説明

接着性不織布芯地及びそれを用いた布帛

【課題】表地のテクスチュアを保ち、保型性と運動追従性を付与でき、さらに着用感に優れる衣服とすることのできる接着性不織布芯地、及びそれを用いた布帛の提供。
【解決手段】不織布の両表面に接着剤が付着されている接着性不織布芯地であって、不織布は、横方向の伸度が縦方向の伸度の1.3〜25倍であり、好ましくは不織布を構成する繊維の80%以上が縦方向に配列した不織布で、接着剤は、好ましくは不織布の両面にドット状に付着されていることを特徴とする接着性不織布芯地、およびそれを用いた布帛、好ましくはリバーシブル布地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性不織布芯地に関し、特に横方向の伸度が縦方向のそれより大きい不織布の両面に接着剤を付着させた接着性不織布芯地及びそれを用いた布帛や編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から衣服においては、生地素材の特性を活かし、生地素材の弱点を補強するために、種々の芯地が使用されている。これら芯地の1つとして、繊維シートの片面に接着剤を付着させた、いわゆる接着芯地があり、この接着芯地は生地に熱プレスさせることにより可縫性や保型性に優れているため、好適に使用されている。
接着芯地は、衣服に保型性を持たせる目的で広く用いられており、表地と接着するための接着樹脂を芯地基布に所定形状で被着形成した構成が一般的である。芯地基布として織編物や不織布などが用いられ、接着樹脂にはローラープレス機などの加熱手段により表地と容易に熱接着し得るホットメルト樹脂が利用されている。接着プレス機は主に縫製工場で使用される温度・圧力・時間の調整が出来るプレス機をいう。
【0003】
これら接着芯地の基材の一つとして、不織布芯地は、保型性の出にくい素材に補強して保型性を出す基材として多用されている。特に不織布に接着剤を塗布した接着芯地は、芯地の特性が生地に影響を与えることが多く、その選択には種々検討が加えられている。衣料用不織布芯地としては、パラレルウェブ、クロスウェブまたはランダムウエブ不織布をアクリルエマルジョンなどのバインダーを含浸させたケミカルタイプまたは、熱エンボスにより部分的に熱融着したサーマルボンドタイプの基布があり、これらの不織布に熱融着剤を塗布したものなどがあり、布地と不織布芯地とを熱プレス処理等により接着する方法や繊維不織布をフラシ芯地として用い、縫製により装着する方法等が用いられている。
【0004】
また、衣類をリバーシブルとして使用するために2枚の表地を貼り合わせた布地が用いられている。リバーシブル素材を構成する場合には、(1)織物や編物を作る時点で糸をつかって繋ぐ物、(2)生地と生地とを後加工機で接着する物がある。(2)の場合は、(i)ホットメルトのフィルムまたはクモの巣樹脂で生地と生地を張り合わせる物、(ii)生地にホットメルト樹脂でのドット加工をしてそのまま接着する物、(iii)生地をグラビア加工機で樹脂を付けて接着する物などが挙げられる。それらの素材は、(i)の場合はフィルムのため縦横の伸びに限界がありフィルムの伸度が生地のそれよりも少ない場合は止めてしまう傾向がある。また(i)や(ii)や(iii)の素材の場合は、生地の動きと同じ様に動くため、ジャージやセーター地のように保型性のない素材などは、保型性を出すことが出来ないため形崩れが生じるため、洋服のアイテムに限界が生じる(保型性のない素材は、ジャケットやコートはそれ単体では作ると形崩れが生じやすい)という問題を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、表地のテクスチュアを保ち、保型性と運動追従性を付与でき、さらに着用感に優れる衣服とすることのできる接着性不織布芯地、及びそれを用いた布帛、編物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、一般に人が衣服を着用するときは、衣服の横方向に力がかかり、縦方向より横方向に伸縮する感じを持たせることにより衣服の着用感が向上し、さらに、接着芯地が用いられるリバーシブル素材を用いた衣服においては、生地よりむしろ芯地に横方向に伸縮しやすい不織布を用いることにより、衣服の着用感が向上することに気が付き、横方向の伸度が縦方向の伸度より大きい不織布の両表面に接着剤を付着させた接着性芯地で加工すると、特にリバーシブル布地は、保型性が出てきて、加工のデメリットをカバーでき、縦よりも横の伸度の方があるためジャージやセーター地のように動きのある素材対しても形崩れすることなく、また着用時の機能を損なわずに着用感のよいものを作ることが出来、さらに、生地の横地は動きを止めないため生地のそれと同じように動き着用感のよいものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、不織布の両表面に接着剤が付着されている接着性不織布芯地であって、不織布の横方向の伸度が縦方向の伸度の1.3〜25倍であることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、不織布を構成する繊維の80%以上が縦方向に配列した不織布であることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、不織布が、目付け重量6〜70g/mであることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、不織布が、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿、および羊毛からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の繊維から形成される不織布であることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、不織布の両面にホットメルト接着剤がドット状に配されていることを特徴とする接着性不織布製芯地が提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、ホットメルト接着剤が個々の直径が0.1〜3.0mmのドット状で、不織布の片面につき50〜1,500個/inで、全体付着量が2〜60/mとなるように配されていることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、ドット状ホットメルト接着剤がディスパージョンドット、パウダードット、またはダブルドットコーティングのいずれかの方法で不織布表裏面に配されたものであることを特徴とする接着性不織布芯地が提供される。
【0014】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明の接着性不織布芯地を用いた布帛が提供される。
【0015】
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、布帛がリバーシブル布帛であることを特徴とする布帛が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接着性不織布芯地は、横方向の伸度が縦方向の伸度より1.3〜25倍大きい不織布の両表面に接着剤が付着されているものであるので、それを用いた布帛は、表地のテクスチュアを保ち、保型性と運動追従性を付与でき、さらに着用感に優れる衣服とすることができる。特に、現状のリバーシブル布地を衣服にした場合、保型性が出にくいため形崩れが大きい。しかし、本発明は、現状行われているホットメルト樹脂を直接生地に塗布する加工のデメリットをカバーでき、縦よりも横の伸度の方があるためジャージやセーター地のように動きのある素材対しても形崩れすることなく、また着用時の機能を損なわずに着用感のよいものを作ることが出きる。さらにホットメルトのフィルムで加工する場合のデメリットに対しても生地の横地は動きを止めないため生地のそれと同じように動き着用感のよいものとなることができる。そのため加工できなかった素材の組合せが仕立映えのする服が出来上がるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明のについて詳細に説明する。
1.接着性不織布芯地
(1)不織布
本発明の接着性不織布芯地で用いる不織布は、それ自体を布帛または編物に接着させることにより、表地の動きに合わせて横方向に追従させる動きを持たせ、縦方向に伸びを抑えたところに特徴がある。
本発明で用いる不織布の横方向の伸度は、縦方向の伸度の1.3〜25倍であり、好ましくは2〜15倍である。横方向の伸度が1.3倍未満であると、接着性不織布芯地を用いた布帛からの衣類では着用感が悪く、25倍を超えると保型性が損なわれる。
このような特性を発現できる不織布としては、伸度が上記の特性を有するものであれば、パラレルウェブ、クロスウェブまたはランダムウエブのようにどのような製法による不織布であってもよいが、不織布を構成する繊維の80%以上、好ましくは85〜95%が縦方向に平行に配列している不織布が好ましい。繊維を縦方向に配列させることにより縦方向には伸びが抑えられる代わりに引っ張りに対して強い抵抗性があり、したがって、寸法安定性に優れる。一方、横および斜め方向には優れた伸度を有している。
ここで、本発明における不織布の縦方向とは機械方向のことであり、横方向とは機械方向に直交する方向を指す。
また、不織布の伸度は、伸張回復する限度において、元の長さから伸びた値を%で表すものであって、例えば、100cmのものが110cmまで伸びたら伸度10%と表す値をいう。
【0018】
本発明で用いる不織布は、一方向(縦方向)については伸度が制限されているように繊維配列がなされているものであり、その基布の製造方法としては、熱融着によって不織布とするサーマルボンド法不織布、あるいは接着剤を使用するケミカルボンド法不織布あるいは水流によって繊維を交絡させたスパンレース法不織布やスパンボンド不織布、あるいは、ニードルパンチ不織布等において、短繊維を一方向に揃えるようにするパラレルカード機、クロスカード機等を用いる方法が好ましい。
【0019】
本発明で用いる不織布の目付け重量は、6〜70g/mが好ましく、より好ましくは8〜40g/mである。不織布の目付けが6g/m未満では接着剤の染み出しが発生して風合いが硬くなる恐れがあり、70g/mを超えると厚みが加工時につぶれてなくなり硬くなる恐れがある。
不織布を構成する材料は、芯地としての機能を果たす材料であれば、特に限定されないが、ナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿、羊毛等が好ましく、これらの繊維を2種以上混合して用いても良い。
【0020】
(2)接着剤
本発明の接着性不織布芯地では、不織布の両表面に接着剤が付着されている。接着性不織布芯地をリバーシブル布帛用に用いる場合、不織布の片面のみに接着剤を付着させた接着芯地を用いると、接着剤は熱圧接時に不織布の細孔から反対面ににじみ出して裏側の表地と接合することが可能であるが、そのためには、不織布の目付け、厚みポアサイズなどが適合していなければならず、接合面への滲み出し量を適切にコントロールすることが困難である。したがって、表地と接着強度を管理することが難しいのみならず、接着剤が片側の表地に偏在するか、あるいは過剰に滲み出すため風合いを損ねるので好ましくなく、不織布の両面に接着剤を付着させた芯地を用いる方が好ましい。この場合、接着剤を芯地の反対側へしみ出させる必要がなく、そのため接着剤の量もまた少なくてよく、これらの結果として芯地である不織布はその柔らかさ伸縮性も低下することなく保持される。
【0021】
接着剤は、不織布上に全面塗布する方法やドット状に塗布する方法等を用いることができる。これらの中では、接着剤をドット状に塗布する方法が好ましく、ドット状に付着された接着剤により表地と不織布芯地とは点接合で一体化され、これにより表地の動きの過度の高速や接着剤の硬化、フィルム化による風合いの悪化や透湿性の低下を回避することができる。
【0022】
接着剤をドット状に付着させる場合は、表地の風合いおよび伸張回復性を損なわぬよう、接着剤が適度の密度間隔でドット状に置かれ、かつ、不織布上のどの部分をとっても一様に配置されていることが好ましく、ドットの配置密度および一個のドットの大きさは、表地の風合いや伸張回復性をそこなわないように上下表地と芯地である不織布を接着一体化するように適宜選択される。
特に、不織布の片面においては、個々のドットの直径は、0.1〜3.0mmが好ましく、不織布面上のドットの密度は、50〜1,500個/inが好ましく、不織布面に対するドットの付着量は2〜60g/mが好ましい。ドットの直径、密度、付着量がこの範囲未満であると表地との良好な接着強度が保証されず、この範囲を超えると接着加熱加圧時に裏面にしみだし、外観風合いを損なう。
なお、不織布の両面に接着剤を付着させる場合は、両面に同じように付着させる必要がなく、上記の範囲内でそれぞれ接着させる表地に合わせた直径、密度、付着量にすることができる。
【0023】
不織布上への接着剤のドット状の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、ディスパージョンドット塗布法、パウダードット塗布法、ダブルドットコーティング法等を用いることができる。
また、ドット状の付着パターンとしては、特に限定されず、例えば、図1に示すランダム・パターン、図2に示す格子状パターン(またはレギュラーパターン)を挙げることができる。これらのパターンは、用途、表地の生地厚み、風合いなどに応じて使い分けることができる。
【0024】
なお、不織布の両面上に上記ドットパターンで接着剤を付着させた接着性不織布芯地及びその上に表地を貼り合わせた状態をぞれぞれの断面図で説明する。図3は、不織布1の両面に同じ格子状パターンでドット状に接着剤2、3を付着させた接着性不織布芯地の断面図である。図4は、図3の接着性不織布芯地の両面に表地4、5を貼り付けた布帛の断面図である。図5は、不織布1の片面に格子状パターンでドット状に接着剤3を付着させ、他の面により小さいドットでランダムパターンで接着剤2を付着させた接着性不織布芯地の断面図である。図6は、図5の接着性不織布芯地の両面に異なる表地5、6を貼り付けた布帛の断面図である。図4及び図6は、後述のリバーシブル布帛の断面図に相当する。
【0025】
本発明の接着性不織布芯地における接着剤としては、ホットメルト系の接着剤が用いられる。その材質としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等であるが、特に好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン系のホットメルト樹脂である。
【0026】
2.布帛
本発明の布帛は、上記接着性不織布芯地に表地を接着させた生地である。表地としては、各種の織布及び編布および合成皮革を使用することができ、合成繊維、再生繊維または天然繊維からなるが、これらの繊維の交繊、交編された布地を用いてもよい。
本発明の接着性不織布芯地を表地2枚の間に挟み、熱プレスで加圧接着すれば、伸縮性に方向性を有するリバーシブルな布地を作ることができる。
本発明の布帛は、横方向の伸度が縦方向の伸度より2〜10倍大きい不織布の両表面に接着剤が付着されている接着性不織布芯地を用いているので、裁断して衣服にした場合、衣服は縦方向より横方向に伸縮しやすくなり、衣服の着用感が向上するという特徴を有する。特に、リバーシブル布地からの衣服においては、保型性が出てくるため、ホットメルト樹脂を直接生地に塗布する加工のデメリットをカバーでき、縦よりも横の伸度の方があるためジャージやセーター地のように動きのある素材対しても形崩れすることなく、また着用時の機能を損なわずに着用感のよいものを作ることが出きる。さらにホットメルトのフィルムで加工する場合のデメリットに対しても生地の横地は動きを止めないため生地のそれと同じように動き着用感のよいものとなることができる。
【実施例】
【0027】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例、比較例において、風合い、外観、着用感については、片面が綿100%の天竺素材と片面が綿70%とポリエステル30%の素材を両表面に接着剤を付着させた接着性芯地を用いてリバーシブル布地を得、得られた布地からジャケット製品とパンツ製品を男性用・女性用と作成し、着用試験を行った。着用試験は、それぞれ男女5人ずつに10日間(連続ではない)着用してもらい、その後、風合い、着用感について評価をした。伸度は、テンシロン(オリエンティック製万能引張試験機)を用いて測定した。
【0028】
(実施例1)
芯地用基材としての不織布は、サーマルボンド法によって作られ、目付け重量は16g/m、構成繊維はナイロンとポリエステル混合とした。大部分の繊維が平行に配列するようパラレル方式乾式不織布製造機を用いた。得られた不織布中の繊維の配列は、90%以上が縦方向に配列していた。不織布表面の顕微鏡写真を図7に示した。
また、不織布の縦と横の伸度の比は、縦:横=1:3、強度の比は、縦:横=5:1であった。
この不織布の両面にポリアミド系ホットメルト接着剤をディスパージョン・ドット・コーティング法によって、ロータリースクリーンを用いドット状に配置した。直径1.0mmのドットを170個/inの密度で両面とも図1に示すようなランダムパターンに付着させた。付着樹脂量は、片面につき、それぞれ10g/mとし、接着性不織布芯地を得た。
得られた接着性不織布芯地を2枚の表地に挟み、ホットプレスを用いて140℃、7N/cm、10秒間熱圧着し(アサヒローラー型プレス機JR600使用)、表地−不織布−表地の3層を積層一体化してリバーシブル布地とした。
得られたリバーシブル布地について、風合い、外観、伸度について評価した。
このリバーシブル布地は、風合い、外観、着用感において接着性不織布芯地を用いず、接着剤を直接布地に塗布したリバーシブル布地に比べて優れ、ソフトで表地のテクスチュアをよく保っていた。また、布地は、適度の伸度を有していた。さらに、繊維の配列方向(縦方向)の伸びは程よくおさえられているが、横方向の伸びは縦方向より数倍大きく、かつ伸度が保たれていた。このような布地を利用して得られるリバーシブルな服地は、縦伸びは抑えられ、横方向の適度な延びと回復性によって保型性と運動追従性が付与され、着用感に優れていた。
【0029】
(実施例2)
実施例1において、ポリアミド系ホットメルト接着剤をディスパージョン・ドット・コーティングする際、一方の面では、ドット数を330個/in、樹脂量10g/m、ドット(ドットパターンはランダムパターン)の直径0.5mmとし、この面に実施例1に用いたと同じポリエステル・ポリウレタン混合生地(目付け重量200g/m)を貼り付けた。他の面では、ドット数を900個/in、樹脂量10g/m、ドットの直径0.3mmとし(ドットのパターンはレギュラーパターン)、この面に目付け重量70g/mのコットン100%の薄地の表地を貼り、厚表地−不織布−薄表地の3層を積層一体化したリバーシブル布地とした。
厚地の表地は、接着性不織布芯地と強固に接合し、表が厚地、裏が薄地の表地からなるリバーシブル布地が得られた。得られたリバーシブル布地は、それぞれの面で、厚表地、薄表地のテクスチュアをよく保ち、適度の伸度を有していた。さらに、横方向の適度な延びと回復性によって保型性と運動追従性が付与され、風合い、外観、着用感に優れていた。
【0030】
(比較例1)
実施例1に用いた2枚の表地の間に、目付け重量26g/mのくもの巣状のポリアミドホットメルト樹脂を挿入し、ホットプレスを用いて140℃、7N/cm、10秒間に圧接し、2枚の表地を一体化させリバーシブル布地とした。なお、図8にくもの巣状に付された接着剤の状態の顕微鏡写真を示す。
くもの巣状のホットメルト接着剤を使用した布地は、伸びが大きく、かつ伸張回復性が乏しい。これはくもの巣状ホットメルト樹脂が繊維組織としての抗張力を持たず、表地が伸ばされたままの状態に置かれていることを示していた。
【0031】
(比較例2)
実施例1における2枚の表地の間に目付け54g/mのフィルム状のポリアミドホットメルト樹脂を挿入し、ホットプレスを用いて140℃、7N/cm、10秒間にて圧接し2枚の表地を一体化させ、リバーシブル布地とした。
フィルム状のホットメルト樹脂を使用した布地は、伸びはあらゆる方向に止められている。また、布地の通気性が損なわれている。また、一旦のばした布地はもとに回復しなかった。
【0032】
(比較例3)
芯地用不織布として、大部分の繊維が縦方向に平行配列したものを用いる代わりに、ランダムに配列した縦方向と横方向の伸び、伸張回復性が同じ不織布を用いた以外は、実施例1と同様にしてリバーシブル布地を作製した。
このリバーシブル布地は、実施例1のリバーシブル布地に比べ、風合いに劣り、保型性と運動追従性に劣った。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の接着性不織布芯地は、表地の風合いを損なうことなく、横方向に引っ張られたときの伸縮性、伸張回復性に優れているので、それを用いた布帛、特にリバーシル布帛は、ファッション性を要求されるジャケットやコート、運動追従性が要求されるスポーツウエア、ジャンパーなどに有用性がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】接着剤のドットのランダムパターン配置の1例を示す図である。
【図2】接着剤のドットのレギュラーパターン配置の1例を示す図である。
【図3】本発明の接着性不織布芯地の断面図である。
【図4】本発明の接着性不織布芯地に表地を貼り付けた布帛の断面図である。
【図5】本発明の接着性不織布芯地の断面図である。
【図6】本発明の接着性不織布芯地に表地を貼り付けた布帛の断面図である。
【図7】実施例1で用いた不織布表面の顕微鏡写真からの図である。
【図8】比較例1で用いたくもの巣状ホットメルト樹脂の顕微鏡写真からの図である。
【符号の説明】
【0035】
1 不織布
2 ドット状接着剤
3 ドット状接着剤
4 一方の表地
5 他方の表地
6 薄地表地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の両表面に接着剤が付着されている接着性不織布芯地であって、不織布の横方向の伸度が縦方向の伸度の1.3〜25倍であることを特徴とする接着性不織布芯地。
【請求項2】
不織布を構成する繊維の80%以上が縦方向に配列した不織布であることを特徴とする請求項1に記載の接着性不織布芯地。
【請求項3】
不織布が目付け重量6〜70g/mであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着性不織布芯地。
【請求項4】
不織布がポリアミド、ポリエステル、アクリル、レーヨン、綿、および羊毛からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料の繊維から形成される不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着性不織布芯地。
【請求項5】
不織布の両面にホットメルト接着剤がドット状に配されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着性不織布製芯地。
【請求項6】
ホットメルト接着剤が個々の直径が0.1〜3.0mmのドット状で、不織布の片面につき50〜1,500個/inで、全体付着量が2〜60/mとなるように配されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着性不織布芯地。
【請求項7】
ドット状ホットメルト接着剤がディスパージョンドット、パウダードット、またはダブルドットコーティングのいずれかの方法で不織布表面に配されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着性不織布芯地。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着性不織布芯地を用いた布帛。
【請求項9】
布帛がリバーシブル布帛であることを特徴とする請求項8に記載の布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−9217(P2006−9217A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191441(P2004−191441)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】