説明

接着性樹脂組成物

【課題】金属酸化物、金属、樹脂等の種々の被着体に対する高接着性および、硬化後の高いガラス転移温度を確保してなお、常温での弾性率を向上させることができる光硬化性の接着性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】二官能性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとモノマー成分とを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部を含み、ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3〜30であって、前記ポリイソシアネートの融点が25℃を超えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性樹脂組成物、特に、金属酸化物、金属、樹脂等の種々の被着体に対する接着性に優れるとともに、硬化後のガラス転移温度が高く、電子部品の接着材料として好適な、光硬化性の接着性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品、機械部品等を接着するための接着剤として、熱硬化性の接着剤が知られている。しかしながら、熱硬化性の接着剤は、硬化時間が長いため、熱硬化性の接着剤を使用して部品を接着すると、生産性が低下する問題がある。
一方、上記部品の接着のために、光硬化性の接着剤が開発されており、この光硬化性の接着剤は、光の照射により極めて短時間で接着が完了するため、生産性を向上させることができる。
【0003】
ところで、昨今の電子部品の組み立てにおいては、被着体として、IZOやITO等の金属酸化物、金やニッケル等の金属、PETやポリイミド等の樹脂を同時に接着する必要があるため、特定の被着体に対する接着性のみならず、種々の被着体に対する接着性に優れた接着剤が求められる。
また、電子部品の組み立てに用いる接着材料は、その使用条件から、十分にガラス転移温度が高いことが要求されることが多い。
【0004】
これがため、金属酸化物、金属、樹脂等の種々の被着体に対する接着性に優れるとともに、硬化後のガラス転移温度が高く、ITO、IZO等の電極材料への高接着性の組成物として、例えば、特許文献1には、2官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとモノマー成分とを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ビスフェノールA系ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部を含み、該ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が10〜30であって、前記モノマー成分が、(メタ)アクリロイル基を有する環式モノマーを含むことを特徴とする接着性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−47669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、このような接着性樹脂組成物は、高いガラス転移点および高接着性を確保することができるものの、常温での弾性率を向上させる余地があった。
また、例えば接着性樹脂組成物の架橋密度を上げることにより、常温での弾性率を向上させることができるが、接着性が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、金属酸化物、金属、樹脂等の種々の被着体に対する高接着性および、硬化後の高いガラス転移温度を確保してなお、常温での弾性率を向上させることができる光硬化性の接着性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる接着性樹脂組成物は、二官能性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとモノマー成分とを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部を含み、ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3〜30であって、前記ポリイソシアネートの融点が25℃を超えてなることを特徴とするものである。
【0009】
このような接着性樹脂組成物においてより好ましくは、前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0010】
また好ましくは、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタンプレポリマー部の形成に用いるアルキレンオキサイド鎖を有するポリオールの数平均分子量を500〜2000とする。
【0011】
そしてまた好ましくは、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと前記モノマー成分との総配合量中の前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの割合を10〜80質量%で且つ前記モノマー成分の割合を20〜90質量%とする。
【0012】
ところで、更に、光重合開始剤を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールと融点が25℃を超えるポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部とを含み、ウレタンプレポリマー部の繰り返し数が特定の範囲にある二官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、モノマー成分とを含むことで、IZO等の金属酸化物、金等の金属、PETやポリイミド等の樹脂に対する接着性に優れる上、硬化後のガラス転移温度が高いとともに、常温での弾性率を向上させることができる。その結果、電子部品の接着材料として好適な、光硬化性の接着性樹脂組成物を提供することができる。
【0014】
すなわち、融点が25℃以下のポリイソシアネートを含むと、副ガラス転移点が常温域になり、常温での弾性率が低下するおそれがある。
【0015】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、光の照射により硬化するため、極めて短時間で接着を完了することができる上、IZO等の金属酸化物、金等の金属、PETやポリイミド等の樹脂に対する接着性に優れ、更には、硬化後のガラス転移温度が高く、電子部品の接着材料や、特に情報表示パネルの隔壁等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)実施例接着組成物1の温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図であり、(b)実施例接着組成物2の温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図である。
【図2】(a)比較例接着組成物1の温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図であり、(b)比較例接着組成物2の温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図である
【図3】(a)は平面引張り強度測定用の十字状基板サンプルの斜視図であり、(b)は十字状基板サンプルの上部基板を上部アタッチメントに取り付けた正面図であり、(c)は十字状基板サンプルの下部基板を下部アタッチメントに取り付けた側面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の接着性樹脂組成物は、二官能性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とモノマー成分(B)とを含む接着性樹脂組成物において、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部を含み、ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3〜30であって、前記ポリイソシアネートの融点が25℃を超えてなることを特徴とする。
【0018】
本発明の接着性樹脂組成物に用いるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、二官能性で、(メタ)アクリロイルオキシ基(CH=CHCOO−又はCH=C(CH)COO−)を2つ、ウレタン結合(−NHCOO−)を複数有する。
例えば、下記一般式(I):
HO−R−OH ・・・ (I)
[式中、Rは2価の基である]で表わされるアルキレンオキサイド鎖を有するポリオールと、下記一般式(II):
OCN−R−NCO ・・・ (II)
[式中、Rは2価の基である]で表わされるポリイソシアネートとから、下記一般式(III):
【化1】


[式中、R及びRは、上記と同義であり、nはウレタンプレポリマー部の繰り返し数である]で表わされるウレタンプレポリマーを合成し、このウレタンプレポリマーに下記一般式(IV):
CH=C(R)−COO−R−OH ・・・ (IV)
[式中、Rは2価の基であり、Rは水素又はメチル基である]で表わされる水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることによって製造することができ、具体的には、下記一般式(V):
【化2】


[式中、R、R、R、R及びnは、上記と同義である]で表わすことができる。
【0019】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の数平均分子量は好ましくは3000以上である。
この数平均分子量が3000未満では、接着性が低下するおそれがある。
【0020】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるアルキレンオキサイド鎖を有するポリオールは、鎖式脂肪族炭化水素、環式脂肪族炭化水素またはビスフェノールA残基を含み、水酸基を2つ有する化合物を用いることができる。
式(I)中のRは、2価の基であり、例えば、炭素数2〜12の鎖式脂肪族炭化水素、環式脂肪族炭化水素、PEG、PPG、PBG等のポリアルキレングリコールまたは下記一般式(VI):
【化3】


[式中、Aは、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等のアルキレン基で、mはオキシアルキレン単位(OA)の繰り返し数である]で表わされる基等が挙げられる。
【0021】
上記アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとしては、エチレンオキシド(EO鎖)、プロピレンオキシド(PO鎖)、ブチレンオキシド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるものや、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレングリコールが挙げられ、結晶性の低いポリオキシプロピレングリコールが接着性の点で好ましい。市販品を利用することができる。これらのポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ここで、ポリオールのオキシアルキレン単位は、mが5未満では大きな接着性の向上(1000gf/cm以上)が得られず、一方、20を超えるとガラス転移点の低下および金属酸化物に対して接着性が低減することから、オキシアルキレン単位mは5〜20であることが好ましい。
【0023】
また、ポリオールは、数平均分子量が500〜2000であることが好ましく、500〜1000であることが更に好ましい。
このポリオールの数平均分子量が500未満では、プレポリマーを合成する際にゲル化が起こり易く、安定した合成が困難であり、一方、2000を超えると、接着性が低下して好ましくない。
【0024】
上記ウレタンプレポリマーの合成に用いるポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ有する化合物である。
式(II)中のRは2価の基であり、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレンシクロアルキレン基、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン基、アリーレン基、アルキレンアリーレン基、アリーレンアルキレンアリーレン基等の2価の炭化水素基が挙げられ、アルキレン基としては、ヘキサメチレン基等が、シクロアルキレン基としては、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基等が、アルキレンシクロアルキレン基としては、3−メチレン−3,5,5−トリメチルシクロヘキシレン基等が、シクロアルキレンアルキレンシクロアルキレン基としては、シクロヘキシレンメチレンシクロヘキシレン基等が、アリーレン基としては、トリレン基等が、アルキレンアリーレン基としては、メチレンフェニレン基等が、アリーレンアルキレンアリーレン基としては、フェニレンメチレンフェニレン基等が挙げられる。
【0025】
また、上記ウレタンプレポリマーに付加させる水酸基を有する(メタ)アクリレートは、水酸基を1つ有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有する化合物である。式(IV)中のRは2価の基であり、例えば、アルキレン基等の2価の炭化水素基が挙げられ、このアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。また、式(IV)中のRは、水素又はメチル基であり、水素であることが好ましい。
【0026】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとして、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基を有する(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリレートモノマーを含むことで、接着組成物がIZOやITO等の金属酸化物と水素結合でき、これら金属酸化物に対する接着性が向上させることができる。
【0027】
ここで、本発明の接着性樹脂組成物に用いるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3〜30であり、好ましくは5〜20である。
上記ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3未満では、各種被着体に対する接着性が低く、一方、30を超えると、オリゴマーの増粘性の増加や固化に起因して合成が困難となる傾向がある。
【0028】
なお、上記ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)は、平均繰り返し数であり、具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の数平均分子量(Ma)、ポリオールの数平均分子量(Mb)、ポリイソシアネートの分子量(Mc)、水酸基を有する(メタ)アクリレートの分子量(Md)から、次式:
n=(Ma−2×Md−Mc)/(Mb+Mc)
に従って求めることができる。
なお、本発明において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の数平均分子量(Ma)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で求めた値であり、ポリオールの数平均分子量(Mb)は、GPCを用いて、単分散のポリプロピレングリコール(PPG)で作成した検量線から求めた値である。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーの合成においては、ウレタン化反応用の触媒を用いることが好ましい。ウレタン化反応用触媒としては、有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機鉛化合物、モノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、有機スルホン酸、無機酸、チタン化合物、ビスマス化合物、四級アンモニウム塩等が挙げられ、これらの中でも、有機スズ化合物が好ましい。また、好適な有機スズ化合物としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート、オクテン酸スズ、モノブチルスズオキシド等が挙げられる。
【0030】
また、本発明の接着性樹脂組成物は、モノマー成分(B)を含み、このモノマー成分は、例えば、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー、アクリロイルモルフォリン(A−MO)等が挙げられ、高いガラス転移点かつ高い接着性を付加することができるアクリロイルモルフォリンが好ましい。
【0031】
そして、本発明の接着性樹脂組成物は、ポリイソシアネートの融点が25℃(常温)を超えてなるものである。
【0032】
ポリイソシアネートは、一般的に分子対称性が高いものほど結晶性が高くなり、融点が上昇しやすい傾向にあり、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(m.p.37℃)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)(m.p.129℃)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)(m.p.95℃)、トリジンジイソシアネート(TODI)(m.p.70℃)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)(m.p.121℃)などを挙げることができる。これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)が好ましい。これらポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
このようなポリイソシアネートを添加することにより、例えばモノマー成分の比率を高くしても常温付近での弾性率低下が少なくなり、常温での硬度を維持したまま高接着性かつ高いガラス転移温度の接着性樹脂組成物を作製することができる。またポリオールに、ビスフェノールA骨格の様な嵩高い骨格を有しなくとも高いガラス転移温度の材料とすることができる。
【0034】
本発明の接着性樹脂組成物において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とモノマー成分(B)との総配合量中の前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の割合は、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは15〜75質量%である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)の割合が10質量%未満では、十分な接着性が得難く、一方、80質量%を超えると、粘度が高く、塗工性が低下する。
【0035】
本発明の接着性樹脂組成物は、更に、光重合開始剤(C)を含むことが好ましく、この場合、紫外線等の光の照射によって、接着性樹脂組成物を容易に硬化させることができる。この光重合開始剤(C)は、光を照射されることによって、上述したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)やモノマー成分(B)の重合を開始させる作用を有する。
【0036】
上記光重合開始剤(C)としては、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4−ジメトキシベンゾフェノン、4,4−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。これら光重合開始剤(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
上記光重合開始剤(C)の配合量は、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)と上記モノマー成分(B)との合計100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。光重合開始剤の配合量が0.01質量部未満では、接着性樹脂組成物の光硬化を開始させる効果が小さく、一方、5質量部を超えると、光硬化を開始させる効果が飽和する一方、接着性樹脂組成物の原料コストが高くなる。
【0038】
また、本発明の接着性樹脂は、常温(25℃)での弾性率は6.0×10Pa以上とすることができ、電子ディスプレイ等の構成部分として有用である。
なお、弾性率はJIS K7244−4に準拠し、長さ40mm、幅10mm、厚み1mmの試験片を用いて、周波数1Hz、昇温速度3℃/minの条件にて測定した。
【0039】
この接着性樹脂は、上述した接着性樹脂組成物を光照射により硬化させて得られるものであり、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上で、かつ十分に接着性を有することができる。
ここで、光の照射条件は特に限定されず、適宜設定することができる。本発明の接着性樹脂は、ITO等の金属酸化物、ガラスに対する接着性に優れる上、ガラス転移温度が高いため、電子ディスプレイの構成部品等の各種電子部材の低温硬化性の接着材料として有用である。
【実施例】
【0040】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(オリゴマー1)
ナフタレンジイソシアネートを0.1mm以下の粒子径となるまで粉砕機を用いて粉砕してから以下の合成に用いた。
表1に示すように、ビスフェノールA1molにプロピレンオキシド(PO)を10mol付加してなる二官能で且つ重量平均分子量が800のポリエーテルポリオール[(株)ADEKA製BPX−55]66.6質量部と、ナフタレンジイソシアネート[(株)三井化学製]35.0質量部と、ジブチルスズジラウレート0.10質量都と、アクロイルモルフォリン[新中村化学(株)製NKエステルA−MO]109.1質量部とを1リットルの3つ口フラスコに量り取り、撹拌羽根を用いて200rpmで撹拌混合しながら40℃で15分間反応させた。この時点で反応液は薄い乳白色状の透明液体となった。次いで上記ポリエーテルポリオール47.9質量部とアクロイルモルフォリン47.9質量部を加え同様に30分間撹拌し、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。
得られたプレポリマー全量に対して2−ヒドロキシエチルアクリレート7.4質量部を加え、200rpm、40℃で60分間撹拌混合しオリゴマー1溶液を合成した。得られたオリゴマー1の数平均分子量をGPCで測定したところ4700であり、繰り返し数は4であった。
【0042】
(オリゴマー2)
二官能で且つ重量平均分子量が1000のポリプロピレングリコール[(株)三洋化成工業製PX−1000]65.4質量部と、0.1mm以下に粉砕したナフタレンジイソシアネート[(株)三井化学製]28.0質量部と、ジブチルスズジラウレート0.10質量部と、アクロイルモルフォリン[新中村化学(株)製NKエステルA−MO]101.5質量部とを。1リットルの3つ口フラスコに量り取り、撹拌羽根を用いて200rpmで撹拌混合しながら50℃で15分間反応させた。この時点で反応液は薄い乳白色状の透明液体となった。次いで上記ポリエーテルポリオール34.6質量部とアクロイルモルフォリン34.6質量部を加え、同様に15分間撹拌し分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。
得られたプレポリマー全量に対して2−ヒドロキシエチルアクリレート8.0質量部を加え、200rpm、50℃で60分間撹拌混合しオリゴマー2溶液を合成した。得られたオリゴマー2の数平均分子量をGPCで測定したところ20500であり、繰り返し数は20であった。
【0043】
(オリゴマー3)
ビスフェノールA1molにプロピレンオキシド(PO)を10mol付加してなる二官能で且つ重量平均分子量が800のポリエーテルポリオール[(株)ADEKA製BPX−55]100.0質量部とH12MDI[(株)住化バイエル製]37.7質量部と、ジブチルスズジラウレート0.10質量部と、アクロイルモルフォリン[新中村化学(株)製NKエステルA−MO]142.8質量部とを、1リットルの3つ口フラスコに量り取り、撹拌羽根を用いて100rpmで撹拌混合しながら80℃で2時間反応させ、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。
得られたプレポリマー全量に対して2−ヒドロキシエチルアクリレート5.0質量部を加え100rpm、80℃で3時間撹拌混合しオリゴマー3溶液を合成した。得られたオリゴマー3の数平均分子量をGPCで測定したところ21500であり、繰り返し数は20であった。
【0044】
(オリゴマー4)
ビスフェノールA1molにエテレンオキシド(EO)を18mol付加してなる二官能で且つ重量平均分子量が1000のポリエーテルポリオール[(株)ADEKA製BPE−180]100.0質量部と、H12MDI[(株)住化バイエル製]29.4質量部と、ジブチルスズジラウレート0.10質量部と、イソボルニルアクリレート[新中村化学(株)製NKエステルIB−XA]133.4質量部とを、1リットルの3つ口フラスコに量り取り、撹拌羽根を用いて100rpmで撹拌混合しながら80℃で2時間反応させ、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。
得られたプレポリマー全量に対して2−ヒドロキシエチルアクリレート3.9質量部を加え100rpm、80℃で3時間撹絆混合しオリゴマー4溶液を合成した。得られたオリゴマー4の数平均分子量をGPCで測定したところ21500であり、繰り返し数は17であった。
【0045】
(オリゴマー5)
ビスフェノールA1molにプロピレンオキシド(PO)を10mol付加してなる二官能で且つ重量平均分子量が800のポリエーテルポリオール[(株)ADEKA製BPX−55]66.6質量部と、0.1mm以下に粉砕したナフタレンジイソシアネート[(株)三井化学製]35.0質量部と、ジブチルスズジラウレート0.10質量部とアクロイルモルフォリン[新中村化学(株)製NKエステルA−MO]101.7質量部とを、1リットルの3つ口フラスコに量り取り、撹拌羽根を用いて200rpmで撹拌混合しながら50℃で15分反応させて、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。この時点で反応液は薄い乳白色状の透明液体であった。
得られたプレポリマー全量に対して2−ヒドロキシエチルアクリレート8.0質量部を加え200rpm、50℃で60分間撹拌混合しオリゴマー5溶液を合成した。得られたオリゴマー5の数平均分子量をGPCで測定したところ1000であり、繰り返し数は1であった。
【0046】
(実施例接着組成物1)
次に、表1に示すように、A−MOを50%含む上記オリゴマー1溶液:60質量部、アクロイルモルフォリン(A−MO):40質量部、IRGACURE184Cチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフィニルケトン):1質量部を撹拌混合した後、真空脱泡してUV硬化性の実施例接着組成物1を調製した。
【0047】
(実施例接着組成物2)
A−MOを50%含む上記オリゴマー2溶液:60質量部、アクロイルモルフォリン(A−MO):40質量部、IRGACURE184:1質量都を撹拌混合した後、真空脱泡してUV硬化性の実施例接着組成物2を調製した。
【0048】
(実施例接着組成物3)
A−MOを50%含む上記オリゴマー2溶液:60質量部、アクロイルモルフォリン(A−MO):5質量部、イソボルニルアクリレート(IB−XA):35質量部、IRGACURE184:1質量部を撹拌混合した後、真空脱泡してUV硬化性の実施例接着組成物3を調製した。
【0049】
(比較例接着組成物1)
A−MOを50%含む上記オリゴマー3溶液:60質量部、アクロイルモルフォリン(A−MO):40質量部、IRGACURE184:1質量部を撹件混合した後、
真空脱泡してUV硬化性の比較例接着組成物1を調製した。
【0050】
(比較例接着組成物2)
IB−XAを50%含む上記オリゴマー4溶液:60質量部、トリシクロデカンジメタノールアクリレート(A−DCP):40質量部、IRGACURE184:1質量部を撹拌混合した後、真空脱泡してUV硬化性の比較例接着組成物2を調製した。
【0051】
(比較例接着組成物3)
A−MOを50%含む上記オリゴマー5溶液:60質量部、アクロイルモルフォリン(A−MO):40質量部、IRGACURE184:1質量部を撹拌混合した後、真空脱泡してUV硬化性の比較例接着組成物3を調製した。
【0052】
(接着性)
次に、上記接着性樹脂組成物を用いて、ITOを表面に蒸着したガラスと無処理のガラス2種類の被着体に対する剥離強度測定用サンプルの試験用ガラスを作製した。
【0053】
(平面引張り強度測定用サンプルの作製)
20mm×60mm×0.7mmの試験用基板を固定し、中央部の20mm×20mm付近に30mg程度の接着性樹脂組成物を塗布した。次いで樹脂組成物層が40μmの厚みとなる様に適当なスペーサーを用いて、もう一枚の上記の試験用基板を上部から90度方向を変えて十字状に圧着した。互いの接着面からはみ出た樹脂組成物をワイパーで丁寧にふき取った。
これを、コンベア式UV照射機を用いて積算光量が3000mJとなるようにコンベアスピード、サンプル位置(距離)を調整し、UV硬化させ、図3(a)に斜視図で示すような平面引張り強度測定用の十字状基板サンプルとした。
【0054】
上記十字状基板サンプルを、上部基板を図3(b)の正面図で示すような上部アタッチメントに、下部基板を図3(c)の側面図で示すような下部アタッチメントにそれぞれ取り付けて、それぞれの接続孔を剥離試験機に取り付けた。この剥離試験機を用いて10mm/minの速度で引張り試験を行い、平面引張り強度を求め、接着性とした。なお表中の○は試験サンプルのガラスが破断して、十分な接着性を有していることを示し、×は接着層とガラスの界面から剥離して接着力が劣ることを示す。
【0055】
(ガラス転移点、弾性率)
また、上記接着性樹脂組成物を用いて、約80×80×1mmのサンプルをコンベア式UV照射機(積算光量3000mJ)にて作製し、この板状サンプルから約40×10×1mmのガラス転移温度測定用サンプルを切り出し、サンプルに対し、昇温速度3℃/分、周波数1Hzの条件下で動的粘弾性試験を行い、tanδのピークから接着性樹脂組成物のガラス転移温度および、弾性率(0℃,25℃)を測定し、その結果を表1および図1,2に示す。なお、図1(a)は実施例接着組成物1、(b)は実施例接着組成物2の、それぞれの温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図であり、図2(a)は比較例接着組成物1、(b)は比較例接着組成物2の温度における貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ(E”/E’)を測定した図である。
【0056】
(架橋点間分子量)
そしてまた、上述の動的粘弾性試験の結果を用いて、架橋点間分子量を算出し、その結果を表1に示す。なお、架橋点間分子量はMc=3×8.314×(273.15+Teq)/E’eq(E’eq:平衡弾性率(MPa)、Teq:平衡弾性率に達した時の温度)から求めた値である。
【0057】
【表1】

【0058】
表1および図1,2の結果より、実施例接着組成物1〜3は、比較例接着組成物1〜3に対して、IZOに対する接着性に優れ、硬化後のガラス転移温度が電子部品の接着材料として十分なガラス転移温度(100℃以上)を有し、常温で非常に高い高弾性率を有すること分かった。
【0059】
また、比較例接着組成物1では、高いガラス転移温度かつ高接着性ではあるものの、副ガラス転移点が常温域にあるため常温での弾性率の低下が大きかった。比較例接着組成物2では架橋密度が向上して常温での弾性率の低下が少ないが、接着性が低下した。比較例接着組成物3ではオリゴマーのプレウレタンポリマーの繰り返し数が低く接着性が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二官能性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとモノマー成分とを含む接着性樹脂組成物において、
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、アルキレンオキサイド鎖を有するポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタンプレポリマー部を含み、ウレタンプレポリマー部の繰り返し数(n)が3〜30であって、
前記ポリイソシアネートの融点が25℃を超えてなることを特徴とする接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーのウレタンプレポリマー部の形成に用いるアルキレンオキサイド鎖を有するポリオールの数平均分子量が500〜2000である請求項1または2のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと前記モノマー成分との総配合量中の前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの割合が10〜80質量%で且つ前記モノマー成分の割合が20〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。
【請求項5】
更に、光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−102226(P2012−102226A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251331(P2010−251331)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】