説明

接着部材用組成物及び接着部材

【課題】
本発明は、前記状況に鑑み、透明性、接着性、高温高湿度における接着信頼性、リワーク性、柔軟性に優れ、実質的に酸基を含まないため耐腐食性が良好な接着部材を提供することを課題とする。
【解決手段】
不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、炭素数8〜18のアルキル(メタ)アクリレート(C)、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(D)、及び光重合開始剤(E)を含有する接着部材用組成物(F)を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着部材用組成物及び当該接着部材用組成物を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビやパソコンのモニターや、スマートフォンやタブレット端末に代表される様々な情報端末のタッチパネルディスプレイなどの液晶モジュールを用いた画像表示装置が広く用いられるようになってきている。これら画像表示装置の製造では、液晶モジュールと、偏光板や位相差板などの各種光学部材、タッチパネルモジュールなどの入力装置、カバーレンズ等の保護部材を貼り合せていく必要がある。このため、様々な貼り合せの方法が開発されてきているが、近年は基材レスの透明な両面接着シートによる手法や(例えば、特許文献1参照)、硬化性接着剤を各種モジュールや光学部材等の間に充填し、光や熱により硬化させることで貼り合せる手法など(例えば、特許文献2参照)、全面貼り合せが主流となりつつある。
【0003】
なかでも基材レスの透明な両面接着シートのような接着部材による貼り合わせは、タッチパネルディスプレイ等に広く用いられており、スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、接着力以外にも様々な機能が求められる様になっている。
【0004】
例えば、両面接着シートによる貼り合せでは、泡噛みや異物の混入、貼り合せ位置のずれなどにより不良品が出易い問題があるため、不良品の接着シートを剥離して高価な液晶モジュールやタッチパネルモジュールを再利用するためリワーク性が求められている。またスマートフォンやタブレット端末など携帯する情報端末に使用されることが多いため、落下の衝撃などへの耐性や高温高湿度環境でも接着部分の剥離や、接着部材の白濁等の変色等への耐性などすぐれた接着信頼性が求められている。他にもタッチパネルモジュールに使用されるITOフィルムやITOガラスなどの透明導電膜を腐食させないための耐腐食性や、画面の歪みを減らし画像表示性の向上を図るための応力緩和性、VOCや臭気の発生を抑制することなどが求められている。
【0005】
VOCや臭気の発生を抑制するためには、両面接着シートにモノマー混合物を活性エネルギー線により重合する感光性樹脂を用いることが一般的である。また、接着信頼性と応力緩和性を両立させるためにアクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーを含有させた組成物を用いることが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)が、耐腐食性に問題があった。
【0006】
一方で耐腐食性を考慮し、実質的に酸価を有しない組成物を用いる接着部材も検討され、アミノシラン化合物を使用して接着信頼性と応力緩和性を両立させることが提案されている(例えば、特許文献5参照)が、アミノシラン化合物を使用するため接着部材が黄変しやすい問題がある。また、ウレタンアクリレートと親水性モノマーの組み合わせで接着信頼性を持たせることが提案されている(特許文献6参照)が、親水性モノマーのガラス転移点が高いと接着性に劣り、ガラス転移点が低いとリワーク性に劣る接着部材となるため、接着性とリワーク性の両立が困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2009−186963号公報
【特許文献3】特開2010−189545号公報
【特許文献4】WO2011/010599号公報
【特許文献5】特開2011−74308号公報
【特許文献6】特開2011−63701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記状況に鑑み、透明性、接着性、高温高湿度における接着信頼性、リワーク性、柔軟性に優れ、実質的に酸基を含まないため耐腐食性が良好な接着部材を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、不飽和ポリウレタンプレポリマー、脂環式化合物、炭素数8から18の直鎖または分岐のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル基もしくはアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート、光重合開始剤を含有する組成物を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材とすることで、前記課題を解決することを見出した。
【0010】
具体的には、次のとおりの本発明によって解決できる。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)下記の不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)10〜50質量%、下記一般式(1)であらわされる脂環式化合物(B)5〜30質量%、下記一般式(2)であらわされるアルキル(メタ)アクリレート(C)10〜65質量%、下記一般式(3)であらわされるモノマー(D)5〜40質量%、光重合開始剤(E)0.2〜5.0質量%を含有することを特徴とする接着部材用組成物、
(A)水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー
(B) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (1)
はH又はCHであり、RはCHCH又はCHCH(CH)であり、Rはシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル、トリシクロアルキル、トリシクロアルケニルで示されるアルキル又はアルケニルであり、nは0又は1である。
(C) CH=C(R)−COO−R (2)
はH又はCHであり、Rは炭素数8から18の直鎖または分岐アルキルである。
(D) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (3)
はH又はCHであり、Rは炭素数2から4のアルキレンであり、RはH又は炭素数1から4のアルキルであり、nは1〜10である、
(2)不飽和ウレタンプレポリマー(A)の水添ポリブタジエン構造が、1,2−ポリブタジエン構造を80質量%以上有するポリブタジエンを水添して得られる水添ポリブタジエンに由来することを特徴とする(1)の接着部材用組成物、
(3)脂環式化合物(B)がビシクロアルキル基及び/又はトリシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の接着部材用組成物、
(4)酸価が1mgKOH/g以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の接着部材用組成物、
(5)不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して、5.0質量%以下のシランカップリング剤(G)を含むことを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の接着部材用組成物、
(6)不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して、100質量%以下の柔軟性付与剤(H)を含むことを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の接着部材用組成物、
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載の接着部材用組成物を活性エネルギー線により重合して得られるショアA硬度が1以上25以下であることを特徴とする接着部材、
(8)接着部材が両面接着シートであることを特徴とする(7)に記載の接着部材、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性、接着性、高温高湿度における接着信頼性、リワーク性、柔軟性に優れ、実質的に酸基を含まないため耐腐食性が良好な接着部材を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次のとおりである。
【0014】
本発明で使用できる不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)は、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリマーであり、水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)とを反応することにより得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーである。不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)に、水添ポリブタジエン構造を導入することで、柔軟性が向上した接着部材を提供することができる。また、得られる不飽和ポリウレタンプレポリマーは、疎水性の高い水添ポリブタジエン構造と極性の高いウレタン結合の両方を有するため、脂環式化合物(B)、炭素数8から18の直鎖または分岐のアルキル(メタ)アクリレート(C)といった疎水性の高いモノマー類と、ヒドロキシアルキル基もしくはアルキレングリコール鎖を有する親水性の高いモノマー(D)のいずれとも相溶性が良く、また、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)を重合性基として導入しているため共重合性も良好となる。そのため均質で強靭な硬化物となり、リワーク性が向上した接着部材を提供することができる。
【0015】
本発明における不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の使用量は、接着部材用組成物(F)中における含有量が、10質量%以上50質量%以下である。10質量%以上である場合には、接着部材用組成物(F)を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材のリワーク性が良好になるため好ましい。また、50質量%以下である場合には、接着部材の接着性が良好になるため好ましい。15質量%以上40質量%以下である場合にさらに接着性が良好となるため好ましい。
【0016】
本発明で用いられる不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)は公知の方法で製造することができる。例えば、反応温度20〜80℃で、水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させることによりポリマー末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体を合成し、これに、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)を付加させることで得ることができる。反応は、IR測定により2230cm−1付近のNCO特性吸収帯の痕跡がなくなるまで保温を継続することにより完結することができる。
【0017】
前記水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との反応において、触媒を使用しても良い。このような触媒としては、例えば、ジ−n−ブチルスズジラウレート、スタナスオクトエート、トリエチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチルアミン、ナフテン酸金属塩、オクチル酸鉛などのオクチル酸金属塩等が挙げられる。これら触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
このとき、水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との割合は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基(NCO基)と水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)の水酸基(OH基)とのモル比(NCO基/OH基)が1.05〜2.00の範囲で反応することでポリマー末端にNCO基を有するプレポリマー前駆体を合成し、これに、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)の水酸基(OH基)が、プレポリマー前駆体のポリマー鎖末端NCO基と当量になるように反応することが好ましい。水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)とポリイソシアネート(a2)と活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)との割合が、上記範囲を外れると、エチレン性不飽和結合の導入が不十分となり粘着部材の接着性、リワーク性、強度などの諸物性の低下を起こす場合や、過剰なイソシアネート基の残存による貯蔵安定性の低下を起こす場合がある。
【0019】
前記水酸基を有する水添ポリブタジエン(a1)を用いることで、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)とすることができ、得られる接着部材はゴム硬度の低い、柔軟な組成物として得られる。水酸基を有するポリブタジエンは、水添することでゴム硬度が低くなり、接着性、柔軟性が向上するため水添ポリブタジエンを用いることが好ましい。1,2−ポリブタジエン構造を80質量%以上有する水添ポリブタジエンが、接着性に優れるため好ましい。
【0020】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、ジイソシネート、トリイソシアネートなど2個以上のイソシアネート基を有する化合物であればよく、例えば、ジイソシネートとしては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−水添化キシリレンジイソシアネート、m−水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、トリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、及びそのイソシアヌレート体などが挙げられる。その中で、不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の製造が容易であることから、ジイソシアネートが好ましい。更に、未黄変タイプであるイソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0021】
前記活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物(a3)としては、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物であればよく、好ましくはヒドロキシ基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ或いはジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0022】
不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の数平均分子量は10,000以上50,000以下が好ましい。10,000未満となると、得られる接着部材のゴム硬度が高くなり、柔軟性に乏しくなる。そのため、柔軟な接着部材を得るためには数平均分子量は10,000以上が好ましい。数平均分子量が50,000を越えると、モノマー類との相溶性に乏しくなり、均一な接着部材用組成物(F)が得られにくくなるため、モノマー類との相溶性が良好な不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)とするには数平均分子量は50,000以下が好ましい。接着性、柔軟性、相溶性がより良好になるためプレポリマーの数平均分子量は、15,000〜30,000の範囲がさらに好ましい。ここでいう数平均分子量とは、GPC法を用いたポリスチレン換算平均分子量である。
【0023】
本発明における下記一般式(1)で示される脂環式化合物(B)を用いることで、得られる接着部材に十分な接着性を発現させることができる。
(B) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (1)
はH又はCHであり、RはCHCH又はCHCH(CH)であり、Rはシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル、トリシクロアルキル、トリシクロアルケニルで示されるアルキル又はアルケニルであり、nは0又は1である。
【0024】
前記一般式(1)で示される脂環式化合物(B)としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、モノ又はジ又はトリアルキルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基を有するモノマー類、シクロヘキセニル(メタ)アクリレート、モノ又はジ又はトリアルキルシクロヘキセニル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキセニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘプテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のシクロアルケニル基を有するモノマー類、[(1S,4S)−1,7,7−トリメチル−6−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル](メタ)アクリレート等のビシクロアルキル基を有するモノマー類、[(1S,4S)−1,7,7−トリメチル−6−ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル](メタ)アクリレート等のビシクロアルケニル基を有するモノマー類、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸(エチルオキシ)トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸2−メチルトリシクロ[3.3.1.1(3,7)] デカン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−エチルトリシクロ[3.3.1.1(3,7)] デカン−2−イル等のトリシクロアルキル基を有するモノマー類、(メタ)アクリル酸2−(3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−6−イル)エステル、(メタ)アクリル酸2−[(3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−6−イル)オキシ]エチルエステル等のトリシクロアルケニル基を有するモノマー類から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。その中で、特に、接着部材の接着性の観点から、前記一般式(1)で示される脂環式化合物(B)のRは炭素数6〜12のシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル、トリシクロアルキル、トリシクロアルケニルで示されるアルキル又はアルケニルであることが好ましく、ビシクロアルキル基を有するメタクリ酸エステル、トリシクロアルキル基を有するメタクリ酸エステルであることがさらに好ましく、具体的には[(1S,4S)−1,7,7−トリメチル−6−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル]メタクリレート、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イルが好ましい。
【0025】
本発明における脂環式化合物(B)の使用量は、接着部材用組成物(F)中における含有量が、5質量%以上30質量%以下である。5質量%以上である場合には、接着部材用組成物(F)を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材の接着性が良好になるため好ましい。また、30質量%以下である場合には、ゴム硬度が低く柔軟性が良好になり、リワーク性が向上するため好ましい。10質量%以上25質量%以下である場合にさらに接着性が良好となるため好ましい。
【0026】
本発明における下記一般式(2)であらわされるアルキル(メタ)アクリレートを用いることで、接着部材の接着性、柔軟性を両立させることができる。
(C) CH=C(R)−COO−R (2)
はH又はCHであり、Rは炭素数8から18の直鎖または分岐アルキルである。
【0027】
前記一般式(2)であらわされるアルキル(メタ)アクリレート(C)としては、炭素数8から18の直鎖または分岐アルキルアルキル(メタ)アクリレートであり、具体的には、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル等の群から選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。
【0028】
本発明におけるアルキル(メタ)アクリレート(C)の使用量は、接着部材用組成物(F)中における含有量が、10質量%以上65質量%以下である。10質量%以上である場合には、接着部材用組成物(F)の各構成成分間の相溶性が良好になり、接着部材用組成物(F)を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材の透明性が増すため好ましい。また、65質量%以下である場合には、接着部材の接着性が良好になるため好ましい。25質量%以上50質量%以下である場合にさらに接着性が良好となるため好ましい。
【0029】
本発明における下記一般式(3)であらわされるモノマー(D)を用いることで、接着性と高温高湿度における接着信頼性を両立させることができる。
(D) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (3)
はH又はCHであり、Rは炭素数2から4のアルキレンであり、RはH又は炭素数1から4のアルキルであり、nは1〜10である。
【0030】
前記一般式(3)で示されるモノマー(D)としては、アルキル基の炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールの炭素数が2〜4、アルキレングリコールの繰り返し単位が1〜10個であるポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシ基の炭素数が2〜4、アルキレングリコールの炭素数が2〜4、アルキレングリコールの繰り返し単位が1〜10個であるアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種以上の化合物である。その中で、特に接着部材の柔軟性、接着性の観点から、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
本発明におけるモノマー(D)の使用量は、接着部材用組成物(F)中における含有量が、5質量%以上40質量%以下である。5質量%以上である場合には、接着性と高温高湿度における接着信頼性が良好になるため好ましい。また、40質量%以下である場合には、接着部材用組成物(F)の相溶性が良好になり、接着部材用組成物(F)を活性エネルギー線により重合して得られる接着部材の透明性が増すため好ましい。15質量%以上30質量%以下である場合にさらに接着性が良好となるため好ましい。
【0032】
本発明における光重合開始剤(E)としては、光による重合開始剤であれば、特に限定はなく、例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンゾイルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、αアミノケトン類としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、高分子光開始剤としては、{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}のポリマーなどが挙げられる。これら光重合開始剤は2種以上を用いても良い。
【0033】
光重合開始剤(E)の添加量は、接着部材用組成物(F)中における含有量が、0.2質量%以上5質量%以下である。0.2質量%以上である場合には、光重合により粘着部材を製造する際、接着部材中の残存モノマー量が減少し、接着性、リワーク性が良好となるため好ましい。5質量%以下である場合には、ポットライフが長くなり、保管中にゲル化したりするといった問題を生じる場合が少なくなると共に、接着部材用組成物(F)を光重合した際の分子量が増大し、接着部材の接着性、リワーク性が増すため好ましい。0.5質量%以上3質量%以下である場合にさらに接着性が良好となるため好ましい。
【0034】
本発明における接着部材用組成物(F)は、さらに、本発明の接着部材用組成物(F)の調製に使用する成分として、シランカップリング剤(G)を使用することも可能である。シランカップリング剤(G)とは、所謂カップリング作用を有するシラン系化合物を意味し、具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシランおよびn−オクチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン、およびポリエーテル変性アルコキシシランなどが例示できる。特に前記各成分との親和性の点から、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびポリエーテル変性アルコキシシラン等の非イオン性のシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤は、接着部材用組成物(F)に透明に溶解する範囲内で使用することができ、不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して5.0質量%以下(0質量%より多く5.0質量%以下)の範囲が好ましい。
【0035】
本発明における接着部材用組成物(F)は、さらに、本発明の接着部材用組成物(F)の調製に使用する成分として、柔軟性付与剤(H)を使用することも可能である。柔軟性付与剤(H)としては、例えば、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、テルペン樹脂、炭化水素変性テルペン樹脂、これらの水素添加物等のテルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂の水素添加物等のテルペンフェノール系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ピュアーモノマー系石油樹脂、これらの水素添加物等の石油系樹脂、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、不均斉化ロジン、重合ロジン、これらロジンのグリセリンエステルやペンタエリスリトールエステル、これらの水素添加物等のロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、キシレン系樹脂、ダンマル、コーパル、シェラック等などが挙げられる。特に前記各成分との親和性、柔軟性を付与する点から、必要に応じて柔軟性付与剤(H)を使用する場合には、ポリブタジエンが好ましい。柔軟性付与剤の添加量は、接着部材用組成物(F)に透明に溶解する範囲内で使用することができ、不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して100質量%以下(0質量%より多く100質量%以下)の範囲が接着性を維持しつつ柔軟性を付与するため好ましく、柔軟性を付与するために使用する場合は、100質量%以下の範囲であれば接着性、リワーク性等を維持できる。
【0036】
本発明における接着部材用組成物(F)は、さらに、本発明の接着部材用組成物(F)の調製に使用する成分として、上記脂環式化合物(B)とアルキル(メタ)アクリレート(C)とモノマー(D)以外のエチレン性不飽和化合物(I)をアルキル(メタ)アクリレート(C)の一部に換えて使用することもできる。ここでいうエチレン性不飽和化合物としては、炭素数が1〜7の直鎖または分岐のアルキル(メタ)アクリレート、ハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、N−置換又はN,N’−置換した(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートやポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンアルコキシトリ(メタ)アクリレートやグリセリントリ(メタ)アクリレートやグリセリンアルコキシトリ(メタ)アクリレートやペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートやペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらエチレン性不飽和化合物は単独で用いても良いし、2種以上を併用することもできる。これらエチレン性不飽和化合物の添加量は、本発明による接着部材が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、接着部材用組成物(F)に対して5質量%以下の範囲が好ましい。
【0037】
さらに、本発明における接着部材用組成物(F)は必要に応じて他のウレタンアクリルオリゴマー、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、各種添加剤等を混合して使用できる。添加剤としては、熱重合禁止剤、老化防止剤、酸化防止剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤のような帯電防止剤、着色剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤などが挙げられる。これら各種樹脂や添加剤の添加量は、本発明による接着部材が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、接着部材用組成物(F)に対して5質量%以下の範囲が好ましい。
【0038】
熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、β−ナフトールなどが挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、本発明による接着部材が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されない。接着部材用組成物(F)に対して0.01質量%以上5質量%以下の範囲が好ましい。
【0039】
老化防止剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、及びヒンダードアミン系の化合物が挙げられる。老化防止剤の添加量は、本発明による接着部材が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されない。接着部材用組成物(F)に対して0.01質量%以上5質量%以下の範囲が好ましい。
【0040】
本発明における接着部材用組成物(F)は、不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)10〜70質量%と脂環式化合物(B)5〜30質量%とアルキル(メタ)アクリレート(C)10〜65質量%とモノマー(D)5〜40質量%と光重合開始剤(E)0.2〜5.0質量%、また必要に応じて(A)〜(E)の合計100質量%に対してシランカップリング剤(G)5.0質量%以下、柔軟性付与剤(H)100質量%以下を添加し、常温で、或いは加熱して均一に混合することにより得ることができる。また、接着部材の耐腐食性の観点から、接着部材の酸価は1mgKOH/g以下、具体的には接着部材用組成物(F)に酸基を含むモノマー、プレポリマー、シランカップリング剤、柔軟性付与剤を使用しないことが好ましい。
【0041】
接着部材用組成物(F)に酸基を含むモノマー、プレポリマー、シランカップリング剤、柔軟性付与剤を使用しないと、ITOフィルムやITOガラスなどの透明導電膜を腐食させないため、耐腐食性を良好とすることが可能となる。
【0042】
接着部材用組成物(F)を光重合させ得られたた接着部材は、ゴム硬度がJISゴム硬度でショアA硬度が1以上25以下とすることが好ましい。接着部材のゴム硬度がショアA硬度1未満の場合に比べ、ショアA硬度が1以上25以下とした場合は貼り合わせ時の圧力による接着部材の変形が抑制され、正確な接着が可能となるため好ましく、また接着部材を剥離する必要が生じた場合、変形が抑制されリワーク性が良好となるため好ましい。接着部材のゴム硬度がショアA硬度25よりも大きい場合に比べ、ショア硬度が1以上25以下とした場合は接着部材の接着性が増し、また耐衝撃吸収性などが良好になるため好ましい。
【0043】
本発明の接着部材用組成物(F)の粘度は特に定めるものではないが、25℃で100〜25000mPa・sの範囲であることが好ましい。100mPa・sより低いと接着部材製造時に膜厚精度が低下する場合がある。25000mPa・sを超えると、使用前に加温等の前処理が必用となる場合がある。
【0044】
本発明の活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線などの活性光または電子線などを指す。活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。活性エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、電子線加速装置、放射性元素などの線源が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。
【0046】
<製造例1>[不飽和プレポリマー(A−1)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたセパラフラスコに水酸基価 47.6mgKOH/g数平均分子量2100の末端水酸基を有する水添ポリブタジエン(GI−2000 日本曹達株式会社製)(a1−1)85.11質量部、及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略することがある)0.05質量部を仕込み、そこにポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略することがある(a2−1))10.84質量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、60℃で3時間反応させ、プレポリマー前駆体を得た。更に、この反応物に、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(a3−1)(以下、HEMAと略することがある)3.96質量部、及び触媒としてジブチルスズジラウレート(以下、DBSLと略することがある)0.04質量部を添加し、80℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−1)を得た。
【0047】
<製造例2〜5>[不飽和プレポリマー(A−2)〜(A−5)の製造]
表1に示した組成で、製造例1と同様の操作を行うことにより、表1に示す数平均分子量の水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−2)〜(A−5)を得た。
【0048】

【表1】

【0049】
表1中の略号の説明
(a1−1):数平均分子量2100、水酸基価47.6mgKOH/g、1,2−ポリブタジエン構造が80質量%以上有するポリブタジエンを水添して得られる水酸基を有する水添ポリブタジエン
GI−2000(日本曹達株式会社製)
(a1−2):数平均分子量3100、水酸基価29.0mgKOH/g、1,2−ポリブタジエン構造が80質量%未満有するポリブタジエンを水添して得られる水酸基を有する水添ポリブタジエン
Krasol HLBH−P3000(Sartomer社製)
(a2−1):イソホロンジイソシアネート
(a2−2):1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
(a3−1):2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(a3−2):2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
(a3−3):ポリプロピレングリコール(n=5)モノメタクリル酸エステル(分子量376)
(a3−4):ポリエチレングリコール(n=6)モノメタクリル酸エステル(分子量350)
BHT:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
DBSL:ジブチルスズジラウレート
【0050】
<製造例6>[不飽和プレポリマー(K−1)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたセパラフラスコに水酸基価 50.0mgKOH/g数平均分子量2000の末端水酸基を有する未水添のポリブタジエン(G−2000 日本曹達株式会社製)81.38質量部、及び熱重合禁止剤としてBHT 0.05質量部を仕込み、そこにポリイソシアネートとしてIPDI(a2−1)10.08質量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、60℃で3時間反応させ、プレポリマー前駆体を得た。更に、この反応物に、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物としてポリプロピレングリコールモノメタクリル酸エステル(a3−2)(以下、PPMAと略することがある)8.45質量部、及び触媒としてDBSL 0.04質量部を添加し、80℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、数平均分子量30000の未水添の不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−1)を得た。
【0051】
<製造例7>[不飽和プレポリマー(K−2)の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた4つ口セパラフラスコに酢酸エチル100質量部を入れ、窒素雰囲気下、加熱し酢酸エチルを還流させた。次に2−エチルヘキシルアクリレート98.8質量部、アクリル酸1.0質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.06質量部、酢酸エチル20質量部の混合溶液を5時間かけて、酢酸エチル還流下において滴下し、滴下終了後3時間反応させ酸価3.5mgKOH/gのプレポリマー溶液を得た。プレポリマー溶液に熱重合禁止剤としてBHT 0.1質量部を、触媒としてトリフェニルフォスフィン0.1質量部を反応容器に仕込み、そこにグリシジルメタクリレート2.0質量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、80℃で8時間反応させ、酸価が1.0mgKOH/g以下になったことを確認した。その後、酢酸エチルを留去した後、反応容器を冷却し、数平均分子量30000の不飽和ポリアクリルプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−2)を得た。
【0052】
<製造例8> [不飽和プレポリマー(K−3)の製造]
水酸基価 56.0mgKOH/g、数平均分子量2000のプロピレングリコール 79.61質量部、及び熱重合禁止剤としてBHT 0.05質量部を反応容器に仕込み、そこにポリイソシアネートとしてIPDI 11.04質量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、60℃で3時間反応させ、プレポリマー前駆体を得た。更に、この反応物に、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物としてPPMA 9.26質量部、及び触媒としてDBSL 0.04質量部を添加し、80℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、数平均分子量20000の水添ポリブタジエン構造を含まないポリエーテル系ポリウレタンを使用した不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−3)を得た。
【0053】
<製造例9> [不飽和プレポリマー(K−4)の製造]
水酸基価 28.7mgKOH/g、数平均分子量4000のポリ[(3−メチル−1,5−ペンタンジオール)−alt−(アジピン酸)] 85.46質量部、及びBHT 0.05質量部を反応容器に仕込み、そこにポリイソシアネートとしてIPDI 6.81質量部を添加し、よく攪拌しながら窒素雰囲気中、60℃で3時間反応させ、プレポリマー前駆体を得た。更に、この反応物に、活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合を分子内にともに有する化合物としてPPMA 7.64質量部、及び触媒としてDBSL0.04質量部を添加し、80℃で3時間反応して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、数平均分子量21000の水添ポリブタジエン構造を含まないポリエステル系ポリウレタンを使用した不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−4)を得た。
【0054】
<実施例1>
製造例1で製造した不飽和ポリウレタンプレポリマー(A−1)50.0質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イル(B−1)19.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(C−1)10.0質量部、2−メトキシエチルアクリレート(D−1)20.0質量部、光重合開始剤に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(E−1)1.0質量部をそれぞれ容器に仕込み、約60℃で1時間攪拌することにより、均一透明な接着部材用組成物(F−1)を得た。
【0055】
<実施例2〜30>
表2に示した組成に変更する以外は、実施例1と同様にして接着部材用組成物(F−2)〜(F−30)を得た。
【0056】
<比較例1>
製造例7で製造した不飽和プレポリマー(K−1)30.0質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イル(B−1)14.0質量部、アクリル酸2−エチルヘキシル(C−1)35.0質量部、2−メトキシエチルアクリレート(D−1)20.0質量部、光重合開始剤に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(E−1)1.0質量部をそれぞれ容器に仕込み、約60℃で1時間攪拌することにより、均一透明な比較例用接着部材用組成物(J−1)を得た。
【0057】
<比較例2〜16>
表3に示した組成に変更する以外は、比較例1と同様にして比較例用接着部材用組成物(J−2)〜(J−16)を得た。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
表2及び表3中の略号の説明
A:不飽和プレポリマー
B: CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (1)
はH又はCHであり、RはCHCH又はCHCH(CH)であり、Rはシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル、トリシクロアルキル、トリシクロアルケニルで示されるアルキル又はアルケニルであり、nは0又は1である。
C: CH=C(R)−COO−R (2)
はH又はCHであり、Rは炭素数8から18の直鎖または分岐アルキルである。
(D): CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (3)
はH又はCHであり、Rは炭素数2から4のアルキレンであり、RはH又は炭素数1から4の直鎖または分岐アルキルであり、nは1〜10である。
E:光重合開始剤
G:シランカップリング剤
H:柔軟性付与剤
I:(B)〜(D)以外のエチレン性不飽和単量体

(B−1):メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン−8−イル
(B−2):シクロヘキシルメタクリレート
(B−3):[(1S,4S)−1,7,7−トリメチル−6−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル]アクリレート
(B−4):[(1S,4S)−1,7,7−トリメチル−6−ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル]メタクリレート
(B−5):メタクリル酸2−[(3a,4,5,6,7,7a−ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−6−イル) オキシ]エチルエステル
(C−1):アクリル酸2−エチルヘキシル
(C−2):メタクリル酸n−ドデシル
(C−3):メタクリル酸n−オクタデシル
(C−4):メタクリル酸2−エチルヘキシル
(C−5):アクリル酸n−ドデシル
(D−1):2−メトキシエチルアクリレート、
(D−2):ポリプロピレングリコール(n=5)モノメタクリル酸エステル
(D−3):2−エトキシエチルメタクリレート
(D−4):2−ブトキシジエチレングリコールメタクリレート
(D−5):4−ヒドロキシブチルアクリレート
(E−1):1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(E−2):2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン
(G−1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(G−2):3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(H−1):数平均分子量1100のポリブタジエン B−1000(日本曹達株式会社製)
(H−2):テルペン系水素添加樹脂 クリアロンP85(ヤスハラケミカル株式会社製)
(I−1):メタクリル酸n−ブチル
(I−2):ポリプロピレングリコール(n=7)ジメタクリレート
(I−3):メタクリル酸メチル
(I−4):メタクリル酸t−ブチル
(I−5):アクリル酸ベンジル
(A−1)〜(A−5)、(K−1)〜(K−4)は、各々上記製造例1〜9で得られた不飽和プレポリマー(A−1)〜(A−5)、(K−1)〜(K−4)である。
【0061】
前記のようにして得られた接着部材用組成物(F−1)〜(F−30)、比較例用接着部材用組成物(J−1)〜(J−16)について以下の接着部材の基本物性評価を行なった。結果を表4及び表5に示す。
【0062】
<接着部材用組成物の酸価の測定>
得られた接着部材用組成物(F)または比較例用接着部材用組成物(J)をテトラヒドロフランに溶解し、JIS K0070の規定に準拠した水酸化カリウムによる酸塩基滴定法で測定した。酸価は全て0.1未満であり、耐腐食性が良好であることがわかる。
【0063】
<接着部材のゴム硬度の測定>
水平に設置したガラス板上に厚さ100μmのPETフィルムを密着させ、更に、その上に得られた接着部材用組成物(F)または比較例用接着部材用組成物(J)を40mm×40mm、厚さ3mmとなるように塗布し、更にその上に厚さ25μmのPETフィルムを重ね、波長360nmのケミカルランプ(照度約3mW/cm)を用いて、10分間露光することにより硬化させた。その後、PETフィルムを取り除いて作成した硬化物を2枚重ねにして、JIS K6253「ゴムの硬さ試験方法」により測定した。柔軟性は数値が低いほうが良好であることを示している。結果を表4及び表5に示す。
【0064】
<シート部材の作成>
水平に設置したガラス板上に厚さ50μmの剥離処理したPETフィルムを密着させ、更に、剥離処理面に得られた接着部材用組成物(F)または比較例用接着部材用組成物(J)を厚みは50μmとなるように塗布し、更にその上に厚さ38μmの剥離処理したPETフィルムを泡が入らないように貼合させ、波長360nmのケミカルランプ(照度約3mW/cm)を用いて、5分間露光することにより硬化させ、シート部材を作成した。
【0065】
<接着部材の透明性>
先に作製したシート部材を25mm×50mmの寸法に切断し、38μmの剥離処理したPETフィルムを剥がしてから、露出した接着部材面をスライドグラス(松浪硝子工業株式会社製「S1112」上に気泡の巻き込みなく貼り合わせた後、厚さ50μmの剥離処理したPETフィルムを剥離して試験片を作製した。この試験片のヘイズを、JIS K7136に準じて測定した。評価の際、スライドグラスのみのヘイズを測定値から差し引いてサンプルのヘイズ値とし、以下の基準に従って評価した。ヘイズ値が0.5%未満であれば、透明性の高い良好な結果であり、0.5以上1.0%未満でも、透明性には問題なく、実用レベルである。ヘイズ値が1.0以上5.0%未満となると接着部材に曇りが生じ、透明性に問題が生じた。5.0%以上では白濁が目視可能であり、実用には適さない結果である。結果を表4及び表5に示す。
○:0.5%未満
○△:0.5%以上1.0%未満
△:1.0%以上5.0%未満
×:5.0%以上
【0066】
<接着部材の接着強度、リワーク性の測定>
先に作製したシート部材を25×100mmの寸法に切断し、38μmの剥離処理したPETフィルムを剥がしてから、露出した接着部材面を厚さ75μmの易接着性PET支持体に貼り合わせた。次いで、50μmの剥離処理したPETフィルムを剥がして、露出した接着部材面を幅30mm×長さ100mm×厚み2.0mmのフロートガラス、および幅30mm×長さ100mm×厚み2.0mmのアクリル板(三菱レイヨン株式会社製の商品名「アクリライトMR−200」)上に気泡の巻き込みなく貼り合わせ、試験片とした。次に、試験片をオートクレーブに入れ、40℃、0.5MPaにて30分間の処理を行った。オートクレーブから取り出し、試験片を23℃湿度50%の条件下にそれぞれ24時間放置した後、各試験片を引張試験機に設置し、23℃湿度50%における180°剥離角度、300mm/分の剥離速度でガラス界面およびアクリル界面からシートを剥離させ、ガラスおよびアクリル板に対する接着強度を測定した。また180°方向に剥離した後、ガラス板表面の状態を目視で観察し、以下の基準に従ってリワーク性を評価した。その結果、ガラス板表面に曇りおよび糊残りが全くみられなければ、良好なリワーク性を示しており、ガラス板表面に曇りおよび糊残りがほとんど見られなかった場合も、実用レベルのリワーク性を示している。一方、ガラス板表面に曇り等が認められた場合、リワーク性に劣ることを示しており、糊残りが認められる場合、リワーク性は実用には適さない結果である。結果を表4及び表5に示す。
○:ガラス板表面に曇りおよび糊残りが全くみられない。
○△:ガラス板表面に曇り等がほとんど認められない。
△:ガラス板表面に曇り等が認められる。
×:ガラス板表面に糊残りが認められる。
【0067】
<接着部材の高温高湿度における接着信頼性>
先に作製したシート部材を25×100mmの寸法に切断し、38μmの剥離処理したPETフィルムを剥がしてから、露出した接着部材面を厚さ75μmの易接着性PET支持体に貼り合わせた。次いで、50μmの剥離処理したPETフィルムを剥がして、露出した接着部材面を幅30mm×長さ100mm×厚み2.0mmのフロートガラスに貼り合わせ、試験片とした。次に、試験片をオートクレーブに入れ、40℃、0.5MPaにて30分間の処理を行った。オートクレーブから取り出し、25℃湿度50%の条件下に24時間放置した後、65℃湿度90%の条件下に72時間放置した。72時間後に取り出した試験片の状態を目視で観察し、以下の基準に従って接着信頼性を評価した。その結果、試験片に発泡、白化、剥れが全くみられなければ、良好な接着信頼性を示しており、試験片に発泡、白化、剥れがほとんど認められない場合も、実用レベルの接着信頼性を示している。一方、試験片に発泡もしくは白化が認められる場合、接着信頼性に劣ることを示しており、試験片に剥れが認められる場合、接着信頼性は実用には適さない結果である。結果を表4及び表5に示す。
○:試験片に発泡、白化、剥れが全くみられない。
○△:試験片に発泡、白化、剥れがほとんど認められない。
△:試験片に発泡もしくは白化が認められる。
×:試験片に剥れが認められる。
【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
表4及び表5の結果から明らかなように、実施例1〜30において得られた接着部材用組成物(F−1)〜(F−30)を光硬化させた接着部材は、透明性、柔軟性、耐腐食性、接着性、リワーク性、接着信頼性の全ての評価が良好である。
【0071】
不飽和ポリウレタンプレポリマーの数平均分子量が同程度である実施例6と比較例1を比較すると、接着部材用組成物における、未水添の水酸基を有するポリブタジエンを用いた不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−1)を、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−4)に変更することで柔軟性、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0072】
不飽和プレポリマーの数平均分子量が同程度である実施例6と比較例2を比較すると、接着部材用組成物における、2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする不飽和ポリアクリルプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−2)を、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−4)に変更することで透明性、柔軟性、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0073】
不飽和ポリウレタンプレポリマーの数平均分子量が同程度である実施例5と比較例3を比較すると、接着部材用組成物における、水添ポリブタジエン構造がないポリエーテル系ポリウレタンを使用した不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−3)を、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−3)に変更することで、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0074】
不飽和ポリウレタンプレポリマーの数平均分子量が同程度である実施例5と比較例4を比較すると、接着部材用組成物における、水添ポリブタジエン構造がないポリエステル系ポリウレタンを使用した不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(K−4)を、水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマーである不飽和プレポリマー(A−3)に変更することで、透明性、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0075】
実施例と比較例5(水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の含有量が少ない場合)とを比較すると、接着部材用組成物において不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)を10〜50質量%含有することで、接着性、リワーク性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。一方、実施例と比較例6(水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)の含有量が多い場合)とを比較すると、接着部材用組成物において不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)を10〜50質量%含有することで、透明性、接着性、リワーク性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0076】
実施例と比較例7(脂環式化合物(B)の含有量が少ない場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を5〜30質量%含有することで、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。一方、実施例と比較例8(脂環式化合物(B)の含有量が多い場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を5〜30質量%含有することで、透明性、柔軟性、リワーク性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0077】
実施例5、14〜17と比較例9(脂環式化合物(B)の代わりに脂環構造を持たないモノマーであるメタクリル酸メチル(I−3)を用いた場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を含有することで、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0078】
実施例5、14〜17と比較例10(脂環式化合物(B)の代わりに脂環構造を持たないモノマーであるメタクリル酸t−ブチル(I−4)を用いた場合)及び比較例11(脂環式化合物(B)の代わりに芳香環構造を有するベンジルアクリレート(I−5)を用いた場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を含有することで、接着性、リワーク性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0079】
実施例5と比較例12(モノマー(D)の含有量が少ない場合)とを比較すると、接着部材用組成物においてモノマー(D)を5〜40質量%含有することで、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。一方、実施例5と比較例13(モノマー(D)の含有量が多い場合)とを比較すると、接着部材用組成物においてモノマー(D)を5〜40質量%含有することで、透明性、接着性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0080】
実施例5、18、19と比較例14(アルキル(メタ)アクリレート(C)の代わりにアルキル鎖長が短いメタクリル酸n−ブチル(I−1)を用いた場合)とを比較すると、接着部材用組成物においてアルキル(メタ)アクリレート(C)を含有することで、接着性、リワーク性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【0081】
実施例5、27、28と比較例16(光重合開始剤(E)の含有量が少ない場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を5〜30質量%含有することで、接着性、リワーク性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。一方、実施例18、25、26と比較例15(光重合開始剤(E)の含有量が多い場合)とを比較すると、接着部材用組成物において脂環式化合物(B)を5〜30質量%含有することで、接着性、リワーク性、接着信頼性が優れる接着部材を得ることが出来ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の接着部材用組成物は、透明性、接着性、高温高湿度における接着信頼性、リワーク性、柔軟性に優れ、実質的に酸基を含まない接着部材を得ることが出来る。また本発明の接着部材は透明性が高く、ガラスやアクリルへの接着性及びリワーク性に優れることから、液晶パネル、プラズマディスプレイ等の画像表示装置の製造の際に用いられる接着部材として使用できる。また実質的に酸基を含まないことから、耐腐食性に優れ、タッチパネル等の導電性素材が使用される光学パネルの製造の際に用いられる接着部材として使用できる。また活性エネルギー線等で硬化することから、様々な形状、厚みの接着部材を得ることが容易であり、汎用の接着部材が使用される広範な範囲において様々な用途に使用することもできるものと考えられえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)10〜50質量%、下記一般式(1)であらわされる脂環式化合物(B)5〜30質量%、下記一般式(2)であらわされるアルキル(メタ)アクリレート(C)10〜65質量%、下記一般式(3)であらわされるモノマー(D)5〜40質量%、光重合開始剤(E)0.2〜5.0質量%を含有することを特徴とする接着部材用組成物。
(A)水添ポリブタジエン構造を含む不飽和ポリウレタンプレポリマー
(B) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (1)
はH又はCHであり、RはCHCH又はCHCH(CH)であり、Rはシクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ビシクロアルケニル、トリシクロアルキル、トリシクロアルケニルで示されるアルキル又はアルケニルであり、nは0又は1である。
(C) CH=C(R)−COO−R (2)
はH又はCHであり、Rは炭素数8から18の直鎖または分岐アルキルである。
(D) CH=C(R)−COO−(R−O)n−R (3)
はH又はCHであり、Rは炭素数2から4のアルキレンであり、RはH又は炭素数1から4の直鎖または分岐アルキルであり、nは1〜10である。
【請求項2】
不飽和ウレタンプレポリマー(A)の水添ポリブタジエン構造が、1,2−ポリブタジエン構造を80質量%以上有するポリブタジエンを水添して得られる水添ポリブタジエンに由来することを特徴とする請求項1記載の接着部材用組成物。
【請求項3】
脂環式化合物(B)がビシクロアルキル基及び/又はトリシクロアルキル基を含有したメタクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の接着部材用組成物。
【請求項4】
酸価が1mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の接着部材用組成物。
【請求項5】
不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して、5.0質量%以下のシランカップリング剤(G)を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の接着部材用組成物。
【請求項6】
不飽和ポリウレタンプレポリマー(A)、脂環式化合物(B)、アルキル(メタ)アクリレート(C)、モノマー(D)、光重合開始剤(E)の合計100質量%に対して、100質量%以下の柔軟性付与剤(H)を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の接着部材用組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の接着部材用組成物を活性エネルギー線により重合して得られるショアA硬度が1以上25以下であることを特徴とする接着部材。
【請求項8】
接着部材が両面接着シートであることを特徴とする請求項7に記載の接着部材。

【公開番号】特開2013−49765(P2013−49765A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187833(P2011−187833)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】