説明

接続装置

【課題】 接触子が、対向する電極や接続端子などと確実に接続でき、しかも側方からの外力で変形することを効果的に防止できる接続装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 スパイラル接触子11に対応する位置に開口穴15が設けられた保護部材10を、スパイラル接触子11が設けられた基体12に設置し、開口穴15内にスパイラル接触子11を収納する。そして、スパイラル接触子11をその側方から保護部材10によって囲む。このようにすると、基体12に設置される電子部品が押圧されると、保護部材10も基体12に向けて収縮するように弾性変形するため、スパイラル接触子11と前記電子部品の電極部とが確実に接触して導通されるようになる。また、スパイラル接触子11が、その側方から与えられる外力によって変形させられることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIC(集積回路)等の電子部品の外部接続部と接続される接触子を有する接続装置に係わり、特に、接触子に対して側方から与えられる外力から接触子を保護することができる接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばIC(集積回路)等の電子部品の外部接続部とICが装着されるICソケットなどの接続装置として、弾性変形可能な複数の接触子が設けられたものがある。また、下記特許文献1には、弾性接点が渦巻状に形成されたスパイラル接触子を用いた接続装置が開示されている。
【0003】
下記特許文献1に記載の接続装置は、絶縁基板に複数のスルーホールが形成され、絶縁基板の上面には、個々のスルーホールに導通する複数のスパイラル接触子が設けられている。それぞれのスパイラル接触子は、絶縁基板の上面に沿って平面形状に形成されたものであり、半導体デバイスなどに形成された複数の球状接続端子のそれぞれによってスパイラル接触子が押圧されると、スパイラル接触子は前記スルーホール内に向けて弾性変形し、球状接続端子とスパイラル接触子とが接続できるようになっている。
【特許文献1】特開2002−175859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に記載されている従来のスパイラル接触子は、絶縁基板の表面と同一面に形成されているため、スパイラル接触子と接触する接続端子は、前記球状接続端子などに限られ、ICデバイスなどのように平面的な電極を有する電子部品との導通には適していない。
【0005】
また、一般には、スパイラル接触子を、スパイラル接触子が設けられる基板の表面から隆起するように形成することで、平面電極または球状接続端子などと確実に接触しやすくなる。しかし、前記基板の表面から隆起したスパイラル接触子では、スパイラル接触子の側方から外力が作用したときに、スパイラル接触子が側方に向けて変形し、電極や接続端子との確実な接触が困難になる欠点がある。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、接触子が、対向する電極や接続端子などと確実に接続でき、しかも側方からの外力で変形することを効果的に防止できる接続装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基体の表面から隆起する多数の弾性変形可能な導電性の接触子が設けられた接続装置において、
前記基体の表面には、前記接触子の側方の少なくとも一部に位置する保護部材が設けられており、この保護部材の上端は前記接触子の上端よりも前記基体から離れた上方に位置し、且つ前記保護部材は前記基体に向けて弾性収縮可能であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の接続装置では、基体から弾性変形可能な接触子が隆起しているので、ICなどの電子部品に設けられた電極や接続端子が、接触子に確実に接触して導通するようになる。そして、基体の表面には、弾性収縮可能な保護部材が設けられているため、対面する電子部品が押圧されたときに接触子と前記電極などとの導通を妨げることがなく、しかも電子部品等が装着される前の時点において、側方からの外力によって接触子が変形することを防止しやすくなる。
【0009】
本発明の基体は、回路基板、コネクタのベース、あるいはICパッケージなどの電子部品そのものなどである。
【0010】
本発明は、好ましくは、各前記接触子の周囲が前記保護部材により囲まれているものである。
【0011】
それぞれの接触子が保護部材で囲まれていることにより、多数の接触子が配列している場合に、個々の接触子を保護しやすくなる。
【0012】
例えば、前記保護部材は弾性体のシートであり、前記保護部材には、それぞれの前記接触子に対応する位置に前記接触子が挿入される開口穴が設けられているものである。
【0013】
あるいは、前記保護部材は前記接触子ごとに個別に設けられており、それぞれの前記保護部材に、前記接触子が挿入される挿入部が形成されていることが好ましい。
【0014】
なお、上記において、個々の接触子ごとに設けられているそれぞれの保護部材は互いに独立しているものであってもよいし、またはリブなどで互いに連結されているものであってもよい。
【0015】
または、前記保護部材は、複数の前記接触子の集合体ごとに設けられてもよい。
本発明では、好ましくは、前記接触子は、平面形状が渦巻状である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接続装置は、基体から接触子が隆起形成されているものであるため、接触子が、対向する相手側の電極や接続端子と確実に接触できるようになる。また、基体から隆起する個々の接触子が側方から保護されるため、側方からの外力により接触子が変形するなどの問題を防止しやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態の接続装置を示す分解斜視図、図2は本発明の保護部材の平面図、図3は本発明の保護部材のさらに好ましい例を示す斜視図、図4は図1の4−4線での切断断面図である。なお、図3においては、小径の貫通孔を設けた構造を明確にするために、保護部材の厚さを実際よりも厚く示している。
【0018】
本実施の形態では、基体12が、回路基板13と、回路基板13の表面13aに設けられたシート部材14と、シート部材14の表面(図示Z1方向の面)に設けられて、導電性材料で渦巻き状に形成された複数のスパイラル接触子11とで構成されている。
【0019】
シート部材14は合成樹脂製であり、表面にスパイラル接触子11が形成され、回路基板13の表面13aに接着剤などで固定されている。
【0020】
スパイラル接触子11は、互いに分離されて独立して形成されているものであり、例えば銅、ニッケル、あるいは銅とニッケルとの複合材料、銅メッキされたニッケルなどの導電性薄板からエッチング形成されている。あるいは、スパイラル接触子11が、銅などの導電性材料によってメッキ形成されているものであってもよい。
【0021】
回路基板13には、表面13aから裏面(図示Z2方向の面)13bに貫通する多数のスルーホールが設けられ、スルーホールの内周面には導電層がメッキなどの手段で形成されている。個々のスパイラル接触子11は、それぞれのスルーホールの上に位置してスルーホール内の導電層と導通されている。また、回路基板13の裏面13bには、それぞれのスルーホールの下に位置してスルーホール内の導電層に導通される端子部が設けられており、個々の端子部と個々のスパイラル接触子11とが、スルーホール内の導電層を介して1対1で導通している。回路基板13の裏面13bに設けられる端子部は、バンプあるいはスパイラル接触子などの弾性変形可能な接触子である。
【0022】
このように、回路基板13の表面13aにスパイラル接触子11が設けられ、裏面13bに端子部が設けられたものは、マザー回路基板と、ICまたはICを収納したICパッケージなどの電子部品との間に介在して、マザー回路基板上の回路部と電子部品の電極部とを導通させるインターポーザーとして機能できる。
【0023】
あるいは、回路基板13の表面13aまたは裏面13bに、多数の導電パターンが設けられて、それぞれの導電パターンが個々のスパイラル接触子11に導通されており、回路基板13の表面13aまたは裏面13bに、前記導電パターンに接続された他の回路部品が設けられているものであってもよい。
【0024】
シート部材14は、ポリイミド等の電気的絶縁性に優れた樹脂などで形成される。シート部材14には、各スパイラル接触子11と厚さ方向(図示Z1−Z2方向)にて対向する位置に、図4に示すように、複数の貫通穴14aが設けられている。スパイラル接触子11には、螺旋状に形成された接触子片11aが設けられ、接触子片11aの基部が、貫通穴14aの周囲において、シート部材14に接着されており、接触子片11aの基部が、前記スルーホール内の導電層に導通されている。
【0025】
また、個々のスパイラル接触子11は、図4に示すように、接触子片11aの巻き中心が回路基板13の表面13aから離れるようにほぼ円錐形状となるように隆起形成されている。
【0026】
回路基板13の上には保護部材10が設置される。保護部材10は、たとえば発泡樹脂、ゴム、合成ゴム等のような弾性を有する非導電性の合成樹脂で形成されている。図1と図2に示す保護部材10はシート材であり、このシート材は、回路基板13のスパイラル接触子11が配列されている領域の全域を覆うことのできる広さを有している。
【0027】
図1と図2に示すように、保護部材10には、複数の貫通した開口穴15が、スパイラル接触子11に対応する位置に設けられており、それぞれの開口穴15は、基体12上のスパイラル接触子11と同じ間隔で同じ数だけ配置されている。
【0028】
この保護部材10が基体12の表面に設置されて接着剤などによってシート部材14の表面に接着固定される。その状態で、図4に示すように、複数のスパイラル接触子11が、保護部材10のそれぞれの開口穴15内に収納される。
【0029】
個々のスパイラル接触子11は、その周囲の全周が保護部材10で囲まれるようになる。また、好ましくは図4に示すように、シート部材14の上面(図示Z1方向の面)から保護部材10の上面までの高さ寸法が、シート部材14の上面からスパイラル接触子11の隆起上端までの高さ寸法と同一かまたはそれよりも高く形成されている。
【0030】
図4に示すように、基体12に電子部品が設置されていない状態では、スパイラル接触子11が回路基板13の表面13aから隆起しているが、それぞれのスパイラル接触子11の周囲が保護部材10で囲まれているため、スパイラル接触子11に側方からの外力が作用したときに、その外力がスパイラル接触子11に直接に作用することがなく、スパイラル接触子11が側方に変形することを防止できる。
【0031】
基体12の上には、ICまたはICパッケージなどの電子部品が設置される。この電子部品の下面には、それぞれのスパイラル接触子11に対向する電極部が設けられている。この電極部は平面電極であってもよいし、あるいは球状接続端子や円錐状の突出端子などであってもよい。
【0032】
電子部品が、その電極が個々のスパイラル接触子11に対向するように設置されると、図示しないホルダなどや挟持部材などの固定部材によって、電子部品が回路基板13に向けて押圧された状態で、電子部品が位置決めされて固定される。電子部品が押圧されると、図4に矢印で示すように、電子部品の下面によって保護部材10が回路基板13に向けて圧縮させられるとともに、電子部品に設けられた電極部が個々のスパイラル接触子11を押圧し、スパイラル接触子11も回路基板13に向けて収縮するように弾性変形する。よって、個々のスパイラル接触子11と、電子部品の電極部とが確実に接触して導通されるようになる。
【0033】
前記の動作を実現するためには、保護部材10は図示Z2方向へ収縮する際の弾性係数が低いこと、および回路基板13に向けて圧縮させたときの圧縮時の寸法が薄いことが好ましい。保護部材10が発泡樹脂材料などのように内部に多数の空隙を有するものである場合には、収縮方向の弾性係数を低くでき、圧縮時の厚み寸法を薄くできる。
【0034】
しかし、保護部材10の弾性係数をさらに低くし、また圧縮時の寸法を薄くするためには、前記発泡樹脂材料またはそれ以外のゴム材料に対して、図3に示すように、図示X1−X2方向および図示Y1−Y2方向へ延びる多数の小径の、小貫通孔16などのような空隙部や凹部を加工することが好ましい。
【0035】
図5は本発明の第2の実施の形態の接続装置を示す斜視図である。図5において、第1の実施の形態と同じ構造部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
図5に示すように、本実施の形態の接続装置には、個々のスパイラル接触子11に対して個別に対応する保護部材10Aが設けられている。保護部材10Aは筒形状であり、上下に貫通する挿入部15Aを有している。この保護部材10Aは、個々のスパイラル接触子11を囲むように設置される。
【0037】
保護部材10Aは、発泡樹脂材料やゴム材料などで形成されているものであり、好ましくは多数の小径の、小貫通孔16が形成されて、圧縮方向の弾性係数が低下させられ、且つ圧縮時の厚さ寸法を薄くできるようにされている。
【0038】
個々の保護部材10Aは、その内部にスパイラル接触子11が入った状態で、シート部材14の上面に接着剤などによって固定されている。なお、このときの固定作業が容易なように、複数の保護部材10Aが、細いリブのような連結部によって互いに連結されていてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態においても、保護部材10Aの上面が、スパイラル接触子11の上端の高さ位置か、またはそれよりも高いことが好ましい。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、基体12は回路基板13を有するものに限られず、この基体12がICパッケージなどの電子部品そのものであり、この電子部品の電極部にスパイラル接触子および保護部材が設けられているものであってもよい。
【0041】
また、前記実施の形態では、基体12上において、多数のスパイラル接触子11が図示X1−X2方向および図示Y1−Y2方向に向けて列を成して配列されているが、各スパイラル接触子11が円弧状などに沿って配列されているものであってもよい。
【0042】
また保護部材としては、必ずしも個々のスパイラル接触子11を個別に囲むものには限られず、例えば、2個または3個またはそれ以上の数のスパイラル接触子11の集合体を囲むような開口穴が設けられたものを使用することもできる。あるいは、全てのスパイラル接触子11を囲むような大きな開口穴を有する保護部材であってもよい。またはスパイラル接触子11の周囲全周を囲むのではなく、いずれか2方向のみを囲むような保護部材を使用してもよい。
【0043】
また、接触子は、スパイラル接触子11に限られず、帯状の弾性片が設けられた接触子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態の接続装置を示す分解斜視図、
【図2】本発明の保護部材の平面図、
【図3】本発明の保護部材のさらに好ましい例を示す斜視図、
【図4】図1の4−4線での切断断面図、
【図5】本発明の第2の実施の形態の接続装置を示す斜視図
【符号の説明】
【0045】
10,10A 保護部材
11 スパイラル接触子
12 基体
13 回路基板
14 シート部材
15 開口穴
15A 挿入部
16 小貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面から隆起する多数の弾性変形可能な導電性の接触子が設けられた接続装置において、
前記基体の表面には、前記接触子の側方の少なくとも一部に位置する保護部材が設けられており、この保護部材の上端は前記接触子の上端よりも前記基体から離れた上方に位置し、且つ前記保護部材は前記基体に向けて弾性収縮可能であることを特徴とする接続装置。
【請求項2】
各前記接触子の周囲が前記保護部材により囲まれている請求項1記載の接続装置。
【請求項3】
前記保護部材は弾性体のシートであり、前記保護部材には、それぞれの前記接触子に対応する位置に前記接触子が挿入される開口穴が設けられている請求項2記載の接続装置。
【請求項4】
前記保護部材は前記接触子ごとに個別に設けられており、それぞれの前記保護部材に、前記接触子が挿入される挿入部が形成されている請求項2記載の接続装置。
【請求項5】
前記保護部材は、複数の前記接触子の集合体ごとに設けられている請求項1記載の接続装置。
【請求項6】
前記接触子は、平面形状が渦巻状である請求項1ないし5のいずれかに記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−156271(P2006−156271A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348122(P2004−348122)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】