説明

接触改質用の最適触媒

【課題】炭化水素供給原料の接触改質用触媒を提供する。
【解決手段】特定の低い硫黄及びリンの含有量を有する少なくとも1種のアルミナ担体と、フッ素、塩素、臭素、および、ヨウ素により形成された群より選択される少なくとも1種のハロゲンと、少なくとも白金と、レニウム及びイリジウムによって形成された群より選択される少なくとも1種のプロモーター金属と、必要に応じ、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、チタン、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ロジウム、及び亜鉛により形成された群より選択される少なくとも1種のドーパント金属を含ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された改質触媒、および炭化水素供給原料の改質方法におけるその使用に関する。本発明はまた、改質触媒の製造のための、低い硫黄およびリンの含有量を有するアルミナ担体の使用に関する。本発明は、精製、より具体的には、改質の技術分野に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
接触改質方法は、蒸留によって得られた重質ガソリンを品質向上させるために、精製業者によって非常に幅広く用いられる方法である。分子当たり約6〜12個の炭素原子を含有する、重質ガソリン供給原料中の炭化水素(パラフィンおよびナフテン)が本方法の間、芳香族炭化水素に、あるいはそうでない場合、分枝パラフィンに転換される。前記転換は、高温(500℃程度)において、低圧から中圧(3.5〜25×10Pa)で、かつ触媒の存在下に行われる。接触改質はリフォメートを生成させ、これはオイルカットのオクタン価を向上させるために用いられ得る。リフォメートは主に、C5+(5個以上の炭素原子を含む)化合物から形成される。この方法ではまた、水素リッチなガス、燃料ガス(C1−C2化合物によって形成される)、および液化ガス(C3−C4化合物によって形成される)が生じる。最後に、コークスも形成され、これは主に、固体を形成する芳香環の縮合によるものであり、この固体は、炭素リッチな生成物であり、触媒の活性部位上に沈着させられる。C1−C4化合物(C4−としても知られる)とコークスを生成させる反応は、リフォメートの収率および触媒の安定性に不利となるものである。触媒の活性を高めて、可及的に低い温度において高いC5+収率を得、触媒のサイクルタイムを最大にするよう努めることが重要である。触媒の高い活性は、可及的に高い選択性と一致させられなければならず、すなわち、1〜4個の炭素原子を含有する軽質生成物(C4−)をもたらす分解反応は制限されなければならない。
【0003】
改質触媒は、棒状、ビーズ状、または粒状の多孔性固体物であり、一般的に、担体としての高純度のアルミナと、塩素と、白金と、第7、8、9、10、13、および14族からの金属によって形成された群より選択される少なくとも1種の追加金属とを含む。それらは、二機能性触媒であり、すなわち2つの機能を有しており、1つは金属性の機能であり1つは酸機能であり、各機能が、触媒の活性において明確に定義された役割を有する。金属機能は本質的に、ナフテンおよびパラフィンの脱水素、ならびにコークス前駆体の水素化を提供する。酸機能は、ナフテンおよびパラフィンの異性化、ならびにパラフィンの環化を提供する。酸機能は、担体自体、通常は高純度のハロゲン化アルミナによって提供される。金属機能は、白金族からの貴金属および少なくとも1種の追加金属によって提供され、該追加金属は、連続的な方法(移動床)の場合主としてスズであり、半再生方法(固定床)の場合レニウムである。
【0004】
コークスに加えて、このような改質触媒は、それらの活性を劣化させる可能性のある種々の毒または阻害物質、特に窒素、金属、および水にきわめて敏感である。触媒の表面上に沈着させられることによって、コークスが経時的に活性を喪失させ、これにより操作温度が上昇し、改質収率が低下し、サイクルタイムが短縮されるに至る。一定期間の後、触媒を再生させて、活性部位上に沈着させられたコークスおよび毒を除去する必要がある。改質触媒の再生は本質的に、コークスを除去するための制御された燃焼工程と、オキシ塩素化工程とを含む。オキシ塩素化工程は、酸化媒体中に塩素または塩素含有有機化合物を添加することによって、触媒上に沈着させられた毒を場合により除去し得るが、本質的には、金属を再分散させ、アルミナの酸度を調整する。触媒再生処理は非常に過酷な条件下で行われ、このような条件下では、高温および燃焼水の存在のために、触媒が劣化するに至る可能性がある。したがって、再生条件下での触媒の抵抗力向上に努めることが重要である。
【0005】
ハロゲン、一般的に塩素の存在は、パラフィンおよびナフテンの異性化反応ならびにパラフィンの環化反応のための十分な酸機能を触媒が有するためには必須である。反応条件下に、供給原料中および反応装置中の水の存在に起因して触媒上の塩素含有量は減少する。水は、最も不安定な塩素原子を同伴し、数多くの不利な点をもたらす。溶出した塩素は触媒の床を通過し、この床の下流に位置する触媒上の塩素量が増加する。このことは、触媒上の塩素含有量が床全体にわたって均一でないことを意味する。より高い酸度を有し、炭化水素の分解ならびに触媒のコークス化を促進する帯域が生み出される触媒中の塩素含有量を一定に保つために、塩素化された前駆体を装置中に連続的に注入することが必要である。触媒の塩素保持が乏しい場合、この注入速度は速くなる。しかし、塩素は、改質装置中の腐食の元である。したがって、触媒中の塩素保持の増加に努めることは重要である。
【0006】
本出願人は、金属およびドーパントが結合する硫黄含有担体から出発する改質触媒を開発した。これらの触媒は、特許文献1に記載されている。これらの触媒の不利な点の一つは、塩素保持が最適化されていないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/147313号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の不利な点を克服している。驚くべきことに、本出願人は、少量の硫黄およびリンを含むアルミナ担体を有する改質触媒が、より良好な活性を有しかつより安定していることを示した。さらに、それらは、C5+化合物のより良好な収率を得るために用いられ得る。したがって、本発明の触媒は、良好な選択性を有する。改質方法においてこれらの触媒を使用することで、改質装置中に、より少量の塩素を注入することが可能となるという利点がもたらされ、これにより、腐食のリスクを制限しかつコスト削減がもたらされる。触媒は、より安定でありより選択的であり、またコークスの形成が減少する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様において、向上した触媒性能と、より良好な塩素保持を有する、最適化された改質触媒が提供される。本発明の最適化された改質触媒は、低い硫黄およびリンの含有量を有する少なくとも1種のアルミナ担体と、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素によって形成された群より選択される少なくとも1種のハロゲンと、少なくとも白金と、レニウムおよびイリジウムによって形成された群より選択される少なくとも1種のプロモーター金属とを含む。
【0010】
本発明において用いられる用語「低い硫黄およびリンの含有量」は、担体の全重量に対して1200重量ppm以下の硫黄含有量および全担体重量の1重量%以下のリン含有量を有するアルミナ担体を意味する。
【0011】
アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.04〜1重量%の範囲である。本発明の第2の変形例において、アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.05〜0.8重量%の範囲である。本発明の第3の変形例において、アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.07〜0.65重量%の範囲である。
【0012】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して500〜1200重量ppmの範囲である。本発明の第2の変形例において、アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して530〜1150重量ppmの範囲である。本発明の第3の変形例において、アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して550〜1100重量ppmの範囲である。本発明の第4の変形例において、アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜1050重量ppmの範囲である。本発明の第5の変形例において、アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜950重量ppmの範囲である。
【0013】
触媒の全重量に対する白金含有量は、0.02〜2重量%の範囲、好ましくは0.05〜1.5重量%の範囲、より好ましくは0.1〜0.8重量%の範囲である。
【0014】
アルミナ担体を酸性にするために用いられるハロゲン(単数または複数)は、全触媒重量に対して0.1〜15重量%、好ましくは全触媒重量に対して0.2〜5重量%を示してもよい。好ましくは、単一のハロゲン、特に塩素が用いられる。触媒が単一のハロゲンを含み、それが塩素である場合、塩素含有量は全触媒重量に対して0.5〜2重量%の範囲である。
【0015】
本発明の触媒はまた、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、チタン、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ロジウム、および亜鉛によって形成された群より選択される少なくとも1種のドーパント金属を含んでもよい。
【0016】
全触媒重量に対する各ドーパント金属の量は、0〜2重量%の範囲、好ましくは0.01〜1重量%の範囲、より好ましくは0.01〜0.7重量%の範囲の範囲である。
【0017】
触媒は、白金の脱水素活性を促進する効果を有する1種以上のプロモーター金属を含む。プロモーター金属は、触媒の使用様式に応じて選択される。従って、触媒が固定床方法において用いられることが意図される場合、触媒はレニウムおよびイリジウムによって形成された群より選択される少なくとも1種のプロモーター金属を含んでもよい。
【0018】
各プロモーター金属の量は、全触媒重量に対して0.02〜10重量%の範囲、好ましくは0.05〜5重量%の範囲、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0019】
改質反応において用いられる前に、本発明の触媒は、硫化工程を経る。触媒の全ての硫黄含有量は、700〜1400ppmの範囲、好ましくは800〜1200ppmの範囲、より好ましくは800〜1100ppmの範囲である。本発明において用いられる用語「全ての硫黄含有量」は、硫化工程の終わりに得られる最終触媒上に存在する硫黄の全量を意味し、硫黄は硫酸塩の形態であってもよく、および/または還元された状態の硫黄の形態であってもよい。
【0020】
床中の触媒は、粒子(ビーズであってもよい)、押出物(多葉であってもよい)ペレットの形態、または日常的に使用されるあらゆる他の形態である。好ましくは、触媒は押出物の形態である。
【0021】
第2の態様において、本発明は、改質触媒の製造のための、低い硫黄およびリンの含有量を有するアルミナ担体の使用に関する。
【0022】
改質触媒の製造のために用いられるアルミナ担体のリン含有量は、全担体重量に対して0.04〜1重量%の範囲である。本発明の第2の態様の第2の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体のリン含有量は、全担体重量に対して0.05〜0.8重量%の範囲である。本発明の第2の態様の第3の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体のリン含有量は、全担体重量に対して0.07〜0.65重量%の範囲である。
【0023】
改質触媒の製造のために用いられるアルミナ担体の硫黄含有量は、全担体重量に対して500〜1200重量ppmの範囲である。本発明の第2の態様の第2の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体の硫黄含有量は、全担体重量に対して530〜1150重量ppmの範囲である。本発明の第2の態様の第3の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体の硫黄含有量は、全担体重量に対して550〜1100重量ppmの範囲である。本発明の第2の態様の第4の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜1050重量ppmの範囲である。本発明の第2の態様の第5の変形例において、改質触媒の製造のために用いられる担体の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜950重量ppmの範囲である。
【0024】
本発明の、低い硫黄およびリンの含有量を有するアルミナ担体(本明細書の以降において、本発明のアルミナ担体とも称される)は、以下の方法を用いて得られてもよい。これらの方法は、例として示されるものであり、決して限定するものではない。
【0025】
例として、リンおよび硫黄はアルミナ前駆体上に沈着させられ得る。リンおよび硫黄は、当業者に知られた技術を用いて沈着させられる。例として、リンは含浸技術を用いてアルミナ前駆体上に沈着させられてもよい。以下の溶液(例として示されるものであり、限定するものではない)が、リン含有溶液として用いられてもよい:HPOの溶液、(NHHPOの溶液、NaHPOの溶液、またはNaPOの溶液。硫黄もまた、含浸技術を用いてアルミナ前駆体に添加されてもよい。以下の溶液(例として示されるものであり、限定するものではない)が、硫黄含有溶液として用いられてもよい:HSOの溶液、NaSOの溶液、またはKSOの溶液。リンおよび硫黄は、アルミナ前駆体上に別個に導入されてもよく、更には同時に導入されてもよい。
【0026】
本発明の担体の調製のために用いられるアルミナ前駆体は、好ましくは、ハイドラルジライトと、バイヤライトと、ベーマイトと、無定形ゲルと、ロー、カイ、エータ、ガンマ、カッパ、シータおよびアルファの相を含む群から選ばれる少なくとも1つの相を含む遷移アルミナとして知られるアルミナとによって形成された群より選択される。好ましくは、前記アルミナ前駆体はベーマイトである。
【0027】
本発明の担体はまた、ベーマイト型アルミニウム一水和物を沈殿させる目的で酸性アルミニウム源と塩基性アルミニウム源の混合物から得られてもよい。酸性アルミニウム源は例えば、少なくとも1種の以下の化合物から選択されてもよい:塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、および硝酸アルミニウム。塩基性アルミニウム源は、塩基性アルミニウム塩、例えばアルミン酸ナトリウムまたはアルミン酸カリウムから選択されてもよい。反応剤は通常、水溶液の形態で用いられる。アルミニウム水和物は、pHを以下のように制御することによって沈殿させられる:
第1の工程a)において、硫酸アルミニウムの水溶液がアルミン酸ナトリウム水溶液と同時にビーカーに、6〜10の範囲のpHでかつ350rpm(revolutions per minute:分当たりの回転数)で撹拌しながら加えられる。混合は、全ての溶液を添加する期間にわたり、一定に保持された温度で行われ、この温度は40〜70℃の範囲である。pHもまた、2種類の溶液を混合する間、制御される。pHは、ビーカーに導入される2種類の溶液の流量および濃度を選択することにより制御される。溶液は前駆体のアルミナ(Al)の最終濃度が30〜50g/Lの範囲になるまで20〜50分間、添加されかつ混合される。撹拌は、反応からの生成物、すなわちアルミニウム水和物の沈殿物が、ビーカーに導入され続ける出発反応剤およびすでに形成された沈殿物に接触し得ることを意味する。これらの実験条件は、アルミナ前駆体またはベーマイト形態のアルミニウム水和物の沈殿物の懸濁液が得られ得ることを意味する。
【0028】
第2の工程b)において、アルミナ前駆体の懸濁液が成熟させられる。この工程は、350rpmで撹拌しながら60〜250℃の範囲の温度で5分〜24時間にわたり行われる。この工程中のpHは、8.5〜10に調整される。この成熟工程中、pHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化第四級アンモニウム、アンモニア、アルミン酸ナトリウム、およびアルミン酸カリウムによって形成された群より選択される塩基を添加することにより制御される。
【0029】
第3の工程c)において、成熟した懸濁液はろ過される。ろ過は、当業者に周知のろ過技術を用いて行われる。ろ過ケークが得られ、その後これは3〜6倍の体積の水で洗浄される。この洗浄工程で、特定の不要な不純物を除去して、硫黄含有アルミナ前駆体を得ることが可能である。
【0030】
第4の工程d)において、リン含有溶液(限定するものではないが、この例は、HPOの溶液、(NHHPOの溶液、NaHPOの溶液、またはNaPOの溶液である)は、含浸技術を用いてアルミナ前駆体上に沈着させられる。
【0031】
硫黄およびリンを含むアルミナ前駆体は、触媒、または改質触媒用の担体の調製のために用いられる。この調製は、前記アルミナ前駆体を成形し、その後それを焼成することから成る(工程e)。成形は、混合/押出、例えば油滴法による成形、造粒、圧縮、または噴霧乾燥(spray drying)といったあらゆる公知の方法を用いて行われてもよい。硫黄およびリンを含む成形されたアルミナ前駆体は、その後500〜830℃の範囲の温度で焼成される。このようにして低い硫黄含有量を有するアルミナ担体が得られる。
【0032】
本発明の担体の比表面積は、150〜400m/gの範囲、好ましくは150〜300m/gの範囲、より好ましくは160〜250m/gの範囲である。10ミクロン未満の径を有する細孔の容積は、0.2〜1cc/gの範囲であり、好ましくは0.4〜0.9cc/gの範囲である。メソ細孔(2〜50nmの径を有する細孔)の平均径は、5〜20nmの範囲であり、好ましくは7〜16nmの範囲である。
【0033】
本発明の触媒は、触媒の種々の成分を、本発明の硫黄およびリンを含むアルミナ担体上に沈着させることにより調製されてもよい。各成分は、アルミナ担体を成形する前あるいは後に、アルミナ担体上に沈着させられてもよい。成分は、1種の溶液から、あるいは複数種の溶液から、あらゆる順序で連続して導入されてもよい。複数種の場合、中間の乾燥および/または焼成が行われてもよい。
【0034】
触媒の種々の成分は、従来技術を用いて、液相または気相において、適切な前駆体化合物から沈着させられてもよい。沈着が、成形された本発明のアルミナ担体上に行われる場合、用いられる技術は、例えば、乾式含浸または過剰溶液含浸(excess solution impregnation)であってよい。洗浄および/または乾燥および/または焼成の工程は、場合により、各新鮮な含浸工程の前に行われてもよい。
【0035】
本発明の担体の成形および全ての成分の沈着の後、最終熱処理が300〜1000℃で行われ;これは、たった1つの工程を含んでもよく、好ましくは400〜900℃の温度で、酸素含有雰囲気中に、好ましくはフリーな酸素または空気の存在下に行われる。この処理は、最終成分の沈着に続く乾燥−焼成に相当する。
【0036】
白金は、従来技術、特に、白金前駆体の水性あるいは有機溶液から、または白金の塩または化合物を含む水性あるいは有機溶液からの含浸を用いて沈着させられてもよい。用いられてもよい塩または化合物の挙げられてもよい例は、ヘキサクロロ白金酸、アンモニア化合物、クロロ白金酸アンモニウム、塩化白金、白金ジカルボニルジクロリド(platinum dicarbonyl dichloride)、およびヘキサヒドロキシ白金酸である。アンモニア化合物は、例えば、式Pt(NHを有する白金(II)テトラミン塩、式(Pt(NH)Xを有する白金(IV)ハロゲノペンタミン塩、式PtX(NHXを有する白金テトラハロゲノジアミン塩またはハロゲン−ポリケトンを有する白金錯体および式H(Pt(acac)X)(式中、元素Xは、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素によって形成された群から選択されるハロゲン、好ましくは塩素であり、基acacは、アセチルアセトンに由来する式Cを有する残基を表す)を有するハロゲン化化合物であってよい。挙げられてもよい有機溶媒の例は、例えば分子当たり1〜12個の炭素原子を含む、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、または芳香族炭化水素、ならびにハロゲン化有機化合物である。挙げられてもよい例は、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、およびクロロホルムである。溶媒の混合物を用いることも可能である。白金は、触媒の調製の間のあらゆる時に沈着させられてもよい。それは、他の成分、例えばプロモーター金属(単数または複数)の沈着と独立してあるいは同時に行われてもよい。
【0037】
ドーパント(単数または複数)および/またはプロモーター(単数または複数)も、前駆体化合物、例えば、ドーパント金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、およびシュウ酸塩またはアミンタイプの錯体から出発して、従来技術を用いて沈着させられてもよい。水に可溶なこれらの金属のあらゆる他の塩または酸化物、酸、またはあらゆる他の適切な溶媒が、前駆体としての使用に適している。このように挙げられてもよい前駆体の例は、過レニウム酸、過レニウム酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、およびタングステン酸塩である。担体の成形前にこれらの前駆体化合物(単数または複数)の水溶液を本発明の担体と混合することによってドーパント(単数または複数)を導入することも可能である。
【0038】
ドーパント(単数または複数)、および/またはプロモーター(単数または複数)は、前記金属の有機金属化合物の有機溶媒中の溶液によって沈着させられてもよい。この場合、この沈着は、例えば白金の沈着後に行われ、その後固体物は焼成されて、高純度のまたは希釈された水素中での還元が場合により、高温、例えば300〜500℃で行われてもよい。有機金属化合物は、前記プロモーター金属の錯体およびヒドロカルビル金属(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、およびアルキルアリールの金属)によって構成される群から選択される。アルコラートタイプの化合物または有機ハロゲン化合物を用いることも可能である。ドーパント金属がスズである場合、特にテトラブチルスズが挙げられてもよく、ドーパント金属がインジウムである場合、特にトリフェニルインジウムが挙げられてもよい。含浸溶媒は、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、または分子当たり6〜12個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素、および分子当たり1〜12個の炭素原子を含有する有機ハロゲン化化合物によって構成される群から選択されてもよい。挙げられてもよい例は、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、およびクロロホルムである。上記に規定した溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0039】
ハロゲン、好ましくは塩素が、別の金属成分と同時に触媒に導入されてもよく、それは、例えば、白金族からの金属、プロモーター金属またはドーパント金属の前駆体としてハロゲン化物が用いられる場合である。
【0040】
ハロゲンはまた、調製の間のあらゆる時に、対応する酸、例えば、塩酸の水溶液を含浸させることによって添加されてもよい。典型的な手順は、所望量のハロゲンを導入するための、固体物の含浸からなる。触媒は、この量のハロゲンを沈着させるために、少なくとも30分間にわたり水溶液と接触させられ続ける。
【0041】
塩素は、オキシ塩素化処理によって本発明の触媒に添加されてもよい。このような処理は、例えば、所望量の塩素および場合により水を含む空気流れ中、350〜550℃で2時間にわたり行われてもよい。
【0042】
本発明の触媒の調製において用いられる種々の前駆体がハロゲンを含まない場合または十分な量のハロゲンを含まない場合、調製の間に、ハロゲン化化合物を添加する必要があり得る。当業者に知られたあらゆる化合物が、本発明の触媒の調製のためのあらゆる工程で用いられかつ組み入れられ得る。特に、メチルまたはエチルのハロゲン化物、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルクロロホルム、または四塩化炭素等の有機化合物を用いることが可能である。
【0043】
使用前に、触媒は、水素中での処理および硫黄含有前駆体を用いた処理を経て、活性でかつ選択的な金属相が得られる。水素中の還元としても知られる、水素中でのこの処理の手順は、触媒を、高純度のまたは希釈された水素流中、100〜600℃の範囲の温度、好ましくは200〜580℃の温度で、30分〜6時間にわたり保持することからなる。この還元は、最終使用者によって焼成の直後または焼成の後に行われてもよい。また、乾燥生成物の還元は、最終使用者が直接行うことも可能である。硫黄含有前駆体を用いた処理のための手順は、還元後に行われる。このことは、全硫黄含有量が全触媒重量に対して700〜1600ppmの範囲、好ましくは800〜1400ppmの範囲、より好ましくは800〜1300ppmの範囲である硫黄含有触媒が得られ得ることを意味する。硫黄処理(硫化としても知られる)は、当業者に周知であるあらゆる方法を用いて行われる。例として、還元された状態の本発明の触媒は、1時間にわたり450〜580℃の範囲の温度で高純度のまたは希釈された水素の存在下に、硫黄含有前駆体と接触させられる。硫黄含有前駆体は、ジメチルジスルフィド、硫化水素、軽質チオール、または有機硫化物、例えばジメチルジスルフィドであってもよい。
【0044】
従って、例(限定されない例)によると、触媒は、以下の工程を含む製造方法を用いて調製されてもよい:
1) 上記の工程a)〜e)に従って、硫黄およびリンを含むアルミナ担体を調製する;
2) 硫黄およびリンを含むアルミナ担体に、少なくとも1種の白金前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させる;
3) 先行する工程で得られた担体に、プロモーター金属の少なくとも1種の前駆体の少なくとも1種の溶液を含浸させる;
4) 先行する工程で得られた担体に、少なくとも1種のドーパント金属の少なくとも1種の溶液を含浸させる;この工程は任意である;
5) 先行する工程で得られた担体を、乾燥させかつ焼成して、酸化物形態の触媒を得る;
6) 先行する工程で得られた酸化物形態の触媒を、水素中、例えば100〜600℃の範囲の温度で、30分〜6時間にわたり還元して、還元された触媒を得る;
7) 先行する工程で得られた還元された触媒を、例えば少なくとも1時間にわたり450〜580℃の範囲の温度で、少なくとも1種の硫黄含有前駆体と接触させる。
【0045】
工程2)、3)、および4)は、この順序を逆にしてもよく、同時にあるいは連続して行ってもよい。工程2)、3)、および4)のうち少なくとも1つの工程が、担体を成形するための工程e)の前に行われてもよい。
【0046】
第3の態様において、本発明は、改質方法であって、炭化水素供給原料が、本発明の触媒と、芳香族化合物の製造のための反応条件下に接触させられる、方法に関する。
【0047】
この改質方法は、原油の蒸留方法および/または他の精製方法から生じるガソリンフラクションのオクタン価を上昇させることが可能である。芳香族化合物の製造のための方法は、石油化学において用いられ得るベース(ベンゼン、トルエン、およびキシレン)を提供する。これらの方法は、補足的に興味深いものである。なぜなら、それらは、精製所の水素化処理方法に必須である大量の水素の製造に寄与するからである。これらの2つのタイプの方法は、操作条件の選択によって、および場合により供給原料の組成によって区別される。
【0048】
炭化水素供給原料は、パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、および分子当たり6〜12個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素を含む。この供給原料は、とりわけ密度および重量による組成によって規定される。
【0049】
本発明の第3の態様によると、前記炭化水素供給原料を本発明の前記触媒と接触させるための反応条件は、400〜700℃の範囲の温度、0.1〜4MPaの範囲の圧力、および0.1〜10h−1の範囲の、時間当たりかつ触媒の単位質量当たりの処理される供給原料の質量流量である。生じた水素の一部が、0.1〜8の範囲の再循環モル比(供給原料の流量に対する再循環水素の流量)を用いて再循環させられる。
【0050】
本発明の第3の態様の変形例において、本発明によるガソリンの改質方法は、炭化水素供給原料を、350〜550℃の範囲の温度、1〜3MPaの範囲の圧力、および0.5〜6h−1の範囲の毎時空間速度で本発明の触媒と接触させることにより固定床中で行われる。生じた水素の一部が、2〜7の範囲の再循環モル比(供給原料の流量に対する再循環水素の流量)で再循環させられる。
【0051】
以降、本発明を以下の実施例を用いて説明するが、この実施例は本発明を制限するための例示として与えられない。
【0052】
(実施例)
(実施例1:触媒の合成)
1a)触媒A(本発明に合致しない)の調製
担体は、20重量ppm未満(蛍光X線を用いる検出限界)の単体硫黄(elemental sulphur)を含むVersal(登録商標)250として知られる市販のベーマイトからのガンマアルミナであった。
【0053】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で14分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件、すなわち通常の温度および圧力の(normal temperature and pressure)条件下、0.15リットル/分)。
【0054】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、および1.1重量%の塩素を含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0055】
1b)触媒B(本発明に合致しない)の調製
担体は、20重量ppm未満(蛍光X線を用いる検出限界)の単体硫黄を含むVersal(登録商標)250として知られる市販のベーマイトからのガンマアルミナであった。このアルミナに、リン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が全担体重量に対して0.25重量%であるようにされていた。
【0056】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で14分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0057】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0058】
1c)触媒C(本発明に合致しない)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させ、押し出し、そして720℃で焼成した。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、焼成後かつ硫化工程の前に870重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。
【0059】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0060】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、および1.1重量%の塩素を含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0061】
1d)触媒D(本発明に合致しない)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が全担体重量に対して0.25重量%であるようにされた。次いで、粉末を押し出し、740℃で焼成した。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、焼成後かつ硫化工程の前に担体上に1250重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。
【0062】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0063】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して1290重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0064】
1e)触媒E(本発明に合致しない)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。溶液のpHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、740℃で乾燥させた。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、焼成後かつ硫化工程前の担体上に450重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が0.25重量%であるようにされた。
【0065】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0066】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して990重量ppmの最終硫黄含有量を有していた。
【0067】
1f)触媒F(本発明に合致しない)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、780℃で焼成した。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、焼成後かつ硫化工程前に担体上に870重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が1.30重量%であるようにされた。
【0068】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0069】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および1.30重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの最終硫黄含有量を有していた。
【0070】
1g)触媒I1(本発明に合致する)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、740℃で乾燥させた。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が0.25重量%であるようにされた。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、590重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。従って、焼成後かつ硫化前に、担体は、担体の全重量に対して590重量ppmの硫黄含有量と0.25重量%のリン含有量を有していた。
【0071】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、500℃で2時間にわたって焼成し、次いで500℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0072】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して1020重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0073】
1h)触媒I2(本発明に合致する)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、740℃で焼成した。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が0.25重量%であるようにされた。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、870重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。従って、焼成後かつ硫化前に、担体は、担体の全重量に対して870重量ppmの硫黄含有量と0.25重量%のリン含有量を有していた。
【0074】
この担体20gを、塩酸と、白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸との水溶液100cmと接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.11gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、500℃で2時間にわたって焼成し、次いで500℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0075】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.35重量%のレニウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの最終硫黄含有量を有していた。
【0076】
1i)触媒I3(本発明に合致する)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、740℃で焼成した。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が0.25重量%であるようにされた。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、870重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。従って、焼成後かつ硫化前に、担体は、担体の全重量に対して870重量ppmの硫黄含有量と0.25重量%のリン含有量を有していた。
【0077】
この担体20gを、塩酸と、インジウム0.03gを含む硝酸インジウムと、塩素0.2gとの水溶液100cmと3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた固体物を120℃で1時間にわたって乾燥させた後、450℃で2時間にわたって焼成した。白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸の水溶液100cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.09gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0078】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.30重量%のレニウム、0.10重量%のインジウム、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの最終硫黄含有量を有していた。
【0079】
1j)触媒I4(本発明に合致する)の調製
硫酸アルミニウムの溶液をアルミン酸ナトリウムの溶液に同時に添加することにより、ガンマアルミナ担体を得た。pHを9に保持しながら2種類の溶液を混合して、アルミナの最終濃度が50g/Lであるアルミナ前駆体を得た。pHを9に保持しながら、得られたスラリーを3時間にわたって熟成させた。次いで、それをろ過し、洗浄および噴霧乾燥させた。得られた粉末にリン酸の水溶液を含浸させ、次いで乾燥させた。次いで、それを、押し出し、740℃で焼成した。リン酸溶液中のリンの濃度は、焼成後、担体のリン含有量が0.25重量%であるようにされた。噴霧乾燥の前に洗浄工程を行って、焼成後かつ硫化工程の前に担体上に870重量ppmの硫黄含有量を生じさせた。従って、焼成後かつ硫化前に、担体は、担体の全重量に対して870重量ppmの硫黄含有量と0.25重量%のリン含有量を有していた。
【0080】
この担体20gを、塩酸と、スズ0.045gを含む塩化スズ(II)と、塩素0.2gとの水溶液100cmと3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた固体物を120℃で1時間にわたって乾燥させた後、450℃で2時間にわたって焼成した。塩酸と白金0.07gを含むヘキサクロロ白金酸の水溶液100cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。塩酸の量を調整して、最終触媒中に1.1重量%の塩素含有量を生じさせた。次いで、含浸溶液を取り除いた。過レニウム酸アンモニウムの形態で導入されたレニウム0.09gを含む水溶液60cmを、先行する工程の終わりに得られた担体と3時間にわたって接触させた。次いで、含浸溶液を取り除いた。得られた触媒を、120℃で1時間にわたって乾燥させ、520℃で2時間にわたって焼成し、次いで520℃で2時間にわたって水素中で還元した。次いで、触媒を、520℃で9分間、水素/HS混合物(1体積%のHS)で硫化した(流量:NTP条件下、0.15リットル/分)。
【0081】
最終触媒は、0.30重量%の白金、0.30重量%のレニウム、0.15重量%のスズ、1.1重量%の塩素、および0.25重量%のリンを含んでいた。それは、全触媒重量に対して950重量ppmの全硫黄含有量を有していた。
【0082】
(実施例2:触媒試験)
石油の蒸留に由来する以下の特徴を有するナフサタイプの炭化水素供給原料の転換について、触媒A〜F、および触媒I1〜I4を試験した:
15℃での密度: 0.747kg/dm
パラフィン/ナフテン/芳香族: 57/32/11体積%
この転換を、水素の存在下、横断床(traversed bed)パイロットテスト装置中で行った。試験を、以下の操作条件を用いて行った:
全圧: 1.2MPa
供給原料の流量: 時間当たりかつ触媒の重量(kg)当たり3kg
リサーチオクタン価:102
炭化水素供給原料に対する再循環水素のモル比:3.5
操作の180時間後に得られた性能を表1に示す;すなわち、所望のリサーチオクタン価に達するために必要な温度は、触媒の活性を表し、C5+リフォメート(少なくとも5個の炭素原子を含有する炭化水素)およびC4−(1〜4個の炭素原子を含有する炭化水素)の重量収率は、触媒の選択性を表す。
【0083】
触媒試験は全て、可変の温度で行ったが、102に等しい一定のリサーチオクタン価(research octane number:RON)が得られた。
【0084】
【表1】

【0085】
これらの結果により、本発明の触媒(触媒I1〜I4)の担体中にリンおよび硫黄が存在した場合のリンおよび硫黄の相乗効果が、改質触媒の活性および選択性に関して証明される。実際、本発明の触媒I1〜I4は、本発明に合致しない触媒A、B、およびEより高いC5+の収率を有し、C4−収率は、本発明に合致しない触媒より低いC4−の収率を有している。従って、本発明の触媒I1〜I4は、触媒A、B、およびEより高い選択性を有している。触媒I1〜I4は、より低い温度で、同じリサーチオクタン価(RON)を得るために用いられ得るので、本発明の触媒は、触媒C、D、およびFより活性である。
【0086】
(実施例3:塩素保持試験)
触媒Dおよび触媒I1〜I4は、塩素保持試験を受けた。塩素保持試験は、(塩酸の形態の)塩素を8000重量ppm含む空気流を、時間当たりかつ触媒の重量(g)当たり1リットルの流量で、520℃で1時間にわたって触媒中に通過させることからなっていた。試験後の触媒上の塩素含有量(最終塩素含有量と称される)を、(塩素化試験前)初期塩素含有量と比較した。
【0087】
各触媒について、(塩素初期−塩素最終)/塩素初期の比として定義される、塩素の喪失を表2に記録した。
【0088】
【表2】

【0089】
これらの結果により、本発明の触媒I1〜I4が、本発明に合致しない触媒Dと比較して、より高い塩素保持容量(capacity)を有することが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも白金と、レニウムおよびイリジウムによって形成された群より選択される少なくとも1種のプロモーター金属と、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素によって形成された群より選択される少なくとも1種のハロゲンと、低い硫黄およびリンの含有量を有する少なくとも1種のアルミナ担体とを含む、改質触媒。
【請求項2】
ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、チタン、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ロジウム、および亜鉛によって形成された群より選択される少なくとも1種のドーパント金属を更に含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.04〜1重量%の範囲である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.05〜0.8重量%の範囲である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項5】
アルミナ担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.07〜0.65重量%の範囲である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項6】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して500〜1200重量ppmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して530〜1150重量ppmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して550〜1100重量ppmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜1050重量ppmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
アルミナ担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して580〜950重量ppmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
全触媒重量に対する白金含有量は、0.02〜2重量%の範囲である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項12】
ハロゲン含有量は、全触媒重量に対して0.1〜15重量%の範囲である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項13】
ハロゲンは塩素であり、その含有量は全触媒重量に対して0.5〜2重量%の範囲である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項14】
ドーパント金属含有量は、全触媒重量に対して0〜2重量%の範囲である、請求項1〜13のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項15】
各プロモーター金属の量は、全触媒重量に対して0.02〜10重量%の範囲である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項16】
接触改質方法であって、請求項1〜15のいずれか1つに記載の触媒を、n−パラフィン炭化水素、ナフテン炭化水素、および芳香族炭化水素を含む炭化水素供給原料と接触させる、方法。
【請求項17】
改質触媒の製造のための、低い硫黄およびリンの含有量を有するアルミナ担体の使用。
【請求項18】
前記担体中のリン含有量は、全担体重量に対して0.04〜1重量%の範囲であることを特徴とする請求項17に記載のアルミナ担体の使用。
【請求項19】
前記担体中の硫黄含有量は、全担体重量に対して500〜1200重量ppmの範囲であることを特徴とする請求項17または18に記載のアルミナ担体の使用。

【公開番号】特開2012−86213(P2012−86213A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−226298(P2011−226298)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(591007826)イエフペ エネルジ ヌヴェル (261)
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
【Fターム(参考)】