説明

接着性繊維糸、繊維製品、清掃用繊維製品及び接着性繊維糸の製造方法

【課題】 繊維糸一本一本の表面に感温性接着剤を担持させることができ、この感温性接着剤を担持した接着性繊維糸で形成された繊維製品の表面だけでなく内側でも塵を正確に付着できる。また、一定の温度の下で洗浄したときに付着していた塵を確実に除去できる。
【解決手段】 繊維糸の表面に感温性接着剤3を担持した接着性繊維糸であって、この感温性接着剤3はスイッチング温度の前後で接着性と非接着性の可逆変化を呈する。感温性接着剤としては、側鎖結晶性ポリマーがある。接着性繊維糸として、表面に感温性接着剤を担持した細長いフィラメント糸、短繊維1を撚り合わせて形成された単糸2、単糸2を複数本撚り合わせて形成された原糸4、原糸4を複数本撚り合わせて形成された複合糸5等がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で塵が付着され、この塵を一定の温度で脱離することが可能な接着性繊維糸、繊維製品、清掃用繊維製品及び接着性繊維糸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸着剤を塗布した従来の清掃用繊維製品は、清掃作業で塵等を付着させた後洗浄して塵を除去していたので、この洗浄時に吸着剤も同時に除去され、再使用するために吸着剤を清掃用繊維製品に再処理しなければならず、再生コストが高くつくという問題があった。
【0003】
この問題を解決しようとする清掃布として、例えば、特開2004−154333号公報で開示された清掃布がある。この従来の清掃布は、織布や不織布に温度により粘着性がOn・Offする側鎖結晶性ポリマーを塗布して、任意の温度で粘着と非粘着を切り替える構成としたものである。ところが、この従来の清掃布は、織布や不織布の表面だけに側鎖結晶性ポリマーが塗布され、織布や不織布の内側まで側鎖結晶性ポリマーが塗布されない。従って、織布や不織布の表面だけで塵を付着することになり、表面が塵で蔽われてしまい床面等の塵をそれ以上に除去することができないという問題があった。また、織布や不織布の表面が凹凸面であるから、凹面に多くの側鎖結晶性ポリマーが塗布され、凸面に側鎖結晶性ポリマーが少なく塗布され、塗着面にムラが生じると共に側鎖結晶性ポリマーが過大に担持される傾向にある。従って、清掃布の表面に一様に側鎖結晶性ポリマーが塗布されないため、清掃時に床面等の塵が一様に除去されず、床等の被清掃面に除去される領域と十分に除去されない領域ができるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−154333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、繊維糸一本一本の表面に感温性接着剤を担持させることができ、この感温性接着剤を担持した接着性繊維糸で形成された繊維製品の表面だけでなく、内側の繊維糸にも塵を確実に付着できる。また、一定の温度の下で洗浄したときに付着していた塵を確実に除去できる。更に、一度担持された感温性接着剤が洗浄時に除去されないから使用期間を長くできる接着性繊維糸、繊維製品、清掃用繊維製品及び接着性繊維糸の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、本発明の第1の形態は、繊維糸の表面に感温性接着剤を担持した接着性繊維糸である。
【0006】
本発明の第2の形態は、前記感温性接着剤がスイッチング温度の前後で接着性と非接着性の可逆変化を呈する接着性繊維糸である。
【0007】
本発明の第3の形態は、前記感温性接着剤が側鎖結晶性ポリマーからなる接着性繊維糸である。
【0008】
本発明の第4の形態は、前記感温性接着剤が前記繊維糸の表面全体に被膜形成されている接着性繊維糸である。
【0009】
本発明の第5の形態は、前記繊維糸が比較的長いフィラメント糸からなる接着性繊維糸である。
【0010】
本発明の第6の形態は、前記繊維糸が短繊維を撚り合わせて形成された単糸、又は前記単糸を複数本撚り合わせて形成された原糸、又は前記原糸を複数本撚り合わせて形成された複合糸からなる接着性繊維糸である。
【0011】
本発明の第7の形態は、第5の形態又は第6の形態の接着性繊維糸に接着性のない通常の繊維糸を絡み合わせて形成された接着性繊維糸である。
【0012】
本発明の第8の形態は、第1の形態乃至第7の形態のいずれかの接着性繊維糸で形成された繊維製品である。
【0013】
本発明の第9の形態は、前記繊維製品が清掃用に使用される清掃用繊維製品である。
【0014】
本発明の第10の形態は、前記繊維製品がクロスからなる清掃用繊維製品である。
【0015】
本発明の第11の形態は、前記繊維製品がモップからなる清掃用繊維製品である。
【0016】
本発明の第12の形態は、感温性接着剤を含む液体中に繊維糸を浸漬又は通過させ、繊維糸の表面に前記感温性接着剤が担持される接着性繊維糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の形態によれば、接着性繊維糸が繊維糸の表面に感温性接着剤を担持したものであるので、この接着性繊維糸を用いて繊維製品等を形成した際に、繊維製品等の表面のみならず内部にも塵が付着する。従って、室内の塵や大気中の小さな塵をこの繊維製品等を構成する接着性繊維糸の表面に数多く付着できる。感温性接着剤とは、一定の温度の下で接着性を有し、一定の温度以上又は温度以下で非接着性となるものである。従って、付着した塵を一定の温度の下で洗浄する時に確実に除去することができる。この洗浄時に接着性繊維糸の表面の感温性接着剤が除去されないから、使用期間を長くすることができる。感温性接着剤としては、例えば、アクリル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリエーテル系重合体、ポリビニルエーテル系重合体、アルキド系重合体、シリコーン系重合体、ポリエステル変性アクリル重合体など、公知の感温性接着剤を利用できる。
【0018】
本発明の第2の形態によれば、繊維糸の表面に担持された感温性接着剤が、スイッチング温度の前後で接着性と非接着性の可逆変化を呈する。この感温性接着剤としてはCool offタイプのものとWarm offタイプのものがある。Cool offタイプとは、温度が高くなると接着性を有し、温度が低くなると非接着性となるものであって、例えば10℃以上で接着性を有し、10℃以下で非接着性となるものである。また、Warm offタイプとは、温度が低くなると接着性を有し、温度が高くなると非接着性となるものであって、例えば40℃以下で接着性を有し、40℃以上で非接着性となるものである。感温性接着剤が上記したCool offタイプであれば、表面にこの感温性接着剤を担持した接着性繊維糸を用いて織布、不織布等を形成すると、例えば、10℃以上の環境の下で塵が織布、不織布等の接着性繊維糸に付着する。逆に10℃以下の水で洗浄すると接着性繊維糸に付着した塵を脱離することができる。この場合、水に洗剤を混入してもよい。また、感温性接着剤が上記したWarm offタイプであれば、表面にこの感温性接着剤を担持した接着性繊維糸を用いて織布、不織布を形成すると、例えば、40℃以下の環境の下で塵が織布、不織布等の接着性繊維糸に付着する。逆に40℃以上の温水で洗浄すると接着性繊維糸に付着した塵を脱離することができる。この場合、温水に洗剤を混入してもよい。
【0019】
本発明の第3の形態によれば、感温性接着剤が側鎖結晶性ポリマーであるので、スイッチング温度の前後で接着性と非接着性が急激に変化する。この側鎖結晶性ポリマーを形成する分子の主鎖から枝別れした側鎖がスイッチング温度以上で配向性がなくなって絡み合う。このとき、側鎖結晶性ポリマーが接着性を有し、この接着性で塵を付着させることができる。逆に、前記スイッチング温度以下になると、側鎖同士の絡み合いが消失して側鎖が配向性を有するようになり接着が消失して非接着性を示すようになる。このとき、側鎖に付着した塵を脱離することができる。また、感温性接着剤が側鎖結晶性ポリマーであると、シャープな温度変化により塵の付着と脱離とを行うことができる。側鎖結晶性ポリマーとしては、ビニルエステルポリマー、マレイミドポリマー、アルキルホスファゼンポリマーなど、公知の側鎖結晶性ポリマーを利用できる。
【0020】
本発明の第4の形態によれば、感温性接着剤が繊維糸の周面全体に形成されているので、一本一本の繊維糸の全てがダスト接着性を有し、この繊維糸により形成された織布、不織布等の外側表面だけでなく内側の繊維表面にまで均一な接着性を有することとなる。従って、塵の付着を繊維製品等の表面だけでなく、内側でも行うことができ、塵を繊維製品等の全体で付着することができ、塵吸着性をより一層良くすることができる。
【0021】
本発明の第5の形態によれば、繊維糸が細長いフィラメント糸であるから、このフィラメント糸の表面に感温性接着剤が担持されると、この細長いフィラメント糸で形成された織布、不織布等では、感温性接着剤の密度が大きくなる。従って、床等の塵を余すことなく接着除去することができる。また、スイッチング温度以上又は以下で付着した塵の脱離を容易に行うことができる。フィラメント糸としては、一本のフィラメント糸からなるモノフィラメント糸と、複数本のフィラメント糸を撚り合わせたマルチフィラメント糸とがある。また、フィラメント糸の種類としては、ポリエステルフィラメント糸、ポリ乳酸フィラメント糸、アセテートフィラメント糸、アクリル系フィラメント糸、ポリオレフィン系フィラメント糸等がある。
【0022】
本発明の第6の形態によれば、繊維糸が単糸、原糸、複合糸からなり、これらの単糸、原糸、複合糸の表面に感温性接着剤が担持されているので、これらの単糸、原糸、複合糸から形成された繊維製品等の外側表面だけでなく、内側でも塵を付着することができる。従って、塵の付着除去効果を高めることができる。また、スイッチング温度以下又は以上で洗浄することにより、付着した塵を簡単に離脱させることもできる。これらの単糸、原糸、複合糸を形成する紡績糸として、綿やウールなどの天然繊維の他に、ポリエステル、アクリルあるいはナイロンを原料とする合成繊維、セルロース系繊維がある。
【0023】
本発明の第7の形態によれば、繊維糸が表面に感温性接着剤を担持した接着性繊維糸と接着性のない通常の繊維糸を絡み合わせて形成された混合糸であるから、全ての繊維糸に感温性接着剤を担持させる必要がなく、相対的に感温性接着剤の量を少なくでき、コストダウンを図ることができる。また、感温性接着剤が担持されていない繊維糸が存在するから、複合された繊維糸表面の手触りを滑らかにでき、清掃用繊維製品のみならず衣服用やカーテン等の繊維糸としても活用できる。
【0024】
本発明の第8の形態によれば、繊維製品が接着性繊維糸で形成されているから、この繊維製品に数多くの塵を付着させることができる。この繊維製品としては、例えば室内のカーテンやカーペット等がある。室内のカーテンやカーペット等に花粉が付着すると、室内の空気中の花粉を少なくすることができて、花粉症を和らげることができる。また、室内の小さな塵が付着するので、室内の清浄化ができ、ダストアレルギーの人の症状も和らげることができる。
【0025】
本発明の第9の形態によれば、接着性繊維を用いた繊維製品が清掃用繊維製品であるので、この清掃用繊維製品で床等を清掃するときに、この清掃用繊維製品を構成する繊維糸の表面に担持された感温性接着剤で、床等の塵を余すことなく付着して清掃することができる。このとき、清掃用繊維製品の外側表面だけでなく、内側にも塵を付着させることができ、清掃を効果的に行うことができる。従って、床等をこの清掃用繊維製品で清掃すると、床等の塵を全域に渡って清掃することができる。
【0026】
本発明の第10の形態によれば、繊維製品がクロスからなるものであるので、このクロスで床等を拭くときに、このクロスを形成する接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤で床やテーブルの上面等の塵を数多く付着させて清掃することができる。また、清掃した後に感温性接着剤のスイッチング温度以下又は以上で塵を正確に脱離することができる。清掃するときに、クロスを形成する繊維糸の表面に担持された感温性接着剤でクロスの表面だけでなく、内側でも塵を付着して清掃することができる。
【0027】
本発明の第11の形態によれば、繊維製品がパイル等を有したモップからなるものであるので、このモップで床等を清掃するときに、このモップを形成する接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤で床等の塵を数多く付着させて清掃することができる。従って、床等の全域に渡って塵を余すことなく清掃できる。また、このモップで清掃した後に感温性接着剤のスイッチング温度以下又は以上で塵を確実に脱離することができる。清掃するときに、モップを形成する繊維糸の表面に担持された感温性接着剤でモップの表面だけでなく、内側でも塵を付着して清掃することができ、清掃効果を高めることができる。
【0028】
本発明の第12の形態によれば、感温性接着剤を含む液体とは、感温性接着剤の原液や、感温性接着剤を酢酸エチル等の溶媒液で希釈した液体がある。これらの液体中に繊維糸を浸漬又は通過させるだけで、繊維糸の表面に感温性接着剤を簡単に担持させることができる。従って、接着性繊維糸の製造工程が簡単であり、手間がかからず作業性が良く低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る接着性繊維糸、繊維製品、清掃用繊維製品及び接着性繊維糸の製造方法の実施の形態を、添付する図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0030】
図1は接着性繊維糸を構成する短繊維、単糸、原糸、複合糸の形成図である。(1A)は短繊維を撚り合わせて単糸を形成する説明図である。短繊維1の太さはd(デニール)で表される。短繊維1の長さは、例えば約38mm、約51mm程度であり、これらの短繊維1を多数撚り合わせて単糸2を形成する。本実施形態では、短繊維1として、例えば3d(デニール)以下の短繊維1を使用し、場合によっては4.8d(デニール)以下の短繊維1を使用する。天然繊維には綿のような短繊維1であるものが多いが、化学繊維では、フィラメント糸のような長繊維を短く切断して短繊維1を形成する場合がある。また、長繊維であるフィラメント糸を切断せずに単糸2と同様にして使用する場合もある。化学繊維としては、例えば、ナイロン繊維、レーヨン等のセルロース性繊維やポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリ塩化ビニル繊維等がある。
【0031】
(1B)は表面に側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤を担持した単糸の形成図である。多数の短繊維1を平行に撚り合わせて単糸2を形成する。単糸2の太さはS(英国式番手)で表し、大小各種の太さの単糸2を形成できる。Sは英国式番手の他に綿番手ともいう。本実施形態では、例えば少なくとも4S(英国式番手)又は5S(英国式番手)以上の単糸2を使用する。本実施形態では、単糸2の表面全体に、側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3が担持されている。また、上記した長繊維であるフィラメント糸の表面全体に感温性接着剤3が担持されている場合も、(1B)のように図示される。
【0032】
(1C)は表面に側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤を担持した原糸の形成図である。この原糸4は5本の単糸2を撚り合わせて形成されている。但し、この原糸4を構成する単糸2は感温性接着剤3を担持する以前のものが使用される。単糸2の材質により各種の原糸4を作成でき、複数材料繊維の混紡からなる原糸4も形成できる。原糸4の撚りかたとその回数は多種多様であり、目的に応じて適宜調整される。この原糸4の表面全体には、側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3が担持されている。
【0033】
(1D)は表面に側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤を担持した複合糸の形成図である。この複合糸5は2本の原糸4を撚り合わせて形成されている。原糸4の種類から各種の複合糸5を形成できる。但し、この複合糸5を構成する原糸4は感温性接着剤3を担持する以前のものが使用される。この複合糸5の表面全体には、側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3が担持されている。
【0034】
従って、(1B)(1C)(1D)に示す側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3を表面全体に担持した単糸2、原糸4、複合糸5を用いて、織布、不織布等を形成すると、感温性接着剤3が接着性を有する温度では、織布、不織布等の表面だけでなく、内側でも塵を付着することができる。また、感温性接着剤3が接着性を有さない温度では、これらの織布、不織布等から塵を容易に離脱できる。更に、表面に側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3が担持された単糸2同士、原糸4同士、複合糸5同士を組み合わせたの織布、不織布等の他に、単糸2と原糸4あるいは複合糸5を組み合わせた織布、不織布等や、原糸4と複合糸5を組み合わせた織布、不織布等も形成することができ、単糸2、原糸4、複合糸5を使用目的に応じて各種組み合わせた織布、不織布等を形成することも可能である。
【0035】
図2は接着性繊維糸である原糸に接着性のない通常の繊維糸である原糸を絡み合わせて形成された混合糸の形成図である。これは、図2に示すように、表面に側鎖結晶性ポリマーからなる感温性接着剤3を担持した原糸4と感温性接着剤3を担持していない原糸4Aとを絡み合わせて形成した混合糸6である。原糸4、4Aの種類から各種の混合糸6を形成できる。従って、全部の繊維糸に感温性接着剤を担持させる必要がないから、感温性接着剤の量を少なくすることができ、コストダウンを図ることができる。また、感温性接着剤を担持していない原糸4Aを絡み合わせて形成しているので、使用後の洗浄時にこの塵を容易に離脱できる利点がある。
【0036】
図3はCool Offタイプの感温性接着剤の温度変化による接着性、非接着性を表すグラフである。このCool Offタイプの感温度性接着剤は、図3に示すように、約10℃以下で非接着性となり、約10℃以上で接着性を有するものである。このCool Offタイプの感温性接着剤を、上記した単糸2、原糸4、複合糸5の表面に担持させると、これらの単糸2、原糸4、複合糸5で形成された織布、不織布等には、約10℃以上で塵が付着する。また、塵が付着した状態で約10℃以下の水温の水に浸して洗浄すると、約10℃以下で非接着性となるから、付着した塵が離脱する。また、水の中に適宜な洗剤を入れて洗浄すると洗浄性を良くすることができる。また、Cool Offタイプの感温性接着剤としては、図3に図示したものの他にその接着性、非接着性がスイッチングされる温度が異なる多種多様なものがある。
【0037】
図4はWarm Offタイプの感温性接着剤の温度変化による接着性、非接着性を示すグラフである。このWarm Offタイプの感温性接着剤は、約40℃以下で接着性を有し、約40℃以上で非接着性となるものである。このWarm Offタイプの感温性接着剤を、上記した単糸2、原糸4、複合糸5の表面に担持させると、これらの単糸2、原糸4、複合糸5で形成された織布、不織布等には、約40℃以下で塵が付着する。また、塵が付着した状態で約40℃以上の温水に浸して洗浄すると、約40℃以上で非接着性となるから、付着した塵が離脱する。尚、温水の中に適宜な洗剤を入れて洗浄すると洗浄性を良くすることができる。また、Warm Offタイプの感温性接着剤としては、図4に図示したものの他にその接着性、非接着性がスイッチングされる温度が異なる多種多様なものがある。
【0038】
図5は表面に感温性接着剤を担持した単糸、原糸、複合糸あるいは混合糸で形成されたクロスを用いたモップの斜視図である。尚、単糸、原糸、複合糸と混合糸を接着性繊維糸と称して以下説明する。このモップ7は、図5に示すように、クロス8が取り付けられる保持具9は、略平板状の本体部10とこの本体部10の上面中央部に設けられ、左右一対の柄取付部11、11と、本体部10の左右に設けられたクロス取付部12、12とが備えられている。左右一対の柄取付部11、11には、柄13の下部に挿着されたジョイント14が取り付けられ、この柄13が角度調整自在になるように構成されている。クロス取付部12、12は、本体部10の上面左右に形成された凹所15、15に平面視三つ重ね団子状のゴム材16が着脱可能に嵌めこまれている。このゴム材16の前後位置に切溝17が放射状に形成されている。この切溝17にクロス8の縁部近傍を嵌め入れてクロス8を保持具9に装着する。この状態で、床面等を清掃するとき、クロス8の下側を床面等に当接し、柄13を前後左右に移動してクロス8を前後左右に移動させると、床面等の塵がクロス8に付着して清掃される。
【0039】
クロス8がCool Offタイプの感温性接着剤を表面に担持した接着性繊維糸で形成されている場合は、例えば、10℃以上の環境下で清掃する。接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤が10℃以上で接着性を有するものであると、この接着性繊維糸の表面の感温性接着剤で床面等の塵が付着して清掃される。清掃後は、このクロス8を取り外して10℃以下の水に浸して洗浄すると、感温性接着剤が非接着性となるので、塵がクロス8を形成する接着性繊維糸の表面から脱離される。この洗浄時に、水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。
【0040】
また、クロス8がWarm Offタイプの感温性接着剤を表面に担持した接着性繊維糸で形成されている場合は、例えば、40℃以下の環境下で清掃する。接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤が40℃以下で接着性を有するものであると、この接着性繊維糸の表面の感温性接着剤で床面等の塵が付着して清掃される。清掃後は、このクロス8を取り外して40℃以上の温水に浸して洗浄すると、感温性接着剤が非接着性となるから、塵がクロス8を形成する接着性繊維糸の表面から離脱される。この洗浄時に、温水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。
【0041】
図6は表面に感温性接着剤を担持した単糸、原糸、複合糸あるいは混合糸で形成されたパイルを用いたモップの斜視図である。尚、単糸、原糸、複合糸と混合糸を接着性繊維糸と称して以下説明する。図6に示すように、このモップ18の保持具19は、保持具本体20に左右一対の保持片21、22が水平向きにロックされている。この保持片21、22は下側に向けて開脚可能に構成されている。表面に感温性接着剤が担持された接着性繊維糸で形成された多数のパイル23が基布24に植成されたモップ18の上面における左右のポケット部25、25に水平向きにロックされた状態で左右一対の保持片21、22が挿入されている。保持具本体20にはその中央部に取付用突起26、26が上向きに突設されていて、これら取付用突起26、26の間に回動自在にジョイント27が取り付けられている。このジョイント27の上端に柄28の二股状下部29が回動自在に取り付けられていて、柄28は左右前後に傾倒できるように構成されている。図6の状態で作業員が柄28を持ってモップ18のパイル23を床面等に押し付けて清掃する。
【0042】
モップ18のパイル18を形成する接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤がCool Offタイプであって、10℃以上で接着性を有するものであると、10℃以上の環境下で清掃する。このとき、接着性繊維糸の表面の感温性接着剤で床面等の塵が付着して清掃される。清掃後は、左右一対の保持片21、22を下向きに開脚し、パイル23が植成された基布24を取り外して10℃以下の水に浸して洗浄すると、感温性接着剤が非接着性となるから、塵がパイル23を形成する接着性繊維糸の表面から脱離される。この洗浄時に、水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。
【0043】
また、パイル23がWarm Offタイプの感温性接着剤を表面に担持した接着性繊維糸で形成されている場合は、例えば、40℃以下の環境下で清掃する。接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤が40℃以下で接着性を有するものであると、この接着性繊維糸の表面の感温性接着剤で床面等の塵が付着して清掃される。清掃後は、左右一対の保持片21、22を下向きに開脚し、パイル23が植成された基布24を取り外して40℃以上の温水に浸して洗浄すると、感温性接着剤が非接着性となるので、塵がパイル23を形成する接着性繊維糸の表面から離脱される。この洗浄時に、温水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。
【0044】
図7は表面に感温性接着剤を担持した繊維製品であるカーテンを窓部に取り付けた状態を示す斜視図である。尚、表面に感温性接着剤を担持した単糸、原糸、複合糸と混合糸を接着性繊維糸と称して以下説明する。図7に示すように、室内の窓部30にカーテン31が垂れ下がった状態で取りつけられている。このカーテン31は表面に感温性接着剤を担持した接着性繊維糸を織り込んで形成されている。このカーテン31は開閉自在で取り外し自在に窓部30に取り付けられている。このカーテン31は表面に感温性接着剤を担持している接着性繊維糸から形成されているから、室内の空気中に存在する小さな塵や花粉がこのカーテン31に付着して室内の清浄化ができ、また、花粉症の人の症状を和らげることができる。
【0045】
更に詳細に説明すると、カーテン31を形成する接着性繊維糸の表面に担持されている感温性接着剤がCool Offタイプであって、10℃以上で接着性を有するものであると、室内が10℃以上の環境下にあるとする。この環境下では、カーテン31を形成する接着性繊維糸の表面の感温性接着剤に室内の空気中に存在する小さな塵や花粉が付着する。定期的にこのカーテン31を窓部30から取り外して10℃以下の水に浸して洗浄する。この時、感温性接着剤が非接着性となるので、付着している小さな塵や花粉がカーテン31を形成する接着性繊維糸の表面から離脱される。この洗浄時に、水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。
【0046】
また、カーテン31を形成する接着性繊維糸の表面に担持された感温性接着剤がWarm Offタイプのものであって、40℃以下で接着性を有するものであると、室内の温度が通常の温度(40℃以下)の環境下にあるとする。この環境下では、カーテン31を形成する接着性繊維糸の表面の感温性接着剤に室内の空気中に存在する小さな塵や花粉が付着する。定期的にこのカーテン31を窓部30から取り外して40℃以上の温水に浸して洗浄する。この時、感温性接着剤が非接着性となるから、付着している小さな塵や花粉がカーテン31を形成する接着性繊維糸の表面から離脱される。この洗浄時に、温水に適宜な洗剤を入れて洗浄してもよい。尚、カーテン31に限らず、例えば、床に敷くカーペットを接着性繊維糸で形成して、室内の空気の清浄を行うこともできる。
【0047】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この発明に係る接着性繊維糸は、織布、不織布等に形成することが可能であり、その繊維製品としてはカーテン、カーペット等、数多くのものがあげられる。また、クロスやモップ等を形成することもでき、モップでは、接着性繊維糸から形成されたクロスやパイルをモップに着脱可能に取り付けるようにして、このクロスやパイルをメーカーなどからユーザーにレンタルしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】接着性繊維糸を構成する短繊維、単糸、原糸、複合糸の形成図である。
【図2】接着性繊維糸である原糸に接着性のない通常の繊維糸である原糸を絡み合わせて形成された混合糸の形成図である。
【図3】Cool Offタイプの感温性接着剤の温度変化による接着性、非接着性を表すグラフである。
【図4】Warm Offタイプの感温性接着剤の温度変化による接着性、非接着性を示すグラフである。
【図5】表面に感温性接着剤を担持した単糸、原糸、複合糸あるいは混合糸で形成されたクロスを用いたモップの斜視図である。
【図6】表面に感温性接着剤を担持した単糸、原糸、複合糸あるいは混合糸で形成されたパイルを用いたモップの斜視図である。
【図7】表面に感温性接着剤を担持した繊維製品であるカーテンを窓部に取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 短繊維
2 単糸
3 感温性接着剤
4 原糸
4A 原糸
5 複合糸
6 混合糸
7 モップ
8 クロス
9 保持具
10 本体部
11 柄取付部
12 クロス取付部
13 柄
14 ジョイント
15 凹所
16 ゴム材
17 切溝
18 モップ
19 保持具
20 保持具本体
21 保持片
22 保持片
23 パイル
24 基布
25 ポケット部
26 取付用突起
27 ジョイント
28 柄
29 二股状下部
30 窓部
31 カーテン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維糸の表面に感温性接着剤を担持したことを特徴とする接着性繊維糸。
【請求項2】
前記感温性接着剤がスイッチング温度の前後で接着性と非接着性の可逆変化を呈する請求項1に記載の接着性繊維糸。
【請求項3】
前記感温性接着剤が側鎖結晶性ポリマーである請求項1又は2に記載の接着性繊維糸。
【請求項4】
前記感温性接着剤が前記繊維糸の表面全体に被膜形成されている請求項1、2又は3に記載の接着性繊維糸。
【請求項5】
前記繊維糸が細長いフィラメント糸である請求項1〜4のいずれかに記載の接着性繊維糸。
【請求項6】
前記繊維糸が短繊維を撚り合わせて形成された単糸、又は前記単糸を複数本撚り合わせて形成された原糸、又は前記原糸を複数本撚り合わせて形成された複合糸である請求項1〜4のいずれかに記載の接着性繊維糸。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の接着性繊維糸に接着性のない通常の繊維糸を絡み合わせて形成されたことを特徴とする接着性繊維糸。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の接着性繊維糸で形成されたことを特徴とする繊維製品。
【請求項9】
請求項8に記載の繊維製品が清掃用に使用されることを特徴とする清掃用繊維製品。
【請求項10】
前記繊維製品がクロスである請求項9に記載の清掃用繊維製品。
【請求項11】
前記繊維製品がモップである請求項9に記載の清掃用繊維製品。
【請求項12】
感温性接着剤を含む液体中に繊維糸を浸漬又は通過させ、繊維糸の表面に前記感温性接着剤が担持されることを特徴とする接着性繊維糸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−183184(P2006−183184A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378283(P2004−378283)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】