説明

接着組立方法、接着組立装置、第1の接着工程用装置及び第2の接着工程用装置

【課題】接着構造で各接着部品の位置決め精度や組み付け品質を必要とする車体等の大型製品の接着による組み付けを確実にするとともに、作業員の作業上の安全を確保する。
【解決手段】作業員104は、移動治具108を有しこの移動治具108に接着剤が塗布された接着部品を保持させた台車103を、工場の床面GLに敷設されるレール102に沿って搬送する。作業員104は、台車103を第1の接着工程用装置201の上方で固定し、固定治具作用部209を上方へスライド移動させる等して接着部品同士を接着する。作業員104は、固定治具作用部209を下方に動かし、第1の接着工程用装置201の固定を解除した後、台車103を第2の接着工程用装置301の上方まで搬送し、そこで固定する。作業員104は、床下作業ピット302に侵入し、作業用開口部312を介して接着部品の下方に食み出た接着剤をかき取る作業を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具に固定された部品を接着剤で組み立てる接着組立方法、この接着組立方法に用いられる接着組立装置、この接着組立装置を構成する第1の接着工程用装置及び第2の接着工程用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組み付け位置精度が要求される車体等の大物製品の溶接組み付けでは、搬送レールに沿って搬送される台車に車体等の製品を構成する部品を搭載し、治具に部品を位置決め保持させて、部品同士を組み付けることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車体組立装置は、アンダボデー(部品)を位置決め支持するアンダボデー支持部材9と、サイドメンバSM(部品)を起立姿勢で仮保持する仮保持手段(治具)10とを備える複数の搬送パレット1を、組立ライン2に沿って敷設された搬送レール3上に載せて走行移動させるものである。搬送パレット1は、組立ライン2に沿って設けられた各種のステーションを順次走行移動する。そして、特許文献1には、サイドメンバ組付けステーションST3において、仮保持された部品(サイドメンバSM)を、治具等を用いて位置決めした状態にて、アンダボデーに溶接して固定することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、部品をドアトリム本体2に取り付けるために、ドアトリム本体2に接着剤を塗布することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−075060号公報(請求項5、段落0021、図1、図2)
【特許文献2】特開2000−153193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、溶接による部品接合の代わりに、接着剤を用いた部品接合が行われ始めている。この場合、部品同士の接着を確実にするために、部品の接着箇所に接着剤を適切に塗布した上で部品同士を接着し、部品と部品との間から接着剤を食み出させて、作業員が目視にて確実に接着がなされているかどうかを確かめる必要がある。そして、このように接着剤を塗布した場合、新たに、食み出した接着剤を取り除く作業が生じる。
【0007】
食み出した接着剤は、接着された部品の上方に残留するのみならず、その部品の下方にまで流れる。しかしながら、接着された部品を位置決めする治具にはほとんど隙間がない。このため、部品の下方に流れた接着剤を作業員が取り除くことは難しい。
【0008】
ここで、接着剤を乾燥させ固化させた後に製品を持ち上げて回転させ、グラインダーを用いて接着剤を削り取ることが考えられる。しかしながら、この場合、作業能率が悪く、製品に不要な傷を付けてしまうおそれもある。また、接着剤が乾燥する前に製品を台車から外して持ち上げて回転させ、接着剤をかきとることが考えられる。しかしながら、この場合、製品が回転することによって接着部品が振動し、治具によって正確に位置決めされた部品が動いてしまうおそれがある。そして、いずれの場合においても、製品が工場の床面から離れた位置まで持ち上げられ回転されるので、作業員の作業上の危険が生じる。
【0009】
本発明の目的は、接着構造で各接着部品の位置決め精度や組み付け品質を必要とする車体等の大型製品の接着による組み付けを確実にするとともに、作業員の作業上の安全を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接着組立方法は、工場の床面に敷設されるレールに移動自在に載せられ接着剤が塗布された接着部品を保持する移動治具を備える台車の前記移動治具に、接着部品を保持させる第1の工程と、前記第1の工程に続いて、前記台車を前記レールに沿って搬送して、前記台車を固定する第1の固定部と、前記第1の固定部の下方に設けられ前記第1の固定部に固定された台車の移動治具に保持された接着部品に接触し当該接着部品を動かす固定治具作用部と、当該接着部品同士を接着させるために当該接着部品に接触する接触位置と当該接着位置から離反する離反位置との間で前記固定治具作用部をスライド自在に保持するスライド機構と、前記固定治具作用部を動かしてスライド変位させる固定治具駆動部と、を備える第1の接着工程用装置の上方に前記台車を位置付ける第2の工程と、前記第2の工程に続いて、前記第1の固定部によって前記台車を固定し、前記固定治具駆動部を駆動し前記固定治具作用部を前記接着位置まで動かして接着部品同士を接着する第3の工程と、前記第3の工程に続いて、前記固定治具駆動部を駆動し前記固定治具作用部を前記離反位置に位置付け、前記第1の固定部による台車の固定を解除し、前記台車を前記レールに沿って搬送して、前記第1の接着工程用装置とは異なる箇所で前記レールの下方に設けられ前記床面に作業用開口部を形成する床下作業ピットと、前記レールに載せられ前記床下作業ピットの上方に位置付けられた前記台車を固定する第2の固定部と、を備える第2の接着工程用装置の上方に前記台車を位置付ける第4の工程と、前記第4の工程に続いて、前記第2の固定部によって前記台車を固定し、前記接着部品と前記部品との間から食み出た接着剤を取り除く第5の工程と、を備える。
【0011】
本発明の接着組立装置は、工場の床面に敷設されるレールと、前記レールに移動自在に載せられる治具ベースと、前記治具ベースに取り付けられ接着剤が塗布された接着部品を保持する移動治具と、を備える台車と、前記台車を固定する第1の固定部と、前記第1の固定部の下方に設けられ前記第1の固定部に固定された台車の移動治具に保持された接着部品に接触し当該接着部品を動かす固定治具作用部と、当該接着部品同士を接着させるために当該接着部品に接触する接触位置と当該接触位置から離反する離反位置との間で前記固定治具作用部を動かしてスライド自在に保持するスライド機構と、前記固定治具作用部をスライド変位させる固定治具駆動部と、を備える第1の接着工程用装置と、前記第1の接着工程用装置とは異なる箇所で前記レールの下方に設けられ前記床面に作業用開口部を形成する床下作業ピットと、前記レールに載せられ前記床下作業ピットの上方に位置付けられた前記台車を固定する第2の固定部と、を備える第2の接着工程用装置と、を備える。
【0012】
本発明は、上記の第1の接着工程用装置及び上記の第2の接着工程用装置についても規定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着剤を接着部品に適切に塗布して接着し、接着剤が乾燥する前に接着物を回転させることなく接着された部品と部品との間から食み出した接着剤をかき取ることができるので、接着剤による部品の接着を確実にするとともに、作業員の作業上の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】接着組立装置の斜視図である。
【図2】第1の接着工程用装置と、この第1の接着工程用装置の上に位置付けられた台車とを搬送方向の左側から見た側面図である。
【図3】レール上に載置された台車の底面図である。
【図4A】固定治具作用部が接着位置まで上昇した状態における、第1の接着工程用装置と、この第1の接着工程用装置の上に位置付けられた台車とを搬送方向の左側から見た側面図である。
【図4B】上下可動レール駆動ユニット202a及び上下可動レール202が上下に動く様子を示す側面図である。
【図4C】上下可動レール202に載置された台車103が位置決めされる様子を示す側面図である。
【図5】第2の接着工程用装置を図1とは異なる方向から見た斜視図である。
【図6】床下ピット扉が開かれた状態の、第2の接着工程用装置の斜視図である。
【図7】台車と第2の接着工程用装置のロック解放機構とを拡大して示す斜視図である。
【図8】接着組立装置を用いて行う接着組立工程の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の一形態を、図1ないし図8に基づいて説明する。図1は、接着組立装置101の斜視図である。工場の床面GLには、接着組立ラインに沿って二本のレール102が平行に敷設されている。接着組立装置101は、第1の接着工程用装置201と、第2の接着工程用装置301と、乾燥装置401とを、接着組立ラインの上流側からレール102に沿ってこの順に並べて備える。さらに、接着組立装置101は、排気装置501も備える。
【0016】
レール102には、台車103が移動自在に載置される。作業員104は、台車103に設けられた手押しハンドル105を押して台車103をレール102に沿って搬送することができる。以下、接着組立ラインの上流側から下流側に向かう方向を、搬送方向と呼ぶ。
【0017】
作業員104が接着組立装置101を用いて行う各種の部品(図示せず)を接着組み付けして製品にする接着組立方法の概要は、以下の通りである。なお、各図では、接着部品の一つを符号BDで示している。
(1)まず、作業員104は、レール102に載置された台車103を第1の接着工程用装置201の上方に位置付け、この台車103を固定する。
(2)続いて、作業員104は、台車103上の保持部111(図2及び図3参照)に予め接着剤を塗布した接着部品を全てセットして組み付けを行う。
(3)続いて、作業員104は、第2の接着工程用装置301の上方に台車103を位置付け、この台車103を固定し、接着部品の接着部(図示せず)から食み出た余分な接着剤を取り除く。
(4)続いて、作業員104は、乾燥装置401の内部まで台車103を搬送し、台車103を位置付け、この台車103を固定してから乾燥室扉402を閉じて乾燥装置401を駆動させ、接着部品に塗布された接着剤を乾燥する。
【0018】
以下、第1の接着工程用装置201、第2の接着工程用装置301、乾燥装置401、排気装置501の順に説明する。
【0019】
[第1の接着工程用装置]
図2は、第1の接着工程用装置201と、この第1の接着工程用装置201の上に位置付けられた台車103とを搬送方向の左側から見た側面図である。図3は、レール上に載置された台車103の底面図である。台車103は、治具ベース106と、車輪107と、手押しハンドル105と、移動治具108とを備える。治具ベース106は、矩形形状の平板状の部材である。治具ベース106は、矩形形状の開口部109を有する。そして、治具ベース106は、開口部109に跨るように棒状のフレーム110が取り付けられている。フレーム110は、治具ベース106の剛性を高めている。また、車輪107は、治具ベース106の左右両側部に二つずつ、回動自在に取り付けられている。台車103は、車輪107をレール102及び上下可動レール202(後述)の上に載置されて、レール102及び上下可動レール202に沿って移動自在となっている。そして、手押しハンドル105は、治具ベース106における搬送方向の上流側の端部に取り付けられ、上方に突出している。
【0020】
移動治具108は、台車103及び治具ベース106に取り付けられている。移動治具108は、可動構造を備え製品を構成する全ての部品同士を接着させる機能を発揮する移動治具可動部112と、接着後の部品をそのまま保持させる機能を発揮する保持部111とを兼ね備えた構造となっている。移動治具可動部112は、保持部111によって固定された接着部品の構成部品を、前方、左右側方及び上方の四方向で、接着方向に対し進退するように動かす。
【0021】
第1の接着工程用装置201は、予め接着剤を塗布された全ての構成部品を台車103の移動治具108の保持部111に保持させておき、この保持部111に取り付けられた部品同士を接着する場合に用いられる装置である。第1の接着工程用装置201は、上下可動レール202と、固定治具203と、第1の固定部としての第1のストッパ204と、を備える。固定治具203には、固定治具作用部209と、スライド機構を構成する固定治具フレーム205及び固定治具レール207とが含まれる。また、上下可動レール202は、その長さ方向の延長線上にレール102が位置するように、レール102に並べて設けられる。
【0022】
固定治具203は、上下可動レール202よりも下方に設けられ、工場の床部FLに固定的に取り付けられている。第1のストッパ204は、第1の接着工程用装置201の上方に位置付けられた台車103の四隅のそれぞれの近傍に四つ設けられる。各第1のストッパ204は、それぞれ、阻止位置204Aと開放位置204Bとの間で回動自在に、固定治具203に取り付けられている。ここで、阻止位置204Aとは、第1の接着工程用装置201の上方に位置づけられた台車103の治具ベース106の上流側側面及び下流側側面に接触し、台車103が上下可動レール202に沿って上流側及び下流側のいずれにも移動しないよう台車103を停止させる位置である。また、開放位置204Bとは、阻止位置204Aに位置する第1のストッパ204が台車103に対して外側に略90度回動して、治具ベース106から離反して台車103を上下可動レール202上で移動自在とする位置である。
【0023】
固定治具フレーム205は、上下方向に延びるシャフト208を有する。このシャフト208の上端には、固定治具作用部209が取り付けられている。そして、固定治具レール207は、シャフト208と平行に設けられ、固定治具フレーム205を上下方向にスライド自在に保持する。固定治具フレーム205と固定治具レール207とによって、固定治具作用部209は、台車103の保持部111に保持された部品に対して部品同士を接着させる接着位置(図4A参照)まで上昇することができる。
【0024】
図4Aは、固定治具作用部209が接着位置まで上昇した状態における、第1の接着工程用装置201と、この第1の接着工程用装置201の上に位置付けられた台車103とを搬送方向の左側から見た側面図である。図4Bは、上下可動レール駆動ユニット202a及び上下可動レール202が上下に動く様子を示す側面図である。図4Cは、上下可動レール202に載置された台車103が位置決めされる様子を示す側面図である。第1の接着工程用装置201は、さらに、シリンダ202bの駆動で上下可動レール202を固定治具203に対して上下に動かす上下可動レール駆動ユニット202aと、固定治具フレーム205を固定治具レール207に沿って上下にスライド移動させる固定治具駆動部としての固定治具駆動シリンダ206aと、四つの第1のストッパ204の位置を検出する第1の検出部としてのセンサ206bと、エアシーケンス回路によって構成された操作部としての操作ユニット206cとを備える。エアシーケンス回路は、台車103が無い状態で上下可動レール202や固定治具作用部209が不用意に上下昇降しないための安全回路を構成している。センサ206bには、リミットスイッチを採用することができる。
【0025】
上下可動レール駆動ユニット202aは、四つの第1のストッパ204がいずれも阻止位置204Aに位置付けられていることをセンサ206bが検出し、かつ、操作ユニット206cに対し作業員104による上下可動レール202を下げるための操作がなされた場合に、上下可動レール202を下方に動かす。これにより、台車103の治具ベース106は、固定治具203の上面に載置される。ここで、平坦精度保障されかつ位置決め基準ピン(図示せず)を有する固定治具203に台車103が載置されることにより、移動治具108の位置精度が保証される。また、固定治具駆動シリンダ206aは、操作ユニット206cの操作により駆動を開始し、固定治具フレーム205を上方に動かし固定治具作用部209を接着位置まで上昇させる。また、操作ユニット206cに対し上下可動レール202を元の高さに戻すための操作がなされた場合、もしくは、四つの第1のストッパ204がいずれかが開放位置204Bに位置付けられていることをセンサ206bが検出した場合に、固定治具駆動シリンダ206aが固定治具フレーム205を下方に動かし、これとともに、シリンダ202bが駆動し、上下可動レール駆動ユニット202aが上下可動レール202を上方に押し上げてレール102と同じ高さに位置付ける。
【0026】
なお、上下可動レールの駆動は、エアシーケンス回路の代わりに、コンピュータ内蔵による制御でもよい。
【0027】
[第2の接着工程用装置]
図5は、第2の接着工程用装置301を図1とは異なる方向から見た斜視図である。第2の接着工程用装置301は、接着保持された部品の接着箇所から食み出た接着剤を取り除く場合に用いられる装置である。第2の接着工程用装置301は、床下作業ピット302と、床下作業ピット用階段303と、床下ピット扉304と、第2の固定部としての第2のストッパ305とを備える。
【0028】
床下作業ピット302は、レール102よりも下方に設けられる立方体形状の内部空間を形成する。この内部空間は、平面視において台車103よりも大きく、作業員104がその中で自由に動き回ることができる程の高さに形成されている。床下作業ピット302の底面には、排水路306と排水枡307とが設けられている。排水路306は、排水枡307に繋がっている。また、床下作業ピット302には、扇風機308を設置するための扇風機設置部309が設けられている。さらに、床下作業ピット302の側面には、排気孔310が設けられている。排気孔310からは、排気路311が延びている。排気路311は、排気装置501(図1参照)に繋がっている。
【0029】
床下作業ピット用階段303は、工場の床面GLと床下作業ピット302の底面とを連絡して設けられる。
【0030】
図6は、床下ピット扉304が開かれた状態の、第2の接着工程用装置301の斜視図である。図7は、台車103と第2の接着工程用装置301のロック解放機構とを拡大して示す斜視図である。なお、説明のために、図6では、台車103は一点鎖線で示されている。また、図6では、台車103に載置された接着部品は省略されている。工場の床面GLで、二本のレール102の間には、作業用開口部312が開口している。この作業用開口部312は、床面GLよりも上方の空間と床下作業ピット302の内部空間とを連通している。床下ピット扉304は、この作業用開口部312を開閉する。床下ピット扉304は、板状部材である。この床下ピット扉304は、床面GLに取り付けられている。より詳細には、作業用開口部312における二本のレール102沿いの内側の縁部に、床下ピット扉用レール313が設けられている。この床下ピット扉用レール313は、床下ピット扉304の縁部をスライド自在に支持する。床下ピット扉304の下面には、作業員104が把持するための把手304a(図8参照)が設けられている。
【0031】
第2のストッパ305は、床面GLに、作業用開口部312の四隅のそれぞれの近傍に四つ設けられる。各第2のストッパ305もそれぞれ、第1のストッパ204と同様に、第2の接着工程用装置301の上方に位置づけられた台車103が移動しないよう停止させる阻止位置(図示せず)と、この台車103をレール102上で移動自在とする開放位置(図示せず)との間で回動自在に設けられる。
【0032】
作業員104は、第2の接着工程用装置301上の固定されたレール102の上で台車103を第2のストッパ305にて位置付け、この状態で、床下作業ピット302側から食み出た接着剤を取り除く仕上げ作業を行う。
【0033】
第2の接着工程用装置301は、作業用開口部312越しの作業となるため、墜落や挟まれ防止等の安全確保が必要となる。そこで、第2の接着工程用装置301は、床下ピット扉304の開閉に関して、エアシーケンス回路と、四つの第2のストッパ305のストッパの位置を検出する第2の検出部としての第2センサ304cと、エアシーケンス回路によって構成された操作部としての操作ユニット304eとを備える。第2センサ304cとしては、リミットスイッチを採用することができる。エアシーケンス回路には、台車103が無い状態では床下ピット扉304を開けず、床下ピット扉304が開かれた状態では第2のストッパ305を動かさず開放位置に位置付けたままにして台車103を動かせないようにするという条件が設定されている。
【0034】
第2の接着工程用装置301は、さらに、床下ピット扉304の手動スライド開閉のために、ロック部としてのロック解放機構351(図7参照)を備える。床面GLにおいて床下ピット扉304の近傍にはピン差込孔314が設けられている。また、台車103には棒状差込ピン351aが摺動自在に取り付けられている。作業員104が台車103を第2の接着工程用装置301の定位置に位置づけて棒状差込ピン351aをピン差込孔314に手作業で差し込むことによって、機械的にロック解放機構351が解放する(図示せず)。つまり、第2の接着工程用装置301の上方に台車103があるときにだけ、床下ピット扉304を開けることが可能となる。
【0035】
作業員104は、ロックが解除された状態の床下ピット扉304の把手304a(図8参照)を把持して床下ピット扉304を動かす。これにより、作業用開口部312が開放される。
【0036】
また、第2の接着工程用装置301には、第3の検出部としての第3センサ304dも設けられている。第3センサ304dは、作業用開口部312を閉じる位置にある床下ピット扉304をセンシングする。この第3センサ304dとしては、リミットスイッチを採用することができる。そして、エアシーケンス回路には、床下ピット扉304が閉められていなければ第2のストッパ305を解放操作できず、台車103を動かせないという条件設定がなされている。つまり、作業員104は、床下での接着作業後に床下ピット扉304を閉めなければ、台車103を動かすことができない。
【0037】
[乾燥装置]
図1に戻る。乾燥装置401は、乾燥室扉402と、乾燥室外壁403に囲われて形成される乾燥室404(図8参照)とを備える。乾燥室外壁403には、レール102に載置された台車103を乾燥室に搬入するための出入口405が形成されている。そして、乾燥室扉402は、乾燥室外壁403に取り付けられ、出入口405を開閉する。
【0038】
台車103は、第1の接着工程用装置201と同様に、車輪107をレール102及び乾燥装置401内の上下可動レール(図示せず)の上に載置され、レール102及び上下可動レールに沿って移動し、乾燥装置401内のストッパ(図示せず)で位置付けてから上下可動レールの加工に沿って乾燥装置401の上面に載置させる。平坦精度が保証された乾燥装置401の固定治具上に台車103が載置されることにより、移動治具108の位置精度が保証される。この状態で、乾燥室404の内部を高温に加熱する。乾燥室404の内部に搬送された接着部品に塗布された接着剤は、乾燥室404の内部で乾燥し硬化する。
【0039】
[排気装置]
引き続き、図1を参照する。排気装置501は、床面GL上において第2の接着工程用装置301に対し搬送方向の左側に配置される。また、床面GLにおいて排気装置501に隣接する箇所には、床下作業ピット302の内部空間に連通する排気路311が突出する。排気路311の内部にはファン(図示せず)が設けられている。排気装置501は、このファンを駆動し、床下作業ピット302内の空気を排気路311から放出する。
【0040】
[接着組立方法]
図8は、接着組立装置101を用いて行う接着組立工程の流れを示す説明図である。上記に述べた構成の接着組立装置101を用い、作業員104は、以下の手順で接着部品の組み立てを行う。
【0041】
まず、作業員104は、手押しハンドル105を持って台車103を搬送し、第1の接着工程用装置201の上方に位置付け、第1のストッパ204を開放位置204Bから阻止位置204Aに動かす。これにより、台車103は第1の接着工程用装置201から搬送方向の上流側及び下流側のいずれにも移動することがなくなる。この状態で、作業員104が第1の接着工程用装置201に備わる操作ユニット206cに対し、上下可動レール202を下方に下げるための操作を行う。これにより、上下可動レール202は下方に動き、台車103の治具ベース106が二本の位置決め基準ピン(図示せず)を備えた固定治具203の上面に載置され位置決めされる。また、次の操作ユニット206cの操作で、固定治具フレーム205が上方に動く。このとき、台車103の治具ベース106には開口部109(図3参照)が形成されているため、固定治具フレーム205は開口部109を通過し、固定治具作用部209を接着位置まで上昇させる。これにより、接着部品のセット準備が完了する。そして、作業員104は、予め接着剤が塗布された全ての構成部品を、台車103上の移動治具108の保持部111にセット固定し、移動治具可動部112及び固定治具作用部209を動かして接着部品を接着する。接着部品は、このようにして、保持部111と移動治具可動部112と固定治具作用部209とによって強固に固定される。
【0042】
このように、本実施の形態では、作業員104は、部品(図示せず)を接着取り付けようとする箇所に接着剤を十分に塗布する。また、作業員104は、移動治具108の保持部111にその部品を保持させる。そして、作業員104は、移動治具可動部112及び固定治具作用部209を動かし部品を接着する。接着することにより、接着保持された部品の接着箇所から接着剤が食み出る。作業員104は、この食み出た接着剤を目視することにより、部品が確実に接着されたことを確認することが出来る。
【0043】
接着後、作業員104は、操作ユニット206cを操作して固定治具作用部209を部品から離反させ、第1のストッパ204を阻止位置204Aから開放位置204Bに動かす。これにより、上下可動レール202はレール102と同じ高さに位置付けられ、台車103は搬送方向に沿って移動自在となる。
【0044】
続いて、作業員104は、接着部品に塗布した接着剤が乾かないうちに手押しハンドル105を持って、台車103を第2の接着工程用装置301の上方に位置付ける。そして、作業員104は、第2のストッパ305を開放位置から阻止位置に動かし、台車103に取り付けられた棒状差込ピン351aを床面GLに設けられたピン差込孔314(図5及び図6参照)に差し込む。これにより、ロック解放機構351が作動して床下ピット扉304のロックは解除される。この状態で、作業員104は床下作業ピット用階段303を経由して床下作業ピット302の内部に入り込み、把手304aを持って床下ピット扉304をスライドすると、床下ピット扉304が動いて、作業用開口部312(図6参照)は開放される。
【0045】
ところで、接着部品に塗布された接着剤は、接着保持された部品の接着箇所から食み出ている。そして、食み出た接着剤は、接着部品の上面のみならず、接着部品の下面にまで垂れている。そこで、作業員104は、床面GL上に立って接着部品の上面に存在する食み出た接着剤を取り除く。また、作業員104は、床下作業ピット302に入り込んで、作業用開口部312及び台車103の開口部109を通して、接着部品の下面に垂れた接着剤を取り除く。
【0046】
このとき、作業員104は、排気装置501を駆動させておき、床下作業ピット302内の空気を排気させる。これにより、床下作業ピット302内に溜まっている気化した接着剤が排出され、作業員104の作業上の安全性が確保される。
【0047】
また、作業員は、扇風機設置部309(図5参照)に扇風機308(図5参照)を設置し、この扇風機308を駆動させておく。これにより、床下作業ピット302内の空気が攪拌され、作業員104の作業上の安全性が確保される。
【0048】
食み出た接着剤を取り除いた後、作業員104は、床下ピット扉304を動かして作業用開口部312を閉じ、床下作業ピット用階段303から床下作業ピット302の外部に出て、第2のストッパ305を開放位置に動かし、ピン差込孔314から棒状差込ピン351aを抜く。これにより、台車103は搬送方向に沿って移動自在となるとともに、ロック解放機構351が作動して床下ピット扉304が開かなくなり作業員104の作業場の安全性が確保される。
【0049】
続いて、作業員104は、乾燥室扉402を開き、レール102に載置された台車103を乾燥室404内にまで搬送し、ストッパで位置付けてから上下可動レールの加工によって固定治具203の上面に載置させ(第1の接着工程用装置同様)、乾燥室扉402を閉じて、接着部品に塗布された接着剤を乾燥させる。これにより、接着剤が固化し、接着組み付けされた部品がそれぞれ外れなくなる。
【0050】
このように、接着組立装置101によれば、作業員104は、接着剤を適切に接着部品に塗布して部品を確実に接着したことを目視で確認できる。そして、作業員104は、接着保持された部品の接着箇所から食み出した接着剤をかき取ることができる。このとき、作業員104は、接着部品を台車103から取り外し接着部品回転装置(図示せず)に取り付けて回転させるような作業を行う必要がなく、作業員104の作業上の安全を確保することができる。そして、そもそも、接着部品を台車103から取り外すことないため、接着部品が振動して動いてしまうことがない。さらには、接着剤が乾燥する前に接着部品から接着剤をかき取ることができるため、固化した接着剤をグラインダーで削って部品や製品を傷つけてしまうこともない。
【0051】
さらに、接着組立装置101によれば、台車103の治具ベース106に開口部109が設けられている。そして、固定治具フレーム205は、開口部109を通して下方に分離する。また、作業員104は、作業用開口部312及び開口部109を通して接着部品の下面にある接着剤を取り除くことができる。このため、作業員104の作業の効率が高まる。
【0052】
さらに、接着組立装置101によれば、第2の接着工程用装置301の作業用開口部312を床下ピット扉304で閉じることができる。そして、第2の接着工程用装置301の上に台車103が位置付けられない限り作業用開口部312が開かれることはない。このため、作業員104の作業場の安全性がさらに高まる。
【0053】
さらに、接着組立装置101によれば、排気装置501の駆動によって、床下作業ピット302に溜まる気化した接着剤の成分を含む空気を外部に排出し、床下作業ピット302内での作業員104の安全性をさらに高めることができる。
【0054】
別の実施の形態として、操作ユニット206cを設けないで、四つの第1のストッパ204がいずれも阻止位置204Aに位置付けられていることをセンサ206bが検出した場合に、上下可動レール駆動ユニット202aが上下可動レール202を下方に動かすようにしてもよい。そして、四つの第1のストッパ204がいずれかが開放位置204Bに位置付けられていることをセンサ206bが検出した場合に、固定治具駆動シリンダ206aが固定治具フレーム205を下方に動かし、上下可動レール駆動ユニット202aが上下可動レール202を上方に押し上げるようにしてもよい。
【0055】
別の実施の形態として、第1の接着工程用装置201と第2の接着工程用装置301と乾燥装置401との並び順は、上記で述べた並び順と異なっていても良い。一例として、搬送方向の上流側から下流側に向けて、第2の接着工程用装置301、第1の接着工程用装置201、乾燥装置401に並んでいても良い。
【符号の説明】
【0056】
101 接着組立装置
102 レール
103 台車
106 治具ベース
109 開口部
108 移動治具
201 第1の接着工程用装置
202 上下可動レール(レール)
204 第1のストッパ(第1の固定部)
205 固定治具フレーム(スライド機構)
206a 固定治具駆動シリンダ(固定治具駆動部)
207 固定治具レール(スライド機構)
209 固定治具作用部
301 第2の接着工程用装置
302 床下作業ピット
304 床下ピット扉
305 第2のストッパ(第2の固定部)
311 排気路
312 作業用開口部
351 ロック解放機構(ロック部)
501 排気装置
GL 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場の床面に敷設されるレールに移動自在に載せられ接着剤が塗布された接着部品を保持する移動治具を備える台車の前記移動治具に、接着部品を保持させる第1の工程と、
前記第1の工程に続いて、前記台車を前記レールに沿って搬送して、前記台車を固定する第1の固定部と、前記第1の固定部の下方に設けられ前記第1の固定部に固定された台車の移動治具に保持された接着部品に接触し当該接着部品を動かす固定治具作用部と、当該接着部品同士を接着させるために当該接着部品に接触する接触位置と当該接着位置から離反する離反位置との間で前記固定治具作用部をスライド自在に保持するスライド機構と、前記固定治具作用部を動かしてスライド変位させる固定治具駆動部と、を備える第1の接着工程用装置の上方に前記台車を位置付ける第2の工程と、
前記第2の工程に続いて、前記第1の固定部によって前記台車を固定し、前記固定治具駆動部を駆動し前記固定治具作用部を前記接着位置まで動かして接着部品同士を接着する第3の工程と、
前記第3の工程に続いて、前記固定治具駆動部を駆動し前記固定治具作用部を前記離反位置に位置付け、前記第1の固定部による台車の固定を解除し、前記台車を前記レールに沿って搬送して、前記第1の接着工程用装置とは異なる箇所で前記レールの下方に設けられ前記床面に作業用開口部を形成する床下作業ピットと、前記レールに載せられ前記床下作業ピットの上方に位置付けられた前記台車を固定する第2の固定部と、を備える第2の接着工程用装置の上方に前記台車を位置付ける第4の工程と、
前記第4の工程に続いて、前記第2の固定部によって前記台車を固定し、前記接着部品と前記部品との間から食み出た接着剤を取り除く第5の工程と、
を備える、接着組立方法。
【請求項2】
工場の床面に敷設されるレールと、
前記レールに移動自在に載せられる治具ベースと、前記治具ベースに取り付けられ接着剤が塗布された接着部品を保持する移動治具と、を備える台車と、
前記台車を固定する第1の固定部と、前記第1の固定部の下方に設けられ前記第1の固定部に固定された台車の移動治具に保持された接着部品に接触し当該接着部品を動かす固定治具作用部と、当該接着部品同士を接着させるために当該接着部品に接触する接触位置と当該接触位置から離反する離反位置との間で前記固定治具作用部を動かしてスライド自在に保持するスライド機構と、前記固定治具作用部をスライド変位させる固定治具駆動部と、を備える第1の接着工程用装置と、
前記第1の接着工程用装置とは異なる箇所で前記レールの下方に設けられ前記床面に作業用開口部を形成する床下作業ピットと、前記レールに載せられ前記床下作業ピットの上方に位置付けられた前記台車を固定する第2の固定部と、を備える第2の接着工程用装置と、
を備える、接着組立装置。
【請求項3】
前記治具ベースは、前記固定治具作用部が通過する開口部を有する、
請求項2記載の接着組立装置。
【請求項4】
前記第2の接着工程用装置は、
前記作業用開口部を開閉する床下ピット扉と、
前記作業用開口部を閉じている前記床下ピット扉をロックするロック部と、
を備える、
請求項2又は3記載の接着組立装置。
【請求項5】
前記床下作業ピットの内部空間と前記床面上の空間とを連通する排気路と、
前記排気路を介して前記床下作業ピットの内部空間の空気を前記床面上の空間に排気する排気装置と、
を備える請求項2ないし4のいずれか一に記載の接着組立装置。
【請求項6】
移動治具を有する台車を固定する第1の固定部と、
前記第1の固定部に固定された前記台車の移動治具に保持された接着剤が塗布された接着部品に接触し当該接触部品を動かす固定治具作用部と、当該接着部品を接着させるために当該接着部品に当接する接触位置と当該接触位置から離反する離反位置との間で前記固定治具作用部をスライド自在に保持するスライド機構と、
前記固定治具作用部を動かしてスライド変位させる固定治具駆動部と、
を備える第1の接着工程用装置。
【請求項7】
工場の床面に敷設されるレールの下方に設けられ前記床面に作業用開口部を形成する床下作業ピットと、
前記レールに載せられ前記床下作業ピットの上方に位置付けられた台車を固定する第2の固定部と、
を備える第2の接着工程用装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−56612(P2011−56612A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207999(P2009−207999)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000108188)セントラル自動車株式会社 (66)
【Fターム(参考)】