説明

接触ガイド部材の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュール

【課題】接触ガイド部材の監視を最小のエネルギー費において、好ましくは外部の有線接続なしで、軸受箱または線形ガイド装置を大きく改造することなく、可能にする手段を提供する。
【解決手段】モジュール10は、軸受箱72に収納されている軸受80の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視する。上記モジュール10は、少なくとも1つの状態センサ、および電気回路を備えている。少なくとも1つの当該状態センサは、上記物理量を測定する電気信号を供給する。当該電気回路は、上記状態センサと接続されている、上記状態センサの照会回路、監視装置のための給電回路、およびガイド部材80の変位センサ58と接続されている節電回路を備えている。当該節電回路は、変位センサ58によって測定されたガイド部材80の動作の特徴的な物理量が、所定の時間にわたって所定の閾値を上回るときに、上記照会回路を再稼動させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、物理量(特に接触ガイド部材の状態の特徴的な物理量)を監視する自動モジュールに関する。本発明の範囲において、接触ガイド部材という用語は、線形または回転式のガイダンスにとっての任意の滑動する軸受ガイド部材を指す。上記用語は、回転する滑らかな球体またはローラベアリングを指し、軸受箱に収納されている軸受を特に指す。また、上記用語は、線形のガイド装置(特に線形軌道上を転がるローラを備えている板をスライドさせることによって線形軌道上を円運動する板を備えている種類のを線形のガイド装置)を指す。また、上記用語は、線形軸受、線形のローラベアリングおよびボールネジのナットを指す。
【0002】
〔背景技術〕
特に交通機関、エネルギー生産または工業生産に関連する、いくつかの用途において、設備の信頼性および可用性に対する要求は特に厳しい。これらの要求は、上記設備の損耗品(特に回転部材のガイド軸受(例えば、オルタネータシャフトまたは軌条の軸受)の監視の必要をもたらす。
【0003】
しかし、これらの軸受は、不良の発生までの非常に長い潜在的な耐用年数を有しており、当該耐用年数は、例えば、ローラベアリングに対する数十億の回転数であり得るが、過酷な動作条件において減少し得る。ローラベアリングの不良は、種々の原因(特に詰まり、充填、摩耗、割れ、保持器の破裂、腐食または欠け)を有し得、軌道面または回転体の表面の、材料疲労による破損の一形態である。
【0004】
このような背景において、それらの状態を点検するための一定期間における軸受けの分解からなる組織的な予防のための保守管理は、このように点検された軸受けの大部分が不良を有していないので、高い固定費用および非常に相関する有効性をともなう。
【0005】
したがって、継続的な軸受の監視は、特に可用性および信頼性の観点から、設備のフェイルセーフ動作の重要な要因を代表している。
【0006】
文献DE10 2008 046 202には、回転部材の熱産生を利用して熱電変換器を介して監視モジュールの電気回路に電力供給する、回転部材の状態を監視する自動モジュールが提案されている。一実施形態によれば、熱電変換器および結合されているそのヒートシンクは、回転部材上に備え付けられており、当該回転部材の回転はヒートシンクに冷却用の気流をもたらす。第2の実施形態によれば、熱電変換器およびそのヒートシンクは固定されており、装置は、ヒートシンクにおいて強制気流を生じさせる、回転部材と結合されているファンをさらに備えている。しかし、この装置は、十分な温度勾配が見られない軸受箱(例えば軸箱または変速装置)に収納されている軸受の監視に適していない。
【0007】
文献DE10 2007 017 461には、電気回路の周囲において利用可能な熱流を利用して、ゼーベック効果を用いて電圧を発生させる熱電式発電機を含んでいる、電気回路に電力供給する自動モジュールが記載されている。上記モジュールは、熱電式発電機の出力電圧を安定させる回路をさらに備えている。もとの位置における使用にとって好適な、筐体にこのモジュールを組み込む配置は、なされていない。したがって、上記モジュールは、過酷な環境における使用に適していない。
【0008】
文献DE10 2007 056 150には、穴を有している壁によって規定されている中間部に存在する物理量を計測する自動モジュールが記載されている。上記自動モジュールは、当該物理量を測定するセンサ、当該センサに電力供給する熱電センサ、熱電変換器と結合されているヒートシンク、およびセンサによって物理量の計測を可能にするために壁の穴へ挿入されることを目的としているねじを備えている。上記ねじは、熱電変換器およびヒートシンクを介して、上記中間部および外側の間の熱伝導体として作用する。さらに無線の測定通信手段が検討されている。しかし、上記試験的な装置は、過酷な産業上の環境における使用に不適当であると分かっている。
【0009】
同様の所見が、線形のガイド部材(特にローラガイド手段またはボールパッドガイド手段)の状態の監視に関してなされ得る。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、以上において確認された従来技術の欠点のすべてまたはいくつかを改善することであり、より詳細には、接触ガイド部材(特に軸受箱または線形ガイド装置に収納されている軸受)の監視を最小のエネルギー費において、好ましくは外部の有線接続なしで、軸受箱または線形ガイド装置を大きく改造することなく、可能にする手段を提供することである。
【0011】
本発明の一局面によれば、本発明は、回転部材(特に車軸頭)をガイドする軸受を収納する空洞を規定している軸受箱の本体、上記空洞を密閉している軸受箱の覆い、およびアコスティックエミッションセンサを備えている軸受箱に関する。当該アコスティックエミッションセンサは、上記軸受箱の外部に取り付けられており、当該アコスティックエミッションセンサが、軸受内部の局所的な微小の変位から生じている壁に伝わる一時的な弾性波の検出に好適であるように、上記軸受箱の壁の外面と機械的に連結されている音響結合面を有している。
【0012】
軸箱の外壁に対するセンサの位置決めは、既存の軸受箱に対する目立たない組立てを可能にし、軸受箱の再度の適性試験を回避可能にする。特に、設備の安全性が重要な技術分野(例えば、鉄道の用途または電気核的な用途)における軸受箱の適性試験は、長期にわたって広範な荷重ベンチテストを必要とすることに留意すべきである。センサの位置決めは、既存の軸受箱に対する改造をさらに可能にする。
【0013】
軸受が収納されている空洞と対向する軸受箱の表面から隔てて配置されても、アコスティックエミッションセンサは軸受の状態を示す信号を供給可能であることが、すべて予想に反して実際に示されている。
【0014】
この型のセンサは、低いエネルギー消費を有しており、したがって外部における有線の電気接続を有していない軸受箱の計測器にとって特に好適である。また、そのようなセンサからの信号の処理は、単純であり得、したがって低い程度のエネルギーを消費する。
【0015】
多くの用途において、軸箱と強固に接続されている、軸箱の固定要素(以下において一般的に固定リングと言及される)は、軸受の回転軸について均一な負荷を受けていないどころか、負荷のほとんどは、軸受の回転軸について限られた角度の領域(例えば、180°未満、実際には120°未満の領域)に生じていることが観察されている。一般にこの観察は、軸受の回転軸が水平である用途、またはより一般的に重力方向を決める縦軸を有している斜軸である用途についてなされている。また、これは、例えば軸箱についての場合であり、この場合における角度のある領域は、一般的に、上方に開いており、車両の重さのほとんどを支えている軸受の外部リングの部分と対応している。また、これは、風力発電機の元軸についての場合であり、この場合における角度のある領域は、下方に向かうことに好適であり、風力発電機の元軸およびプロペラからなる回転要素の重量のほとんどを担っている区域と対応している。このような状況において、負荷区域と同じ角度のある領域に(可能であれば負荷区域に対応する固定リングの部分の直近に)音響結合壁を配置することを考慮することが好ましい。
【0016】
好ましい実施形態によれば、アコスティックエミッションセンサは圧電変換器を備えている。当該圧電変換器は、実際のセンサおよび続く信号処理の両方による電力消費の最小化にとって特に好適である。実際に、そのようなセンサは、より低い信号増幅を可能にする優れた信号対雑音比を有している。
【0017】
アコスティックエミッションセンサは、アコスティックエミッション信号と軸受に固有の特徴を比較し、軸受の特徴的な信号を発するために、アコスティックエミッションセンサによって発せられたアコスティックエミッション信号を処理する電気回路を備えている監視モジュールに組み込まれ得る。
【0018】
モジュールは、アコスティックエミッションセンサおよび電気回路を保護するための筺体を好ましく備え得る。当該筐体は、軸受箱に対する取り付けのための少なくとも1つの機械的な接点を備えている。
【0019】
上記監視モジュールは、電気的な処理回路と接続されている軸受の温度センサおよび/または回転速度センサをさらに備え得、軸受の特徴的な信号は、測定された温度および/または速度に依存する。より詳細には、軸受に固有の特徴は、温度センサによって測定された温度および/または速度センサによって測定された速度に依存し得る。
【0020】
監視モジュールは、処理回路および送信回路と接続されている給電回路をさらに備え得る。上記給電回路は、監視モジュールの密閉された筐体に好ましく組み込まれる。また、軸受の回転によって放散される熱を利用する好ましい一実施形態によれば、監視モジュールは、
給電回路に組み込まれている熱電変換器
軸受箱の内側から上記熱電変換器に移動する熱流を導く軸受板
上記熱電変換器から外部に移動する熱流を放出させる上記軸受箱の外部に突出するように配置されている冷却ヒートシンク
上記冷却ヒートシンクを上記軸受板から絶縁する少なくとも1つの絶縁性の熱シールを備え得る。
【0021】
軸受箱の計測器の自動的な電力供給(すなわち外部にある有線の電力供給接続を有していない)は、このように実現される。
【0022】
軸受板は軸受箱の熱結合壁と好ましく接している。アコスティックエミッションセンサは軸受板と直接に接続され得る。この場合において、軸受板は、アコスティックエミッションセンサおよび軸受箱の壁の間における機械的な結合点としての、熱伝導に関する二重の機能を有している。
【0023】
一実施形態によれば、計測器の筐体は、アコスティックエミッションセンサ、処理回路、熱電変換器、および適用可能な場合に送信回路の少なくとも一部を収納するために使用される。この計測器の筐体は、ヒートシンク、軸受板、および熱シールから少なくとも部分的になり得る。
【0024】
熱電センサが使用されるとき、熱電センサは軸受板上に配置され得る。適用可能な場合に、軸受板が軸受を収納する空洞の内部に入るように、軸受箱にダクトを備え付けることが可能である。
【0025】
計測器の筐体は、熱電変換器およびアコスティックエミッションセンサを収納する密閉されている1つ以上の空洞を、軸受板および冷却ヒートシンクとともに形成する本体を備えている。好ましい一実施形態によれば、アコスティックエミッションセンサは、軸受内部の局所的な微小変位から生じる一時的な弾性波を、アコスティックエミッションセンサに送るために、軸受箱の壁との音響接続面をもたらす計測器の筐体の本体と結合されている。その役割のために、軸受板は軸受箱に対する熱界面の壁を備えており、当該壁は、軸受箱の覆いまたは本体の外部にある高温面と接触させることを目的としている。この熱界面の壁は、筐体本体の音響接続面と直交していることが好ましい。この配置は、熱電変換器へ熱を送る軸受板および軸受箱の間、ならびに軸受箱の壁および音響接続面の間の良好な接続を保証可能にしている。
【0026】
軸受箱の覆いは、筐体の一部を少なくとも収納している、外部に開口している筐体を好ましく備え得る。当該筐体は、熱結合壁の外面および音響結合壁の外面からなる少なくとも2つの直交する面を有している。
【0027】
絶縁性の熱シールは、本体および冷却ヒートシンクの間、または本体および軸受板の間に優先的に配置される。同様に、本体は絶縁シールのすべてまたは一部を形成するために断熱材からなり得る。この場合、絶縁体という用語は、軸受板およびヒートシンクの構成材料の熱伝導性と比べて、少なくとも5倍、好ましくは10倍低い伝導性を有している材料を指す。
【0028】
例えば、選択される計測器の筐体の本体の構成材料は、約26Wm−1−1の熱伝導性を有しているステンレス鋼であり得、軸受板は、約390Wm−1−1の熱伝導性を有している銅製であり、ヒートシンクは、約230Wm−1−1の熱伝導性を有しているアルミニウム製である。
【0029】
予想される使用条件において酸化を受ける材料(例えば銅)が軸受板のために選択される場合、外気またはより一般的に外部環境から完全に保護されることは、軸受板にとって好ましい。したがって、計測器の筐体の本体は、熱源として作用する軸受箱の壁(例えば結合壁)と接触する面以外のすべての面上にある軸受板を収納することが検討される。さらに、厳しい外部環境から軸受板を保護するために、計測器の筐体の本体と軸受箱との間に配置されているシール(可能な場合に熱シール)を検討可能である。したがって、計測器の筐体の本体は、予想される周囲の使用条件(特に−40〜+150℃の間の大気)において、好ましくは防錆であるか、または少なくとも深部において防錆であることが好ましい。
【0030】
モジュールは、部品製造または組立て関する任意の寸法公差に関わらず、冷却ヒートシンクと軸受板との間にはさまれている熱電変換器が、制御された接触圧力を用いて固定されるように、冷却ヒートシンクと熱電変換器との間もしくは熱電変換器と軸受板との間に配置されている変形可能な熱伝導性の材料製の少なくとも1つのバッファ、または熱電変換器の両側にある2つのパッドを備え得る。
【0031】
このようなバッファの存在によって、厳しい振動環境において、その機械的強度をもたらす計測器の筐体の部分の設計、ならびに熱および/または音響の十分な伝導をもたらす部分の設計を、モジュールの設計および製造の間において分離可能である。
【0032】
バッファのために、非常に低い熱的接触インピーダンスを有している材料が好ましく選択される。以下の(1)および(2)を考慮すると、ヒートシンク、好ましくは軸受板より低い熱的インピーダンスを有している材料は、(複数の)バッファのために選択される。(1)軸受板、軸受板と熱電変換器との間の任意のバッファ、熱電変換器自体、熱電変換器とヒートシンクとの間の任意のバッファは、軸受箱の壁からなる熱源と外気からなる冷却源との間に、熱的に直列接続して配置されている。(2)これらの要素は熱的インピーダンスを有している。
【0033】
特に、金属粒子を付与した柔軟性のあるエラストマーシートが、バッファのために選択される。また、金属粒子を付与した熱伝導性のグリースが選択され得る。
【0034】
ヒートシンクと軸受板との間の最大位置許容誤差より大きいストロークを吸収するため、および熱変動の場合における材料の膨張差によって引き起こされる相対運動を吸収するために、圧縮時に弾性変形および/または塑性変形するバッファが好適に使用される。十分な結果は、ガラス繊維を付与した0.5mm〜5mmのシート(60〜180kPaまでのヤング率、および米国材料試験協会D2240−02規格によって測定された35のショア00硬度を有している)を用いて得られている。
【0035】
一実施形態によれば、監視モジュールは、無線電送アンテナ、および当該アンテナと接続されている電送回路をさらに備えている。このアンテナは、アンテナの最大ゲインに対応する周波数範囲の電磁波を少なくとも透過させる材料製の覆いによって密閉されている冷却ヒートシンクの空洞に収納され得る。したがって、アンテナは、特にモジュールが厳しい環境(例えば、鉄道車両の台車)に設置されるときに、保護されている。
【0036】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は、軸箱に配置されている軸受の磨耗を監視する方法に関し、上記軸箱は、軸受が収納されている箱本体および当該箱本体を密閉している箱の覆いを備えており、アコスティックエミッションセンサは、軸受内部の局所的な微小変位から生じている外壁に伝わる一時的な弾性波を測定するために、当該箱の外壁と機械的と接続されている。
【0037】
測定された弾性波は、軸受の状態を検査するために、軸受に固有の特徴と比較され得ることが好ましい。
【0038】
また、箱内部の温度を測定し、測定された弾性波および温度に応じて軸受の状態を検査することが可能である。
【0039】
また、軸受の回転速度が所定の時間にわたって所定の閾値未満のとき、回転速度を測定すること、および軸受の状態の検査を中断することが可能である。
【0040】
本発明のさらなる局面によれば、本発明の目的は、回転式または線形の接触ガイド部材(例えば、ガイド部材の状況を監視する、ローラベアリングもしくは平滑軸受、線形ローラもしくはボールネジ、またはローラベアリングガイド装置)の直接的な環境において利用可能なエネルギーのみを用いた自動監視モジュールを提供することである。特に、本発明は、接触ガイド部材の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュールに関する。当該モジュールは、
物理量を測定する電気信号を供給する、少なくとも1つの状態センサ、
電気回路、
給電回路に組み込まれている熱電変換器、
軸受箱の内側から熱電変換器に移動する熱流を導く軸受板、
熱電変換器から外部に熱伝導によって移動する熱流を放出させる冷却ヒートシンク、
冷却ヒートシンクを軸受板から絶縁する少なくとも1つの絶縁性の熱シール
を備えている。上記電気回路は、状態センサに接続されている、状態センサの照会回路、監視装置のための給電回路を備えている。
【0041】
このように、ガイド部材によって生成された熱エネルギーが使用され、軸受板によって導かれた熱流束によって運ばれたこのエネルギーは、冷却ヒートシンクを介した冷却源を備えている熱電変換器によって変換される。
【0042】
モジュールは、ヒートシンク、軸受板および熱シールから少なくとも部分的になる電気回路を収納する計測器の筐体を好ましく備えており、計測器の筐体は、ガイド部材と接続されている支持部材に対する取り付けするための少なくとも1つの機械的な接点を備えている。これは、ガイド部材と接続される支持部材に対する実装にとって好適な単一のアセンブリをもたらす。この支持部材は、例えば、軸受箱、軸箱、変速装置、クランク室または風力発電機の軸受箱であり得る。また、この支持部材は、線形のガイドシステムの可動板からなり得、当該板は、ローラ、または固定されたガイド軌道に対して回転するボールにとっての回路を備えている。
【0043】
支持部材が軸受を収納するための箱である場合、軸受板は、当該箱の外壁と直接に接触させること、または当該箱の内側に入れることについて考慮され得る。第1の解決策は、モジュールを用いて改造された既存の軸受箱をともなうすべての場合において好ましい。
【0044】
好ましい一実施形態によれば、計測器の筐体は、軸受板とヒートシンクとの間に挿入されている本体をさらに備えており、当該本体は、熱電変換器を収納するための空洞を、軸受板およびヒートシンクとともに形成している。したがって、(複数の)絶縁性の熱シールは、本体と冷却ヒートシンクとの間および/または本体と軸受板との間に配置され得る。本体の構成材料は、本体が絶縁性の熱シールまたはその一部として機能するように、断熱材からなり得る。この場合、絶縁体という用語は、上述の通り、軸受板およびヒートシンクの構成材料の熱伝導性と比べて、少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍低い伝導性を有している材料を指す。
【0045】
予想される使用条件において酸化を受ける材料(例えば銅)が軸受板のために選択される場合、外気またはより一般的に外部環境から完全に保護されることは、軸受板にとって好ましい。したがって、監視モジュールの計測器の筐体の本体は、熱源として作用する軸受箱の壁(例えば結合壁)と接触する面以外のすべての面上にある軸受板を収納することが検討される。さらに、計測器の筐体の本体と軸受箱との間に配置されており、軸受板に入っているシール(可能であれば熱シール)は、厳しい外部環境から軸受板を保護することが可能である。
【0046】
熱電変換器は、ヒートシンクと軸受板との間にはさまれている。これらの要素の間における十分な接触圧力を証明し、モジュールの組立てを容易にするために、上記モジュールは、冷却ヒートシンクと熱電変換器との間および/または熱電変換器と軸受板との間に配置されている、変形可能な熱伝導性の材料製の少なくとも1つのバッファを好ましく備えている。
【0047】
好ましい一実施形態によれば、電子回路は、電送回路と接続されている無線電送アンテナを備えている。厳しい環境における保護のために、アンテナは、アンテナの最大ゲインに対応する周波数範囲の電磁波を少なくとも透過させる材料製の覆いによって密閉されている冷却ヒートシンクの空洞に特に収納され得る。
【0048】
電気回路は、軸受回転のセンサ信号が、所定の時間にわたって所定の閾値を上回るときに、照会回路を再稼動させることに好適な、ガイド部材の変位センサに接続されている節電回路を好ましく備え得る。この変位および動作のセンサは、ガイド部材の変位速度またはガイド部材の動作を表す任意の他の物理量(例えば、加速度計によって測定された振動、周波数圧電センサによって測定されたアコスティックエミッション、温度)の測定に適している。任意の場合に、特別な注意が、回転センサによって発せられた信号からの電気エネルギーを使用するためになされる。当該回転センサは、節電回路へ電力を供給し、給電回路を駆動させる。
【0049】
一実施形態によれば、熱電変換器は、軸受板に面している高温面、および冷却ヒートシンクに面している、高温面と対向する低温面を有している。したがって、熱は、熱電変換器を介した伝導によって軸受板とヒートシンクとの間に移される。複数の熱電変換器が必要な場合、それらは互いに、軸受板とヒートシンクとの間に熱的直列または熱的並列に配置され得る。
【0050】
冷却ヒートシンクは、優先的に金属材料(例えばアルミ合金)製である。また、軸受板は、金属材料(例えば銅合金)製である。本体はステンレス鋼製であり得る。
【0051】
好ましい一実施形態によれば、給電回路は、熱電変換器によって充電された電気化学セルを備えている。電気化学セルは、冷却ヒートシンク上、または優れた断熱材である可塑性の材料製のバッファ上に載せて配置されていることが好ましい。その目的は、過剰な高温においてその性能が損なわれる電気化学セルの冷却を最大化することである。
【0052】
物理量/複数の物理量は、軸受のアコスティックエミッション、軸受の温度、軸受の振動を少なくとも包含している。温度は、2つの他の物理量の一方と組み合わせて使用されて、軸受の状態を決定する。
【0053】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は軸受箱に関する。当該軸受箱は、
回転部材をガイドする軸受を収納する空洞を規定している箱本体
空洞を密閉している箱の覆い
軸受の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視する上述の監視モジュール
を備えている。監視モジュールの軸受板は、箱本体の壁または箱の覆いと接しており、かつそれらに静置されているか、または当該壁の開口を貫通している。
【0054】
1つの特定の用途によれば、軸受箱は、車軸頭を収納している軸箱であり、冷却ヒートシンクは、軸受の回転軸に対して直交する横軸と平行している平坦なフィンを備えている。
【0055】
さらなる用途によれば、軸受箱は、風力発電機の車軸を収納している風力発電機の軸受箱であり、冷却ヒートシンクは、空気流の方向と直列に配置された薄いフィンを好ましく備えている。
【0056】
特に、軸受はローラベアリングまたは平滑軸受であり得る。
【0057】
箱本体または箱の覆いは、監視モジュールにとっての配置場所として機能する、箱の外部に開口している空洞を有しており、ヒートシンクは空洞の外部に突出していることが好ましい。この空洞は、軸受の回転軸と直交している、熱結合壁として機能する側壁を好ましく有している。この結合壁は、熱放散の最大の区域に対応する軸受の負荷区域にあることが好ましい。
【0058】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は、
熱が、軸受箱の外側に配置されている熱電変換器の高温面に対する、軸受箱の内側からの熱伝導によって移動され;
上記熱が、周囲の強制気流に配置されている、軸受箱と断熱された冷却ヒートシンクに対する、熱電変換器の低温面からの熱伝導によって移動され;
電気化学セルが熱電変換器によって充電され;
物理量を測定するセンサの照会回路が、熱電変換器および/または電気化学セルによって電力供給されることによって、
軸受箱に収納されている軸受の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュールを電力供給する方法に関する。
【0059】
電圧アダプタは熱電変換器と電池との間に挿入され得る。
【0060】
無線電送アンテナと接続されている送信回路は、熱電変換器および/または電気化学セルによって優先的に電力供給される。
【0061】
消費を制限するために、軸受の回転速度が所定の時間にわたって所定の閾値未満であるときに、少なくとも照会回路への電力供給を中断することが可能である。
【0062】
本発明のさらなる局面は、接触ガイド部材の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュールに関する。当該モジュールは、
物理量を測定する電気信号を供給する少なくとも1つの状態センサ、
電気回路、
接触ガイド部材の変位センサによって測定された接触ガイド部材の特徴的な物理量が所定の時間にわたって所定の閾値を上回るときに照会回路を再稼動させることに好適な、ガイド部材の変位センサと接続されている節電回路
を備えている。当該電気回路は、状態センサに接続されている状態センサの照会回路、監視装置のための給電回路を備えている。
【0063】
節電回路は、モジュールによって要求されるエネルギーを最小化する状態センサの照会回路の最適な電力供給計画の規定を可能にし、適用可能な場合にモジュールが外部の電力供給を必要としない点において、モジュールの自動化を可能にする。
【0064】
監視モジュールは軸受の監視にとって特に好適である。軸受の回転の特徴的な物理量は、速度センサによって通常に測定される軸受の回転速度、温度センサによって測定される軸受箱内の温度もしくは軸受箱の外壁の温度、20kHz未満、好ましくは100Hz未満の周波数範囲において特に感度の高い加速度計によって測定される軸受箱の振動もしくは軸受の振動、またはアコスティックエミッションであり得る。同様に、線形のガイド部材を監視するために、線形動作の特徴的な物理量は、速度センサによって通常に測定される線形ガイドシステムの板の回転速度、温度センサによって測定される板の温度もしくは板が移動するガイドの軌条の温度、20kHz未満、好ましくは100Hz未満の周波数範囲において特に感度の高い加速度計によって測定される板の振動、またはアコスティックエミッションであり得る。
【0065】
待機時間なしの場合に、閾値を上回ると、照会回路の即座の再稼動を選択可能である。
【0066】
上記回路は、(1)〜(3)のいずれかのときに自動的に待機状態になり得る。(1)測定サイクルの終了時、(2)状態センサによって測定されたガイド部材の状態の特徴的な物理量が所定の閾値を下回るとき、または(3)ガイド部材の動作センサによって測定されたガイド部材の動作の特徴的な物理量が所定の閾値を下回るとき。
【0067】
好ましい一実施形態によれば、電力供給回路は電気化学セルを備えている。
【0068】
給電回路は、ガイド部材によって発せられた運動エネルギーおよび/または熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために好適な少なくとも1つの変換器を備え得る。特に、(複数の)変換器は、本発明のさらなる局面との組合せにおいて、上述のような熱電変換器を含み得、例えば熱電変換器は高温面および低温面を有している。当該高温面は、ガイド部材の壁と接してか、またはガイド部材の筐体の壁を貫通して監視モジュールの軸受板と熱伝導によって接続されている。当該低温面は、気流内に好ましく配置されている冷却ヒートシンクと熱伝導によって接続されている。
【0069】
好ましい一実施形態によれば、接触ガイド部材は、軸受箱に収納されている軸受である。(複数の)変換器は、高温面および低温面を有している少なくとも1つの熱電変換器を含んでいる。当該高温面は、上記軸受箱内に埋められており、軸受箱の壁と接してか、または軸受箱の壁を貫通して監視モジュールの軸受板と熱伝導によって接続されている。当該低温面は、冷却ヒートシンクと熱伝導によって接続されている。
【0070】
また、ガイド部材の動作センサは、ガイド部材が回転するときに、動作センサがエネルギーを給電回路に供給する信号を生成するように、給電回路と接続されていることが可能である。これは、例えば熱電変換器に加えて、主要な用途または予備の用途に適したエネルギー源をもたらす。特に、これは、コイル型の受動的な有極性の電磁速度センサおよびフォニック磁気エンコーダを用いて可能である。
【0071】
監視モジュールは、無線電送アンテナおよびアンテナと接続されている送信回路をさらに備えている。また、エネルギーの管理を目的として上述のアンテナが遠隔送受信装置の電磁場に配置されているとき、送信回路は、アンテナによって電力供給されることに適していると考えられ得る。このような設計において、送信回路は、特に送信段階が、例えば軸受が熱を発せず、回転していない保守管理の段階における休止状態の間に実施される場合に、送信段階における給電回路の使用を制限し得ることが特に好ましい。
【0072】
さらに、エネルギー必要量を最小化し、監視モジュールの自動性を最大化する目的のために、状態センサはガイド部材内の局所的な微小の変位から生じる一時的な弾性波の検出に適しているアコスティックエミッションセンサであると考えら得れる。実際に、上記センサは、低いエネルギー消費を有しており、エネルギーを消費する複雑な信号処理を必要としない。しかし、他の状態センサは、例えば温度センサまたは加速度センサであり得る。
【0073】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は、軸受箱(特に軸箱)に関する。当該軸受箱は、
回転部材をガイドする軸受を収納する空洞を規定している箱本体、
空洞を密閉している軸受箱の覆い、
軸受の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視する上述の監視モジュールを
備えている。
【0074】
状態センサは、好ましくは軸受箱に取り付けられている特定の筐体において、軸受箱の外部に配置されていることが好ましい。軸受回転センサは、軸受箱の外部に配置され得る(例えば、温度測定のセンサまたは加速度測定のセンサの場合)。また、軸受回転センサは、軸受箱の本体の壁または軸受箱の覆いの開口を介して、空洞の内側に収納され得る。
【0075】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は、軸受箱(特に軸箱、覆い)に関する。当該軸受箱は、
軸受箱の本体に対する取り付け手段、および
軸受の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視する上述の監視モジュール
を備えている。監視モジュールの軸受板は、軸受箱の覆いの熱結合壁および/または音響結合壁と接しており、かつそれらに静置されているか、または当該壁の開口を貫通している。
【0076】
この解決策は、変更されるべき軸受箱の唯一の部分が箱全体の再度の適性試験を必要としない覆いなので、既存の装置の改造に適している。
【0077】
本発明のさらなる局面によれば、本発明は、軸受箱に収納されている軸受の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュールへの電力供給を管理する方法に関する。ここで、
電気化学セルは、少なくとも1つの熱電式発電機によって充電され、
物理量を測定する状態センサの照会回路はは、軸受の回転速度が第1の所定の閾値を上回るときに電力供給を受け、
少なくとも1つの照会回路は、軸受の回転速度が所定の時間にわたって第2の所定の閾値未満であるときに電力供給を中断させる。
【0078】
以上に説明されているように、上記節電測定手段は、監視モジュールのより優れた自動性を可能にする。
【0079】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の他の特徴および利点は、
図1、本発明の一実施形態に係る監視モジュールの構成図
図2、本発明の一実施形態に係る監視モジュールの断面図
図3、図2における断面と平行な断面に沿った図2の監視モジュールの断面図
図4、図2の監視モジュールの分解図
図5、図2の監視モジュールを組み込んでいる軸受箱(この場合において軸箱)の断面図
図6、代替的な実施形態に係る断面図を示している添付の図面を参照して以下の説明を読むことによって明らかになる。
【0080】
明確さのために、同一または類似の要素は、すべての図面において同一の引用符号を用いて指定されている。
【0081】
〔実施形態の詳細〕
図1は、回転式の軸受の監視モジュール10を概略的に示している。当該モジュール10は、複数の技術的なブロック(すなわち、環境からのエネルギーを再利用するブロック12、当該エネルギーを管理し、蓄電するブロック14、軸受の状態の特徴的な物理量の1つ以上を監視する1つ以上のセンサからなる測定ブロック16、信号処理のブロック18、および軸受の状態の診断を送信するブロック20)からなる。以下に述べられている軸受は、鉄道の軸箱に収納されているローラベアリングであるが、この特定の用途は必ずしも限定を加えていないことが、理解される。
【0082】
エネルギーの再利用は、センサの直接的な環境に見られる種々のエネルギー源(特に、軸受によってガイドされるシャフトの回転、または軸受の直近にある温度)を利用し得る。さらに、利用可能なエネルギー源(例えば、軸受の任意のリングの変形または太陽エネルギー)は、原理的に考慮され得る。選択される機械的な統合および計測器を必要とする軸受を組み込んでいるシステムにしたがって、選択がなされる。
【0083】
図2〜5においてより詳細に例示されている実施形態において、エネルギーの再利用のブロックは、図2に概略的に示されているように熱流と平行に配置されている、少なくとも1つ、この場合、2つの熱電変換器22、24を用いて実施する。これらの熱電変換器22、24のそれぞれは、所望の熱電効果を得るために熱流に配置されることに適している高温面および低温面を、公知の手法において備えている。また、これらの熱電変換器は、潜在的に厳しい環境から機械的に保護される必要があるので、それらは、上記熱流を可能にする計測器の筐体26に挿入されている。筐体は、金属の軸受板28(例えば、銅製または銅合金製)を備えている。軸受板28は、熱源にさらされている側方にある外部の熱結合面30、およびアダプタ34と接しており、アダプタ34に支えられている内側面32を有している。アダプタ34は、銅製であり、熱電変換器の高温面と直接に接している。アダプタ34は、ねじ35によって軸受板28に好ましく取り付けられている。また、筐体は、アルミ合金製のフィンの冷却ヒートシンク36を備えており、冷気流、または熱源より少なくとも低温の流れに配置することを目的としている。熱の通路は、熱電変換器22、24の低温面と冷却ヒートシンク36との間に、銅のアダプタ38およびバッファ40を介して生成されている。
【0084】
ヒートシンク36および軸受板28は、互いに直接的に接しておらず、筐体の本体41によって隔てられている。本体41は、軸受板28およびヒートシンク36とともに、熱電変換器22、24を収納するための空洞42を形成している。空洞42は、ヒートシンク36によって一方から、軸受板28によって他方から密閉されている。本体41は、熱伝導性の材料からなり、軸受板からヒートシンクを絶縁する熱シールを形成していることが好ましい。また、本体41とヒートシンク36との間および/または本体41と軸受板28との間に、特定の熱シールを備える必要がある場合に、熱シールは熱伝導性の材料からなり得る。
【0085】
軸受板28は、好ましくは図4に示されているようにねじ47を用いた取り付けによって、本体に取り付けられている。ヒートシンク36は、ねじ48による取り付けを用いて本体に対して好ましく搭載されている。実施形態の例において、鉄道の軸箱に適する検討されている用途の大きな機械的な負荷を担うために、ステンレス鋼の本体が備えられており、軸受板は銅製でありからできており、ヒートシンクはアルミニウム製である。
シール43、44は、軸受板28と本体41との間および本体41とヒートシンク36との間に備えられている。また、断熱材46製の剛板は、本体とヒートシンクとの間に、それらに熱シールを形成するために備えられている。軸受板28の任意の酸化を防止するために、ステンレス鋼の本体41は、熱結合壁以外のすべての面について軸受板28を収納し、完全に覆う。
【0086】
計測器の筐体26の組立ての間に、熱電変換器は、アダプタ34、38に挟まれており、最終的に軸受板28とヒートシンク36との間に挟まれている。ヒートシンク36とアダプタ38との間に配置されたバッファ40は、変形可能であり、熱電変換器とアダプタとの間の接点における接触圧力の完全な制御を可能にする。図に説明された例において、このバッファ40は、熱電変換器22、24の低温面およびヒートシンク36の側において、ヒートシンクとアダプタ38との間に配置されている。代替的な実施形態にしたがって、熱電変換器の高温面および軸受板28の側におけるアダプタ34と軸受板28との間に代替的に配置され得る。熱電変換器22、24の低温面および高温面の両方を保護するために、熱電変換器22、24の両側における2つのバッファを考慮し得る。これらのバッファは、優れた断熱性を示す変形可能な材料製であり、それらが、それぞれの接点において接触面積を最大化し、熱の接触抵抗を最小化するための、それらが挿入される部分にとって好適な表面特性を有している。
【0087】
計測器の筐体26は、熱電変換器22、24だけでなく、監視モジュール10の電気回路を収納するために適している。当該電気回路は、ねじ51を用いて本体に取り付けられた1つ以上のプリント回路50によって代表され、エネルギー管理および保存14、測定16、信号処理18および送信の20ブロックを組み込むこんでいる。
【0088】
特に、電気回路は、電力供給を管理する回路を備えており、熱電変換器22、24および電気化学セル52と接続されている。電気化学セル52は、電池が十分に低い温度の変動範囲において動作することを保証するために、軸受板から熱的に絶縁され得、ヒートシンクと熱的に接続され得ることが好ましい。電力供給を管理する回路は、電気化学セルの充電レベルを決定する回路を好ましく含み得る。
【0089】
電気回路は、軸受の状態を照会回路をさらに備えており、当該照会回路は、軸受の状態の特徴的な物理量の1つ以上のセンサと接続されている。この場合、当該センサは、アコスティックエミッションセンサ54、温度センサ、および適用可能な場合に速度センサもしくは他のセンサ(例えば、その記載が参照によって本明細書に援用される文献FR 2 944 875において考慮されているセンサ)である。
【0090】
アコスティックエミッションは、回復不能の損傷を有している材料内における一時的な弾性波の形態におけるエネルギーの放出の結果である。回転している平滑軸受またはローラベアリングの部分からのアコスティックエミッションは、損傷(例えば、上記部分の亀裂もしくは欠け、または平滑軸受の場合、減摩状態もしくは起こり得る薄片化)を決定可能にする。この損傷の特定の特徴を実験的に決定可能である。アコスティックエミッションセンサ54は、超音波の範囲(特に、20kHzを超える振動を生じる範囲)の振動に対して高感度な、監視されるべき部分との接続面を有している圧電変換器からなる。このアコスティックエミッションセンサ54は、監視モジュール10の計測器の筐体26に配置されており、軸受板28または計測器の筐体の本体41と機械的に直接に結合されている。より詳細には、図に説明されている実施形態において、アコスティックエミッションセンサ54は、筐体の本体41と取り付けられ、筐体の本体41と結合されている。本体41は、軸受箱の壁と直接に接触する状態になることを目的としている薄い壁60に押し付けられている。電磁シールドの覆い62は、任意の接点からのアコスティックエミッションセンサ54を遮蔽するために備えられている。
【0091】
温度測定のセンサは、熱電変換器の高温面の近傍において、軸受板の高温面と接して配置されている。
【0092】
照会回路は、温度測定のセンサおよびアコスティックエミッションセンサ54を照会し、データを信号処理回路に送信する。これは、システムのエネルギー収支の寒天から、任意に複雑ではない。実際に、この処理の簡易化は、より高い測定の頻度数を可能にするために好ましい。また、処理回路はデータ記憶装置を備えている。測定されたアコスティックエミッションのレベルにしたがって、軸受の動作状況は、以下の3つの状態を採用している表示器によって示される。(1)緑:軸受は正常である。(2)オレンジ:欠けの発生が検出されている。軸受を交換する保守工程を予定する必要がある。これは、次に予定されている保守の休止期間と同時に実施され得る。(3)赤:欠けが進行している。該当する軸受は、予想される過熱および任意の破損を防止するために至急の交換が必要である。
【0093】
表示器の状態に基づいて、より徹底した分析の要求に応じて記録された測定結果を読み込むことが可能である。
【0094】
最後に、電気回路は、電送アンテナ64と接続されている低消費電力の電波送信回路を備えている。アンテナ64は、ヒートシンクに備えられている空洞66に収納されている。上記空洞は、外部に面しており、弾性波を透過する材料からできている保護的な覆い68を用いて密閉されている。ヒートシンク36からなる金属の塊のために、アンテナ64の設計は、特殊であり、材料の電磁特性に起因する。導電性の金属板70は、アンテナの性能を向上させるために好適な配置をもたらすために、アンテナとヒートシンクとの間に挿入される。
【0095】
説明されている監視モジュール10は、軸受箱(例えば、図5に例示されているような説明された鉄道車両の軸箱)への取り付けに適している。当該軸受箱は、箱の覆い76によって密閉されている箱本体74からなる。箱本体74は、車軸頭82をガイドする軸受80を収納する密閉された空洞78を規定している。この場合に、制限することなく、軸受80はローラベアリングである。当該ローラベアリングは、傾いた軸受の軌道を有している固定された外部のリング84、傾いた軸受の軌道を有している2つの内部のリング86および回転体88(この場合、保持器90保持されている円錐ローラ)からなる。固定された外部のリング84は軸箱の本体74に強固に接続されており、内部の環86は車軸頭82に取り付けられており、ジャーナルキャップ92によって所定の位置に保持されている。
【0096】
図に説明されているように、監視モジュール10は、熱結合壁を形成する壁96を介して移動する熱を最大化するために、側面の熱結合壁30が軸受80 94の負荷区域において側壁96に対して直接に押し付けられるように、覆い76の凹み94に配置されている。監視モジュール10の計測器の筐体26の本体41は、凹み94において計測器の筐体の本体41と軸箱72の覆い76との間に十分に高い接触圧力を生じるように、4つのねじ98(図4)を用いて覆いの凹み94に取り付けられ、音響接続面を形成している。シール100は、軸受板28を保護するために、軸受板28を収納している計測器の筐体の本体41と軸箱72との間に備えられている。特に、本体41と軸受板28との間における組立ての任意の許容範囲に関わらず、一連の寸法が、本体41と音響結合壁94との間および軸受板と熱結合壁96との間に認められ得るように、凹み94の音響結合壁および熱結合壁96は、互いに直交している。
【0097】
速度センサ58は、回転要素(例えば、車軸頭のキャップ92または軸受の回転する内側のリング86の1つ)と強固に接続されているエンコーダ104と対向し、かつ間隔を空けて、開口を介して凹みの壁を貫通して軸箱の内部78に入っている。当該エンコーダ104は、“トップツアー(top touor)”エンコーダと呼ばれており、各回転についての状態の1または2の変化の検出に適している。速度センサ58が、エネルギー消費を最小化するために電気回路のエネルギーを管理し、軸受の状態を検査する(非常に正確な速度の認識を必要としない)ために本質的に使用されているから、この情報は十分である。
【0098】
回転軸の速度が、待機の速度閾値(例えば、この鉄道の用途において、鉄道車両にとって約80km/時間の範囲における速度と等しい)未満であるとき、電気回路は、電力消費が非常に低いか、または電力消費が0である深いスリープモードを維持する。回転軸82の速度が所定の閾値を上回ると、速度センサ58の末端における電圧によって、監視サイクルが立ち上がり得るように、電気回路は待機状態から脱する。
【0099】
反対に、回転軸82の速度が、必要に応じて第1の閾値と等しい第2の所定の閾値を下回、所定の時間を超えてそれを維持するとき、電気回路は、深いスリープモードに入る。
【0100】
必然的に、代替的な種々の実施形態が考慮され得る。
【0101】
図6は、速度センサを有していない代替的な実施形態を示している。このとき、モジュールによって消費されるエネルギーを最小化する種々の方策が可能である。例えば1日に1回の間隔において照会することのみを想定し得る。また、他のセンサがモジュールに見られる場合に、これらのセンサのいずれかによって出力される十分なエネルギーの信号、および軸受の回転の特性(例えば、温度信号または測定された振動のRMS値)に基づく起動回路を想定し得る。
【0102】
監視モジュール10は、軸箱だけでなく、軸受の十分な過熱および軸受箱内と外部環境との間における十分な温度差が認められる用途における他の種類のローラ軸受箱または平滑軸受箱(特に特に風力発電機または工業機械のための)に採用され得る。
【0103】
筐体は、熱シールの挿入をともなって、本体なしで形成され得、この場合にヒートシンクは軸受板に取りつけられる。
【0104】
速度センサ58は、監視モジュール10にとっての予備のエネルギー源または主要なエネルギー源として使用され得る。この目的のために、速度センサ58は、電気回路およびセル52に電力供給するために使用される交流電流を生成するために、多極(例えば1回転につき32極)を有している多極のエンコーダのリングと結合される。
【0105】
アダプタ34、38またはそれらの少なくとも1つは省かれ得る。
【0106】
熱変換器の数、熱的に直列および/または並列なそれらの配置、ならびに電気的に直列および/または並列なそれらの配置は、特に体積の制約、熱源および冷却源において利用可能な示差熱、および/または電気化学セルと共通する生成される電圧の範囲に基づいて、それぞれの用途について異なって決定され得る。
【0107】
電送回路は、アンテナ64が、遠隔走査アンテナによって発せられた電磁エネルギーを受信する役割を果たすように、純粋に受動性であり得、当該得エネルギーは、監視される軸受の状態についての情報を送るための伝送回路に使用される。
【0108】
また、以上の記載は線形のガイドシステムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の一実施形態に係る監視モジュールの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る監視モジュールの断面図である。
【図3】図2における断面と平行な断面に沿った図2の監視モジュールの断面図である。
【図4】図2の監視モジュールの分解図である。
【図5】図2の監視モジュールを組み込んでいる軸箱の場合の、軸受箱の断面図である。
【図6】代替的な実施形態に係る断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触ガイド部材(80)の状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視し、
上記物理量を測定する電気信号を供給する、少なくとも1つの状態センサ(54、58)、ならびに、
上記状態センサと接続されている、上記状態センサの照会回路、および、上記監視する装置のための給電回路を備えている電気回路
を備えている、モジュール(10)であって、
上記電気回路は、変位センサ(58)によって測定された上記ガイド部材(80)の上記動作の特徴的な物理量が所定の時間にわたって所定の閾値を上回るときに、上記照会回路を再稼動させることに好適な、ガイド部材(80)の変位センサ(58)と接続されている節電回路を備えていることを特徴とするモジュール(10)。
【請求項2】
上記給電回路は電気化学セルを備えていることを特徴とする請求項1に記載の監視モジュール(10)。
【請求項3】
上記給電回路は、上記ガイド部材(80)によって発せられた運動エネルギーおよび/または熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために好適な少なくとも1つの変換器(22、24、58)を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の監視モジュール(10)。
【請求項4】
(複数の)上記変換器は、高温面および低温面を有している少なくとも1つ熱電変換器(22、24)を含んでおり、
当該高温面は、上記ガイド部材(72)の壁(96)と接してか、または上記ガイド部材(72)の壁を貫通して上記監視モジュール(10)の軸受板(28)と熱伝導によって接続されており、当該低温面は、冷却ヒートシンク(36)と熱伝導によって接続されていることを特徴とする請求項3に記載の監視モジュール(10)。
【請求項5】
上記接触ガイド部材(80)は、軸受箱(72)に収納されている軸受(80)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)。
【請求項6】
(複数の)上記変換器は、高温面および低温面を有している少なくとも1つの熱電変換器を含んでおり、
当該高温面は、上記軸受箱内に埋められており、上記ガイド部材(72)の壁(96)と接してか、または上記軸受の壁を貫通して上記監視モジュール(10)の軸受板(28)と熱伝導によって接続されており、当該低温面は、冷却ヒートシンク(36)と熱伝導によって接続されていることを特徴とする請求項5および3に記載の監視モジュール(10)。
【請求項7】
上記変位センサ(58)は、上記ガイド部材(80)が回転するときに、当該変位センサ(58)がエネルギーを上記給電回路に供給する信号を生成するように、上記給電回路と接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)。
【請求項8】
上記変位センサ(58)によって測定された上記ガイド部材(80)の上記動作の特徴的な上記物理量は、温度、振動、アコスティックエミッションまたは速度であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)。
【請求項9】
上記監視モジュール(10)は、無線電送アンテナ(64)および当該アンテナと接続されている電送回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)。
【請求項10】
上記無線電送アンテナは、遠隔送受信装置の電磁場に配置されている上記アンテナ(64)によって給電されることために好適であることを特徴とする請求項9に記載の監視モジュール(10)。
【請求項11】
(複数の)上記状態センサは、上記ガイド部材(80)内部の局所的な微小変位から生じる一時的な弾性波の検出に好適なアコスティックエミッションセンサ(54)を含んでいることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)。
【請求項12】
回転部材(82)をガイドする軸受(80)を収納する空洞(78)を規定している箱本体(74)、および
上記空洞(78)を密閉している軸受箱の覆い(76)を備えている軸受箱(72)、特に軸箱であって、
当該軸受箱は、上記軸受(80)の上記状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するための請求項1〜11のいずれか1項に記載の監視モジュール(10)を備えており、上記状態センサ(54)は、上記軸受箱(72)の外部に配置されており、
上記軸受の変位センサ(58)は、上記軸受箱の本体(74)の壁または上記軸受箱の覆い(76)の開口を通って上記空洞(78)の内部に入っていることを特徴とする軸受箱。
【請求項13】
軸受箱(72)に収納されている軸受(80)の上記状態の特徴的な物理量の少なくとも1つを監視するモジュール(10)への上記供給電力を管理する方法であって、
電気化学セル(52)は、少なくとも1つの熱電式発電機(22、24)によって充電され、
上記物理量を測定する状態センサ(54、58)の照会回路は、上記軸受の回転の上記速度が所定の時間にわたって第1の所定の閾値を上回るときに電力供給を受け、
少なくとも上記照会回路は、上記軸受の回転の上記速度が所定の時間にわたって第2の所定の閾値未満であるときに電力供給を停止させることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57659(P2013−57659A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−149762(P2012−149762)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(507018894)エヌテエヌ−エスエヌエール ルルモン (22)
【Fターム(参考)】