説明

接着芯地

【課題】高いボリューム感と心地よい手触り以外に、弾力性の点で改善された弾性特性および可逆的弾性を有するようにすると共に、この接着芯地が容易かつ低コストで製造可能な接着芯地の提供。
【解決手段】柔接合されて水噴射構造化されたパイル1またはフリースからなる担体を備え、担体は選択された面域のみが接合剤によって接合されているとともに少なくとも片面に粘着層4を備えており、担体は網目状の有孔構造2を有する、フロント接着芯地として使用可能な接着芯地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維産業分野において、特にフロント接着芯地として使用可能な接着芯地に関する。
【背景技術】
【0002】
接着芯地は衣服の目に触れない骨格である。それは適正なフィット感と最適な着用快適性を保証する。接着芯地は、その使用により、加工性を向上させると共に、機能性を高めて衣服を安定化させる。
【0003】
フロント接着芯地は衣料品の前身ごろの広域的な補強に使用される。それは担体(担持層)と担体上に塗布された溶融接着剤による接着コートとからなっている。接着剤塗布面は衣料品の製造過程で衣料品の前身ごろと貼り合わされて、衣料品の前身ごろを安定化させ、形態安定性を保証する。
【0004】
紳士用衣料分野において、特にスーツおよびジャケットの場合、特に、フロント接着芯地に求められる要件は、広範囲かつ高レベルである。このことは、多様な要件を満たさなければならない接着芯地自体の担体に対して要求される。
【0005】
担体に求められる重要な要件は、繊維らしい心地よい手触り、形態保持にとって非常に優れた補強性、軽量にして高いボリューム感ならびに特に緯糸方向の高い弾性である。繊維らしい心地よい手触りは高級衣料品加工にとって基本的な必要条件である。
【0006】
接着芯地の優れた補強性は紳士用衣料の場合、正装用衣装たとえばスーツに関係することが多いことから、特に重要である。紳士用衣料の場合には、特に大きなサイズの既製服においては、そのような衣料品の適正な外観を確保するために、十分な安定性と型崩れのなさが保証されていなければならない。
【0007】
接着芯地の高いボリューム感も特に紳士用衣料品の場合、非常に重要である。スーツの内部構造は30個までに及ぶことのある個々のバーツから構成されていることがあり、しかも、これらの個々の構造要素の存在は衣料品の表地の外面にはっきり現れてはならないからである。したがって、外面にこうした形跡が現れることを確実に防止するため、接着芯地は高いボリューム感を有していなければならない。
【0008】
最近の表地は一般に、少なくとも1つの方向に弾性を有しており、さらにもう1つの方向にも弾性を有していることも少なくない。これは高度な着用快適性を生み出すと共に、身体にフィットした仕立てを可能にする。接着芯地が高い弾性を有することにより、それはできるだけ多様な表地に自在にフィットすることができるようになる。
表地そのものがますます軽量化されてきているために、接着芯地の軽量性もこの間ますます意義を増してきている。さらに、軽量性は接着芯地の使用材料の節減と共に、コスト節減も意味している。
【0009】
紳士用衣料のフロント接着芯地の担体材料としては、今日ほぼ、織布または編布が使用されている。これらの織布および編布は主に、経糸と緯糸に配置されテキスチャード加工されたポリエステルフィラメントからなっている。これらの織布および編布は、優れた補強性、高いボリューム感ならびに、テキスチャード加工された糸の縮絨による優れた弾性およびこれに相応した編織構造をもたらす。これらの担体への接着コートのコーティングは常用のコーティング法、ただし特に二重点コーティング法たとえば点滴法で行われる。
【0010】
上記の織布および編布の重量は通例、50g/m〜100g/mである。これらの製品は市場に受け入れられ、容易に入手可能である。ただし、フィラメントがテキスチャード加工されていることにより、接着芯地の表面にはソフトで繊維らしい手触りを生み出すと考えられる繊維端が存在していないために、これらの編織布の触感はその構造に起因してどちらかといえば粗く、人工的なものである。
【0011】
こうした手触りの短所を取り除くために、たとえばドイツ特許公報第19644111号(特許文献1)あるいはドイツ特許公報第19904265号(特許文献2)に記載されているように、さまざまな試みが行われた。しかしながら、これらの方法はいずれも実際に市場に普及することはなかった。
【0012】
さらに、上記の織布および編布の短所は、使用されるテキスチャード加工されたポリエステル糸がバージンPESチップから製造される点にある。したがって、持続的な資源保護対策としてのリサイクル材料の使用は不可能である。さらに、将来的には、バージンPESチップの使用によるコスト上のデメリットが招来されよう。
【0013】
またさらに、繊維製面状構造物を製造する方法としての編織工程は相対的に労働集約的である。
【0014】
これに対して、フリースをベースとした接着芯地の製造は上記に比較して大幅に効率的であると同時に非労働集約的である。ただし、編織用の糸からなるのではなく、繊維からなるフリース担体を有した接着芯地を衣料品とくに紳士用衣料品の前身ごろの補強という上述した目的に使用することは従来考慮されてきていなかった。
【0015】
フリースからなる担体は一般にサーモカレンダ法(Point Seal = PS法)で製造され、特に、たとえば縁・縫い目を補強するための小パーツとして、ズボンのウェストバンドとして、あるいは襟および袖口の補強に使用されている。
【0016】
フリースからなる担体を有する接着芯地を製造するためのさらに別の方法は、たとえば、ドイツ特許公開公報第102009010995号(特許文献3)、欧州特許公報第2207926号(特許文献4)ならびに国際公開公報第2009/059801号(特許文献5)から公知である。これらの文献に開示された接着芯地においては、フリースを接合するための接合剤の被着と粘着層の被着とは1つの作業工程で行われる。この場合、柔接合されたフリースまたはパイルをベースとした担体上に接合剤−ポリマー粒子−分散液が塗布される。この場合、ポリマー粒子は粘着層である。この分散液は、ポリマー粒子はパイルの表面上に残留する一方で、接合剤はパイルの表面から内部にしみ込むように設計されている。分散液の塗布に続いて行われる温度処理によって、パイルの乾燥、接合剤の架橋および粘着層ポリマー粒子の焼結が行われる。上記文献によれば、分散液は好ましくは網目状の点パターンで担体に被着される。このようにして製造された接着芯地は、ソフトな布状手触りと改善された弾性とを特徴としている。このような接着芯地はフリース担体をベースとしているために、容易で低コストな製造可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ特許公報第19644111号
【特許文献2】ドイツ特許公報第19904265号
【特許文献3】ドイツ特許公開公報第102009010995号
【特許文献4】欧州特許公報第2207926号
【特許文献5】国際特許公開公報第2009/059801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上述したタイプの接着芯地をさらに発展改良し、接着芯地が、高いボリューム感と心地よい手触り以外に、弾力性の点で改善された弾性特性および可逆的弾性を有するようにすると共に、この接着芯地が容易かつ低コストで製造可能なことである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明による、フロント接着芯地として使用可能な接着芯地は、柔接合されて水噴射構造化されたパイルまたはフリースからなる担体を備え前記担体は選択された面域のみが接合剤によって接合されているとともに少なくとも片面に粘着層を備えており、前記担体は網目状の有孔構造を有している。
【0020】
本発明によれば、繊維産業において特にフロント接着芯地として使用し得るように形成された接着芯地は、柔接合され、水噴射式テキスチャード加工されたパイルまたはフリースからなる担体を有している。この担体は選択された領域においてのみ接合剤で接合されており、少なくとも片面に粘着層を備えている。この担体は、本発明では、網目状の有孔構造を有している。
【0021】
驚くべきことに、水噴射式テキスチャード加工によってつくられた接着芯地の網目状の有孔構造は、接合剤による一定領域のみにおける接合と相まって、接着芯地に高い可逆的弾性と高い弾力性とを与え、しかも、こうした性質はフロント接着芯地に関連する領域にも生じていることが判明した。
【0022】
上記の担体は、本発明により、柔接合されたパイルまたはフリースからなっている。したがって、種々異なった強度で実施可能な圧縮固着法の実施後にも繊維がなおできるだけ高い可動性を有するあらゆる繊維製面状構造物は本発明の範囲に含まれる。たとえば、高い水圧が使用されようとも、一般に水噴射式圧縮固着されたフリースにも適用することができ、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0023】
本発明の趣旨による「構造化」ないし「水噴射式構造化」とは、水噴射により繊維製面状構造物中の繊維の配置を再編して、網目状の有孔パターンが形成されるようにすることを意味している。ただし、これらの孔は、本発明による効果を達成するためには、必ずしもまったく繊維が存在しない状態である必要はない。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、上記の有孔構造は、構造化させるスクリーンまたはステンシルを通じての水噴射法を用いて形成される。水噴射法はそれ自体公知であり、特に、フリースの圧縮固着特に予備圧縮固着に使用される。圧縮固着ないし予備圧縮固着に適用される一般的な水圧は約150barないし50bar以下である。本発明によるパイルないし柔接合されたフリースへの有孔構造の形成には、60〜120barの範囲の水圧が好適であることが判明した。
【0025】
柔接合されたパイルないしフリースに作用する噴射水によって、繊維の一部は脇へ押しのけられることが明らかである。これによって、担体内に有孔構造が形成され、予期した以上に高いボリューム感が招来される。こうした嵩高の体積は、接着芯地の総重量が等しい場合に、同重量の織布または編布に比較して40%程度ほど増大する。
【0026】
この場合、構造化(有孔構造の形成)は、パイルまたはフリースの予備圧縮固着の過程で行われるのが特に好ましい。これによって、特に効率的な方法実施が実現される。
【0027】
パイルの構造化には、一般に、多くのエネルギーと、たとえば水噴射法の場合において、ドイツ公開第102009010995号(特許文献3)に記載されているように、パイルの予備圧縮固着の達成にのみ使用される水圧よりも高い水圧が必要とされる。ただし、また同時に、パイルはより強度に予備圧縮固着されることになる。このことはフリース表面の耐摩耗性に好適な効果をもたらす。
【0028】
構造化と同時に予備圧縮固着が行われることにより、パイル自体は水噴射処理に連続して有孔構造が形成されていても十分に安定的であるために、直ちにプリントによって最終圧縮固着される必要はない。むしろ、構造化によって三次元構造化されたパイルは、乾燥されてロールに巻かれ、別個の第2の工程で常用のあらゆる芯地コーティング法によってコートされ、最後に圧縮固着されるようにすることができる。これは、接合剤のプリントおよび粘着ポリマーの塗布も、後置された工程で、フロント接着芯地に特に好ましい三重点または二重点法によって実施可能であることを意味している。
【0029】
水噴射法によるパイルの予備圧縮固着と構造化は、好ましくは、先ず第1の面に第1のスクリーンたとえば100メッシュスクリーンを経て水噴射吹きつけが行われるようにして実施される。これによって、パイルの第1の予備圧縮固着が達成され、その際に、パイルは一様かつ平滑な表面が得られる。この第1の予備接合に続いて、予備圧縮固着されたパイルの反対側の第2の面に、たとえば20メッシュスクリーンによって有孔構造を形成するための水噴射の吹きつけが行われる。
【0030】
スクリーンとしては、高圧エネルギー(HE)−水噴射処理において公知のメッシュスクリーンを使用することができる。これはワイヤ格子によってスクリーン構造が形成されるスクリーンドラムである。ワイヤの太さと断面積ならびにワイヤの素材は、得られるフリース体積を決定する一要素となる。
【0031】
本発明による接着芯地の製造には、経糸用に、メッシュスクリーンにとって有利な直径0.3mm〜1.0mmのワイヤおよび、緯糸用に、同じく0.2mm〜1.5mmのワイヤが思量される。VZスチール製、ブロンズ製、PETまたはその他のプラスチック製の丸形ワイヤおよび角形ワイヤが使用可能である。
【0032】
ただし、メッシュスクリーンに代えて、その他のスクリーン構造または固有のトポグラフィーと透水性を備えた有孔ステンシルも同じく構造化に使用可能であり、メッシュスクリーンと同様な効果が達成される。
【0033】
スクリーンまたはステンシルの特別な孔ジオメトリーによって所望の効果を達成することが可能である。これらの孔はたとえば、一般的な制限なしに、長方形または菱形として形成することができる。この場合、長方形の縦/横方向配列によって、予備圧縮固着されたパイルのさまざまに異なった伸び率が達成される。
【0034】
横方向に配置された長方形は縦方向に配置された長方形よりも高い縦方向伸びを生ずる。また、菱形は伸びに関してより一様である。
【0035】
パイルまたはフリースを製造するための繊維の配置はそれ自体公知の方法で行われる。そのために使用可能な方法は公知であり、特許文献中に数多く開示されている。本発明の好ましい実施形態において、繊維の配置(フリース配置)は縦・横方向で行われる。これにより、最終的に接合されたキャリア材料の、機械的伸びに関しての著しく高い弾性が達成される。
【0036】
縦方向配置された繊維の単位面積当たり重量と横方向配置された繊維の単位面積当たり重量との比は2:1〜1:4であるのが特に好ましく、あるいは100%横方向配置されてもよい。このような場合、20%超の可逆的な縦方向伸び率の達成が保証される。
【0037】
多層構造のパイルによって、完成材料に付加的な効果を与えることができる:
a) 横方向層の重量比率を高めることにより、縦方向の繊維の配向再編を減少させることができる。
b) 横方向層に比較的曲げ剛性の高い繊維(比較的太いPES(ポリエステル)繊維および/またはPA66(ポリアミド66)繊維)を使用することにより、芯地の横方向弾力性の改善がなされる。
c) 熱接合特性を有する表皮パイルの二成分繊維は、封止、芯地の深絞りに利用することができる。
【0038】
繊維材料としては、好ましくは、ポリエステル繊維が挙げられる。特に好ましくは、リサイクルPES(r−PET(リサイクルされたポリエチレンテレフタレート))繊維が使用される。リサイクルされたPESとその他の繊維との混合物も使用可能である。混合比は任意に選択することができる。したがって、本発明は原料の持続的な活用という課題も満たすことができる。
【0039】
本発明による接着芯地に特に適しているのは、11dtexまでの比較的高い繊維番手を有した繊維である。比較的太い繊維の使用により、本発明によってフリースに実現する比類のない高い弾力性がさらに高められる。
【0040】
本発明によれば、接合剤または粘着層あるいはその両方は担体の全面にではなく、選択された面域にのみ被着される。これによって、材料の柔らかさならびに弾力性が保証される。好ましくは、接合剤または粘着層あるいはその両方のポリマーは点パターンで担体に被着される。点パターンは規則的または不規則的に分布していてよい。点状に被着された接合剤は構造化されたフリースに遥かに高い可逆的な内部強度をもたらすが、同時に、繊維集成体内に自由に可動する、接合されていない繊維(域)が残される。さらに、数多くの接合剤被着点によって、構造化されたフリース中における繊維の不可逆的な変位は阻止される。これによって、構造化されたフリースは高い可逆的弾性を得る。それゆえ、弾性ある接着芯地にとって不可欠な伸び率が経糸方向で10%、緯糸方向で20%であれば、伸び時における非常に優れた可逆的復元性が達成される。
【0041】
ただし、本発明は決して点構造に制限されるものではない。接合剤と熱可塑性ポリマーとからなる混合物は任意のジオメトリーたとえば線状、縞状、網状または格子状構造でも、方形、菱形または楕円形などの点状構造でも被着可能である。
【0042】
本発明による構造化されたフリースを使用する場合、その優れたボリューム感ならびに復元性によって、現在使用されている織布または編布に比較して20%〜30%の材料重量の節減が可能である。したがって、本発明による60g/mの有孔パターン・フリースはテキスチャード加工されたポリエステル糸からなる73g/mの織布または編布に取って代わることができる。
【0043】
本発明の特別な利点は、有孔構造の付与によって、高い単位面積重量を有したフリースが薄葉化、剛性化することなしに、15g/m〜120g/m、特に15g/m〜115g/mまでの広い重量範囲に及ぶ柔軟なフリース担体も製造することができる点にある。
【0044】
本発明は繊維をベースとした製品であり、本発明による接着芯地は表面に繊維を有するために、織布および編布によるフロント接着芯地の手触りの問題も解消される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、接合剤および粘着層の被着は、たとえばドイツ特許公開公報第102009010995号(特許文献3)に記載されているように、1工程で行われ、その際、それ自体公知の方法により、接合剤と粒子の形で存在する熱可塑性ポリマーとからなる好ましくは水性分散液が網目状の点構造でパイルに被着される。この場合、ポリマー粒子は粘着層である。この分散液は、ポリマー粒子はパイルの表面上に残留する一方で、接合剤はパイルの表面から内部にしみ込むように構成されている。分散液の塗布に続いて行われる温度処理によって、パイルの乾燥、接合剤の架橋および粘着層ポリマー粒子の焼結が行われる。
【0046】
上記芯地の乾燥には、使用される乾燥機のタイプが重要である。エア・スルー方法によるコンベア乾燥機はシリンダ乾燥機および吸引ドラム乾燥機に比較して好ましい。後に挙げた乾燥機ではフラットな製品がもたらされるからである。できるだけ高い乾燥機温度(>190℃)によって、完成された材料のボリューム感の安定化ならびに熱接着がもたらされる。
【0047】
高い剥離強さが求められる、たとえばフロント接着芯地として使用されるケース向けに、粘着層の被着はそれ自体公知の二重点コーティング法で実施される。二重点コーティング法では、最初の段階で、一般に接合剤からなり、剥がれ防止として機能する下側点がパイル上に被着され、次の段階で第2のステップでこの下側点の上に、本来の粘着層を形成する上側点が被着される。
【0048】
有孔構造を備えたフリースの点状圧縮固着を支援すると共に、粘着層とは反対側の耐摩耗性を高めるために、下側点の被着量は通例の二重点コーティングに要されるよりも多くてよい。接合剤の被着量が十分で、パイルないし柔接合されたフリースへの接合剤の少なくとも部分的な浸透が保証されていれば、担体の点状接合は下側点を介するだけで行われ、それ以上の接合剤被着は不要である。そのため、十分な可逆的弾性ならびに弾力性が保証されるように、表面に対して垂直な接合剤の侵入深度は30%以上、特に好ましくは40%以上、特に特に好ましくは70%以上でなければならない。
【0049】
本発明による接着芯地は、繊維産業分野、とくに高級衣料たとえば紳士用衣料分野においてフロント接着芯地として使用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】有孔構造を備えた本発明による接着芯地の概略的な平面図である。
【図2】本発明による接着芯地および非構造化接着芯地の縦方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【図3】本発明による接着芯地および非構造化接着芯地の横方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【図4】縦/横方向フリース配置および縦方向フリース配置による本発明による2種の接着芯地の縦方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【図5】縦/横方向フリース配置および縦方向フリース配置による本発明による2種の接着芯地の横方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【図6】縦/横方向フリース配置および縦方向フリース配置による本発明による2種の接着芯地の縦方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【図7】縦/横方向フリース配置および縦方向フリース配置による本発明による2種の接着芯地の横方向伸び時の弾性率による力/伸び・線図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の実施形態を、いくつかの図面および実施例を参照して説明する。
実施例1(PDB_3 cc47)
10g/m縦方向ウェブと20g/m横方向ウェブの形で配置された30g/mPES 1.7dtex/38mm(r−PET−リサイクルPES)繊維からなるパイルが予備架橋装置に装入された。ここで、100メッシュスクリーンにより、低圧水噴射(<50bar)による軽度の予備圧縮固着が行われた。予備架橋装置の第2のドラムに、20メッシュのブロンズスクリーン(経ワイヤ直径:0.63mm×0.33mm//緯ワイヤ直径:0.51mm//メッシュ×カウント[cm]:9.5/8.5//厚さ:1.09mm)が取り付けられた。バターン付与は中圧水噴射(<80bar)で行われた。次いで、湿潤したパイルにインラインで、
自発架橋性ブチル−/エチル−アクリレート接合剤分散液、tg=28℃ 9%
コポリアミド粉末60〜130μ、融点約115℃ 24%
湿潤剤 a//n/i 1%
増粘剤 2%
水 59%
からなる15g/m(乾燥時)の接合剤−ポリマー粒子−分散液が点状(52点/cm)にプリントされた。続いての乾燥ステップにおいて、繊維を含んだ接合剤点は架橋され、ポリマー粒子は焼結された。
達成された本発明による接着芯地は以下の特性を示した:
− 単位面積重量:45g/m
− 弾性率、縦/横方向:6.9Nによる縦方向伸び10%および1.5Nによる横方向伸び20%
− 復元性:15サイクル時の残留伸び:10%時、縦方向3.1%および20%時、横方向5.8%
− 弾力性はテキスチャード加工されたdtex 75 f48の経緯フィラメントによる60g/mの織布芯地と同等
− PES/BW織布への接着時に達成された剥離強さ、2.5bar/12s、は以下の通りであった:
当初120℃にて:15.6N/5cm//40℃洗濯12.6N/5cm//CR 11.9N/5cm
当初140℃にて:17.3N/5cm//40℃洗濯 13.8N/5cm//60℃洗濯 10.6N/5cm
【0052】
実施例2
100%PES 1.7dtex/38mm(r−PET)繊維からなる10g/m縦方向ウェブと、50%PES 1.7dtex/38mm(r−PET)、30%PES 3.3dtex/60mm(r−PET)、20%PES 6.7detx/60mmからなる15g/m横方向ウェブの形で編成されたパイルが予備架橋装置に装入された。ここで、100メッシュスクリーンにより、低圧水噴射(<50bar)による軽度の予備圧縮固着が行われた。予備架橋装置の第2のドラムに、20メッシュのブロンズスクリーン(経ワイヤ直径: 0.63mm×0.33mm//緯ワイヤ直径:0.51mm//メッシュ×カウント[cm]:9.5/8.5//厚さ:1.09mm)が取り付けられた。構造化は中圧水噴射(<80bar)で行われた。湿潤したパイルはエア・スルー通気による3コンベア乾燥機にて180℃で乾燥され、予備接着され、この柔接合された20メッシュ・構造化されたフリースは、続いて、第2のステップでフラール状態にて水で湿潤され(吸湿100%)、次いで14g/m(乾燥コート時)の接合剤−ポリマー粒子−分散液が点状(72点/cm)にプリントされた。続いての乾燥ステップにおいて、繊維を含んだ接合剤被着点は架橋され、ポリマー粒子は焼結された。
達成された接着芯地は以下の特性を示した:
− 重量:39g/m
− 弾性率、縦/横方向:5.8Nによる縦方向伸び10%および1.9Nによる横方向伸び20%−復元性:15サイクル時の残留伸び:10%時、縦方向2.9%および20%時、横方向4.9%
− 弾力性はテキスチャード加工されたdtex 75 f48の経緯フィラメントによる60g/mの織布芯地と同等。ただしこの場合、横弾力性の方が高い。
− PES/BW織布への接着時に達成された剥離強さ、2.5bar/12s、は以下の通りであった:
当初120℃にて:13.3N/5cm//40℃洗濯 11.9N/5cm//CR 11.6N/5cm
当初140℃にて:15.7N/5cm//40℃洗濯 13.6N/5cm//60℃洗濯 11.2N/5cm
【0053】
実施例3
100% 1.9dtex PES繊維からなる、20メッシュ・構造化され、水噴射圧縮固着されたフリース35g/mに、欧州特許第1 162 304号明細書の記載と同様に、2ステップ法にてプリントペースト成分からなる9g/mの分散液がプリントされ、それに続いて、粒度分布80〜200μの13g/mの粘着層ポリマーが被着された。続いての乾燥ステップにおいて、2層粘着層は乾燥機中で焼結された。
達成された接着芯地は以下の特性を示した:
− 重量:57g/m
− 弾性率、縦/横方向:9.7Nによる縦方向伸び10%および3.1Nによる横方向伸び20%
− 復元性:15サイクル時の残留伸び:10%時、縦方向3.6%および20%時、横方向5.6%
− 弾力性はテキスチャード加工されたdtex 75 f48の経緯フィラメントによる70g/mの織布芯地と同等
− PES/BW織布への接着時に達成された剥離強さ、2.5bar/12s、は以下の通りであった:
当初120℃にて:17.4/5cm//40℃洗濯17.0N/5cm//CR 16.2N/5cm
当初140℃にて:17.7N/5cm//40℃洗濯 20.9N/5cm//60℃洗濯 17.4N/5cm
【0054】
図1には、縦および横方向配置された繊維からなるパイル(またはフリース)1が模式的に示されている。パイル1は本発明により有孔構造を有している。パイル1に形成された孔2は網目の形に配置されている。さらに、図1から、不規則な点構造をなして配置され、パイル1を選択された面域で接合すると同時に粘着層ポリマー粒子4を担持する接合点3が理解できる。多数の接合点3の間を占める面域において、繊維は自由に可動することができる。この効果はさらに有孔構造によって増強される。それゆえ、この材料は高い弾性を有する。
【0055】
図2および3は、実施例1に示した本発明による接着芯地に対する構造化が力/伸び・線図に及ぼす影響と、非構造化接着芯地(第2のHEパッセージにて100メッシュスクリーンにより構造化、ただしその他については同様に製造された対照接着芯地)(PDB_1 cc45)が力/伸び・線図に及ぼす影響とを示したものである。図から、非構造化フリースは構造化されたフリースよりも遥かに高い力のもとで縦方向および横方向に伸びることができる旨看取される。伸縮性は構造化によって容易化され、本発明による接着芯地においては弾性伸び率の割合が高められる。
【0056】
図4および5は、フリース配置が実施例1の接着芯地の力/伸び・挙動と、縦方向にのみ配置され、その他の点では同様に製造された対照接着芯地(PDB_3 ra48)の力/伸び・挙動とに及ぼす影響をそれぞれ示したものである。図から、縦配向されて構造化されたフリースは実施例1に示した縦/横配向されて構造化されたフリースよりも遥かに高い力のもとで縦方向に伸びることができる旨看取される。伸縮性は縦/横方向の繊維配置によって容易化される。さらに、縦配向されて構造化されたフリースは−実施例1の縦/横方向フリース配置による接着芯地とは異なり−横方向に極めて容易な伸びを有することが理解できる。ただし、この容易な伸びは復元力をもたらさないので、望ましくない。
【0057】
図6および7は、担体への接合剤の侵入深度が本発明による2種の接着芯地の力/伸び・挙動に及ぼす影響を示したものである。図には、表面に対して垂直をなす30%および78%の侵入深度時の最大引張り強さの値が表されている。
【0058】
三重または二重点コーティングにおいては、手触りの硬化がもたらされるために、下側点の位置はプリント時にパイル中に深く沈みすぎないことが望ましい。ただし、同時に、プリントされた接合剤による侵入接合度が低い場合には、フリースの強度も減少する。
強度/最大引張り強さの低下は構造化されたフリースの弾性伸びの可逆性を低下させる。
図から、30%の侵入深度で圧縮固着されたフリースは、低い伸び時に、78%の侵入深度で強度に侵入接合された接着芯地よりも低い縦方向強度を有することが理解できる。パイルの侵入接合度が低い場合には、繊維はいっそう容易に互いに横「滑り」する。この効果は横方向伸び時にはいっそう明確である。30%の侵入深度で圧縮固着された接着芯地には可逆的な復元力はわずかにしか存在しない。したがって、30%以上の侵入接合が好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1:パイル(フリース)
2:孔(有孔構造)
3:接合点
4:粘着層ポリマー粒子(粘着層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント接着芯地として使用可能な接着芯地であって、
柔接合されて水噴射構造化されたパイルまたはフリースからなる担体を備え
前記担体は選択された面域のみが接合剤によって接合されているとともに少なくとも片面に粘着層を備えており、前記担体は網目状の有孔構造を有する接着芯地。
【請求項2】
前記有孔構造は構造化させるスクリーンまたはステンシルを通じての水噴射法を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の接着芯地。
【請求項3】
前記接合剤または前記粘着層あるいはその両方は網目状の規則的または不規則な点パターンで被着されることを特徴とする請求項1または2に記載の接着芯地。
【請求項4】
前記パイルまたはフリースは縦方向配置された少なくとも1つの繊維層と横方向配置された少なくとも1つの繊維層とによって多層的に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の接着芯地。
【請求項5】
前記粘着層被着点は下側点と上側点とを有する二重点として形成されており、前記下側点は接合剤を前記上側点は熱可塑性ポリマーをそれぞれ含んでいることを特徴とする請求項4に記載の接着芯地。
【請求項6】
前記二重点は、最初の段階で前記接合剤が前記担体に被着され、次の段階で前記熱可塑性ポリマーが前記接合剤の上に被着される少なくとも2段式二重点法によって形成されることを特徴とする請求項5に記載の接着芯地。
【請求項7】
前記二重点は、前記パイルまたはフリースに接合剤−ポリマー粒子−分散液を塗布することにより形成され、その際、前記接合剤が少なくとも部分的に前記パイル中に侵入して前記下側点を形成し、前記熱可塑性ポリマーからなる粒子は前記パイルの表面に残留して前記上側点を形成することを特徴とする請求項5に記載の接着芯地。
【請求項8】
前記接合剤は、前記下側点だけで前記パイルないし柔接合されたフリースの接合が達成されるだけの量であって、それ以上の量の接合剤を使用することなく、前記下側点に被着されることを特徴とする請求項7に記載の接着芯地。
【請求項9】
前記担体は、リサイクルされたポリエチレンテレフタレート繊維からなることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の接着芯地。
【請求項10】
前記担体の単位面積重量は15g/m〜120g/mであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の接着芯地。
【請求項11】
紳士用衣料等におけるフロント芯地として使用される請求項1から10のいずれか1項記載の接着芯地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53399(P2013−53399A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191102(P2012−191102)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】