説明

接触子

【課題】所定の変位量を確保しつつ、所望の導通性を有する接触子を提供する。
【解決手段】蛇腹体20と、前記蛇腹体20の一端部21に接続された固定部30と、前記蛇腹体20の他端部22に接続された可動部40とを有する。そして、前記可動部40を押圧して前記蛇腹体20を圧縮し、前記蛇腹体20に突設した接続用突起25を前記蛇腹体20自体に接触させることで蛇腹体20を長尺にしても、蛇腹体20を圧縮すると、接続用突起25が蛇腹体20自体に接触して短絡し、接触抵抗を低下させることができるので、接触抵抗の小さい接触子10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触子、例えば、集積回路検査用プローブに使用される接触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路検査用プローブに使用される接触子としては、電子部品をソケット本体に対して押圧することにより、前記電子部品の電極端子と前記ソケット本体の電極部との接触を保持し、前記ソケット本体の電極部を被接続電子部品の電極端子に接続して成る電子部品用ソケットにおいて、前記ソケット本体の電極部が、所定の厚さの弾性板材を打ち抜き加工して両端に前記電子部品の電極端子および前記被接続電子部品の電極端子とそれぞれ接触する一対のコンタクトと、前記一対のコンタクト間に介在して前記一対のコンタクトを接続する連続して並設された蛇行部とを有することを特徴とする電子端子用ソケットの接触子がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−134202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の電子端子用ソケットの接触子では、蛇行部の折り返し回数が少なく、所望の伸縮量(変位量)が確保しにくいので、使い勝手が悪い。このため、所望の伸縮量(変位量)を確保すべく、前記電子端子用ソケットの折り返し回数を増大させた長尺な接触子が考えられる。しかし、長尺な接触子の蛇行部が細長くなると、電気抵抗が増大し、電流が流れにくくなり、長尺化に限界があるという問題点がある。
本発明に係る接触子は、前述の問題点に鑑み、所定の変位量を確保しつつ、所望の導通性を有する接触子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る接触子は、前記課題を解決すべく、蛇腹体と、前記蛇腹体の一端部に接続された固定部と、前記蛇腹体の他端部に接続された可動部とを有し、
前記可動部を押圧して前記蛇腹体を圧縮し、前記蛇腹体に突設した接続用突起を前記蛇腹体自体に接触させる構成としてある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、所望の変位量を確保すべく、蛇腹体を長尺にしても、蛇腹体を圧縮すると、接続用突起が蛇腹体自体に接触して短絡し、接触抵抗を低下させることができるので、接触抵抗の小さい接触子が得られる。
【0007】
本発明に係る実施形態は、前記蛇腹体が、直線形状の中間部と、隣り合う前記中間部を接続する円弧部とからなり、隣り合う前記中間部の少なくとも1つに、接続用突起を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、蛇腹体を圧縮すると、中間部に設けた接続用突起が対向する他の中間部に接触して短絡するので、接触抵抗が小さい接触子が得られる。
【0008】
本発明に係る他の実施形態は、前記蛇腹体が、曲線形状の中間部と、隣り合う前記中間部を接続する円弧部とからなり、前記中間部と前記円弧部との境界に相互に当接可能な接続用突起を設けておいてもよい。
本実施形態によれば、蛇腹体を圧縮すると、中間部と円弧部との境界に設けた接続用突起が相互に接触して短絡するので、接触抵抗が小さい接触子が得られる。
【0009】
本発明の異なる実施形態としては、蛇腹体と固定部との接続位置を、前記固定部の軸心上に配置してもよく、また、蛇腹体と固定部との接続位置を、前記固定部の軸心から偏心した位置に配置してもよい。
本実施形態によれば、蛇腹体と固定部との接続位置を、固定部の軸心上に配置した場合には、小さな操作力で操作でき、寿命の長い接触子が得られる。
一方、蛇腹体と固定部との接続位置を、固定部の軸心から偏心した位置に配置した場合には、蛇腹体が座屈しやすくなり、接点圧の高い接触子が得られる。
【0010】
本発明の異なる実施形態としては、蛇腹体と可動部との接続位置を、前記可動部の軸心上に配置してもよく、また、蛇腹体と可動部との接続位置を、前記可動部の軸心から偏心した位置に配置してもよい。
本実施形態によれば、蛇腹体と可動部との接続位置を、可動部の軸心上に配置した場合には、小さな操作力で操作でき、寿命の長い接触子が得られる。
一方、蛇腹体と可動部との接続位置を、可動部の軸心から偏心した位置に配置した場合には、蛇腹体が座屈しやすくなり、接点圧の高い接触子が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1Aは本発明に係る接触子の第1実施形態を示す斜視図、図1B,1Cは動作前後を示す正面図である。
【図2】図2Aは図1に示す接触子をハウジング内に収納した正面図、図2B,2Cは動作前後を示す正面断面図である。
【図3】図3Aは本発明に係る接触子の第2実施形態を示す斜視図、図3B,3Cは動作前後を示す正面図である。
【図4】図4Aは図3に示す接触子をハウジング内に収納した正面図、図4B,4Cは動作前後を示す正面断面図である。
【図5】図5A,5B,5Cは第1実施形態の動作過程を示す正面図、図5Dは図5Cの部分拡大図、図5Eは変位量と接触抵抗値との関係を測定した結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る接触子の実施形態を図1ないし図4の添付図面に従って説明する。
第1実施形態は、図1および図2に示すように、蛇腹体20と、蛇腹体20の一端部21に接続された固定部30と、前記蛇腹体20の他端部22に接続された可動部40とで形成された接触子10を、ハウジング50内に収納したものである。
【0013】
前記蛇腹体20は、直線形状の中間部23と、隣り合う前記中間部23,23を接続する円弧部24とで形成されている。また、隣り合う前記中間部23のうち、一方の中間部23に接続用突起25を突設してある。さらに、前記蛇腹体20は、その断面のアスペクト比が1.5以上、好ましくは2以上であり、プレス加工で形成してもよく、電気鋳造で形成してもよい。なお、ここでアスペクト比とは、蛇腹体20の断面における厚さ寸法と高さ寸法との比をいう。
【0014】
前記固定部30は、その上端のうち、その軸心上に前記蛇腹体20の一端部21を接続してあるとともに、その下端に端子部31を軸心に沿って延在してある。また、前記固定部30は、その両側側面に係止用爪部32を突設してある。
【0015】
前記可動部40は正面略T字形状を有し、その巾広部41の下端のうち、その軸心上に前記蛇腹体20の他端部22を接続してある。
【0016】
ハウジング50は、図2に示すように、前記接触子10を収納可能なスリット51を有する直方体形状であり、その上端面に操作孔52を有する一方、その下端面に圧入孔53を有している。
【0017】
そして、図2に示すように、可動部40を押し下げると、蛇腹体20が圧縮されることにより、巾広部41が下降し、接続用突起25が対向する中間部23に接触して短絡する。さらに、可動部40を押し下げると、円弧部24,24が相互に接触して短絡する。このため、可動部40の変位量に応じて接触抵抗が低下し、電流が流れる。
【0018】
第2実施形態は、図3および図4に示すように、前述の第1実施形態と同様であり、蛇腹体20と、蛇腹体20の一端部21に接続された固定部30と、前記蛇腹体20の他端部22に接続された可動部40とで形成された接触子10を、ハウジング50内に収納したものである。
【0019】
前記蛇腹体20は、曲線形状の中間部23と、隣り合う前記中間部23,23を接続する円弧部24とで形成されている。そして、前記中間部23と前記円弧部24との境界に相互に接触可能な接続用突起26をそれぞれ設けてある。
【0020】
前記固定部30は、その上端のうち、その軸心上に突設した接続用軸部37に前記蛇腹体20の一端部21を接続してあるとともに、その下端に端子部31を軸心上に延在してある。また、前記固定部30は、その両側側面に係止用爪部32を突設してある。
【0021】
前記可動部40は正面略T字形状を有し、その巾広部41の下端のうち、軸心上に突設した接続用軸部43に前記蛇腹体20の他端部22を接続してある。
【0022】
ハウジング50は、図4に示すように、前記接触子10を収納可能なスリット51を有する直方体形状であり、その上端面に操作孔52を有する一方、その下端面に圧入孔53を有している。
【0023】
そして、前記可動部40を押し下げると、蛇腹体20が圧縮され、接続用突起26,26が相互に接触して短絡することにより、接触抵抗が低下し、電流が流れる。
【実施例1】
【0024】
第1実施形態に係る接触子の変位量と接触抵抗値との関係を測定した。測定結果を図5Eに図示する。
図5Eから明らかなように、動作前(図5A)においては接触抵抗値が大きく、電流はほとんど流れない。
そして、可動部40を操作体55で押し下げると(図5B)、蛇腹体20の接続用突起25が対向する中間部23に接触して短絡し(図5D)、接触抵抗値が急激に低下して電流が流れ始める。
さらに、前記可動部40を押し下げると(図5C)、蛇腹体20の隣り合う円弧部24も相互に接触して短絡するので、接触抵抗が漸次、低下し、電流が安定して流れる。
【0025】
前述の実施例1から、例えば、集積回路検査用プローブとして利用できるだけでなく、スイッチとしても利用できることが判った。
特に、集積回路検査用プローブとして使用すれば、前記接触子は肉厚を薄く形成できるので、狭いピッチで多数の接触子を配置できるとともに、部品点数の少ない集積回路検査用プローブが得られる。また、スイッチとして利用すれば、応答性の良いスイッチが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る接触子は集積回路検査用プローブ、スイッチとしてだけではなく、例えば、バッテリの接続端子として利用してもよい。
また、ハウジングは一体成形したものに限らず、2分割できるものであってもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
10:接触子
20:蛇腹体
21:一端部
22:他端部
23:中間部
24:円弧部
25:接続用突起
26:接続用突起
30:固定部
31:端子部
32:係止用爪部
37:接続用軸部
40:可動部
41:巾広部
43:接続用軸部
50:ハウジング
51:スリット
52:操作孔
53:圧入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇腹体と、前記蛇腹体の一端部に接続された固定部と、前記蛇腹体の他端部に接続された可動部とを有し、
前記可動部を押圧して前記蛇腹体を圧縮し、前記蛇腹体に突設した接続用突起を前記蛇腹体自体に接触させることを特徴とする接触子。
【請求項2】
前記蛇腹体が、直線形状の中間部と、隣り合う前記中間部を接続する円弧部とからなり、隣り合う前記中間部の少なくとも1つに、接続用突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載の接触子。
【請求項3】
前記蛇腹体が、曲線形状の中間部と、隣り合う前記中間部を接続する円弧部とからなり、前記中間部と前記円弧部との境界に相互に当接可能な接続用突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載の接触子
【請求項4】
蛇腹体と固定部との接続位置を、前記固定部の軸心上に配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項5】
蛇腹体と固定部との接続位置を、前記固定部の軸心から偏心した位置に配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項6】
蛇腹体と可動部との接続位置を、前記可動部の軸心上に配置したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の接触子。
【請求項7】
蛇腹体と可動部との接続位置を、前記可動部の軸心から偏心した位置に配置したことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の接触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89374(P2013−89374A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227172(P2011−227172)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)