説明

接触子及び接続装置

【課題】 特に、従来に比べて、接触信頼性を向上でき、長寿命化を図ることが出来る接続装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 接触子の芯部の表面には、NiあるいはNi合金からなる金属層34、及び、金属層34中に分散されたフッ素樹脂粒子35を有して形成され、フッ素樹脂粒子35の一部が表面に露出してなる被覆部33が形成される。さらに、露出するフッ素樹脂粒子35の表面を除いて、金属層34の表面には白金族元素からなる中間層36が形成される。さらに、中間層36の表面には、中間層36よりも薄い膜厚のAuからなる最表面層37が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージなどの電子部品の電極と当接する接触子に係り、特に、接触信頼性を向上でき、長寿命化を図ることが出来る接触子及びそれを用いた接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、複数のスパイラル状の弾性腕を有する接触子を備えた接続装置が開示されている。ICパッケージなどの電子部品の底面には複数の球状の電極が設けられており、それぞれの電極が弾性腕に弾圧されて、電極と接触子とが一対一の関係で個別で接続される。
【0003】
特許文献1の図4Fには、例えば金(Au)で形成された最表面層(特許文献1では導電性部材40)を有する接触子の断面形状が示されている。
【特許文献1】特開2005−032708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成において、電子部品の電極が半田で形成されている場合、電極と接触子との間で金属間化合物が生成され、接触子側へ半田転写が生じるという問題があった。このため接触信頼性に欠け、接続装置の短命化が問題となった。
【0005】
特に接続装置が検査用で、電子部品との間で装着と離脱とが繰り返して行われる用途である場合、上記した従来課題が顕著化した。さらに、接続装置の接触子が弾性変形可能な材質及び形状で形成されているとき、電極は接触子に対して滑り接触する。このような滑り接触では、凝着磨耗が生じることで、上記した従来課題がより顕著化した。
【0006】
化学的に極めて安定で且つ接触抵抗の低減を図ることが出来るAuを最表面層に使用し、且つ、従来に比べて接触信頼性を向上させるには、電極と接触する接触子の表面側の構造を改良することが必要となった。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、従来に比べて、接触信頼性を向上でき、長寿命化を図ることが出来る接続装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子部品の半田で形成された電極と電気的に接続される接触子において、
導電性の芯部と、
前記芯部の少なくとも前記電極と接触する表面に、NiあるいはNi合金からなる金属層、及び、前記金属層中に分散されたフッ素樹脂粒子を有して形成された被覆部と、
前記被覆部の表面に形成された白金族元素からなる中間層と、
前記中間層の表面に前記中間層よりも薄い膜厚で形成されたAuからなる最表面層との積層構造で構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、前記フッ素樹脂粒子の一部は前記被覆部の表面に露出しており、露出する前記フッ素樹脂粒子の表面を除いて、前記金属層の表面に前記中間層が形成されており、
前記接触子の表面には、前記最表面層と前記フッ素樹脂粒子とが露出していることが好ましい。
【0010】
上記のように本発明では、被覆部にフッ素樹脂粒子が含有されている。そして好ましくは、フッ素樹脂粒子の一部は接触子の表面に露出している。また本発明では、被覆部の表面に露出した金属層の表面に白金族元素からなる中間層、及びAuからなり、中間層より薄い膜厚の最表面層が積層されている。このような構成により、半田転写の改善、接触抵抗の安定性、使用環境の自由度の向上、耐環境特性の向上等を図ることができ、よって、従来に比べて優れた接触信頼性を得ることができ、長寿命化を図ることが可能になる。
【0011】
本発明では、前記中間層はPdで形成されることが好ましい。中間層では極薄のPdO(酸化パラジウム)が形成されて安定化し、触媒作用が抑制される。これにより酸化力の大きい原子状酸素の発生が抑制され、より効果的に、使用環境の自由度の向上を図ることが出来る。
【0012】
また本発明では、前記芯部は、CuあるいはCu合金で形成された導電層を備えることが好ましい。
【0013】
また本発明では、前記被覆部は、前記芯部の周囲を覆っていることが好ましい。
また本発明では、弾性変形可能な部分を備え、前記電極が前記接触子に対して滑り接触する場合に特に有効である。本発明では、従来に比べて効果的に凝着磨耗を抑制でき、接触信頼性を向上でき、長寿命化を図ることが出来る。
【0014】
また本発明は、電子部品の半田で形成された電極と電気的に接続される接触子を備えた接続装置において、
前記接触子は上記のいずれかに記載された発明により形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
また本発明では、前記接触子に対して、前記電極を有する前記電子部品の装着と離脱とが繰り返し行われる検査用として用いられる場合に特に有効である。電子部品の着脱を繰り返しても、効果的に、電極と接触子間の接続による半田転写を従来に比べて抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明の接触子及び接続装置によれば、従来に比べて優れた接触信頼性を得ることができ、長寿命化を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本実施形態である接続装置の部分断面図、図2は、図1に示す接続装置の接触子付近を示す拡大断面図、図3は、本実施形態の接触子の平面図、図4は、前記接触子の弾性腕の部分を図3のA−A線に沿って膜厚方向から切断した切断面を示す断面図、図5は、図4に示す接触子の表面付近を拡大した部分拡大断面図、図6,図7は、比較例であり、接触子の表面付近を拡大した部分拡大断面図である。
【0018】
図1に示す接続装置1は、基台10を有している。基台10の平面形状は例えば四角形状であり、基台10の4辺のそれぞれにはほぼ垂直に立ち上がる側壁部10aが形成されている。4辺の側壁部10aで囲まれた領域は凹部であり、その底部10bの上面が支持面12である。支持面12の上には、接続シート15が設置されている。接続シート15は、例えば、可撓性の基材シート16の表面に複数の接触子20が設けられた構成である。
【0019】
図2に示すように、基材シート16には、多数のスルーホール16aが形成され、それぞれのスルーホール16aの内周面には導電層17がメッキなどの手段で形成されている。基材シート16の表面には、導電層17に導通する表側の接続ランド17aが形成され、基材シート16の裏面には、導電層17に導通する裏側の接続ランド17bが形成されている。
【0020】
接触子20は、例えば、薄い導電性金属板を打ち抜いて形成され、さらにメッキ処理されたものであり、個々の接触子20が、接続ランド17aの表面に導電性接着剤などで接合されている。あるいは、接触子20は、銅やニッケルなどの導電性材料を使用してメッキ工程で形成される。例えば、基材シート16とは別個のシートの表面に複数の接触子20がメッキ工程で形成され、シートが、基材シート16に重ね合わされて、それぞれの接触子20が、導電性接着剤などで接続ランド17aに接合される。
【0021】
それぞれの接触子20は、基材シート16に設置された後に、例えば、外力が与えられて立体形状に形成される。このとき、加熱処理で内部の残留応力が除去され、接触子20は立体形状で弾性力を発揮できるようになる。
【0022】
図2に示すように、基材シート16の裏面側では、接続ランド17bに個別に接続する導電性材料のバンプ電極18が形成されている。図1に示すように、接続シート15が基台10の底部10bの表面である支持面12に設置されると、バンプ電極18が、支持面12に設けられた導電部に接続される。
【0023】
支持面12上での接触子20の配列ピッチは、例えば2mm以下であり、あるいは1mm以下である。接触子20の外形寸法の最大値も2mm以下であり、あるいは1mm以下である。
【0024】
なお上記の接続シート15の構成は一例である。例えば、図2では基材シート16にスルーホール16aが設けられているが、スルーホール16aが形成されず、基材シート16の表面に接触子20と導通する配線パターンが形成された構成でもよい。
【0025】
図2と図3に示すように、接触子20は、支持部21と弾性腕22が一体に連続して形成されている。弾性腕22は例えば螺旋形状に形成されており、弾性腕22の巻き始端である基部22aが、支持部21と一体化されている。弾性腕22の巻き終端である先端部22bは、螺旋のほぼ中心部に位置している。図2に示す形態では、接触子20を構成している支持部21が接続ランド17aに接続され、弾性腕22は、先端部22bが支持面12から離れるように立体成形されている。
【0026】
なお、接触子20は立体成形されず平面形状であってもよい。また弾性腕22は螺旋形状であることに限定されない。弾性腕22は帯状(直線状)や湾曲形状等であってもよい。また弾性腕22は片側だけが支持部21に支持されているが両側が支持部に支持された構成であってもよい。
【0027】
図4の断面図で示すように、弾性腕22は、芯部30と、この芯部30の表面の全周を覆う被覆部33と、被覆部33の表面に部分的に形成される中間層36及び最表面層37との積層構造で構成される。芯部30は、導電層31の周囲の全周が弾性層32で覆われたものである。導電層31は、銅(Cu)または銅を含む合金の単層である。銅合金は、高い電気導電度と高い機械的強度を有するCu,Si,Niを有するコルソン合金が好ましく使用される。コルソン合金は、例えばCu−Ni−Si−Mgで、Cuが96.2質量%、Niが3.0質量%、Siが0.65質量%、Mgが0.15質量%のものが使用される。
【0028】
弾性層32は、導電性であり且つ高い機械的強度と高い曲げ弾性係数を発揮する金属材料であり、ニッケル(Ni)層またはNiを含む合金層である。Ni合金は、Ni−X合金(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be、Co、Bのいずれか一種以上)が使用される。弾性層32は、導電層31の周囲に電解メッキまたは無電解メッキを施すことで形成される。弾性層32は、好ましくは無電解メッキで形成されたNi−P合金である。Ni−P合金では、リン(P)の濃度を10at%以上で30at%以下(より好ましくは17〜25at%)とすることにより、少なくとも一部が非晶質となり(好ましくは全体が非晶質)、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。あるいは、弾性層32はNi−W合金で形成される。この場合もタングステン(W)の濃度を10at%以上で30at%以下とすることにより、少なくとも一部が非晶質となり(好ましくは全体が非晶質)、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。
【0029】
図4において、弾性層32の断面積は、芯部30の断面積の20%以上で80%以下であることが好ましい。この範囲であると、芯部30が導電性とばね性の双方の機能を発揮できる。また図4の断面図において、芯部30の厚さ寸法および幅寸法は、共に10μm以上で100μm以下であることが好適である。
【0030】
図5に示すように、被覆部33は、金属層34と、金属層34中に分散された多数のフッ素樹脂粒子35を有して構成される。
【0031】
金属層34は、NiまたはNi合金で形成される。Ni合金は、Ni−X合金(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be、Co、Bのいずれか一種以上)が好ましく使用される。金属層34をNi合金で形成する場合、弾性層32と同様にNi−P合金やNi−W合金で形成することが好適である。金属層34中に占めるNi−P合金及びNi−W合金のP及びWの濃度を10at%以上で30at%以下(好ましくは17〜25at%)の範囲内にて調整する。そして、金属層34は、弾性層32と同じように機能するために、非晶質であることが好適である。
【0032】
フッ素樹脂粒子35は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成される。
【0033】
フッ素樹脂粒子35は、図5に示すように、被覆部33の表面33aに露出している。被覆部33の表面33aに露出しているのは一部のフッ素樹脂粒子35であり、図5のように被覆部33の内部に完全に埋もれているフッ素樹脂粒子35があってもよい。
【0034】
また図5の形態では、被覆部33の平均膜厚はフッ素樹脂粒子35の平均粒径以上となっている。被覆部33の平均膜厚とは、被覆部33の全域(金属層34が存在するかフッ素樹脂粒子35が存在するかは問わない)での膜厚を平均化したものであるが、実際には任意に定めた複数の測定点での膜厚を平均化して被覆部33の平均膜厚を求める。被覆部33の平均膜厚はフッ素樹脂粒子35の平均粒径より小さくてもよい。しかしながら、それにより、フッ素樹脂粒子35の表面33aからの突出量が大きくなりすぎて接触信頼性が低下することと、絶対的な金属層34の量が減ることで被覆部33と芯部30間の接合強度が低下しやすくなる。よって、被覆部33の平均膜厚をフッ素樹脂粒子35の平均粒径以上に調整することが好適である。ただし、被覆部33の内部にフッ素樹脂粒子35が埋まってしまうと、フッ素樹脂粒子35を設けたことの効果が適切に発揮されないから、被覆部33をメッキ形成した後、被覆部33の表面をエッチングして、被覆部33の表面に、フッ素樹脂粒子35の表面を露出させ、好ましくは、最表部にあるフッ素樹脂粒子35の一部(例えば半分程度)を突出させることが好適である。
【0035】
フッ素樹脂粒子35の平均粒径は0.1〜5μm程度であることが好ましい。フッ素樹脂粒子35は、球状、半楕円球状、鱗片状等、特に限定しないが、フッ素樹脂粒子35が球状以外の形態である場合には、長径、長辺の長さの平均を、「平均粒径」と設定する。フッ素樹脂粒子35の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)にて複数個のフッ素樹脂粒子35の粒径を測定し、その平均を算出して特定したものである。
【0036】
また被覆部33の平均膜厚は、0.5〜6μm程度であることが好適である。
またフッ素樹脂粒子35は、被覆部33中に10〜50vol%含まれることが好適である。これにより、被覆部33を設けた効果を大きくでき、しかも、被覆部33と電子部品の突出電極42間の導通性を適切に確保できる。
【0037】
また図5に示すように本実施形態では、被覆部33の表面33aに露出する金属層34の表面に白金族元素で形成された中間層36が形成される。すなわち中間層36は、露出するフッ素樹脂粒子35の表面には形成されない。さらに、中間層36の表面には、Auで形成された最表面層37が形成されている。
【0038】
図5に示すように、最表面層37の膜厚は、中間層36の膜厚より薄い。最表面層37の膜厚は、0.01〜0.6μmの範囲内(好ましくは0.06μm以下)であることが好適である。また、中間層36の膜厚は、0.1〜1μmの範囲内であることが好適である。
【0039】
図1に示すように、接続装置1には、電子部品40が設置される。電子部品40は、ICパッケージなどであり、ICベアチップなどの各種電子素子が本体部41内に密閉されている。本体部41の底面41aには、複数の突出電極42が設けられており、それぞれの突出電極42が本体部41内の回路に導通している。この実施の形態の電子部品40は、突出電極42が球形状である。また、突出電極42は裁頭円錐形状などであってもよい。
【0040】
突出電極42は、スズを含む導電性の合金で形成されている。すなわち、鉛を含まない半田で形成されており、例えばスズ・ビスマス合金や、スズ・銀合金である。
【0041】
本実施形態の接続装置1は、例えば、電子部品40の検査用であり、図1に示すように、被検査物である電子部品40が、基台10の凹部内に装着される。このとき、電子部品40は、本体部41の底面41aに設けられた個々の突出電極42が接触子20の上に設置されるように位置決めされる。基台10の上には図示しない押圧用の蓋体が設けられており、この蓋体を基台10上に被せると、この蓋体により電子部品40が矢印F方向へ押圧される。この押圧力により、それぞれの突出電極42が弾性腕22に押し付けられ、立体形状の弾性腕22が押しつぶされて、突出電極42と弾性腕22とが個別に導通させられる。
【0042】
接続装置1がいわゆるバーン・イン検査に使用される場合には、周囲の温度が150℃程度に設定された状態で、外部の検査用の回路から接触子20を経て突出電極42に電流が与えられて、電子部品40の本体部41内の回路が断線しているか否かの検査が行われる。あるいは、接触子20から突出電極42に所定の信号が与えられて、本体部41内の回路の動作試験が行われる。
【0043】
検査が完了した電子部品40は、接続装置1から取り出され、次に検査すべき電子部品40が接続装置1内に設置されて、同様にして検査が行われる。この検査が繰り返される。そのため、接触子20の弾性腕22には、新たな電子部品40の突出電極42が次々に接触することになる。
【0044】
本実施形態では図4で説明したように、弾性腕22は、導電性の金属で形成された芯部30の表面に被覆部33が形成されており、この被覆部33は、金属層34と、金属層34中に分散され一部が表面に露出するフッ素樹脂粒子35とを有して構成される。
【0045】
上記した被覆部33を導電性の芯部30の表面に形成することで、フッ素樹脂粒子35の金属に対する反発機能や分離・剥離機能(金属に対する非付着性)が適切に作用する。
【0046】
本実施形態では、突出電極42との接触安定性、及び接触抵抗の低減を図るために、Auで形成された最表面層37を、被覆部33の表面33aに露出した金属層34との対向位置に形成するが、このとき、最表面層37を金属層34上に直接形成せず、最表面層37と金属層34との間に、白金族元素で形成された中間層36を介在させている。
【0047】
図6は、露出する金属層34の表面に、直接、Auで形成された最表面層37を形成した比較例1である。比較例1の構成では、製造過程や使用時の加熱等により、金属層34の表面付近にて芯部(特に、CuあるいはCu合金で形成された導電層31)の構成元素が拡散腐食するのを抑制するために、最表面層37の膜厚を非常に厚く形成しなければならない。例えば、Auからなる最表面層37を、0.2〜1μm程度の膜厚で形成する。このように比較例1では、Auで形成された最表面層37の膜厚を薄くできないので、半田転写量を十分に少なくすることが出来ない。
【0048】
一方、図7は、露出する金属層34の表面に、白金族元素で形成された中間層36のみを形成した比較例2である。比較例2の構成では、中間層36が最表面層となる。しかしながら比較例2の構成では、露出する中間層36の触媒作用により、使用環境によっては有機物汚染等が生じ、潤滑油を併用できない等、使用環境が限定されてしまう。
【0049】
そこで本実施形態では、露出するフッ素樹脂粒子35の表面を除く金属層34の表面に、中間層36と最表面層37とを積層したのである。すなわち本実施形態では、白金族元素から成る中間層36が、被覆部33の表面33aに露出する金属層34の表面に形成される。白金族元素で形成された中間層36は、芯部(特に、CuあるいはCu合金で形成された導電層31)を構成する元素の金属層34の表面付近での拡散腐食を効果的に抑制する。
【0050】
中間層36はPdであることが好適である。PdとAuの標準電極電位は、AuのほうがPdより大きい。このため、中間層36と、Auで形成された最表面層37とを重ねて形成することで、中間層36は、表面(最表面層37との界面等)に、金属酸化物(PdO)を形成し安定化する。金属酸化物は極薄膜であり、膜厚としては1Å〜500Å程度である。よって中間層36の触媒作用は抑制され、酸化力が大きい原子状酸素の発生等を効果的に抑制できる。
【0051】
さらに本実施形態では、Auから成る最表面層37が中間層36の表面に形成されている。上記したように、芯部(特に、CuあるいはCu合金で形成された導電層31)を構成する元素の金属層34の表面付近での拡散腐食は、白金族元素で形成された中間層36の形成により効果的に抑制されているので、図6の比較例1のように最表面層37の膜厚を厚く形成する必要はない。本実施形態では、最表面層37の膜厚を、中間層36の膜厚より薄く形成できる。このようにAuで形成された最表面層37を備えることで、接触抵抗の低減、接触安定性の向上を図ることができ、さらに最表面層37の膜厚を薄く形成できるので、半田転写量を比較例1に比べて激減できる。
【0052】
このように本実施形態では、接触子20の表面には、フッ素樹脂粒子35の一部が露出し、それ以外の領域(NiあるいはNi合金から成る金属層34の表面)では、白金族元素から成る中間層36、及び中間層36よりも薄い膜厚のAuからなる最表面層37が積層された構成である。最表面層37は、フッ素樹脂粒子35とともに、接触子20の表面に露出する。このような構成により、半田転写の改善、接触抵抗の安定性、使用環境の自由度の向上、耐環境特性の向上等を図ることができる。よって、従来に比べて優れた接触信頼性を得ることができ、長寿命化を図ることが可能になる。
【0053】
被覆部33,中間層36及び最表面層37は、いずれも、無電解メッキあるいは電解メッキで形成できる。
【0054】
また中間層36は上記したように被覆部33のうち、フッ素樹脂粒子35の表面に形成されず、金属層34の表面にのみ形成されるので、中間層36の平面形状及び、中間層36上に形成される最表面層37の平面形状は例えば網目形状で形成される。また本実施形態では、接触子20の表面には、最表面層37及びフッ素樹脂粒子35のみならず、中間層36の一部が露出してもよい。最表面層37は中間層36上を完全に覆っていることが好ましいが、例えば、最表面層37を非常に薄い膜厚で形成して、最表面層37にピンホールが形成される等した場合のように、最表面層37が中間層36の表面全体を覆っていない構成も本実施形態として含まれる。
【0055】
また本実施形態には、フッ素樹脂粒子35が被覆部33の表面に露出していない形態も含まれる。このとき、被覆部33の表面全体に中間層36及び最表面層37が形成される。なお中間層36及び最表面層37の膜厚が薄い場合には、中間層36及び最表面層37が島状や格子状等で被覆部33の表面に形成されてもよい。
【0056】
この実施形態では、被覆部33の表面付近にあるフッ素樹脂粒子35と金属層34や中間層36間の接合強度が弱いので(密着性が低いので)、少しの摺動で、フッ素樹脂粒子35上を覆う金属層が突出電極42側に転写され、フッ素樹脂粒子35が露出する。そして図5のような形態とほぼ同じになる。
【0057】
上記したように本実施形態での接続装置1は、例えば、検査用として用いられるが、このとき、電子部品40の着脱を繰り返しても、効果的に、突出電極42と接触子20間の接続による半田転写を従来に比べて抑制することが出来る。
【0058】
また本実施形態では、接触子20には弾性変形可能な弾性腕22が設けられる。この弾性腕22が電子部品40の突出電極42と当接する。図1のように、電子部品40を矢印F方向へ押圧することで、弾性腕22が押しつぶされて、突出電極42と弾性腕22とが導通させられる。このとき、突出電極42は弾性腕22に対して滑り接触する。本実施形態では、このような滑り接触においても、フッ素樹脂粒子35による潤滑、反発効果により、凝着磨耗を防ぎ、よって、接触信頼性を向上でき、長寿命化を図ることが出来る。
【0059】
なお、本実施形態での接触子20は図1に示す接続装置1以外の用途に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態である接続装置の部分断面図、
【図2】図1に示す接続装置の接触子付近を示す拡大断面図、
【図3】本実施形態の接触子の平面図、
【図4】接触子の弾性腕の部分を図3のA−A線に沿って膜厚方向から切断した切断面を示す断面図、
【図5】図4に示す接触子の表面付近を拡大した部分拡大断面図、
【図6】比較例1の接触子の表面付近を拡大した部分拡大断面図、
【図7】比較例2の接触子の表面付近を拡大した部分拡大断面図、
【符号の説明】
【0061】
1 接続装置
10 基台
12 支持面
15 接続シート
16 基材シート
20 接触子
21 支持部
22 弾性腕
30 芯部
31 導電層
32 弾性層
33 被覆部
34 金属層
35 フッ素樹脂粒子
36 中間層
37 最表面層
40 電子部品
42 突出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の半田で形成された電極と電気的に接続される接触子において、
導電性の芯部と、
前記芯部の少なくとも前記電極と接触する表面に、NiあるいはNi合金からなる金属層、及び、前記金属層中に分散されたフッ素樹脂粒子を有して形成された被覆部と、
前記被覆部の表面に形成された白金族元素からなる中間層と、
前記中間層の表面に前記中間層よりも薄い膜厚で形成されたAuからなる最表面層との積層構造で構成されていることを特徴とする接触子。
【請求項2】
前記フッ素樹脂粒子の一部は前記被覆部の表面に露出しており、露出する前記フッ素樹脂粒子の表面を除いて、前記金属層の表面に前記中間層が形成されており、
前記接触子の表面には、前記最表面層と前記フッ素樹脂粒子とが露出している請求項1記載の接触子。
【請求項3】
前記中間層はPdで形成される請求項1又は2に記載の接触子。
【請求項4】
前記芯部は、CuあるいはCu合金で形成された導電層を備える請求項1ないし3のいずれかに記載の接触子。
【請求項5】
前記被覆部は、前記芯部の周囲を覆っている請求項1ないし4のいずれかに記載の接触子。
【請求項6】
弾性変形可能な部分を備え、前記電極が前記接触子に対して滑り接触する請求項1ないし5のいずれかに記載の接触子。
【請求項7】
電子部品の半田で形成された電極と電気的に接続される接触子を備えた接続装置において、
前記接触子は請求項1ないし6のいずれかに記載された発明により形成されていることを特徴とする接続装置。
【請求項8】
前記接触子に対して、前記電極を有する前記電子部品の装着と離脱とが繰り返し行われる検査用として用いられる請求項7記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−40344(P2010−40344A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202497(P2008−202497)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】