説明

接続基板及びその製造方法

【課題】 特に異方性導電フィルムの形態を改良することで、電気的安定性に優れた接続基板及びその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 スパイラル接触子32の変形部32b、シート部材31に形成された貫通孔31b及び異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aが全て高さ方向(図示Z1−Z2方向)にて対向した位置関係にある。この結果、前記シート部材31に形成された貫通孔31bへの異方性導電フィルム35のはみ出し量を従来よりも少なく出来、より好ましくは前記異方性導電フィルム35が前記貫通孔31b内へ全くはみ出さない状態にでき、電気的安定性に優れた接触子を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばBGAやLGA等の接続端子を備えた電子部品に対して電気的に接続される接触子を備えた接続基板に係わり、特に、電気的安定性に優れた接続基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超微細化する電子部品の電気的試験を良好に行なうために、弾性接点としてのスパイラル接触子を有する接続基板が開発されている。また前記接続基板は電子部品と基板間などのコネクタ等としても使用できる。
【0003】
前記接続基板は、下記の特許文献1では、基台(プリント基板)の上に導電接着剤を介してスパイラル接触子を多数有するシート部材(レジストフィルム)が貼り付けられた構造である。特許文献1には、前記接続基板の製造方法が、図37〜図40に示されている。
【0004】
前記導電接着剤(異方性導電ペースト、ACP)は、異方性導電フィルム(ACF)に比べて安価であるという利点がある反面、あらかじめ接合面上に印刷しておく必要や高精細化等に限界があった。このため、前記基台とシート部材間の接合に異方性導電フィルム(Anisotoropic Conductive Film;ACF)を使用することが検討されている。
【特許文献1】特開2002−175859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1には、基台とシート部材間の接合に異方性導電フィルムを用いるとの記載は一切ない。
【0006】
ところで前記基台とシート部材間に異方性導電フィルムを用いた場合、次のような問題点があることがわかった。
【0007】
図8は従来の接続基板の製造過程を示す前記接続基板の部分断面図、図9は図8に示す製造過程を経て形成された接続基板の部分断面図であり、特に従来の問題点を説明するための説明図、である。
【0008】
図8に示す符号1は基台である。前記基台1上には配線パターン(図示しない)が設けられている。前記基台1上の全面には所定膜厚で形成された異方性導電フィルム2が設けられている。シート部材3は、絶縁性の樹脂フィルムであり、前記シート部材3には、スパイラル接触子4が取り付けられている。図8に示すように前記スパイラル接触子4は前記シート部材3への取付面を有する固定部4aと、前記固定部4aから延出形成され図示上方向に向けてスパイラル状に突出する変形部4bとを有して構成される。図8に示すように、前記シート部材3には貫通孔3aが形成されており、スパイラル接触子4は前記シート部材3の下面3bに固定部3bにて接合され、スパイラル接触子4の変形部4bの一部は前記貫通孔3aを介して前記シート部材3の上面3cから突出している。
【0009】
図8に示すように前記基台1を下プレート5上に置くとともに、前記異方性導電フィルム2上にシート部材3を載置する。さらに前記スパイラル接触子4の変形部4bと高さ方向にて対向する位置に凹み部6aが設けられた上プレート6を前記シート部材3上に対向させ、前記上プレート6を前記下プレート5方向に向けて熱プレスする。
【0010】
熱プレスにより異方性導電フィルム2は押し潰されるとともに熱硬化性のバインダー樹脂が硬化する。これにより前記シート部材3と基台1間が強固に接合されるとともに前記スパイラル接触子4の固定部4aと前記基台1上の配線パターン間が前記異方性導電フィルム2内に含まれる導電粒子によって導通状態になる。
【0011】
しかし図9に示すように、前記熱プレス時に押し潰された前記異方性導電フィルム2は、前記シート部材3に形成された貫通孔3a及び前記上プレート6に形成された凹み部6a内に、はみ出す(逃げ込む)。このとき前記貫通孔3a内に溜まる前記異方性導電フィルム2aの量は、元々図8の工程時に前記貫通孔3aの下に配置されていた異方性導電フィルムに合わせて、前記熱プレスによって押し潰されたことによって前記貫通孔3a内にはみ出す異方性導電フィルムが加わって多くなり図9のように前記異方性導電フィルム2aは盛り上がる。そして前記貫通孔3a内に溜まった異方性導電フィルム2aは、前記スパイラル接触子4の変形部4bに接着するなどして、弾性接点としての前記変形部4bの弾性力を妨げる恐れがあった。これにより前記接続基板を電子部品に対する電気的試験等に使用したときに、電子部品の端子と前記変形部4b間の接触状態が悪くなり、良好な電気的安定性を得ることができなかった。
【0012】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に異方性導電フィルムの形態を改良することで、電気的安定性に優れた接続基板及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における接続基板は、
変形部と固定部とを有する接触子と、前記接触子を固定保持するためのシート部材と、基台と、前記シート部材と基台間を接合するための異方性導電フィルムとを有し、
前記シート部材には貫通孔が設けられ、前記接触子の固定部は前記シート部材に接合され、前記変形部は前記貫通孔と高さ方向にて対向する位置に設けられ、
前記異方性導電フィルムには、前記シート部材に形成された貫通孔と高さ方向にて対向する位置に第1の貫通孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
上記では、接触子の変形部、前記シート部材に形成された貫通孔及び異方性導電フィルムに形成された第1の貫通孔が全て高さ方向にて対向した位置関係にある。この結果、前記シート部材に形成された貫通孔への異方性導電フィルムのはみ出し量を従来よりも少なく出来、電気的安定性に優れた接触子を提供することが出来る。
【0015】
また本発明では、前記第1の貫通孔は、前記シート部材に形成された貫通孔よりも大きいことが好ましい。かかる形態では、前記異方性導電フィルムが前記シート部材の貫通孔内へ、はみ出していないため、より電気的安定性に優れた接触子を提供することが出来る。
【0016】
また本発明では、前記異方性導電フィルムには、前記第1の貫通孔の側方に第2の貫通孔が設けられていることが好ましい。これにより、より前記シート部材に形成された貫通孔内への異方性導電フィルムのはみ出し量を少なく出来る。
【0017】
本発明における接続基板の製造方法は、
変形部と固定部とを有する接触子と、前記接触子を固定保持するためのシート部材と、基台と、前記シート部材と基台間を接合するための異方性導電フィルムとを有し、
前記シート部材に貫通孔を設け、前記接触子の固定部を前記シート部材に接合するとともに、前記変形部を前記貫通孔と高さ方向にて対向させ、
前記異方性導電フィルムに第1の貫通孔を形成し、前記第1の貫通孔が前記シート部材に形成された貫通孔と高さ方向にて対向するように、前記シート部材と基台との間に前記異方性導電フィルムを介在させ、
前記シート部材と基台間を熱圧着することを特徴とするものである。
【0018】
本発明では上記のように、前記異方性導電フィルムに第1の貫通孔を形成し、前記第1の貫通孔が前記シート部材に形成された貫通孔と高さ方向にて対向するように、前記シート部材と基台との間に前記異方性導電フィルムを介在させるので、熱圧着時に、押し潰された異方性導電フィルムが前記シート部材の貫通孔内にはみ出しても、そのはみ出し量を従来に比べて低減させることが出来る。
【0019】
また本発明では、前記第1の貫通孔を前記シート部材に形成された貫通孔よりも大きく形成することが好ましい。これにより、前記異方性導電フィルムの前記シート部材の貫通孔へのはみ出し量をより少なく出来、前記異方性導電フィルムが前記シート部材の貫通孔内へはみ出さない最適な形態をも作り出すことが出来る。
【0020】
また本発明では、前記第1の貫通孔の側方に第2の貫通孔を形成することが好ましい。前記第2の貫通孔の形成によって、前記熱圧着によって押し潰された異方性導電フィルムは、第1の貫通孔の孔径を小さくするように流動するのみならず、第2の貫通孔の孔径も小さくするように流動できるので、第1の貫通孔方向への流動量を少なく出来る。この結果、押し潰された異方性導電フィルムの前記シート部材の貫通孔内へのはみ出し量をより低減させることが出来る。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、前記シート部材に形成された貫通孔内への異方性導電フィルムのはみ出し量を従来よりも少なく出来、電気的安定性に優れた接触子を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は電子部品の動作を確認するための試験に用いられる検査装置を示す斜視図、図2はスパイラル接触子を示す平面図、図3は、接続基板の平面図、図4は、異方性導電フィルムの部分拡大平面図、図5は、図3に示すI−I線から切断し矢印方向から見た前記接続基板の部分拡大断面図、図6は本発明における接続基板の製造方法を説明するための一工程図(部分拡大断面図)、図7は図6の工程の次に行なわれる工程を示す一工程図(部分拡大断面図)、である。
【0023】
図1に示す検査装置10は、BGAやLGAなどからなる複数の外部接続部が接続面に設けられた半導体などの電子部品(被接触体)20を検査対象とするものである。
【0024】
図1に示すように、検査装置10はソケット11と、このソケット11の一方の縁部に設けられたひんじ部13を介して回動自在に支持されたカバー12とで構成されている。前記ソケット11およびカバー12は絶縁性の樹脂材料などで形成されている。前記ソケット11の他方の縁部には被ロック部14が形成され、カバー12の縁部にはロック部15が形成されている。
【0025】
前記ソケット11の中心には、図示Z方向に凹状に形成された装填部11Aが設けられており、この装填部11A内に半導体などの電子部品20が装着されるようになっている。またカバー12の内面の中央の位置には、電子部品20を図示下方に押し付ける凸形状の押圧部12aが前記装填部11Aに対向して設けられている。
【0026】
前記検査装置10の装填部11Aには、図5に示す接続基板16が設けられている。前記接続基板16は、基台30と、シート部材31と、スパイラル接触子32とを有して構成される。前記基台30は例えばガラスエポキシやPWBなどで、前記シート部材31はポリイミド等の樹脂シートで、スパイラル接触子32は、Ni,Au,Cu等の導電性材料の単層構造あるいは多層構造で形成されている。
【0027】
図2に示すように、スパイラル接触子32は、固定部32aと、前記固定部32aから延出形成され螺旋形状で形成された変形部32bとを有している。前記変形部32bは、外周側に巻き始端部32b1が設けられ、渦巻きの中心である内周側に巻き終端部32b2が設けられている。
【0028】
図2,図5に示すように前記スパイラル接触子32の固定部32aはシート部材31の下面31aに導電性接着剤等を介して接合されている。図5に示すように前記シート部材31には貫通孔31bが形成されており、前記シート部材31を真上からみたとき、少なくとも前記変形部32bの一部は前記貫通孔31bから露出している。前記スパイラル接触子32の変形部32bは、図5に示すように螺旋階段状に立体フォーミングされており、前記変形部32bの一部が前記シート部材31の貫通孔31bを介して前記シート部材31の上面31cから上方へ突出している。
【0029】
前記検査装置10の装填部11Aに電子部品20を組み込むと、電子部品20の接続端子等が前記変形部32b上に当接し、前記変形部32bを図示下方向へ押圧する。前記変形部32bは弾性力があるため前記押圧によって下方向へ弾性変性変形できる。このとき前記変形部32bは前記電子部品20の接続端子を包むように変形できるため、前記電子部品20の接続端子と前記変形部32b間の導通接続が良好なものとなる。
【0030】
図5に示すように、前記シート部材31と基台30との間には、異方性導電フィルム35が設けられている。前記異方性導電フィルム35は、前記シート部材31と基台30との間を接合するために設けられており、前記シート部材31と基台30との間は前記異方性導電フィルム35を介して熱圧着されている。
【0031】
図5に示すように、前記基台30上には前記スパイラル接触子32の固定部32aと高さ方向(図示Z1−Z2方向)にて対向する位置に電極部33が設けられている。前記電極部33の周囲には前記電極部33とほぼ同程度の膜厚の樹脂層34が設けられており、前記電極部33の上面33aと前記樹脂層34の上面34aとがほぼ同じ平坦化面になっている。なお図示していないが前記電極部33から延出する配線部の上面と前記樹脂層34の上面34aもほぼ同じ平坦化面となっている。また電極部33は図2に示すように、前記スパイラル接触子32の固定部32a下に高さ方向(図示Z1−Z2方向)にて対向するとともに少なくとも前記固定部32aの一部の側面からはみ出す程度の大きさで形成されている。図5に示すように前記電極部33と前記スパイラル接触子32の固定部32aとの間には異方性導電フィルム35が介在しており、前記異方性導電フィルム35内に含まれる導電粒子によって前記固定部32aと電極部33間が導通状態になっている。前記電極部33を少なくとも前記固定部32aの一部の側面からはみ出す程度の大きさで形成することで、前記電極部33上に前記スパイラル接触子32の固定部32aをオーバーラップさせて載せやすく、前記電極部33と固定部32a間の導通を良好なものにできる。
【0032】
図3は前記接続基板16を真上から見た平面図であるが、前記シート部材31に形成された貫通孔31bから本来見えるスパイラル接触子32の変形部32bは図面上、省略している。図3に示すように前記シート部材31には多数の貫通孔31bが設けられている。前記貫通孔31bは幅方向(図示X1−X2方向)及び長さ方向(Y1−Y2方向)にマトリックス状に多数形成されている。従って前記スパイラル接触子32の変形部32bも前記貫通孔31bと高さ方向にて対向する位置に、マトリックス状に多数設けられている。
【0033】
図2,図3,図5に示すように、前記異方性導電フィルム35には、シート部材31に形成された貫通孔31bと高さ方向(図示Z1−Z2方向)にて対向する位置に第1の貫通孔35aが形成されている。前記第1の貫通孔35aは、図2、図3および図5に示すように前記シート部材31に形成された貫通孔31bよりも大きいことが好ましい。図2,図3及び図5の実施形態では、前記貫通孔31b及び第1の貫通孔35aはともに円形状で形成されているから前記第1の貫通孔35aの径は前記貫通孔31bの径よりも大きくなっている。図2,図3に示すように、真上からみると、前記第1の貫通孔35a内に前記シート部材31の貫通孔31bが収まるため、前記シート部材31の貫通孔31bを通して前記異方性導電フィルム35が見えず、代わりに基台30上に形成された樹脂層34の表面が見える。前記第1の貫通孔35aは円形状に限定されず他の形状、例えば四角形状等であってもよい。
【0034】
このように本実施形態では、前記シート部材31の貫通孔31bから前記異方性導電フィルム35がはみ出していない。
【0035】
さらに前記異方性導電フィルム35には第2の貫通孔35bが形成されている。前記第2の貫通孔35bは図3に示すように前記第1の貫通孔35aの側方に形成されている。よって前記第2の貫通孔35bは、シート部材31に形成された貫通孔31bの側方に設けられていることになる。図3に示す実施形態では、前記第1の貫通孔35aと前記第2の貫通孔35b間に所定の間隔が空いているが、前記第1の貫通孔35aと前記第2の貫通孔35bとの間が一部繋がっていてもかまわない。
【0036】
図3に示す実施形態では前記第2の貫通孔35bは、斜め方向(例えばX1方向とY1方向との中間の方向)に向けて整列するシート部材31の貫通孔31b,31b(第1の貫通孔35a,35a)の間に設けられ、シート部材31の最外周に設けられた貫通孔31b(第1の貫通孔35a,35a)を除き、前記貫通孔31b(第1の貫通孔35a)の周囲には、ちょうど4個の第2の貫通孔35bが近接して設けられている。前記第2の貫通孔35bの配置は図3の実施形態に限定されるものはない。図4に示すように、幅方向(X1−X2方向)に向けて並ぶ第1の貫通孔35a間に第2の貫通孔35bが設けられていてもよいし、長さ方向(Y1−Y2方向)に向けて並ぶ第1の貫通孔35a間に第2の貫通孔35bが設けられていてもよい。ただし前記第2の貫通孔35bは、少なくとも前記貫通孔31b(第1の貫通孔35a)の両側側方に一つづつ設けられていることが好ましい。これにより、特に後述する効果(前記異方性導電フィルム35の前記貫通孔31b内へのはみ出しの抑制効果)をより適切に発揮できる。また、前記第2の貫通孔35bが、前記貫通孔31b(第1の貫通孔35a)の両側側方に一つづつ設けられている場合のように、第2の貫通孔35bが前記貫通孔31b(第1の貫通孔35a)の周囲に複数設けられている場合、複数の第2の貫通孔35bのそれぞれの中心と、前記貫通孔31b(第1の貫通孔35a)の中心とを結んだ線の長さが、全て同じ長さであることが本発明の効果をより適切に発揮できて好ましい。
【0037】
また前記第2の貫通孔35bは図3の実施形態では円形であったが図4のようにスリット形状の貫通孔35c(以下、スリット形状孔という)であってもよいし、あるいは四角形等、形は特に限定されない。前記スリット形状孔35cのように長さ方向(Y1−Y2方向)と幅方向(X1−X2方向)との長さが異なる場合、例えば図4のように長さ方向(Y1−Y2方向)に沿う第1の貫通孔35a(貫通孔31b)の幅方向(X1−X2方向)の側方に、前記長さ方向(図示Y1−Y2方向)へ前記スリット形状孔35cの長さの長いほうを向けて配置すると、限られた領域内に、効率良く前記スリット形状孔35cを配置できる。
【0038】
前記異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aは前記シート部材31に形成された貫通孔31bよりも大きく形成されているから前記貫通孔31bから前記異方性導電フィルム35は、はみ出しておらず、この結果、前記スパイラル接触子32の変形部32bが前記異方性導電フィルム35によって接着されるといったこと等がない。よって前記変形部32bは弾性接点として適切に弾性力を発揮し、電子部品20の下方向への押圧によって前記変形部32bが、前記電子部品20の接続端子の周囲を包み込むように適切に弾性変形でき、前記変形部32bと前記接続端子との導通接続が良好なものとなる。
【0039】
なお前記異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aが前記シート部材31に形成された貫通孔31bよりも小さくなっていてもよい。これによって前記異方性導電フィルム35の一部が前記貫通孔31bの真下に、はみ出した状態になるが、はみ出しても、はみ出した異方性導電フィルム35の膜厚は、前記シート部材31と基台30間に挟まれる異方性導電フィルム35の膜厚とほぼ同程度であり、従来の図9のように、はみ出した異方性導電フィルムが前記貫通孔内で盛り上がって堆積するのを抑制でき、従来に比べて、前記スパイラル接触子32の変形部32bが前記異方性導電フィルム35により接着されるといった不具合を避けることが出来る。
【0040】
前記異方性導電フィルム35に形成された第2の貫通孔35bは、特に、前記異方性導電フィルム35が熱圧着時に、前記シート部材31に形成された貫通孔31b内にはみ出すのを極力避けるための樹脂逃げ孔として機能しており、よって第2の貫通孔35bを設けることで、より適切に、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31に形成された貫通孔31b内にはみ出すことを抑制することが可能になる。
【0041】
本発明の接続基板の製造方法を図6,図7を用いて説明する。
図6に示すように下プレート40上に基台30を設置する。前記基台30の表面には電極部33が形成され、前記電極部33の周囲は樹脂層34で埋められ、前記電極部33の上面33aと前記樹脂層34の上面34aとは同一平面となっている。
【0042】
図6に示すように前記電極部33及び樹脂層34の上に、異方性導電フィルム35を貼り付ける。前記異方性導電フィルム35には、予め第1の貫通孔35aと第2の貫通孔35bとが設けられている。前記第1の貫通孔35aと第2の貫通孔35b間には所定の間隔が空けられている。図6に示す前記第1の貫通孔35aの径の大きさ(X1−X2方向への最大寸法)は、図5に示す異方性導電フィルム35の第1の貫通孔35aの径の大きさ(X1−X2方向への最大寸法)よりも大きい。図6は、前記異方性導電フィルム35に対し熱プレスを施す前だからである。同じように図6に示す異方性導電フィルム35の第2の貫通孔35bの径の大きさ(X1−X2方向への最大寸法)は、図5に示す異方性導電フィルム35の第2の貫通孔35bの径の大きさ(X1−X2方向への最大寸法)よりも大きくなっている。
【0043】
図6に示すように、シート部材31には貫通孔31bが形成されており、固定部32aと変形部32bとを有してなるスパイラル接触子32の前記固定部32aが前記シート部材31の下面31aに接合されているとともに、前記変形部32bの一部が前記シート部材31に形成された貫通孔31bを介して前記シート部材31の上面31cから上方へ向けて突出している。
【0044】
前記シート部材31を前記異方性導電フィルム35上に載置する。このとき、前シート部材31に形成された貫通孔31bが、異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aと高さ方向(図示Z1−Z2方向)に対向するように前記シート部材31の配置の位置を規制する。
【0045】
前記異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aの大きさは前記シート部材31に形成された貫通孔31bの大きさよりも大きくなっている。このため、図6のように前記異方性導電フィルム35の第1の貫通孔35a上に前記シート部材31の貫通孔31bをオーバーラップさせたとき、前記シート部材31の貫通孔31bは前記第1の貫通孔35a内に収まる状態となる。
【0046】
そして上プレート41を前記シート部材31上に配置する。前記上プレート41には前記シート部材31に形成された第1の貫通孔31bの位置に凹み部41aが形成されている。前記凹み部41aの深さ(Z1−Z2方向への長さ)は、少なくとも前記スパイラル接触子32の変形部32bの高さ寸法よりも大きくなければならない。
【0047】
そして前記上プレート41を前記下プレート40方向へ向けて押圧する。前記プレート40,41は加熱プレートであり、加圧と加熱が同時に行なわれる。
【0048】
図7に示すように、熱プレスによって前記異方性導電フィルム35は押し潰され、矢印Aに示すように第1の貫通孔35aの径の大きさを縮める方向に流動する。それと同時に前記異方性導電フィルム35は矢印Bに示すように第2の貫通孔35bの径の大きさを縮める方向にも流動する。
【0049】
上記の流動によって前記異方性導電フィルム35に形成された第1の貫通孔35aの径の大きさは図6の熱プレス前に比べて小さくなるが、図6のとき、前記第1の貫通孔35aの径の大きさや、熱プレス時の加圧力等を適宜調整することで、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31に形成された貫通孔31b内へはみ出すことを避けることが出来る。特に図6のように異方性導電フィルム35に第2の貫通孔35bを設けておくことで、異方性導電フィルム35は前記第2の貫通孔35bの径を縮める方向(矢印B方向)にも適切に広がるので、前記第1の貫通孔35aの径を縮める方向(矢印A方向)への前記異方性導電フィルム35の広がりは、前記第2の貫通孔35bを設けない場合に比べて小さく、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31に形成された貫通孔31b内にはみ出すのを適切に抑制することが出来る。
【0050】
ただし図7の工程終了後、前記異方性導電フィルム35が、前記シート部材31の貫通孔31b内へ若干はみ出してもよい。すなわちこのとき、前記異方性導電フィルム35の第1の貫通孔35aの径は、前記シート部材31の貫通孔31bの径よりも小さい状態になる。しかし、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31の貫通孔31b内へ若干、はみ出しても、はみ出した異方性導電フィルム35の膜厚は図7に示すシート部材31と基台30間に挟まれた状態の異方性導電フィルム35の膜厚とほとんど変らない。しかも異方性導電フィルム35がはみ出しても依然として前記異方性導電フィルム35には第1の貫通孔35aが残存する状態であり、前記シート部材31の貫通孔31b下全体に前記異方性導電フィルム35が延出しない。よってスパイラル接触子32の変形部32bにはみ出した異方性導電フィルム35が接着されるといった不具合は従来に比べて起き難くなり、従来に比べて電気的特性に優れた接続基板を製造することが可能になっている。
【0051】
前記熱プレスによって前記異方性導電フィルム35は硬化されるとともに、前記固定部32aと電極部33間が導電粒子を介して導通接続された状態になる。
【0052】
上記した熱プレスが終了したあと、前記下プレート40及び上プレート41を前記接続基板から取り外す。
【0053】
なお前記基台30の表面に形成された前記電極部33の上面33aと前記樹脂層34の上面34aとを同一平面にしていたが、これにより熱プレス時に、前記基台30表面全体に均一な押圧力を付加できる。すなわち前記樹脂層34を設けないと、基台30表面から突出する電極部33上での押圧力がほかの場所に比べて強くなりやすく、かかる場合、図7に示す矢印A方向に異方性導電フィルム35が広がりやすく、その結果、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31の貫通孔31bの直下にはみ出しやすくなるが、前記基台30表面を平坦化面にすることで押圧力が適切に分散され、矢印B方向にも異方性導電フィルム35が広がりやすくなり、極力、前記異方性導電フィルム35が前記シート部材31の貫通孔31bの直下にはみ出すのを抑制することが出来る。
【0054】
上記で説明した接続基板16は例えば図1に示す検査装置10内に組み込まれるものであるが、図1に示すような検査装置10以外にも電子機器の様々なアプリケーションに本発明の接続基板16を使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】電子部品の動作を確認するための試験に用いられる検査装置を示す斜視図、
【図2】スパイラル接触子を示す平面図、
【図3】接続基板の平面図、
【図4】異方性導電フィルムの部分拡大平面図、
【図5】図3に示すI−I線から切断し矢印方向から見た前記接続基板の部分拡大断面図、
【図6】本発明における接続基板の製造方法を説明するための一工程図(部分拡大断面図)、
【図7】図6の工程の次に行なわれる工程を示す一工程図(部分拡大断面図)、
【図8】従来の接続基板の製造過程を示す前記接続基板の部分断面図、
【図9】図8に示す製造過程を経て形成された接続基板の部分断面図であり、特に従来の問題点を説明するための説明図、
【符号の説明】
【0056】
10 検査装置
16 接続基板
30 基台
31 シート部材
31b 貫通孔
32 スパイラル接触子
32a 固定部
32b 変形部
33 電極部
35 異方性導電フィルム
35a 第1の貫通孔
35b 第2の貫通孔
40 下プレート
41 上プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形部と固定部とを有する接触子と、前記接触子を固定保持するためのシート部材と、基台と、前記シート部材と基台間を接合するための異方性導電フィルムとを有し、
前記シート部材には貫通孔が設けられ、前記接触子の固定部は前記シート部材に接合され、前記変形部は前記貫通孔と高さ方向にて対向する位置に設けられ、
前記異方性導電フィルムには、前記シート部材に形成された貫通孔と高さ方向にて対向する位置に第1の貫通孔が設けられていることを特徴とする接続基板。
【請求項2】
前記第1の貫通孔は、前記シート部材に形成された貫通孔よりも大きい請求項1記載の接続基板。
【請求項3】
前記異方性導電フィルムには、前記第1の貫通孔の側方に第2の貫通孔が設けられている請求項1記載の接続基板。
【請求項4】
変形部と固定部とを有する接触子と、前記接触子を固定保持するためのシート部材と、基台と、前記シート部材と基台間を接合するための異方性導電フィルムとを有し、
前記シート部材に貫通孔を設け、前記接触子の固定部を前記シート部材に接合するとともに、前記変形部を前記貫通孔と高さ方向にて対向させ、
前記異方性導電フィルムに第1の貫通孔を形成し、前記第1の貫通孔が前記シート部材に形成された貫通孔と高さ方向にて対向するように、前記シート部材と基台との間に前記異方性導電フィルムを介在させ、
前記シート部材と基台間を熱圧着することを特徴とする接続基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1の貫通孔を前記シート部材に形成された貫通孔よりも大きく形成する請求項4記載の接続基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1の貫通孔の側方に第2の貫通孔を形成する請求項4または5に記載の接続基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−147323(P2006−147323A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335301(P2004−335301)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】