説明

接触式変位センサー

【課題】 過度の衝撃を検知し、衝撃を緩衝すると共に衝撃の大きさを見分けられるようにする。
【解決手段】 スピンドル22の作動範囲の上死点を規制するストッパー24に過度の衝撃を検知する検知手段を設け、この検知手段に衝撃を緩衝する機能を持たせると共に検知手段で衝撃の大きさを判別することができるようにする。また、ストッパー24をステム23の下端部、又は測定子25の直上に備える。また、検知手段はストッパー24の外周に設けたスリット24aや外周一周に渡って設けた溝などで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルの変位量を機械的あるいは電気的に検出する接触式変位センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤルゲージ、デジタルゲージ、電気マイクロメータなど、スピンドルの変位を機械的あるいは電気的に検出する変位センサーにおいては、スピンドルの過激な突き上げ衝撃に対して上死点の構造が破損せぬ緩衝構造が種々工夫されている。例えば、下記の特許文献1に開示された技術にもその緩衝構造が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−185907号公報
【0004】
特許文献1に示された緩衝構造はゴムベローズを用いての防水、防油対策を施すと共に、そのゴムベローズを利用してスピンドルの強い突き上げ衝撃力を緩衝させるものである。特許文献1に記載の防水、防油構造は、図9に示されるように、ステム11とリングネジ16でゴムベローズ15の片側の端部15aを挟持し、他方の端部15bを測定子14のフランジ部14bとナット17で挟持してコムベローズ15をステム11と測定子14に取付けた構造を取っている。これによってゴムローズ15がスピンドル13を覆い、防水、防油の対策を施しているものである。
【0005】
また、緩衝構造は、ゴムベローズ15にストッパー部15cを設け、このストッパー部15cと端部15bで測定子14のフランジ部14bを挟持してフランジ部14bの上部に固定する。このストッパー部15cがスピンドル13の突き上げによってリングネジ16の端面に当接する構造になっている。スピンドル13の強い突き上げ衝撃が加わるとゴムベローズ15のストッパー部15cがリングネジ16に当たって緩衝する働きをなしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この緩衝構造であると過度の衝撃が加わっても分からない。また、過度の衝撃が積み重なることによって知らず知らずの内に精度が狂ってくると云う問題も生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決することを目的とするもので、過度な衝撃を素早く検知し、そして、緩衝機能を持たせながら衝撃の大きさを一見して分かるようにすることにある。そして、精度などの機能的影響度を見分け、オーバーホールをタイミング良く行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための手段として、本発明の接触式変位センサーの特徴は、スピンドルの作動範囲の上死点を規制するストッパーを備えた接触式変位センサーにおいて、
前記ストッパーは、スピンドル突き上げへの過度の衝撃を検知する検知手段を有し、該検知手段は前記衝撃を和らげる緩衝機能を有すると共に該検知手段で前記衝撃の大きさを判別することができることを特徴とする。
【0009】
ストッパーに過度の衝撃を検知する検知手段を有することで、過度の衝撃がかかったか否かの識別ができる。また、検知手段が緩衝機能を有することで衝撃を和らげて破損や損傷を防止することができる。また、検知手段で衝撃の大きさを判別できることで、精度などを含めた機能的影響度を見極めることができる。そして、タイミングの良いオーバーホールを行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記ストッパーは、前記スピンドルを摺動自在に軸支するステムの下端部、又は前記スピンドルの先端に螺合される測定子の直上に備えることを特徴とする。
【0011】
ストッパーがステムの下端部や測定子の直上に備えられていると、目視でストッパーをすぐ見ることができる。また、ゴムベローズが設けられている変位センサーであってもゴムベローズを取外すことでストッパーが見える。変位センサーの内部機構を見ることなく外観上で素早く衝撃の大きさを知ることができる。
【0012】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたスリットであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記検知手段は、前記ストッパーの外周一周に渡って設けた溝であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記検知手段は、前記ストッパーの端面に設けた複数のリブと該リブの下側に設けた切込みであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたスパイラル状の切込みであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の接触式変位センサーの特徴は、前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたC字形の切込みであることを特徴とする。
【0017】
ストッパーは弾性力のある金属やプラスチックの材料が用いられるが、これらの材料は弾性限界内の衝撃では撓んで衝撃を緩衝し、衝撃が解除されると形状が元に戻る。即ち、衝撃の緩衝機能を持つ。また、塑性領域の衝撃では形状が変形する。また、塑性領域を越える衝撃では破断などを起こす。
検知手段としてスリットの形状を用いると、塑性領域の衝撃ではスリットの幅方向に変形を起こしてスリット幅が細くなる。なお、スリットは対向して2箇所に設けるとか、120°間隔に3箇所設けるとかの配設方法が取られる。
また、検知手段として一周に渡って溝の形状を用いると、塑性領域の衝撃では溝が潰されて溝幅が細くなる変形を起こす。なお、この溝は1本の溝や複数の溝などが選択できる。また、溝の形状として、断面が3角形、「コ」の字形などが選ばれる。
また、検知手段として端面のリブとリブの下側に設ける切込みの形状を用いると、塑性領域の衝撃ではリブが潰れてリブの高さが低くなると共に切込みの幅が細くなる変形を起こす。
また、検知手段としてスパイラル状の切込み形状を用いると、塑性領域の衝撃では切込みが潰れる変形を起こす。
また、検知手段としてC字形の切込みの形状を用いると、塑性領域の衝撃では切込みが潰れる変形を起こす。なお、C字形の切込みは180°反対の位置に少なくとも2箇所、段をなして設けるようにする。
【0018】
上記の何れの形状を用いても、弾性限界内の衝撃では、衝撃が加わっているときは弾性変形を起こして衝撃を緩衝する機能をなす。そして、衝撃が解除されると元の形状に戻る。
また、塑性領域の衝撃が加わったときには形状変形を起こす。そして、衝撃の大きさに応じて変形の度合い(変形量)が異なってくる。つまり、変形の度合いによって衝撃の大きさが判別できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳細に解決の手段とその作用、効果を説明した。本発明によれば、検知手段で衝撃を緩衝し、且つ、衝撃の大きさが判別できる。そして、衝撃による精度などの機能的影響度を読み取ることができ、タイミングの合ったオーバーホールを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以降、実施形態と云う)を図を用いながら説明する。最初に図の説明を行う。図1は本発明の実施形態に係る接触式変位センサーの正面図と、該接触式変位センサーに用いられる内枠ユニットの正面図を示しており、図1の(a)は接触式変位センサーの正面図、図1の(b)は内枠ユニットの正面図を示している。また、図2の(a)は図1の(b)におけるA部の拡大図で、中心線を挟んで左側が拡大断面図、右側が拡大正面図である。また、図2の(b)は図1の(b)におけるストッパーの斜視図を示している。また、図3は金属の応力−歪み曲線を示していて、図4は図1におけるストッパーの衝撃による形状の変形状態を模式的に示した説明図である。
【0021】
最初に、図1の(a)において、本実施形態に係る接触式変位センサー50はダイヤルゲージを示している。このダイヤルゲージは内枠ユニット20にムーブメント(図示していない)を取付けていて、更に、外枠41、目盛板42、ネームプレート43、長針44、短針45などを設けた構成をなしている。また、図示はしていないが、裏面側に裏蓋を設けている。
【0022】
内枠ユニット20は、図1の(b)に示すように、内枠21にネジ係合などの方法で内径部にブッシュを設けたステム23とアッパーブッシュ30を上下に設け、このステム23とアッパーブッシュ30とで摺動自在にスピンドル22を支持している。また、アッパーブッシュ30には防水、防油のためのキャップ31を設けており、ステム23にはスリット24aを形成したストッパー24を設けている。
【0023】
スピンドル22にはラック21aを設けており、このラック21aにムーブメントの中間ピニオン(図示していない)が噛み合って、中間ピニオンからの歯車伝達機構を介して長針44、短針45が回転するようになっている。また、スピンドル22にはその先端にネジ係合を介して測定子25を設けている。また、内枠21の中空部分で、スピンドル22にはガイドネジ26を設けており、そのガイドネジ26の先端部分が内枠21に設けたガイド溝21bの中を摺動するようになっている。ガイド溝21bの中をガイドネジ26の先端が摺動することによりスピンドル22の回転を防止している。また、このガイドネジ26と内枠21に設けたバネ掛けピン28との間には引っ張りバネ27を配設している。この引っ張りバネ27によってスピンドル22を下方に付勢している。
【0024】
また、スピンドル22にはストップピン29を設けており、このストップピン29がステム23の端面に当接することでスピンドル22の作動範囲の下死点を決めている。
【0025】
測定子25を上方に押し上げるとスピンドル22が上方に摺動し、測定子25の端面25aがストッパー24の端面24bに突き当たってスピンドル22が止まる。このスピンドル22の止まった位置がスピンドル作動範囲の上死点になっている。従って、ストッパー24で作動範囲の上死点を決めている。
【0026】
ストッパー24の構造を更に詳しく図2を用いて説明する。ストッパー24は略円筒形の形状をなしている。内径側にネジ24dを有し、このネジ24dがステム23の先端突起に設けたネジ23aに螺合してストッパー24をステム23に固定している。また、ストッパー24の端面24b側には摺割り24cが設けてあり、この摺割り24bを介してストッパー24を廻すことでステム23に螺合させている。また、ストッパー24の外周の対向する2箇所にスリット24aを設けている。このスリット24aはストッパー24の内周面にまで突き抜けたスリットになっている。
【0027】
ステム23は内径部にはブッシュ33を設けており、このブッシュ33とアッパーブッシュ30によってスピンドル22は支持されて摺動するようになっている。
【0028】
本実施形態でのストッパー24は金属で形成している。所要の形状に形成し、カッターでスリット24aを2箇所、対向させて設けている。このスリット24aはスピンドル22の突き上げでの過度の衝撃を検知する目的で、検知手段として設けている。
【0029】
金属は、一般に、図3に示すような機械的特性を持つ。図3において、弾性限界(降伏点)bの範囲内では弾性特性を示し、弾性限界内では応力を解除すると形状が元に復帰する。また、弾性限界bから破壊点cの範囲内は塑性特性を示し、塑性特性を示す塑性領域では材料の塑性変形によって形状が変形する。そして、破壊点cを越えると材料にひびが入ったり割れたりしての破壊が起きる。
【0030】
ストッパー24に弾性限界内の衝撃が加わった場合にスリット24aの部分に弾性変形による撓みが発生するが、衝撃が解除されたときにはスリット24aの形状は元に戻る。このように、スリット24aは衝撃が弾性限界内であるときは衝撃を緩衝する機能をなす。
【0031】
また、塑性領域の衝撃が加わった場合には、図4に示すように、スリット24aの形状は衝撃によって塑性変形し、スリット幅Wが幅wに変化する。即ち、スリット24aの幅が変形して細くなる。また、衝撃が塑性領域を越えるときにはスリットの両端にひび割れなどが発生する。
【0032】
このように、ストッパー24にかかる衝撃の大きさ(強さ)によってスリット24aの形状に変形の有無が現れてくる。つまり、形状変形の有無でスリット24aは衝撃を検知する手段としての役割を果たす。
【0033】
また、スリット24aの形状変形が大きいか否かの度合いでかかった衝撃の大きさの度合いを知ることができる。つまり、衝撃が大きいと変形が大きく、衝撃が小さいと変形が小さく現れる。また、衝撃の度合いが大きくなると変位センサーに精度などを含めた機能的影響を及ぼす。従って、スリット24aの形状変形の度合いによって精度などを含めた機能的影響度を判別することが可能になる。これは、スリット24aの変形度合いに応じて精度などの機能影響度を実験的に、あるいは、経験的に把握できるからである。
【0034】
そして、スリット24aの形状変形の度合いを見て変位センサーのメンテナンスを行うようにすれば、タイミングの良いメンテナンスを行うことができる。
【0035】
本実施形態においては、ストッパー24を金属材料で形成している。金属材料としては延展性に富んでいるアルミ、銅、鉛、亜鉛、金などの金属やこれらの金属を含んだ合金金属が好適な材料として挙げることができる。また、金属材料に限るものではなく、プラスチック材料を選択することもできる。プラスチック材料としては、弾性特性があって衝撃性に強い材料が好ましく、このような材料としてABS樹脂、HIPS(ハイインパクトポリスチレン樹脂)、ナイロン、POM(ポリアセタール樹脂)などを挙げることができる。これらの材料は弾性変形、塑性変形を起こす。
【0036】
また、本実施形態においては、ストッパー24はステム23の先端に設けた構成をなしたものであるが、このストッパー24は測定子25の直上に測定子25に固定して設けた構成を取っても構わない。この場合は、測定子25の直上に設けたストッパー24の端面とステム23の先端面が当接して上死点を決める構成になる。
【0037】
上記何れの構成であっても、ストッパーは変位センサーの外観上見える位置に配設した構成をなしており、過度の衝撃がかかったストッパー24のスリット24aはすぐ目で確認することができる。そして、スリット24aの形状変形度合いを見てどの程度の衝撃がかかっているか、また、どの程度の機能的影響を変位センサーに及ぼしているか、をすぐ判別することができる。いちいち変位センサーの内部機構を調べることなく簡単に見分けることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、衝撃を検知する検知手段にスリット24aの形状を2箇所に対向させて設けたものであるが、スリットの個数は120°間隔に3箇所、90°間隔に4箇所とスリットの数を増やしても構わない。バランスの取れた配置で設けると良い。
【0039】
また、ストッパー24のスリット24aは衝撃がかかる近い位置に設けるようにする。例えば、本実施形態の場合は、測定子25の端面25aと当接するストッパー24の端面24bに近い部位に設けている。スリット24aの幅や長さはスリットを設ける数や材質などを考慮して適宜に設定すると良い。
【0040】
また、検知手段はスリット形状に限るものではなく、他に種々の形状を選択することができる。例えば、ストッパーの外周一周に渡って設けた溝形状のもの、ストッパーの端面に設けた複数のリブとリブの近傍に設けた外周一周に渡る溝形状のもの。外周に設けたスパイラル状の切込み形状のもの、外周に設けたC字形の切込み形状のもの、なども好適な検知手段として用いることができる。
【実施例1】
【0041】
以下、実施例をもって他の様々な検知手段の形状を説明する。最初に、実施例1に係るストッパーの衝撃検知手段の形状を図5で説明する。図5は実施例1に係る接触式変位センサーの要部正面図と、衝撃によるストッパーの変形状態を模式的に示した説明図で、図5の(a)は要部正面面、図5の(b)は図5の(a)におけるB部の変形状態を模式的に示した説明図である。
【0042】
図5の(a)より、実施例1のストッパー64は測定子65の直上に固定しており、ストッパー64付きの測定子65がスピンドル62に取付けてある。測定子65を押し上げるとスピンドル62がステム63内を摺動し、ストッパー64の端面64bがステム63の端面63bに突き当たってスピンドル62が止まる。ストッパー64の端面64bがステム63の端面63bに突き当たった位置でスピンドル62の作動範囲の上死点が決まる。
【0043】
ストッパー64にはステム63と当接する側の端面64bの近傍に溝64aを外周一周に渡って4本設けている。この溝64aは断面が三角形の形状をなすもので、連設した状態で設けている。この溝64aは衝撃を検知する手段をなしており、溝64aの変形度合いで衝撃の大きさの度合いを見分けることができる。
【0044】
実施例1のストッパー64は真鍮材で形成している。真鍮は銅と亜鉛の合金でヤング率も100.6GPaと小さく、延展性に富んだ材料であるので、検知手段に用いる材料としては好適である。
【0045】
スピンドル62に過度の衝撃がかかってストッパー64がステム63に突き当たったときに、衝撃が大きいと図5の(b)に示すような塑性変形を起こす。図5の(b)において、4本の溝64aの内、端面64bに近い方の溝2本が塑性変形で潰れて溝幅t3、t2(t3<t2)が他の2本の溝幅t1より細くなっている。塑性領域の衝撃がかかったときは溝が潰れる変形を起こす。
【0046】
また、塑性領域を越える力の衝撃がかかると残肉の一番薄い部位にひび割れなどが発生し破断する。また、弾性限界内の力の衝撃であると、溝64aの所に撓みが発生するが衝撃が解除されると溝64aは元の形状に復帰する。
【0047】
以上述べたことより、溝64aは衝撃を検知する手段の役割をなす。また、衝撃の大きさの度合いで溝64aの変形度合いが変わってくるので、溝64aの変形度合いで衝撃の大きさの度合いを見分けることができる。
【0048】
実施例1では、検知手段として4本の溝を設けたが、特に4本に限るものではなく、許容される衝撃の大きさなどを考慮して適宜に決めるのが好ましい。また、溝幅なども同様である。
【0049】
また、溝64aの変形の度合いによって精度などの機能的影響度を判別することも可能である。溝64aの変形度合いに応じて精度などの機能的影響度が把握できていると、溝64aの変形度合を見て変位センサーのタイミングの良いメンテナンスを行うことができる。
【実施例2】
【0050】
次に、実施例2に係るストッパーの衝撃検知手段の形状を図6で説明する。図6は実施例2に係る接触式変位センサーの要部正面図と、ストッパーの上面図と、衝撃によるストッパーの変形状態を説明する模式的に示した説明図で、図6の(a)は接触式変位センサーの要部正面図、図6の(b)はストッパーの上面図、図6の(c)は図6の(a)におけるC部の変形状態を模式的に示した説明図である。なお、前述の実施例1の接触式変位センサーの構成部品と同じ仕様をなす構成部品は同一符号を付して説明する。
【0051】
実施例2のストッパー74は、図6の(a)に示すように、測定子65の直上に配設して測定子65と固定している。また、このストッパー74は、図6の(b)に示すように、端面74b側の3箇所にリブ74cを設けてあり、リブ74cの下側には切込み74aを設けている。端面74bはリブ74cに向かって傾斜面をなしており、傾斜の頂上に丸味のあるリブ74cが形成されている。また、切込み74aはリブ74cの下側にあって、傾斜面にかかって形成されている。ストッパー74が固定された測定子65を押し上げるとスピンドル62が摺動して上昇し、ストッパー74のリブ74cがステム63の端面63bに突き当たってスピンドル62が止まる。なお、実施例2でのリブ74cは丸味を持たせた形状をなしているが、これは平面的な形状をなしていても良いものである。
【0052】
ストッパー74はABS樹脂からなり、射出成形で形成している。ABS樹脂はブタジエンを重合していることから耐衝撃性に優れた特性を有する。
【0053】
ストッパー74がステム63に突き当たって過度の衝撃を受けると、弾性限界内の衝撃であればストッパー74の形状は元に戻るが、塑性領域の衝撃であるとストッパー74は図6の(c)に示すような変形を起こす。図6の(c)は、一点鎖線で示したリブ74cは衝撃が加わる前の状態時を示しており、その時の切込み74aの幅は大きい(広い)状態にある。実線で示したリブ74c’は塑性領域の衝撃で形状が変形した状態時を示しており、その時の切込み74a’の幅は小さく(狭く)なる。つまり、塑性領域の過度の衝撃によってリブ74cの高さが低くなり、切込み74aの幅が狭くなる変形を起こす。

【0054】
このように、切込み74aの変形、リブ74cの高さの変形で衝撃を検知することができるので、切込み74aやリブ74cは衝撃を検知する手段としての役割をなす。また、切込み74aやリブ74cは衝撃を緩衝する機能も持っている。また、切込み74aの変形度合いやリブ74cの高さの変形度合いによって衝撃の大きさを見分けることができる。
【0055】
実施例2のストッパー74はABS樹脂で形成している。しかし、ABS樹脂に限るものではなく、例えば、ブタジエンを重合したナイロン、ポリスチレン樹脂(PS)にブタジエンを重合して形成したハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)などの樹脂も耐衝撃性を有して好適に用いることができる。また、ポリアセタール樹脂(POM)なども機械的強度も強く、耐衝撃性も有することから好適なストッパー材として選択することができる。
【実施例3】
【0056】
次に、実施例3に係るストッパーの衝撃検知手段の形状を図7で説明する。図7は実施例3に係る接触式変位センサーの要部正面図を示している。
【0057】
実施例3のストッパー84はステム83側に固定されている。そして、ストッパー84の端面84bに測定子の端面(図示していない)が突き当たってスピンドル82が止まる。
【0058】
ストッパー84はABS樹脂からなっており、スパイラル状(螺旋状)に切込み84aが設けられている。ストッパー84に過度の衝撃が加わってもスパイラル状の切込み84aがバネの働きをなすので可成りの衝撃も緩衝することができる。また、大きな衝撃でストッパー84が変形する場合は潰れるようになって切込み84aの幅が細くなる。そして、ストッパー84の厚みも変わってくる。
【0059】
ストッパー84の切込み84aの幅が細くなり、そして、ストッパー84の厚みも小さくなることで衝撃を検知する検知手段としての役割を果たす。また、切込み84aの幅が細くなる度合いや厚みが小さくなる度合いによって衝撃の大きさの度合いを見分けることができる。
【実施例4】
【0060】
次に、実施例4に係るストッパーの衝撃検知手段の形状を図8で説明する。図8は実施例4に係る接触式変位センサーの要部正面図とストッパーの斜視図で、図8の(a)は接触式変位センサーの要部正面図、図8の(b)は図8の(a)におけるストッパーの斜視図を示している。なお、前述の実施例3における変位センサーの構成部品と同じ仕様をなす構成部品は同一符号を付している。
【0061】
実施例4のストッパー94はステム83側に固定されている。このストッパー94はABS樹脂でできており、C字形の切込み94aを一対設けている。切込み94aは、図9の(b)に示すように、段をなすように少し間隔を持たせて、180°位置をずらして2本の切込みを入れている。衝撃が少しでも左右均等にかかるような配置を取っている。
【0062】
ストッパー94に弾性限界を超える過度の衝撃がかかると切込み94aが潰れて細くなり、また、厚みも小さくなる。従って、切込み94aが細くなり、厚みも小さくなることで衝撃検知手段としての役割を果たす。また、切込み94aが細くなる度合いや厚みが小さくなる度合いによって衝撃の大きさを見分けることができる。また、弾性限界内の衝撃では衝撃による撓みが切込み94aで逃げることができるので、切込み94aは衝撃を緩衝する働きをなす。
【0063】
以上の説明では、スピンドルの上死点を規制するストッパーの形状にスリット、溝、リブ、スパイラル状の切り込み、C字形の溝のうち1種類を設ける例を示したが、これらを組み合わせて設けることも可能である。さらに、本実施例では1つの計測器に対しストッパーを1つ設ける例を示したが、測定子直上とステムの下端部に各々設けることも可能であることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る接触式変位センサーの正面図と、該接触式変位センサーに用いられる内枠ユニットの正面図で、図1の(a)は接触式変位センサーの正面図、図1の(b)は内枠ユニットの正面図である。
【図2】(a)図は図1の(b)におけるA部の拡大図で、中心線を挟んで左側が拡大断面図、右側が拡大正面図である。また、(b)図は図1の(b)におけるストッパーの斜視図である。
【図3】金属の応力−歪み曲線である。
【図4】図1におけるストッパーの衝撃による形状の変形状態を説明する模式的に示した説明図である。
【図5】実施例1に係る接触式変位センサーの要部正面図と、衝撃によるストッパーの変形状態を説明する模式的に示した説明図で、図5の(a)は要部正面面、図5の(b)は図5の(a)におけるB部の変形状態を模式的に示した説明図である。
【図6】実施例2に係る接触式変位センサーの要部正面図と、ストッパーの上面図と、衝撃によるストッパーの変形状態を説明する模式的に示した説明図で、図6の(a)は接触式変位センサーの要部正面図、図6の(b)はストッパーの上面図、図6の(c)は図6の(a)におけるC部の変形状態を模式的に示した説明図である。
【図7】実施例3に係る接触式変位センサーの要部正面図である。
【図8】実施例4に係る接触式変位センサーの要部正面図とストッパーの斜視図で、図8の(a)は接触式変位センサーの要部正面図、図8の(b)は図8の(a)におけるストッパーの斜視図である。
【図9】引用文献1に記載された変位検出器の密封構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0065】
20 内枠ユニット
21 内枠
21a ラック
21b ガイド溝
22、62、82 スピンドル
23、63、83 ステム
24、64、74、84、94 ストッパー
24a スリット
24b、25a、63b、64b、74b、84b、94b 端面
24c 摺割り
25、65 測定子
26 ガイドネジ
27 引っ張りバネ
28 バネ掛けピン
29 ストップピン
30 アッパーブッシュ
31 キャップ
33 ブッシュ
41 外枠
42 目盛板
43 ネームプレート
44 長針
45 短針
50 接触式変位センサー
64a、74a 溝
74c リブ
74a、84a、94a 切込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルの作動範囲の上死点を規制するストッパーを備えた接触式変位センサーにおいて、
前記ストッパーは、スピンドル突き上げへの過度の衝撃を検知する検知手段を有し、該検知手段は前記衝撃を和らげる緩衝機能を有すると共に該検知手段で前記衝撃の大きさを判別することができることを特徴とする接触式変位センサー。
【請求項2】
前記ストッパーは、前記スピンドルを摺動自在に軸支するステムの下端部、又は前記スピンドルの先端に螺合される測定子の直上に備えることを特徴とする請求項1に記載の接触式変位センサー。
【請求項3】
前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたスリットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式変位センサー。
【請求項4】
前記検知手段は、前記ストッパーの外周一周に渡って設けた溝であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式変位センサー。
【請求項5】
前記検知手段は、前記ストッパーの端面に設けた複数のリブと該リブの下側に設けた切込みであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式変位センサー。
【請求項6】
前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたスパイラル状の切込みであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式変位センサー。
【請求項7】
前記検知手段は、前記ストッパーの外周に設けたC字形の切込みであることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触式変位センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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