説明

接触脱ロウプロセス

接触脱ロウプロセスにおいて、シリカ/アルミナのモル比200:1未満を有するZSM−48の40〜80wt%、および元素周期律表の第8〜10族からの金属または金属化合物の0.3〜1.5wt%を含む触媒が、反応域に提供される。触媒を、反応域において、脱ロウ条件下に、ワックス含有量50wt%未満を有する第一の炭化水素供給原料、およびワックス含有量50wt%以上を有する第二の炭化水素供給原料と、周期的に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第61/284,835号(2009年12月24日出願)を優先権主張するものであり、引用することによって、その全体は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、種々のワックス含有量を有する原料を接触脱ロウするためのプロセス(方法、処理又は過程)に関する。
【背景技術】
【0003】
ワックス質供給原料は、高い粘度指数(VI)を有する基材を調製するのに用いることができる。しかし、殆どの用途に適切な低温特性を有する基材を得るためには、通常、供給原料を脱ロウすることが必要である。脱ロウは、溶剤を用いて、または接触的に達成されてもよい。溶剤脱ロウは、物理的プロセスである。それにより、ワックスを、溶剤(メチルエチルケトンなど)と接触させ、引続いて冷却してワックスを結晶化させ、ろ過してワックスを除去することによって除去する。接触脱ロウには、あまり望ましくない分子を化学的に転化して、より好ましい低温特性を有する基材を、製造する工程が含まれる。長鎖ノルマルパラフィンおよび僅かに分枝したパラフィンは、容易に結晶化し、したがって一般に、好ましくない低温特性をもたらす。接触脱ロウは、これらの長鎖ノルマルパラフィンおよび僅かに分枝したパラフィンを転化して、原料の低温特性を向上させるためのプロセスである。
【0004】
接触脱ロウは、主として、ワックスをより低沸点の生成物へ分解することによって機能する触媒を用いて、または主として、ワックスをより高度に分枝した生成物に異性化する触媒によって、達成してもよい。分解によって脱ロウする触媒は、潤滑油の収率を低減し、一方より低沸点の留出油の収率を増大する。異性化する触媒は、標準的には、実質的な沸点変化をもたらさない。主として分解によって脱ロウする触媒は、ゼオライトZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、およびオフレタイトによって例示される。主として異性化によって脱ロウする触媒は、ゼオライトZSM−22、ZSM−23、SSZ−32、ZSM−35、およびZSM−48によって例示される。
【0005】
多くの製油所においては、ワックス含有量に非常に大きな差を有する原料(例えば、ワックス90wt%程度からなるスラックワックスから、20wt%以下のワックスを含む水素化分解油まで異なる)を脱ロウできることが必要である。加えて、ゼオライト脱ロウ触媒は、一般に、硫黄および窒素不純物によって被毒されやすいという事実にも係わらず、しばしば、広範囲の不純物レベルを有する原料を処理することがまた、必要である。
【0006】
現在のところ、ワックス含有量が異なるという問題を取扱う、殆どの製油所によって採用される解決策は、二種の異なる脱ロウ系列を用いることである。それぞれ、異なる脱ロウ触媒を有する。一つの脱ロウ系列は、その際、低ワックス含有量の原料に対して用いられ、一方他は、高ワックス含有量の原料に対して用いられる。これは、高価な解決策であるものの、現在の脱ロウ触媒の限定的な活性のために、全てのタイプの原料を取扱い、かつ高ワックスの原料の場合に依然として許容可能な高い通油量をもたらすことができる単一のプラントを設計することは、困難である。
【0007】
特許文献1は、シリカ/アルミナのモル比110以下を有するZSM−48(非ZSM−48の種結晶を含まず、およびZSM−50を含まない)を開示する。低シリカのZSM−48は、スラックワックスを脱ロウする際に、向上された活性を有すると示される。
【0008】
本願の開示に基づいて、ここで、次のことが見出されている。すなわち、低シリカ/アルミナ比のZSM−48を含む特定の触媒系を用いることによって、ブロックモードで作動する単一の反応器を用いて、低および高ワックスの両原料を脱ロウすることが可能である。触媒は、低レベルの水素添加金属を含み、および高ワックスの原料を用いてさえ、脱ロウが、商業的に許容可能な通油速度で、および望ましくない乾性ガス(C4−)メークを最小にする温度で実行されることを可能にするのに、十分に活性である。触媒はまた、より低活性の触媒が取扱うことができるであろうより、高レベルの窒素および硫黄を含む原料を処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第2007/0131581号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施態様において、接触脱ロウプロセスが開示され、プロセス(方法、処理又は過程)は、
(a)反応域に、シリカ/アルミナのモル比200:1未満を有するZSM−48の40〜80wt%、および元素周期律表の第8〜10族からの金属または金属化合物の0.3〜1.5wt%を含む触媒を供給(又は提供)する工程、および
(b)前記触媒を、前記反応域において、脱ロウ条件下に、ワックス含有量50wt%未満を有する第一の炭化水素供給原料(又は原料材)、およびワックス含有量50wt%以上を有する第二の炭化水素供給原料と、周期的に接触させる工程
を含む。
【0011】
好都合には、触媒は、シリカ/アルミナのモル比200:1未満を有するZSM−48の50〜70wt%を含む。一実施形態においては、ZSM−48は、シリカ/アルミナのモル比100:1以下を有する。
【0012】
好都合には、触媒は、元素周期律表の第8〜10族からの金属または金属化合物の0.3〜0.8wt%を含む。特に白金である。
【0013】
好都合には、触媒は、さらに、無機酸化物結合剤(又はバインダー)を含む。シリカ、シリケート、またはアルミノシリケートなどである。
【0014】
好都合には、前記脱ロウ条件には、温度365℃以下(290℃〜365℃など)、および炭化水素原料に対する液空間速度少なくとも0.4h−1(0.95〜3h−1など)が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例3の脱ロウプロセスを用いて、水素化(又は水素処理)された高および低硫黄スラックワックス原料を使用して、異なる最終流動点を達成するために要求される平均反応温度を比較するグラフである。
【図2】実施例3の脱ロウプロセスを用いて、水素化された高および低原料硫黄スラックワックス原料を使用して、異なる最終流動点を達成するのに要求される370℃転化率を比較するグラフである。
【図3】実施例1の脱ロウ触媒を用いて、より高シリカ/アルミナZSM−48触媒を用いることを除いて類似のプロセスを用いて、異なる原料を使用して、異なる最終流動点を達成するために要求される平均反応温度を比較するグラフである。
【図4】実施例1の脱ロウ触媒を用いて、より高シリカ/アルミナZSM−48触媒を用いることを除いて類似のプロセスを用いて、異なる原料を使用して、異なる最終流動点を達成するために要求される370℃転化率を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書の詳細な説明および請求項における全ての数値は、「約」または「凡そ」の指示値によって修飾され、当業者によって予想されるであろう実験誤差および変動を考慮するものである。
【0017】
本明細書には、幅広く異なるレベルのワックス(例えば、ワックス90wt%超を含むスラックワックス〜ワックス20wt%未満を含む水素化分解油)を含む炭化水素供給原料を、単一の反応器に単一の触媒を用いて、ブロック運転で脱ロウするプロセスが記載される。本明細書においては、用語「ブロック運転」とは、ワックス含有量50wt%未満を有する第一の炭化水素供給原料、およびワックス含有量50wt%以上を有する第二の炭化水素供給原料を脱ロウするに際して、第一の供給原料を、例えば、触媒と、脱ロウ条件下に、ある期間接触させるであろうことを意味する。第一の供給原料の反応器への供給は、次いで、停止されるか、または遮断されるであろう。そして、第二の供給原料が、触媒を変えることなく、しかし標準的には、より高いワックス含有量の原料を取扱うように変更された脱ロウ条件で、反応器へ供給されるであろう。
【0018】
本プロセスは、シリカ/アルミナのモル比200:1未満(典型的には、100:1以下)を有するZSM−48ゼオライトの40〜80wt%(50〜70wt%など)、および元素周期律表の第8〜10族からの水素添加金属または金属化合物の0.3〜1.5wt%(0.3〜0.8wt%など)を含む脱ロウ触媒を用いる。一般に、第8〜10族からの金属または金属化合物は、白金、またはその化合物であり、触媒に、含浸またはイオン交換によって組込まれる。
【0019】
ZSM−48は、10員環一方向性細孔を有するゼオライトである。ZSM−48、そのX線回折パターン、およびその調製方法は、米国特許第4,375,573号明細書、米国特許第4,397,827号明細書、米国特許第4,448,675号明細書、および米国特許第4,423,021号明細書のそれぞれに記載される。しかし、従来合成されるように、ZSM−48は、シリカ/アルミナのモル比を、200:1超で有する。
【0020】
本プロセスで用いられる低シリカ/アルミナZSM−48は、シリカ、アルミナ、塩基、水、および、ヘキサメトニウム(N,N,N,N’,N’,N’−ヘキサメチル−1,6−ヘキサンジアンモニウム)塩、特にヘキサメトニウムジクロライドまたはジヒドロキシドを含む指向剤(R)を含む反応混合物を結晶化することによって調製することができる。典型的には、反応混合物は、次の組成を有する。
【0021】
【表1】

【0022】
結晶化は、一般に、反応混合物を温度100〜250℃で撹拌することによって行われ、そして70〜110のシリカ:アルミナのモル比、および0.01〜1μmの範囲の結晶サイズを有するZSM−48結晶を製造する。低シリカ/アルミナZSM−48を製造するためのこのプロセスに関する更なる情報は、米国特許出願第2007/0131581号明細書に見出されることができ、引用することによって、その全内容は、本明細書に組み込まれる。
【0023】
ZSM−48および水素添加金属に加えて、本プロセスで用いられる触媒はまた、典型的には、結合剤(又はバインダー)または母材物質(又はマトリックス材料)20〜60wt%を含む。結合剤は、耐摩耗性であり、かつ、使用中に触媒が経験する温度に耐性がある。結合剤は、触媒的に活性があるか、または不活性であってもよく、これには、他のゼオライト、他の無機物質(クレーなど)、および金属酸化物(アルミナ、チタニア、シリカ、およびシリカ−アルミナなど)が含まれる。クレーは、カオリン、ベントナイト、およびモンモリロナイトであってもよく、商業的に入手可能である。シリカ−アルミナに加えて、他の適切な多孔質母材物質には、他の二元物質(シリカ−マグネシア、シリカ−トリア、シリカ−ジルコニア、シリカ−ベリリア、およびシリカ−チタニアなど)、ならびに三元物質(シリカ−アルミナ−マグネシア、シリカ−アルミナ−トリア、およびシリカ−アルミナ−ジルコニアなど)が含まれる。
【0024】
本プロセスは、幅広い種類の潤滑油供給原料の異性化脱ロウで用いることができる。これらの供給原料は、一般に、潤滑油範囲で沸騰するワックス含有原料であり、典型的には、ASTM D86またはASTM D2887で測定されて、10%留出点650°F(343℃)超を有する。これらの原料は、いくつかの素材から誘導されてもよい。溶剤精製プロセスから誘導される油(ラフィネート、部分溶剤脱ロウ油、脱瀝油など)、留出油、水素化分解装置ボトム、減圧ガス油、コーカーガス油、スラックワックス、フーツオイル等、ならびにフィッシャー−トロプシュワックスなどである。好ましい原料は、スラックワックスおよびフィッシャー−トロプシュワックスである。スラックワックスは、典型的には、溶剤またはプロパン脱ロウによって炭化水素原料から誘導される。スラックワックスは、いくらかの残油を含み、これは、典型的には脱油される。フーツオイルは、脱油されたスラックワックスから誘導される。フィッシャー−トロプシュワックスは、フィッシャー−トロプシュ合成プロセスによって調製される。
【0025】
本プロセスで用いられる供給原料は、高含有量の窒素および/または硫黄汚染物質を有してもよい。例えば、窒素含有量80ppm以下(150ppm以下さえも)、および/または硫黄含有量250ppm以下(1000ppm以下さえも)を有する原料を、本プロセスで処理することができる。硫黄および窒素含有量は、それぞれ、標準ASTM法D2622およびD4629によって測定されてもよい。
【0026】
本脱ロウプロセスに適切な条件には、温度426℃以下、好ましくは365℃以下、より好ましくは290℃〜365℃、圧力791〜20786kPa(100〜3000psig)、好ましくは1480〜17339kPa(200〜2500psig)、液空間速度0.1〜10h−1、好ましくは少なくとも0.4h−1、より好ましくは0.95〜3h−1、および水素処理ガス速度45〜1780m/m(250〜10000scf/B)、好ましくは89〜890m/m(500〜5000scf/B)が含まれる。
【0027】
本プロセスで用いられる供給原料は、脱ロウ前に水素化されてもよい。適切な水素化触媒は、第6族金属、第8〜10族金属、およびそれらの混合物を含む。適切な金属の例には、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルト、およびそれらの混合物が含まれる。これらの金属は、典型的には、耐火性(又は耐熱性)金属酸化物担体上に、酸化物または硫化物として存在する。金属の混合物はまた、バルク金属触媒としても存在してもよく、その際金属量は、触媒を基準として、30wt%以上である。適切な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、またはチタニアなどの酸化物が含まれる。好ましくはアルミナである。好ましいアルミナは、ガンマまたはイータなどの多孔質アルミナである。金属(独立にか、または混合物でのいずれかで)の量は、触媒を基準として、0.5〜35wt%の範囲である。
【0028】
適切な水素化条件には、温度426℃以下(150〜400℃など)、例えば200〜350℃、水素分圧1480〜20786kPa(200〜3000psig)(2859〜13891kPa(400〜2000psig)など)、空間速度0.1〜10h−1(0.1〜5h−1など)、および水素/原料比89〜1780m/m(500〜10000scf/B)、好ましくは178〜890m/mが含まれる。
【0029】
本開示は、ここで、次の実施例および添付の図面を引用して、より詳しく記載されるであろう。
【実施例】
【0030】
実施例1
この実施例で用いられる脱ロウ触媒は、シリカ/アルミナのモル比90/1を有するZSM−48の65wt%、およびアルミナ35wt%を、直径1.5mm×長さ3.25mmの四葉状押出し成形物の形態で含んでなった。この押出し成形物を、(テトラアンミン硝酸白金塩として)白金0.3wt%で含浸する前に、482℃で3時間スチーミングした。触媒を、垂直のダウンフロー反応器の、水素化触媒(15wt%Pt/Pdをアルミナ上に含む)の頂部床の下に充填した。
【0031】
上記触媒の組合せを、4種の異なる原料、すなわち軽質ニュートラル(LN)および重質ニュートラル(HN)スラックワックス、ならびにLNおよびHN水素化分解油(第1表に記載される性状を有する)を連続的に水素化および水素異性化するために用いた。プロセスは、液空間速度(LHSV)1h−1、水素循環速度419Nm/m、圧力107kg/cm、および実質的に同じ流動点を有する潤滑油留分を製造するように調整された平均反応温度で行った。結果を、第1表に要約する。
【0032】
【表2】

【0033】
第1表における、(反応(水素異性化)に必要な温度):(ワックス含有量)を比較することによって、軽質ニュートラル(LN)スラックワックスは、原料中のワックス1%当たりの反応器温度の増大0.47℃を、必要とすることを認めることができる(LN水素化分解油と比較して、LNスラックワックスを脱ロウするために必要とされる温度増大35℃を、ワックス含有量の差74wt%で除することによって計算される)。これは、原料中ワックス1%当たりの典型的な値0.65〜1.0℃に勝る向上であり、より高ワックスを含有する原料を処理する場合に必要とされる、より低い運転温度をもたらす(「Production of High-Quality Hydrogenated Base Oil Using Isomerization Dewaxing Technology」(Wenlei Cao著、中国珠海における2005年11月の中国精製技術会議予稿集、第207〜218頁、ISBN 7-80164-888-9)を参照されたい)。この実施例においては、低いガスメークがまた、達成される。そのいくらかは、触媒タイプにより、およびいくらかは、低い運転温度による。さらにより高いワックス含有量(100%以下)が、あり得る。GTLタイプ材などである。
【0034】
実施例2
この実施例は、実施例1の脱ロウ触媒およびプロセス条件を用いて、類似の一連の原料を処理する仮想の実施例である。しかし、より高レベルの硫黄および窒素不純物を有する。実施例1と同じ370℃転化率を達成するために必要な運転温度を計算した。結果を第2表に示す。
【0035】
【表3】

【0036】
第2表は、原料のワックス含有量にしたがって、高レベルの硫黄および窒素は、名目365℃の脱ロウ温度で、実施例1の触媒に許容され得ることを示す。転化率レベルは、実施例2においては、実施例1と同じであり、したがって類似の潤滑油収率および性状が得られることを注目されたい。
【0037】
実施例3
この実施例においては、実施例1の脱ロウ触媒を、二種の類似のスラックワックス原料を脱ロウするために用いた。この原料は、常套のNiMo/アルミナHDT触媒を用いて、第3表に特定される類似の条件下(しかし、温度は、異なる硫黄レベルの水素化生成物をもたらすように調整される)で、予め水素化された。
【0038】
【表4】

【0039】
得られた水素化生成物を、実施例1に特定される脱ロウ触媒を用いて、異なる流動点(−10〜−36℃)へ脱ロウした。結果を図1および2に要約する。脱ロウに対する原料性状を、水素化工程からの「生成物の性状」として、第3表に示す。図1は、僅かに高い温度(約5℃)が、より高い硫黄含有量の原料に対して所望の流動点に達するのに必要であるものの、−36℃程度の低い流動点が、依然として、反応温度365℃以下で達成され得るであろうことを示す。図2は、370℃留分の転化率に関して、より高硫黄含有量の原料Bの影響は、潤滑油収率の減少6〜10%であったことを示す。しかし、これらの両結果は、従来の脱ロウ触媒に対して報告された結果に勝る著しい向上を示す。その際、365℃を超える反応温度、および収率損失7〜18%が、類似の流動点を達成するのに必要とされた(「Production of High-Quality Hydrogenated Base Oil Using Isomerization Dewaxing Technology」(Wenlei Cao著、中国珠海における2005年11月の中国精製技術会議予稿集、第207〜218頁、ISBN 7-80164-888-9)を参照されたい)。
【0040】
実施例4
この実施例においては、重質水素化分解油原料に、スルフルゾール(Sulfrzol)等の多硫化物を混ぜて(又はスパイクして)、450ppm量にすることによって、硫黄の影響を、直接的に決定した。混ぜていない原料は、次の分析結果を有した。
【0041】
【表5】

【0042】
実施例1におけるように、二重触媒を用いた。これは、頂部床の水素化触媒(15wt%Pt/Pdをアルミナ上に含む)、および底部床の脱ロウ触媒を含む。脱ロウ触媒は、シリカ/アルミナのモル比90/1を有するZSM−48の65wt%、およびアルミナ35wt%を、直径1.5mm×長さ3.25mmの四葉状押出し成形物の形態で含んだ。押出し成形物を、(テトラアンミン硝酸白金塩として)白金0.6wt%を含浸する前に、482℃で3時間スチーミングした。
【0043】
原料を、水素循環速度421Nm/m、LHSV 1.33h−1、圧力1600psig(11133kPa)、および第4表に示される温度で処理した。結果をまた、第4表に示す。これは、高活性触媒は、脱ロウがより低温で達成されることを可能にすることによって、より高い硫黄含有量の原料が処理されることを可能にし、一方妥当な潤滑油収率が保持されることを証明する。
【0044】
【表6】

【0045】
実施例5
二つの類似の原料の脱ロウを、この実施例で検討した。すなわち、原料A:中圧水素化分解油(MPHC)、および原料B:潤滑油水素化分解油(LHDC)である。原料は、第5表に示される性状を有した。
【0046】
【表7】

【0047】
原料を、二種の異なるZSM−48触媒を用いて脱ロウした。第一の触媒は、実施例1で用いられた同じ脱ロウ触媒であった。第二の触媒は、シリカ/アルミナのモル比200/1を有するZSM−48の65wt%、およびアルミナ35wt%を、直径1.5mm×長さ3.25mmの四葉状押出し成形物の形態で含んだ。押出し成形物を、(テトラアンミン硝酸白金塩として)白金0.6wt%を含浸する前に、482℃で3時間スチーミングした。原料を、水素循環速度421Nm/m、LHSV 1.33h−1、圧力2000psig(13789kPa)で処理した。結果を、図3および図4に示す。これは、実施例1の低いシリカ/アルミナのモル比の触媒(白金含有量単に0.3wt%)は、より高いシリカ/アルミナのモル比の触媒(白金含有量0.6wt%)に類似の活性および選択性(370℃転化率によって測定される)を示すことを証明する。この実施例は、より高いゼオライト活性は、金属含有量を下げることによって補うことができることを教示する。
【0048】
実施例5で用いられた原料Bは、実施例4で用いられた原料に類似である。処理条件はまた、圧力に400psigの相違があるものの、二つの実施例の間で類似である。実施例4における硫黄を全く含まない結果(Si/Al=90/1の結晶、およびPt0.6wt%からなる触媒を用いた)を、原料Bの結果(Pt0.3wt%およびSi/Al比=90/1で処理された)に比較すると、金属含有量を0.3wt%から0.6wt%へ増大することにより、触媒活性が増大されることが判ることができる。実施例4は、流動点−25℃を達成するのに、単に329℃を必要とし、一方実施例5からの触媒(金属は半分量)は、類似の流動点を達成するのに凡そ340℃を必要とした。
【0049】
出願人は、妥当に予見され得るであろう開示の主題について、全ての形態及び用途を開示する。しかし、等価物として存する、予見不能かつ非現実的修正が存在し得る。本開示は、具体的かつ例示的形態と組合せて記載されているもが、多くの変更(alteration)、修正(modification)及び変形(variation)は、当業者にとって、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく前記説明に照らして明らかであろうことは、明白である。従って、本開示は、上記詳細な説明について、これら全ての変更、修正及び変形を包含する。
【0050】
本明細書に引用された全ての特許、試験手順、及び他の文献類(基礎出願を含む)は、これらの開示が本開示と矛盾しない範囲で、およびこれらを組込むことが許容される全ての法域(又は権限)に対して、引用することによって完全に組み込まれる。
【0051】
本明細書に下限値と上限値が記載されている場合、いずれの下限値からの、いずれの上限値への範囲も、予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)反応域に、シリカ/アルミナのモル比200:1未満を有するZSM−48を40〜80wt%、及び元素周期律表の第8〜10族からの金属又は金属化合物を0.3〜1.5wt%含む触媒を供給する工程、及び
(b)触媒を、反応域において、脱ロウ条件下に、50wt%未満のワックス含有量を有する第一の炭化水素供給原料、及び50wt%以上のワックス含有量を有する第二の炭化水素供給原料と、周期的に接触させる工程
を含む、接触脱ロウ方法。
【請求項2】
前記触媒は、シリカ/アルミナのモル比200:1未満を有するZSM−48を50〜70wt%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ZSM−48は、シリカ/アルミナのモル比100:1以下を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒は、元素周期律表の第8〜10族からの金属又は金属化合物を、0.3〜0.8wt%含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
元素周期律表の第8〜10族からの前記金属又は金属化合物は、白金を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、更に、無機酸化物結合剤を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記脱ロウ条件は、365℃以下の温度を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記脱ロウ条件は、290℃〜365℃の温度を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記脱ロウ条件は、炭化水素原料に対する少なくとも0.4h−1の液空間速度を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記脱ロウ条件は、炭化水素原料に対する0.95〜2h−1の液空間速度を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第一及び第二の炭化水素供給原料の一種又は両者は、150ppm以下の窒素含有量を有する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第一及び第二の炭化水素供給原料の一種又は両者は、1000ppm以下の硫黄含有量を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−515821(P2013−515821A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546148(P2012−546148)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061542
【国際公開番号】WO2011/079116
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】