説明

接触センサ用電極

【課題】金属薄板、金属メッシュ、金属箔を合成樹脂板や合成樹脂フイルムに張り合わせたものを電極として使用した従来の接触センサは機械、装置等の接触感知においては問題にならなかったが、人体や動物との直接接触の検出、感知する場合においては 感触や長時間接触での違和感、柔軟性等が問題となり、荷重−抵抗変化の直線性の改善も求められている。
【解決手段】合成樹脂繊維の表面へ導電性の金属を薄くメッキした柔軟性、屈曲性に優れた導電性繊維と絶縁性繊維を一定の間隔で布状に織り込んだもの、あるいは金属メッキ導電性繊維と絶縁性合成樹脂繊維を混合接着した導電性の不織布を接触センサの電極として使用し柔軟性、屈曲性、感触、違和感、荷重−抵抗変化の直線性等を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシートにエラストマ−系感圧導電性シ−トを使用した接触検出に関するセンサで、人体や動物との接触がソフトで長時間の接触に対しても違和感が少なく柔軟性、荷重−抵抗変化の直線性の良好な接触センサの電極に関するものである。
【0002】
エラストマ−系感圧導電性シ−トとしては非導電性エラストマ−中に導電性の微粒子、黒鉛微粒子、カーボンブラック、金属微粒子等を混合してなる導電性ゴムをあらかじめ架橋させ、しかる後に該導電性ゴムと相溶性を有する不揮発性オイルを吸収させることによって、該導電性ゴム内部の該導電性の微粒子が、微少な間隔で均等あるいは好適に分散した状態に加工したもの(開示例、昭59−11343、平6−192485 )、非導電性エラストマ−の中に導電性のカ−ボン微粒子を組成物の全容積当たり45〜55容量%の割合で配合して該ゴム内部へ該導電微粒子が微少な間隔で均等あるいは好適に分散した状態に架橋成形したもの(開示例、平2−196836、平4−253109 )を加圧変形することにより電気抵抗が好適に連続的に変化するものがあげられる。
【背景技術】
【0003】
近年 国内において少子高齢化が進み、高齢化に対応した介護、医療、リハビリ機器が開発されている。また、徘徊老人に対する監視機器も必要とされ、人体に直接接触して長時間検出する人体との接触に違和感が少なく、接触がソフトで感触が良く荷重−抵抗変化の直線性の良い接触センサが望まれている。
【0004】
屋内で猫、犬、等の動物をペットとして飼う場合や自動車に同乗させる場合の保護、監視用として動物の接触検出のニ−ズが高まっている。
【0005】
パソコン、音楽、映像機器等を小型、薄型、軽量化して人体に身に付けるウエアラブル電子機器が開発され、人体に装着する接触センサにおいても接触がソフトで柔軟性があり違和感が少ないものが望まれている。
【0006】
これらの接触センサに使用する、感触が良く柔軟性、変形、屈曲性に優れ永久変形のおきにくい荷重−抵抗変化の直線性が良い電極が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開 昭59−11343号公報
【特許文献2】特開 平2−196836号公報
【特許文献3】特開 平4−253109号公報
【特許文献4】特開 平6−192485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の接触センサは、電極部材が金属薄板、金属メッシュ、や厚さが35ミクロン〜18ミクロンの銅箔を合成樹脂板やフイルムへ張り付けたプリント基板、等の材料により構成されているため、特に人体や動物などが接触した場合に固く冷たい感触であるため違和感が強く、特に長時間接触しての使用は困難であり、また柔軟性に乏しく変形、屈曲して使用する場合には永久変形してしまい無荷重時にノイズの発生や、荷重に対する抵抗変化が急峻になる等の問題があった。また薄いポリエステルフイルムへ銀ペーストで電極を印刷しその上に感圧樹脂を印刷した接触センサは薄く製作可能であるが、鋭角の変形に弱く破損しやすい問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
金、銀、銅、ニッケル、スズ、インジュウム、クロム、亜鉛等の導電性金属をポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等の合成樹脂繊維の表面へ真空蒸着、スパッタリング等で膜厚が0.1ミクロン〜0.2ミクロンで単体あるいは多層膜にして薄く無電解メッキした永久変形の起きにくい金属メッキ導電性繊維を絶縁性合成樹脂繊維と一緒に布状に織り込む。
【0010】
金属メッキ導電性繊維の布への織り込みが縦糸、横糸の片方あるいは両方で一定の間隔で織り込んで布状にしたものを電極に採用する。
【0011】
あるいは金属メッキ導電性繊維と絶縁性合成繊維を混合し熱溶着、あるいは接着剤を用いて接着して導電性を有する不織布状にしたものも電極として採用する。
【0012】
上記電極の採用によりエラストマー系感圧導電性シートとの接触がゆるやかになり荷重に対する抵抗の変化を和らげ、荷重―抵抗変化の特性が急峻になることを防止しする。

【0013】
荷重−抵抗変化の直線性の改善は縦、横の織り込む金属メッキ繊維の本数、間隔を調整しエラストマー系感圧導電性シートとの接触面積の変化を緩やかにすることにより行う。
【発明の効果】
【0014】
センサシートにエラストマ−系感圧導電性シ−トを採用する接触センサにおいて、柔軟性が優れ、人体や動物との接触がソフトで、長時間の接触使用においても違和感が少なく荷重−抵抗変化の直線性が改善される接触センサの電極の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
合成樹脂繊維の太さが20〜30デニ−ルのポリエステル樹脂繊維の表面へ銀を0.1〜0.2ミクロンの厚さで無電解メッキして導電性を付与し、この銀メッキ導電性繊維1〜12本を太さが40〜50デニ−ルの絶縁性ポリエステル繊維と一緒にしたものを1本の糸にし、縦糸には3本おき、横糸は2本おきにして平織り布に加工した厚さ0.1〜0.2mmの導電性布を構成し、中間は50〜75デニ−ルの絶縁性ポリエステル繊維20〜36本を1本の糸にして縦糸、横糸に使用して導電性の布状の織物にしたものを電極に使用する。
【実施例1】
【0016】
太さが30デニ−ルのポリエステル樹脂繊維の表面へ銀を0.1ミクロンの厚さで無電解メッキして導電性を付与した銀メッキ導電性繊維12本を、太さが50デニ−ルの絶縁性ポリエステル繊維24本と一緒にしたものを1本の糸にした。
【0017】
上記の糸を縦糸には3本おき、横糸は2本おきにして平織り布に加工した厚さ0.15mmの導電性布を構成し、中間は75デニ−ルの絶縁性ポリエステル繊維36本を1本の糸にして縦糸、及び横糸に使用して布状の織物にした導電性布(三ツ富士繊維工業株式会社製 M20048)を縦80mm、横80mm、の寸法に裁断して上下の電極に採用した。
【0018】
両端を5mmストリップした長さ100mmのイラックスHF電線(住友電工株式会社製 UL3302 AWG32)の片側と上記導電性布電極を接触させその上から導電性ペ−スト(藤倉化成株式会社製 ド−タイトD−362)を塗布、乾燥させてリード線と導電性布電極を接続固定した。
【0019】
この導電性布状電極を上下が接触しないようにして、シリコーンゴム中に導電性のカーボンブラックを混合してなる導電性ゴムをあらかじめ架橋させ、しかる後に該導電性ゴムと相溶性を有する不揮発性オイルを吸収させることによって得た、エラストマ−系感圧導電性シ−ト、縦90mm、横90mm、厚さ0.5mmの上下の中心へ配置した。
【0020】
更にその上下の中心に太さが50デニ−ルのポリエステル合成樹脂繊維を平織りした縦100mm、横100mm、厚さ0.15mmの布を絶縁性表面保護シ−トとして配置し、外周をオーバーロック縫いにて縫製加工して固定した接触センサを製作した。
【0021】
この接触センサを厚さ10mmのフェノ−ル樹脂板の上に水平に置き、上から荷重を加えて荷重−抵抗変化を測定した結果を図6のAに示す。比較例1として開口寸法1.0mm太さ0.1mmのステンレスメッシュを上下電極に使用した場合の荷重(横軸―等間隔目盛)−抵抗(縦軸―対数目盛)変化特性を図6のBに示す。また接触センサに荷重を加えない状態で一端を固定し他端を左右にア−ルを付けて屈曲させ屈曲半径と抵抗値の変化を表1に、電極の永久変形の有無を表2に示す。
【実施例2】
【0022】
太さが30デニ−ルのナイロン繊維の表面へ銀を0.1ミクロンの厚さでメッキして導電性を付与し、この導電性繊維1本を太さが40デニ−ルの絶縁性ポリエステル樹脂繊維1本を撚ったものと、70デニ−ルのポリエステル樹脂繊維4本一緒にして縦糸にした。
【0023】
横糸には太さ40デニ−ルのポリエステル樹脂繊維90%、銀メッキしたナイロン繊維10%を使用して平織りの布状にした厚さ0.15mmの導電性布を構成したもの(カネボウ繊維株式会社製、エックスエイジ AG−01)縦30mm、横100mmの寸法に裁断し上下の電極に採用した。
【0024】
両端を5mmストリップした長さ80mmのイラックスHF電線(住友電工株式会社製 UL3302 AWG30)の片側と上記導電性布電極を接触させその上から導電性ペ−スト(藤倉化成株式会社製 ド−タイトD−362)を塗布、乾燥させてリード線と導電性布電極を接続固定した。
【0025】
この導電性布状電極の上下が接触しないようにして、シリコーンゴムに導電性のカ−ボン微粒子を組成物の全容積当たり45〜55容量%の割合で配合して得たエラストマ−系感圧導電性シ−ト、縦40mm、横110mm、厚さ0.5mmの上下へ配置した。
【0026】
更にその上下を太さが50デニ−ルのポリエステル合成樹脂繊維を平織りした縦50mm、横120mm、厚さ0.15mmの布を絶縁性表面保護シ−トとして配置し、外周をオーバーロック縫いで縫製加工して固定した接触センサを製作した。
【0027】
この接触センサを厚さ10mmのフェノ−ル樹脂板の上に水平に置き、上から荷重を加えて荷重(横軸―等間隔目盛)−抵抗(縦軸―対数目盛)変化を測定した結果を図6のCに示す。接触センサへ荷重を加えない状態で一端を固定し他端を左右にア−ルを付けて屈曲させ屈曲半径と抵抗値の変化を表1の実施例2に、電極の永久変形の有無を表2の実施例2に示す。比較例2として厚さ25ミクロンのポリイミドフイルムの片面へ厚さ35ミクロンの銅箔を張り合わせたフレキシブルプリント基板で導パターン幅が0.5mm、繰り返しピッチが1.0mmの格子状の電極を使用した場合の結果を図6のD、表1と表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1、の接触センサの電極を使用したセンサの斜視図である。
【図2】同実施例1、の接触センサの電極の斜視図である。
【図3】同実施例1、の電極の拡大図である。
【図4】同実施例1、の電極に使用する金属メッキ繊維の拡大斜視図である。
【図5】同実施例1、の電極を使用したセンサのA−A断面の模式図である。
【図6】同実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、の荷重―抵抗の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 接触センサ
2 リード線
3 電極
4 導電性ペースト
5 金属メッキ導電性繊維
6 合成樹脂繊維
7 合成樹脂繊維の素繊維
8 金属メッキ膜
9 合成樹脂繊維で織った布状表面保護シート
10 リード線の付いた電極
11 センサシート
12 表面保護シートの縫製加工固定部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂繊維の表面へ導電性の金属をメッキして、柔軟性、屈曲性に優れた導電性繊維を形成し、この金属メッキ導電性繊維を絶縁性繊維から成る布状の織物へ一定の間隔で織り込んで導電性を有する布状にしたこと、金属メッキ導電性繊維と絶縁性繊維の両方の繊維を混合接着し不織布状にしたことを特徴とする接触センサ用電極。

【請求項2】
合成樹脂繊維がポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アクリル、ポリウレタンであることを特徴とする、請求項1に記載の接触センサ用電極。

【請求項3】
導電性の金属が金、銀、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、インジュウム、アルミニュウムの単体あるいは複数で多層の薄膜または合金薄膜を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の接触センサ用電極。

【請求項4】
金属メッキ導電性繊維の布への織り込みが縦糸、横糸の片方あるいは両方であることを特徴とする、請求項1に記載の接触センサ用電極。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−262623(P2007−262623A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90892(P2006−90892)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】