説明

接着剤組成物

【課題】有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 酸化処理を施したジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖末端に極性基含有ヒドラジド化合物を付加させてなる変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有する接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用繊維とゴムとの接着に用いられる接着剤組成物に関し、特に、ゴムとの接着に用いられる有機繊維コード用接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機繊維コードとゴムとの接着を確保するためには、接着剤組成物(ディップ液)としてレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)が使用されている。(例えば、特許文献1参照)
そして、上記の接着剤組成物で被覆された有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性を改良するため、接着剤組成物に天然ゴムラテックスを加えることも試みられている。(例えば、特許文献2及び3参照)
しかしながら、接着剤組成物に天然ゴムラテックスを加えることにより、かえってゴム加硫後の接着力が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭48−11335号公報
【特許文献2】特開平2−91276号公報
【特許文献3】特開平8−325953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下になされたもので、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、天然ゴムラテックスを改良することにより、本発明の課題を達成し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】

すなわち、本発明は、
〔1〕 酸化処理を施したジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖末端に極性基含有ヒドラジド化合物を付加させてなる変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有する接着剤組成物、
〔2〕 前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記ジエン系ゴムラテックス中のゴム分質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下である〔1〕に記載の接着剤組成物、
〔3〕 前記極性基含有ヒドラジド化合物における極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つである〔1〕または〔2〕に記載の接着剤組成物、
〔4〕 前記酸化処理が、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化する処理であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
〔5〕 前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行う〔4〕に記載の接着剤組成物。
〔6〕 前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及びケトン類の少なくともいずれかである〔4〕または〔5〕に記載の接着剤組成物、
〔7〕 前記ラジカル発生剤が、過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである〔5〕または〔6〕に記載の接着剤組成物、
〔8〕 前記ジエン系ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスである〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
〔9〕 前記二価フェノール類が、レゾルシンである〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
〔10〕 前記官能基が、アルデヒド基または第1級アミノ基である〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
〔11〕 前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物が、ホルムアルデヒドである〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
〔12〕 前記変性ゴムラテックス中のゴム分質量Aと前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス中のゴム分質量Bとの質量比(A/B)が、10/90〜70/30である〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の接着剤組成物、及び、
〔13〕 前記変性ゴムラテックス中のゴム分及び前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス中のゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10質量部以上30質量部以下含まれる〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の接着剤組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上する接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態により本発明を説明する。
本実施形態の接着剤組成物は、酸化処理を施したジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖末端に極性基含有ヒドラジド化合物を付加させてなる変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有することを特徴とする。
【0009】
(変性ゴムラテックス)
本実施形態において、酸化処理に用いるジエン系ゴムラテックスとしては、例えば天然ゴムラテックス、ポリイソプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス及びクロロプレンゴムラテックスが挙げられる。これらのジエン系ゴムラテックスは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、合成ゴムの場合は、重合の過程で分子鎖末端に極性基を導入することが可能であるが、天然物である天然ゴムの場合はメタセシス触媒を用いる手法等を除けば分子鎖末端に極性基を導入することが不可能であり、その観点からは後述する酸化処理による極性基導入は、天然ゴムラテックスにとって好適である。
【0010】
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、さらにはこれらのものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。副反応を少なくするためには、天然ゴムラテックスの純度を上げて使用することが好ましい。
【0011】
前記ジエン系ゴムラテックスの酸化処理は公知の方法で行うことができる。例えば、特開平8−81505号公報に従って、有機溶剤に1〜30質量%の割合で溶解した上記ジエン系ゴムラテックスを、金属系酸化触媒の存在下で空気酸化することによってジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。
ここで、上記空気酸化を促進するために用いられる金属系酸化触媒の好適な金属種はコバルト、銅、鉄等であり、これらの塩化物や有機化合物との塩や錯体が用いられる。なかでも、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト等のコバルト系触媒が好適である。
【0012】
前記有機溶媒としては、それ自体がゴムと反応せず、また容易に酸化されることがなく、ゴムを溶解するものであれば良く、種々の炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、有機ハロゲン系溶媒等が好適に用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ガソリン等が使用可能である。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。有機ハロゲン系溶媒としては、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等が使用可能である。中でも芳香族炭化水素系のトルエンを用いるのが好適である。また、それらとアルコール等との混合溶媒を用いることも可能である。
【0013】
また、本実施形態においては、上記ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、ジエン系ゴムラテックスを空気酸化することによって、ジエン系ゴムラテックスの酸化処理を行うことが、酸化の効率を高めることができる点で好ましい。ジエン系ゴムラテックスに添加するカルボニル化合物は、ゴム分に関係なくラテックス容量に対して20容量%(V/V%)以下、好ましくは0.5〜10容量%となるように添加するのが適当である。カルボニル化合物の濃度が上記範囲を超えても問題はないが、反応性を高めないばかりか、経済的に不利となるおそれがある。
【0014】
ここで、上記カルボニル化合物の好適な例としては、種々のアルデヒド類、ケトン類等が挙げられる。
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、バニリン、ピペロナール、メチルバレルアルデヒド、イソカプロアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0015】
またケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ベンジルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ベンゾフェノン、3−ニトロ−4’−メチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0016】
本実施形態では、これらのカルボニル化合物を前記ジエン系ゴムラテックスに添加することによって好適に空気酸化を行うことができるが、空気酸化を促進するためにラジカル発生剤の存在下で空気酸化を行うのが好ましい。
ラジカル発生剤としては、例えば過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1つが好適に用いられる。過酸化物系ラジカル発生剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシカルボナート等が使用できる。
【0017】
レドックス系ラジカル発生剤としては、例えばクメンヒドロキシペルオキシドとFe(II)塩、過酸化水素とFe(II)塩、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウム、硫酸セリウム(IV)とアルコール、アミン又は澱粉、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物とジメチルアニリン、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等が使用できる。
【0018】
アゾ系ラジカル発生剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸等が使用できる。
【0019】
上記ラジカル発生剤は、前記ジエン系ゴムラテックス中に溶解又は分散させて用いられる。ラジカル発生剤の添加量は、ジエン系ゴム固形分に対して0.01〜5質量%の範囲、好ましくは0.05〜1質量%の範囲である。ラジカル発生剤の濃度が上記範囲より低いと空気酸化の速度が遅く実用的でない。一方、ラジカル発生剤の濃度が上記範囲を超えると、分子鎖切断が進み、分子量の低下に伴い、ゴム組成物としての低ロス性、耐摩耗性、破壊強度が悪化するおそれがある。
【0020】
なお空気酸化では、溶液を空気と均一に接触させることが望ましい。空気との接触を均一にする手法は特に限定されないが、例えば振盪フラスコ中で振盪させるほか、攪拌や空気を吹き込むバブリング等により容易に行うことができる。空気酸化を進める温度は、通常、室温〜100℃で行われるが、特に限定されるものではない。反応は、通常1〜5時間程度で終了する。
【0021】
また、特開2001−261707号公報の記載に従って、ジエン系ゴムラテックスにオゾン含有ガスを吹き込み、オゾンの酸化作用でジエン系ゴムラテックスの酸化処理を行うこともできる。この方法では、過酸化水素の添加により、分解反応が促進される。
【0022】
本実施形態においては、以上の手法によって、前記ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加してジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖末端に該極性基含有ヒドラジド化合物を付加する。ここで、「分子鎖末端に付加」とは、少なくとも分子鎖末端に極性基含有ヒドラジド化合物が付加していることを意味する。
上記付加を行うためには、後述するように、ジエン系ゴムラテックスを酸化処理して得られた酸化ジエン系ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよいし、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固し得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよい。
【0023】
前記手法で得られた酸化ジエン系ゴムラテックスは、ジエン系ゴム分子鎖の末端にカルボニル基を有する。極性基含有ヒドラジド化合物は、高い反応性を有し、そのため、酸化ジエン系ゴムラテックスまたは該酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴム中のジエン系ゴム分子鎖末端のカルボニル基と容易に反応する。よって、酸化ジエン系ゴムラテックスまたは酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加することで、高価な触媒を用いることなく、ジエン系ゴム分子鎖末端に、簡便かつ安価に極性基を導入することができる。
【0024】
前記極性基含有ヒドラジド化合物としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有するヒドラジド化合物であれば特に制限されない。具体的には、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基などを好適に挙げることができる。これらの極性基の内、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応するものであることがより好ましく、アミノ基、ヒドロキシ基、含窒素複素環基、カルボキシ基、エポキシ基またはアミド基であることが特に好ましい。
本実施形態では、これらの極性基含有ヒドラジド化合物をそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するヒドラジド化合物が挙げられる。これらのアミノ基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記第1級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−アミノアセトヒドラジド、3−アミノプロパンヒドラジド、4−アミノブタンヒドラジド、2−アミノベンゾヒドラジド、4−アミノベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0027】
前記第2級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−(メチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(エチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(メチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(エチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(プロピルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(イソプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、4−(メチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(エチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、2−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0028】
前記第3級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルヒドラジド化合物、N,N−ジ置換ベンゾヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(ジエチルアミノ)プロパンヒドラジト、3−(ジプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、3−(ジイソプロピルアミノ)プロパンヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ブタンヒドラジド、2−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ベンソヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
【0029】
また、前記アミノ基の代わりに含窒素複素環基であってもよく、その含窒素複素環基における含窒素複素環としては、例えば、ピロール、ヒスチジン、イミダソール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、上記含窒素複素環は、他のへテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を有するヒドラジド化合物としては、例えば、イソニコチノヒドラジド、ピコリノヒドラジドが挙げられる。これら含窒素複素環基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0030】
前記ニトリル基を有するヒドラジド化合物としては、2−ニトロアセトヒドラジド、3−ニトロプロパンヒドラジド、4−ニトロブタンヒドラジド、2−ニトロベンゾヒドラジド、4−ニトロベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらのニトリル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0031】
前記ヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級または第3級ヒドロキシル基を含有するヒドラジド化合物が挙げられる。このようなヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−ヒドロキシアセトヒドラジド、3−ヒドロキシプロパンヒドラジド、4−ヒドロキシブタンヒドラジド、2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
前記カルボキシル基を含有するヒドラジド化合物としては、例えば3−カルボキシプロパンヒドラジド、4−カルボキシブタンヒドラジド、2−安息香酸ヒドラジド、4−安息香酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボキシル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0033】
前記エポキシ基を有するヒドラジド化合物としては、2−(オキシラン−2−イル)アセトヒドラジド、3−(オキシラン−2−イル)プロパンヒドラジド、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロパンヒドラジド等が挙げられる。これらエポキシ基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0034】
前記スズ含有基を有するヒドラジド化合物としては、例えば3−(トリブチルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリメチルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリフェニルスズ)プロパンヒドラジド、3−(トリオクチルスズ)プロパンヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリフェニルスズ)ブタンヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ブタンヒドラジド、2−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド等のスズ含有ヒドラジド化合物を挙げることができる。これらスズ含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0035】
前記アルコキシシリル基を含有するヒドラジド化合物としては、例えば2−(トリメトキシシリル)アセトヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)アセトヒドラジド、3−(トリメトキシシリル)プロパンヒドラジド、3−(トリエトキシシリル)プロパンヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ブタンヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ブタンヒドラジド、2−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
【0036】
本実施形態において、得られた変性ゴムラテックス中の極性基含有ヒドラジド化合物の付加量は、前記ジエン系ゴムラテックス中のゴム分質量に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。付加量がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力を向上させることができる。 上記付加量は、0.03質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。なお、上記付加量は、以下のようにして求めた。
まず、変性ゴムラテックスを蟻酸にて凝固させ、ロールを通して脱水し、シュレッダーにて凝固物を粉砕した後、乾燥させる。次いで、得られた乾燥ゴムを石油エーテル、その後アセトン及びメタノールの2:1混合溶媒で抽出し、未反応のヒドラジド化合物を分離する。その後、分離されたヒドラジド化合物をクロマトグラフにて定量し、酸化天然ゴムに添加したヒドラジド化合物の量と、クロマトグラフで定量されたヒドラジド化合物の量との差から付加量を算出した。
【0037】
(ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス)
本実施形態の接着剤組成物に用いられるブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは、ブタジエン化合物と、ビニルピリジン系化合物と、スチレン系化合物とを三元共重合させたものである。ここで、ブタジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられ、これらの中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらブタジエン化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
上記ビニルピリジン系化合物は、ビニルピリジンと、該ビニルピリジン中の水素原子が置換基で置換された置換ビニルピリジンとを包含する。該ビニルピリジン系化合物としては、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2−ビニルピリジンが好ましい。これらビニルピリジン系化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0039】
前記スチレン系化合物は、スチレンと、該スチレン中の水素原子が置換基で置換された置換スチレンとを包含する。該スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。これらスチレン系化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0040】
前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは、ブタジエン由来の構成単位、ビニルピリジン由来の構成単位及びスチレン由来の構成単位の質量比が、80/10/10〜30/20/50であることが好ましい。
このブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスは市販品として入手することが可能であり、例えば、日本A&L社製、商品名「PYRATEX」(固形分41質量%)のものが挙げられる。
【0041】
本実施形態の接着剤組成物においては、前記変性ゴムラテックスのゴム分質量Aと上記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分質量Bとの質量比(A/B)が10/90〜70/30であることが好ましい。質量比がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力を向上させることができる。
上記質量比(A/B)は、20/80〜60/40であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態においては、上述の変性ゴムラテックス及びブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスに加えて、本発明の効果が損なわれない範囲で、他のゴムラテックス1種以上を適宜併用することができる。
他のゴムラテックスとしては、例えばブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体をカルボキシ基等で変性した変性ラテックス、スチレン−ブタジエンラテックス及びその変性ラテックス、アクリル酸エステル共重合体系ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスの他、被着ゴムに配合されるゴム成分と同種のゴム成分を水又は有機溶媒に分散させて調製したラテックス等を用いることができる。
【0043】
(二価フェノール類)
本実施形態の接着剤組成物に用いられる二価フェノール類としては、無置換の二価フェノール及び炭素数1〜10のアルキル基等で置換された置換二価フェノールが好ましい。無置換の二価フェノールとしては、例えばレゾルシン、カテコール及びヒドロキノンが挙げられ、置換二価フェノールとしては、例えば3−メチルレゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−プロピルレゾルシン、3−ブチルレゾルシン、3−t−ブチルレゾルシン等が挙げられる。これらの内、レゾルシンが好ましい。
本実施形態の接着剤組成物に二価フェノール類が存在すると、この二価フェノール類と変性ゴムラテックス中のジエン系ゴムの末端に付加された極性基含有ヒドラジド化合物とが結合できるため、ゴム加硫後の接着力が改良されることとなる。
【0044】
本実施形態の接着剤組成物においては、上記二価フェノール類に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、所望によりレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を配合しても良い。
レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂としては、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物を用いることができる。このレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物は、ホルムアルデヒド由来の構成単位とレゾルシン由来の構成単位とを含有し、ホルムアルデヒド由来の構成単位が化学量論的に不足する状態を維持することが重要である。即ちこれにより、樹脂を低分子量で可溶性に維持することができる。
【0045】
(二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物)
本実施形態の接着剤組成物に用いられる、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物としては、二価フェノール類のヒドロキシ基と反応し樹脂を生成するものであれば何でも良い。官能基としては、アルデヒド基または第1級アミノ基がヒドロキシ基との反応性が比較的高いため好ましい。二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物としては、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0046】
本実施形態の接着剤組成物においては、前記変性ゴムラテックスのゴム分及び前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックスのゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10質量部以上30質量部以下含まれることが好ましい。樹脂成分の含有量がこの範囲であれば、有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力を向上させることができる。前記樹脂成分の含有量は、15質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
なお、所望により他のゴムラテックスが加えられる場合は、そのゴム分もゴム成分に加えられ、所望によりレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂等の樹脂が加えられる場合は、その樹脂分も樹脂成分に加えられる。
【0047】
本実施形態の接着剤組成物においては、前記の変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を熟成させる際に、触媒として塩基性化合物を用いることが好ましい。この塩基性化合物としては、例えばアンモニアや水酸化ナトリウム等を用いることができる。この塩基性化合物の配合量は、塩基性化合物の種類にもよるが、アンモニアの場合、固形分換算で、前記変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の合計量100質量部に対して、通常1〜8質量部程度、好ましくは2〜6質量部である。一方、水酸化ナトリウムの場合は、固形分換算で、前記変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の合計量100質量部に対して、通常0.1〜2質量部程度、好ましくは0.2〜1質量部である。
本実施形態においては、塩基性化合物は、水溶液の形態で、前記変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物の混合液に加えても良いし、他の成分と同時に加えても良い。
【0048】
本実施形態の接着剤組成物が適用される工業用繊維については特に制限はなく、種々の有機繊維コードや無機繊維コードに適用されるが、有機繊維コードに適用されることが好ましい。有機繊維コードとしては、木綿、レーヨン、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−6,6)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、アラミド(m−フェニレンイソフタルアミド、p−フェニレンテレフタルアミド)等のコードを挙げることができる。これらのコードはゴム製品の補強材として本実施形態の接着剤組成物にて処理される。
【0049】
本実施形態の接着剤組成物の使用方法は特に制限がなく、繊維材料を接着剤組成物に浸漬する方法、ドクターナイフ又はハケで塗布する方法、スプレー塗布する方法、粉体化して吹き付け塗布する方法等のいずれの方法でも良い。具体的には、例えば、有機繊維コードに含浸付着させた後、加熱処理し、その後に上記有機繊維コードを未加硫ゴムに埋設し、次いで該未加硫ゴムを加硫処理、又は電子線、マイクロ波もしくはプラズマによる処理をして有機繊維コードとゴムとを一体化することにより、有機繊維コードで補強されたゴム製品を製造する。
上記の加熱処理をする温度としては、該有機繊維コードに、接着性を効果的に付与する観点から、100〜260℃が好ましく、220〜255℃がより好ましく、230〜250℃が特に好ましい。
【0050】
また、上記有機繊維コードに対する接着剤組成物の付着量(乾燥後の含浸処理済コードの質量を基準として、接着剤組成物による増加質量)は1〜15質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。更に、未加硫ゴムは、得られるゴム製品の用途に応じて、適宜選定される。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、後述する接着力及び密着力の評価法は下記の方法に基づいて行った。
<評価方法>
(接着力)
供試接着剤組成物により接着剤処理した繊維コードを第1表に示す配合組成の接着試験用の未加硫ゴム組成物の表面近傍に埋め込み、加硫条件155℃×20分、2MPaの加圧下で加硫し、短冊状の形状を有するサンプルを作製した。得られた加硫物サンプルから繊維コードを掘り起こし、JIS K 6256:1999のa)に準拠して、毎分30cmの速度で繊維コードを加硫ゴムから剥離した。このときの剥離強さを室温(23℃)で測定し、コード1本当りの接着力(kg/本)を算出した。
【0052】
【表1】

[注]
*1:JSR株式会社製、商品名「IR2200」
*2:N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、精工化学(株)製、商品名「オゾノン3C」
*3:HAF、東海カーボン(株)製、商品名「シースト3」
*4:富士興産(株)製、商品名「フツコールAROMAX#1」
*5:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ」
【0053】
(密着力)
上記接着力の評価試験の手順において、加硫を実施せずに、繊維コードを剥離した場合の剥離強さからコード1本当りの密着力(kg/本)を算出した。
【0054】
<変性ゴムラテックスの製造>
(変性天然ゴムラテックスA)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター(斎藤遠心機工業(株)製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60質量%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。
得られた酸化天然ゴムラテックスに、予め10mLの水と90mgの乳化剤「エマルゲン1108」(花王株式会社製)をイソニコチノヒドラジド3.0gに加えて乳化したものとを添加し、攪拌しながら75℃で16時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスAを得た。
【0055】
次に、上記変性天然ゴムラテックスの一部にギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して得られた変性天然ゴムを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行ったところ、抽出物の分析から未反応のヒドラジド化合物は検出されなかった。この結果から、変性天然ゴムラテックスAにおけるイソニコチノヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.51質量%であることが確認された。
【0056】
(変性天然ゴムラテックスB)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド3.0gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスBを製造した。この変性天然ゴムラテックスBにおいて、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.50質量%であった。
【0057】
(変性天然ゴムラテックスC)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド3.9gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスCを製造した。この変性天然ゴムラテックスCにおいて、4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.65質量%であった。
【0058】
(変性天然ゴムラテックスD)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスDを製造した。変性天然ゴムラテックスDにおいて、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.54質量%であった。
【0059】
(変性天然ゴムラテックスE)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−安息香酸ヒドラジド3.9gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスEを製造した。変性天然ゴムラテックスEにおいて、4−安息香酸ヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.63質量%であった。
【0060】
(変性天然ゴムラテックスF)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジド8.5gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスFを製造した。この変性天然ゴムラテックスFにおいて、4−(トリブチルスズ)ブタンヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して1.38質量%であった。
【0061】
(変性天然ゴムラテックスG)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド5.6gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスGを製造した。この変性天然ゴムラテックスGにおいて、4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.91質量%であった。
【0062】
(変性天然ゴムラテックスH)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター(斎藤遠心機工業(株)製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。
得られた酸化天然ゴムラテックスに、予め10mLの水と90mgの乳化剤「エマルゲン1108、花王株式会社製」をイソニコチノヒドラジド3.0gに加えて乳化したものとを添加し、攪拌しながら60℃で12時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスHを得た。
【0063】
次に、上記変性天然ゴムラテックスの一部にギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して得られた変性天然ゴムを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行ったところ、抽出物の分析から未反応のヒドラジド化合物は検出されなかった。この結果から、変性天然ゴムラテックスHにおけるイソニコチノヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.46質量%であることが確認された。
【0064】
(変性天然ゴムラテックスI)
変性天然ゴムラテックスIの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジド3.0gを用いた以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスIを製造した。この変性天然ゴムラテックスIにおいて、3−(ジメチルアミノ)プロパンヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.45質量%であった。
【0065】
(変性天然ゴムラテックスJ)
変性天然ゴムラテックスIの製造において、イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3gを用いた以外は様の方法で、変性天然ゴムラテックスJを製造した。この変性天然ゴムラテックスJにおいて、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.48質量%であった。
【0066】
(変性天然ゴムラテックスK)
変性天然ゴムラテックスAの製造において、水、乳化剤、イソニコチノヒドラジドの添加量を、それぞれ100mL、0.9g、31.2gとした以外は同様の方法で、変性天然ゴムラテックスKを製造した。この変性天然ゴムラテックスKにおいて、イソニコチノヒドラジドの付加量は、天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して5.2質量%であった。
【0067】
<実施例1>
(接着剤組成物の製造)
第2表に示す組成内容の内、軟水にレゾルシンを溶解させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を加え、次いでホルムアルデヒド水溶液を加え、27℃、8時間熟成し、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂液を得た。得られたレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂液に、上記の変性天然ゴムラテックスAを固形分41質量%に調節したもの、及びブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス(日本A&L社製、商品名「PYRATEX」、固形分41質量%)を第2表に示す配合量にて加えた後、更に、23℃で16時間熟成して、接着剤組成物(1)を得た。なお、この接着剤組成物(1)における樹脂成分及びゴム成分の質量比は第3表に示される。
【0068】
【表2】

【0069】
(繊維コードの製造と接着剤処理)
繊維コードとして、6−ナイロンの1400dtexの原糸を下撚り39回/10cm、上撚り39回/10cmで撚り、撚り構造1400dtex/2として、接着剤組成物(1)に浸漬し、160℃で60秒間乾燥し、更に240℃で60秒間熱処理して、接着剤処理した繊維コードを得た。この繊維コードについて、接着力及び密着力を評価した。結果を第3表に示す。
【0070】
<実施例2〜25、比較例1〜6>
実施例1における接着剤組成物の製造において、使用した天然ゴムラテックス、ゴム分の質量比、樹脂成分/ゴム成分の質量比を、各々第3表に示すように変更した以外は、同様にして接着剤組成物を製造し、実施例1と同様に接着剤処理をした繊維コードについて、同様に接着力および密着力を評価した。なお、第3表中、使用した天然ゴムラテックス欄の例えば「変性A」は変性天然ゴムラテックスAを、「酸化」は酸化天然ゴムラテックスを、「未変性」は天然ゴムラテックスを各々示し、当該酸化天然ゴムラテックスは前記変性天然ゴムラテックスの製造において酸化処理まで行ったもの、天然ゴムラテックスはフィールドラテックスである。
結果を第3表にまとめて示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
第3表の結果から分かるように、実施例1〜25の接着剤組成物は、比較例1〜6の接着剤組成物と比較して、いずれも有機繊維コードと未加硫ゴムとの密着性が低下することなく、ゴム加硫後の接着力が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の接着剤組成物は、工業用繊維、特に有機繊維コードと硫黄架橋可能なゴムの加硫体との複合体の接着処理に用いられ、タイヤ、コンベアベルト、ホース、空気バネ等のあらゆるゴム製品の製造に好適に用いられる。特にタイヤでは前記複合体としてベルト材、カーカス材、プライ材、キャッププライ材、レイヤー材等として使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化処理を施したジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖末端に極性基含有ヒドラジド化合物を付加させてなる変性ゴムラテックス、ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス、二価フェノール類及び該二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記ジエン系ゴムラテックス中のゴム分質量に対して0.01質量%以上5.0質量%以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記極性基含有ヒドラジド化合物における極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記酸化処理が、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、空気酸化する処理であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行う請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及びケトン類の少なくともいずれかである請求項4または5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ラジカル発生剤が、過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項5または6に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ジエン系ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスである請求項1〜7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記二価フェノール類が、レゾルシンである請求項1〜8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記官能基が、アルデヒド基または第1級アミノ基である請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物が、ホルムアルデヒドである請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記変性ゴムラテックス中のゴム分質量Aと前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス中のゴム分質量Bとの質量比(A/B)が、10/90〜70/30である請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記変性ゴムラテックス中のゴム分及び前記ブタジエン−スチレン−ビニルピリジン三元共重合体ゴムラテックス中のゴム分からなるゴム成分100質量部に対して、前記二価フェノール類及び前記二価フェノール類のヒドロキシ基と反応する官能基を有する化合物からなる樹脂成分が10質量部以上30質量部以下含まれる請求項1〜12のいずれかに記載の接着剤組成物。

【公開番号】特開2012−219181(P2012−219181A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86159(P2011−86159)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】