説明

接続装置が取り付けられたエレベータシステムベルト

アセンブリが、(a)互いに間隔を介した状態で長手方向に延在する複数のワイヤコードを含むとともに、該コード間の間隔内に延在する該コードのコーティングを含んだベルトであって、該ベルトが、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成された、ベルトと、(b)前記コードとの電気的接続を提供する第1の数のコード接触要素を含んだ第1の接続装置と、(c)前記コートとの電気的接続を提供する第2の数のコード接触要素を含むとともに、少なくとも2つの導電素子を含んだ第2の接続装置であって、前記導電素子の各々が、それぞれ前記コード接触要素のうちの一つと電気的に接続されており、前記導電素子が、前記コードを通流する電気的信号に基づいて前記コードの適切な状態を監視するベルト監視ユニットへの電気的接続を形成するように設けられた、第2の接続装置と、を備え、(d)前記第1および第2の接続装置のうち少なくとも一つが、2つのコードの間の間隔に延在してそれら2つのコードに電気的接続を提供する少なくとも一つのブリッジタイプのコード接触要素を含み、それにより前記2つのコードを電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成されたベルト、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成されたベルト、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成されたベルト、と、そのベルトに取付けられた少なくとも一つの接続装置と、を備えたアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
現代のエレベータシステムは多くの場合、(ワイヤ製のコーティングされていない丸形のロープではなく)コーティング内にワイヤコードが組み込まれたベルトを備え、エレベータかごおよびカウンタウェイトを吊り下げるおよび/または駆動する。ベルトが駆動機能、すなわちかごおよびカウンタウェイトを上下動させるのに必要な力を伝達する場合、エレベータシステム設計はベルトが駆動シーブの上を走るように頻繁に変更される。
【0003】
エレベータシステムの運転中、各コード内のワイヤは特にベルトがシーブまたはそらせ車の上を走る箇所で互いに関して僅かに移動し、それにより折り曲げられ、その後再び直線状の配置に引き伸ばされる。運転時間の長期間に亘るワイヤの相対的な移動は、フレッチングと呼ばれる類の摩耗の原因となる。さらに、長期間の運転時間後の疲労により、特にフレッチングにより脆弱化しているときに、個々のワイヤが破断するおそれがある。
【0004】
エレベータシステムの製造者は、ベルトを設置するが、このベルトは、破損の危険なしに伝達することのできる最大引張力に関する厳しい規格に適合しなければならない。コードは定格終局引張強度を有し、一般に許容される最大荷重は終局引張強度を通常12または16の安全係数で割ったものとして規定される。高い安全係数により、たとえ一定量のフレッチングが起こったとしても、あるいはベルトのかなりの時間の使用後にコード内のある一定の割合のワイヤが破断し、あるいはたとえベルト内の複数のコードのうちの一つが破断したとしても、ベルトはあらゆる破損の危険から遥かにかけ離れている。それでもなお、許容量を上回るフレッチングを受けたベルト、またはコード内に許容率を上回る破断したワイヤを有するベルトは、新しいベルトに交換する必要がある。
【0005】
特にワイヤのフレッチングおよび/または破断したワイヤに起因するエレベータシステムのベルトの機械的強度の劣化を監視することが知られている。一般的な監視の方法は、コードを通して電気信号(単一もしくは複数のパルス、または長期間流れる電流)を送信し、送信信号を測定、分析することを備える。例えば元の信号またはベルト監視ユニットに保存された参照信号と比較した送信信号の振幅またはその他の変化がコードの変化の指標となる。一例として、コードの電気抵抗に変化がないかどうかが監視される。
【0006】
一つ以上の接続装置をベルトに取付けることが知られており、各接続装置はコード接触要素を備え、各接触要素と、ベルト内のコードとの間に電気的接続を提供する。こうした電気的接続に基づき、例えば各コードへと電気信号を入力するもしくは各コードから電気信号を出力することが可能である。接続装置の設計およびベルトの監視方法に応じて、2つのコードを短絡することが可能となるように2つのコード接触要素の間に外部誘導連結部を提供することがさらに知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/094248号
【特許文献2】国際公開第2005/094249号
【特許文献3】国際公開第2005/095252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ベルトおよび接続装置の公知のアセンブリは、第1の部分と、第2の部分と、それら2つの部分をその間のベルト部分とともにクランプ締めするねじと、を含んだ接続装置を備える(特許文献1,2)。コード接触要素は、ベルト部位が接続装置内に適切に配置されたときに各コードの中心部分と向かい合う位置に配置された先の尖った先端部を有するピンである。ねじを回転させることにより接続装置の2つの部分が互いにより近づくように移動し、それによりコード接触要素の作動先端部がベルトのコーティングを通して貫通し、各コードの(幅に対する)中心部分へと貫通する。各コード接触要素の先端部の全てを同時に全ての所定の位置に押し込むために相対的に大きい力が必要となる。2つのコードを短絡するように2つのコード接触要素を接続するためのリードを設けることにより、接続装置が複雑となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの対象は、アセンブリであって、(a)互いに間隔を介した状態で長手方向に延在する複数のワイヤコードを含むとともに、該コード間の間隔内に延在する該コードのコーティングを含んだベルトであって、該ベルトが、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成された、ベルトと、
(b)前記コードとの電気的接続を提供する第1の数のコード接触要素を含んだ第1の接続装置と、
(c)前記コートとの電気的接続を提供する第2の数のコード接触要素を含むとともに、少なくとも2つの導電素子を含んだ第2の接続装置であって、前記導電素子の各々が、それぞれ前記コード接触要素のうちの一つと電気的に接続されており、前記導電素子が、前記コードを通流する電気的信号に基づいて前記コードの適切な状態を監視するベルト監視ユニットへの電気的接続を形成するように設けられた、第2の接続装置と、
を備え、
(d)前記第1および第2の接続装置のうち少なくとも一つが、2つのコードの間の間隔に延在してそれら2つのコードに電気的接続を提供する少なくとも一つのブリッジタイプのコード接触要素を含み、それにより前記2つのコードを電気的に接続することを備えた、アセンブリである。
【0010】
本発明のもう一つの対象は、ベルトへの接続装置の取付け方法であって、互いに間隔を介した状態で長手方向に延在する複数のワイヤコードを含むとともに、該コード間の間隔内に延在する該コードのコーティングを含んだベルトであって、該ベルトが、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成された、ベルトへの接続装置の取付け方法において、
前記接続装置が、その内部を通して貫通する開放通路として延在するスロット、または、その一方の端部に該スロットに関連した前記ベルトの止め部を備えたスロットを含み、
前記接続装置が少なくとも一つのボアと、該ボアの壁面と係合する1つのねじと、を含み、前記ボアが前記スロットを横切る軸を有しており、
前記方法が、前記ベルトの一部を前記スロット内に配置し、前記少なくとも1つのねじを回転させて、前記ねじの一部を2つのコードの間の間隔のうちの一つにねじ込んでその2つのコードと接触させ、それにより前記2つのコードの間に電気的接続を提供することを備えた、ベルトへの接続装置の取付け方法である。
【0011】
本発明により、エレベータシステムのベルトへの取り付け用に設計された、前述の公知の接続装置に比べてより容易にベルトに取り付けることが可能な、接続装置を提供する。
【0012】
さらに本発明により、エレベータシステムのベルトへの取り付け用に設計された、簡単な方法で各コード接触要素とコードとの間に明確な電気的接続を形成する、接続装置を提供する。
【0013】
さらに本発明により、エレベータシステムのベルトへの取り付け用に設計された、ベルト内の2つのコードの間の短絡接続の構築を容易にする、接続装置を提供する。
【0014】
これに限定しない実施例およびそれらの実施例を示す図を用いて本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】エレベータシャフト内のエレベータシステムを概略的に示す正面図。
【図2】本発明の「第1の接続装置」として示す型の接続装置を示す斜視図。
【図3】図2に示す接続装置の正面図。
【図4】図3の線IV−IVに沿って切断した断面図。
【図5】コード接触要素が使用時位置に入れられた状態を示す、図3の線IV−IVに沿って切断した断面図。
【図6】本発明の「第2の接続装置」として示す型の接続装置を示す斜視図。
【図7】図6に示す接続装置の正面図。
【図8】図7の線VIII−VIIIに沿って切断した断面図。
【図9】コード接触要素が使用時位置に入れられた状態を示す、図7の線VIII−VIIIに沿って切断した断面図。
【図10】図6〜9の第2の接続装置がベルト監視ユニットとともに組み立てられた状態を概略的に示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、エレベータシステム2における以下の機械的メインコンポーネント:乗客かご4と、カウンタウェイト6と、電気駆動モータ10によって駆動される駆動シーブ8(図面の平面の裏側に配置される)と、図面に対して垂直方向に進むときに互いに対して平行な関係に配置された(互いの間に多少の間隔を有する)複数のベルト(通常2,3または4本のベルト)のうちの一つのベルト12と、を示す。各ベルト12の第1の端部では、ベルト12が第1の終端装置14に固定される。第2の端部では各ベルト12が第2の終端装置16に固定される。一実施例では、終端装置14,16は、周知の楔形クランプ構造である。
【0017】
エレベータシステム2の更なる機械的コンポーネントは、周知のように乗客かご4用の第1の一組のガイドレールと、カウンタウェイト6用の第2の一組のガイドレールと、を備える。図1の明瞭さを低下させないために、これらのガイドレールは図1には示していない。エレベータシステム2全体は、一般に矩形の水平断面を有する、ビル内に設けられたエレベータシャフト18内に配置される。一実施例では、図示しないガイドレールが、エレベータシャフト18のピットの床面20にその下端部で支持されており、ガイドレールの各々は、その座屈を防ぐために、相互に離間された状態でエレベータシャフト18のそれぞれの壁面にクランプ(図示せず)によって連結される。駆動シーブ8が例えばモータシャフトに取付けられた、または駆動シーブ8がモータシャフトによって形成された電気モータ10が、1つまたは複数のガイドレール上に直接または間接的に支持される。別の実施例では、モータ10はエレベータシャフト18の少なくとも一つの壁または天井に取付けられる。モータ10の取付けに関して述べた内容は終端装置14,16の取り付けに対しても同様に適用される。強調すべきは、更なる実施例では、エレベータシステム2は、周囲が取り囲まれたエレベータシャフト18に配置されるのではなく、パノラマエレベータタイプのものであり、かつ/またはエレベータシステム2は乗客輸送用ではなく荷物輸送用のエレベータシステムである点である。
【0018】
図1に示すベルト12は、第1の終端装置14からカウンタウェイト6に取り付けられたそらせ車22へと下に通じ、そして各駆動シーブ8へと上に通じ、次いで乗客かご4に取り付けられた第1のそらせ車24へと下に通じ、乗客かご4に取り付けられた第2のそらせ車26へと水平に通じて、最後に第2の終端装置16へと上に通じる。同様のことが第2(もしあれば)、第3(もしあれば)、第4(もしあれば)等、のベルト12にも適用され、各ベルト12は、「独自の」第1の終端装置14と、そらせ車22と、駆動シーブ8と、そらせ車24と、そらせ車26と、第2の終端装置16と、を有する。一方、強調すべき点は、例えばモータ10のシャフトの一部が、互いが適切な距離で離間された2,3,4個の駆動シーブ部を形成するような、複数の隣り合う駆動シーブと同様の機能を果たす、単一の回転要素のその他の実施例が存在することである。
【0019】
図1はエレベータシャフト18の壁、または一つもしくは複数のガイドレールに直接または間接的に取り付けられたベルト監視ユニット30をさらに示す。さらに、図1は「第1の接続装置」のタイプの接続装置32と、「第2の接続装置」のタイプの更なる接続装置64と、を示す。接続装置32,64の両方が、ベルト12の各ベルト端部における各終端装置14または16から後方の部分、すなわち乗客かご4およびカウンタウェイト6を懸架するための引張力を受けていない部分に取り付けられる。
【0020】
かご4およびカウンタウェイト6を懸架する上記のタイプのものは公知であり、2:1サスペンションと呼ばれる。強調すべき点は、本発明は全ての公知のタイプのサスペンションと組み合わせて実施されうることである。
【0021】
図2〜5は、ベルト12の一部に取り付けられた第1の接続装置32を示す。ベルト12は、図2における閲覧者側を向いた第1の接続装置32の前端36からある長さで終端するか、あるいは、第1の接続装置32内部における、前記前端36と、以下に述べるねじ50との間で終端する。ベルト12は第1の接続装置32の反対側の後端38から出て、図2の図面の準備の目的上、符号40で切断されている。実際にはベルト12が第1の終端装置14へと続き、その後は前述のように更なる経路へと続くことを図1が示している。
【0022】
図示の実施例では、ベルトは、記号a,b,c,d,e,f,g,h,i,kで示された10本のコード42を含む。各コード42は、中心ストランドと、中心ストランドの周りに撚り合わされた6本のストランドと、を含む。各ストランドは、中心ワイヤと、中心ワイヤの周りに撚り合わされた6本のワイヤと、からなる。ワイヤは高強度鋼製の引き伸ばされたワイヤである。一般的な寸法は、図示の実施例では1.5〜3.5mmのコード直径であり、0.12〜0.4mmのワイヤ直径である。2本の隣り合うコード42の間にはそれぞれコード直径よりも幾分小さい寸法の間隙44がある。別の実施例では、間隙44はコード直径よりも大きい、またはコード直径と等しい幅を有する。コード42はコーティング材料46、一般的に合成ゴムまたはポリウレタンに埋設されており、これはまたコード42間の間隙44を埋める。この段落で述べたことは図示の実施例を参照される。本発明のその他の実施例は、その他の設計のコード、および/または、そのコンポーネントのその他の寸法、および/または、その他の材料、および/または、異なる数のコード42、を有する。通常、ベルト12は30〜100kNの終局引張強度を有する。本発明の更なる実施例では、ベルト12は2つの平面(上部平面48が図2に見られる)を有しておらず、それらの平面の一方に複数の長手方向リブが平行に設けられる。その場合、ベルト12のリブを有する側と接触する第1の接続装置32の壁面に、それらのリブを収容するための長手方向に延在する溝が設けられる。
【0023】
図2,3に最もよく見られるように、第1の接続装置32が、ねじである5つのコード接触要素50を含み、それぞれ、ねじ頭52と、シャンク54と、円錐先端部56と、を備える。各ねじ50は第1の接続装置32内の各ボア58と協働し、このボアは、(第2、第3の部位よりも直径の大きい)第1の部位と、(ねじ50よりも僅かに小さい直径を有する)ベルト12より上の第2の部位と、(第2の部位と同じ直径を有する)ベルト12より下の第3の部位と、を備える。図4に示される(ねじ50が部分的に第1の接続装置32にねじ込まれた)状態においては、各ねじ50のシャンク54の下部がボア58の第2の部位に配置されているのに対し、シャンク54の残りの部分とねじ頭52の大部分がボア58の第1の部位に配置される。より大きな直径を有する第1の部位を含む各ボア58は、第1の接続装置32を通してその上側から下側へと延在する(図2に示す第1の接続装置32の向きで考えた場合)。スロット60が第1の接続装置32を通してその前端36から後端38へと(図2に示す向きにおいて)水平に延在する。スロット60はベルト12を幾分かの僅かの隙間を介して収容するような形状および寸法を有する。図2〜5に示される本発明の実施例では、ねじ50を各ボア58内に図4の最初の位置から図5の最終位置へとねじ込んだとき、ねじ50は、隣り合う2つのコード42の間の短絡(直接的な電気的接続を形成させる)としての役割を果たす。図2,3と併せて図4に最もよく見られるように、ねじ50は、コードaとb、cとd、eとf、gとh、およびiとkの間に直接的な電気的接続を形成させる。ねじ50の各々を最下部に至らせることにより、ねじの先の尖った先端部56がそれぞれ2つの隣り合うコード42の間の隙間に容易に押し込まれるため、(図5に示す)使用時の位置にすることは多大な労力を必要としない簡単な作業であり、さらに、クランプタイプの接続装置の上部に作用する2本のねじを回転させることにより5本全てのコード接触要素を同時に使用時位置に配置するのではなく、各々の「短絡ブリッジ」が個別に(図5に示す)使用位置の状態にされる。
【0024】
各ボア58の前記の第1の部位は、ねじ50を回転させるのに用いるねじ回しが意図せずボア58から滑り落ちるのを防ぐように、ねじ回しの端部を適切な位置で支える役割を果たす。
【0025】
ねじ50を除き、第1の接続装置32は射出成形により塑性材料から製造される単一の要素である。射出成形後の状態では、ボア58はその壁面に雌ねじ山を有していない。むしろ、ねじ50を始めの位置から図4に示す半分を過ぎた位置まで各ボア58の第2の部位にねじ込んだときに、各ねじ50の雄ねじ山が設けられたシャンク54が塑性材料を雌ねじの形状に押し出す/変形させる。
【0026】
各ねじ50のシャンク54は2つの隣り合うコード42間の間隙よりも十分に大きい直径を有する。このことはシャンク54が実際に2つのコード42と直接、電気的接続を形成することを保証する。先端部56は雄ねじ山を有してもよく、有していなくてもよい。各ボア58の第2の部位について記載したのと同様に、各ねじ50のシャンク54は、図5に示す各ボア58のベルト12より下方の第3の部位へと「自身がねじ込まれる」。この状態では、雄ねじ山を有する各シャンク54がそれぞれ2つのコード42の間に挟まれて作用しており、それによりコーティング材料がそこから取り除かれて完璧な電気的接続部が確立されるのを確実にする。したがって、5本のねじ50はブリッジタイプのコード接触要素である。図5に示す使用時の端部位置では、各ねじ頭52の下面が各ボア58の肩部60に支えられる。
【0027】
図2,3は、ねじ50およびボア58が直線状に配置されておらず、2列にオフセット状に配置されているのを示す。これにより非常にコンパクトな配置がもたらされる。
【0028】
次に、本発明の「第2の接続装置」と表記されたタイプの図6〜9に示す接続装置64を参照する。第1の接続装置32と比較したときの第2の接続装置64の違いを最初に述べる。
【0029】
最初の相違点は、第2の接続装置64が、第1の接続装置32内のスロット60の場合のように、接続装置の一方の端部から他方の端部へと延在する「開放」スロットを有していないことである。むしろ、末端壁68で終端する箱型の深い凹部66を有し、その末端壁68の内面を図7の破線で示す。末端壁68は別として、凹部66はスロット60と同様の断面形状と寸法を有する。第2の接続装置64をベルト12に取り付けたとき、ベルト12の端面が末端壁68に接した状態でベルトの終端部分が凹部66内に配置される。凹部66はベルト12の終端部分を小さい隙間を介した状態で収容する。末端壁68は第2の接続装置64の止め部(stop portion)として作用し、止め部がスロット60を完全に閉鎖する機能は要求されていない。別の実施例では、第1の接続装置32に関連して示し述べたのと同様に、スロット60が第2の接続装置64を通して完全に貫通する開放通路として延在する。
【0030】
第2の相違点として、第2の接続装置64は6つのボア58と、6つのねじの形態のコード接触要素と、を含む。それらのねじのうちの4つには、第1の接続装置32のように参照符号50が付与されている。それらのねじ50は、第1の接続装置32の場合と同様の機能、すなわち、コードiとh、gとf、eとd、およびcとbの間に短絡を提供する(直接的な電気的接続を形成させる)。それらのねじ50は第1の接続装置32の場合と同様にそれぞれ2つの隣り合うコード42の間の隙間にねじ込まれる(第1の接続装置の場合とは異なる「ペア」のコード42を短絡する)。したがって、それら4本のねじ50はブリッジタイプのコード接触要素である。
【0031】
第3の相違点として、第2の接続装置64は2本のネジ50aを含み、これらのねじは、一方のねじ50aの軸が実質的にコードa(ベルト12の第1の側面に最も近いコード)の中心線と交差し、かつ、他方のねじ50aの軸が実質的にコードk(ベルト12の反対側の側面に最も近いコード)の中心線と交差するように、第2の接続装置64内に配置される。したがって、図8に示す状態から始めて、それらのねじ50aを第2の接続装置64内に深くねじ込むと、それらのねじはそれぞれコードa,kを貫通しあるいは突き抜ける。図9はねじ50aの最終的な、完全にねじ込まれた位置を示し、各シャンク54の下端部が各ボア58におけるベルト12より下方の第3の部位までねじ込まれている。したがって、ねじ50aの各々は、コードa,kのうちの1本のみと電気的接続を提供する。ねじ50aは前述のねじ50と同様の設計を有するが、第2の接続装置64におけるその特殊な位置により、前述のように、その他のねじ50とは異なる機能を有する。別の実施例では、ねじ50aのうち少なくとも一つの軸が、コード42の中心線からオフセットされており、コード42の中心線と、ベルト12の縁部に近い側のコード42の側部と、の間の位置にオフセットされる。
【0032】
第4の相違点として、2つのねじ50aと、1つのねじ50と、がベルト12の長手方向に対して垂直に延在する第1の直線上に配置され、その他の2つのねじ50が、前記の第1の直線から一定の距離を介して平行に延びる第2の直線上に配置され、第4のねじ50がそれらの2本の直線の間の中央線に配置される。
【0033】
第5の相違点として、第2の接続装置64が2つの導電素子70を含み、その各々が各凹部に収容された第1の部分72と、第2の接続装置64の後端面76から突出した分岐した第2の部分74と、を有する。後端面76は、ベルト12が凹部66内に挿入される前端面78の反対側である。第2の部分74の各々は、断面が矩形形状を有する防護壁75によって包囲される。
【0034】
前述の相違点は別として、第2の接続装置64は第1の接続装置32とよく似た構造を有する。第2の接続装置64は第1の接続装置32に比べ幾分大きく(ベルト12の長手方向に測定した場合)、第2の接続装置64が2つの突出したリブ80を有し、そのうちの一方のリブが第2の接続装置64の一方の側面から突出し、他方のリブが第2の接続装置64の他方の側面82から突出する点は言及する価値がある。双方のリブ80は、この実施例ではベルト12の平面と実質的に一致する共通の平面上にある。
【0035】
各ねじ50aが、各導電素子70の第1の部分72の丸い開口部を貫通する。製造時の状態では、各々の開口部は各ねじ50aのシャンク54よりも小さい半径を有する。ねじ50aの全長のうちの一部が各開口部にねじ込まれたとき、開口部の壁面に雌ねじ山が形成され、それにより導電素子70とねじ50aとの間に完璧な電気的接続が確立される。導電素子70は、平板状の金属から打ち抜かれる。
【0036】
図2〜9が示すように、全てのボア58および全てのねじ50,50aの軸は、ベルト12の平面(ベルト12の上面と下面との間の中間面を通して延びる平面として理解されたい)に対して垂直である。別の実施例では、その角度は90°よりも幾分大きいまたは小さい。
【0037】
図1に最もよく示されるように、ベルト12の「自由」端部(第2の終端装置16から出た、かご4およびカウンタウェイト6から引張荷重を受けていない部分)は、ベルト監視ユニット30まで延在するように十分長い。最初に述べた、第2の終端装置16から出た端面は、その終端部が図6,7に示されるように、第2の接続装置64内に挿入されている。ねじ50,50aが使用位置にねじ込まれた後に、第2の接続装置がベルト監視ユニット30にプラグで接続される。図10は、ベルト監視ユニット30が、プリント回路基板84と、底部ハウジング部86aおよび上部ハウジング部86bを備えたハウジング86と、を備えることを示す。ハウジング86内には、底部ハウジング部86aおよび/またはプリント回路基板84に固定されるとともにプリント回路基板84上のリードに電気的に接続された連結装置88が設けられる。第2の接続装置64が矢印90の方向に押し込まれて、導電素子70の第2の部分74が連結装置88の雌コネクタに挿入される。第2の接続装置64の底部壁は矩形の開口部92を備え、第2の接続装置64をハウジング86に予め固定するように、その開口部内に底部ハウジング部86aに設けられた突出部がスナップで取り付けられる。その後、図面の前方および後方に配置されたねじ96によって底部ハウジング部86aに固定されたブラケット94により、第2の接続装置64がベルト監視装置30に最終的に固定される。ブラケット94は第2の接続装置64に近接するようにあるいは接触さえするように配置される。ブラケット94はベルトを押圧して「張力逃がし」を提供する。すなわち、ベルト12の端部に及ぼされる引張力が第2の接続装置64に伝達されない。ブラケット94は、さらに第2の接続装置64を適切な位置で直接支えるための機能を有する。
【0038】
第2の接続装置64の図6〜9に示すリブ80は、それぞれ、底部ハウジング部86bに設けられた対応する溝に配置される。別の実施例では、各リブの底面および/または上面は底部ハウジング部86bに設けられたリブと係合する。したがって、リブ80は底部ハウジング部86b上の第2の接続装置64の適切な位置決めを確実にする役割を果たすとともに、第2の接続装置64の、矢印90と反対方向への意図しない移動を防止するための(更なる)器具としての役割を果たす。
【0039】
ベルト監視ユニット30は、電源に接続されるとともに回路を備え、その回路から電気的信号が導電素子70のうちの一つに供給される。図面および前述の記載からも明らかなように、全てのコードa〜kは、単一の直列接続で接続される。導電素子70のうちの一方に供給される信号への応答が他方の導電素子70からプリント回路基板84の回路へと出力される。応答信号が測定される。入力信号との有意性の違い(distinction of significance)すなわちベルト監視ユニット30に保存されたモデル応答信号との有意性の違いは、コード42全体における少なくとも1つの箇所にある程度の摩耗が生じていることを示す。ベルト監視装置30は、許容摩耗度と許容できない摩耗度とを区別するための回路および/またはソフトウェアを備えうる。
【0040】
別の実施例では、第2の部分74の各々は雌コネクタとして構成され、各コネクタ装置88は雄コネクタとして構成される。
【0041】
前述の実施例では、10本のコード42全てが単一の直列接続として連結される。例えば、第1の直列接続につながれた第1の組のコードa,b,c,dと、第2の直列接続につながれた第2の組のコードe,f,g,h,i,kと、を提供するその他の実施例が可能である。4個のノン・ブリッジタイプのねじ50aと、4個の導電素子と、が提供される。ベルト監視ユニット30は、2つの直列接続のそれぞれにおけるコード42の摩耗を監視するように設計される。別の実施例では、コード42の数およびコード接触要素の数が図示の実施例に比べて多いまたは少ない。
【0042】
別の実施例では、(図2〜9の場合のように)コード接触要素50,50aが全てベルト12の片側に配置されるのではなく、接続装置におけるコード接触要素のうちの一部がベルト12の片側に配置されるのに対し、残りがベルト12の反対側に配置される。特にこれらの実施例では、コード接触要素の全てを単一の列に配置することが可能である。
【0043】
別の実施例では、ボア58が図および前述の記載とは異なるように設計される。一つの選択肢は、各ボア58の第2および第3の部位に雌ねじを形成するのではなく、ボアの配置を、適切な位置でベルト12にコード接触要素を挿入するためのテンプレートとして設計することである。この場合、コード接触要素はベルト12内にねじ込まれるねじ(ここではボア58の壁とねじ係合しない)でもよく、あるいはキャリパ状の器具によりベルト内に押し込まれる釘型の要素であってもよい。
【0044】
例えば特許文献3および特許文献1のように、エレベータシステムベルト内のコードに信号を入力し、その応答信号によりベルトの摩耗を評価するベルト監視ユニットが知られている。こうした設計のベルト監視ユニットが本発明とともに用いられるのに適しており、その他の設計のベルト監視ユニットもまた使用されうる。
【0045】
本発明の更なる対象物は本質的に本発明に記載された接続装置である。接続装置は、エレベータシステムで用いられるように構成されたベルト(コーティング材料中に埋設されたコードを有する)に取り付けられるように構成される。接続装置はコード接触要素、一実施例ではねじを有する。コード接触要素の各々は、ブリッジタイプのコード接触要素として配置および設計されてもよく、または単一のコードのみに電気的接続を提供するノン・ブリッジタイプのコード接触要素として配置および設計されてもよい。本明細書のこの段落で言及した実施例では、一つまたは複数のブリッジタイプのコード接触要素は必須の特徴部ではない。この実施例は本明細書中に記載の一つ以上のその他の特徴部を備えうる。この実施例では、単一のコード、単一のコードの対、任意の複数のコード、または任意の複数のコードの対がベルト監視ユニット30に連結され、個別に、または1つ以上のコードの群で監視される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)互いに間隔を介した状態で長手方向に延在する複数のワイヤコードを含むとともに、該コード間の間隔内に延在する該コードのコーティングを含んだベルトであって、該ベルトが、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成された、ベルトと、
(b)前記コードとの電気的接続を提供する第1の数のコード接触要素を含んだ第1の接続装置と、
(c)前記コートとの電気的接続を提供する第2の数のコード接触要素を含むとともに、少なくとも2つの導電素子を含んだ第2の接続装置であって、前記導電素子の各々が、それぞれ前記コード接触要素のうちの一つと電気的に接続されており、前記導電素子が、前記コードを通流する電気的信号に基づいて前記コードの適切な状態を監視するベルト監視ユニットへの電気的接続を形成するように設けられた、第2の接続装置と、
を備え、
(d)前記第1および第2の接続装置のうち少なくとも一つが、2つのコードの間の間隔に延在してそれら2つのコードに電気的接続を提供する少なくとも一つのブリッジタイプのコード接触要素を含み、それにより前記2つのコードを電気的に接続することを備えた、アセンブリ。
【請求項2】
前記少なくとも一つのコード接触要素が、前記接続装置内に設けられたボアの壁面と係合するシャンク部を有し、かつその断面積が徐々に減少する端部を有する、ねじであることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記端部の少なくとも一部が雄ねじ山を有することを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記ボアの前記壁面が、前記ねじを前記接続装置に取り付けるようにねじ込むことによって形成される雌ねじ山を有することを特徴とする請求項2または3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記ボアが、間に間隙を有する少なくとも2つの部位を有し、前記ベルト部位が前記間隙内に配置されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記導電素子の少なくとも一つがスクリューピンによって貫通されて、一つのコードのみと電気的接続を提供することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記スクリューピンが、前記接続装置内のボアの壁面と係合するシャンク部を有するとともに前記スクリューピンの断面積が徐々に減少する端部を有しており、前記スクリューピンが実質的に各コードの幅の中心部分を貫通するように、前記スクリューピンが前記接続装置内に配置されることを特徴とする請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記第1および第2の接続装置の両方がそれぞれ複数のコード接触要素を含み、その各々が2つのコードの間の間隔内に延在してそれら2つのコードに電気的接続を提供することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記ベルト内のコードの数が2n本であり、前記第1の接続装置内の前記第1の数のブリッジタイプのコード接触要素の数がn個であり、前記第2の接続装置内の前記第2の数のブリッジタイプのコード接触要素の数がn−1個であり、前記第2の接続装置内の導電素子の数が2個であり、前記ベルト内の全てのコードが前記コード接触要素により電気的に直列に接続されており、前記アセンブリは、該アセンブリと前記ベルト監視ユニットとの電気的接続を前記第2の接続装置を介してのみ形成できるように構成されることを特徴とする請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記アセンブリが、ハウジングと、プリント回路基板と、前記ハウジングまたはプリント回路基板の少なくとも一つに固定されるとともに前記プリント回路基板に電気的に接続されたコネクタと、を備えた前記ベルト監視ユニットに電気的に接続され、
前記第2の接続装置がプラグ接続により前記コネクタに電気的に接続されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記第2の接続装置に近接するベルト部分が、固定ブラケットにより前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
ベルトへの接続装置の取付け方法であって、
互いに間隔を介した状態で長手方向に延在する複数のワイヤコードを含むとともに、該コード間の間隔内に延在する該コードのコーティングを含んだベルトであって、該ベルトが、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用のサスペンションベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごまたはカウンタウェイト用の駆動ベルトとして構成され、または、エレベータシステムで用いるかごおよびカウンタウェイト用の共用のサスペンションおよび駆動ベルトとして構成された、ベルトへの接続装置の取付け方法において、
前記接続装置が、その内部を通して貫通する開放通路として延在するスロット、または、その一方の端部に該スロットに関連した前記ベルトの止め部を備えたスロットを含み、
前記接続装置が少なくとも一つのボアと、該ボアの壁面と係合する1つのねじと、を含み、前記ボアが前記スロットを横切る軸を有しており、
前記方法が、前記ベルトの一部を前記スロット内に配置し、前記少なくとも1つのねじを回転させて、前記ねじの一部を2つのコードの間の間隔のうちの一つにねじ込んでその2つのコードと接触させ、それにより前記2つのコードの間に電気的接続を提供することを備えた、ベルトへの接続装置の取付け方法。
【請求項13】
複数の第1のねじを有する第1の接続装置を取り付け、それにより前記第1のねじの各々の部位がそれぞれ1対のコードの各々の間に電気的接続を提供し、
複数の第1のねじと2つの第2のねじとを有する第2の接続装置を取り付け、それにより前記第1のねじの各々の部位がそれぞれ1対のコードの各々の間に電気的接続を提供し、かつ、前記第2のねじの各々の部位がそれぞれ1本のコードのみと該第2のねじとの間に電気的接続を提供することを特徴とする請求項12に記載のベルトへの接続装置の取付け方法。
【請求項14】
前記第2のねじとベルト監視ユニットとの間に電気的接続を形成し、それにより電気的に直列に接続された全てのコードと、前記ベルト監視ユニットのコンポーネントと、を含んだ回路を構築することを特徴とする請求項13に記載のベルトへの接続装置の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−519607(P2013−519607A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552481(P2012−552481)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000255
【国際公開番号】WO2011/098847
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】