説明

接続構造体の製造方法

【課題】異方性導電ペースト層を効率的にかつ精度よく配置できる接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る接続構造体1の製造方法では、突出した第1の電極4bを表面4aに有し、かつ第1の電極4bよりも突出高さが大きい突出した電子部品4cを表面4aに有するフレキシブルプリント基板4を用いて、フレキシブルプリント基板4の第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に、硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを用いて異方性導電ペースト層3Aを配置する。その後、フレキシブルプリント基板4と接続対象部材2とを、異方性導電ペースト層3Aを介して積層し、異方性導電ペースト層3Aを硬化させる。本発明に係る接続構造体1の製造方法では、ディスペンサー12を移動させながら、異方性導電ペーストをディスペンサー12から塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板上に異方性導電ペーストを塗布して、該異方性導電ペーストが硬化した硬化物層により上記フレキシブルプリント基板と接続対象部材とを接続する接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電ペーストは、各種の接続構造体を得るために、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電ペーストの塗布方法の一例として、下記の特許文献1には、半導体チップ又は電子部品等をマウントする各マウント部又は一部のマウント部を上面から凹ませた形態にしたリードフレーム又はプリント基板等において、その上面に、上記各マウント部の個所ごとに抜き孔を穿設したマスク板を、該マスク板のうち凹んでいるマウント部に対応する部分に下向きの膨出部を設けて重ね合わせて、このマスク板の上面に導電ペーストを供給し、次いで、このマスク板の上面側に配置したスキージを、マスク板の上面に対して押圧及び接触した状態で移動するスクリーン印刷法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−80859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、従来のスクリーン印刷法を用いた接続構造体の製造方法では、導電ペーストがスクリーン印刷される接続対象部材の表面に凸部がある場合には、凸部によりスクリーン印刷版の配置が妨げられたり、スクリーン印刷版と接続対象部材との間隔を拡げる必要があったりする。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1では、スクリーン印刷版が工夫されている。また、従来、接続対象部材を載せる台を工夫することも検討されている。しかしながら、これらの場合には、接続対象部材の種類に応じて、複数のスクリーン印刷版を作製しなければならなかったり、台を設計変更しなければならなかったりする。このため、接続構造体の製造コストが高くなる。さらに、接続対象部材の表面の凸部が大きい場合には、スクリーン印刷版や台を工夫しても、導電ペーストを精度よくかつ均一に塗布することが困難なことがある。
【0008】
さらに、導電ペーストを塗布する対象がフレキシブルプリント基板である場合には、該フレキシブルプリント基板はガラス基板に比べ電極の高さが高いので、スクリーン印刷法では、導電ペーストを精度よくかつ均一に塗布することがより一層困難であるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、異方性導電ペースト層を効率的にかつ精度よく配置できる接続構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、突出した第1の電極を表面に有し、かつ該第1の電極よりも突出高さが大きい突出した電子部品を上記表面に有するフレキシブルプリント基板を用いて、該フレキシブルプリント基板の上記第1の電極上の第1の塗布領域に、硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用いて異方性導電ペースト層を配置する工程と、第2の電極を表面に有する接続対象部材を用いて、上記第1の電極と上記第2の電極とを対向させて、上記フレキシブルプリント基板と上記接続対象部材とを、上記異方性導電ペースト層を介して積層する工程と、上記異方性導電ペースト層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、ディスペンサーを移動させながら、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布する、接続構造体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、上記第1の電極上ではない第2の塗布領域にも、上記異方性導電ペースト層を配置する。
【0012】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記フレキシブルプリント基板が上記第1の電極を複数有し、上記接続対象部材が上記第2の電極を複数有し、上記第2の塗布領域が、複数の上記第1の電極間の隙間の領域を含む。
【0013】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記フレキシブルプリント基板の上記第2の塗布領域の表面は突出していないか、又は上記第1の電極よりも突出高さが小さい。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記フレキシブルプリント基板の上記第2の塗布領域の表面は突出していない。
【0015】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、上記第1の電極上の上記第1の塗布領域に配置される上記異方性導電ペースト層部分の厚みを、上記第1の電極上ではない上記第2の塗布領域に配置される上記異方性導電ペースト層部分の厚みよりも薄くする。
【0016】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに別の特定の局面では、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、上記第1の電極上の上記第1の塗布領域に配置される上記異方性導電ペースト層部分の上面と上記第1の電極上ではない上記第2の塗布領域に配置される上記異方性導電ペースト層部分の上面とを連なるように平滑にする。
【0017】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、上記第1の電極上の上記第1の塗布領域に配置される上記異方性導電ペースト層部分の厚みを、上記異方性導電ペーストに含まれている上記導電性粒子の平均粒子径の3倍以上にする。
【0018】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記フレキシブルプリント基板が上記第1の電極を複数有し、上記接続対象部材が上記第2の電極を複数有し、上記第1の電極の高さが5μm以上、複数の上記第1の電極間の隙間の間隔が30μm以下であり、上記異方性導電ペーストとして、25℃及び2.5rpmでの粘度が200Pa・sを超え、800Pa・s以下であり、25℃及び2.5rpmの粘度の25℃及び5rpmでの粘度に対する粘度比が1以上、2以下である異方性導電ペーストが用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、突出した第1の電極を表面に有し、かつ該第1の電極よりも突出高さが大きい突出した電子部品を上記表面に有するフレキシブルプリント基板を用いて、該フレキシブルプリント基板の上記第1の電極上の第1の塗布領域に、硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用いて異方性導電ペースト層を配置する工程と、第2の電極を表面に有する接続対象部材を用いて、上記第1の電極と上記第2の電極とを対向させて、上記フレキシブルプリント基板と上記接続対象部材とを、上記異方性導電ペースト層を介して積層する工程と、上記異方性導電ペースト層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、ディスペンサーを移動させながら、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布するので、異方性導電ペースト層を効率的にかつ精度よく配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法に用いられるフレキシブルプリント基板を模式的に示す平面図及び断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための部分切欠断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法において、塗布装置を用いて、異方性導電ペースト層をBステージ化する方法を説明するための模式図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、塗布装置を用いて、異方性導電ペースト層をBステージ化する方法の他の例を説明するための模式図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、フレキシブルプリント基板の変形例を示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、突出した第1の電極を表面に有し、かつ該第1の電極よりも突出高さが大きい突出した電子部品を上記表面に有するフレキシブルプリント基板を用いて、該フレキシブルプリント基板の上記第1の電極上の第1の塗布領域に、硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用いて異方性導電ペースト層を配置する工程と、第2の電極を表面に有する接続対象部材を用いて、上記第1の電極と上記第2の電極とを対向させて、上記フレキシブルプリント基板と上記接続対象部材とを、上記異方性導電ペースト層を介して積層する工程と、上記異方性導電ペースト層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備える。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記異方性導電ペースト層を配置する工程において、ディスペンサーを移動させながら、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布する。
【0023】
本発明に係る接続構造体の製造方法における上記構成の採用により、異方性導電ペースト層を効率的にかつ精度よく配置できる。このため、得られる接続構造体における硬化物層を特定の領域に精度よくかつ均一に配置できる。この結果、得られる接続構造体においてボイドが生じ難くなり、更に上記フレキシブルプリント基板と上記接続対象部材との接続信頼性及び導通信頼性が高くなる。特に、フレキシブルプリント基板が表面に突出した電子部品を有しているにもかかわらず、該電子部品による塗布作業の阻害を抑制できるので、異方性導電ペーストの塗布効率をかなり高めることができる。
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られる接続構造体を模式的に断面図で示す。図2(a)及び(b)に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法に用いられるフレキシブルプリント基板を平面図及び断面図で示す。図1では、図2(a)に示すフレキシシブルプリント基板におけるI−I線に沿って、該フレキシブルプリント基板に接続対象部材が接続されている状態における断面図が示されている。図2(b)では、図2(a)に示すII−II線に沿う断面図が示されている。
【0026】
図1に示す接続構造体1は、接続対象部材2と、フレキシブルプリント基板4と、硬化物層3とを備える。硬化物層3は、接続対象部材2とフレキシブルプリント基板4とを接続しており、接続部である。硬化物層3は、硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを硬化させることにより形成されている。上記異方性導電ペーストは、複数の導電性粒子5を含む。
【0027】
接続対象部材2は表面2aに、複数の第2の電極2bを有する。複数の第2の電極2bは表面2aから突出している。フレキシブルプリント基板4は表面4a(第1の表面)に、複数の第1の電極4bを有する。第1の電極4bは表面4aから突出している。第2の電極2bと第1の電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0028】
また、図2(a)に示すように、フレキシブルプリント基板4は表面4aに、電子部品4cを有する。電子部品4cは、第1の電極4bが配置されている側と同じ表面4aに配置されている。フレキシブルプリント基板4に設けられた第1の電極4bと電子部品4cとは、同じ表面4a(第1の表面)において突出している。また、図2(a)に示すように、フレキシブルプリント基板4は接続対象部材2と、電子部品4cが設けられていない領域において接続される。なお、図6(a)及び(b)に平面図及び断面図で示すように、フレキシブルプリント基板4にかえて、1つの又は直線状の突出した第1の電極61bを表面61aに有し、かつ第1の電極61bよりも突出高さが大きい突出した電子部品61cを表面61aに有するフレキシブルプリント基板61を用いてもよい。
【0029】
表面4aにおいて、電子部品4cの突出高さHcは第1の電極4bの突出高さHbよりも大きい。第1の電極4bの突出高さHbは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。電子部品4cの突出高さHcは、第1の電極4bの突出高さHbの1倍を超え、好ましくは10倍以上、より好ましくは20倍以上、好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下である。突出高さHcが突出高さHbよりも大きくても、上記ディスペンサーを移動させながら、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布することで、異方性導電ペースト層を効率的にかつ精度よく配置できる。
【0030】
電子部品4cとしては、半導体チップ及びコネクタ等が挙げられる。電子部品4cは半導体チップであることが好ましい。
【0031】
接続対象部材2は特に限定されない。接続対象部材2としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及びガラスエポキシ基板等の回路基板である電子部品等が挙げられる。接続対象部材2はガラス基板であることが好ましい。
【0032】
接続構造体1は、以下のようにして得ることができる。ここでは、上記異方性導電ペーストとして、光硬化性成分と熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを用いた場合の、接続構造体1の製造方法を具体的に説明する。すなわち、光の照射及び熱の付与により硬化可能な異方性導電ペーストを用いて、接続構造体1を製造する方法を説明する。
【0033】
先ず、図2(a)及び(b)に示すフレキシブルプリント基板4を用意する。すなわち、突出した第1の電極4bを表面4aに有し、かつ第1の電極4bよりも突出高さが大きい突出した電子部品4cを表面4aに有するフレキシブルプリント基板4を用意する。このフレキシブルプリント基板4を、第1の電極4b及び電子部品4cが設けられている側の表面4aが上側となるように配置する。次に、図3(a)に示すように、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、光硬化性成分と熱硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを塗布して、フレキシブルプリント基板4の表面4aに異方性導電ペースト層3Aを形成する。異方性導電ペースト層3Aは、塗布直後の異方性導電ペースト層である。このとき、第1の電極4b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。ここでは、図2(a)の矢印Xで示す方向に、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、上記異方性導電ペーストを直線状に塗布している。また、図2(a)の破線Yで囲まれた領域内に、上記異方性導電ペーストを塗布している。なお、フレキシブルプリント基板4と接続対象部材2との接続時に、異方性導電ペースト層又はBステージ化された異方性導電ペースト層は破線Yで囲まれた領域外にも拡がる。
【0034】
図4(a)及び(b)に、異方性導電ペーストを塗布する際の状態を模式図で示す。なお、図4(a)及び図4(b)では、第1の電極4b及び電子部品4cの図示は省略している。異方性導電ペースト層3Aを形成するために、図4(a)に示す塗布装置11が好適に用いられる。図4(a)では、ディスペンサー12の移動方向、並びに異方性導電ペーストの塗布方向は、右側から左側に向かう方向である。
【0035】
塗布装置11は、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、硬化性成分と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを塗布するために用いられる。塗布装置11は、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されている光照射装置13とを備える。ディスペンサー12は、異方性導電ペーストを内部に充填するためのシリンジ12aと、該シリンジ12aの外周面を把持している把持部12bとを備える。光照射装置13は、光照射装置本体13aと、光照射部13bとを備える。
【0036】
ディスペンサー12は、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、上記異方性導電ペーストを塗布するためのディスペンサーである。光照射装置13は、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、上記異方性導電ペーストを塗布して、該異方性導電ペーストに光を照射するための光照射装置である。
【0037】
図4(a)に示すように、異方性導電ペーストを塗布する際には、塗布装置11を矢印Aの方向に移動させながら、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、ディスペンサー12のシリンジ12aの先端12cから異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3Aを形成する。
【0038】
図2(a)に示すように、フレキシブルプリント基板4の第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に、異方性導電ペースト層3Aを配置する。さらに、第1の電極4b上ではない第2の塗布領域R2にも、異方性導電ペースト層3Aを配置することが好ましい。ここでは、複数の第1の電極4b間の隙間の領域が第2の塗布領域R2である。このように、フレキシブルプリント基板4は第1の電極4bを複数有し、接続対象部材2が第2の電極2bを複数有し、第2の塗布領域R2が、複数の第1の電極4b間の隙間の領域を含むことが好ましい。第1の塗布領域R1と第2の塗布領域R2とに、連続して上記異方性導電ペーストを塗布して、異方性導電ペースト層3Aを配置することが好ましい。ディスペンサー12を、上記第1の塗布領域R1と上記第2の塗布領域R2とを連続して通過させて、異方性導電ペーストを塗布することが好ましい。
【0039】
フレキシブルプリント基板4の第2の塗布領域R2の表面4aは突出していないか、又は第1の電極4bよりも突出高さが小さいことが好ましく、フレキシブルプリント基板4の第2の塗布領域R2の表面4aは突出していないことが好ましい。この場合には、フレキシブルプリント基板4の表面4aは、第1の電極4b上の第1の塗布領域R1と、第1の電極4b上ではない第2の塗布領域R2とで凹凸になる。フレキシブルプリント基板4の表面4aの突出していない領域又は第1の電極4bよりも突出度合いが小さい領域にも、異方性導電ペースト層3Aを配置することが好ましい。
【0040】
第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に配置される異方性導電ペースト層3A部分の厚みを、第1の電極4b上ではない第2の塗布領域R2に配置される異方性導電ペースト層3A部分の厚みよりも薄くすることが好ましい。この場合には、第1,第2の塗布領域R1,R2全体に配置される異方性導電ペースト層3Aの上面3aの凹凸を少なくすることができる。この結果、接続構造体において、ボイドを生じ難くし、かつ接続信頼性を高めることができる。
【0041】
図3(a)に示すように、第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に配置される異方性導電ペースト層3A部分の上面と第1の電極4b上ではない第2の塗布領域R2に配置される異方性導電ペースト層3A部分の上面とを連なるように平滑にすることが好ましい。この場合には、接続構造体において、ボイドをより一層生じ難くし、かつ接続信頼性をより一層高めることができる。
【0042】
第1の電極4bの高さが5μm以上であり、かつ複数の第1の電極4b間の隙間(スペース)の間隔が30μm以下であることが好ましい。このような第1の電極を有するフレキシブルプリント基板の表面に異方性導電ペースト層を配置する場合には、スクリーン印刷では、異方性導電ペースト層を精度よくかつ均一に配置することはかなり困難である。これに対して、上記ディスペンサーを移動させながら、上記異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布することで、上記異方性導電ペースト層を精度よくかつ均一に配置することができる。また、接続対象部材2の第2の電極2bは、フレキシブルプリント基板4の第1の電極4bに対応する位置に配置されていることが好ましい。複数の第2の電極2b間の隙間(スペース)の間隔が30μm以下であることが好ましい。
【0043】
上記異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度η1は、200Pa・sを超え、800Pa・s以下であることが好ましい。上記粘度η1はより好ましくは300Pa・s以上、より好ましくは500Pa・s以下である。上記粘度η1が上記下限以上及び上記上限以下であると、特定の上記フレキシブルプリント基板を用いた接続構造体において、ボイドをより一層生じ難くし、かつ接続信頼性をより一層高めることができる。
【0044】
上記異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmの粘度η2の25℃及び5rpmでの粘度η3に対する粘度比(η2/η3)は1以上、2以下であることが好ましい。上記粘度比(η2/η3)はより好ましくは1.1以上、より好ましくは1.5以下である。上記粘度比(η2/η3)が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記フレキシブルプリント基板を用いた接続構造体において、ボイドをより一層生じ難くし、かつ接続信頼性をより一層高めることができる。
【0045】
上記フレキシブルプリント基板が上記第1の電極を複数有し、上記接続対象部材が上記第2の電極を複数有し、上記第1の電極の高さが5μm以上、複数の上記第1の電極間の隙間の間隔が30μm以下であり、上記粘度η1が200Pa・sを超え、800Pa・s以下であり、上記粘度比(η2/η3)が1以上、2以下であることが特に好ましい。特に、複数の第1の電極間の間隔が狭いと、この複数の第1の電極間の狭い隙間の領域に、異方性導電ペースト層を精度よくかつ均一に配置することはかなり困難である。これに対して、上記ディスペンサーを移動させながら、上記粘度η1及び上記粘度比(η2/η3)が上記下限以上及び上記上限以下である異方性導電ペーストを上記ディスペンサーから塗布することで、上記狭い隙間の領域に対しても異方性導電ペースト層を精度よくかつ均一に配置できる。このため、接続構造体において、ボイドをさらに一層効果的に生じ難くし、かつ接続信頼性をさらに一層効果的に高めることができる。
【0046】
第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に配置される異方性導電ペースト層3A部分の厚みを、上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子5の平均粒子径の3倍以上にすることが好ましい。この場合には、接続構造体において、ボイドをより一層生じ難くし、かつ接続信頼性をより一層高めることができる。第1の電極4b上の第1の塗布領域R1に配置される異方性導電ペースト層3A部分の厚みを、上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子5の平均粒子径の4倍以上にすることがより好ましく、10倍以下にすることが好ましい。この場合には、接続構造体におけるボイドの発生をより一層抑制できる。
【0047】
次に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することにより、異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させる。異方性導電ペースト層3Aの硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する。異方性導電ペースト層3AのBステージ化により、図3(b)に示すように、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bを形成する。
【0048】
図4(b)に示すように、光を照射する際には、ディスペンサー12に接続された光照射装置13の光照射部13bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3Aに光を照射する。ここでは、上記異方性導電ペーストを塗布しながら、ディスペンサー12に接続された光照射装置13の光照射部13bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3Aに光を照射している。
【0049】
フレキシブルプリント基板4の表面4aに、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、フレキシブルプリント基板4の表面4aへの異方性導電ペーストの塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電ペースト層3A又はBステージ化された異方性導電ペースト層3Bの流動をより一層抑制できる。このため、フレキシブルプリント基板4と接続対象部材2との接続信頼性、及び第1,第2の電極4b,2b間の導通信頼性がより一層高くなる。光の照射までの時間を高精度に制御する観点からは、ディスペンサー12と光照射装置13とを移動させることが好ましく、ディスペンサー12と光照射装置13とを連動して移動させることが好ましく、ディスペンサー12と光照射装置13とを同じ速度で移動させることが好ましい。このように、ディスペンサー12と光照射装置13とを移動させながら、上記異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3Aに光を照射することが好ましい。フレキシブルプリント基板4の表面4aに上記異方性導電ペーストを塗布してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。ただし、塗布装置11を移動させずに、台31を矢印Aの逆方向に移動させてもよい。
【0050】
塗布装置11では、把持部12bと光照射装置本体13aとが接続されていることによって、ディスペンサー12と光照射装置13とが接続されている。従って、ディスペンサー12と光照射装置13とを連動して移動させることができ、更にディスペンサー12と光照射装置13とを同じ速度で移動させることができる。さらに、ディスペンサー12と光照射装置13との距離を小さくすることができ、すなわち、ディスペンサー12の吐出部と、光照射部13bとの距離を小さくすることができる。この結果、ディスペンサー12により塗布された異方性導電ペースト層3Aに速やかに光を照射することができる。なお、シリンジ12aと光照射装置本体13aとが直接接続されていてもよい。
【0051】
異方性導電ペースト層3Aに光を照射するために、図5(a)及び(b)に示すように、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いてもよい。光照射装置21は、光照射装置13と同様に、光照射装置本体21aと、光照射部21bとを備える。光照射装置21は、光照射装置13よりも、広い領域に光を照射することができるように構成されている。なお、図5(a)及び(b)では、第1の電極4b及び電子部品4cの図示は省略している。
【0052】
ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いる場合には、例えば、図5(a)に示すように、フレキシブルプリント基板4の上方に光照射装置21を配置する。次に、フレキシブルプリント基板4と光照射装置21との間においてディスペンサー12を矢印Aの方向に移動させながら、フレキシブルプリント基板4の表面4aに、シリンジ12aから上記異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層3Aを形成する。次に、図5(b)に示すように、上記異方性導電ペーストの塗布が終了した後、フレキシブルプリント基板4の上方に配置された光照射装置21の光照射部21bから、矢印Bで示すように異方性導電ペースト層3Aに光を照射する。光の照射は、例えば異方性導電ペーストの塗布と同時又は塗布の直後に行われる。
【0053】
光照射装置21は、塗布の際に、フレキシブルプリント基板4の上方に配置されていることが好ましい。この場合には、塗布の後に、光を速やかに照射できる。塗布の後に、異方性導電ペースト層3Aの全領域に一括して光を照射することが好ましい。この場合には、異方性導電ペースト層3Aをより一層均一にBステージ化することができる。
【0054】
光の照射により異方性導電ペースト層3AをBステージ化させて、硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、好ましくは0.1〜10000mW/cm程度である。また、異方性導電ペースト層3Aの硬化を適度に進行させるための光の照射エネルギーは、好ましくは50mJ/cm以上、より好ましくは100mJ/cm以上、好ましくは100000mJ/cm以下、より好ましくは50000mJ/cm以下である。
【0055】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、及びLEDランプ等が挙げられる。
【0056】
なお、光の照射により異方性導電ペースト層3AをBステージ化せずに、熱の付与により異方性導電ペースト層3AをBステージ化してもよい。異方性導電ペースト層3Aに熱を付与することにより硬化を進行させて、異方性導電ペースト層3AをBステージ化する場合には、異方性導電ペースト層3Aを適度にBステージ化させるための加熱温度は好ましくは80℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。光の照射ではなく熱の付与により異方性導電ペースト層3AをBステージ化した場合でも、上述したようにディスペンサー12から上記異方性導電ペーストを塗布しれていれば、第1,第2の電極4b,2b間の位置ずれを抑制できる。
【0057】
次に、図3(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bの上面3aに、接続対象部材2を積層する。フレキシブルプリント基板4の表面4aの第1の電極4bと、接続対象部材2の表面2aの第2の電極2bとが対向するように、接続対象部材2を積層する。なお、接続対象部材2の積層の後に、異方性導電ペースト層3BをBステージ化させるために光を照射してもよく、熱を付与してもよい。但し、接続対象部材2の積層の後に、異方性導電ペースト層3AをBステージ化させるために熱を付与又は光を照射することが好ましい。
【0058】
さらに、接続対象部材2の積層の際に、Bステージ化された異方性導電ペースト層3Bを加熱して本硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、接続対象部材2の積層の前に、異方性導電ペースト層3Bを加熱してもよい。但し、接続対象部材2の積層の後に、異方性導電ペースト層3Bを加熱して本硬化させることが好ましい。
【0059】
熱の付与により異方性導電ペースト層3Bを硬化させるために、異方性導電ペースト層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0060】
なお、異方性導電ペースト層3Aに熱を付与又は光を照射せずに、異方性導電ペースト層3AをBステージ化しない場合には、異方性導電ペースト層3Aの上面3aに接続対象部材2を積層し、異方性導電ペースト層3Aを加熱して、本硬化させればよい。
【0061】
異方性導電ペースト層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって第1の電極4bと第2の電極2bとで導電性粒子5を圧縮することにより、第1,第2の電極4b,2bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0062】
異方性導電ペースト層3Bを硬化させることにより、フレキシブルプリント基板4と接続対象部材2とが、硬化物層3を介して接続される。また、第1の電極4bと第2の電極2bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電ペーストを短時間で硬化させることができる。
【0063】
また、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化した後に、本硬化させることで、フレキシブルプリント基板上に配置された異方性ペースト層に含まれている導電性粒子が、硬化段階で大きく流動し難くなる。従って、導電性粒子が所定の領域に配置されやすくなる。具体的には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置することができ、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。このため、接続構造体における電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0064】
また、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化する場合には、Bステージ化される前の異方性導電ペースト層の表面形状の影響により、第1,第2の電極の位置ずれが生じやすい傾向がある。例えば、Bステージ化された異方性導電ペースト層では、Bステージ化により粘度がある程度上昇しているため、例えば、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に大きな凸部又は凹部があると、得られる接続構造体において、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれが生じやすい傾向がある。
【0065】
これに対して、第1,第2の塗布領域R1,R2全体に配置される異方性導電ペースト層3Aの上面3aの凹凸を少なくしたり、凹凸を無くして平滑にしたりすることによって、Bステージ化をしたとしても、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれを効果的に抑制できる。
【0066】
一方で、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化しなかった場合には、Bステージ化前の異方性導電ペースト層の粘度が低すぎて、得られる接続構造体において、第1,第2の電極間の位置ずれが生じやすい傾向がある。
【0067】
これに対して、接続構造体の作製時に、上記異方性導電ペーストを熱の付与又は光の照射によりBステージ化することにより、第1,第2の接続対象部材における電極間の位置ずれを効果的に抑制できる。
【0068】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、又はフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等に使用できる。本発明に係る接続構造体の製造方法は、FOG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記接続対象部材として、ガラス基板とを用いることが好ましい。
【0069】
上記異方性導電ペーストは、硬化性成分と導電性粒子とを含む。該硬化性成分は熱硬化性成分を含むことが好ましい。該硬化性成分は光硬化性成分を含んでいてもよい。上記熱硬化性成分は、熱硬化性化合物と熱硬化剤とを含有することが好ましい。また、上記異方性導電ペーストは、熱硬化性成分に加えて、光硬化性成分をさらに含むことが好ましい。該光硬化性成分は、光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含むことが好ましい。上記異方性導電ペーストは、硬化性化合物として、熱硬化性化合物を含み、光硬化性化合物をさらに含むことが好ましい。上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。上記光硬化性化合物は(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
【0070】
以下、上記異方性導電ペーストに含まれる各成分、及び含まれることが好ましい各成分の詳細を説明する。
【0071】
[熱硬化性化合物]
上記熱硬化性化合物は熱硬化性を有する。上記熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記異方性導電ペーストの硬化を容易に制御したり、接続構造体における導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことが好ましく、チイラン基を有する熱硬化性化合物を含むことがより好ましい。エポキシ基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物である。異方性導電ペーストの硬化性を高める観点からは、上記熱硬化性化合物100重量%中、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、100重量%以下である。上記熱硬化性化合物の全量が上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物であってもよい。
【0074】
上記エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0075】
上記エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物は、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。また、ナフタレン環は、平面構造を有するためにより一層速やかに硬化させることができるので好ましい。
【0076】
[光硬化性化合物]
光の照射によって硬化するように、上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物を含むことが好ましい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化(Bステージ化)させ、異方性導電ペーストの流動性を低下させることができる。
【0077】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物及び環状エーテル基を有する光硬化性化合物等が挙げられる。
【0078】
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物の使用により、接続構造体の導通信頼性をより一層高めることができる。得られる接続構造体の導通信頼性を効果的に高める観点からは、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を1個又は2個有することが好ましい。
【0079】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
【0080】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0081】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0082】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0083】
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0084】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0085】
上記光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0086】
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0087】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0089】
光硬化性化合物を用いる場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜70:30で含むことがより好ましく、10:90〜50:50で含むことが更に好ましい。上記異方性導電ペーストは、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜50:50で含むことが特に好ましい。
【0090】
(熱硬化剤)
上記異方性導電ペーストは、熱硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤には、熱ラジカル開始剤が含まれる。熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0091】
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤としては、イミダゾール熱硬化剤、アミン熱硬化剤、フェノール熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤、酸無水物及び熱ラジカル開始剤等が挙げられる。なかでも、異方性導電ペーストを低温でより一層速やかに硬化させることができるので、イミダゾール熱硬化剤、ポリチオール熱硬化剤又はアミン熱硬化剤が好ましい。また、異方性導電ペーストの保存安定性を高めることができるので、潜在性の熱硬化剤が好ましい。該潜在性の熱硬化剤は、潜在性イミダゾール熱硬化剤、潜在性ポリチオール熱硬化剤又は潜在性アミン熱硬化剤であることが好ましい。なお、上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0092】
上記イミダゾール熱硬化剤としては、特に限定されないが、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0093】
上記ポリチオール熱硬化剤としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0094】
上記アミン熱硬化剤としては、特に限定されないが、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0095】
上記熱ラジカル開始剤としては、特に限定されず、アゾ化合物及び過酸化物等が挙げられる。上記過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、及びケトンパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0096】
上記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2−tert−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)二水和物、及び2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
【0097】
上記ジアシルパーオキサイド化合物としては、過酸化ベンゾイル、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、及びDisuccinic acid peroxide等が挙げられる。上記パーオキシエステル化合物としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5―ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソフタレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシオクトエート及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。上記ハイドロパーオキサイド化合物としては、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。上記パーオキシジカーボネート化合物としては、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、及びジ(2−エチルヘキシル)パーオキシカーボネート等が挙げられる。また、上記過酸化物の他の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、カリウムパーサルフェイト、及び1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0098】
上記熱ラジカル開始剤の10時間半減期を得るための分解温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。上記熱ラジカル開始剤の10時間半減期を得るための分解温度が、30℃未満であると、異方性導電ペーストの貯蔵安定性が低下する傾向があり、80℃を超えると、異方性導電ペーストを充分に熱硬化させることが困難になる傾向がある。
【0099】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記硬化剤の含有量は、硬化剤の種類に応じて適宜調整される。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は好ましくは0.01重量部以上、好ましくは200重量部以下である。
【0100】
上記熱硬化剤が熱ラジカル開始剤以外の熱硬化剤である場合に、上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは200重量部以下、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは75重量部以下、特に好ましくは40重量部以下である。熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、異方性導電ペーストを充分に硬化させることが容易である。熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化後に硬化に関与しなかった余剰の熱硬化剤が残存し難くなり、かつ硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0101】
上記熱硬化剤が熱ラジカル開始剤である場合に、上記熱ラジカル開始剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱ラジカル開始剤の含有量は好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。上記熱ラジカル硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストが充分に熱硬化する。
【0102】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0104】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0105】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電ペーストが適度に光硬化する。異方性導電ペーストに光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電ペーストの流動を抑制できる。
【0106】
(導電性粒子)
上記異方性導電ペーストに含まれている導電性粒子は、フレキシブルプリント基板と接続対象部材の第1,第2の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、フレキシブルプリント基板と接続対象部材との接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0107】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に配置された導電層とを有することが好ましい。
【0108】
上記導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0109】
上記導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。上記導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0110】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電ペースト100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは19重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0111】
(他の成分)
上記異方性導電ペーストは、フィラーを含むことが好ましい。該フィラーの使用により、異方性導電ペーストの硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。上記フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0112】
上記異方性導電ペーストは、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。該硬化促進剤の使用により、異方性導電ペーストの硬化速度がより一層速くなる。上記硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0113】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0114】
上記異方性導電ペーストは、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電ペーストの粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0115】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0116】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの調製
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンと1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルを付加重合反応させることにより、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンに由来する骨格と1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来する骨格とが結合した構造単位を主鎖に有し、かつ両末端に1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルに由来するエポキシ基を有する反応物を得た。その後、アクリル酸を反応させることにより、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にビニル基を有するエポキシ化合物を得た。
【0117】
得られたエポキシ化合物30重量部と、熱硬化剤であるアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)10重量部と、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部と、光重合開始剤であるアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.2重量部と、硬化促進剤である2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーである平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部とを配合し、さらに平均粒子径5μmの導電性粒子を得られる異方性導電ペースト100重量%中での含有量が5重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
【0118】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0119】
(2)接続構造体の作製
L/Sが20μm/20μm、長さ2mm、及び厚み10μmの金メッキされたCu電極パターンを表面に有し、かつ縦15mm、横2mm、及び厚み800μmの半導体チップを表面に有するフレキシブルプリント基板を用意した。なお、該フレキシブルプリント基板は、一端の外周縁に上記Cu電極パターンを有し、かつ中央に上記半導体チップを有する。
【0120】
また、L/Sが20μm/20μm、長さ1mm、及び厚み0.3μmのアルミニウム電極パターンを表面に有するガラス基板(接続対象部材)を用意した。なお、ガラス基板は、一端の外周縁に上記アルミニウム電極パターンを有する。
【0121】
また、図4(a)に示す塗布装置を用意した。該塗布装置は、ディスペンサーと、該ディスペンサーに接続された光照射装置である紫外線照射ランプとを備える。
【0122】
上記Cu電極パターン及び上記半導体チップが上方に位置するように、上記フレキシブルプリント基板を配置した。上記Cu電極パターン上で塗布装置を移動させながら、上記フレキシブルプリント基板の表面に、異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。このとき、上記Cu電極パターンの電極上の第1の塗布領域と、上記Cu電極パターンにおける電極間の隙間の第2の塗布領域とに、直線状に連続して異方性導電ペーストを塗布した。このとき、上記ディスペンサーからの上記異方性導電ペーストの吐出量を制御して、電極上の第1の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、複数の電極間の第2の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みとを、下記の表1に示す厚みに設定した。なお、上記フレキシブルプリント基板の上記半導体チップ上には、異方性導電ペーストを塗布しなかった。
【0123】
次に、異方性導電ペースト層に、紫外線照射ランプを用いて紫外線を照射エネルギーが6000mJ/cmとなるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、上記Cu電極パターンと上記アルミニウム電極パターンとを対向させて、上記フレキシブルプリント基板と上記ガラス基板とを、Bステージ化された異方性導電ペースト層を介して積層した。その後、Bステージ化された異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、上記ガラス基板の上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0124】
(実施例2〜5)
電極上の第1の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、複数の電極間の第2の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、用いた導電性粒子の平均粒子径とを、下記の表1に示す厚み及び平均粒子径に設定しこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0125】
(実施例6〜8)
接続構造体の作製時に使用するフレキシブルプリント基板を、L/Sが30μm/30μm、長さ2mm、及び厚み30μmの金メッキされたCu電極パターンを表面に有し、かつ縦15mm、横2mm、及び厚み800μmの半導体チップを表面に有するフレキシブルプリント基板に変更したこと、及び接続対象部材を、L/Sが30μm/30μm、長さ1mm、及び厚み0.3μmのアルミニウム電極パターンを表面に有するガラス基板に変更したこと、及び電極上の第1の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、複数の電極間の第2の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、導電性粒子の平均粒子径とを、下記の表1に示す厚み及び平均粒子径に設定しこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0126】
(実施例9)
異方性導電ペーストの調製の際に、光硬化性化合物であるエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)8重量部を、光硬化性化合物であるウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)8重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。また、得られた異方性導電ペーストを用いたこと、並びに電極上の第1の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、複数の電極間の第2の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の厚みと、用いた導電性粒子の平均粒子径とを、下記の表1に示す厚み及び平均粒子径に設定しこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0127】
(比較例1)
実施例1と同様のフレキシブルプリント基板及びガラス基板を用意した。
【0128】
ディスペンサーを用いずに、スクリーン印刷版を用いて、上記フレキシブルプリント基板の表面に、異方性導電ペーストを塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。このとき、実施例1と同様の第1,第2の塗布領域に異方性導電ペーストを塗布した。
【0129】
その後、実施例1と同様にして、異方性導電ペースト層をBステージ化し、本硬化させて、接続構造体を得た。
【0130】
(評価)
(1)粘度η1及び粘度比(η2/η3)
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度η1を測定した。また、上記E型粘度計を用いて、25℃及び2.5rpmでの粘度η2と25℃及び5rpmでの粘度η3とを測定した。
【0131】
(2)ボイドの有無
実施例及び比較例における接続構造体をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。ボイドの有無を下記の基準で判定した。ボイドがあると、接続構造体における導通信頼性が低くなる。
【0132】
[ボイドの有無の判定基準]
○○:100個の接続構造体中全てで、ボイド無し
○:100個の接続構造体中、最大長さが10μm以下であるボイドがある接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
△:100個の接続構造体中、最大長さが10μmを超え、30μm以下であるボイドがある接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
×:100個の接続構造体中、最大長さが30μmを超える接続構造体が存在する
【0133】
(3)フレキシブルプリント基板の電極とガラス基板の電極との位置ずれの有無
実施例及び比較例における接続構造体をそれぞれ100個用意した。得られた接続構造体において、フレキシブルプリント基板の電極とガラス基板の電極との間に位置ずれが生じているか否かを評価した。位置ずれを下記の基準で判定した。
【0134】
[位置ずれの判定基準]
○○:100個の接続構造体中全てで、電極間の位置ずれがないか、又は電極間のずれ幅が2μm以下
○:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅が2μmを超え、5μm以下である接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
△:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅が5μmを超え、10μm以下である接続構造体が存在するものの、全ての接続構造体が使用可能
×:100個の接続構造体中、電極間のずれ幅10μmを超える接続構造体が存在する
【0135】
(4)導通信頼性(上下の電極間の導通試験)
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗をそれぞれ、4端子法により測定した。100箇所の接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。接続抵抗の平均値が3Ω以下である場合を「○」、接続抵抗の平均値が3Ωを超える場合を「×」と判定した。
【0136】
結果を下記の表1に示す。なお、異方性導電ペースト層の上面の状態が平滑である場合には、第1の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の上面と第2の塗布領域に配置された異方性導電ペースト層部分の上面とが連なるように平滑であった。また、実施例及び比較例で用いた上記導電性粒子は全て、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0137】
【表1】

【符号の説明】
【0138】
1…接続構造体
2…接続対象部材
2a…表面
2b…第2の電極
3…硬化物層
3a…上面
3A…異方性導電ペースト層
3B…Bステージ化された異方性導電ペースト層
4…フレキシブルプリント基板
4a…表面
4b…第1の電極
4c…電子部品
5…導電性粒子
11…塗布装置
12…ディスペンサー
12a…シリンジ
12b…把持部
12c…先端
13…光照射装置
13a…光照射装置本体
13b…光照射部
21…光照射装置
21a…光照射装置本体
21b…光照射部
31…台
61…フレキシブルプリント基板
61a…表面
61b…第1の電極
61c…電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出した第1の電極を表面に有し、かつ該第1の電極よりも突出高さが大きい突出した電子部品を前記表面に有するフレキシブルプリント基板を用いて、該フレキシブルプリント基板の前記第1の電極上の第1の塗布領域に、硬化性成分と導電性粒子とを含む異方性導電ペーストを用いて異方性導電ペースト層を配置する工程と、
第2の電極を表面に有する接続対象部材を用いて、前記第1の電極と前記第2の電極とを対向させて、前記フレキシブルプリント基板と前記接続対象部材とを、前記異方性導電ペースト層を介して積層する工程と、
前記異方性導電ペースト層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
前記異方性導電ペースト層を配置する工程において、ディスペンサーを移動させながら、前記異方性導電ペーストを前記ディスペンサーから塗布する、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記異方性導電ペースト層を配置する工程において、前記第1の電極上ではない第2の塗布領域にも、前記異方性導電ペースト層を配置する、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント基板が前記第1の電極を複数有し、前記接続対象部材が前記第2の電極を複数有し、
前記第2の塗布領域が、複数の前記第1の電極間の隙間の領域を含む、請求項2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記フレキシブルプリント基板の前記第2の塗布領域の表面は突出していないか、又は前記第1の電極よりも突出高さが小さい、請求項2又は3に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板の前記第2の塗布領域の表面は突出していない、請求項4に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記異方性導電ペースト層を配置する工程において、前記第1の電極上の前記第1の塗布領域に配置される前記異方性導電ペースト層部分の厚みを、前記第1の電極上ではない前記第2の塗布領域に配置される前記異方性導電ペースト層部分の厚みよりも薄くする、請求項2〜5のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
前記異方性導電ペースト層を配置する工程において、前記第1の電極上の前記第1の塗布領域に配置される前記異方性導電ペースト層部分の上面と前記第1の電極上ではない前記第2の塗布領域に配置される前記異方性導電ペースト層部分の上面とを連なるように平滑にする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項8】
前記異方性導電ペースト層を配置する工程において、前記第1の電極上の前記第1の塗布領域に配置される前記異方性導電ペースト層部分の厚みを、前記異方性導電ペーストに含まれている前記導電性粒子の平均粒子径の3倍以上にする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項9】
前記フレキシブルプリント基板が前記第1の電極を複数有し、前記接続対象部材が前記第2の電極を複数有し、
前記第1の電極の高さが5μm以上、複数の前記第1の電極間の隙間の間隔が30μm以下であり、
前記異方性導電ペーストとして、25℃及び2.5rpmでの粘度が200Pa・sを超え、800Pa・s以下であり、25℃及び2.5rpmの粘度の25℃及び5rpmでの粘度に対する粘度比が1以上、2以下である異方性導電ペーストを用いる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16725(P2013−16725A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149866(P2011−149866)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】