説明

接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法

【課題】シミュレーションによって接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する。
【解決手段】芯線をかしめ片によりかしめた後の芯線モデル3m及びかしめ片モデル2mを構成する各節の変位及び各節に作用する力を有限要素法により算出する。算出された各節の変位から芯線モデル3mの輪郭上の節のうちかしめ片モデル2mに接触する節NSを抽出する。抽出された節NS、及び芯線モデル3mの輪郭上の節のうち節NSに隣接する節Nk+1、間の距離Lk+1と、抽出された節NS、及び、芯線モデル3mの輪郭上の節のうち抽出された節に隣接する節Nk-1、間の距離Lk-1と、求めて、距離Lk+1及び距離Lk-1の和の1/2を抽出された節NSの接触長さLkとして求める。抽出された全ての節NSについて求めた接触長さLkと抽出された節NSがかしめ片モデル2mに作用する力PSとを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を接触性能係数として求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法に係り、特に、端子金具に設けられたかしめ片と、前記かしめ片にかしめられる芯線と、の接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、導線の芯線と端子金具とを電気的に接続する方法として、例えば、端子金具に設けられたかしめ片によって、芯線を加締め圧着して接続する方法がある(例えば特許文献1〜3)。この圧着接続に用いられる端子金具は、一般的に、図7(A)に示すような構成になっている。同図に示すように、端子金具1はかしめ片2を備えている。そして、上述した端子金具1のかしめ片2及び芯線3を、図7(B)及び(C)に示すように、クリンパ4(上型)及びアンビル5(下型)によって挟んだ後、圧力を加えることにより、かしめ片2によって芯線3が加締め圧着され、図7(D)に示すように、端子金具1と芯線3とが電気的、機械的に接続される。
【0003】
ところで、上述した圧着後のクリンプ高さC/H(図7(D)参照)と、圧着後の端子金具1−芯線3間の固着力F又は接触抵抗Rとの関係は、図8に示すようになる。同図に示すように、固着力Fは、クリンプ高さC/Hに対して上に凸の非線形特性を有するため、クリンプ高さC/Hは一定範囲に対して使用可能な固着力Fが存在することになる。同様に、接触抵抗Rはクリンプ高さC/Hに対して使用可能な接触抵抗Rが存在することになる。このような非線形特性を有する固着力Fと接触抵抗Rとの関係から、固着力F、接触抵抗R共に使用可能とするクリンプ高さC/Hの範囲(図8中に示す「最適クリンプ高さ」)が限定されることになる。
【0004】
そこで、従来では、例えば、新しい接続設計をする際、端子金具1、芯線3、クリンパ4又はアンビル5などの設計を行う。そして、この設計された端子金具1、芯線3、クリンパ4又はアンビル5などを用いて、実際に、圧着接続を行った後、固着力F、接触抵抗Rなどを計測して、最適な固着力F、接触抵抗Rが得られるか否かといった評価が実行される。得られない場合は、また、新たに端子金具1、芯線3、クリンパ4又はアンビル5などの設計を行った後、上述したことを繰り返し行う。
【0005】
ところで、上述した接触抵抗Rは低温環境や高温環境に放置すると上昇してしまうことが分かっている。そこで、接触抵抗Rの計測は、例えば−40℃の低温環境と+120℃の高温環境とを交互に1000回繰り返す冷熱衝突試験を実行した後に行っていた。この低温環境と高温環境との1サイクルが仮に2時間要する場合には、接触抵抗Rの計測までに2000時間を要する。即ち、従来の端子金具1−芯線3の接続設計では、上述したように設計→実際に接続する→冷熱衝突試験→評価(測定)といったカットアンドトライを繰り返して適正なものを得る必要がある。このため、設計の経験があまりない者が上述した接続設計を行うと、希望のものを得るまで無駄な時間を費やすことが多くなり、設計期間が長くなったり、設計コストアップを招くという問題があった。
【特許文献1】特開2007−173215号公報
【特許文献2】特開2006−351451号公報
【特許文献3】特開平10−50449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、設計者の経験に左右されることなく、端子金具と芯線との接続設計を誰もが簡単に、かつ、短時間に行えるように支援することができるように、シミュレーションによって接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、設計者の経験に左右されることなく、シミュレーションによって接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法を得るべく検討を重ねた結果、下記の式(1)及び(2)に示す接触性能係数CCが接触抵抗Rに応じた値となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【数1】

k=(Lk+1+Lk-1)/2 …(2)
【0008】
なお、図4(B)に示すように、PSKは有限要素法を実行して得た圧着後(かしめた後)の芯線モデル3mの輪郭上の節のうちかしめ片モデル2mに接触する節NSKからかしめ片モデル2mに作用する力である。Lk+1は節NSK、及び、芯線モデル3mの輪郭上の節のうち節NSKに隣接する節Nk+1との距離であり、Lk-1は節NSKと芯線モデル3mの輪郭上の節のうち節NSKに隣接する節Nk-1との距離である。nは、芯線モデル3mの輪郭上の節のうちかしめ片モデル2mに接触する節NSKの総数である。
【0009】
即ち、請求項1記載の発明は、端子金具に設けられたかしめ片と、前記かしめ片にかしめられる芯線と、の接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出装置であって、前記芯線を複数の要素に分割した芯線モデルを取得する芯線モデル取得手段と、前記かしめ片を複数の要素に分割したかしめ片モデルを取得するかしめ片モデル取得手段と、上型及び下型の間に挟んで前記芯線を前記かしめ片によりかしめた後の前記芯線モデル及び前記かしめ片モデルを構成する各節の変位及び各節に作用する力を有限要素法により算出する変形算出手段と、前記変形算出手段により算出された前記各節の変位から前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記かしめ片モデルに接触する節を抽出する節抽出手段と、前記節抽出手段により抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記節抽出手段により抽出された節に隣接する一対の節の一方、間の第1の距離を求める第1の距離算出手段と、前記節抽出手段により抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記節抽出手段により抽出された節に隣接する一対の節の他方、間の第2の距離を求める第2の距離算出手段と、前記第1の距離、及び、前記第2の距離、の和の1/2を前記節抽出手段により抽出された節の接触長さとして求める接触長さ算出手段と、前記節抽出手段により抽出された全ての節について求めた前記接触長さと前記節抽出手段により抽出された節が前記かしめ片モデルに作用する力とを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を前記接触性能係数として求める接触性能係数算出手段と、を備えたことを特徴とする接触性能係数算出装置に存する。
【0010】
請求項2記載の発明は、端子金具に設けられたかしめ片と、前記かしめ片にかしめられる芯線と、の接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出方法であって、前記芯線を複数の要素に分割した芯線モデル、及び、前記かしめ片を複数の要素に分割したかしめ片モデル、を取得する工程と、上型及び下型の間に挟んで前記芯線を前記かしめ片によりかしめた後の前記芯線モデル及び前記かしめ片モデルを構成する各節の変位及び各節に作用する力を有限要素法により算出する工程と、前記算出された各節の変位から前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記かしめ片モデルに接触する節を抽出する工程と、前記抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記抽出された節に隣接する一対の節の一方、間の第1の距離を求める工程と、前記抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記抽出された節に隣接する一対の節の他方、間の第2の距離を求める工程と、前記第1の距離、及び、前記第2の距離、の和の1/2を前記抽出された節の接触長さとして求める工程と、前記抽出された全ての節について求めた前記接触長さと前記抽出された節が前記かしめ片モデルに作用する力とを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を前記接触性能係数として求める工程と、を順次行うことを特徴とする接触性能係数算出方法に存する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように請求項1及び2記載の発明によれば、シミュレーションによって接触抵抗に応じた接触性能係数を算出することができるので、設計者の経験に左右されることなく、端子金具と芯線との接続設計を誰もが簡単に、かつ、短時間に行えるように支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の接触性能係数算出装置及び接触性能係数算出方法を図面に基づいて説明する。図1に示す接触性能係数算出装置6は、例えばパーソナルコンピュータから構成されていて、端子金具1と芯線3とを圧着して接続する際に、実際の圧着接続に先立って端子金具1−芯線3間の接触抵抗Rに応じた接触性能係数CCを算出するための装置である。
【0013】
同図に示すように、接触性能係数算出装置6は、入力装置7と、表示装置8と、マイクロコンピュータ(以下μCOM9)と、を備えている。入力装置7は、例えばキーボードや、マウスといった操作手段などから構成されていて、従来技術で説明した端子金具1のかしめ片2、芯線3、クリンパ4及びアンビル5の形状情報と、かしめ片2及び芯線3の材料の応力−歪特性である材料特性情報を入力するための装置である。上記形状情報としては、例えばCADで作成したかしめ片2、芯線3、クリンパ4及びアンビル5のCADデータなどが考えられる。
【0014】
表示装置8は、例えば算出した接触性能係数を表示するための装置である。μCOM9は、接触性能係数算出装置6全体の制御を司り処理プログラムに従って各種の処理を行う中央演算処理ユニット(以下CPU)10と、CPU10が行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM11と、CPU10での各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読出書込自在のメモリであるRAM12と、を有している。
【0015】
次に、上述した構成の接触性能係数算出装置6の動作について図2〜図4を参照して以下説明する。まず、入力装置7によって解析シミュレーション処理の開始操作が行われると、CPU10は、解析シミュレーション処理を開始する。まず、CPU10は、上述した端子金具1のかしめ片2、芯線3、クリンパ4及びアンビル5の形状情報と、かしめ片2及び芯線3の材料特性情報を入力させるための入力画面を表示装置8に表示させる入力処理を行う(図2のステップS1)。
【0016】
ユーザは、表示装置8の表示に従って入力装置7のキーボードやマウスといった操作手段を操作して上記形状情報、材料特性情報を入力させる。なお、端子金具1の種類A、B、C…、芯線3の種類A、B、C…、圧着型であるクリンパ4及びアンビル5の種類A、B、C…に応じた形状情報、材料特性情報を予めROM11内に記録させて、ユーザにより端子金具1、芯線3、圧着型であるクリンパ4及びアンビル5の種類を選択させることで、上記形状情報、材料情報を入力させるようにしてもよい。
【0017】
その後、CPU10は、有限要素モデル変換処理を行う(ステップS2)。有限要素モデル変換処理においてCPU10は、図3(A)に示すように、上記入力処理によって入力されたかしめ片2及び芯線3をそれぞれ複数の要素に分割したかしめ片モデル2m及び芯線モデル3mに変換する。この有限要素モデル変換処理においてCPU10は、請求項中の芯線モデル取得手段、かしめ片モデル取得手段として働く。
【0018】
次に、CPU10は、変形算出処理を行う(ステップS3)。変形算出処理においてCPU10は、図3(B)〜(D)に示すように、有限要素法を用いてクリンパ4とアンビル5との間に挟んで芯線3をかしめ片2によりかしめた後にクリンパ4及びアンビル5を離してかしめ片2及び芯線3に加えられた負荷を除荷した後の芯線モデル3m及びかしめ片モデル2mを構成する各節Nの変位及び各節Nに作用する力Pを算出する。この変形算出処理においてCPU10は、請求項中の変形算出手段として働く。
【0019】
上記クリンパ4及びアンビル5を近づけてかしめ片2をかしめた後にクリンパ4及びアンビル5を離してかしめ片2及び芯線3に加えられた負荷を除荷すると、かしめ片2及び芯線3にはスプリングバックと呼ばれる弾性回復現象が生じる。よって、上記変形算出処理により、スプリングバック後の芯線モデル3m及びかしめ片モデル2mを構成する各節Nの変位及び各節Nに作用する力Pを算出することができる。
【0020】
その後、CPU10は、ステップS4〜S6を実行して、上記変形算出処理によって求めた各節Nの変位及び各節Nに作用する力Pからかしめ片2及び芯線3間の接触抵抗Rに応じた後述する接触性能係数CCを求める。上記接触抵抗Rは、かしめ片2及び芯線3間の接触面積、接触圧力が大きくなるに従って小さくなる。そこで、CPU10は、下記のステップS4及びS5を実行して、図3に示すような断面上のかしめ片2及び芯線3間の接触長さを接触面積に応じた値として求める。
【0021】
即ち、CPU10は、節抽出手段として働き、上述した変形算出処理により算出された各節Nの変位からスプリングバック後の芯線モデル3mの輪郭上の節Nのうちかしめ片モデル2mに接触する節NSを抽出する節抽出処理を行う(ステップS4)。結果を図4(A)に示す。同図に示すように、節抽出処理を行った結果、例えば総数n個の節NSが抽出される。なお、図4(A)中のPSはステップS4で抽出した芯線モデル3m上の節NSに作用する力、即ち、ステップS4で抽出した芯線モデル3m上の節NSからかしめ片2モデルに作用する接触圧力を示す。次に、CPU10は、第1の距離算出手段、第2の距離算出手段、接触長さ算出手段として働き、節抽出処理により抽出した各節NSにおけるスプリングバック後のかしめ片2と芯線3との接触長さを求める接触長さ算出処理を行う(ステップS5)。図4(B)に示すように、かしめ片モデル2mと芯線モデル3mとは点(節)で接触しているが、本発明者は、実際にはステップS4で抽出された任意の節NSkでは、下記の式(2)で示す接触長さLkで接触していると仮定した。
k=(Lk+1+Lk-1)/2 …(2)
【0022】
なお、Lk+1は抽出された任意の節NSk及び節Nk+1間の距離(第1の距離)である。上記節Nk+1は、芯線モデル3mの輪郭上の節Nのうち節NSkに隣接する一対の節Nk+1、Nk-1の一方である。Lk-1は抽出された任意の節NSk及び節Nk-1間の距離(第2の距離)である。上記節Nk-1は、芯線モデル3mの輪郭上の節Nのうち節NSkに隣接する一対の節Nk+1、Nk-1の他方である。
【0023】
次に、CPU10は、接触性能係数算出手段として働き、下記の式(1)に示すように、ステップS4で抽出された全ての、即ち総数n個の節NSについて求めた接触長さLkとステップS4で抽出された節NSがかしめ片モデル2mに作用する接触圧力PSKとを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を接触性能係数CCとして求める接触性能係数算出処理を行った後(ステップS6)、その算出した接触性能係数CCを表示装置8に表示して(ステップ7)、解析シミュレーション処理を終了する。
【数2】

【0024】
上記接触性能係数CCは、式(1)からも明らかなように、接触抵抗Rと同様にかしめ片2及び芯線3間の接触長さ(面積)Lk、接触圧力PSkが大きくなるに従って小さくなる係数である。即ち、本発明者は、上記式(1)に示す接触性能係数CCが接触抵抗Rに応じた値になるだろうと仮定した。
【0025】
次に、本発明の発明者は、図5に示すサンプル品(1)〜(5)について前述した本発明品を用いて算出した接触性能係数CCと、図5に示すサンプル品(1)〜(5)を実際に試作して冷熱衝突試験を実行した後に計測した接触抵抗Rと、比較した。結果を図6に示す。サンプル品(1)は、種類Aの芯線3、種類Aの端子金具1、種類Aの圧着型(クリンパ4、アンビル5)を用いて、芯線3を端子金具1のかしめ片2でかしめた品である。同様に、サンプル品(2)は種類Aの芯線3、種類Bの端子金具1、種類Aの圧着型、サンプル品(3)は種類Aの芯線3、種類Aの端子金具1、種類Bの圧着型、サンプル品(4)は種類Aの芯線3、種類Cの端子金具1、種類Aの圧着型、サンプル品(5)は種類Aの芯線3、種類Aの端子金具1、種類Cの圧着型を各々用いて、芯線3を端子金具1のかしめ片2でかしめた品である。
【0026】
図6に示すように、実測値である導体圧縮比率%(=クリンプ高さ)に応じた接触抵抗Rは、サンプル品(4)、サンプル品(3)、サンプル品(2)、サンプル品(1)、サンプル品(5)の順で大きくなる。よって、実測品の性能としては、サンプル品(4)が1番良く、サンプル品(3)、サンプル品(2)、サンプル品(1)、サンプル品(5)の順で悪くなる。
【0027】
これに対して、シミュレーション値である導体圧縮比率%に応じた接触性能係数CCも、サンプル品(4)、サンプル品(3)、サンプル品(2)、サンプル品(1)、サンプル品(5)の順で大きくなる。よって、実測品と同様に、シミュレーション値である接触性能係数CCからもサンプル品(4)が1番良く、サンプル品(3)、サンプル品(2)、サンプル品(1)、サンプル品(5)の順で悪くなることが分かる。即ち、式(1)に示す接触性能係数CCが接触抵抗Rに応じた値になっていることが分かった。
【0028】
上述した接触性能係数算出装置6によれば、実際に複数のサンプル品を作ってその接触抵抗Rを実測しなくても、シミュレーション値である接触性能係数CCを算出することにより、複数のサンプル品の接触抵抗Rの大きさを比較することができる。このため、設計者の経験に左右されることなく、端子金具1と芯線3との接続設計を誰もが簡単に、かつ、短時間に行えるように支援することができる。
【0029】
なお、上述した実施形態によれば、入力処理によって入力されたかしめ片2及び芯線3をそれぞれかしめ片モデル2m及び芯線モデル3mに変換する有限要素モデル変換処理を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、端子金具1の種類A、B、C…に応じたかしめ片モデル2m及び芯線3の種類A、B、C…に応じた芯線モデル3mを予めROM11内に記録させて、ユーザにより端子金具1及び芯線3の種類を選択させることで、入力処理によって上記かしめ片モデル2m、芯線モデル3mを入力させるようにしてもよい。この場合、有限要素モデル変換処理を行う必要がない。
【0030】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の接触性能係数算出方法を実施した接触性能係数算出装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示すCPUの解析シミュレーション処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す変形算出処理を説明するための説明図である。
【図4】(A)は図2に示す変形算出処理結果を説明するための説明図であり、(B)は(A)のX部の拡大図である。
【図5】サンプル品(1)〜(5)に対応する芯線、端子金具及び圧着型の種類、接触抵抗の序列、接触性能係数の序列を示す表である。
【図6】導体圧縮率に対応するサンプル品(1)〜(5)の接触抵抗及び接触性能係数を示すグラフである。
【図7】(A)は圧着接続に用いられる端子金具の形状を示す側面図であり、(B)は圧着作業に用いられるアンビルとクリンパとの形状を示す図であり、(C)は端子金具と芯線との圧着作業中の状態を示す図であり、(D)は端子金具と芯線との圧着後の状態を示す図である。
【図8】圧着接続を行った際のクリンプ高さ対固着力及び接触抵抗の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 端子金具
2 かしめ片
3 芯線
4 クリンパ(上型)
5 アンビル(下型)
6 接触性能係数算出装置
10 CPU(芯線モデル取得手段、かしめ片モデル取得手段、変形算出手段、節抽出手段、第1の距離算出手段、第2の距離算出手段、接触長さ算出手段、接触性能係数算出手段)
k+1 距離(第1の距離)
k-1 距離(第2の距離)
N 節
S
Sk

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具に設けられたかしめ片と、前記かしめ片にかしめられる芯線と、の接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出装置であって、
前記芯線を複数の要素に分割した芯線モデルを取得する芯線モデル取得手段と、
前記かしめ片を複数の要素に分割したかしめ片モデルを取得するかしめ片モデル取得手段と、
上型及び下型の間に挟んで前記芯線を前記かしめ片によりかしめた後の前記芯線モデル及び前記かしめ片モデルを構成する各節の変位及び各節に作用する力を有限要素法により算出する変形算出手段と、
前記変形算出手段により算出された前記各節の変位から前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記かしめ片モデルに接触する節を抽出する節抽出手段と、
前記節抽出手段により抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記節抽出手段により抽出された節に隣接する一対の節の一方、間の第1の距離を求める第1の距離算出手段と、
前記節抽出手段により抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記節抽出手段により抽出された節に隣接する一対の節の他方、間の第2の距離を求める第2の距離算出手段と、
前記第1の距離、及び、前記第2の距離、の和の1/2を前記節抽出手段により抽出された節の接触長さとして求める接触長さ算出手段と、
前記節抽出手段により抽出された全ての節について求めた前記接触長さと前記節抽出手段により抽出された節が前記かしめ片モデルに作用する力とを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を前記接触性能係数として求める接触性能係数算出手段と、
を備えたことを特徴とする接触性能係数算出装置。
【請求項2】
端子金具に設けられたかしめ片と、前記かしめ片にかしめられる芯線と、の接触抵抗に応じた接触性能係数を算出する接触性能係数算出方法であって、
前記芯線を複数の要素に分割した芯線モデル、及び、前記かしめ片を複数の要素に分割したかしめ片モデル、を取得する工程と、
上型及び下型の間に挟んで前記芯線を前記かしめ片によりかしめた後の前記芯線モデル及び前記かしめ片モデルを構成する各節の変位及び各節に作用する力を有限要素法により算出する工程と、
前記算出された各節の変位から前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記かしめ片モデルに接触する節を抽出する工程と、
前記抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記抽出された節に隣接する一対の節の一方、間の第1の距離を求める工程と、
前記抽出された節、及び、前記かしめた後の前記芯線モデルの輪郭上の節のうち前記抽出された節に隣接する一対の節の他方、間の第2の距離を求める工程と、
前記第1の距離、及び、前記第2の距離、の和の1/2を前記抽出された節の接触長さとして求める工程と、
前記抽出された全ての節について求めた前記接触長さと前記抽出された節が前記かしめ片モデルに作用する力とを乗じた値の総和を求めて、当該総和の逆数を前記接触性能係数として求める工程と、
を順次行うことを特徴とする接触性能係数算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−199792(P2009−199792A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38209(P2008−38209)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】