし、光重合開始剤を含む反応性ホットメルト接着剤が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−161935号公報
【特許文献2】特開平10−7754号公報
【特許文献3】特開2008−63406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献3記載の接着剤はアクリロイル基のラジカル重合を利用するものであり、空気中の酸素による重合阻害があるため十分に反応が進行せず、貼り合わせた後の初期接着力が十分でないという問題がある。そこで、本発明の目的は、光等の活性エネルギー線を通さない部材同士の接着において、高い初期接着力と十分な経時接着力の両方を有する接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、分子内に下記一般式(1)で示されるプロペニルエーテル基を含有する化合物(A)、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(B)、及び活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
CH−CH=CH−O− (1)
【発明の効果】
【0005】
本発明の接着剤は、光等の活性エネルギー線を通さない部材同士の接着において、高い初期接着力と十分な経時接着力の両方を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[プロペニルエーテル基を含有する化合物(A)]
本発明における(A)は、プロペニルエーテル基を含有する化合物であれば、特に限定されない。それらの中で、エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を有する化合物が好ましい。この場合において(A)は少なくとも2個のプロペニルエーテル基を分子末端及び/又は側鎖に有するものが好ましい。
【0007】
上記化合物(A)としては例えば、下記一般式(2)〜(10)で示される構造を有するもの等が例示される。
【0008】
【化1】

【0009】
以下、これらについて詳細に説明する。
一般式(2)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(2)で示される構造を有する化合物(A)は、エーテル結合を有する化合物、ポリエーテル主鎖を有するポリマー、オリゴマーである。上記一般式(2)中、aは、1〜200の整数である。aが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜80であり、より好ましくは5〜10である。A1 は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、アリーレン基、アルアルキレン基、ハロアルキレン基、又は、グリシジルエーテルを開環重合させたときの残基を表す。本明細書中、−X−Z基は、−X−Zで表される基(式中、Xは、2価の有機基を表す。Zは、上記一般式(1)で示されるプロペニルエーテル基を表す。)を表す。
【0010】
上記一般式(2)において、a個のA1 は、同一でも異なっていても良く、(A1 −O)a部分は、ランダム付加であっても、又は、ブロック付加であってもよい。
【0011】
上記Xの例としては、例えば、エーテル基、カーボネート基、エステル基、イミノ基、アミド基、ウレタン基、ウレア基及びスルフィド基からなる群より選択される1種以上の基を有していてもよい炭化水素基等が例示され、具体例としては、例えば、−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH2 OCH2 CH2 −、−CHOC(=O)OCH2 −、−CH2 NHCH2 CH2 −、−CH2 NHC(=O)NH(CH2 6 NHC(=O)O−、−CH2 S(CH2 2 C(=O)O(CH2 2 −等が挙げられる。
【0012】
上記一般式(2)中の上記A1 の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1−ブチレン基、2−ブチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、メチルテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ペンチレン基、イソアミレン基、ヘキシレン基、シクロヘキセン基、ネオヘキセン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等で例示されるアルキレン基の水素原子が−X−Z基で置換された基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1−ブチレン基、2−ブチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、テトラメチレン基、メチルテトラメチレン基、ペンタメチレン基、ペンチレン基、イソアミレン基、ヘキシレン基、シクロヘキセン基、ネオヘキセン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等のアリーレン基;ベンジレン基、1−フェニチレン基、2−フェニチレン基、1−フェニルプロピレン基、2−フェニルプロピレン基、3−フェニルプロピレン基等のアルアルキレン基;クロロエチレン基、ジクロロエチレン基、ブロモエチレン基、クロロメチルエチレン基等のハロアルキレン基;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテルを開環重合させたときの残基等が挙げられる。これらのうち好ましくは、炭素数(以下Cと略記)2〜6のアルキレン基であり、更に好ましくはエチレン基及びプロピレン基である。アルキレン基が長くなると、活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)の溶解性が悪くなる。
【0013】
上記一般式(2)の構造を有する化合物(A)の具体例としては、例えば、下記一般式(11)
3 〔−O−(A1 −O)a−R4 〕m1 (11)
(式中、R3 は、多価アルコール又は多価フェノールからm1 個の水酸基を除いた残基を表す。R4 は、プロペニル基、水素原子、アルキル基、アシル基、(メタ)アクリロイル基又はアリール基を表す。m1 個のR4 のうち少なくとも2つは、プロペニル基を表す。m1 は、2〜200の整数である。)で表されるもの等が挙げられる。
【0014】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜18量体、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等);グリシドールの開環重合物(重合度が2〜200である化合物);トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)及びこれらの2〜3量体;モノペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,3,5−ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビタングリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール;キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース等の糖類;並びに、これらの部分エーテル化物(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル)、部分酢酸エステル化物、メチルグルコシド;ポリビニルアルコール(重合度が5〜700である重合物)、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合物(重合度が5〜700である重合物)、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの重合物(重合度が5〜700である重合物)、アリルアルコールの重合物(重合度が5〜700である重合物)等が挙げられる。なかでも、特にグリセリンやポリグリセリン並びにトリメチロールアルカン及びその2〜3量体等が好ましい。
【0015】
上記多価フェノールとしては、例えば、クレゾールノボラック樹脂、フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0016】
一般式(3)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(3)中、bは、2〜200の整数である。bが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは3〜100であり、より好ましくは3〜20である。Q1 は、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、ハロアルキル基、ハロアリール基、アルコキシカルボニル基、アセトキシ基、又は、−X−Z基を表す。一般式(3)中のb個のQ1 は、同一でも異なっていてもよい。
【0017】
上記一般式(3)中の上記Q1 の具体例としては、水素原子;水酸基;メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;クロロメチル基、クロロエチル基等のハロアルキル基;クロロメチルフェニル基、クロロエチルフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基等のハロアリール基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基及び−X−Z基等が挙げられる。
【0018】
一般式(4)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(4)で示される構造を有する化合物(A)は、エステル結合を有する化合物、ポリエステル主鎖を有するポリマー、オリゴマーである。上記一般式(4)中、cは、2〜200の整数である。cが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜80、より好ましくは2〜20である。A2 は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレンジオールの残基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレンジオールの残基、又は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないポリエーテルジオールの残基を表す。A3は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレン基、アルアルキレン基、又は、ハロアルキレン基を表す。一般式(4)中のc個のA2 及びc個のA3 は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0019】
上記A2 において、水酸基を除いたものがA2 に相当するジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール等のアルキレンジオール;カテコール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビスフェノールA等のアリーレンジオール;ポリ(オキシエチレン)ジオール、ポリ(オキシプロピレン)ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール、及び、これらのジオールの水酸基以外の水素原子が−X−Z基で置換されたもの等が挙げられる。これらのうち好ましくは、ポリ(オキシエチレン)ジオール及びポリ(オキシプロピレン)ジオールである。上記ポリエーテルジオールの重合度は、通常2〜200、好ましくは2〜100、特に好ましくは3〜20である。
【0020】
上記一般式(4)中の上記A3 の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基等のアルキレン基;メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等のアルキレン基の水素原子が−X−Z基で置換された基;フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等のアリーレン基;フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等のアリーレン基の水素原子が−X−Z基で置換された基;ベンジレン基、1−フェニチレン基、2−フェニチレン基、1−フェニルプロピレン基、2−フェニルプロピレン基、3−フェニルプロピレン基等のアルアルキレン基;クロロエチレン基、ジクロロエチレン基、ブロモエチレン基、クロロメチルエチレン基等のハロアルキレン基等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(4)の構造を有する化合物(A)の具体例としては、例えば、下記一般式(13)が挙げられる。
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R5 は、多価カルボン酸からm2 個のカルボキシル基を除いた残基を表す。R6 は、ポリエーテルジオール、ポリウレタンジオール又はポリカーボネートジオールのうちいずれかのジオール残基を表す。R7 は、プロペニル基、水素原子、アルキル基、アシル基、(メタ)アクリロイル基又はアリール基を表す。m2 個のR7 のうち少なくとも2つは、プロペニル基を表す。m2 は、2〜200の整数である。)で表されるもの等が挙げられる。
【0024】
上記多価カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0025】
一般式(5)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(5)で示される構造を有する化合物(A)は、エステル結合を有する化合物、ポリエステル主鎖を有するポリマー、オリゴマーである。上記一般式(5)中、dは、2〜200の整数である。dが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜80、より好ましくは2〜20の整数である。A4 は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレン基、アルアルキレン基、又は、ハロアルキレン基を表す。一般式(5)中のd個のA4 は、同一でも異なっていてもよい。
【0026】
上記一般式(5)中の上記A4 の具体例としては、上記A3 の具体例として例示したもの等が挙げられる。
【0027】
一般式(6)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(6)で示される構造を有する化合物(A)は、ウレタン結合を有する化合物、ポリウレタン主鎖を有するポリマー、オリゴマーである。上記一般式(6)中、eは、2〜200の整数である。eが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20の整数である。A5 は、ジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表す。A6 は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレンジオールの残基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレンジオールの残基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていない(ポリ)エーテルジオールの残基、又は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないポリエステルジオールの残基を表す。一般式(6)中のd個のA5 及びd個のA6 は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0028】
上記A5 において、イソシアネート基を除くとA5 を与えるポリイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(デスモジュールW)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−テトラヒドロナフタリンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ビス(2−メチル−3−イソシアナトフェニル)メタン、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。これらのうち好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(デスモジュールW)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。
【0029】
上記A6 において、水酸基を除くとA6 を与えるジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール等のアルキレンジオール;カテコール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビスフェノールA等のアリーレンジオール;ポリ(オキシプロピレン)ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール;ポリ(エチレンアジペート)ジオール、ポリ(ブチレンイソフタレート)ジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール;これらのジオールの水酸基以外の水素原子が−X−Z基で置換されたもの等が挙げられる。これらのうち好ましくは、ポリ(オキシエチレン)ジオール及びポリ(オキシプロピレン)ジオールである。
【0030】
上記一般式(6)の構造を有する化合物(A)の具体例としては、例えば、下記一般式(14)
8 (NHCOO−R9 )m3 (14)
(式中、R8 は、多価イソシアネートからイソシアネート基を除いた残基を表す。R9 は、−(Z1 O)n−CH=CH−CH3 基、−(Z1 O)n−CO−C(R10)=CH2 基、−(Z1 O)nH基、水素又はアルキレン基を表す。m3個のR9 のうち少なくとも1つは−(Z1 O)n−CH=CH−CH3 基であり、他の少なくとも1つは、−(Z1 O)n−CO−C(R10)=CH2 基であってもよい。Z1 は、C2〜12のアルキレン基、アリーレン基、アルアルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。R10は、水素又はメチル基を表す。nは、0〜200の整数である。m3 は、2〜200の整数である。)で表されるもの等が挙げられる。
【0031】
上記多価イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアナトフェニル)チオホスフェート等が挙げられる。
【0032】
一般式(7)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(7)で示される構造を有する化合物(A)は、ポリアミド主鎖を有するものである。上記一般式(7)中、fは、2〜200の整数である。fが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20の整数である。A7 、A8 は、同一若しくは異なって、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレン基、アルアルキレン基、又は、ハロアルキレン基を表す。一般式(7)中のf個のA7 及びf個のA8 は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0033】
上記一般式(7)中の上記A7 、A8 の具体例としては、上記A3 の具体例として例示したもの等が挙げられる。
【0034】
一般式(8)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(8)で示される構造を有する化合物(A)は、ポリアミド主鎖を有するものである。上記一般式(8)中、gは、2〜200の整数である。gが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜50、特に好ましくは2〜20の整数である。A9 は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレン基、アルアルキレン基、又は、ハロアルキレン基を表す。一般式(8)中のg個のA9 は、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
上記一般式(8)中の上記A9 の具体例としては、上記A3 の具体例として例示したもの等が挙げられる。
【0036】
一般式(9)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(9)で示される構造を有する化合物(A)は、ポリカーボネート主鎖を有するものである。上記一般式(9)中、hは、2〜200の整数である。hが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20の整数である。A10は、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアルキレン基、−X−Z基で置換された若しくは置換されていないアリーレン基、アルアルキレン基、又は、ハロアルキレン基を表す。一般式(9)中のh個のA10は、同一でも異なっていてもよい。
【0037】
上記一般式(9)中の上記A10の具体例としては、上記A3 の具体例として例示したもの等が挙げられる。
【0038】
一般式(10)で示される構造を有する化合物(A)
上記一般式(10)で示される構造を有する化合物(A)は、ノボラック主鎖を有するものである。上記一般式(10)中、iは、2〜200の整数を表す。iが200以下であると、粘度が高くなく接着剤の塗工に好ましい。好ましくは2〜50、より好ましくは2〜20の整数である。Arは、アリール基を表す。Q2 は、水素原子、グリシジル基、又は、−X−Z基を表す。一般式(10)中のi個のQ2 は、同一でも異なっていてもよい。
【0039】
上記一般式(2)〜(10)で示される構造を有する化合物(A)は、プロペニルエーテル基に加えて、重合性官能基であるアリル基、ビニルエーテル基、環状エーテル基、(メタ)アクリロイル基を有していてもよい。
【0040】
本発明において、上記化合物(A)を得る方法としては特に限定されず、例えば、一般式(2)で示される構造を有する化合物(A)は、対応する多官能アリルエーテル基を有する(ポリ)エーテルオリゴマーをアルカリ触媒によりプロペニル転位させることにより得ることができる。
一般式(3)〜(10)で示される構造を有する化合物(A)についても、上記と同様にして得ることができる。
【0041】
上記アルカリ触媒の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。
【0042】
これらのアルカリ触媒を使用する場合、アルカリの仕込み比としては多官能アリルエーテル基を有する(ポリ)エーテルオリゴマーの1.0モル当量に対してアルカリ触媒を0.01〜5モルの範囲、好ましくは0.1〜2モルの範囲にすることにより高い反応促進効果が得られる。
【0043】
反応溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ブタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、トルエン、ポリエチレングリコール(分子量が100〜20000の化合物)等が挙げられる。反応温度は、30〜170℃であり、好ましくは60〜120℃である。
【0044】
反応後の単離精製法は、公知の方法を採用できる。例えば、反応液を室温まで冷却後、トルエン又はエーテルで有機層を抽出し数回水洗することで無機塩を除き、有機層を減圧濃縮することにより目的物を取得する方法等が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。好ましくは反応液を室温まで冷却後、過剰のアルカリを酸で中和するのが良い。
【0045】
上記多官能アリルエーテル基を有する(ポリ)エーテルオリゴマーは、例えば、アリルクロライドと多官能アルコールとのアルカリ触媒による脱塩エーテル化反応により得ることができる。アルカリ触媒の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。アリルエーテル化は完全でなくてもよく、nモル中、20%は水酸基が残っていても良い。
【0046】
これらのアルカリ触媒を使用する場合、アルカリの仕込み比としては、多官能アルコールの1.0モル当量に対してアルカリ触媒を0.8〜10モルの範囲、好ましくは1〜2モルの範囲にすることにより高い反応促進効果が得られる。多官能アルコールと塩化アリルとの当量比は、通常1:1.0〜10.0であり、好ましくは1:1.0〜2.0である。
【0047】
[イソシアネート基を2個以上有する化合物(B)]
本発明における(B)は、イソシアネート基を2個以上含有すれば、特に限定されないが、例えば、分子量が100〜1000であるポリイソシアネート(b1)、及びポリイソシアネート(b1)とポリオール(b2)を反応してなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。接着性の観点から好ましいのは、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b3)である。
【0048】
ポリイソシアネート(b1)としては、上記A5の具体例として例示したポリイソシアネート、及びイソシアネート基の一部をカルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ウレア、ビュレット、イソシアヌレート変性した化合物が挙げられる。これらの内で反応性の観点から好ましいのは、HDI、IPDI、TDIおよびMDIであり、特に好ましいのは、HDIおよびMDIである。
【0049】
ポリオール(b2)としては、分子内に2個以上の水酸基を有するものであり、従来より公知のものが使用可能である。具体例として、ポリエステルポリオール(b21)、ポリエーテルポリオール(b22)、ポリエーテルエステルポリオール(b23)、ポリカーボネートポリオール(b24)、ポリマーポリオール(b25)、ポリオレフィンポリオール(b26)、ポリアルカジエンポリオール(b27)、アクリルポリオール(b28)およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。これらのポリオールは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
上記ポリエステルポリオール(b21)としては、例えば(1)前記2価アルコールの1種以上とポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の1種以上との縮重合による縮合ポリエステルポリオール;(2)前記2価アルコールを開始剤とするラクトンの開環重合によるポリラクトンポリオール;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0051】
上記(1)のポリカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸(C4〜18、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸)、芳香族ジカルボン酸(C8〜24、例えばテレフタル酸、イソフタル酸)、これらのジカルボン酸のエステル形成性誘導体(酸無水物、アルキル基のCが1〜4の低級アルキルエステル等)およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0052】
上記(2)のラクトンとしては、C4〜12、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0053】
ポリエーテルポリオール(b22)としては、フェノール類もしくはアルコール類に、AO(前記のもの、とくにC2〜4)を付加したもの、およびテトラヒドロフランを開環重合したものが挙げられる。
フェノール類としては、好ましくはC6〜30の2価フェノール類が使用でき、例えばカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ジヒドロキシメチルベンゼン、ビスフェノールA、−Fおよび−Sおよびこれらのアルキル(C1〜10)、ハロゲン置換体等が挙げられる。接着性の観点から好ましくは、ビスフェノールAおよび−Fである。
【0054】
アルコール類としては、2価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなど);3価アルコール類(グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等);4価アルコール類(ペンタエリスリトール等)、5官能以上の多価アルコール類(ソルビトール等)が挙げられる。接着剤の反応硬化性の観点から好ましいのは2〜4価のアルコール類であり、より好ましくは2〜3価のアルコール類である。
【0055】
上記AOとしては、EO、PO、BO、THF、スチレンオキサイドおよびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。これらのうち粘着剤の柔軟性の観点から好ましいのはPO、EO、BOおよびこれらの併用である。
【0056】
ポリエーテルエステルポリオール(b23)としては、例えば、前記ポリエーテルポリオールの1種以上と前記ポリエステルポリオールの原料として例示したポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体の1種以上とをエステル化反応させて得られるもの、前記ポリエーテルポリオールの1種以上にラクトンの1種以上を開環付加させて得られるもの等が挙げられる。
【0057】
ポリカーボネートポリオール(b24)としては、例えばポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0058】
ポリマーポリオール(b25)としては、上記で挙げた高分子ポリオールの1種以上中でビニル単量体(C3〜24、例えばスチレン、アクリロニトリル)をラジカル重合開始剤の存在下で重合させ分散安定化させてなるポリオール(重合体含量は例えば5〜30重量%)が挙げられる。
【0059】
ポリオレフィンポリオール(b26)としては、ポリイソブテンポリオール等が挙げられる。
【0060】
ポリアルカジエンポリオール(b27)としては、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添化ポリイソプレンポリオール、水添化ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。
【0061】
アクリルポリオール(b28)としては、(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜30)エステル[ブチル(メタ)アクリレート等]と水酸基含有アクリルモノマー[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等]との共重合体等が挙げられる。
【0062】
上記ポリオール(b2)のうち、接着性の観点から好ましいのは、ポリエステルポリオール(b21)、ポリエーテルポリオール(b22)、ポリエーテルエステルポリオール(b23)、ポリカーボネートポリオール(b24)であり、特に好ましいのはポリエステルポリオール(b21)、ポリエーテルポリオール(b22)である。
【0063】
ウレタンプレポリマー(b3)を製造する際には、必要によりポリウレタンに通常用いられる触媒を使用できる。該触媒の具体例としては、例えば有機金属化合物[ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビスマスカルボキシレート、ビスマスアルコキシドおよびジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物等]、無機金属化合物[酸化ビスマス、水酸化ビスマス、ハロゲン化ビスマス等];
アミン[トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロウンデセン等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
触媒の使用量は特に限定はないが、(B)の重量に基づいて、通常0.0001〜0.1%、好ましくは0.001〜0.01%である。
【0064】
反応条件としては例えば(b1)、(b2)および必要によりウレタン化触媒を温度制御機能を備えた反応槽に仕込み、30〜1,000分間にわたって好ましくは50〜200℃の温度で連続的に反応させる方法や、(b1)、(b2)および必要によりウレタン化触媒を2軸エクストルーダーに流し込み、好ましくは100〜220℃の温度で連続的に反応させる方法等がある。得られるウレタンプレポリマー(B)中のイソシアネート基の含有量は、好ましくは0.2〜10重量%であり、より好ましくは0.5〜7.0重量%である。0.2重量%以上であると耐久性が良好となり、10重量%以下であると加熱溶融時の熱安定性が良好となる。
【0065】
本発明の粘着剤組成物における(A)と(B)の重量比は、活性エネルギー線照射後の樹脂強度と湿気硬化後の樹脂強度のバランスの観点から好ましくは5/95〜90/10、さらに好ましくは10/90〜50/50である。
【0066】
[活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)]
活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)としては、例えば、下記一般式(1)で示されるジアゾニウム塩、下記一般式(2)で示されるヨードニウム塩、下記一般式(3)で示されるセレノニウム塩および下記一般式(4)で示されるスルホニウム塩が挙げられる。
[R1N=N]+・X- (1)
[R11’I]+・X- (2)
[R11’SeR2+・X- (3)
[R11’SR2+・X- (4)
[式中、R1、R1’はC1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、シクロアルキル基(但し、R1、R1’は互いに結合してN、P、OまたはSをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。)またはこれらの誘導体基を表し、R2はC1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、これらの誘導体基またはHを表し、X-はSbF6-、AsF6-、PF6-またはBF4-を表す。]
【0067】
上記(C)は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち活性エネルギー線カチオン重合硬化性の観点からとくに好ましいのは、上記一般式(4)で示されるスルホニウム塩のうち、X-がSbF6-またはPF6-である芳香族スルホニウム塩であり、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、P−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、P−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−ジフェニル−スルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−ジフェニル−スルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、(2、4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル(フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル(フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
これらは市販品として容易に入手することができ、例えば、SP−150、SP−170[商品名、いずれも旭電化(株)製]、イルガキュアー261[商品名、チバ・ガイギー(株)製]、UVR−6974、UVR−6990[商品名、いずれもユニオンカーバイド(株)製]、CPI−100P、CPI−101A[商品名、いずれもサンアプロ(株)製]が挙げられる。
【0068】
(C)の使用量は(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%である。(C)の使用量を上記範囲内とすることで充分な活性エネルギー線硬化性を得ることができる。
【0069】
本発明の接着剤組成物においては、必要に応じて、更に、ラジカル重合性のビニル系化合物(D)及び活性エネルギー線ラジカル重合開始剤(E)を含有することができる。
【0070】
上記ラジカル重合性のビニル系化合物(D)としては、公知のラジカル重合性のビニル系化合物が使用できる。例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー;スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸;エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0071】
上記ラジカル重合性のビニル系化合物(D)の配合量は、上記化合物(A)100重量部に対し、0〜100重量部が好ましく、より好ましくは0〜50重量部である。
【0072】
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤(E)としては、ベンゾイル化合物[ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)]、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン化合物(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)およびベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
これらは市販品として容易に入手することができ、例えば、イルガキュアー184[商品名、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製]を挙げることができる。
【0073】
本発明の接着剤組成物においては、必要に応じ公知の活性エネルギー線増感剤(F)を添加することができる。活性エネルギー線カチオン重合増感剤としては、ペリレン、ピレン、アントラセン、コロネン、フェノチアジン等の芳香族化合物およびこれらの誘導体を挙げることができる。
また、活性エネルギー線ラジカル重合増感剤としては、チオピリリウム塩、メロシアニン、キノリン、スチルキノリン、アリールケトン類、芳香族ケトン類、ケトクマリン誘導体等を挙げることができる。
(F)の市販品としては、アントラキュアーUVS−1331[商品名、川崎化成工業(株)製]等が挙げられる。
【0074】
(F)の使用量は(A)と(B)の合計重量に基づいて、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%である。(F)の使用量を上記範囲内とすることで充分な活性エネルギー線硬化性を得ることができる。
【0075】
本発明の接着剤組成物においては、必要に応じ公知の粘着付与樹脂(G)を添加することができる。粘着付与樹脂としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、合成石油樹脂(脂肪族、芳香族および脂環式合成石油樹脂等)、クマロン−インデン樹脂、キシレン樹脂、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、およびこれらのうちの水素添加可能な不飽和二重結合を有するものの水素添加物等が挙げられる。(G)は1種でも2種以上組み合わせて用いてもよい。
(G)の使用量は、(A)、(B)の合計重量に基づいて、通常100%以下、初期接着力と経時接着力のバランスの観点から好ましくは5〜50%である。
【0076】
本発明の接着剤組成物には、更に必要に応じて、有機溶剤類、エポキシ樹脂(例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等)、顔料、着色剤、無機充填剤、非反応樹脂、その他各種添加剤を添加することができる。
【0077】
本発明の接着剤組成物は、(A)〜(C)、および必要により(D)〜(G)を公知の混合装置(撹拌機を備えた混合槽、スタティックミキサー等)で均一に混合することにより製造できる。なお、(C)〜(G)は(A)、(B)の製造後に混合するのが好ましいが、(C)〜(G)の一部または全部を予め(A)または(B)の製造段階における任意の段階で添加しておいてもよい。
(A)〜(C)、および必要により(D)〜(G)を混合する温度としては通常40〜200℃、混合性および熱劣化抑制の観点から好ましくは50〜180℃である。
【0078】
本発明の接着剤組成物の塗布装置としては特に限定されないが、グラビアコータ、ロールコータ、リバースコータ、ドクターブレード、バーコータ、コンマコータ、ファウンテンダイコータ、リップコータ、ナイフコータ等が挙げられる。
【0079】
本発明の接着剤組成物を塗布し、接着する部材としては、以下のものが挙げられる。
建築材料用:木材用接着剤(合板用、パーティクルボード用、ハードボード用、集成材用および木工用接着剤)およびその他建築材料用接着剤(コンクリート用、モルタル用、壁紙用、床材料用およびタイル用接着剤)、
繊維材料用:繊維材料用接着剤(不織布用、植毛用、接着布用、接着縫製用およびカーペット裏糊用接着剤)、
その他材料用:プラスチック用接着剤(硬質塩化ビニル管用、軟質塩化ビニル用および発泡プラスチック用接着剤)、ゴム用接着剤、皮革用接着剤、セラミックス用接着剤(複層ガラス用、光学レンズ用および研磨材料用)、生体接着剤(歯科用、外科手術用および貼り薬用接着剤)、(家庭用品用接着剤(紙用など)、段ボール用接着剤、製本用接着剤並びに電化製品用接着剤など。
上記部材のうち、活性エネルギー線を透過させるもの、活性エネルギー線を透過させないもののいずれもが含まれる。
【0080】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線、可視光線、赤外線である。
活性エネルギー線の波長は、活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)の分解効率の観点から好ましくは200〜750nm、さらに好ましくは200〜450nmである。
【0081】
本発明の接着剤組成物を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の光源、例えば水銀灯(低圧、高圧、超高圧等)、水素ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、蛍光灯、He−Cdレーザー等が使用でき、好ましいのは高圧水銀灯である。
紫外線の照射量は通常1〜1,000mJ/cm2、組成物の硬化性および接着剤、部材の損傷を避けるとの観点から好ましくは10〜500mJ/cm2である。
【0082】
本発明の接着剤組成物を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置[例えばエレクトロンビーム、岩崎電気(株)製]を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常0.5〜20、組成物の硬化性および接着剤、部材の損傷を避けるとの観点から好ましくは1〜15である。
【0083】
本発明の接着剤組成物は、活性エネルギー線で硬化した後、含有するイソシアネートが空気中の水分と反応しさらに硬化する。硬化温度は通常5℃以上であり、反応性の観点から好ましくは10〜100℃である。湿度条件は反応性の観点から好ましくは20〜100%R.H.であり、特に好ましくは30〜80%R.H.である。硬化時間は数分〜200時間である。
【0084】
本発明の接着剤組成物は、酸素による重合阻害がないので、空気中で良好な硬化性を有する。したがって、接着剤組成物を上記部材の少なくとも片面の少なくとも一部に直接塗工し、空気中で該塗工面に活性エネルギー線を照射して硬化させてからもう片方の部材を貼り合わせる接合方法を採用できる。貼り合わせる際には、加圧するほうが好ましい。加圧する圧力は所望の接着力が得られる限り特に制約はなく。好ましくは10kPa〜5MPaである。この接合方法を用いると、活性エネルギー線を通さない(例えば木材等)部材同士の接着剤として使用可能である。
【0085】
接合する部材の少なくとも片方が活性エネルギー線を通すものであれば、部材同士を貼り合わせてから、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着させる接着剤としても使用可能である。
【0086】
活性エネルギー線硬化後の接着剤の塗膜厚さは、通常1〜5,000μm、接着力と硬化性の観点から好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜200μmである。
【0087】
本発明の接着剤組成物は、(A)及び(B)の官能基間の骨格の構造を変化させることで、流動特性を広い範囲で調整することができる。また、プロペニルエーテル基及びイソシアネート基の官能基数と濃度を調整することで、硬化物性を広い範囲で調整することができ、初期接着力と経時接着力を幅広く調整することが可能である。
【0088】
本発明の接着剤組成物は、従来の活性エネルギー線ラジカル重合開始剤を用いた場合と比較して、貯蔵安定性に優れるという特徴がある。(メタ)アクリレート基を有する活性エネルギー線硬化接着剤では、重合開始剤を使用直前に配合する必要があるが、本発明の接着剤組成物は一液性の接着剤組成物として使用可能であり、生産性に優れるという特徴を有する。
【0089】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0090】
[プロペニルエーテル基を含有する化合物(A)の合成]
合成例1
500mlのSUS製オートクレーブにグリセリン46.0g(0.5モル)とKOH0.5gとを仕込み、耐圧滴下ロートからエチレンオキサイド264.3g(6.0モル)を滴下し、110℃で5時間熟成した。系内を80℃まで冷却後、KOH84.2g、n−テトラブチルアンモニウムブロマイド9.67g、トルエン40gを添加し、塩化アリル114.8g(1.5モル)を80℃で1時間かけて徐々に滴下し、5時間熟成した。その後、水を200g加えて過剰のアルカリと生成した塩とを水洗して分液除去した。50℃、100mmHgの圧力下で有機層から未反応の塩化アリルとトルエンとを除いた後、生成物をガラス製ナスフラスコに仕込み、触媒としてカリウム−t−ブトキシドを32.4g、反応溶媒としてジメチルスルホキシド50gを添加し90℃で15分熟成(転位反応)した。その後、水を200g加えて過剰のアルカリを水洗して分液除去した。水洗された生成物から、80℃、10mmHgの減圧下で含有するジメチルスルホキシドを除去し、化合物(A)としてグリセリンのエチレンオキサイド付加物のプロペニルエーテル(A−1)を333.4g得た。生成物は 1H−NMR、13C−NMRにより確認した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと記載する。)による数平均分子量は800であった。
【0091】
合成例2
メチルエチルケトン29.0gを80℃に昇温後、2−ヒドロキシエチルアクリレート58.1g(0.5モル)とアゾビスイソブチロニトリル0.58gの混合物をメチルエチルケトン29.0gで希釈した溶液を80℃で2時間かけて滴下し、3時間熟成した。このポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)28.0gをメチルエチルケトン60gに添加し、攪拌下80℃に昇温し、KOH33.6g(0.6モル)、n−テトラブチルアンモニウムブロマイド9.67gを添加した後、塩化アリル46.0g(0.6モル)を80℃で1時間かけて徐々に滴下し、5時間熟成した。その後、水を200g加えて過剰のアルカリと生成した塩とを水洗、分液した。50℃、100mmHgの圧力下で有機層から未反応の塩化アリルとメチルエチルケトンを除き、ポリアリルエーテル化合物58.2gを得た。得られた生成物のアリルエーテル化率は 1H−NMRにより79%であった。ポリアリルエーテルをガラス製ナスフラスコに80.0g仕込み、触媒としてカリウム−t−ブトキシドを32.4g、反応溶媒としてジメトルスルホキシド50gを添加し90℃で15分熟成(転位反応)した。その後、水を200g加えて過剰のアルカリを水洗して分液除去した。得られた生成物から、80℃、10mmHgの減圧下、水分を除去し、化合物(A)としてプロペニルエーテル基を有するポリアクリル樹脂(A−2)62.4gを得た。生成物は 1H−NMR、13C−NMRによりアリル基のプロペニル基への転位率が99%であることを確認した。GPCによる数平均分子量は2900であった。
【0092】
合成例3
アリルアルコール57.1g(1.0モル)とKOH0.5gとを仕込み、耐圧滴下ロートからエチレンオキサイド132.1g(3.0モル)を滴下し、110℃で5時間熟成した。更にKOH0.5gを添加し、160℃で5時間熟成(転位反応)した。その後、水を200g加えて過剰のアルカリを水洗して分液除去し、OH基含有プロペニルエーテルを151.3g得た。
次にアジピン酸730.5g(5.0モル)、トリエチレングリコール600.9g(4.0モル)、触媒としてテトラブトキシチタネート0.3gを仕込んだ後、200℃で約2時間反応させた。更に、上記OH基含有プロペニルエーテルを56.9g添加し、200℃で3時間反応させた後、トルエンを500g追加し、メタノール中で再沈殿させ、化合物(A)としてプロペニルエーテル基を有するポリエステル樹脂(A−3)970.5gを得た。GPCによる数平均分子量は1400であった。
【0093】
合成例4
温度制御装置、撹拌装置付きのセパラブルフラスコに「サンニックス GP−3000」(三洋化成工業社製;グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、水酸基価=56.9、Mn=3,000)300.0部(0.1モル)、MDI 75.0部(0.3モル)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で4時間熟成後、合成例3で使用したOH基含有プロペニルエーテルを56.9g添加し、80℃で4時間反応させた後、トルエンを500g追加し、メタノール中で再沈殿させ、化合物(A)としてプロペニルエーテル基を有するウレタン樹脂(A−4)431.7gを得た。GPCによる数平均分子量は4400であった。
【0094】
合成例5
SUS製オートクレーブに、フェノールノボラック樹脂(核体数8)679.6g及びKOH3.8gを仕込み、130℃で融解後、エチレンオキサイド316.7gを添加して130℃で9時間熟成し、フェノールノボラック樹脂のエチレンオキサイド付加物(フェノール水酸基1個当り平均1モル付加)を得た。水酸基価の値から算出したエチレンオキサイドの付加反応率は98%であった。得られたフェノールノボラック樹脂のエチレンオキサイド付加物200gをジメトキシジエチレングリコール400gに溶解し、水酸化ナトリウム64.9g及び塩化アリル124.1gを添加し、90℃で7時間熟成した後、50℃で未反応の塩化アリルを減圧留去した。アリルエーテル化率は95%であった。得られたアリルエーテル化物50gにジメトキシジエチレングリコール50g及びKOH10.3gを添加し150℃で5時間熟成(転位反応)した。熟成後、100℃、50mmHgでジメトキシジエチレングリコールを留去し、トルエン50g及び水50gを加え、アルカリを水洗して分液除去し、化合物(A)としてプロペニルエーテル基を末端に有するノボラック樹脂(A−5)49gを得た。GPCによる数平均分子量は1300であった。
【0095】
[イソシアネート基を2個以上有する化合物(B)の合成]
合成例6
温度制御装置、撹拌装置付きのセパラブルフラスコに「ニューポール BPE−100」(三洋化成工業社製;ビスフェノールAのEO付加物、水酸基価=168.0、Mn=670)335.0部(0.5モル)、MDI250.0部を投入し、80℃で4時間熟成して、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B−1)を得た。GPCによる数平均分子量は1200であった。
【0096】
合成例7
温度制御装置、撹拌装置付きのセパラブルフラスコに「サンニックス GP−3000」(三洋化成工業社製;グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、水酸基価=56.9、Mn=3,000)300.0部(0.1モル)、MDI 75.0部(0.3モル)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で4時間熟成して、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B−2)を得た。GPCによる数平均分子量は3900であった。
【0097】
[ラジカル重合性のビニル系化合物(D)の合成]
比較合成例1
合成例4において、OH基含有プロペニルエーテル56.9gを用いる代わりに2−ヒドロキシエチルアクリレート35.0gを用いたこと以外は合成例4と同様にして、アクリレート基を有するウレタン樹脂(D−1)409.8gを得た。GPCによる数平均分子量は4600であった。
【0098】
比較合成例2
温度制御装置、撹拌装置付きのセパラブルフラスコに「サンニックス PP−2000」(三洋化成工業社製;ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価=56.9、Mn=2,000)400.0部(0.2モル)、「バイロン200」(東洋紡績社製;ポリエステルポリオール、Mn=17,000)17.0部(0.001モル)、MDI 100.0部(0.4モル)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で4時間熟成後、2−ヒドロキシエチルアクリレートを9.3g(0.08モル)添加し、80℃で4時間反応させて、アクリレート基およびイソシアネート基を分子末端に含有するポリウレタンプレポリマー(D−2)526.3gを得た。GPCによる数平均分子量は3200であった。
【0099】
上記の数平均分子量はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法による。条件は下記のとおりである。
(GPC法による数平均分子量測定条件)
溶 媒 :テトラヒドロフラン
基準物質 :ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)
サンプル濃度:0.25wt/vol%
カラム温度 :23℃
カラム種類 :架橋スチレン微粒子ゲル[商品名「Super H−L」、「SuperH4000」、「Super H3000」および「SuperH2000」、東ソー(株)製]
【0100】
実施例1〜6、比較例1〜3
表1に示す処方で配合した混合物を溶融撹拌可能なステンレス製加圧反応容器に仕込み、密閉下で85℃まで昇温し、撹拌下で1時間溶融混合を行うことにより、接着剤組成物を得た。表1中の配合部数は重量部を表す。配合に用いたイソシアネート化合物(B−3)、活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤(E)は以下のとおりである。
(B−3):コスモネートLK[商品名、カルボジイミド変性MDI、三井化学ポリウレタン(株)製]
(C):CPI−101A[商品名、P−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、サンアプロ(株)製]
(E):イルガキュアー184[商品名、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製]
【0101】
上記接着剤組成物について、下記の性能評価方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
<試験片作成>
上記接着剤組成物を塗布量100g/m2でMDF(ミディアムデンシティファイバーボード、長さ4.0cm、幅4.0cm、厚さ1cm)上に塗布し、紫外線照射装置(80W/cmの高圧水銀ランプ1灯)を使用して、500mJ/cm2の紫外線を照射した。ついで、無塗布の上記MDFを貼り合わせて、直ちに約0.5MPaで15秒間プレス圧締し、試験体を作成した。
【0104】
<性能評価方法>
(1)初期接着力
プレス圧締の解圧後、23℃、50%R.H.の条件下に15分間放置した試験片の割裂接着強度をJIS K6853に準じて測定した。クロスヘッドの速度は50mm/分、試験温度は23℃であった。
(2)経時接着力
プレス圧締の解圧後、23℃、50%R.H.の条件下に24時間放置した試験片の割裂接着強度を初期接着力と同様の方法で測定した。
(3)貯蔵安定性
接着剤組成物を遮光性のあるガラス容器に窒素を封入して密栓し、40℃で3日間保管した。保管前の粘度と保管後の粘度の変化率から、下記のとおり評価した。
○;粘度の変化率が20%未満
△;粘度の変化率が20%以上
×;保管後、粘度の測定が不可能
【0105】
表1の結果から明らかなように、アクリロイル基およびイソシアネート基を含有する従来の接着剤組成物である比較例2,3に比べて、本発明の接着剤組成物は初期接着力、経時接着力ともに優れていることがわかった。
また、プロペニルエーテル基のみを含有する従来の接着剤組成物である比較例1に比べても、本発明の接着剤組成物は初期接着力、経時接着力ともに優れていることがわかった。
接着剤組成物の貯蔵安定性は、比較例2及び3のラジカル重合開始剤を用いたものより優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の接着剤は下記の用途に使用できる。特に短時間で初期接着力が発現することから、生産性の向上が期待できる。
(1)建築材料用:木材用接着剤(合板用、パーティクルボード用、ハードボード用、集成材用および木工用接着剤)およびその他建築材料用接着剤(コンクリート用、モルタル用、壁紙用、床材料用およびタイル用接着剤)
(2)繊維材料用:繊維材料用接着剤(不織布用、植毛用、接着布用、接着縫製用およびカーペット裏糊用接着剤)
(3)その他材料用:プラスチック用接着剤(硬質塩化ビニル管用、軟質塩化ビニル用および発泡プラスチック用接着剤)、ゴム用接着剤、皮革用接着剤、セラミックス用接着剤(複層ガラス用、光学レンズ用および研磨材料用)、(家庭用品用接着剤(紙用など)、段ボール用接着剤、製本用接着剤並びに電化製品用接着剤など。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に下記一般式(1)で示されるプロペニルエーテル基を含有する化合物(A)、分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(B)、及び活性エネルギー線カチオン重合開始剤(C)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
CH−CH=CH−O− (1)
【請求項2】
プロペニルエーテル基を含有する化合物(A)が、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、及びアミド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を有する化合物である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
プロペニルエーテル基を含有する化合物(A)が、ポリオキシアルキレン化合物、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、およびノボラック樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物(B)が、分子量が100〜1000であるポリイソシアネート(b1)、及びポリイソシアネート(b1)とポリオール(b2)を反応してなるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
接着剤組成物に活性エネルギー線を照射した後、湿気によって硬化させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化方法。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化方法で硬化させた硬化物。
【請求項7】
活性エネルギー線を通さない部材同士を貼り合わせる接合方法において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物を少なくとも片方の部材に塗布し、該塗布面に活性エネルギー線を照射してから他方の部材を貼り合わせることを特徴とする接合方法。
【請求項8】
請求項7に記載の接合方法で貼り合わせた接着体。


【公開番号】特開2010−59228(P2010−59228A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223343(P2008−223343)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】