説明

接着性組成物の製造方法

【課題】レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物と水溶性ゴムラテックスを水に溶解させた接着性組成物、特にゴム製の伝動ベルトに繊維コードを補強のため母材ゴムに埋設させる際に、母材ゴムとの接着を高めるために繊維コ−ドに被覆して用いるに良好な接着性組成物を提供する。
【解決手段】フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させた後、ゴムラテックスと混合させてなることを特徴とする接着性組成物の製造方法。アルコール化合物の添加量は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、50重量%以上、500重量%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムと繊維を接着するための接着性組成物に関する。ゴム製の伝動ベルトにおいて、補強のための繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に母材ゴムとの接着を高めるために繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物に関し、特に、補強のためのガラス繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に母材ゴムとの接着を高めるためにガラス繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は、ベンゼン環にOH基が付加したフェノール類とホルムアルデヒドを縮合反応させて得られる。フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は、種々の充填材との組み合わせによって、電子、電気、機械等の耐熱部品、耐磨耗部品等広範囲な用途に使用される。
【0003】
例えば、ゴム製の伝動ベルトにおいては、補強のためにガラス繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に、ガラス繊維コードと母材ゴムとの接着性を高める目的でガラス繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物には、水に易溶であるためレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体のエマルジョン、スチレン−ブタジエン重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンのエマルジョンとともに用いられる。これら、高分子物質のエマルジョンは、水の中に高分子物質が安定して存在しているもの、いわゆるラテックスである。
【0004】
特許文献1および特許文献2において、補強のための繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に、母材ゴムとガラス繊維の接着性を向上させて界面の剥離を防止する目的で、フィラメントを束ねたガラス繊維コ−ドに、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と各種ゴムラテックスとを水に分散させたガラス繊維被覆用塗布液を塗布した後、乾燥させ接着性被覆層としたゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
【0005】
一方、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除くフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は水に溶解し難く、溶解したとしても析出し易い。
【0006】
そこで、特許文献3においては、水に溶解させるために、スルホメチル基もしくは、スルフィメチル基をフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物に付加させる方法が開示されている。しかし、スルホメチル基もしくは、スルフィメチル基を付加させる際の、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物を作製後、スルホメチル化剤およびスルフィメチル化剤を添加した後の付加反応は複雑であり、時間と手間を要する。
【特許文献1】特開平1−221433号公報
【特許文献2】特許2625421号
【特許文献3】特開2000−34455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は、フェノール類とホルムアルデヒドを縮合反応させて得られる。フェノール類は比較的安価で入手し易いものが多く、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は種々の充填材との組み合わせによって優れた物性が得られる等の利点を有しているが、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いて水に溶解しにくく溶解したとしても液安定性が悪く、即ち、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が析出しやすく接着性組成物として使用し難い。
【0008】
仮に、水溶性のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と同様に、他のフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が易溶であり析出し難ければ、接着性組成物として、前述の伝動ベルトに埋設して使用するゴム補強用繊維の被覆材として使用可能である。しかしながら、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物は水に溶解し難く溶解したとしても析出し易く、ゴム製の伝動ベルトにおいて補強のための繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に母材ゴムとの接着を高めるために繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物には使用され得ないという問題があった。
【0009】
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いた水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶かす手段として、アルカリ添加を行う方法が挙げられる。しかしながら、水酸化ナトリウム等の強アルカリを用いた場合、繊維コードを侵し引張り強度を弱めてしまうという問題があった。また、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物をアンモニア等の弱アルカリにより溶解したとしても、水に分散したゴムラテックスとに混合し接着性組成物溶液を調製するとフェノール類−アルデヒド縮合物が析出しゲル化し易いという問題があった。
【0010】
また、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いた水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物をアルカリ添加により溶解した後、析出することなきよう、水中で安定させる手段としては、界面活性剤を添加して分散させる方法があるが、接着性組成物として用いた際に、界面活性剤の添加により、接着力が低下する傾向がある。特に、伝動ベルト等において、高温化で接着力の維持が求められる場合、接着力の経時による低下により使用され得ないという問題があった。
【0011】
本発明は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いた水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスを水に溶解分散させた接着性組成物、特にゴム製の伝動ベルトに繊維コードを補強のため母材ゴムに埋設させる際に、母材ゴムとの接着を高めるために繊維コ−ドに被覆して用いるに良好な接着性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除いた水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を溶解し、更にゴムラテックスと混合後も析出することなきよう水に安定に溶解させるためには、フェノール類とホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させた後、ゴムラテックスとともに混合する。本発明において、アルコール化合物とは炭化水素の水素原子をOH基で置換した化合物を指し、OH基を1個有するモノアルコール化合物、OH基を2個有するグリコール(ジオール)化合物、OH基を3個有するトリオール化合物が含まれる。
【0013】
即ち、発明者らが鋭意検討を行った結果、フェノール類とホルムアルデヒドを水中で縮合反応させてなる水の難溶なフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿に、モノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物から選ばれる少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を加えてフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、および/またはクロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンを加え混合したとしても、混合後にフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出しないことがわかった。
【0014】
このように、水中で縮合反応させてなるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水に難溶な沈殿を溶解させるためには、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物のうちの少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を加える必要がある。
【0015】
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が水溶性のアルコール化合物を加えることで溶解し水溶液として安定し、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出しなくなるのは、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物のOH基とアルコール化合物のOH基とが3次元的に強い水素結合を形成することによると思える。且つ、アルコール化合物は、双極子モーメントと誘電率の値が高いので分散力など遠距離相互作用が強く働き、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水溶液中で安定化させる効果、さらに、配位結合的(電荷移動的)相互作用エネルギーが大きいので、溶媒−溶質間だけでなく溶媒−溶媒間で会合を起こして強い溶媒和が生じ、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出することなきように水溶液中で安定化させる効果があると思える。この安定化させる効果はOH基の個数が多いグリコール化合物、トリオール化合物の方がモノアルコール化合物より大きく、特にグリコール化合物が安定化させる効果に優れている。
【0016】
本発明の接着性組成物の製造方法は、フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したフェノール類−ホルムアルデヒド縮合沈殿物にアルコール化合物を加え溶解させた後、ゴムラテックスとともに混合させて調製する。
【0017】
即ち、本発明は、フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させた後、ゴムラテックスと混合させることを特徴とする接着性組成物の製造方法である。
【0018】
フェノール類をホルムアルデヒドと反応させてなるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液にアルコール化合物を加え溶解させたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、ゴムラテックス加え混合させた接着性組成物をガラス繊維またはポリエステル繊維コード等に被覆したゴム補強用繊維を母材ゴムに埋設して伝動ベルトを作成すれば、ゴム補強用繊維と母材ゴムとの長時間使用後の引っ張り強度の低下が見られない。
【0019】
さらに、本発明は、用いるアルコール化合物の沸点が50℃以上、250℃以下であることを特徴とする上記の接着性組成物の製造方法である。
【0020】
さらに、本発明は、アルコール化合物を加える量が、フェノール類―ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする上記の接着性組成物の製造方法である。即ち、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、重量比で0.5倍以上、5倍以下のアルコール化合物を加える。
【0021】
さらに、本発明は、アルコール化合物が、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメチルエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジエトキシエタン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンから選ばれることを特徴とする上記の接着性組成物の製造方法である。
【0022】
さらに、本発明は、フェノール類がo−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノ−ル、3,5−キシレノ−ル、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨ−ドフェノール、m−ヨ−ドフェノール、p−ヨ−ドフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、ニトロフェノールであるo−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、m−メトキシフェノール、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシンから選ばれることを特徴とする上記の接着性組成物の製造方法である。
【0023】
さらに、本発明は、ゴムラテックスが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンおよび/またはクロロスルホン化ポリエチレンのエマルジョンから選ばれることを特徴とする上記の接着性組成物の製造方法である。
【0024】
さらに、本発明は、上記の接着性組成物の製造方法により得られた接着性組成物を、ガラス繊維コードに塗布被覆してなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
【0025】
さらに、本発明は、上記のゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設させてなる伝動ベルトである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の接着性組成物の製造方法において、水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿物にアルコール化合物を加え溶解させた後、ゴムラテックスと混合させることで、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出することを抑制した。
【0027】
本発明の接着性組成物の製造方法によって、ゴム製の伝動ベルトにおいて、繊維コードを補強のため母材ゴムに埋設させる際に、母材ゴムとの接着を高めるために繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物に、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を使用することを可能とした。特にガラス繊維コードを母材ゴムに埋設させ伝動ベルトに成形する際の接着性組成物の製造方法として有効であった。
【0028】
特に、前記接着性組成物をガラス繊維コードに塗布被覆したゴム補強用ガラス繊維を水素化ニトリルゴム(以下、HNBRと略する)、エチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体からなるゴム組成物(以下、EPDMゴムと略する)、ウレタンゴムまたはクロロピレンゴムに埋設し作製した伝動ベルトを長時間使用した後の引っ張り強さの低下が抑制される。HNBRにゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる自動車用タイミングベルト、EPDMゴム、ウレタンゴムまたはクロロピレンゴムにゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる事務機等に使用する一般産業用ベルトなどの歯付きベルトを長時間使用する際に引っ張り強さの保持に対して有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の接着性組成物の製造方法は、フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させてフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液にアルコール化合物を加え、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させてフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とした後、ゴムラテックスと混合させて調製する。
【0030】
例えば、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶解させる場合には、通常、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物にアンモニアまたは水酸化ナトリウム等のアルカリを加える。
【0031】
しかしながら、アンモニアのように塩基性度定数(Kb)が小さいアルカリを加えることで、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶解させられるが、溶解したものを接着性組成物とするために、ゴムラテックスと混合するとフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。
【0032】
また、水酸化ナトリウムのように塩基性度定数(Kb)が大きいアルカリを加えることで、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶解させたものを接着性組成物とするためにゴムラテックスと混合すると、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の析出が抑制される。しかしながら、強アルカリであるため、ガラス繊維やポリエステル繊維等の繊維材料を劣化させて、繊維材料の引っ張り強さを弱めてしまい使用され難い。
【0033】
尚、塩基性度定数(Kb)とは、アルカリが水素イオンを溶液から受け入れる度合いを測定し、塩基性度として表したものであり、数1の式の平衡定数である。
【0034】
【数1】

【0035】
ところが、フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させた、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した液にアルコール化合物を加え、前記の水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿溶解させた後、ゴムラテックスとともに水に混合させると、該フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物をゴムラテックスと混合後も、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の析出が起こり難いことがわかった。
【0036】
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が水溶性のアルコール化合物を加えることで溶解し水溶液として安定し、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出しなくなるのは、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物のOH基とアルコール化合物のOH基とが3次元的に強い水素結合を形成することによると思える。且つ、アルコール化合物は、双極子モーメントと誘電率の値が高いので分散力など遠距離相互作用が強く働き、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を水溶液中で安定化させる効果、さらに、配位結合的(電荷移動的)相互作用エネルギーが大きいので、溶媒−溶質間だけでなく溶媒−溶媒間で会合を起こして強い溶媒和が生じ、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出することなきように水溶液中で安定化させる効果があると思える。この安定化させる効果はOH基の個数が多いグリコール化合物、トリオール化合物の方がモノアルコール化合物より大きく、特にグリコール化合物が安定化させる効果に優れている。
【0037】
また、ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が50℃より低いアルコール化合物を用いるとアルコール化合物が揮発しやすく扱い難い。アルコール化合物が揮発するとフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が250℃より高いアルコール化合物を用いると、ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し被覆する際、被覆層よりアルコール化合物が揮発しにくい。被覆層よりアルコール化合物を除去しないと、ガラス繊維コードを耐熱ゴムに埋め込んで伝動ベルトとした際の、伝動ベルトの耐熱性、耐水性が低下する。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に用いるアルコール化合物には、沸点、50℃以上、250℃以下の水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物またはトリオール化合物から少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を選んで用いることが好ましい。
【0038】
アルコール化合物を加えることで、水に難溶なフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる際の、アルコール化合物を加える量は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して50重量%以上、500重量%以下である。言い換えれば、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、50重量%以上、500量%以下である。即ち、加えるアルコール化合物の重量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、重量比で、1/2以上、5倍以下である。
【0039】
尚、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の重量は、フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する液を加熱して蒸発させて得られる固形分濃度として求められる。この際、未反応のフェノール類およびホルムアルデヒドは揮発除去される。
【0040】
アルコール化合物を加える量が50重量%より少ないと、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる効果がなく、500重量%より多く含有させる必要はない。アルコール化合物の量が500重量%より多くなると、接着性組成物を含有する塗布液におけるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物およびゴムラテックスの含有割合が低下し、繊維コードに塗布したゴム補強用繊維が柔軟でなくなる、特に、接着性組成物をガラス繊維コードに塗布したゴム補強用ガラス繊維は柔軟でなくなる。
【0041】
本発明の接着性組成物の製造方法に使用されるアルコール化合物には、メタノール(CHOH)沸点65℃、エタノール(COH)沸点78℃、n−プロピルアルコール(CO)沸点97℃、イソプロピルアルコール(CO)沸点82℃、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C)沸点124℃、プロピレングリコール(C)沸点188℃、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C16)沸点190℃、1−メトキシ−2−プロパノール(C10)沸点120℃、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C)沸点196℃、ジエチレングリコール(C10)沸点244℃、1,2−ジエトキシエタン(C14)沸点123℃、グリセリン(C)沸点171℃、メタノ−ルアミン(HNCHCHOH)沸点171℃、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン(C11NO)沸点266℃が挙げられ、好ましくは、n−プロピルアルコール(CO)、イソプロピルアルコール(CO)、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C)、プロピレングリコール(C)、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C16)、1−メトキシ−2−プロパノール(C10)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C)、ジエチレングリコール(C10)、1,2−ジエトキシエタン(C14)、ジエタノ−ルアミン(C11NO)である。
【0042】
特に、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ガラス繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥してガラス繊維コードに被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアルコール化合物である。また、ジエタノールアミンはアミン特有のにおいがなく取り扱いが容易である。
【0043】
OH基2個のグリコール(ジオール)化合物の中には、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる目的でガラス繊維被覆用塗布液に使用する際、塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成されるものもあるが、必要領域における濃度調整において、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ともにその懸念はなく、加えて、火気に対して安全性があり、毒性も低く、沸点が低いことより作業者が吸引する懸念もなく、環境安全性に優れ、市販価格も安く、実用性が高く、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に用いるに、特に好ましいアルコール化合物である。
【0044】
OH基1個のモノアルコール化合物に含まれるメタノールおよびエタノール、およびOH基3個のトリオール化合物に含まれるグリセリンは、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる目的でガラス繊維被覆用塗布液に使用した際、ガラス繊維被覆用塗布液が高濃度の状態では、ガラス繊維コードに塗布被覆することが可能である。しかしながら、塗布時に塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成析出しやすくなり、濃度調整がし難く扱い難い。
【0045】
また、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を溶解後も析出なきよう安定させるためのアルカリの好ましい塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下ある。アルカリとしてのジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は1.0×10−4.5であり、アルコール化合物としてのOH基によるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の溶解性の効果、およびアルカリとしての溶解性の効果を併せ持ち、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を除く水に溶解し難いフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の推移溶液を得るのに抜群の効果を示す。
【0046】
加えるアルカリの塩基性度定数(Kb)が5×10−5より小さいと、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物が溶解せず溶解したとしても経時により析出する、1×10−3より大きいと接着性組成物とした際に接着力が低下する。
【0047】
本発明の接着性組成物の製造方法に使用されるフェノール類には、アルキルフェノールであるo−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノ−ル、3,5−キシレノ−ル、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、またはハロフェノールであるo−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨ−ドフェノール、m−ヨ−ドフェノール、p−ヨ−ドフェノール、またはアミノフェノールであるo−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、ニトロフェノールであるo−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、またはm−メトキシフェノール、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシンが挙げられ、ホルムアルデヒドと縮合反応させてフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物とする。これらフェノール類は水中でホルムアルデヒドと縮合反応させると、水に難溶なフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物として沈殿物として析出する。
【0048】
ホルムアルデヒドと縮合反応させてフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物を得る際に、ホルムアルデヒドとの反応性が高く、反応時間が短いことより、好ましくは、m−クレゾール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノールである。更に、好ましくは、p−クロロフェノールである。p−クロロフノールは、特にホルムアルデヒドとの反応性が良く、p−クロロフノール−ホルムアルデヒド縮合物を得るまでの反応時間が短い。
【0049】
本発明の接着性組成物の製造方法において、使用されるゴムラテックスには、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンのエマルジョンが挙げられる。尚、本発明において、ゴムラテックスとは、水の中にゴム組成物としての高分子物質が安定して存在しているものであり、ゴム組成物としての高分子物質のエマルジョンが、いわゆるゴムラテックスである。
【0050】
これらのゴムラテックスは、ゴム製の伝動ベルトにおいて、補強のためのガラス繊維コ−ドをベルト内部に埋設させる際に母材ゴムとの接着を高めるためにガラス繊維コ−ドに被覆して用いる接着性組成物に用いられる。母材ゴムとしては、水素添加ニトリルゴム、クロロピレンゴム等が挙げられる。
【0051】
本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組成物をガラス繊維コードに塗布被覆してなるゴム補強用ガラス繊維は、母材ゴムに埋設させて伝動ベルトとした際に、母材ゴムとの接着力を高め、引張り強さに優れる伝動ベルトを与える。本発明の伝動ベルトは、初期の接着強さが持続され、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れており、耐水性、耐熱性を併せ持つ。
【0052】
例えば、前記ゴム補強用ガラス繊維の上層に、更にゴムラテックスとしてのクロロスルホン化ポリエチレンと、ビスアリルナジイミド、マレイミド、トリアジン系化合物、有機ジイソシアネートとメタクリル酸亜鉛から選ばれる硬化剤とを有機溶剤に分散させた2次被覆液を塗布後乾燥させて更なる2次被覆層を形成させた後に、このゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに水素化ニトリルゴムを用いて伝動ベルトを作製する。このようにして作製した歯付きベルトは自動車用のタイミングベルト等に使用し得る。
【実施例】
【0053】
以下、具体的に実施例を示し、本発明の接着性組成物の製造方法を詳細に説明する。
実施例1
(被覆液の調製)
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、p−クロロフェノール、130重量部、濃度、37.0重量%のホルムアルデヒド水溶液、80重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を得た。冷却した後、攪拌しつつ、アルコール化合物としての2-メトキシエタノールを加えて、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させて水溶液とした。この際、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、加えた2-メトキシエタノールの重量は200重量%であった。即ち、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、加えた2-メトキシエタノールの重量は200重量%であった。尚、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、p−クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とする縮合反応に必要な量以上に加えてはいない。
【0054】
次いで、上記のように合成し、水に溶解しているp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に、ゴムラテックスとして、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンおよびアンモニア水を加え攪拌し完全に溶解させた。
【0055】
詳しくは、溶解させたp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液、280重量部、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)440重量部、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)210重量部、pH調整剤としてのアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を加えて、被覆液を調製した。ゴムラテックス混合後もp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出は起こらず、被覆液が得られた。
【0056】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コ−ド6本を引き揃えた後、前記被覆液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組成物としての被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維とした。
【0057】
このゴム補強用ガラス繊維コ−ドの引っ張り強さは、196Nであった。
実施例2
2-メトキシエタノールに替えて、エチレングリコールを用いて、実施例1と同様にゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(被覆液の調製)
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、p−クロロフェノール、130重量部、濃度、37.0重量%のホルムアルデヒド水溶液、80重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を得た。冷却した後、攪拌しつつプロピレングルコールを加えて、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させて水溶液とした。
【0058】
この際、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、加えたプロピレングルコールの重量は200重量%であった。即ち、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、加えたプロピレングルコールの重量は200重量%であった。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、p−クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上に加えてはいない。
【0059】
次いで、上記のように合成し、水に溶解しているp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に、ゴムラテックスとして、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンおよびアンモニア水を加え攪拌し完全に溶解させた。
【0060】
詳しくは、溶解させたp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液、280重量部、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)440重量部、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)210重量部、pH調整剤としてのアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を加えて、被覆液を調製した。尚、実施例1と同様にゴムラテックス混合後もp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出は起こらず、被覆液が得られた。
【0061】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コ−ド6本を引き揃えた後、前記被覆液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて、本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組生物としての被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維とした。ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さは、197Nであった。
実施例3
2-メトキシエタノールに替えて、ジエタノールアミンを用いて、実施例1と同様にゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(被覆液の調製)
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、p−クロロフェノール、130重量部、濃度、37.0重量%のホルムアルデヒド水溶液、80重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を得た。冷却した後、攪拌しつつジエタノールアミンを加えて、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させて水溶液とした。尚、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は1.0×10−4.5である。
【0062】
この際、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、加えたジエタノールアミンの重量は200重量%であった。即ち、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量を100%基準とする重量百分率で表して、加えたジエタノールアミンの重量は200重量%であった。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、p−クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上に加えてはいない。
【0063】
次いで、上記のように合成し、水に溶解しているp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に、ゴムラテックスとして、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンおよびアンモニア水を加え攪拌し完全に溶解させた。
【0064】
詳しくは、溶解させたp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液、280重量部、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)440重量部、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)210重量部、pH調整剤としてのアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を加えて、被覆液を調製した。尚、実施例1と同様にゴムラテックス混合後もp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出は起こらず、被覆液が得られた。
【0065】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コ−ド6本を引き揃えた後、前記被覆液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて、本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組生物としての被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維とした。ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さは、187Nであった。
実施例4
(被覆液の調整)
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、m−クレゾール、108重量部、濃度、37.0重量%のホルムアルデヒド水溶液、80重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で7時間攪拌し、m−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿物を得た。冷却した後、攪拌しつつ2-メトキシエタノールを加えて、m−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて水溶液とした。−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して2メトキシエタノールの重量は200重量%となるように溶解した。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、m−クレゾールとホルムアルデヒドを縮合反応させてm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量にとどめ、必要以上に加えてはいない。
【0066】
次いで、上記のように合成し、水に溶解しているm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物に、ゴムラテックスとして、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンおよびアンモニア水を加え攪拌し完全に溶解させた。
【0067】
詳しくは、溶解させたm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液、240重量部、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)440重量部、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)210重量部、pH調整剤としてのアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を加えて、被覆液を調製した。
【0068】
実施例1と同様の手順で、前記被覆液をガラス繊維コードに塗布し本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組成物としての被覆層としたところ、ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さは、185Nであった。
実施例5
2-メトキシエタノールに替えて、ジエタノールアミンを用いて、実施例1と同様にゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(被覆液の調整)
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、m−クレゾール、108重量部、濃度、37.0重量%のホルムアルデヒド水溶液、80重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で7時間攪拌し、m−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿物を得た。冷却した後、攪拌しつつジエタノールアミンを加えて、m−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて水溶液とした。尚、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4である。m−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対してジエタノールアミンの重量は200重量%となるように溶解した。尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、m−クレゾールとホルムアルデヒドを縮合反応させてm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量にとどめ、必要以上に加えてはいない。
【0069】
次いで、上記のように合成し、水に溶解しているm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物に、ゴムラテックスとして、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンおよびアンモニア水を加え攪拌し完全に溶解させた。
【0070】
詳しくは、溶解させたm−クレゾール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液、240重量部、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)440重量部、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)210重量部、pH調整剤としてのアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を加えて、被覆液を調製した。
【0071】
実施例1と同様の手順で、前記被覆液をガラス繊維コードに塗布し本発明の接着性組成物の製造方法による接着性組成物としての被覆層としたところ、ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さは、185Nであった。
比較例1
p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、濃度、25重量%のアンモニア水を400重量%加えて溶解させる以外は実施例1と同様の手順でp−クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物の水溶液を調製した。次いで、このp−クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い、前述した市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとにアンモニア水と水を添加したところ、p−クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物の析出が起こり使用できなかった。
比較例2
p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して水酸化ナトリウムを200重量%加えて、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる以外は実施例1と同様の手順でp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液を調製した。次いで、このp−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物水溶液を用い、前述した市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンとにアンモニア水と水を添加したところ、p−クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物の析出は起こらず、被覆液を得た。
【0072】
径9μmのガラス繊維フィラメントを200本集束したガラス繊維コ−ド6本を引き揃えた後、前記被覆液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維した。
【0073】
このゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さは、ガラス繊維コードの本来の引っ張り強さより低い118Nになった。
【0074】
以上、実施例1〜5、比較例1、2の結果を表1に纏めた。
【0075】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類をホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させた後、ゴムラテックスと混合させることを特徴とする接着性組成物の製造方法。
【請求項2】
アルコール化合物の沸点が、50℃以上、250℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着物組成物の製造方法。
【請求項3】
アルコール化合物が、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメチルエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジエトキシエタン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンから選ばれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接着性組成物の製造方法。
【請求項4】
アルコール化合物を加える量が、フェノール類―ホルムアルデヒド縮合物の重量に対して、50重量%以上、500重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着性組成物の製造方法。
【請求項5】
フェノール類がo−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、エチルフェノール、iso−プロピルフェノール、キシレノ−ル、3,5−キシレノ−ル、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨ−ドフェノール、m−ヨ−ドフェノール、p−ヨ−ドフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、m−メトキシフェノール、5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシンから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接着性組成物の製造方法。
【請求項6】
ゴムラテックスが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体のエマルジョンおよび/またはクロロスルホン化ポリエチレンエマルジョンから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の接着性組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の接着性組成物の製造方法により得られた接着性組成物を、ガラス繊維コードに塗布被覆してなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
【請求項8】
請求項7に記載のゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設させてなる伝動ベルト。

【公開番号】特開2008−285541(P2008−285541A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130205(P2007−130205)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】