説明

接着性シリコーンエラストマー組成物

本発明は、接着性を有し、またシリコーンに基づく基板の組立体のために高温で白金および過酸化物の双方の触媒により架橋することができる、それ自体ストリップの形態をとることができる高性能シリコーンエラストマー組成物に関する。この組成物は、少なくとも1つのゴム、1つのポリオルガノ水素シロキサン型の接着促進剤を有し、この接着促進剤の種類および量を選択し、この選択は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基が過剰となり、接着すべき前記シリコーン基板に対するSi共有結合のポテンシャル面密度が、60nmあたりに少なくとも1つのSi結合を有するように行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一般的分野は、少なくとも1種類の有機過酸化物に基づく触媒の反応によって架橋化しうるポリオルガノシロキサンの反応によって、又は、金属触媒、好ましくは白金をベースとする触媒の存在下で、ポリオルガノ水素シロキサンとともにアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの反応によって、加熱下で架橋可能であり、又は加硫するシリコーンエラストマー組成物の分野である。
【背景技術】
【0002】
このような組成物は、例えば、繊維質材料、特に、可撓性支持材、例えば織成したまたは不織の支持材に基づくシリコーン基板を接合するのに使用し、これら支持体は、表面塗布または少なくとも1つの支持体表面を含浸して得られる、少なくとも1種類のシリコーンコーティングを有し、この場合、このコーティング操作時にエラストマーに架橋することができる少なくとも1種類の液体シリコーン組成物を使用する。ニス、特にシリコーンニスもそのようなコーティングに塗布することができる。このような種々の場合に、シリコーン複合材が得られる。
【0003】
これら2次元の可撓性支持材は、特に、シリコーンエラストマー層で随意に被覆される織布から選択し、シリコーンエラストマー層には随意に防汚ニスを塗布し、そのような織布は、
1.建築用布地(テキスタイル・アーキテクチャの構成材)、または
2.建築用布地以外の可撓性支持材
の製造に用いることができる。
【0004】
適用例1の分野については、本明細書にわたり、及び、本発明の要旨の範囲内において、用語「建築用布地(architectural textile)」は、織布又は不織布、および、より一般的な任意の繊維質支持材を意味し、コーティング後に以下のもの、すなわち、
シェルター、可動性の構体、繊維建築、パーティション、可撓性ドア、防水シート、テント、屋台、ひさし
家具、被覆材、看板、風よけ、フィルターパネル、
日射保護装置、天井、ブラインド
を準備することを意図する。
【0005】
適用例2の分野については、建築用布地以外のこれらの可撓性支持材は、例えば、特に以下のもの、すなわち、
車の乗員を守るために用いられるエアーバッグ、
ガラス編み(電線を温度や誘電から保護するための織られたガラス鞘)
コンベヤーベルト、防火帯布、又は断熱布、
衣服、
補償器(配管用可撓性タイトスリーブ)
の製造を意図する。
【0006】
特にテキスタイル・アーキテクチャ(織物利用建築)の分野では、これらシリコーン複合材による種々の部品もしくは構成材を組み立てて、これらを局所的に強化する(補強する)、または部品の端部相互を突き合わせて接合して、表面積を増大するもしくは最終物品を調製することがしばしば必要となる。
【0007】
この作業は、しばしば縫製によって行われ、この縫製によってより適切な組立品ができるが、ある種の欠点もある。実際、縫い目はシリコーン複合材に多数の孔があき、密閉性及び化学的、熱的、気候的な攻撃に対する耐性を悪くする。対応する最終的デザインもこのことによって限定される。
【0008】
他の実施方法としては、特にシリコーン接着剤を用いた接着である。それでもなお、シリコーン接着剤は機械的に効率的であるが、液状又はペースト状の性質を有するため、不規則な接合を引き起こし、審美的に好ましくない。
【0009】
このことが、なぜ接着介在物を開発し、シリコーン接着剤をラミネートしたストリップ形式で存在させたかの理由である。ストリップは、このとき、組み合わせるべきシリコーン複合体のシート間に適正に位置決めされる。この結合方法によれば、生ずる接着接合部分を初期形状に保持することができる。
【0010】
このように、特許文献1(欧州特許第219075号)及びその対応出願である特許文献2(米国特許第4889576号)では、シリコーン被覆した布地を、シリコーンラバーストリップ、例えば加熱下で加硫できるエラストマーによって接着することができ、このストリップは、組み合わすべき2つの複合部分間に配置することを開示している。これらは、室温で可塑性の接着性ストリップ(非液体)である(ウィリアム可塑度は、170〜600、例えば280である)。接着剤の加硫は、圧縮−加熱フェーズ中に起こる。
【0011】
加熱下で加硫されるシリコーンエラストマーで形成した接着剤に用いられるゴムは、例えば、MViDDViMViタイプであり、シロキシ単位の定義は以下の通りである。M:(CH3)3SiO1/2,MVi:(CH3)2ViSiO1/2,D:(CH3)2SiO2/2,DVi:(CH3)ViSiO2/2,Vi = ビニル基。このゴム組成物は、さらに、ラジカル硬化/架橋性触媒である2,4-ジクロロベンゾイル過酸化物、およびヘキサメチルジシラザンで処理したシリカ充填材を有する。この架橋可能材料は、例えば剥離フィルム上にシリコーン接着剤をラミネートすることによって接着性のストリップを製造するのに供する。つぎに、このストリップを、組み合わせるべき複合材部分のオーバーラップ域に配置する。この後、この組立体に、圧力(2kg/5cm)及び熱(180°Cで10分間)を加える。
【0012】
他の解決法としては、特許文献3(国際公開第2007/042712)に記載されているものがある。この特許文献3は、シリコーンベースのポリマーによる表面塗布層をそれぞれ有する2つの布地シートを結合することを可能にする組立介在物を記載している。この接着介在物は、既知の方法で、非架橋シリコーンエラストマーに基づく組成物を有する。操作及び保護を確実に行うため、接着介在物には、さらに、両側表面のうち一方の表面に配置する付着防止フィルムを設ける。この接着介在物は、非架橋シリコーンエラストマー組成物に基づくストリップの平坦な直線的部分の形式で存在する。この直線的部分は、さらに、ストリップの第2表面、すなわち付着防止フィルムを設ける表面とは反対側の表面に存在する半透明フィルム有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許219075号明細書
【特許文献2】米国特許4889576号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/042712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、必要な性能に到達するのに十分なほど強力な接着剤を見出すことは困難である。
【0015】
この従来技術を考慮して、本発明の主要目的の1つは、繊維/シリコーン複合材部分を組み立てるために、接着性を有し、加熱下で架橋しうる、新規で高性能なシリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、組立体の粘着性系内で発生する剥離が確実に生じないよう保証でき、また組立体の無欠性を保証する抵抗力を有し、接着性を有し、加熱下で架橋しうる、新規なシリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、白金および過酸化物触媒の双方によって、接着性を有し、加熱下で架橋しうる、新規で高性能なシリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、接着性を有し、加熱下で架橋しうる、それ自体がストリップの形態をとることができる新規なシリコーンエラストマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、第1に、シリコーンエラストマー組成物に関する本発明によって達成することができ、本発明によるシリコーンエラストマー組成物は、接着性であり、また加熱下で架橋可能であり、特にシリコーン基板を接着することを意図するシリコーンエラストマー組成物であって、以下のものを有する、すなわち、
・成分(a−1)又は成分(a−2)であり、
・(a−1)は、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に随意に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンゴム(I)に相当し、少なくとも1つの有機過酸化物に基づく触媒の反応によって架橋しうるものとし、
・(a−2)は、重付加反応によって架橋しうるポリオルガノシロキサンの混合物に相当し、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンゴム(I’)と、シリコンに結合する少なくとも2つの水素原子を1分子中に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン(II)とよりなるものとした、
該成分(a−1)又は成分(a−2)、
・補強無機充填材(III)、
・(a−1)を用いるときは、少なくとも1つの有機過酸化物(IV)を有し、(a−2)を用いるときは、少なくとも1つの金属又は白金族の「金属化合物(V)を有する、有効量の架橋触媒、
・Si−H基を有するポリオルガノ水素シロキサン型の、接着促進剤(VI)
・随意の、少なくとも1つの追加の接着促進剤(VII)、
・随意の、少なくとも1つの追加の充填材(VIII)
・随意の、少なくとも1つの架橋阻害剤(IX)、
・随意の、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン樹脂(X)、および、
・随意の、特定の特性を付与する1以上の機能性添加剤、
を有し、
ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び、他方では量を選択し、この選択は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基が過剰となり、接着すべき前記シリコーン基板に対するSi共有結合のポテンシャル面密度が、60nmあたり、好ましくは40nmあたりに少なくとも1つのSi共有結合を有するように行うことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
接合すべきシリコーン基板に対するSi共有結合のポテンシャル面密度は、考慮する材料の最終表面層に、少なくとも1つのSi共有結合を得るために必要なnm2単位の表面積によって定義し、ポリオルガノ水素シロキサン(VI)及び随意のアルケニル化したポリオルガノシロキサンゴム(I)又は(I′)、及び随意のポリオルガノシロキサン(II)の種類及び量の関数として計算する。シリコーン類の場合、単分子層は0.75 nmの厚さである。
【0021】
好ましくは、ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び、他方では量を選択し、この選択は、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I又はI’)のアルケニル基と架橋する反応後に、前記過剰Si-H基の量が、1:1に等しいSiH対Si-アルケニルの比に対して、100gの前記シリコーン組成物あたり、少なくとも0.1重量%のSiHとなる(mass 29)、好ましくは100gの前記シリコーン組成物あたり、少なくとも0.15%のSiHとなるり、この場合、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I)が、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に有するように行う。
【0022】
特に、白金および過酸化物の双方の触媒により、今まで既知の組成物において用いられていた過剰SiH基よりもはるかに多量の過剰SiH基が架橋反応後に得られることによって、特に織物利用建築(テキスタイル・アーキテクチャ)用のシリコーン複合体を組み立てるための極めて高性能なシリコーンエラストマー接着剤を調合するに用いる組成物を開発したことは、本発明の発明者らの功績である。
【0023】
本明細書では、シロキシ単位を表すために、以下の「シリコーン」の用語体系を参照する。(“Chemistry and technology of silicones” Walter NOLL Academic Press 1968,表1,3頁”)
・ M: (R°)3SiO1/2,
・ MAlk: (R°)2 (Alk)SiO1/2,
・ D: (Ro)2SiO2/2
・DAlk: (Ro)(Alk)SiO2/2,
・ M': (R°)2(H)SiO1/2,
・ D': (R°)(H)SiO2/2,
・ MOH: (Ro)2(OH)SiO1/2
・ DOH: (Ro)(OH)SiO2/2,
・ T: (R°)SiO3/2,
・ Q: SiO4/2,
ここで、R°は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ヘキシルなどの、直鎖の又は分岐した炭素原子が1〜8個のアルキル基から包括的に選択し、少なくとも1つのハロゲン原子(例えば、トリフルオロ−3,3,3プロピル)によって随意に置換し、ならびにアリル基(例:フェニル、キシリル、トリル)から選択し、
「Alk」は、アルケニル、好ましくはビニル(Viと表記する)又は、アリルである。
【0024】
第1実施形態では、本発明によるシリコーン組成物は、過酸化物触媒によって架橋することができる組成物である。
【0025】
この場合、少なくとも1つの有機過酸化物をベースとした触媒の反応によって架橋しうるポリオルガノシロキサンゴム(I)は、有利には、以下の式のシロキシル単位を有する生成物とする。すなわち、
R1a SiO(4-a)/2 (I.1)
ここで、R1は炭素原子が1〜12個、好ましくは1〜8個で、随意に置換した炭化水素基を表し、
aは1,2,又は3である。
好ましくは、R1は、以下から選択する。
・メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基、
・シクロアルキル基、例えばシクロヘキシル、
・アルケニル基、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、
・アリル基、例えば、フェニル基、トリル基、例えばβ−フェニルプロリルのようなアラルキル基、及び、
・1つ以上の水素原子を、1以上のハロゲン原子、シアノ基、または例えばクロロメチル、トリフルオロプロピル、もしくはシアノエチルのようなシアノ基の等価物によって置換する、上述した基
【0026】
より優先的には、ポリオルガノシロキサン(I)は、トリメチルシリル、ジメチルビニル、ジメチルハイドロキシル、トリビニルシリルの単位で終鎖するものとする。
【0027】
特に有利な実施形態では、ポリオルガノシロキサン(I)は、シリコンに結合する好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基を1分子あたり少なくとも2つ含む。この場合、ポリオルガノシロキサンゴム(I)は、後述する白金触媒で用いるポリオルガノシロキサンゴム(I’)と同じ定義に相当する。
【0028】
ゴム(I)は、極めて高い分子量であり、例えば、300,000〜800,000、好ましくは400,000〜600,000の分子量を有する。
【0029】
有利には、ゴム(I)は、アルケニル基、好ましくはビニル基の平均含有量が0〜2,000 ppm、より好ましくは200〜1,000 ppmである。
【0030】
もちろん、ゴム(I)は、ゴム(I)と同じ定義に相当する数種のゴムの混合物とすることができる。
【0031】
ゴム(I)の例としては、ジメチルポリシロキサンの主鎖、またはジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン、もしくはジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン、もしくはジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンの共重合体の主鎖が、トリメチルシロキシ基、ジメチルビニルシロキシ基、メチルフェニルビニルシロキシ基、またはシラノール基で終端しているゴムがある。
【0032】
本発明で有用な有機過酸化物(IV)としては、過酸化ベンゾイル、ビス(p−クロロベンゾイル)過酸化物、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)過酸化物、過酸化ジクミル、ジ−t−ブチル過酸化物、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチル−パーベンゾエート、t−ブチルクミル過酸化物、及び上記過酸化物のハロゲン化誘導体(例えば、ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)過酸化物、1,6−ビス(p−トルオイルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(ベンゾイルペルオキシ−カルボニルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(p−トルオイルペルオキシカルボニルオキシ)ブタン、1,6−ビス(2,4−ジメチルベンゾイルペルオキシカルボニルオキシ)ヘキサンがある。
【0033】
この第1の過酸化物触媒の形態は、エラストマーの保存性を良くできるため好ましく、安価である。
【0034】
第2の実施形態によれば、シリコーン組成物は、金属触媒、好ましくは白金触媒によって架橋できる組成物である。
【0035】
この場合、ポリオルガノシロキサンゴム(I’)は、以下の式の単位を有する。すなわち、
Wa Zb SiO(4-(a+b))/2 (I'.1)
ここで、
・Wは、アルケニル基、好ましくはビニル基とし、
・Zは、前記触媒の活性に悪影響のない、一価の炭化水素基であり、1〜8の炭素原子を有するアルキル基から選択し、随意に少なくとも1のハロゲン原子に置換し、ならびにアリル基からも選択するものとし、
・aは1又は2であり、bは0、1、又は2であり、a+bは1〜3の範囲における値を有するものとし、また
随意に他の以下の平均的な式の単位を有する、すなわち、
Zc SiO(4-c)/2 (I'.2)
ここで、Z”は上記と同じ意味を有し、c”は0〜3の範囲における値を有するものとする。
【0036】
ポリオルガノシロキサンゴム(I)は、それがアルケニル基を有するときに、ポリオルガノシロキサンゴム(I’)に相当する。
【0037】
Z基は同一のものまたは異なるものとすることができる。
【0038】
用語「アルケニル」は、置換した又は無置換の、直鎖又は分岐の、不飽和炭化水素鎖であって、少なくとも1つのオレフィン二重結合、およびより好ましくは単独の二重結合を有するものを意味する。好ましくは、「アルケニル」基は、2〜8個、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、随意に、O,S,Nのような少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0039】
「アルケニル」基の好ましい例は、ビニル基、アリル基、ホモアリル基であり、ビニル基が特に好ましい。
【0040】
「アルキル」は、直鎖の又は分岐の、環状の飽和炭化水素鎖であって、例えば1つ以上のアルキルによって随意に置換したものとし、好ましくは1〜10個の炭素原子、例えば1〜8個の炭素原子、より好適には1〜4個の炭素原子を有するものを意味する。
【0041】
アルキル基の例としては、特にメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、tert−ブチル、イソブチル、n−ブチル、n−ペンチル、イソアミル、および、1,1−ジメチルプロピルがある。
【0042】
表現「アリル」は、6〜18個の炭素原子を有する芳香族の炭化水素基であり、単環の又は多環で、好ましくは単環又は二環のものを意味する。本発明の枠組み内では、多環式の芳香族ラジカルは、互いに縮合(オルト縮合又はオルトかつペリ縮合)した2以上の芳香核を有するラジカル、すなわち、それぞれが少なくとも2つの炭素原子を共通して有するものを意味するものと理解すべきである。
【0043】
「アリル」の例としては、例えばフェニルラジカル、キシリルラジカル、及びトリルラジカルがある。
【0044】
ゴム(I’)は極めて高い分子量であり、例えば、300,000〜800,000、好ましくは400,000〜600,000の間の分子量を有する。
【0045】
有利には、ゴム(I’)は、アルケニル基、好ましくはビニル基の平均含有量が100〜2,000 ppm、より好ましくは200〜1,000 ppmである。
【0046】
もちろん、ゴム(I’)は、ゴム(I’)と同じ定義のものに相当する数種のゴムの混合物とすることができる。
【0047】
ゴム(I’)は式(I'.1)の単位でのみ形成する、又は、式(I'.2)の単位も含むことができる。
【0048】
ゴム(I’)は、有利には直鎖のポリマーとし、この直鎖ポリマーのジオルガノポリシロキサン鎖は、ほぼシロキシ単位D又はDViで構成し、またその各端部をシロキシ単位M又はMViで終端するものとする。
【0049】
好ましくは、Z基の少なくとも60%はメチルラジカルとして存在するようにする。しかし、ジオルガノポリシロキサン鎖に沿って存在する少量の単位であって、Z2SiO以外の単位、例えばZSiO1.5(Tシロキシ単位)及び/又はSiO2(Qシロキシ単位)の単位が、多くとも2%の割合であることを排除するものではない。(これらのパーセンテージは、シリコン100原子あたりのT及び/又はQの単位数を表している。)
【0050】
式(I'.1)のシロキシル単位の例としては、ビニルジメチルシロキシル、ビニルフェニルメチルシロキシル、ビニルメチルシロキシル、およびビニルシロキシル単位がある。
【0051】
式(I'.2)のシロキシル単位の例としては、SiO4/2単位、ジメチルシロキシル、メチルフェニルシロキシル、ジフェニルシロキシル、メチルシロキシル、フェニルシロキシルがある。
【0052】
ゴム(I’)の例としては、ジメチルビニルシロキシ又はジメチルアリルシロキシの終端を持つジメチルポリシロキサンゴム、フェニルメチルビニルシロキシの終端を持つジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ジメチルビニルシロキシ又はシラノールの終端を持つメチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体がある。
【0053】
これらゴム(I)又は(I’)はシリコーン製造業者により市販されており、又は、既知の技術を用いて製造することができる。
【0054】
ポリオルガノシロキサン(II)は、好適には、以下の式のシロキシル単位を有するタイプとする。
HdLe SiO(4-(d+e))/2 (II.1)
ここで、
・Lは、前記触媒の活性に悪影響のない、一価の炭化水素基であり、1〜8の炭素原子を有するアルキル基から包括的に選択し、随意に少なくとも1つのハロゲン原子によって置換し、ならびにアリル基からも選択したものとし、
・dは1又は2であり、eは0、1、又は2であり、d+eは1〜3の範囲における値を有するものとし、また
随意に以下の平均的な式のシロキシル単位を有し、
Lg SiO(4-g)/2 (II.2)
ここで、Lは上記と同じ意味を有し、gは0〜3の範囲における値をとるものとする。
【0055】
このポリオルガノシロキサン(II)の動的粘度は、少なくとも5 mPa.sと等しく、好ましくは5〜100 mPa.sであり、より好ましくは10〜40 mPa.sである。
【0056】
本明細書においては、表示する粘度は、1982年の標準であるAFNOR NFT 76 106による、BROOKFIELD粘度計を用いて25℃で測定した動的粘度の値に相当する。
【0057】
ポリオルガノシロキサン(II)は、もっぱら式(II.1)の単位でのみ形成する、又は、付加的に式(II.2)の単位を有することができる。
【0058】
ポリオルガノシロキサン(II)は、直鎖、分岐、環状、又はネットワーク構造を有することができる。
【0059】
L基は上記Z基と同じ意味である。
【0060】
式(II.1)のシロキシル単位の例としては、H(CH3)2SiO1/2, HCH3SiO2/2, H(C6H5)SiO2/2がある。
【0061】
式(II.2)のシロキシル単位の例は、上記の式(I'.2)のシロキシル単位の例と同じものとする。
【0062】
ポリオルガノシロキサン(II)の例としては、以下のような直鎖の、かつ、環状の化合物、すなわち、
・水素ジメチルシリルの終端を持つジメチルポリシロキサン、
・トリメチルシリルの終端を持つ(ジメチル)−(水素メチル)−ポリシロキサン単位の共重合体、
・水素ジメチルシリルの終端を持つ(ジメチル)−(水素メチル)−ポリシロキサン単位の共重合体、
・トリメチルシリルの終端を持つ水素メチルポリシロキサン
・環状水素メチルポリシロキサン
がある。
【0063】
化合物(II)は、随意に、水素ジメチルシリルの終端を持つジメチルポリシロキサンと、少なくとも3つのSiH(水素シロキシル)官能基を有するポリオルガノシロキサンとの混合物とすることができる。
【0064】
Si-H基を有するポリオルガノ水素シロキサン型の接着促進剤(VI)は、ポリオルガノシロキサン(II)の上記定義と同じ定義に相当し、上記で定義したような接着促進剤(VI)に固有の条件も適用する。特に、接着促進剤(VI)は、本発明の組成物の特許請求した特徴に相当するよう、Si-Hが十分豊富に存在しなければならない。例えば、接着促進剤(VI)は、水素原子が互いに遠く離れ過ぎている統計学的特性の共重合体であってはならない。
【0065】
白金をベースとする触媒の場合には、有利には、架橋剤(II)と接着促進剤(VI)の両方として作用するのに十分な量の、単一のポリオルガノ水素シロキサンを使用することができ、これにより、本発明の特徴に対応させるようにする。
【0066】
好ましくは、接着促進剤(VI)は、トリメチルシリルの終端又は水素ジメチルシリルの終端を持つポリメチル水素シロキサンとする。好ましくは、このポリメチル水素シロキサンは、5〜100 mPa.s、より好ましくは10〜40 mPa.sの粘度を有する。そのSiH基の含有量は、10〜45重量%である。白金をベースとする触媒の場合には、このポリメチル水素シロキサンは、架橋するポリオルガノシロキサン(II)及び接着促進剤(VI)の両方として用いる。
【0067】
接着促進剤(VI)は、トリメチルシリルの終端又は水素ジメチルシリルの終端を持つメチル水素シロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体とすることもできる。この共重合体は、10〜500 mPa.s、好ましくは10〜100 mPa.s、より好ましくは10〜40 mPa.sの粘度を有するものとする。そのSiH基の含有量は、好ましくは10〜48重量%である。白金をベースとする触媒の場合には、この共重合体は、架橋するポリオルガノシロキサン(II)及び接着促進剤(VI)の両方として用いる。
【0068】
ポリオルガノ水素シロキサン(VI)の割合、随意のアルケニル化されたポリオルガノシロキサンゴム(I)もしくは(I’)の割合、および随意のポリオルガノシロキサン(II)の割合は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基(ポリオルガノ水素シロキサン(VI)及び随意にポリオルガノシロキサン(II)及び随意に追加の接着促進剤(VII)に由来する)が過剰となり、接着すべき前記シリコーン基板に対するSi共有結合のポテンシャル面密度が、60nmあたり、好ましくは40nmあたりに少なくとも1つのSi共有結合を有するようになる割合とする。
【0069】
より正確に言うと、ポリオルガノ水素シロキサン(VI)の割合、随意のアルケニル化されたポリオルガノシロキサンゴム(I)又は(I’)の割合、および、随意のポリオルガノシロキサン(II)の割合は、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I又はI’)のアルケニル基と架橋する反応後に、前記過剰Si-H基(ポリオルガノ水素シロキサン(VI)及び任意にポリオルガノシロキサン(II)及び任意に追加の接着促進剤(VII)に由来するもの)の量が、1:1に等しいSiH対Si-アルケニルの比に対して、100gの前記シリコーン組成物あたり、少なくとも0.1重量%のSiHとなる、好ましくは100gの前記シリコーン組成物あたり0.15重量%のSiHとなり、この場合、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I)が、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に有するようになるものとする。
【0070】
比較として、標準的な重付加HCR (High Consistency Rubber)製品は、一般的に1.5に等しいSiH/SiVi比に基づいて調合され、また約500 ppmのビニル基を含むものであり、この場合、過剰の250 ppmのSiH基を有しており、この結果として、SiHの0.025重量%である過剰量を示す。
【0071】
本発明の組成物の架橋メカニズムに特有な重付加反応は、当業者によく知られている。この反応には、触媒(V)も使用することができる。この触媒(V)は、特に白金化合物及びロジウム化合物から選択することができる。米国特許第3159601号、同第3159604号、同第3220972号、そして欧州特許第57459号、同第188978号および同第190530号に記載されている白金および有機製品の複合体、白金、ならびに米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号および同第3814730号に記載されているビニル化オルガノシロキサン複合体を、とくに使用することができる。一般的に好ましい触媒は白金である。この場合、白金族の重量によって計算される触媒(V)の重量は、一般的には、ポリオルガノシロキサン(I’)及び(II)の総重量に基づいて、2〜400 ppm、好ましくは5〜100 ppmの範囲における量である。
【0072】
補強無機充填材(III)はシリカ及び/またはアルミナから選択する。
【0073】
好ましくは、補強無機充填材(III)は、100〜300m/gの比表面積を有するシリカから選択し、これらシリカは、随意に少なくとも1の相溶性剤を用いて前処理したものとすることができる。
【0074】
これらのシリカは、コロイド状シリカ、熱で調製したシリカ(いわゆる燃焼シリカ又は燻蒸シリカ)又はウェットプロセスで調製したシリカ(沈殿シリカ)、又は、これらシリカの混合物とすることができる。このタイプのシリカは、市販の入手可能な製品であり、シリコーンエラストマーの製造技術においてよく知られている。
【0075】
充填剤(III)を形成できるシリカの化学的性質および調製プロセスは、シリカが完成した接着性エラストマーにおいて補強作用を発揮することができるならば、本発明の目的にとって重要ではない。もちろん、種々の異なるシリカを混合して用いることもできる。
【0076】
これらシリカ粉末は、一般的に0.1μmに近似する又は未満の平均粒度を有し、50 m2/g より大きい、好ましくは100〜300 m2/g のBET比表面積を有している。
【0077】
これらシリカは、随意に、
・少なくとも以下の2つの基準を満たす分子の群から選択した少なくとも1つの相溶性剤を用いて前処理するものとし、これら2つの基準は、
水素結合のレベルでシリカと、及び包囲するシリコーンゴムと強い相互作用を示すこと、
それ自体、又はその分解生成物が、真空下又はガス流下における加熱によって最終混合物から容易に取り出すことができるものであること、またそれ故、好ましくは低分子量の化合物であること、
とし、
及び/又は、
・特に少なくとも1つの未処理シリカを用いて、及び/又は、付加的に、上述の前処理で使用でき、上記で定義した相溶性剤と性質が似ている少なくとも1の相溶性剤を用いて、その場処理したもの
とすることができる。
【0078】
相溶性剤は、処理の方法(前処理か、その場処理か)によって選択され、例えば以下の群から選択することができ、すなわち、
・クロロシラン、
・オクタメチルシクロシロキサン(D4)のようなポリオルガノシクロシロキサン、
・シラザン、好ましくはジシラザン、又はこれらの混合物であり、ヘキサメチルジシラザンは、ジビニルテトラメチル−ジシラザンと結合しうる好ましいジシラザンとする、
・シリコンと結合するヒドロキシル基を1分子中に1以上有するポリオルガノシロキサン、
・アンモニアのようなアミン、又は、ジエチルアミンのような低分子量のアルキルアミン、
・ギ酸又は酢酸のような低分子量の有機酸、
・これらの混合物
から選択する。
【0079】
その場処理の場合、相溶性剤は、好ましくは水の存在下で利用する。
【0080】
この点に関してより詳細には、例えば仏国特許第2764894号が参照することができる。変形例としては、早い段階でのシラザンによる処理(例えば、仏国特許第2320324号)又は遅い段階での処理(例えば、欧州特許第462032号)を行う従来技術の相溶性方法を用いることができる。
【0081】
充填剤(III)として使用できる補強アルミナとして、既知のようにドープした、又は非ドープの、高分散アルミナを有利に使用できる。もちろん、種々の異なるアルミナの混合を用いることもできる。同様のアルミナの非限定的な例として、BAIKOWSKI社からのアルミナA 125, CR 125, D 65CRがある。
【0082】
極めて微細なカオリンも、単独で又は他の補強充填剤との組合せで、補強充填剤として使用することができる。
【0083】
重量に関しては、補強充填剤(III)の量を、組成物の全ての成分に対して、5〜30、好ましくは7〜20重量%で用いることが好ましい。
【0084】
本発明によれば、好ましくは補強していない、追加の充填材(VIII)の使用を想定することができる。
【0085】
未補強の追加の充填剤(VIII)としては、コロイド状シリカ、燃焼及び沈殿シリカ粉末、珪藻土、粉末石英、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、膨張蛭石、ジルコニア、ジルコン酸塩、非膨張蛭石、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰、およびこれらの混合物を有する群から選択する。
【0086】
これら充填剤(VIII)は、0.1〜300μmの粒度を一般的に有し、100 m2/g未満のBET比表面積を有する。
【0087】
追加の接着促進剤(VII)は、例えば以下を有するものとすることができる。
・(VII.1)以下の一般式に相当する少なくとも1つのアルコキシル化オルガノシラン
【化1】


(VII.1)
ここで、R1, R2, R3は、水素、又は、互いに同一の又は異なった炭化水素ラジカルであり、好ましくは、水素、直鎖の又は分岐した炭素数1〜4のアルキル、又は少なくとも1の炭素数1〜3のアルキルで随意に置換したフェニルを表し、
Aは直鎖の又は分岐した炭素数1〜4のアルキレンであり、
Gは原子価結合又は酸素であり、
R4及びR5は、同一の又は異なったラジカルであり、直鎖の又は分岐した炭素数1〜4のアルキルラジカルを表し、
x’は0又は1であり、
xは0から2であり、
前記化合物(VII.1)は好ましくはビニルトリメトキシシラン(VTMS)、
・(VII.2)少なくとも1つのエポキシラジカルを有する少なくとも1つの有機ケイ素化合物であり、前記化合物(VII.2)は好ましくは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、
・(VII.3)少なくとも1つの金属Mのキレート、及び/又は、一般式M (OJ)nの金属アルコキシドとし、nはMの価数、Jは直鎖の又は分岐した炭素数1〜8のアルキル、MはTi, Zr, Ge, Li, Mn, Fe, Al, Mgにより形成される群から選択され、化合物(VII.3)は好ましくはtert-ブチルチタネート
を有するものとする。
【0088】
量に関して、(VII.l)と(VII.2)と(VII.3)との間における重量比は、これら3つの総量に対する重量パーセントで表現し、以下の通りである。すなわち、
・ (VII.1) ≧ 10%,
・ (VII.2) ≧ 10%,
・ (VII.3) ≦ 80%,
【0089】
これら(VII.l) ,(VII.2) 、(VII.3)における比率の合計は100%に等しいと理解される。
【0090】
有利には、追加の接着促進剤(VII)は、組成物の全ての成分に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは1〜2.5重量%のレベルで存在させる。
【0091】
この追加の接着促進剤(VII)によれば、そのSi結合ポテンシャルを接着促進剤(VI)のSi結合ポテンシャルと結合することによって、特許請求の範囲で定義されたSi結合の密度を実現することができる。
【0092】
架橋阻害剤(IX)もまたよく知られている。それらは通常、以下の化合物から選択する、すなわち、
・ポリオルガノシロキサンであり、有利には環状で、少なくとも1つのアルケニルで置換し、テトラメチルビニルテトラシロキサンが特に好ましい、
・ピリジン、
・ホスィン及び有機亜リン酸塩、
・不飽和アミド、
・アルキル化マレイン酸塩、および
・アセチレンアルコール類
から選択する。
【0093】
これらアセチレンアルコール類(仏国特許第1528464号及び同第2372874号参照)は、ヒドロシリル化反応の好ましい温度阻害剤のうちから選択し、以下の式を有するものとする。
R - (R') C (OH) - C ≡ CH
式中、
・Rは、直鎖の又は分岐のアルキルラジカル、又は、フェニルラジカル、
・R'は、水素、又は、直鎖の又は分岐したアルキルラジカル、又は、フェニルラジカル。
・RとR'は、ラジアル、又は、随意に環状を形成することができる三重結合のアルファ位に位置する炭素原子である、
・RとR'とに含まれる炭素原子の総数は、少なくとも5、好ましくは9〜20である。
【0094】
上記のアルコールは、好ましくは250℃を超える沸点を有するものから選択する。例としては以下のもの、すなわち、
・エチニル-1-シクロヘキサノール1、
・メチル-3 ドデシン-1 オール-3、
・トリメチル-3,7,11ドデシン-1 オール-3、
・ジフェニル-1,1 プロピン-2 オール-1、
・エチル-3 エチル-6 ノニル-1 オール-3、
・メチル-3 ペンタデジン-1 オール-3
がある。
【0095】
これらα-アセチレンアルコール類は市販の製品である。
【0096】
このような阻害剤(IX)は、オルガノポリシロキサン(I’)及び(II)の総重量に対して、上限で3,000 ppm、好ましくは100〜1,000 ppmのレベルで存在させる。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、組成物は、ポリオルガノシロキサン樹脂を含まないものとする。
【0098】
他の実施形態によれば、組成物のシリコーン相は、少なくとも1のアルケニルラジカルを構造中に随意に有する少なくとも1のポリオルガノシロキサン樹脂(X)を有し、この樹脂は、0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜10重量%の含有重量のアルケニル基を有する。
【0099】
これら樹脂は、市場で入手可能なよく知られた分岐のオルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーである。これらは、好ましくは、シロキサン溶液の状態で存在させる。これらは、その構造中にM,D,T,Qから選択した少なくとも2つの異なった単位を有し、少なくともこれら単位の1つはT又はQ単位とする。
【0100】
好ましくは、これら樹脂はアルケニル化(ビニル化)する。分岐のオルガノポリシロキサンオリゴマー又はポリマーの例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂、MDT樹脂があり、アルケニル官能基はM,D及び/又はT単位が担持することができる。特に適した樹脂の例としては、0.2〜10重量%の範囲におけるビニル基の含有重量を有する、ビニル化したMDQ樹脂又はMQ樹脂があり、これらのビニル基はM及び/又はD単位が担持する。
【0101】
この構造樹脂は、組成物の全ての成分に対して、10〜70重量%、好ましくは30〜60重量%、より好ましくは40〜60重量%の範囲における濃度で存在させる。
【0102】
得られたシリコーン組成物は、15〜75の範囲、好ましくは20〜45の範囲におけるムーニー粘度 (standard NF T 43005, Mooney Broad measurement (1 + 4), ムーニー粘度計を用いた)を有する。この粘度は、本発明による組成物は、保管中に自然に流れ出ることはなく、保管寿命に対応する期間中に有意に変化しないということを意味する。本発明による組成物自体は、とくに良好に較正されたストリップ形態をとり、生ずるべき接着剤接合の位置決めに有利である。
【0103】
本発明は、さらに、特に織物利用建築(テキスタイル・アーキテクチャ)の分野におけるシリコーン薄膜に用いることができる接着剤にも関し、上述のような組成物を有する。
【0104】
この接着剤は、特に、補強した、又は補強していない、シリコン処理した布地片を接合することを意図する。
【0105】
本発明は、さらに、特に2次元シリコーン複合体の分野に用いることができる接着性ストリップにも関し、このストリップは、上述の組成物から調製した接着剤を有し、該接着剤をラミネートする。
【0106】
本発明は、上述の組成物、又は、接着剤又は接着性ストリップを利用する、シリコーン基板の接着方法にも関する。
【0107】
接着性ストリップは、組み合わすべき2つのシリコーン複合体間の接合領域に配置される。つぎに、圧力および高温を加えることにより、組成物が架橋し、2つのシリコーン複合体の互いに対向する2つの層のそれぞれに含まれるシリコーンが付着する。
【0108】
接合すべきシリコーン基板は、例えば、織成した、編組した、編成した、又は不織の繊維質支持材、また好ましくは、ガラス、シリカ、金属、セラミック、炭化ケイ素、炭素、ホウ素、玄武岩、コットン・ウール・麻・リンネルのような天然繊維、ビスコースのような化学繊維、セルロース繊維、ポリエステル・ポリアミド・ポリアクリル酸のような合成繊維、クロロ繊維、ポリオレフィン、合成ゴム、ポリビニルアルコール、アラミド、フルオロ繊維、フェノール成分を有する材料の群から選択した繊維で形成した、織成、編成、又は不織の繊維質支持材の、補強した、もしくは補強していないシリコーン薄膜とする。
【0109】
シリコーン薄膜の組成物は最も重要というわけではないが、有利にはRTV-2又はLSRのように、加熱下で加硫できる2成分材料から選択することができ、該組成物は以下を有する。すなわち、
(1)1分子中に、シリコンと結合する少なくとも2つの炭素数2〜6のアルケニル基を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(2)1分子中に、シリコンと結合する少なくとも2つの水素原子を有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン、
(3)白金族に属する少なくとも1つの金属からなる、触媒的有効量を有する少なくとも1つの触媒、
(4)(4.1)1分子中に、少なくとも1つの炭素数3〜6のアルケニル基を含む、少なくとも1つのアルコキシルオルガノシラン、(4.2)少なくとも1つのエポキシラジカルを有する、少なくとも1つの有機ケイ素化合物、(4.3)少なくとも1つの金属キレートM、及び/又は、一般式[M (OJ)n]の金属アルコキシド(nはMの価数、Jは直鎖の、又は、分岐の炭素数1〜8のアルキル、MはTi,Zr,Ge,Li,Mn,Fe,AlおよびMgからなる群から選択する)、からなる3元の接着促進剤、
(5)ポリオルガノシロキサン(1)の存在下、相溶性剤でその場処理した、補強シリカ充填剤、
(6)増量剤と称され、水素官能基を呈する終端のシロキシル単位を有する、ポリオルガノシロキサン、
(7)随意の、中和剤、
(8)随意の、架橋阻害剤、及び/又は、このタイプの組成物に使用する他の添加剤、および
(9)随意の、膨張した又は膨張可能な、無機で、中空の微細球状充填剤、
【0110】
シリコーン薄膜に塗布可能なニスについては、これらは、例えば、国際公開第00/59992号に記載されているような、カチオン架橋及び/またはラジカル架橋できるシリコーンニス、又は、ほぼ不飽和シランの混合物に基づくシランニスとすることができる。
【0111】
本発明の他の態様は、接着性であり、また加熱下で架橋可能であり、特にシリコーン基板の接着を意図するシリコーンエラストマー組成物に、接着促進剤としてポリオルガノ水素シロキサンを使用する方法に関し、この使用方法は、ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び、他方では量を選択し、この選択は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基が過剰となり、接着すべき前記基板に対する結合のポテンシャル面密度が、60nmあたり、好ましくは40nmあたりに少なくとも1つの結合を有するように行うことを特徴とする。
【0112】
好ましくは、組成物及びポリオルガノ水素シロキサンは、上記に規定された通りとする。
【0113】
以下に示す、本発明による組成物の調製の及び接着性ストリップとしての適用例によれば、本発明をより理解でき、その効果が明らかになるであろう。
【実施例】
【0114】
接着剤の調製
以下のマスターバッチ(ゴム(I又はI’)及び前処理した充填材(III)に相当する)を用いて、種々の異なる接着剤を調製した。
・Rhodorsil(登録商標) MF 135U
・Rhodorsil(登録商標) MF 240U
・Rhodorsil(登録商標) MF 345U
・Rhodorsil(登録商標) MF 940U
これら全てのマスターバッチは、ブルースターシリコーン社によって市販されている。
以下の表1に示されるケースによれば、これらのマスターバッチは、
・20mPa・sの粘度を有するポリメチル水素シロキサン、
・架橋阻害剤、トリメチルドデシノール(trimethyldodecynol)と、約1000ppmの割合で結合している約4ppmの白金を生ずるカールシュテット白金触媒、
・0.6%の2,5ジt−ブチル 2,5ヘキサン過酸化物
と組み合わせた。
上述の濃度は、用いるマスターバッチに関連する。
この混合物は、触媒された混合物の形をストリップとして整形することもできるラボラトリーカレンダー(laboratory calender)を用いて調製する。
【0115】
利用
本発明の組成物は、2つのシリコーン複合体を組み合わせるための、ラミネートした接着性ストリップの形式で利用したもので、それぞれは、
・単位面積当たりの重量が約250g/mのガラス繊維織地片、
・一方の表面に200g/mの割合で塗布した少なくとも1の接着性シリコーン表面塗布(ブルースターシリコーン社により市販されているRhodorsil(登録商標)TCS 7534)層であって、メーカー推薦に基づいて適切に架橋された、該表面塗布層
によって構成した。
【0116】
組立体
組立体として、
・上述したように約700 μmの厚さのシリコーン接着剤積層体(ラミネート)を調製する。
・これら積層体を、接合すべき複合体間に配置する。
・接着剤は、ある温度(例えば、180℃で2分間)および加圧下で架橋して、接着剤接合が500 μmオーダーの厚さとなるようにする。
【0117】
剥離力の測定
幅5cmの試験片を切り出し、上側ジョーが50 mm/minで移動する動力計において180°の角度にわたり剥離する「剥離応力」として知られる幾何学的応力を試験片に加える。通常の運用体制での剥離力を記録し、断裂タイプ(粘着性か接着性かのタイプ)は視覚的に特徴付けし、断裂強度をN/cmで表現する。
【0118】
結果は下記表1に示すとおりであり、この表は、
・使用されたマスターバッチの参照、
・追加された触媒のタイプ、
・Si共有結合のポテンシャル面密度(少なくとも1つのSi共有結合を得るための表面積)
を有する。
このポテンシャルは、接着剤の単分子層が0.75 nmの厚さであると仮定し、組成物内に存在し、架橋反応のために利用可能なSiH基及びSiVi基の量からスタートして得られる。
・関連する不飽和度に関して、過剰のSiH基
・ムーニー粘度計を用いた混合物(standard NF T 43005)のムーニー粘度
・ストリップ形態の品質に関するコメント
・行った試験による剥離値
・剥離タイプ(粘着性断裂(CR)か、接着性断裂(AR)か)
【0119】
【表1】



【0120】
比較として、熱産出下で加硫する標準的な重付加シリコーンエラストマーは、一般的に1.5に等しいSiH/SiVi比によって調合され、約500 ppmのビニル基を含み、この場合、250 ppmの過剰なSiH基を有し、その結果として、0.025重量%の過剰なSiHが存在することも思い起こされたい。そのような製品では、2つのシリコーン複合体を組み合わせるために接着性ストリップの形式における所期の用途として十分な剥離力を得ることはできない。
【0121】
表1の結果は、本発明の組成物は、特に全てのケースで、2つのシリコーン複合体を接着するのに適したストリップとして適合しうることを示している。
【0122】
本発明の組成物によれば、特にシリコーン薄膜を接着させるために、白金及び過酸化物触媒の両方によって、極めて高性能なシリコーンエラストマー接着剤を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性であり、また加熱下で架橋可能であり、特にシリコン処理したシリコーン基板を接着することを意図するシリコーンエラストマー組成物であって、該組成物は、
・成分(a−1)又は成分(a−2)であり、
・(a−1)は、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に随意に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンゴム(I)に相当し、少なくとも1つの有機過酸化物に基づく触媒の反応によって架橋しうるものとし、
・(a−2)は、重付加反応によって架橋しうるポリオルガノシロキサンの混合物に相当し、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサンゴム(I’)と、シリコンに結合する少なくとも2つの水素原子を1分子中に有する、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン(II)とよりなるものとした、
該成分(a−1)又は成分(a−2)、
・補強無機充填材(III)、
・(a−1)を用いるときは、少なくとも1つの有機過酸化物(IV)を有し、(a−2)を用いるときは、少なくとも1つの金属又は白金族の金属化合物(V)を有する、有効量の架橋触媒、
・Si−H基を有するポリオルガノ水素シロキサン型の、接着促進剤(VI)
・随意の、少なくとも1つの追加の接着促進剤(VII)、
・随意の、少なくとも1つの追加の充填材(VIII)
・随意の、少なくとも1つの架橋阻害剤(IX)、
・随意の、少なくとも1つのポリオルガノシロキサン樹脂(X)、および、
・随意の、特定の特性を付与する1つ以上の機能性添加剤、
を有する、該シリコーンエラストマー組成物において、
ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び他方では量を選択し、この選択は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基が過剰となり、接着すべき前記シリコーン基板に対するSi共有結合のポテンシャル面密度が、60nmあたり、好ましくは40nmあたりに少なくとも1つのSi共有結合を有するように行うことを特徴とするシリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び、他方では量を選択し、この選択は、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I又はI’)のアルケニル基と架橋する反応後に、前記過剰Si-H基の量が、1:1に等しいSiH対Si-アルケニルの比に対して、100gの前記シリコーン組成物あたり、少なくとも0.1重量%のSiHとなる、好ましくは100gの前記シリコーン組成物あたり、少なくとも0.15重量%のSiHとなり、この場合、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I)が、好ましくは炭素数2〜6で、シリコンに結合する少なくとも2つのアルケニル基を1分子中に有するように行うことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、前記ポリオルガノシロキサン(II)又は前記接着促進剤(VI)は、以下の式(II.1)のシロキシル単位を有し、すなわち、
Hd LeSiO(4-(d+e))/2 (II.1)
ここで、
・Lは、前記触媒の活性に悪影響のない、一価の炭化水素基であり、1〜8の炭素原子を有するアルキル基から包括的に選択し、随意に少なくとも1つのハロゲン原子によって置換し、ならびにアリル基からも選択したものとし、
・dは1又は2であり、eは0、1、又は2であり、d+eは1〜3の範囲における値を有するものとし、また
随意に、以下の平均的な式 (II.2)の他のシロキシル単位を有し、すなわち、
Lg SiO(4-g)/2 (II.2)
ここで、Lは上記と同じ意味を有し、gは0〜3の範囲における値をとる。
前記接着促進剤(VI)に固有の条件も適用する
ことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物において、ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)は、10〜45重量%のSi-Hを有するポリメチル水素シロキサン、又は、10〜48重量%のSi-Hを有するメチル水素シロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体としたことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物において、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I’)又は随意の前記ポリオルガノシロキサンゴム(I)は、以下の式(I'.1)の単位を有し、すなわち、
Wa Zb SiO(4-(a+b))/2 (I'.1)
ここで、
・Wは、アルケニル基、好ましくはビニル基又はアリル基とし、
・Zは、前記触媒の活性に悪影響のない、一価の炭化水素基であり、1〜8の炭素原子を有するアルキル基から選択し、随意に少なくとも1のハロゲン原子に置換し、ならびにアリル基からも選択するものとし、
・aは1又は2であり、bは0、1、又は2であり、a+bは1〜3の範囲における値を有するものとし、また
随意に以下の平均的な式(I'.2)の他の単位を有する、すなわち、
Zc SiO(4-c)/2 (I'.2)
ここで、Zは上記と同じ意味を有し、cは0〜3の範囲における値を有するものとした、
ことを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物において、前記ポリオルガノシロキサンゴム(I’)又は前記ポリオルガノシロキサンゴム(I)は、300,000〜800,000の分子量を有し、好ましくは400,000〜600,000の分子量を有することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物において、前記補強無機充填材(III)は、100〜300m/gの比表面積を有するシリカから選択し、これらシリカは、随意に少なくとも1つの相溶性剤を用いて前処理したものとすることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物において、前記追加の充填材(VIII)は、コロイド状シリカ、燃焼及び沈殿シリカ粉末、珪藻土、粉末石英、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、膨張蛭石、ジルコニア、ジルコン酸塩、非膨張蛭石、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、雲母、タルク、酸化鉄、硫酸バリウム、消石灰、およびこれらの混合物を有する群から選択したことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物において、15〜75、好ましくは20〜45のムーニー粘度(Mooney Broad 1 + 4)を有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
特に織物利用建築の分野におけるシリコーン薄膜に使用することができる接着剤において、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を有することを特徴とする接着剤。
【請求項11】
特に2次元シリコーン複合体の分野で使用することができる、請求項10に記載の接着剤を有し、該接着剤はラミネート処理した接着性ストリップ。
【請求項12】
シリコーン基板を接着する方法において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物、請求項10に記載の接着剤、又は請求項11に記載の接着性ストリップを利用することを特徴とする方法。
【請求項13】
接着性であり、また加熱下で架橋可能であり、特にシリコン処理した基板の接着を意図するシリコーンエラストマー組成物に、接着促進剤としてポリオルガノ水素シロキサンを使用する方法であって、
ポリオルガノ水素シロキサン型の前記接着促進剤(VI)の、一方では種類、及び、他方では量を選択し、この選択は、当該組成物を架橋する反応後に、Si-H基が過剰となり、接着すべき前記基板に対する結合のポテンシャル面密度が、60nmあたり、好ましくは40nmあたりに少なくとも1つの結合を有するように行うことを特徴とする使用方法。
【請求項14】
請求項13に記載の使用方法において、前記ポリオルガノ水素シロキサンは、請求項1〜4のいずれか一項で定義したものとすることを特徴とする使用方法。

【公表番号】特表2010−535260(P2010−535260A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518666(P2010−518666)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059989
【国際公開番号】WO2009/016199
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(508170896)ブルースター・シリコンズ・フランス・エス・アー・エス (5)
【Fターム(参考)】