説明

接着性付与剤用硬化剤組成物

【課題】揮発性有機物質を発生することなく、低粘度であり、かつ貯蔵安定性に優れるプラスチゾルに使用される接着性付与剤用の硬化剤組成物を提供する。
【解決手段】1級及び/若しくは2級アミノ基含有モノ又はポリアミド化合物(A)並びにアルキレンオキサイド付加物(B)を含有してなる、プラスチゾルに使用される接着性付与剤用の硬化剤組成物であって、モノ又はポリアミド化合物(A)が、モノ又はポリアミドの部分変性体であって、該部分変性体が、イミダゾリン環を含む変性体、モノ又はポリエポキシ化による変性体、ケトンとの反応より形成されるケチミン変性体及び電子吸引基含有ビニル化合物との付加変性体からなる群から選ばれる1種以上の部分変性体であり、アルキレンオキサイド付加物(B)の数平均分子量が62〜1000であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチゾルに使用される接着性付与剤用の硬化剤組成物に関する。更に詳しくは、特に自動車の外板に塗装され、車体鋼板の腐食を防止するプラスチゾルの配合成分として使用される接着性付与剤用の硬化剤組成物、それを含む接着性付与剤、プラスチゾル、プラスチゾルの硬化物及びチッピング防止鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の塗装用プラスチゾルには、被塗物への接着性を向上させるために、通常は接着性付与剤が配合されている。それらのうち、自動車用鋼板に塗装されるプラスチゾル用の接着性付与剤は、基剤となるブロック化ウレタンプレポリマーと硬化剤組成物を含有しており、硬化剤組成物としてはアミノ基含有化合物を希釈剤、例えば揮発性有機溶剤(キシレン及びトルエン等)若しくはプラスチゾル用の可塑剤(ジイソノニルフタレート、ジエチルフタレート及びジオクチルフタレート等:特許文献−1)等で低粘度化したものが主として使用されている。しかしながら、揮発性有機溶剤は揮発性有機物質(VOC)として規制されていて環境衛生上の問題があり、一方、プラスチゾル用の可塑剤を使用した硬化剤組成物は高温(例えば40〜60℃)での経日粘度変化が大きく、硬化剤組成物を長期間保存管理する上での大きな問題となっていた。
【特許文献−1】特開平7−247336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、揮発性有機物質(VOC)を含有することなく、低粘度で貯蔵安定性に優れたプラスチゾル用接着性付与剤用硬化剤組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0004】
本発明の硬化剤組成物及び接着性付与剤は、揮発性有機物質を含有することなく低粘度であり、かつ貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本発明の接着性付与剤用の硬化剤組成物は、1級及び/若しくは2級アミノ基含有モノ又はポリアミド化合物(A)[以下において、ポリアミド化合物(A)又は単に(A)と表記する場合がある]並びにアルキレンオキサイド付加物(B)[以下において、単に(B)と表記する場合がある]を含有してなる。
【0006】
本発明におけるポリアミド化合物(A)としては、エポキシ樹脂硬化剤として公知であり、重合脂肪酸及び一塩基酸からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ポリアミンとを反応させて得られるモノ又はポリアミド化合物(A1)(ポリアミド樹脂)並びにそれらの部分変性体(A2)が挙げられる。
【0007】
上記重合脂肪酸、一塩基酸及びポリアミンは特公昭53−41121号公報及び特公昭53−41122号公報に記載のものが使用できる。重合脂肪酸としては、天然油脂類(大豆油、綿実油、ナタネ油、トール油及び牛脂等)に由来する不飽和脂肪酸を二量化して得られるものが挙げられ、この場合二量化反応で副生する三量体や未反応脂肪酸を若干含有しているものが一般的である。一塩基酸としては、飽和酸(酢酸及びステアリン酸等)、不飽和酸(オレイン酸及びリノール酸等)、芳香族酸(安息香酸等)、脂環式酸(ナフテン酸等)、ヒドロキシ酸(ひまし油脂肪酸等)等のモノカルボン酸が挙げられ、通常は天然油脂由来の不飽和脂肪酸を主体とする脂肪酸がよく用いられる。ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)、芳香環を有するポリアミン(キシリレンジアミン等)、脂環式ポリアミン(イソホロンジアミン等)、芳香族トリアミン(m−フェニレンジアミン、p,p‘−ジアミノフェニルメタン等)が挙げられる。これらのうち好ましいのは、脂肪族ポリアミン、芳香環を有するポリアミン及び脂環式ポリアミンである。
【0008】
重合脂肪酸又は一塩基酸とポリアミンとの反応は、60〜250℃で通常のアミド化反応で行うことができる。モノ又はポリアミド化合物(A)のアミン価は通常90以上、好ましくは100〜450、特に好ましくは150〜400である。アミン価が90未満のものは一般に高分子量であるため、プラスチゾルに対する相溶性が低下する。
【0009】
モノ又はポリアミド化合物の部分変性体(A2)としては、分子中にイミダゾリン環を含む変性体、モノ又はポリエポキシ化による変性体、ケトンとの反応により形成されるケチミン変性体及び電子吸引基含有ビニル化合物との付加変性体からなる群から選ばれる1種以上の部分変性体が挙げられる。イミダゾリン環を含む変性体としては、ポリアミド化反応後更に脱水縮合反応を促進させイミダゾリン化させたもの等;モノ又はポリエポキシ化による変性体としては、特開昭51−23560号公報に記載のモノエポキシ化合物を必須成分として反応させた重合体等;ケトンとの反応より形成されるケチミン変性体としては、特開平2−191686号公報に記載のポリアミンと炭素数3〜9の脂肪族ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン及びジイソブチルケトン)との反応物で変性したもの等;電子吸引基含有ビニル化合物との付加変性体としては、特開昭52−5554号公報に記載のアクリロニトリルを添加して反応させたもの等;が挙げられる。
【0010】
(A)中には遊離のポリアミンを含んでもよく、遊離のポリアミンとしては、前記ポリアミンが挙げられる。
【0011】
本発明におけるアルキレンオキサイド付加物(B)としては、例えば一般式(1)で表されるものが挙げられる。

1O−(XO)m−R2 (1)

式中、R1及びR2は水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基、Xは炭素数2〜4のアルキレン基、mは1〜10である。
【0012】
前記炭化水素基としては脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、鎖状及び脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0013】
脂肪族鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基及びイソヘキシル基等のアルキル基;エテニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。脂肪族脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基等が挙げられる。
【0014】
1及びR2のうち好ましいのは、接着性付与剤との溶解性の観点から、脂肪族鎖状炭化水素基及び水素原子であり、更に好ましくは炭素数1〜4の脂肪族鎖状炭化水素基及び水素原子であり、特に好ましくは水素原子である。
【0015】
一般式(1)におけるXは、炭素数2〜4のアルキレン基であって、具体的にはエチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基及び1,2、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレン基が挙げられる。これらのうち接着性付与剤との溶解性の観点から好ましいのは、エチレン基及び1,2−プロピレン基であり、Xは1種のアルキレン基の単独使用又は2種以上のアルキレン基の併用であってもよい。Xは、アルキレンオキサイドのアルキレン基がXであるものの付加反応により形成されるため、これらの付加物における付加モル数は分布を有している。従ってmは平均値で表され、接着性付与剤との溶解性の観点から好ましくは1〜10であり、更に好ましくは3〜5である。なお、2種以上のアルキレンオキサイドを併用する場合は、ブロック付加(チップ型、バランス型及び活性セカンダリー型等)でもランダム付加でもよい。
【0016】
エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を共重合する場合のEO/POのモル比率は、好ましくは90/10〜10/90、更に好ましく70/30〜20/80、特に好ましくは60/40〜30/70である。
【0017】
(B)の数平均分子量(Mn)は62〜1000であり、好ましくは150〜1000、特に好ましくは300〜650である。数平均分子量が1000を超えるものはモノ又はポリアミド化合物(A)に対する相溶性が低下する。
【0018】
(B)の具体的な例としては、以下のものが挙げられる。
1=アリル基、R2=メチル基、X=エチレン基、m=3(ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、三洋化成工業(株)製「サニコール M−300」等)[アリルEO付加物メチルエーテル、Mn=約200]、
1=ブチル基、R2=水素原子、X=プロピレン基、m=3(ポリオキシプロピレンブチルエーテル、三洋化成工業(株)製「ニューポール LB−65」等)[ブタノールPO付加物、Mn=約340]、
1=水素原子、R2=水素原子、X=プロピレン基、m=10(ポリオキシプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製「サンニックス PP−600」等)[プロピレングリコールPO付加物、Mn=約600]、
1=ブチル基、R2=水素原子、X=エチレン基及びプロピレン基、m=4(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールブチルエーテル、三洋化成工業(株)製「ニューポール 50HB−55」等)[ブタノ−ル(EO/PO)ランダム付加物、EO/PO=60/40(モル比)Mn=約240]、
【0019】
アルキレンオキサイド付加物(B)の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)R1及びR2が水素であるものの製造;
2価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等)を加圧反応容器に仕込み、無触媒で又は触媒の存在下にアルキレンオキサイドを吹き込み、常圧又は加圧下に1段階又は多段階で反応を行なう。触媒としては、アルカリ触媒[例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物、酸[過ハロゲン酸(過塩素酸、過臭素酸及び過ヨウ素酸等)、硫酸、燐酸及び硝酸等(好ましくは過塩素酸)]並びにこれらの塩[好ましくは 2価又は3価の金属(Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Co、Ni、Cu及びAl等)の塩]が挙げられる。反応温度は通常50〜150℃、反応時間は通常2〜20時間である。アルキレンオキサイドの付加反応終了後は、必要により触媒を中和し吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。
(2)R1及びR2の一方が水素であり、一方が炭素数1〜6の1価の炭化水素基であるものの製造;
炭素数1〜6の1価アルコールを加圧反応容器に仕込み、(1)と同様の方法で行う。
(3)R1及びR2が炭素数1〜6の1価の炭化水素基であるものの製造;
炭素数1〜6の1価アルコールを加圧反応容器に仕込み、(1)と同様の方法で炭素数1〜6の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を合成した後、強アルカリ性化合物(アルカリ金属水酸化物など)の存在下で、炭素数1〜6のハロゲン化アルキルを反応させて行う。ハロゲン化アルキルとしては塩化アルキル、臭化アルキル等が用いられる。
【0020】
本発明の硬化剤組成物において、(A)及び(B)の合計重量に基づいて、(A)の含有量は、金属塗装面に対するプラスチゾルの接着性の観点から通常50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%である。(B)の含有量は、(A)との溶解性の観点から通常10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0021】
本発明の硬化剤組成物は、揮発性有機物質を含有することなく低粘度であり、かつ長期間保存しても粘度変化が少なく、貯蔵安定性に優れる。本発明の硬化剤組成物の60℃で10日間の経日変化試験における粘度変化率は通常10%以下、好ましくは5%以下である。粘度変化率は、硬化物組成物の試料90gを内径3cm、高さ11cmのガラス製の円筒容器に入れて密栓し、60±2℃の乾燥機に10日間静置保存した場合の、試験前後の25℃での粘度を、BL型粘度計(東京計器(株)製)で測定した粘度(単位はmPa・s)を測定し、下記式から算出する。数値が小さい程、貯蔵安定性が良好であることを示す。
経日変化後の粘度変化率(%)=(経日変化後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
【0022】
本発明のプラスチゾル用接着性付与剤は、前記硬化剤組成物及びブロック化ポリウレタンプレポリマー(C)[以下において、単に(C)と表記する場合がある]を含有してなり、前記硬化剤組成物と(C)を混合して得ることができるが、前記(A)、(B)及び(C)を含有してなるものであればよく、前記(A)、(B)及び(C)を別々に混合して得たものであってもよい。
【0023】
ブロック化ポリウレタンプレポリマー(C)としては、通常のプラスチゾル用として挙げられているものであればよく、例えば特開2007−39659号公報及び特開平9−255866号公報に記載のものが挙げられる。具体的には、有機ポリ(2〜4価又はそれ以上)イソシアネート(c1)とポリオール(c2)との反応で得られるウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基がブロック剤(c3)でブロック化された化合物が挙げられる。
【0024】
有機ポリイソシアネート(c1)のうちでプラスチゾルの接着性の観点から好ましいのは芳香族ポリイソシアネート、更に好ましいのはTDI(2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート)及びMDI(2,4−又は4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート)である。
【0025】
ポリオール(c2)としては、水酸基当量(水酸基1個当りの分子量)が31〜3,000の2〜6価又はそれ以上のポリオール、例えば水酸基当量31〜250の低分子ポリオール、水酸基当量250〜3,000の高分子ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール及びポリカーボネートポリオール等)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちプラスチゾルの粘度及び塗膜物性の観点から好ましいのは高分子ポリオール、更に好ましいのはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、特に好ましいのはポリエーテルポリオールである。
【0026】
ブロック剤(c3)としては、ラクタム(炭素数4〜10、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム及びγ−ブチロラクタム)、オキシム[炭素数3〜10、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)及びメチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)]、アミン[炭素数2〜20の2級アミン、例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン及びジイソプロピルアミン等)、脂環式アミン(メチルシクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等)及び芳香族アミン(ジフェニルアミン等)]、アルキルフェノール[炭素数7〜20、例えばクレゾール、ノニルフェノール、キシレノール及びジ−t−ブチルフェノール]及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちプラスチゾルの接着性及び貯蔵安定性の観点から好ましいのはラクタム及びアミン、更に好ましいのはラクタム、特に好ましいのはε−カプロラクタムである。
【0027】
本発明の接着性付与剤は、前記硬化剤組成物及びブロック化ポリウレタンプレポリマー(C)の合計重量に基づいて、プラスチゾルの接着性の観点から硬化剤組成物を好ましくは10〜75重量%、更に好ましくは20〜60重量%、並びに(C)を好ましくは25〜90重量%、更に好ましくは40〜80重量%含有する。
【0028】
本発明の接着性付与剤は、揮発性有機物質を含有することなく低粘度であり、かつ長期間保存しても粘度変化が少なく、貯蔵安定性に優れる。
【0029】
本発明のプラスチゾルは、前記接着性付与剤、可塑剤並びにアクリル重合体又は塩化ビニル重合体を含有してなる。
【0030】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル[ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINPと略記)等のフタル酸エステル等]、脂肪族カルボン酸エステル[メチルアセチルリシノレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、アジピン酸−プロピレングリコールポリエステル、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等]、リン酸エステル[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等]及びこれら2種以上の混合物が挙げられる。可塑剤としては、更に特開2007−39659号公報に記載の可塑剤を使用することもできる。これらのうち(C)への溶解性の観点から好ましいのは芳香族カルボン酸エステル、更に好ましいのはDOP及びDINPである。
【0031】
アクリル重合体としては、特開2007−39659号公報に記載のものが挙げられる。アクリル重合体のうち樹脂物性の観点から好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸メチルとそれ以外のモノマーとの共重合体、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体及び(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体である。またアクリル重合体は2種以上を併用することができる。
【0032】
アクリル重合体のMnは特に限定はないが、樹脂物性の観点から好ましくは10万〜500万、更に好ましくは30万〜300万である。アクリル重合体の形態は、通常微粒子状の粉体であり、該微粒子の体積平均粒子径は、好ましくは0.1〜50μm、更に好ましくは0.2〜10μmである。
【0033】
塩化ビニル重合体としては通常用いられるものを使用することができ、例えば特開平9−255866号公報記載のものが使用できる。塩化ビニル重合体としては、例えば塩化ビニル単独重合体及び塩化ビニルモノマーと共重合し得る他のビニルモノマー(例えば酢酸ビニル、無水マレイン酸、マレイン酸エステル、ビニルエーテル等)との共重合体が挙げられる。塩化ビニル重合体の重合度は通常1000〜1700である。塩化ビニル重合体の市販品としては、「カネビニルPSL−10」、「カネビニルPSH−10」及び「カネビニルPCH−12」(以上(株)カネカ製)、「ゼオン121」及び「ゼオン135J」(以上日本ゼオン(株)製)、「デンカビニルPA−100」及び「デンカビニルME−180」(以上電気化学工業(株)製)が挙げられる。これらは2種以上混合して使用することも可能である。
【0034】
本発明のプラスチゾルにおいて、接着性付与剤、可塑剤並びにアクリル重合体又は塩化ビニル重合体の合計重量に基づく各成分の含有量は、特に制限されないが、処方の一例を示せば下記(%は重量%である)の通りである。接着性付与剤の含有量は、金属塗装面に対するプラスチゾルの接着性の観点から、好ましくは1〜40%、更に好ましくは15〜30%である。可塑剤の含有量は、プラスチゾルの粘度の観点から、好ましくは10〜50%、更に好ましくは20〜45%である。アクリル重合体又は塩化ビニル重合体の含有量は、プラスチゾルの粘度の観点から、好ましくは10〜50%、更に好ましくは25〜40%である。
【0035】
プラスチゾルには、必要により本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の添加剤(充填剤、発泡剤、着色剤、安定剤及び/又は希釈剤)を配合することが可能である。その他の添加剤全体の添加量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常50%以下、好ましくは1〜40%である。
【0036】
充填剤としては、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ藻土、けい酸、けい酸塩、カオリン、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、カーボン繊維、金属繊維、セラミックウィスカ及びチタンウィスカ等)及び有機充填剤[セルロース粉、粉末ゴム、有機架橋微粒子(エポキシ及びウレタン等)及び尿素等]が挙げられる。充填剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて、プラスチゾルの粘度の観点から通常40%以下、好ましくは1〜35%である。
【0037】
発泡剤としては、アゾ系発泡剤(アゾジカルボンアミド及びアゾビスイソブチロニトリル等)、ニトロソ系発泡剤(ジニトロソペンタメチレンテトラミン等)及びヒドラジド系発泡剤[トルエンスルホニルヒドラジド及びオキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等]が挙げられる。発泡剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0038】
着色剤としては無機顔料、有機顔料及び染料が挙げられる。無機顔料としては、白色顔料、コバルト化合物、鉄化合物(酸化鉄及び紺青等)、クロム化合物及び硫化物が挙げられる。有機顔料としては、アゾ顔料及び多環式顔料が挙げられる。染料としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、インジゴイド系化合物、硫化系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ピラゾロン系化合物、スチルベン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、アリザリン系化合物、アクリジン系化合物、キノンイミン系化合物、チアゾール系化合物、メチン系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物及びアニリン系化合物が挙げられる。着色剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0039】
安定剤としては、金属石ケン(ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸アルミウム等)、無機酸塩(二塩基性亜リン酸塩及び二塩基性硫酸塩等)及び有機金属化合物(ジブチルチンジラウレート及びジブチルチンマレエート等)等が挙げられる。安定剤の使用量は、プラスチゾルの全重量に基づいて通常10%以下、好ましくは0.2〜5%である。
【0040】
接着性付与剤は低粘度であるため、プラスチゾル組成物の成形加工工程における取り扱いが容易であり、加工適性を損なわず加工できる。また、本発明の接着性付与剤は揮発性有機物質を含有しないので作業衛生面及び環境面で優れている。
【0041】
本発明の硬化物は、前記プラスチゾルを各種金属(特に鋼材)面に塗装して得られる硬化物である。本発明のプラスチゾルは各種下塗り塗装面に適用できるが、プラスチゾルの接着性の観点から特にカチオン型電着塗装面に有利に適用できる。プラスチゾルの塗布量は、耐チッピング性の観点から好ましくは500〜3,000g/m2、塗布膜厚は耐チッピング性の観点から好ましくは0.5〜3mmである。塗布方法としては、ハケ塗り、ヘラ塗り、ローラーコート、エアレススプレー塗装等が挙げられ、塗装効率及び高粘度塗料の塗装が可能という観点から好ましくはエアレススプレー塗装である。また、塗布後熱処理されるが、熱処理温度はプラスチゾルの接着性及び硬化性の観点から好ましくは110〜160℃、更に好ましくは120〜140℃であり、熱処理時間は同様の観点から好ましくは10〜40分、更に好ましくは20〜30分である。
【0042】
本発明のチッピング防止鋼板は、前記硬化物を鋼板表面の少なくとも一部に有する鋼板である。主に自動車のボディ下面、サイドシル及びタイヤハウス等のチッピングが生じやすい部分の鋼板として使用でき、チッピングによる発錆及び腐食を防ぐことが可能である。
【0043】
<実施例>
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0044】
[硬化剤組成物((A)+(B))の実施例]
<実施例1>
撹拌装置、還流冷却装置を備えた反応容器にトリエチレンテトラミン180部及び天然油脂類由来のダイマー酸470部を仕込み、230℃で4時間反応させ水分を留去した。その後、「サニコール M−300」(三洋化成工業(株)製、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル)400部で希釈し、目的の硬化剤組成物(X−1)1000部を得た。
【0045】
<実施例2>
実施例1に記載の「サニコール M−300」の代わりに「ニューポール LB−65」(三洋化成工業(株)製、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル)を400部使用した以外は実施例1と同様の方法で、目的の硬化剤組成物(X−2)1000部を得た。
【0046】
<実施例3>
実施例1に記載の「サニコール M−300」の代わりに「サンニックス PP−600」(三洋化成工業(株)製、ポリオキシプロピレングリコール)を400部使用した以外は実施例1と同様の方法で、目的の硬化剤組成物(X−3)1000部を得た。
【0047】
<実施例4>
実施例1に記載の「サニコール M−300」の代わりに「ニューポール 50HB−55」(三洋化成工業(株)製、ポリオキシアルキレンモノブチルエーテル)を400部使用した以外は実施例1と同様の方法で、目的の硬化剤組成物(X−4)1000部を得た。
【0048】
<比較例1>
実施例1に記載の「サニコール M−300」の代わりに「DINP」を400部使用した以外は実施例1と同様の方法で、比較の硬化剤組成物(Y−1)1000部を得た。
【0049】
性能評価における試験方法は以下の通りである。
(1)初期粘度
硬化剤組成物作成直後の粘度を測定[BL型粘度計(東京計器(株)製)、単位はmPa・s(25℃)]。
(2)経日変化後の粘度
硬化剤組成物90gを内径3cm、高さ11cmのガラス製の円筒容器に入れて密栓し、60±2℃の乾燥機に10日間保存後の粘度[測定条件、単位は上記(1)と同じ。]を測定。
(3)経日変化後の粘度変化率
硬化剤組成物作成時の初期粘度に対する経日変化後の粘度変化率(%)を下記式から算出する。値が小さい程、貯蔵安定性が良好であることを示す。
経日変化後の粘度変化率(%)=(経日変化後の粘度−初期粘度)/初期粘度×100
【0050】
実施例1〜4で作成した本発明の硬化剤組成物及び比較例1で作成した硬化剤組成物の(1)初期粘度、(2)経日変化後の粘度、(3)経日変化後の粘度変化率を前記した方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の硬化剤組成物、接着性付与剤及びプラスチゾルは、揮発性有機物質を含有しないため、人体及び環境への影響を軽減できる。また低粘度であり、かつ貯蔵安定性に優れていることから、成形加工工程における取り扱いを容易にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級及び/若しくは2級アミノ基含有モノ又はポリアミド化合物(A)並びにアルキレンオキサイド付加物(B)を含有してなる、プラスチゾルに使用される接着性付与剤用の硬化剤組成物。
【請求項2】
前記モノ又はポリアミド化合物(A)が、重合脂肪酸及び一塩基酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とポリアミンとを反応させて得られるモノ又はポリアミド化合物(A1)又はその部分変性体(A2)である請求項1記載の硬化剤組成物。
【請求項3】
前記モノ又はポリアミドの部分変性体(A2)が、イミダゾリン環を含む変性体、モノ又はポリエポキシ化による変性体、ケトンとの反応により形成されるケチミン変性体及び電子吸引基含有ビニル化合物との付加変性体からなる群から選ばれる1種以上の部分変性体である請求項2記載の硬化剤組成物。
【請求項4】
前記アルキレンオキサイド付加物(B)の数平均分子量が62〜1000である請求項1〜3のいずれか記載の硬化剤組成物。
【請求項5】
(A)及び(B)の合計重量に基づいて、(A)を50〜90重量%及び(B)を10〜50重量%含有する請求項1〜4のいずれか記載の硬化剤組成物。
【請求項6】
60℃で10日間の経日変化試験における粘度変化率が10%以下である請求項1〜5のいずれか記載の硬化剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の硬化剤組成物及びブロック化ポリウレタンプレポリマー(C)を含有してなるプラスチゾル用接着性付与剤。
【請求項8】
1級及び/若しくは2級アミノ基含有モノ又はポリアミド化合物(A)、アルキレンオキサイド付加物(B)並びにブロック化ポリウレタンプレポリマー(C)を含有してなるプラスチゾル用接着性付与剤。
【請求項9】
請求項7又は8記載の接着性付与剤、可塑剤並びにアクリル重合体又は塩化ビニル重合体を含有してなるプラスチゾル。
【請求項10】
請求項9記載のプラスチゾルを硬化させてなる硬化物。
【請求項11】
請求項10記載の硬化物を鋼板表面の少なくとも一部に有するチッピング防止鋼板。

【公開番号】特開2010−1321(P2010−1321A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158813(P2008−158813)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】