説明

接触式シート厚さ計

【課題】シートの透明度や色、つや、表面のザラつき等の影響を受けることなく、また、バックアップローラー使用の場合のようなベアリング精度も関係なくなり、精度良くシート厚さをオンラインにて連続的に計測でき、また、100〜200m/分程度のシートの走行スピードでも、精度良くシート厚さを計測できるような接触式シート厚さ計を提供すること。
【解決手段】接触式シート厚さ計は、シート厚さの測定時においては固定されている耐摩耗性のバックアッププレートと、一端を固定した板バネと、板バネの反固定側先端部に取り付けられて被計測シートをバックアッププレートに対して接触してバックアッププレートとの間に被計測シートを挟み込むようにする耐摩耗性の接触子と、接触子が取り付けられた板バネの部分に間隔を置いて対峙し被計測シートの厚さの変動に応じた板バネの変位を検出する非接触型変位センサーとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート厚さ測定装置に関するものであり、特に、フィルム等シート製造現場において走行するシートの厚さ変動を連続して計測するのに適したシート厚さ計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からあるシート厚さ計は、大別して、非接触接触式のものと、接触式のものがある。そして、非接触式のシート厚さ計のほとんどは、シートを安定させるためにバックアッププレートあるいはバックアップロール上のシートにテンションを与えバックアップロールまたはプレートに密着させた上、非接触式の変位センサーで、シート無しの状態を厚さゼロとし、シート表面までの距離の変動を計測して厚さを計測する方式である。
【0003】
また、バックアップ無しでシート両面に非接触式の変位計を配し、シートまでの距離を相殺して計測する完全な非接触式のものもある。しかし、一般的には、片面にバックアッププレートあるいはバックアップロールを当てシートの走行を安定させながら計測する前者のタイプのものが殆どである。
【0004】
一方、機械的な計測方法の接触式のものとしては、バックアッププレートあるいはバックアップロール上のシートにダイヤルゲージ等を直接当ててシート無しの状態を厚さゼロとし計測する方式のものがある。また、特許文献1の図1から図5に関して記載されているように、ロールとロールとでシートを挟み、下部ロールの軸を固定し上部ロールをフリーとし、シートの厚さの変動によって上下する上部ロールの変位を磁気センサー又は光センサー等で計測する方式のものや、特許文献1の図6に関して記載されているように、上部ロールの代わりに、板バネの先端部に接触子を取り付けて、下部ロールとでシートを挟み込むようにし板バネの先端部の変位を磁気センサー等で計測する方式のものもある。
【0005】
【特許文献1】特許第3421650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような非接触式のシート厚さ計には、光学的センサーを使用する場合が多く、直接シート面に投光する方式が採られているが、この方法は、シートの透明度、色、表面のつやまたはざらつき等の影響を非常に受け易く、絶対厚さの計測はほとんど不可能であり、シートの素材毎にキャリブレーションが必要である。また、透明度の高いフィルムの場合は計測不能となる場合もあった。従って、これらの影響を受けず、常に絶対厚さを計測できるシート厚さ計が要望されていた。
【0007】
一方、前述したような、ダイヤルゲージ等で直接シートに接して厚さを計測する機械的な接触式の厚さ計は、絶対厚さを計測できるものの、その構造上、ギヤー、レバー等による機械的抵抗、慣性、バックラッシュ等によってシートの走行スピードに対する対応性が劣り、せいぜい数メートル毎分程度のシートの走行スピードに対応するのが限界であった。
【0008】
また、特許文献1に記載されているようなバックアップロールを使用する接触式のシート厚さ計では、基準となる下部ロールの回転精度、即ちベアリング精度が非常に重要となり、サブミクロンのオーダーの精度が必要となると、これを満足しうるベアリングの入手は非常に困難である。
【0009】
また、特許文献1に記載されているような上部ロールの代わりに板バネの先端部に取り付けた接触子を使用する接触式のシート厚さ計でも、同様に下部のバックアップロールに使用するベアリング精度が問題となる。
【0010】
その上、前述した従来のシート厚さ計、特に、特許文献1に開示されたような接触式シート厚さ計は、シート製造現場においてオンラインにてシート厚さを計測するのに適用できないものではないが、これら接触式シート厚さ計は、特にオフラインでのシート厚さの計測を意図しているものであり、オンラインでのより高速のシート走行スピードに対応させるのが難しいものであった。
【0011】
よって、本発明の目的は、少なくとも100〜200m/分程度の高速で且つシート素材の特性に影響されず、絶対厚さを連続して計測できるような接触式シート厚さ計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、シート厚さの測定時においては固定されている耐摩耗性のバックアッププレートと、一端を固定した板バネと、該板バネの反固定側先端部に取り付けられて被計測シートを前記バックアッププレートに対して接触して該バックアッププレートとの間に該被計測シートを挟み込むようにする耐摩耗性の接触子と、該接触子が取り付けられた前記板バネの部分に間隔を置いて対峙し被計測シートの厚さの変動に応じた板バネの変位を検出する非接触型変位センサーとを備えることを特徴とする接触式シート厚さ計が提供される。
【0013】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記板バネは、被計測シートの走行方向と並行に延長するように設けられている。
【0014】
本発明の別の実施の形態によれば、前記バックアッププレートの被計測シートの走行方向にそって取った断面形状は、蒲鉾型である。
【0015】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記バックアッププレートは、サファイヤー或いはセラミック等の耐摩耗性のプレートである。
【0016】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記接触子は、鋼製プレートにサファイヤー或いはセラミック等の耐摩耗性のボールを部分的に埋設してなる。
【0017】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記接触子は、被計測シートの走行方向にそって取った断面の形状が蒲鉾型である鋼製プレートである。
【0018】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記非接触型変位センサーは、磁気センサーである。
【0019】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記接触子が取り付けられた前記板バネの部分の反対側には、磁性片が取り付けられている。
【0020】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記非接触型変位センサーは、レーザーセンサーである。
【0021】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記レーザーセンサーは、三角測量方式のものである。
【0022】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記接触子が取り付けられた前記板バネの部分の反対側には、反射片が取り付けられている。
【0023】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記バックアッププレート、板バネ、接触子および非接触型変位センサーの高さレベルは、被計測シートの走行高さレベルに対して上下に調節しうるものとされている。
【0024】
本発明の更に別の実施の形態によれば、前記バックアッププレート、板バネ、接触子および非接触型変位センサーの位置は、被計測シートの走行方向において調節しうるものとされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、添付図面に基づいて本発明の実施の形態および実施例について、本発明をより詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計を、厚さを計測すべきシートの走行ラインに配置した状態を示すテスト装置の概略図である。この図1に例示する実施例では、本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計100は、アンリール部10のアンリールスタンドに回転自在に保持されたアンリール11に巻かれたアルミ箔、銅箔、フィルム、紙等のシート1が、ワインダー部20のワインダースタンドに回転自在に保持されたワインダーリール21へと巻き取られていくシート走行ラインの途中に配置され、オンラインにてシート1の厚さを連続的に計測していくものとして設計されたテスト装置である。アンリール部10およびワインダー部20の動作は、制御操作部30によって制御され、接触式シート厚さ計100によるシート1の厚さの計測結果は、この制御操作部30の表示部31に表示されるようになっている。
【0027】
アンリール部10のアンリール11は、回生制御ブレーキ用ACサーボモータ12に接続されて、その回動制御がなされる。アンリール11の下方には、アンリール11に巻かれているシートロールの直径を検出するためのテンション制御用直径検出センサー13が設けられている。アンリール部10のシート引出し口には、ガイドロール14が配設されていて、このガイドロール14には、シート1の走行速度を検出するためのシート走行検出エンコーダー15が接続されている。
【0028】
一方、ワインダー部20のワインダーリール21は、速度制御巻取用ACサーボモータ22に接続されて、そのシートの巻取り速度制御がなされる。ワインダーリール21の下方には、ワインダーリール21に巻かれているシートロールの直径を検出するためのテンション制御用直径検出センサー23が設けられている。ワインダー部20のシート引き込み口には、ガイドロール24が配設されていて、このガイドロール24には、シート1の走行速度を検出するためのシート走行検出エンコーダー25が接続されている。
【0029】
制御操作部30は、例えば、諸パラメータや制御命令等を入力するための操作キーやコンピュータ制御回路等を含むものであり、テンション制御用直径検出センサー13および23並びにシート走行検出エンコーダー15および25からの信号を受けて、それら信号に基づいて回生制御ブレーキ用ACサーボモータ12および速度制御巻取用ACサーボモータ22の動作を制御し、アンリール部10からワインダー部20へシート1が所定のテンション状態にて走行させられるようにする。なお、これらのアンリール部10、ワインダー部20および制御操作部30の構成および動作は、当技術分野において通常良く知られたものでよいので、これ以上は詳述しない。
【0030】
次に、本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計100の構成および動作について、特に図2から図5を参照して詳述する。図2は、図1のシート走行ラインに配置した本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計の概略正面図であり、図3は、図2の接触式シート厚さ計の概略側面図である。これら図2および図3によく示されるように、この実施例の接触式シート厚さ計100は、主として、アンリール部10のアンリールスタンドおよびワインダー部20のワインダースタンドが設置されている定盤2上に設置される支持スタンド110と、この支持スタンド110に設けられる耐摩耗性のバックアッププレート120と、板バネ130と、耐摩耗性の接触子140と、非接触型変位センサー150とを備えている。
【0031】
支持スタンド110は、定盤2の上に固定されるベース部111を備えており、このベース部111の上には、2本の平行なスライドレール112が設けられている。このスライドレール112に跨るようにして、スライドベース113が設置されている。このスライドベース113は、図3によく示されているように、スライドレール112上にそって矢印Aの方向に移動しうるものとされており、後述するバックアップロール120、接触子140および非接触型変位センサー150のシート1に対する横方向位置を調整できるようにしている。
【0032】
スライドベース113には、支柱114が立設されており、この支柱114には上下方向にスライド可能なようにホルダー115が取り付けられている。このホルダー115には、支柱114の上部に取り付けられた取付け板116とスライドベース113との間に支柱縁c114に対して平行に延長するようにして設けられた駆動ネジ117とネジ係合させられている。駆動ネジ117の上端には、回動操作部118が設けられており、この回動操作部118を回動させることにより、駆動ネジ117が回転させられ、これによりこの駆動ネジ117にネジ係合しているホルダー115が支柱114にそって矢印Bの方向に移動しうるものとされている。これにより、後述するバックアップロール120、接触子140および非接触型変位センサー150のシート1に対する高さ位置を調整できるようにしている。
【0033】
ホルダー115には、上下2本の支持腕115Aおよび115Bが取り付けられており、下側の支持腕115Aの先端部には、バックアッププレート120が取り付けられている。一方、上側の支持腕115Bの先端部付近には、板バネ取付け部119が設けられており、この板バネ取付け部119には、板バネ130の一端が固定されており,この板バネ130の反固定側先端部には、接触子140が取り付けられている。また、支持腕115Bの先端部には、非接触型変位センサー150が取り付けされている。
【0034】
図5は、図2の接触式シート厚さ計100のバックアッププレート120、板バネ130、この板バネ130に取り付けた接触子140および磁気センサー150の関係を分かり易く示すための部分拡大図である。この図5によく示されるように、支持腕115Aの先端部に取り付け固定されたバックアッププレート120は、この実施例では、その断面形状が蒲鉾型とされており、サファイヤープレートで形成されている。板バネ130は、バネ性のある鋼材等で形成されており、この実施例では、板バネ取付け部119からシート1の走行方向と並行に延長するようにして設けられている。この板バネ130の反固定側先端部、すなわち、自由端に取り付けられた接触子140は、この実施例では、磁性鋼材等の平板状プレートの中心部に径3mmのサファイヤーボール141を一部埋設したものとされている。板バネ130は、固定された蒲鉾型バックアッププレート120の頂部に対してシート1が所定の圧力にて挟み込まれるように、シート1に対して接触子140のサファイヤーボール141が接触させられるように作用するものである。支持腕115Bの先端部に設けられた非接触変位センサー150は、接触子140の上方に間隔をおいてこれと対峙する位置に配置されており、この実施例では、磁気センサーとされている。なお、非接触変位センサー150をこの実施例のように磁気センサーとする場合には、接触子140に対応する板バネ130の上面位置に、磁性鋼材等による磁性片142を設けると、磁気センサーによるシート厚さ測定感度を上げることができる。
【0035】
非接触型変位センサー150としての磁気センサーは、シート厚さの計測時において、固定されたバックアッププレート120と接触子140のサファイヤーボール141との間に挟まれて走行されていくシート1の厚さの変化に応じて変位する接触子140の磁性体部分または板バネ130の磁性体部分または磁性片142の変位に応じたシート厚さ検出信号を制御操作部30へ出力し、制御操作部30は、そのシート厚さ検出信号を処理してシート厚さ計測信号とし、そのシート厚さ計測信号に基づいて表示部31にシート厚さを連続的に表示していく。
【0036】
バックアッププレート120の形状および材質は、前述したものに限定されずまた、材質としてはセラミック等も使用できるが、耐摩耗性のある材料で形成される必要がある。しかし、蒲鉾型バックアッププレート120に対するシート1の進入角、即ち抱き角は重要である。図4は、このようなシートの進入角を説明するための概略図であり、この図4において、符号θがそのシートの進入角を示している。この進入角θが大き過ぎると、バックアッププレートによる疵が被測定シート1上に発生してしまい、この進入角θが小さ過ぎると、シート上の接触子140を持ち上げシート1の走行が不安定となってしまう。このようなシートの進入角は、バックアッププレートの断面形状によって調整できるし、また、前述したようなホルダー115の高さ位置の調整によって調節することができる。
【0037】
また、接触子140の形状および材質も、前述したものに限定されず、また、材質としてはセラミック等も使用できるが、特に接触子の形状は重要である。径3mmのサファイヤーボール141を使用する代わりに、例えば、フラットなサファイヤープレートや大径の球面を有する鋼製のものを使用することが考えられる。これら接触子について種々実験した結果によれば、フィルム、紙等の一般的な材質のシートに対しては径3mmのサファイヤーボールが最も適することが分かった。この場合の計測はワンポイント計測となるので、厚さは「ピーク ツー バレー」の移動平均値となる。他の2種の接触子はシート面に対する接触面積が大きくなるので、「ピーク ツー ピーク」となり、多少厚めの計測値となる。アルミ箔、銅箔等極めて疵付き易い材質のシートに対してはサファイヤーボールの接触子はあまり好ましくないことが分かった。また、フラットまたは大径球面の接触子を使用する場合には、微妙な当り調整が必要であるが、調整さえ完全に行えば、15μ程度のアルミ箔に対しても使用可能であることが分かった。
【0038】
その上、シートに対する加圧力も極めて重要なファクターであることが分かった。板バネ130のバネ力が弱すぎると、非接触型変位センサーとして後述するようなレーザーセンサーを使用する場合に、レーザーの当たるポイントが不安定となり、計測精度が悪化する。いずれにしても、シートに疵をつけない程度に軽くタッチすることが重要であるが、また、逆に軽すぎるとシートのフラッタリングを抑えることができないので、計測が不安定となってしまう。シートの材質、厚さ、表面の状態等に応じて接触圧を調整する必要がある。
【0039】
また、実際の計測に当たって生じる障害の対策として、次のことが考えられる。
1)障害の最大のものはビビリ(何らかの原因により計測値が大きく変動してしまう)の問題である。ビビリが発生すると計測値が不安定となり、著しいときは計測不能となる場合もある。このビビリの発生原因を追及すると、最大の原因はシートと接触子間の摩擦力の問題である。摩擦力が大きいほどビビリ易い。また、接触子を支える板バネの有する固有振動数にも関連がある。種々試行錯誤の結果、防止策として次のことが判明した。
1.板バネは比較的堅いものが良い。
2.接触子のシートに対する接触面は小さい方が良い。
3.バックアッププレートに対するシートの進入角は小さい方が良い。
但し、小さ過ぎるとバックアッププレート面からシートが浮き上がる傾向があるの
で注意する必要がある。
4.シートスピードとの共振点があるので、ビビリ易い速度を避けるのが良い。
2)サブミクロンの計測となると、検出器全体の剛性が問題となる。検出器は充分な剛性を有するものでなければならない。
3)検出端の微妙な上下調節ができるものでなければならない。
【0040】
図6は、本発明の別の実施例について説明するための図であり、この図6は、その別の実施例の接触式シート厚さ計のバックアッププレート、板バネ、この板バネに取り付けた接触子およびレーザーセンサーの関係を分かり易く示すための図5と同様の部分拡大図であり、図7は、図6に示した部分の側面図である。前述した実施例では、非接触型変位センサーとして磁気センサーを使用したのであるが、この図6および図7の実施例では、非接触型変位センサーとしてレーザーセンサー160を使用している。この図6および図7に示されるように、非接触型変位センサーとしてのレーザーセンサー160が、磁気センサー150に代えて支持腕115Bに取り付けられている。その他の構成については、前述の実施例と実質的に同じであるので、繰り返し説明はしない。
【0041】
非接触変位センサーをこの実施例のようにレーザーセンサー160とする場合には、接触子140に対応する板バネ130の上面位置に、レーザー光を良好に反射するような反射片143を設けておくと、レーザーセンサー160によるシート厚さ測定感度を上げることができる。図7に良く示されるように、非接触型変位センサーとしてのレーザーセンサー160は、シート厚さの計測時において、固定されたバックアッププレート120と接触子140のサファイヤーボール141との間に挟まれて走行されていくシート1の厚さの変化に応じて変位する接触子140の上面または板バネ130の上面または反射片143の変位に応じて反射されてくるレーザー光の変化に応じたシート厚さ検出信号を制御操作部30へ出力し、制御操作部30は、そのシート厚さ検出信号を処理してシート厚さ計測信号とし、そのシート厚さ計測信号に基づいて表示部31にシート厚さを連続的に表示していく。なお、三角測量方式の光学式変位センサーを使用すれば、シートの材質とは全く関係なく絶対厚さを知ることができる。
【0042】
前述した本発明の2つの実施例の接触式シート厚さ計の計測精度について比較テストして見た結果は次のようである。
【0043】
本発明の接触式シート厚さ計の特長は、シートの厚さ変動を接触子を介して計測する点にあるので、シートの色、透明度、表面のザラつき、材質等素材の影響を受けず、しかも、シートを上下のバックアッププレートおよび接触子で挟んで計測するので、シートのフラッタリング、浮き上がり等がなく、安定して計測できる。しかし、非接触型変位センサーとして磁気センサーを使用する場合には、シートの有する磁力の影響を受け易い。磁気センサーの長所は、レーザーセンサーに比してサブミクロンの計測が可能なことである。他方欠点としては、シートの磁気、環境、例えば、地磁気、周囲の磁性体の存在等の影響を受け易いこと、また、温度の変化に弱いこと等が挙げられる。従って、絶対値を表示させるにはキャリブレーションが必要である。
【0044】
一方、レーザーセンサーを使用する場合は、環境による影響を受け難く、三角測量方式により絶対値が表示されうるので非常に扱い易い。しかし、精度としては、±1〜2μと磁気センサーに比して多少劣る。現場用としては、レーザーセンサーを使用するものの方が扱い易いといえる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、下部のバックアッププレートを固定し、シートの厚さの変動を板バネを介して接触子の変位を検出することによりシート厚さを計測するものであるので、シートの透明度や色、つや、表面のザラつき等の影響を受けることなく、また、バックアップローラー使用の場合のようなベアリング精度も関係なくなり、精度良くシート厚さをオンラインにて連続的に計測できる。また、100〜200m/分程度のシートの走行スピードでも、精度良くシート厚さを計測できる。
【0046】
特に、シート厚さの変動を、板バネを介して三角測量方式の光学的変位センサーで計測することにより、周囲の環境変化等の影響を受けることなく、精度良くシート厚さの絶対値を計測できるので、周囲環境の劣悪な現場においても充分使用できるものとなる。
【0047】
本発明の接触式シート厚さ計は、前述したような効果を有するものであり、従って、シート厚さを精度良くオンラインにて計測する必要のあるアルミ箔、銅箔、その他の種々なフィルム、紙等のシートの製造ラインに設置して効果を発揮するものであり、特に、劣悪なシート製造現場においても使用できるものであり、産業上利用可能性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計を、厚さを計測すべきシートの走行ラインに配置した状態を示すテスト装置の概略図である。
【図2】図1のシート走行ラインに配置した本発明の一実施例としての接触式シート厚さ計の概略正面図である。
【図3】図2の接触式シート厚さ計の概略側面図である。
【図4】本発明の接触式シート厚さ計における進入角を説明するための概略図である。
【図5】図2の接触式シート厚さ計のバックアッププレート、板バネ、この板バネに取り付けた接触子および磁気センサーの関係を分かり易く示すための部分拡大図である。
【図6】本発明の別の実施例としての接触式シート厚さ計のバックアッププレート、板バネ、この板バネに取り付けた接触子およびレーザーセンサーの関係を分かり易く示すための図5と同様の部分拡大図である。
【図7】図6に示した部分の側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 シート
2 定盤
10 アンリール部
20 ワインダー部
30 制御操作部
31 表示部
100 接触式シート厚さ計
110 支持スタンド
111 ベース部
112 スライドレール
113 スライドベース
114 支柱
115 ホルダー
115A 支持腕
115B 支持腕
116 取付け板
117 駆動ネジ
118 回動操作部
119 板バネ取付け部
120 バックアップロール
130 板バネ
140 接触子
141 サファイヤーボール
142 磁性片
143 反射片
150 非接触型変位センサー(磁気センサー)
160 レーザーセンサー(非接触型変位センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート厚さの測定時においては固定されている耐磨耗性のバックアッププレートと、一端を固定した板バネと、該板バネの反固定側先端部に取り付けられて被計測シートを前記バックアッププレートに対して接触して該バックアッププレートとの間に該被計測シートを挟み込むようにする耐摩耗性の接触子と、該接触子が取り付けられた前記板バネの部分に間隔を置いて対峙し被計測シートの厚さの変動に応じた板バネの変位を検出する非接触型変位センサーとを備えることを特徴とする接触式シート厚さ計。
【請求項2】
前記板バネは、被計測シートの走行方向と並行に延長するように設けられている請求項1に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項3】
前記バックアッププレートの被計測シートの走行方向にそって取った断面形状は、蒲鉾型である請求項1または2に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項4】
前記バックアッププレートは、サファイヤー等耐摩耗性のプレートである請求項1または2または3に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項5】
前記接触子は、鋼製プレートにサファイヤー等耐摩耗性のボールを部分的に埋設してなる請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項6】
前記接触子は、被計測シートの走行方向にそって取った断面の形状が蒲鉾型である鋼製プレートである請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項7】
前記非接触型変位センサーは、磁気センサーである請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項8】
前記接触子が取り付けられた前記板バネの部分の反対側には、磁性片が取り付けられている請求項7に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項9】
前記非接触型変位センサーは、レーザーセンサーである請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項10】
前記レーザーセンサーは、三角測量方式のものである請求項9に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項11】
前記接触子が取り付けられた前記板バネの部分の反対側には、反射片が取り付けられている請求項9または10に記載の接触式シート厚さ計。
【請求項12】
前記バックアッププレート、板バネ、接触子および非接触型変位センサーの高さレベルは、被計測シートの走行高さレベルに対して上下に調節しうるものとされている請求項1から11のうちのいずれか1項に記載の接触子シート厚さ計。
【請求項13】
前記バックアッププレート、板バネ、接触子および非接触型変位センサーの位置は、被計測シートの走行方向において調節しうるものとされている請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の接触子シート厚さ計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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