説明

接着剤

【課題】基体に対する必要な接着性を確保しながら、基体から容易に剥離できる易剥離性の接着剤を提供する。
【解決手段】全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を含有し、凝集破壊を起こすことなく界面剥離が可能な接着剤を用いる。上記重合体(II)の加水分解性珪素基はトリアルコキシル基であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に関し、さらに詳しくは易剥離性の接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
基体に接着した被着体を、基体表面を破損することなく、かつ接着剤を基体表面に残留させることなく、容易に剥離できる(以下、易剥離性という。)接着剤は、建築部材、電気電子部品、自動車部品、事務用品、生活用品等の種々の分野で使用されている。
【0003】
易剥離性の接着剤には、基体に対する接着性と基体からの剥離性の両立が要求される。これに対し、例えば、特許文献1には、基材のリサイクルのために、水性エマルジョンに充填材、発泡剤および離型剤を配合した易剥離性水性接着剤を用いて積層した複合パネルをエネルギー照射して、例えば加熱して、剥離する方法が開示されている。また、特許文献2には、屋外での長期使用が可能な、第3級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを60重量%以上含むアクリル系共重合体からなる仮固定用粘着剤が開示されている。また、特許文献3には、自動車工業において完成車を保護するのに用いる保護用シート状物を固定するための両面接着テープであって、接着剤にホットメルト接着剤を用いた両面接着テープが開示されている。また、特許文献4には、住宅リフォームの際に、床材等の表面材を下地材から剥離して、新しい表面材を再度接着施工するのに用いる易剥離性一液湿気硬化型接着剤であって、粉体成分と液体成分からなり、液体成分が加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマーと非反応性の高分子重合体を含む接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−83603号公報
【特許文献2】特開2004−203934号公報
【特許文献3】特開2009−68013号公報
【特許文献4】特開2010−111726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、被着体の位置ずれや剥がれを防止するために基体に対する接着力を大きくすると、剥離性が低下し、特許文献1に記載されているように加熱等の剥離処理が必要となるという問題がある。そのため、基体に対する必要な接着性を確保しながら、基体から容易に剥離できる易剥離性の接着剤に対するニーズは依然として存在する。
【0006】
そこで、本発明は、基体に対する必要な接着性を確保しながら、基体から容易に剥離できる易剥離性の接着剤を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の接着剤は、全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を含有し、凝集破壊を起こすことなく界面剥離が可能なことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の接着剤は、接着面に平行な剪断力では容易に剥がれることのない接着力を有する一方で、引き剥がすことにより容易に剥離可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の接着剤は、全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を含有する。
【0010】
(重合体)
本発明に用いる重合体(I)と(II)の主鎖には、ポリオキシアルキレン重合体又はビニル系重合体を用いる。ポリオキシアルキレン重合体には、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CH(CH)CHO−、−CH(C)CHO−、−CHCHCHO−、及び−CHCHCHCHO−から選択された1種以上の繰り返し単位からなるものを用いることができる。好ましくは、−CHCH(CH)O−である。また、ビニル系重合体には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及びこれら重合体のいずれか2種以上を成分として含む共重合体等を挙げることができる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリレートである。
【0011】
主鎖にポリオキシアルキレン重合体を用いた場合、重合体(I)の分子量は500〜30000、好ましくは1000〜20000である。また、重合体(II)の分子量は500〜30000、好ましくは5000〜20000である。ここで、重合体(I)及び(II)の分子量は、原料である水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体の水酸基価換算価分子量に基づいて算出した値である。
【0012】
また、主鎖にビニル系重合体を用いた場合、重合体(I)の数平均分子量は500〜30000、好ましくは1500〜15000である。また、重合体(II)の数平均分子量は500〜30000、好ましくは2000〜15000である。
【0013】
また、重合体(I)の加水分解性ケイ素基は分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率が50%未満であり、25%以上50%未満が好ましい。また、重合体(II)の加水分解性ケイ素基は分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率が50%以上100%以下であり、60%以上100%以下が好ましい。
ここで、分子鎖末端に対する加水分解性ケイ素基の導入率は、末端基が水酸基である重合体の場合、加水分解性ケイ素基導入後の未反応の水酸基を水酸基価分析法を用いて算出することができる。また、末端基の種類に限定されない方法として、IR法やNMR法を用いて加水分解性ケイ素基導入後の末端基を定量することにより算出する方法を用いることもできる。
【0014】
また、重合体(I)及び(II)の加水分解性ケイ素基は、アルキルジアルコキシシリル基やトリアルコキシシリル基を用いることができる。アルキルジアルコキシシリル基は、アルキル基が炭素数1から6のアルキル基が好ましく、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基又はn−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはメチルジメトキシシリル基又はメチルジエトキシシリル基、さらに好ましくはメチルジメトキシシリル基である。また、トリアルコキシシリル基は、アルコキシ基が炭素数1から6のアルコキシ基、すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基が好ましく、より好ましくはトリメトキシシリル基である。重合体(I)及び(II)の加水分解性ケイ素基の組み合わせは特に限定されない。
【0015】
重合体(I)100重量部に対し、重合体(II)を5〜250重量部、好ましくは5〜200重量部使用する。5重量部より少ないと硬化性が悪くなったり、硬化後の残タックが激しく実用的でない。また、250重量部より多いと、基材に接着してしまい、容易に剥離できなくなるからである。
【0016】
ポリオキシアルキレン重合体に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては、2官能の開始剤の存在下、環状エーテルを開環重合させてポリオキシアルキレンジオールを製造し、このジオールの水酸基に加水分解性ケイ素基を導入する方法等の公知の方法を用いることができる。また、ビニル系重合体に加水分解性ケイ素基を導入する方法としては、ビニル系モノマーと、加水分解性ケイ素基含有モノマーとを共重合する方法を用いることができる。加水分解性ケイ素基の導入率を変化させる方法としては、ポリオキシアルキレン重合体の場合、ジオールの水酸基に対する加水分解性ケイ素基のモル数を変化させることに行うことができる。また、ビニル系重合体の場合、共重合させる加水分解性ケイ素基含有モノマーの配合比を変化させることにより加水分解性ケイ素基の導入率を変化させることができる。
【0017】
(硬化触媒)
本発明の接着剤には、硬化反応を促進させるために硬化触媒を用いる。具体例としては、アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、ビスマストリス−2−エチルヘキサノエート等の金属塩、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸等の酸性化合物、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類、ピペリジン、ピペラジン等の複素環式アミン類、メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン類、エタノールアミン類、トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン化合物を挙げることができる。また、ジオクチル酸錫、ジナフテン酸錫、ジステアリン酸錫等の2価の錫と上記アミン類の混合物を挙げることもできる。
【0018】
また、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート及び以下のカルボン酸型有機錫化合物並びにこれらのカルボン酸型有機錫化合物と上記のアミン類との混合物を挙げることもできる。
(n−CSn(OCOCH=CHCOOCH
(n−CSn(OCOCH=CHCOO−(n−C))
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOCH
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO−(n−C))
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO−(iso−C17))
【0019】
また、以下の含硫黄型有機錫化合物を挙げることもできる。
(n−CSn(SCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCHCOO)
(n−C17Sn(SCHCOOCHCHOCOCHS)
(n−CSn(SCHCOO−(iso−C17))
(n−C17Sn(SCHCOO−(iso−C17))
(n−C17Sn(SCHCOO−(n−C17))
(n−CSnS
【0020】
また、以下の有機錫オキシドを挙げることもできる。
(n−CSnO
(n−C17SnO
【0021】
また、上記の有機錫オキシドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物を挙げることもできる。
【0022】
また、以下のキレート錫化合物およびこれらのキレート錫化合物とアルコキシシランとの反応生成物(但し、acacはアセチルアセトナト配位子を表す。)を挙げることもできる。
(n−CSn(acac)
(n−C17Sn(acac)
(n−C(C17O)Sn(acac)
【0023】
また、以下の−SnOSn−結合含有有機錫化合物を挙げることもできる。
(n−C(CHCOO)SnOSn(OCOCH)(n−C
(n−C(CHO)SnOSn(OCH)(n−C
【0024】
硬化触媒は、重合体(I)及び(II)の合計量100重量部に対し、0.01〜10重量部使用する。0.01重量部より少ないと効果が十分でなく、10重量部より多いとい硬化物に耐久性が低下するので好ましくない。
【0025】
本発明の接着剤には、必要に応じて、充填剤、脱水剤、可塑剤等の添加剤を添加することができる。
【0026】
(充填剤)
充填剤としては、公知の充填剤を使用することができる。具体例としては、表面を脂肪酸または樹脂酸系有機物で表面処理した炭酸カルシウム、さらにこれを微粉末化した平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、沈降法により製造した平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウム、平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填剤、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填剤等を挙げることができる。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
充填剤の使用量は重合体(I)及び(II)の合計量に対して1〜1000重量%であり、好ましくは10〜300重量%である。
【0028】
(可塑剤)
本発明の接着剤には、硬度調整のために可塑剤を使用することもできる。可塑剤としては公知の可塑剤を使用することができる。具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルエステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル類;ペンタエリスリトールエステル等;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;ポリプロピレングリコール;ポリエチレングリコール;塩素化パラフィン;等を挙げることができる。これらの可塑剤を単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0029】
(脱水剤)
本発明の接着剤には、硬化物の物性や硬化性及び貯蔵安定性を調節する目的で加水分解性ケイ素化合物を任意に添加できる。具体例としては、テトラメチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどやこれらのメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などを挙げることができるが、これらに限定されない。添加量は重合体(I)及び重合体(II)の合計量100重量部に対し、0.5〜5重量部である。0.5重量よりも少ないと貯蔵安定性が悪くなる。また5重量部よりも多いと剥離性が低下するからである。
【0030】
その他の添加剤として、チキソ性付与剤、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、顔料、各種の安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、オリゴエステルアクリレートのような表面改質を目的とした光硬化性化合物、粘度調整のための溶剤等を添加することもできる。しかし、湿気硬化性樹脂組成物に一般的に使用される各種のシランカップリング剤といった粘着付与剤は添加しない。粘着付与剤を用いると、被着体に対し強力に接着するようになるからである。
【0031】
また、粘度を調整する目的で溶剤を使用することもできる。
【0032】
また、本発明の接着剤は、環境条件下で硬化可能であり、加熱することにより又は水分を添加することにより硬化を促進させることができる。
【0033】
また、本発明の接着剤は、B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度比で規定される接着剤のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であることが好ましい。好ましくは、チキソ比は2.5〜4.0である。ここで、チキソ比は、2rpm、10rpmでの粘度をそれぞれV2rpm、V10rpmとした場合、V2rpm/V10rpmで表すことができる。チキソ比が2.5以上で、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上であると、液垂れを防止して、塗布された形状を維持することができる。
【0034】
本発明の接着剤は、特にその使用方法は限定されず、種々の塗布装置を用いて基体に塗布することができる。
【0035】
本発明の接着剤は、接着面に平行な剪断力では容易に剥がれることのない接着力を有する一方で、引き剥がすことにより容易に剥離可能であり、さらに、引き剥がした際、接着剤が千切れてしまうことなく、接着面からきれいに剥離可能である。なお、本発明においては、剥離時に、接着剤が千切れてしまい、一部が接着面に残留するような状態に対して、「接着剤が凝集破壊を起こした」、という表現を用いる場合もある。また、本発明においては、剥離時に、接着剤が接着面からきれいに剥離した状態に対して、「界面剥離」という表現を用いる場合もある。
【0036】
本発明において、接着面に平行な剪断力では容易に剥がれることのない接着力とは、JIS K6850の引張せん断接着強さ試験法に基づいて得られる引張せん断接着強度が、0.1〜1.0N/mm、好ましくは0.1〜0.8N/mm、さらに好ましくは0.2〜0.8N/mmである。また、引き剥がすことにより容易に剥離可能とは、JIS K6854−2のはく離接着強さ試験法に基づいて得られる90度はく離接着強度が、1〜20N/15mm、好ましくは1〜10N/15mm、さらに好ましくは1〜5N/15mmである。
【0037】
本発明の接着剤は、易剥離性の要求される種々の用途に用いることができる。例えば、壁面等に物品を吊り下げるための吊り下げ具の固定、物品の建物内の床面、壁面または家具、さらには自動車のシートやダッシュボード等への固定、建築部材、自動車部品、電気電子部品等の物品の組立また結合を行うための固定、物品の衝撃緩和または消音のための固定、剥離可能なラベルの固定等がある。具体的には、フック等の吊り下げ具の壁面固定に用いることにより、物品のずれ落ちを防止することができ、さらに容易に剥離できるので、壁面を汚すことがない。また、玄関マットやカーペットの固定に用いることによりずれを防止できる。また、小物入れ等を壁面や家具等に固定する際にも用いることもできる。また、家具を壁面や床面に固定するのに用いることもできる。また、建築現場やイベント会場などで、床面保護のための塩ビシート等の保護シートを固定するのに用いることもできる。また、建築部材の組立または結合として、木質フローリング等の床材や、内装化粧板、壁紙、キッチンパネル、浴室パネル等の接合に用いることもできる。また、移動車両を用いて物品を輸送する際、貨物室内の床面や壁面に輸送容器を固定することにより、輸送時の振動に伴う衝撃の緩和あるいは騒音の消音が可能となる。
なお、上記の用途は例示であり、本発明の用途は上記の用途に限定されるものではない。
【0038】
また、本発明が接着対象とする基体の材質は特に限定されず、例えば、金属、ガラス、プラスチック、セラミックス、コンクリート、石材、木質材料、繊維等の各種の材料が含まれる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における「部」は、特に断らない限り「重量部」を表す。
【0040】
実施例1から5および比較例1から4
(製造方法)
重合体(I)としてエクセスターS1000(旭硝子社製)およびアルフォンUS6110(東亜合成社製)、重合体(II)としてエクセスターS2420、エクセスターA2551を用いた。エクセスターS2420は加水分解性珪素基が基本的にジアルコキシアルキルシラン基で、エクセスターA2551はトリアルコキシシラン基である。これら重合体と、可塑剤としてポリプロピレングリコール、充填剤として加熱乾燥により水分を除去したシリカを加え、遊星式攪拌器(クラボウ社製)を使用して攪拌・混合した。得られた混合物を室温まで温度を下げてから、脱水剤としてシラン化合物と硬化触媒としてジブチルスズビス(アセチルアセトネート)を加えて攪拌・混合して、実施例1〜5および比較例1〜4の樹脂組成物を得た。表1に作製した樹脂組成物の組成を示す。また、比較例5として、市販の両面接着テープ(大創産業社製No.A−13)を用いた。
【0041】
【表1】

【0042】
(試験方法)
(1)硬化性評価
温度23℃、湿度55%雰囲気下で製造した樹脂組成物を10mm幅で10mmの高さのアルミチャネルに打設し、24時間後切り出し、厚み(単位:mm)を測定した。厚みが0.5mm以上であれば実用上問題のない硬化速度を有する。
【0043】
(2)貯蔵安定性評価
製造した樹脂組成物をカートリッジ容器に充填し、温度50℃、湿度80%のオーブンに7日間に保存した後、押し出して外観の変化の有無、タックフリー時間を確認した。外観の変化が無くタックフリー時間が2倍以上変化しない場合を合格(○)とし、タックフリー時間が2倍を越えて変化した場合を不合格(×)とした。ただし、硬化性試験において厚みが0.5mmより小さい場合には硬化性不良として、貯蔵安定性の評価は行わなかった。
【0044】
(3)チキソ比評価
粘度測定は東京計器株式会社製のB型粘度計を用いて室温(20〜25℃)で行った。回転数が2rpmと10rpmでの粘度を測定し、チキソ比を算出した。
【0045】
(4)せん断接着強度
JIS K6850の引張せん断接着強さ試験法に基づき、幅15mm、長さ150mm、厚み2mmのSUS板同士を接着部幅15mm、長さ10mmで厚み1mm以下で接着させ、23℃、50%雰囲気下で7日間静置した。次に引張試験機にセットして、引張速度5mm/分で引張ったときの最大接着強度を測定した。
【0046】
(5)はく離接着強度
JIS K6854−2のはく離接着強さ試験法に基づき、幅15mm、長さ100mm、厚み0.3mmのアルミシート2枚を40mmの位置で90度に折り曲げる。その状態で接着部幅15mm、長さ60mmでT字型となるように、厚み1mm以下で接着させ、23℃、50%雰囲気下で7日間静置した。次に引張試験機にセットして引張速度100mm/分で引張ったときの最大接着強度を測定した。
【0047】
(6)剥離状態
上記のはく離接着強さ試験において、試験終了後のアルミシートについて、接着剤が凝集破壊を起こしていないかどうか、また界面剥離を起こしていないかどうかを目視で観察した。
【0048】
【表2】

【0049】
(結果)
実施例1から5は、硬化性、貯蔵安定性のいずれも優れた特性を有していた。また、チキソ比は、2.5以上であり、かつV10rpmも100Pa・s以上であった。また、実施例1から5は、0.15N/mm以上のせん断接着強度を有していながら、はく離接着強度は5N/15mm以下であり、接着剤が凝集破壊することなく、容易に界面剥離することができた。
【0050】
実施例6.
市販のフック(キャンドゥ社製、耐荷重1kg、接着面積12×60mm)の粘着剤層を基材から除去し、実施例1で用いた樹脂組成物を基材に塗布し、モルタル壁面に接着した。3日間放置後、フックに重量1kgから1kgずつ重量を増やした袋を吊し、24時間後フックが外れてしまう重量を測定したところ、7kgであった。また、試験後のフックおよび接着剤をモルタル面からきれいに剥がすことができた。
【0051】
実施例7.
市販のフック(キャンドゥ社製、耐荷重3kg、ピン3本で固定するタイプ)をピンではなく、実施例1で用いた樹脂組成物をフック裏面に塗布し、壁紙を施工した石膏板に接着した。3日間放置後、フックに重量3kgの袋を吊るし、7日間放置したところフックはずれていなかった。また、7日後にフックおよび接着剤を壁紙からきれいに剥がすことができた。
【0052】
比較例6.
実施例6で用いた市販のフックをそのまま、モルタル壁面に貼り付けた。なお、市販のフックの粘着剤層は、発泡体テープに粘着剤層を貼り付けた両面テープからなる。実施例6の場合と同様に、フックに重量1kgから1kgずつ重量を増やした袋を吊し、24時間後フックが外れてしまう重量を測定したところ、1kgであった。耐荷重1kgのフックだが、モルタルという粗面に対して粘着力が発揮されにくいことが確認できた。
【0053】
比較例7.
実施例7で使用した市販のフックを仕様どおり、ピン3本で壁紙を施工した石膏板に固定した。フックに重量3kgの袋を吊るし、7日間放置したところフックはずれていなかった。また、7日後にフックを壁紙から剥がそうとしたところ、ピンの穴が広がり見栄えが良くなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全分子末端基の50%未満が加水分解性珪素基である重合体(I)100重量部と、全分子末端基の50%以上が加水分解性珪素基である重合体(II)5〜200重量部とを含む湿気硬化型樹脂組成物を含有し、凝集破壊を起こすことなく界面剥離が可能な接着剤。
【請求項2】
上記重合体(II)の加水分解性珪素基がトリアルコキシル基である請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
B型回転粘度計による回転数が2rpmと10rpmでの粘度の比V2rpm/V10rpmで規定される上記湿気硬化型樹脂組成物のチキソ比が2.5以上であり、かつ10rpmでの粘度が100Pa・s以上である請求項1記載の接着剤。
【請求項4】
せん断接着強度が0.1N/mm以上、はく離接着強度が5.0N/15mm以下である請求項1記載の接着剤。

【公開番号】特開2012−241080(P2012−241080A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111189(P2011−111189)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000107000)シャープ化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】